JP2017227720A - 樹脂ミラー、画像表示機能付きミラー、樹脂ミラーの製造方法、および転写シート - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、プラスチック加工技術を応用して、種々の形状のミラーを作製することもできる。特許文献1には、金属蒸着層を有するインサートシートを金型内に装着して加熱、真空吸引して形状を転写した後、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に反射層の接着を行う方法が開示されている。
また、特許文献2には、予め射出成形によって略最終形状に加工された強化樹脂層に反射フィルムを熱圧着して得られた樹脂ミラーが開示されており、反射面(観察面)の表面粗さを6nmとすることが開示されている。
一方、特許文献3には、画像表示装置、円偏光反射層、およびプラスチック板等の前面板をこの順に含む画像表示機能付きミラーが開示されている。特許文献3に記載のミラーでは前面板側からミラー反射像が観測される。
[1]観察面、成形樹脂層、熱可塑性溶着層、および偏光反射板をこの順で含み、
上記観察面の反対側の面の表面粗さが10nm以下である樹脂ミラー。
[2]上記成形樹脂層が、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、およびシクロオレフィンポリマーからなる群より選択されるいずれか1つ以上のポリマーを含む[1]に記載の樹脂ミラー。
[3]上記熱可塑性溶着層の厚みが1.0μm〜8.0μmである[1]または[2]に記載の樹脂ミラー。
[4]上記観察面が凸曲面である[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂ミラー。
[5]上記偏光反射板がコレステリック液晶層を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂ミラー。
[6]さらに1/4波長板を含み、
上記成形樹脂層、上記偏光反射板、および上記1/4波長板がこの順に配置されている[5]に記載の樹脂ミラー。
[8]上記樹脂ミラーが高Re位相差膜または光学機能層を含み、
上記高Re位相差膜または上記光学機能層、上記成形樹脂層、および上記偏光反射板がこの順で配置されており、
上記高Re位相差膜は3000nm以上の正面位相差を有する[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂ミラー。
[9]ハーフミラーである[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂ミラー。
[10][9]に記載の樹脂ミラーおよび画像表示装置を含み、上記画像表示装置、上記偏光反射板および上記成形樹脂層がこの順に配置されている画像表示機能付きミラー。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂ミラーの製造方法であって、
上記偏光反射板および上記熱可塑性溶着層を含む転写シートを金型内に配置して上記金型の内面の少なくとも一部に接触させること、および
上記金型に、溶融樹脂を射出して上記成形樹脂層を成形すると同時に上記成形樹脂層に上記熱可塑性溶着層を接着させて、上記成形樹脂層、上記熱可塑性溶着層および上記偏光反射板をこの順で含む積層体を得ることを含み、
上記転写シートが接触する上記内面の少なくとも一部の表面粗さが10nm以下である上記製造方法。
[12]上記転写シートが基材フィルムを含み、
上記転写シートが上記金型内に送り込まれて、上記基材フィルム、上記偏光反射板、および上記溶融樹脂がこの順となるように配置され、
上記成形後、上記金型を上記積層体から取り外すこと、および上記積層体の基材フィルムを剥離することを含む[11]に記載の製造方法。
[14]上記樹脂ミラーがさらに高Re位相差膜または光学機能層を含み、
上記成形において、上記高Re位相差膜または上記光学機能層、上記溶融樹脂、上記転写シートがこの順に配置される[11]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]上記樹脂ミラーがさらに高Re位相差膜または光学機能層を含み、
上記成形後、上記金型を上記積層体から取り外すこと、および
上記積層体の上記観察面側に上記高Re位相差膜または上記光学機能層を接着することを含む、[11]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[16]成形樹脂層の射出成形において偏光反射板を上記成形樹脂層上に転写するための転写シートであって、
上記偏光反射板および熱可塑性溶着層を含み、
厚みが1.0μm〜300μmであり、
上記熱可塑性溶着層の表面粗さが15nm以下である転写シート。
[17]上記熱可塑性溶着層の厚みが1.0μm〜8.0μmである[16]に記載の転写シート。
[18]基材フィルムを含み、
上記基材フィルム、上記偏光反射板および上記熱可塑性溶着層がこの順に配置されている[16]または[17]に記載の転写シート。
[19]上記偏光反射板がコレステリック液晶層を含む[16]〜[18]のいずれかに記載の転写シート。
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味を表す。「(ポリ(メタ)アクリレート」等も同様である。
本明細書において、樹脂ミラーは樹脂基材上に反射層を有するミラーを意味する。本発明の樹脂ミラーは成形樹脂層および偏光反射板のほか、成形樹脂層と偏光反射板との間に、熱可塑性溶着層を含む。成形樹脂層と熱可塑性溶着層とは両者の成分が混合した混合層を形成していてもよい。成形樹脂層と熱可塑性溶着層との間に混合層が形成されていてもよい。樹脂ミラーは光学機能層などの他の層を含んでいてもよい。
本明細書において、ミラーはハーフミラーを含む意味で用いられる。本明細書において、ハーフミラーは、鏡として、光を反射する機能を有するとともに、所望の波長の光の少なくとも一部を透過する機能を有するものを意味する。
本発明者らは、偏光反射板および成形樹脂層を含む樹脂ミラーの観察面とは反対側の面の表面粗さを10nm以下とすることによって、ミラー反射像が鮮明となることを見出した。
なお、本発明の樹脂ミラーの観察面の表面粗さは20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。
本明細書において、成形樹脂層は加熱および加圧を含む加工で成形された樹脂層を意味する。成形樹脂層は射出成形で得られたものであることが好ましい。
成形樹脂層の形状は特に限定されないが、板状またはフィルム状であることが好ましい。成形樹脂層は曲面を有していてもよい。すなわち、成形樹脂層は平坦であってもよく、湾曲していてもよい。
市販品の熱可塑性樹脂の例としては、ユーピロンS3000 l(ポリカーボネート、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、ノバレックス7022−l(ポリカーボネート、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、スミペックス MG5(ポリ(メタ)アクリレート、住友化学株式会社製)、PETG K2012 (ポリエチレンテレフタレート、イーストマンケミカル社製)、ゼオネックス E48R(シクロオレフィンポリマー、日本ゼオン株式会社製)、パンライト L−1250Z100(ポリカーボネート、帝人株式会社)、DURBIO T744OIR(ポリカーボネート、三菱化学株式会社製)等を用いることができる。
偏光反射板としては、直線偏光反射層および円偏光反射層が挙げられる。
直線偏光反射層としては、例えば(i)多層構造の直線偏光反射板、(ii)複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、(iii)ワイヤーグリッド偏光子、(iv)偏光プリズム、(v)散乱異方性型偏光板などが挙げられる。
なお、誘電体薄膜の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
スパッタリング法としては、成膜速度の高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、スパッタリング法により多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
誘電体薄膜の厚みとしては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの厚みが好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8がより好ましい。
複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、DBEF(登録商標)(3M社製)などが挙げられる。
ワイヤーグリッド偏光子は、金属ワイヤーを周期的に配列したもので、テラヘルツ波帯域で主に偏光子として用いられる。ワイヤーグリッドが偏光子として機能するためには,ワイヤー間隔が入射電磁波の波長よりも十分小さいことが必要となる。
ワイヤーグリッド偏光子では、金属ワイヤーが等間隔に配列されている。金属ワイヤーの長手方向と平行な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子において反射され、垂直な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子を透過する。
円偏光反射層を用いることにより、成形樹脂層側からの入射光を円偏光として反射させることができる。また、樹脂ミラーを画像表示機能付きミラーに用いる場合、画像表示装置からの入射光を円偏光として透過させることができる。そのため、円偏光反射層を用いた樹脂ミラーおよびこの樹脂ミラーを用いた画像表示機能付きミラーでは、偏光サングラスを介しても、方向に依存せずに、画像およびミラー反射像の観察を行うことができる。
積層型円偏光反射層において、直線偏光反射板と1/4波長板とは直線偏光反射板の偏光反射軸に対し1/4波長板の遅相軸が45°となるように配置されていればよい。また、1/4波長板と直線偏光反射板とは、例えば、接着層により接着されていればよい。
樹脂ミラーを画像表示機能付きミラーに用いる場合、積層型円偏光反射層において直線偏光反射板が画像表示装置に近い面となるように配置して使用することで、画像表示装置からの画像表示のための光を効率よく円偏光に変換して、画像表示機能付きミラーの観察面から出射させることができる。画像表示装置からの画像表示のための光が直線偏光であるとき、この直線偏光を透過するように直線偏光反射板の偏光反射軸を調整すればよい。
直線偏光反射板と1/4波長板とを含む円偏光反射層の厚みは好ましくは2.0μm〜300μmの範囲、より好ましくは8.0μm〜200μmの範囲であればよい。
直線偏光反射板としては、上記で直線偏光反射層として説明したものを用いることができる。
1/4波長板としては、後述する1/4波長板を用いることができる。
コレステリック円偏光反射層はコレステリック液晶層を少なくとも1層含む。コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層は可視光領域で選択反射を示すものであればよい。
円偏光反射層は2層以上のコレステリック液晶層を含んでいてもよく、配向層などの他の層を含んでいてもよい。円偏光反射層はコレステリック液晶層のみからなることが好ましい。また、円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含むときは、それらは隣接するコレステリック液晶層と直接接していることが好ましい。円偏光反射層は、3層、4層など、3層以上のコレステリック液晶層を含んでいることが好ましい。
コレステリック円偏光反射層の厚みは、好ましくは1.0μm〜300μmの範囲、より好ましくは1.5μm〜100μmの範囲、さらに好ましくは2.0μm〜20μmの範囲であればよい。
コレステリック液晶相は、特定の波長域において右円偏光または左円偏光のいずれか一方のセンスの円偏光を選択的に反射させるとともに他方のセンスの円偏光を選択的に透過する円偏光選択反射を示すことが知られている。本明細書において、円偏光選択反射を単に選択反射ということもある。
分光光度計UV3150(島津製作所)を用いて光反射層の透過スペクトル(コレステリック液晶層の法線方向から測定したもの)を測定すると、選択反射領域に透過率の低下ピークがみられる。この最も大きいピーク高さの1/2の高さの透過率となる2つの波長のうち、短波長側の波長の値をλl(nm)、長波長側の波長の値をλh(nm)とすると、選択反射の中心波長と半値幅は下記式で表すことができる。
選択反射中心波長=(λl+λh)/2
半値幅=(λh−λl)
上記のように求められる、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長と通常一致する。なお、本明細書において、選択反射の中心波長はコレステリック液晶層の法線方向から測定した時の中心波長を意味する。
上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調整できる。n値とP値を調節して、所望の波長の光に対して右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させるために、中心波長λを調節することができる。
λd=n2×P×cosθ2
赤外光領域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を設ける場合は、可視光領域に選択反射の中心波長をそれぞれ有するコレステリック液晶層すべてに対し最も外側にあることが好ましく、観察面から最も遠い層にあることがより好ましい。
選択反射の中心波長が同一の1種のコレステリック液晶層の形成のために、ピッチPが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を複数積層してもよい。ピッチPが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を積層することによっては、特定の波長で円偏光選択性を高くすることができる。
樹脂ミラーを画像表示機能付きミラーに用いる場合、コレステリック円偏光反射層を含む樹脂ミラーは、さらに1/4波長板を含んでいることが好ましい。1/4波長板は画像表示装置とコレステリック円偏光反射層との間となるように配置される。画像表示装置とコレステリック円偏光反射層との間に1/4波長板を含むことによっては、特に、直線偏光により画像表示している画像表示装置からの光を円偏光に変換してコレステリック円偏光反射層に入射させることが可能となる。そのため、円偏光反射層において反射されて画像表示装置側に戻る光を大幅に減らすことができ、明るい画像の表示が可能となる。また、1/4波長板の利用によりコレステリック円偏光反射層において画像表示装置側に反射するセンスの円偏光を生じさせない構成が可能であるため、画像表示装置およびハーフミラーの間の多重反射に基づく画像表示品質の低下が生じにくい。
すなわち、例えば、コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長が、画像表示装置の白表示時の発光スペクトルにおける青色光の発光ピーク波長と略同一(例えば差異が5nm未満)であったとしても、円偏光反射層において画像表示側に反射するセンスの円偏光を生じさせることなく、画像表示装置の出射光を観察面側に透過させることができる。
前者の1/4波長板の正面位相差は 画像表示装置の発光波長の1/4の長さであればよい。それゆえに例えば画像表示装置の発光波長が450nm、530nm、640nmの場合は、450nmの波長で112.5nm±10nm、好ましくは、112.5nm±5nm、より好ましくは112.5nm、530nmの波長で132.5nm±10nm、好ましくは、132.5nm±5nm、より好ましくは132.5nm、640nmの波長で160nm±10nm、好ましくは、160nm±5nm、より好ましくは160nmの位相差であるような逆分散性の位相差層が1/4波長板として最も好ましいが、位相差の波長分散性の小さい位相差板や順分散性の位相差板も用いることができる。なお、逆分散性とは長波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味し、順分散性とは短波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味する。
1/4波長板としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、ピュアエース(登録商標)WR(帝人株式会社製ポリカーボネートフィルム)などが挙げられる。
1/4波長板はコレステリック円偏光反射層と、接着層により接着されていてもよく、直接接していてもよいが、後者が好ましい。
以下、コレステリック液晶層および液晶組成物から形成される1/4波長板の作製材料および作製方法について説明する。
上記1/4波長板の形成に用いる材料としては、重合性液晶化合物を含む液晶組成物などが挙げられる。上記コレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、さらにキラル剤(光学活性化合物)とを含む液晶組成物などが挙げられる。必要に応じてさらに界面活性剤や重合開始剤などと混合して溶剤などに溶解した上記液晶組成物を、仮支持体、支持体、配向膜、下層となるコレステリック液晶層、1/4波長板などに塗布し、配向熟成後、液晶組成物の硬化により固定化してコレステリック液晶層または1/4波長板を形成することができる。
重合性液晶化合物としては、棒状液晶化合物を用いればよい。
棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物はキラル剤を含んでいることが好ましい。キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物は、化合物によって誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物を用いることができる。キラル剤の例としては、液晶デバイスハンドブック(第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、特開2003−287623号、特開2002−302487号、特開2002−80478号、特開2002−80851号、特開2010−181852号または特開2014−034581号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、重合性液晶化合物の総モル量に対し0.01モル%〜200モル%が好ましく、1.0モル%〜30モル%がより好ましい。
液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましく、特にラジカル光重合開始剤が好ましい。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)、オキシム化合物(特公昭63−40799号、特公平5−29234号、特開平10−95788号、特開平10−29997号、特開2001−233842号、特開2000−80068号、特開2006−342166号、特開2013−114249号、特開2014−137466号、特許4223071号、特開2010−262028号、特表2014−500852号各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。例えば、特開2012−208494号公報の段落0500〜0547の記載も参酌できる。
アシルフォスフィンオキシド化合物としては、例えば、市販品のBASFジャパン(株)製のIRGACURE819(化合物名:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)を用いることができる。オキシム化合物としては、IRGACURE OXE01(BASF社製)、IRGACURE OXE02(BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831、アデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)、アデカアークルズNCI−831(ADEKA社製)等の市販品を用いることができる。
液晶組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5.0質量%であることがさらに好ましい。
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物の架橋剤の含有量は、3.0質量%〜20質量%が好ましく、5.0質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が3.0質量%以上であることにより、架橋密度向上の効果を得ることができる。また、20質量%以下とすることにより、形成される層の安定性を維持することができる。
液晶組成物中には、安定的にまたは迅速にプレーナー配向とするために寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例としては特開2007−272185号公報の段落0018〜0043等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、特開2012−203237号公報の段落0031〜0034等に記載の式(I)〜(IV)で表される化合物などが挙げられる。
なお、配向制御剤としては1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他、液晶組成物は、塗膜の表面張力を調整し厚みを均一にするための界面活性剤、および重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
仮支持体、配向膜、1/4波長板、下層となるコレステリック液晶層などへの液晶組成物の塗布方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。液晶組成物の塗布のほか、本明細書中で塗布というときの塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法などが挙げられる。また、別途支持体上に塗設した液晶組成物を転写することによっても実施できる。塗布した液晶組成物を加熱することにより、液晶分子を配向させる。コレステリック液晶層形成の際はコレステリック配向させればよく、1/4波長板形成の際は、ネマチック配向させることが好ましい。コレステリック配向の際、加熱温度は200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。この配向処理により、重合性液晶化合物がフィルム面に対して実質的に垂直な方向に螺旋軸を有するようにねじれ配向している光学薄膜が得られる。ネマチック配向の際、加熱温度は50℃〜120℃が好ましく、60℃〜100℃がより好ましい。
複数のコレステリック液晶層からなる積層膜、および1/4波長板と複数のコレステリック液晶層とからなる積層膜の形成の際は、それぞれ、1/4波長板または先のコレステリック液晶層の表面に直接、重合性液晶化合物等を含む液晶組成物を塗布し、配向および固定の工程を繰り返してもよく、別に用意した1/4波長板、コレステリック液晶層、またはそれらの積層体を接着剤等を用いて積層してもよいが、前者が好ましい。接着層の厚みムラに由来する干渉ムラが観測されにくくなるからである。また、コレステリック液晶層の積層膜においては、先に形成されたコレステリック液晶層の表面に直接接するように次のコレステリック液晶層を形成することにより、先に形成したコレステリック液晶層の空気界面側の液晶分子の配向方位と、その上に形成するコレステリック液晶層の下側の液晶分子の配向方位が一致し、コレステリック液晶層の積層体の偏光特性が良好となるからである。
液晶組成物は、支持体、仮支持体または支持体もしくは仮支持体表面に形成された配向層の表面に塗布され層形成されていることが好ましい。支持体は層形成後に剥離しなくてよく、仮支持体または仮支持体および配向層は、層形成後に剥離されてもよい。
仮支持体および支持体の例としては、プラスチックフィルムまたはガラス板が挙げられる。プラスチックフィルムの材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、シリコーンなどが挙げられる。プラスチックフィルムである仮支持体は、後述の転写シートの基材フィルムとして機能することも好ましい。仮支持体は、樹脂ミラーが使用されるまで、例えば画像表示装置に接着されるまで、保護フィルムとして機能していてもよい。
特にポリマーからなる配向層はラビング処理を行ったうえで、ラビング処理面に液晶組成物を塗布することが好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙、布で一定方向に、数回擦ることにより実施することができる。
配向層を設けずに仮支持体表面に、または仮支持体をラビング処理した表面に、液晶組成物を塗布してもよい。
配向層の厚さは0.01μm〜5.0μmであることが好ましく、0.05μm〜2.0μmであることがさらに好ましい。
熱可塑性溶着層は、加熱により溶解し、その後冷却することで層を接着する層である。
熱可塑性溶着層は熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合樹脂、エチレンと酢酸ビニルとの共重合樹脂、イソブテンと無水マレイン酸との共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル共重合樹脂、スチレンとブタジエンとの共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリル樹脂などが挙げられる。
熱可塑性溶着層の形成のための塗布液としては、ヒートシール剤として市販の組成物をそのまま、または溶媒に溶解したもの、もしくは溶媒で希釈したものを用いることができる。
本発明の樹脂ミラーは、高Re位相差膜を含んでいてもよい。高Re位相差膜は本発明の樹脂ミラーにおいて、高Re位相差膜、成形樹脂層、および反射偏光板がこの順となるように設けられていることが好ましい。
本明細書において、「高Re位相差膜」というとき、1/4波長板(位相差板)とは区別される、高い正面位相差を有する位相差膜を意味する。上記高Re位相差膜の正面位相差は、3000nm以上であることが好ましく、5000nm以上であることがより好ましい。高Re位相差膜の正面位相差は、大きいほど好ましいが、製造効率や薄膜化を考慮して、100000nm以下、50000nm以下、40000nm以下、または30000nm以下であればよい。
偏光を疑似的に無偏光とすることができる正面位相差については、特開2005−321544号公報の段落0022〜0033に記載がある。具体的な正面位相差の数値は、成形樹脂層に応じて、または、後述の画像表示機能付きミラーとして用いる場合については、車両に応じて決定することができる。
高Re位相差膜の厚みは1.0μm〜10000μmが好ましく、10μm〜1000μmがより好ましく、20μm〜200μmがさらに好ましい。
本発明の樹脂ミラーは、光学機能層を含んでいてもよい。光学機能層は本発明の樹脂ミラーにおいて、光学機能層、成形樹脂層、および反射偏光板がこの順となるように設けられていることが好ましい。
本発明の樹脂ミラーにおいて、光学機能層としては可視光領域で透明であるものが用いられる。
光学機能層としては、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層などが挙げられる。
ハードコート層は樹脂ミラーの最外層として含まれていてもよく、ハードコート層の外側にさらに他の層が設けられていてもよい。
本明細書において、ハードコート層とは、形成されることで樹脂ミラー表面の鉛筆硬度が上昇する層をいう。具体的には、ハードコート層積層後の鉛筆硬度(JIS K5400)がH以上となる層である。ハードコート層積層後の鉛筆硬度は好ましくは2H以上であり、さらに好ましくは3H以上となっていればよい。ハードコート層の厚みは、0.1μm〜100μmが好ましく、1.0μm〜70μmがより好ましく、2.0μm〜50μmがさらに好ましい。
ハードコート層は反射防止層または帯電防止層などを兼ねるものであってもよい。
防眩層は、表面散乱に基づく防眩性を付与するための層である。防眩層は、樹脂ミラーの最外層として含まれていてもよく、防眩層の外側にさらに他の層が設けられていてもよい。
防眩層は、防眩層用バインダー樹脂形成化合物と防眩層用粒子を含む組成物から形成することができる。
防眩層の材料および作製方法については、特開2013−178584号公報の0101〜0109の記載、特開2016−053601号公報等を参照することができる。
反射防止層は、樹脂ミラーの最表面に含まれていることが好ましい。反射防止層を設けることによって、最表面の反射光が抑制され、偏光反射板からの光に由来する像に基づくミラー反射像を鮮明に観測することができる。反射防止層の材料および作製方法については、WO2015/050202の0049〜0053の記載を参照できる。
帯電防止層は、樹脂ミラーの最表面に含まれていることが好ましい。帯電防止層の材料および作製方法については、特開2012−027191号公報の0020〜0028の記載を参照できる。
樹脂ミラーは、各層の接着のための接着層を含んでいてもよい。接着層は接着剤から形成されるものであればよい。
接着剤としては硬化方式の観点から、熱硬化タイプ、光硬化タイプ、反応硬化タイプ、硬化の不要な感圧接着タイプがあり、それぞれ素材としてアクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、ポリビニルブチラール系などの化合物を使用することができる。作業性、生産性の観点から、硬化方式として光硬化タイプが好ましく、光学的な透明性、耐熱性の観点から、素材はアクリレート系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系などを使用することが好ましい。
例えば、成形樹脂層と高Re位相差膜との接着または成形樹脂層と光学機能層との接着は、硬化の不要な感圧接着タイプの接着層で行うことができる。
本発明の樹脂ミラーは、転写シートを金型内に配置して金型の内面の少なくとも一部に接触させること、および上記金型に、溶融樹脂を射出して成形樹脂層を成形すると同時に上記成形樹脂層に上記熱可塑性溶着層を接着させて、上記成形樹脂層、上記熱可塑性溶着層および上記偏光反射板をこの順で含む積層体を得ることを含む方法で製造することができる。
樹脂ミラーは、成形樹脂層を射出成形することを含む方法で製造することができる。射出成形は樹脂を加熱溶融させたのち、溶融樹脂を金型内に加圧注入充填し、固化あるいは硬化して成形品を得る方法である。なお、金型内とは金型により形成されている空間の中を意味する。通常は雄型と雌型の2枚の型により空間が形成されていればよい。
射出成形は、金型内で溶融樹脂が加熱および加圧された後、冷却されることにより行われる。
DSC装置:SIIテクノロジー社製、DSC6200
・測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
・昇温速度:10℃/min
・測定開始温度:0℃
・測定終了温度:200℃
・試料パン:アルミニウム製パン
・測定試料の質量:5mg
・Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度をTgとする。ただし、測定は同一の試料で2回実施し、2回目の測定結果を採用する。
加熱および加圧の時間は1秒から300秒が好ましく、10秒から120秒がより好ましい。
射出成形は、射出成形機により行うことができる。射出成形機は金型または金型を設置する部位のほか、射出機構、温度制御機構、型締機構などを有していればよい。
金型は通常、二枚組となっており、二枚を型締めすることにより上記空間が形成される。二枚のいずれかが固定盤であり、他方が可動盤であればよい。またいずれかが雌型であり、他方が雄型であればよい。雌型が固定盤であっても雄型が固定盤であってもよいが、雌型が固定盤であることが好ましい。
本発明の樹脂ミラーの製造方法においては、転写シートが金型内に配置され、金型の内面の少なくとも一部に接触させられ、転写シートが接触する上記内面の少なくとも一部の表面粗さは10nm以下である。この表面粗さは5nm以下であることが好ましい。
上記射出成形で得られた、成形樹脂層、熱可塑性溶着層、および偏光反射板を含む積層体を金型から取り外したあと、高Re位相差膜または光学機能層をこれらが観察面側になるように接着することができる。基材フィルムを剥離する場合、基材フィルムの剥離は光学機能層の接着の前であっても後であってもよい。
または、上記射出成形で同時に高Re位相差膜または光学機能層を成形樹脂層に接着させることもできる。金型内で光学機能層、溶融樹脂、および転写シートがこの順となるように射出成形を行えばよい。光学機能層がプラスチックフィルム上に重合性組成物の硬化層が設けられているものである場合、プラスチックフィルム側の面が溶融樹脂側となるように配置する。樹脂ミラーは高Re位相差膜および光学機能層の両方を含んでいてもよく、その場合高Re位相差膜側の面が溶融樹脂側となるように配置する。高Re位相差膜または光学機能層と溶融樹脂との間に熱可塑性溶着層を配してもよい。
射出成形は、高Re位相差膜または光学機能層がインサート成形、偏光反射板(転写シート)がインモールド成形の様式で転写されることが好ましい。
本明細書において、転写シートは、成形樹脂層の射出成形において偏光反射板を成形樹脂層上に転写するための転写シートである。転写シートは、成形樹脂層を射出成形するときに偏光反射板を上記成形樹脂層上に転写することができる。転写シートは、いわゆるインモールド成形用の転写シートであることが好ましい。
転写シートは板状またはフィルム状であればよい。転写シートはロール状になっていてもよい。
転写シートの厚みは1.0μm〜300μmであればよく、5.0μm〜200μmであることが好ましい。転写シートの厚みを1.0μm〜300μmとすることにより、シワを発生させることなく成形することができる。
転写シートは、常温下での伸長伸びが5%〜300%であることが好ましく、10%〜250%であることがより好ましく、20%〜200%であることがさらに好ましい。引張伸びは、薄いプラスチックシートの引張試験(ASTMD882)に準じて測定することができる。
転写シートの熱可塑性溶着層の成形樹脂層(溶融樹脂)への接着により、偏光反射板が成形樹脂層と一体になった樹脂ミラーを得ることができる。熱可塑性溶着層は転写シートの最外層にあることが好ましい。
このときの熱可塑性溶着層の表面粗さは、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。転写シートの熱可塑性溶着層の表面粗さを15nm以下とすることにより、樹脂ミラーにおける観察面と反対側の面の表面粗さを10nm以下に容易に調整することができる。
転写シートの最外層の表面、例えば熱可塑性溶着層の表面には、運搬等の際の保護のために保護層などが設けられていてもよく、転写シートとしての使用時に保護層を剥離して用いてもよい。
転写シートは基材フィルムを含むことが好ましい。基材フィルムとしては、液晶組成物を塗布して層形成するための仮支持体と同様の材料を用いることができる。好ましい例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。液晶組成物を塗布して層形成するための仮支持体がそのまま転写シートの基材フィルムとなっていることが好ましい。転写シートは偏光反射板形成時に用いられた配向層を含んでいてもよく、樹脂ミラーの製造方法において、基材フィルムが剥離される場合、配向層も同時に剥離されてもよく、されなくてもよい。
基材フィルムの厚みは、通常、5.0μm〜200μm程度であり、好ましくは、20μm〜100μm程度であればよい。100μm以下の基材フィルムを使用することで、金型の表面形状を効率よく転写することができる。
転写シートは離型層を含んでいてもよい。離型層は基材フィルムの表面に設けられ、基材フィルムと偏光反射板との間に配置されて、基材フィルムと偏光反射板との分離を容易にするための層であり、基材フィルムが剥離されるときは、基材フィルムとともに剥離される。
離型層は、基材フィルムの全面を被覆していてもよいし、基材フィルムの一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、基材フィルムの全面を被覆していることが好ましい。
転写シートは、偏光反射板上、通常は偏光反射板の表面に、熱可塑性溶着層を形成することにより製造することができる。熱可塑性溶着層は、熱可塑性樹脂を含む塗布液を偏光反射板上に塗布して乾燥させること、または熱可塑性溶着層が形成された離型シートから熱可塑性溶着層を偏光反射板上に転写することにより作製することができる。
樹脂ミラーは、樹脂ミラーは、偏光反射板の光学特性に応じて、様々な用途に用いることができる。樹脂ミラーの例としては、各種ハーフミラー、車載用ミラー、光学レンズ、アイウェア用光学部材などが挙げられる。
ハーフミラーである樹脂ミラーを用いて、画像表示機能付きミラーを作製することができる。
画像表示機能付きミラーはハーフミラーおよび画像表示装置を含む。画像表示機能付きミラーにおいて、画像表示装置、偏光反射板、および成形樹脂層はこの順で配置される。画像表示機能付きミラーにおいて、画像表示装置およびハーフミラーは、互いに直接接していてもよく、その間に空気層が存在してもよく、または接着層を介して直接接着されていてもよい。
画像表示装置としては、特に限定されない。画像表示装置は直線偏光を出射して(発光して)画像を形成する画像表示装置であることが好ましい。画像表示装置は、液晶表示装置または有機EL装置であることがより好ましい。
液晶表示装置は透過型であっても反射型であってもよく、特に、透過型であることが好ましい。液晶表示装置は、IPS(In Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching) モード、VA(Vertical Alignment)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モードなどのいずれの液晶表示装置であってもよい。
画像表示機能付きミラーは、画像表示装置の画像表示側に、上記ハーフミラーを配置して、画像表示装置とハーフミラーとを一体化することにより作製することができる。ハーフミラーは、画像表示装置、偏光反射板、および成形樹脂層がこの順となるように配置する。画像表示装置とハーフミラーとの一体化は、フレームまたは蝶番での連結や、接着により行えばよい。例えば、画像表示機能付きミラーは、画像表示装置の画像表示面にハーフミラーを接着して作製することができる。接着は、成形樹脂層、偏光反射板、および画像表示装置がこの順になるように行う。画像表示装置とハーフミラーとの接着は上述の接着層を用いて行うことができ、高透明性接着剤転写テープを用いることが好ましい。
画像表示機能付きミラーの用途としては特に限定されない。例えば、防犯用ミラー、美容室または理容室のミラー等として用い、文字情報、静止画、動画などの画像を表示することができる。また、画像表示機能付きミラーは、車両用ルームミラーであってもよく、テレビ、パーソナルコンピューター、スマートフォン、携帯電話として用いられていてもよい。
湾曲は、上下方向、左右方向、または上下方向と左右方向との両方にあればよい。また、湾曲は、曲率半径が500mm〜3000mmであればよい。1000mm〜2500mmであることがより好ましい。曲率半径は、断面で湾曲部分の外接円を仮定した場合の、この外接円の半径である。
コレステリック液晶層形成用の、塗布液1、塗布液2、塗布液3および、1/4波長板用として塗布液4を下記表1に示す組成で調製した。
得られた転写シートを用いて、実施例1〜9および比較例1および2の樹脂ミラーの作製および評価を以下の手順で行った。
平面板作製用の金型として凹型および凸型の組み合わせからなる金型を用意した。凹型金型上に、転写シートの仮支持体(基材フィルム)が金型の内面に接するような向きで配置し、真空吸引して転写シートを凹部底面に接触させた。この凹型金型に凸型金型を組み合わせて、金型を閉じ、表2に示す溶融樹脂が熱可塑性溶着層側の面に接するように、溶融樹脂を金型内に注入して成形(金型温度90℃、樹脂温度:300℃、圧力100MPa、時間30秒)した。室温に冷却し、金型を開いて得られた積層体を取り出した。基材フィルムを剥離して、樹脂ミラーを得た。得られた樹脂ミラーにおいて、成形樹脂層は150mm×100mm×3.0mmの平板であった。
表2中、溶融樹脂のPCはユーピロンS3000、アクリルはスミペックス MG5、PETはPETG K2012、COPはゼオネックス E48Rである。
金型内面の表面粗さは、金型の研磨時間を変えることにより調整を行った。また、熱可塑性溶着層の表面粗さは、ヒートシール剤の固形分濃度を変更して粘度を変えてワイヤーバーで塗布することで調整を行った。
表2に記載の各光学機能層は以下のように作製した。
固有粘度0.62dl/gのPET樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給し、285℃で溶解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。
上記未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、正面位相差8000nm、厚み80μmである高Re位相差膜を得た。
DPHA(日本化薬株式会社製) 50質量部
Irgacure184(BASFジャパン株式会社製) 2.0質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記塗布液を、ワイヤーバーを用いて高Re位相差膜上に塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて6秒間UV照射し、厚み5.0μmのハードコート層を形成した。
PETA(商品名PET−30):(日本化薬株式会社製) 50質量部
KE−P30(日本触媒株式会社製アモルファスシリカ粒子シーホスター、平均一次粒子径300nm) 10質量部
Irgacure184(BASFジャパン株式会社製) 2.0質量部
酢酸ブチル 50質量部
上記塗布液を、ワイヤーバーを用いて高Re位相差膜上に塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて6秒間UV照射し、厚み5.0μmの反射防止層を形成した。
特許第5674729号公報に記載のイオン伝導性化合物(導電性ポリマー)IP−15 5.0質量部
A−TMMT(新中村化学工業株式会社) 92質量部
1−ブタノール 10質量部
メチルエチルケトン 90質量部
上記塗布液を、ワイヤーバーを用いて高Re位相差膜上に塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて6秒間UV照射し、厚み5.0μmのハードコート層を形成した。
[鮮明度]
オレンジピール状の凹凸の程度の評価はJIS K 7374に準拠してスガ試験機(株)製のICM−ITを使用して、光学櫛を透過した時の像の鮮明度を評価することにより行った。測定は透過方式で入射光角度0°(サンプル表面の垂直方向)で実施し、光学櫛は0.05mmを採用した。70%以上のものをA、70%未満のものをBとした。Aが実用範囲である。結果を表2に示す。
樹脂ミラー反対側面の表面粗さは、樹脂ミラーの観察面とは反対側の面の任意の位置(5箇所)で表面粗さ計(株式会社東京精密製「サーフコム480B」)を用いて、算出規格:JIS B0601 2001規格、カットオフ 0.08μm、測定長 0.08mm、測定速度 0.03mm/秒、の測定条件で測定を行った。算術平均粗さRaを求め、表面粗さとした。
金型の内面の表面粗さは、上記の樹脂ミラーの作製において行った射出成形において、転写シートを金型内に挿入しない状態で射出成形を行い、形成された成形体の、転写シート側に対応する部分の金型内面をサーフコム480Bで測定して算出したものとした。
熱可塑性溶着層の表面粗さは射出成形に用いる前の転写シート表面で測定して算出した。
結果を表2に示す。
Claims (19)
- 観察面、成形樹脂層、熱可塑性溶着層、および偏光反射板をこの順で含み、
前記観察面の反対側の面の表面粗さが10nm以下である樹脂ミラー。 - 前記成形樹脂層が、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、およびシクロオレフィンポリマーからなる群より選択されるいずれか1つ以上のポリマーを含む請求項1に記載の樹脂ミラー。
- 前記熱可塑性溶着層の厚みが1.0μm〜8.0μmである請求項1または2に記載の樹脂ミラー。
- 前記観察面が凸曲面である請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂ミラー。
- 前記偏光反射板がコレステリック液晶層を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂ミラー。
- さらに1/4波長板を含み、
前記成形樹脂層、前記偏光反射板、および前記1/4波長板がこの順に配置されている請求項5に記載の樹脂ミラー。 - 前記観察面と反対側の面側の最外層が前記偏光反射板または前記1/4波長板である請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂ミラー。
- 前記樹脂ミラーが高Re位相差膜または光学機能層を含み、
前記高Re位相差膜または前記光学機能層、前記成形樹脂層、および前記偏光反射板がこの順で配置されており、
前記高Re位相差膜は3000nm以上の正面位相差を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂ミラー。 - ハーフミラーである請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂ミラー。
- 請求項9に記載の樹脂ミラーおよび画像表示装置を含み、前記画像表示装置、前記偏光反射板および前記成形樹脂層がこの順に配置されている画像表示機能付きミラー。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂ミラーの製造方法であって、
前記偏光反射板および前記熱可塑性溶着層を含む転写シートを金型内に配置して前記金型の内面の少なくとも一部に接触させること、および
前記金型に、溶融樹脂を射出して前記成形樹脂層を成形すると同時に前記成形樹脂層に前記熱可塑性溶着層を接着させて、前記成形樹脂層、前記熱可塑性溶着層および前記偏光反射板をこの順で含む積層体を得ることを含み、
前記転写シートが接触する前記内面の少なくとも一部の表面粗さが10nm以下である前記製造方法。 - 前記転写シートが基材フィルムを含み、
前記転写シートが前記金型内に送り込まれて、前記基材フィルム、前記偏光反射板、および前記溶融樹脂がこの順となるように配置され、
前記成形後、前記金型を前記積層体から取り外すこと、および前記積層体の基材フィルムを剥離することを含む請求項11に記載の製造方法。 - 上記成形前において、前記転写シートの前記熱可塑性溶着層の表面粗さが10nm以下である請求項11または12に記載の製造方法。
- 前記樹脂ミラーがさらに高Re位相差膜または光学機能層を含み、
前記成形において、前記高Re位相差膜または前記光学機能層、前記溶融樹脂、前記転写シートがこの順に配置される請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記樹脂ミラーがさらに高Re位相差膜または光学機能層を含み、
前記成形後、前記金型を前記積層体から取り外すこと、および
前記積層体の前記観察面側に前記高Re位相差膜または前記光学機能層を接着することを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法。 - 成形樹脂層の射出成形において偏光反射板を前記成形樹脂層上に転写するための転写シートであって、
前記偏光反射板および熱可塑性溶着層を含み、
厚みが1.0μm〜300μmであり、
前記熱可塑性溶着層の表面粗さが15nm以下である転写シート。 - 前記熱可塑性溶着層の厚みが1.0μm〜8.0μmである請求項16に記載の転写シート。
- 基材フィルムを含み、
前記基材フィルム、前記偏光反射板および前記熱可塑性溶着層がこの順に配置されている請求項16または17に記載の転写シート。 - 前記偏光反射板がコレステリック液晶層を含む請求項16〜18のいずれか一項に記載の転写シート。
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