JP6792276B1 - 磁気刺激装置 - Google Patents

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Abstract

大型は勿論、小型化にも適用でき、通電時の発熱による上昇温度が安全基準より低く、多数回の連続磁気刺激を可能にする磁気刺激装置の実用化を目的とする。磁気刺激装置Aは磁性体コア2、導体1b・1c(1b’・1c’)、及びケーシング4を含む。磁性体コア2は本体部分2aと、本体部分2aから同方向に突出した脚部2b・2cとで構成されている。導体1b・1c(1b’・1c’)は脚部2b・2cのそれぞれの周囲にコイル状に巻設されている。ケーシング4は磁性体コア2と導体1b・1cとを収納する容器である。磁性体コア2の脚部2b・2cは、前記脚部2b・2cを同時に横断する面Kに平行なその横断面積Sb・Scが、本体部分2a側の基部2k・2lから先端2s・2tに向けて、次第に小さくなるように形成されている。

Description

本発明は、運動機能を強化するために、患部の末梢神経、或いは大脳皮質運動野を繰り返し磁気刺激する際に使用される磁気刺激装置に関する。
現在、脳卒中や脊髄損傷により四肢に麻痺を有する患者は200万人に達しており、日本の年齢構成の推移によって、その数は更に増加している。脳損傷によって麻痺が長期間継続すると、廃用症候群によって筋肉の機能が著しく低下し、回復が困難な状態になる。
片麻痺や四肢麻痺による廃用症候群を防止し、筋肉の機能を積極的に回復させるために運動療法によるリハビリテーションは最も重要な治療法とされている。
また、脳血管障害の後遺症や高齢化による嚥下障害も社会問題となっている。現在、国内死亡原因の7.2%を占める肺炎の大多数は、嚥下障害を原因とする誤嚥性肺炎である。この嚥下障害のリハビリテーション方法としても、嚥下に関連する筋を反復的に動かす運動療法によるリハビリテーションが主流である。
末梢神経や大脳皮質運動野を刺激して筋肉の運動を誘発する方法の一つとして磁気刺激法がある。これは、体表の近くに置いたコイルにパルス電流を流し、コイルから発生した磁束により体内に誘導される誘導電流で、神経を刺激して筋肉を動かす方法である。
特許文献1は、指或いは腕を磁気刺激によって連続的に曲げる技術を開示しており、10ミリ秒間隔で磁気パルスを繰り返して腕の神経を磁気刺激すると、パルス数の増加とともに腕が曲がる距離も増すことが示されている。しかしながら、磁気刺激装置には大電流を使用する関係から装置温度が上昇しやすい。
特許文献2は、磁気刺激装置において、空冷により通電時の発熱によるコイルや磁性体コアの温度上昇が少なく、多数回の連続磁気刺激を可能にする技術が開示されている。
特開2010−166971号公報 特開2016−28640号公報
磁気刺激による効果は、磁気刺激の繰り返し回数とともに増す。そして、効果的な磁気刺激を起こすには、コイルに数百アンペア以上の大電流を流す必要がある。このために連続パルスによる磁気刺激は上記のようにコイルの発熱・温度上昇が激しく、空冷だけでは予定の数値までパルス数を増やすことができなかったという問題がある。このコイルの発熱が連続磁気刺激を行うための大きな技術的制約となっている。
また、この磁気刺激装置に対して使用環境からの制約もある。実際のリハビリテーションでは実施可能な時間が一単位で20分と限られ、準備までを含めると実質的なリハビリテーション時間は15分程度である。この時間内で必要な磁気刺激回数を実行することが要求される。現在、要求されている仕様は、1回の磁気刺激当たりの磁気パルスが60発で、15分間で100回の磁気刺激を行うことが求められている。そうすれば、実質的なリハビリテーション時間内の必要磁気パルスは6000発となる。しかも、医療機器の安全基準から、患者の皮膚に長時間接触する機器の表面温度は43℃未満という基準があり、小型の磁気刺激装置(例えば、後述する顎用の装置)においても、当然、これを満たすことが要求される。
この磁気刺激装置には、腕や足などの大きな部位の筋肉を磁気刺激する大型のものだけでなく、顎に適用する場合もある。また、顎に適用する場合でも女性や高齢者には一定比率で顎の小さい患者が含まれており、より小型の磁気刺激装置が必要となる。
装置形状を小さくすると、必然的にコイルも小さくなり、その熱容量が小さくなってコイルの昇温を招く。また、コイルを小さくすることは、磁束の大きさを小さくすることを意味し、この小さいコイルで大型の磁気刺激装置と同等の刺激を得るためには、より高い磁束密度が要求される。即ち、より大きな電流をより小さいコイルに通電することになるため、コイルの上昇温度を更に高くすることになる。
現在の磁気刺激装置は、上記の理由から、機器の表面温度を43℃未満にすることが困難であり、磁束密度も小さくならざるを得なかった。特に、装置を小型化すると機器の表面温度の上昇が激しく、上記仕様を満足するような装置の小型化は実現できなかった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、大型装置は勿論、小型化にも適用でき、通電時の発熱による上昇温度が安全基準より低く、多数回の連続磁気刺激を可能にする磁気刺激装置の実用化を目的としている。
請求項1は、磁気刺激装置Aにおける磁性体コア2の改良に関する(図6)。
本体部分2aと、前記本体部分2aから同方向に突出した脚部2b・2cとで構成された磁性体コア2と、
前記脚部2b・2cのそれぞれの周囲に巻設されたコイル状の導体1b・1c(1b’・1c’)と、
前記磁性体コア2と導体1b・1cとを収納したケーシング4とを含む磁気刺激装置Aにおいて、
前記脚部2b・2cは、前記脚部2b・2cを同時に横断する面Kに平行なその横断面積Sb・Scが、本体部分2a側の基部2k・2lから先端2s・2tに向けて、次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする。
請求項2は、請求項1の磁性体コア2を更に限定したものである。
請求項1に記載の磁気刺激装置Aにおいて、
脚部2b・2cの対向内側面2m・2n間の間隔Lが基部2k・2lから先端2s・2tに向けて次第に拡大するように形成されていることを特徴とする。
請求項3は、磁性体コア2を構成する薄板3の積層方向に関する(図7)。
請求項1又は2に記載の磁気刺激装置Aにおいて、
磁性体コア2は薄板3の積層体で構成されており、その積層面は、磁性体コア2の体部分2aと両脚部2b・2cとを同時に縦断する面Mに平行であることを特徴とする。
請求項4は、磁気刺激装置Aのケーシング4に関するもので、
請求項1〜3のいずれかに記載の磁気刺激装置Aにおいて、
脚部2b・2cの内側面2m・2nと、前記脚部2b・2cに巻設され、前記内側面2m・2nに対向する導体1b・1cの対向面との間に、前記ケーシング4内に取り込まれた冷却気体6が通流する冷却スペース81がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
請求項5は、磁気刺激装置Aの導体1b・1c(第1実施例のストレート接続構造:図11)に関するもので、
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気刺激装置Aにおいて、
導体1b・1cは、脚部2b・2cの先端2s・2tから基部2k・2lに向かって複数層(段)に分割して巻着された線材1b1〜1bn/1c1〜1cnで構成され、
前記線材1b1〜1bn/1c1〜1cnは、隣接する各層(段)毎に接続されるようになっていることを特徴とする。
請求項6は、磁気刺激装置Aの導体1b・1c(第1実施例のクロス接続構造:図12)に関するもので、
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気刺激装置Aにおいて、
導体1b・1cは、脚部2b・2cの先端2s・2tから基部2k・2lに向かって複数層(段)に分割して巻着された線材1b1〜1bn/1c1〜1cnで構成され、
一方の脚部2bの先端2sから基部2kに向かう各層(段)の線材1b1〜1bnは、他方の脚部2cの各層(段)の線材1c2〜1cnに基部2l側から先端2tに向かって順に接続されていることを特徴とする。
請求項7は、磁気刺激装置Aの導体1b’・1c’(第2実施例のストレート接続構造:図13)に関するもので、
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気刺激装置Aにおいて、
導体1b’・1c’は、脚部2b・2cそれぞれに入れ子にて多重に巻着されることにより、内外で複数層に巻設された線材1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’で構成され、
前記線材1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’は、対応する内側同士、外側同士で同層毎に接続されていることを特徴とする。
請求項8は、磁気刺激装置Aの導体1b’・1c’(第2実施例のクロス接続構造:図14)に関するもので、
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気刺激装置Aにおいて、
導体1b’・1c’は、脚部2b・2cそれぞれに入れ子にて多重に巻着されることにより、内外で複数層に巻設された線材1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’で構成され、
前記線材1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’は、内側の線材に対して対応する外側の線材が各層毎に接続されていることを特徴とする。
請求項9は、磁気刺激装置A全体の構成で、
磁性体コア2と、導体1b・1cと、送風用のファン5と、これらを収納したケーシング4とで構成された磁気刺激装置Aにおいて、
磁性体コア2は、本体部分2aと、前記本体部分2aから同方向に突出し、その対向内側面2m・2n間の間隔Lがその基部2k・2lから先端2s・2tに向けて次第に拡大するように形成されている脚部2b・2cとで構成され、且つ複数の薄板3の平面同士が重なり合った積層体で構成されており、
導体1b・1cは、前記脚部2b・2cのそれぞれの周囲にコイル状に巻設されており、
ファン5は、前記脚部2b・2cの対向内側面2m・2n間に向けて配置されていることを特徴とする。
本発明の磁性体コア2は、その脚部2b・2cが本体部分2aの基部2k・2lから先端2s・2tに向けてその横断面積Sb・Scが次第に小さくなるように形成されているので、先端部分からの磁極間磁束Gの漏れを抑制してその先端2s・2tから出る、治療に有効な磁束密度を一定に保つことが出来ると同時に導体1b・1c(1b’・1c’)の昇温抑制にも寄与する(図6)。なお、煩雑さを避けるため、導体1b・1c(1b’・1c’)を単に導体1とすることもある。
また、脚部2b・2cの傾斜した側面と導体1との間にスペースが発生するので、冷却気体6を流すとこのスペースに入り込んで脚部2b・2cを効果的に冷却する。
そして上記において、脚部2b・2cの対向内側面2m・2nの間隔Lが前記基部2k・2lから先端2s・2tに向けて次第に拡大するように形成しておけば、先端2s・2tの対向内側面2m・2n側の部分から発生する磁束G1の磁束密度は間隔Lを拡大しない場合に比べて弱まり、反対側である先端2s・2tの外側部分から発生する磁束G3は間隔Lを拡大しない場合に比べてより深部に届く。その結果、患部の深部(治療対象の筋肉のモーターポイントP)に対して強い磁気刺激が与えられ、皮膚のような患部の浅い部分に対しては弱い磁気刺激となり、患者の不快感を軽減することができる(図3)。
磁性体コア2の薄板3の平面(積層面)を本体部分2aと両脚部2b・2cとを同時に横断する面Mに平行にして積層すれば、脚部2b・2cの層間絶縁により脚部2b・2cに発生すべき渦電流Uが抑制され、脚部2b・2cの昇温が抑制される(図9)。
ケーシング4において、脚部2b・2cの内側面2m・2nと前記脚部2b・2cに巻設された導体1との間に冷却スペース81をそれぞれ設けておけば、ファン5からの冷却気体6によって脚部2b・2cの冷却がより効果的に行える(図8)。
導体1の構造において、導体1を脚部2b・2cの長手方向で複数層(段)に分割しておけば、或いは重ね合わせ方向で多重層に形成しておけば、各層の電流密度が平均化され、部分的な昇温が抑制される。
この場合、各層の接続が「クロス接続」の場合、「ストレート接続」と違い、先端側(内側)のコイルに発生する起電力と基部側(外側)のコイルに発生する逆方向の起電力とが相殺し、導体1の昇温がより効果的に抑制されることになる。
そして、これら(磁性体コア2の形状、積層方向、冷却方法、導体1の構造)を組み合わせることで、小型化したとしても導体1と磁性体コア2の昇温を規制値未満に抑制でき、且つ治療に必要なレベルの磁束密度、刺激回数を確保出来た。
本発明の磁気刺激装置を蓋部側から見た斜視図である。 蓋部側から見た図1の内部構造を示す平断面図である。 図2のX−X断面図である。 (a)本発明の磁気刺激装置の中央縦断面図、(b)その磁性体コアの斜視図、(c)他の磁性体コアの斜視図である。 本発明の磁性体コアを構成する薄板の斜視図である。 本発明の磁性体コアの脚部の水平断面を示す斜視図である。 本発明の磁性体コアの薄板の積層方向を示す斜視図である。 (a)本発明の磁性体コアと導体との配置関係を示す図、(b)本発明の磁性体コアと他の導体との配置関係を示す図である。 図8における渦電流と磁極間磁束の関係を示す図である。 本発明の導体の結線構造の模式図(シングルコイル)である。 (a)導体の結線構造の模式図(第1実施例のストレート接続構造)、(b)その概略正面図である。 (a)導体の結線構造の模式図(第1実施例のクロス接続構造)、(b)その概略正面図である。 (a)導体の結線構造の模式図(第2実施例のストレート接続構造)、(b)その概略正面図である。 (a)導体の結線構造の模式図(第2実施例のクロス接続構造)、(b)その概略正面図である。 本発明の磁性体コアの対向内側面の開き角度と患部の2つの部位における電気刺激の関係図である。
次に、本発明の詳細を実施形態に基づいて説明する。なお、この実施形態は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本発明の明細書の全体に記載されている技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例のみに限定されるものでないことは理解されるべきである。
本発明の連続磁気刺激装置Aは、導体1、磁性体コア2、ケーシング4及び冷却機構7にて構成されている。導体1は磁性体コア2の左右の脚部2b・2cにそれぞれコイル状に巻設されている。
磁性体コア2はU形のもので、直方体又は立方体状の本体部分2aと、前記本体部分2aの同一面で反対側の端部から線対称にて同方向に突出した脚部2b・2cとで構成されている。該磁性体コア2は、後述する薄板3の積層体である。
両脚部2b・2cの形状は、本体部分2aに平行で両脚部2b・2cを横断する面K(例えば、水平面)で切ったその横断面積Sb・Scが先端2s・2tに向かうと共に次第に小さくなるように形成されている。
図4(b)に示す実施例は脚部形状の一例で、脚部2b・2cの対向内側面2m・2nが平面で構成され、その間隔Lが基部2k・2lから先端2s・2tに向けて次第に拡大するように形成されている。この対向内側面2m・2n間の開き角度を「θ」で表す(図5)。
脚部形状を具体的に言えば、先すぼまりの角柱(角錐台)或いは外側面が垂直、対向内側面(平面)が上に行くほど広がるように傾斜した正面視台形状の立体である。
図4(c)に示す実施例は脚部形状の他の例で、対向内側面2m・2nが内側に膨出している。図の例では、先端2s・2tに平行な稜線で3分割されている。それぞれの分割内側面を2m1・2m2・2m3/2n1・2n2・2n3で表す。勿論、3分割は一例で、内側に膨出するような縦断面円弧状の曲面(即ち、円柱の一部を切り取った曲面:図示せず)でもよい。このような形状にすることで、対向内側面2m・2nが平面の場合より、強い刺激を内部に与えることができる。即ち、磁性体コア2の対向内側面2m・2nが内側に膨出していると、磁性体コア2の太い基部2k・2lの磁束密度が飽和しにくくなり、磁性体コア2の先端2s・2tまで内部の磁束密度が高い状態が維持される。その結果、コア先端2s・2tの磁束密度がより強くなる。
上記磁性体コア2は、図5に示す薄い絶縁被膜付き圧延ケイ素鋼板の薄板3を多数枚積層した積層体で構成されている。本実施例で使用した圧延ケイ素鋼板は、厚さが0.35mmのものである。図5に示す薄板3はその一例である。
薄板3は、図7に示すように、磁性体コア2の本体部分2aと両脚部2b・2cとを同時に横断する面M(例えば、垂直面)に平行に(換言すれば、薄板3の平面を重ね合わせて)積層されている。従って、薄板3の形状は、図5に示すように、薄板本体3aの一つの辺から二つの脚部構成突片3b・3cが同じ方向に延出した略U字形のもので、その内側対向辺は基部から先端に向かって次第に間隔が広がるように形成されている。その開き角度をθで示す。
磁性体コア2は、上記開き角度θによって、脚部2b・2cの先端2s・2tから発生する磁束Gの分布が変化する。即ち、図3のように脚部2b・2cの対向内側面2m・2nが開いている場合、対向内側面2m・2n側の先端部分から発生する磁束G1は、開き角度をθ=0の場合に比べて弱くなり、反対側である先端2s・2tの外側部分から発生する磁束G3は開き角度をθ=0の場合に比べてより深部に向かうこととなる。その結果、図3に示すように、身体の浅い部分への刺激は弱まり、身体深部のモーターポイントPはより強く刺激されることになる。
今、身体深部のモーターポイントPを皮膚表面から20mmの深さ、皮膚に存在する表皮侵害受容器の位置が1mmの深さとすると、図15から、開き角度θは9.1°〜17.7°、好ましくは13.5°±2°の範囲とする。ここで、前記皮膚表面からの深さをZとする。
上記θ=9.1°は20mmの深さZにおける磁気刺激の強度(20mmの深さにおける誘導電流密度A/m、即ち、これが当該部分の渦電流の強度)が平坦になり始める位置であり、θ=17.7°は両者が急落する位置である。θ=13.5°でピークを迎える。20mmの深さZにおける磁気刺激の強度は、θ=9.1°〜17.7°の範囲で平坦な値を示す。17.7°を越えると磁気刺激は急落する。
なお、θ=13.5°±2°では20mmの深さZにおける最大磁気刺激の強度(A/m)を含み且つほぼ一定を保つので、この範囲が最も適切な開き角度θである。
1mmの深さにおける磁気刺激は、開き角度θが大きくなるに連れて一貫して漸減する。上記範囲では、開き角度θ=0の場合に比べて皮膚に対する刺激を幾分緩和することになる。
なお、図15は、左縦軸に皮膚から20mmの深さにおける誘導電流密度A/m、右縦軸に1mmの深さにおける誘導電流密度A/m、横軸に磁性体コア2の対向内側面2m・2nの開き角度θ(度)を示す。
導体1の素材となる線材は、長尺で断面長方形又は正方形の平角銅板(帯)で、導体1はこの線材を磁性体コア2の脚部2b・2cの周囲にコイル状に巻き付けたものである。この導体1をコイルと称することもある。導体1の表面には絶縁被膜が形成されている。
導体1それぞれは、内周側と外周側や、上段側と下段側のコイルが互いに接触するように密巻状に巻設されている。(勿論、内外が接触しないようにコイル冷却用スペース(図示せず)を設けて巻設することも可能である。)
導体1の絶縁被膜はウレタン樹脂を用い、導体1表面の放熱を妨げないように薄くした。本実施形態では絶縁被膜の厚みは20μmとした。
導体1に用いられる線材の形状は2種類あり、1つは図8(a)のように脚部2b・2cのほぼ全体を覆う1本の広幅の平角線材(帯)を用いる場合と、図8(b)のように上下の幅が狭い平角線材である。この場合、複数本の平角線材を脚部2b・2cに多層・多重に巻設して用いることになる。導体1を構成する線材の脚部2b・2cへの巻き状態は3通りある。脚部2b・2cにそれぞれ巻かれた複数本の平角線材からなる導体1b・1c(1b’・1c’)の接続方法には後述するように2通りがある。(なお、上下の幅の狭が狭い平角線材に代えて断面円形の線材の使用も可能である。)
(導体1を構成する線材の脚部2b・2cへの巻き状態)
第1は、図8(a)、図10のように脚部2b・2cの周囲に上下幅の大きい1本の線材が内側から外側に向けて何重にも巻き付けられ、最外周のコイル同士が接続され、最内周のコイルがそれぞれ励磁電流供給線10b・10cに接続されている場合である。これを「シングルコイル」という。
第2、第3は、図8(b)のように上下の幅が狭い複数本の平角線材を脚部2b・2cの周囲に上下方向で多層(多段又は入れ子状に多重)に巻設して用いる場合である。これを「並行コイル」「多重コイル」とする。
即ち、導体1を構成する線材の脚部2b・2cへの巻き状態は、「シングルコイル」「並行コイル」「多重コイル」の3パターンがある。
上記第2の「並行コイル」には、図3、図4に示す上下2段の層で構成されたものや、図11、図12に示す多層(多段)に構成されたものがある。
上記第3の「多重コイル」は、図13、図14に示すように上下の幅が狭い複数本の平角線材を脚部2b・2cの周囲に径方向で多層(多重)に巻設して用いる場合である。換言すれば、内外のコイルが入れ子状態で脚部2b・2cの周囲に巻設されている状態である。
脚部2b・2cに対する線材の巻き付け方向であるが、これは「シングルコイル」「並行コイル」「多重コイル」のいずれの場合も、一方の脚部2bの磁場の方向N(S)に対して、他方の脚部2cの磁場の方向S(N)が逆向きとなるように巻きつけられる。即ち、一方の脚部2bの導体1bを時計方向に巻き付けると、他方の導体層1cは反時計方向に巻き付けることになる(図10〜図14)。
次に、「並行コイル」「多重コイル」の線材の各段又は各層の接続構造について説明する。図11、図13は「並行コイル」「多重コイル」の線材の接続構造で、これを「ストレート接続構造」とする。これに対して図12、図14は「並行コイル」「多重コイル」の線材の他の接続構造で、これを「クロス接続構造」とする。それぞれについて説明する。
「並行コイル」の「ストレート接続構造(図11)」は、上下の同じ層(即ち、隣接する層)1b1/1c1〜1bn/1cnの最外周のコイル同士が接続されて1本の線材となり、同じ層の最内周のコイルの端末はそれぞれ集合されて励磁電流供給線10b・10cにそれぞれ接続される。
「並行コイル」の「クロス接続構造(図12)」は、先端2s・2t側の第1層(段)の最外周のコイル1b1/1c1と、基部2k・2l側の第n層のコイル1bn/1cnとがそれぞれクロス接続されて1本の線材となり、第2層の最外周のコイル1b2/1c2と第n−1層のコイル1b(n−1)/1c(n−1)と接続されて1本の線材となる。以下、同じ。この場合は異なる層のコイルが接続されることになる。そして最内周のコイルの端末はそれぞれ集合されて励磁電流供給線10b・10cに接続される。
「多重コイル」の「ストレート接続構造(図13)」では、第1の線材が一方の脚部2bの外周面に沿うようにして先端2sから基部2kに向けて数ターン巻き付ける。この最内層のコイルを1b1’で表す。
続いて、第2の線材が、前記最内層である第1のコイル1b1’の上に重ねるように巻き付けられる。n層の場合は、その上に順次入れ子状に巻設されることになる。最外層のコイルを1bn’で表す。
同様に他方の脚部2cの外周面に第1の線材から第n迄の線残りの部分が順次入れ子状に巻設される。これらコイルを1c1’〜 1cn’で表す。
最内周では最内周のコイル1b1’/1c1’同士が接続され、順次、同じ重畳層のコイル同士が接続され、最外周では最外周のコイル1bn’/1cn’同士が接続される。そして各脚部2b・2cのコイルの端末はそれぞれ集合されて励磁電流供給線10b・10cに接続される。
「多重コイル」の「クロス接続構造(図14)」は、上記と同じ入れ子状であるが、結線構造が異なる。
そして、一方の脚部2bの基部2k側の最内層のコイル1b1’は、他方の脚部2cの最外層の先端2t側のコイル1cn’に接続されて1本の線材となる。同様に一方の脚部2bの基部2k側の2番目の内層のコイル1b2’は、他方の脚部2cの最外層の先端2t側のコイル1c(n−1)’に接続される。一方の脚部2bの基部2k側の最外層であるn番目の内層のコイル1bn’は、他方の脚部2cの最内層の先端2t側のコイル1c1’に接続される。そして各脚部2b・2cに巻設されたコイルの端末はそれぞれ集合されて励磁電流供給線10b・10cに接続される。
脚部2b・2cと導体1b・1cとの関係であるが、図8の実施例では、脚部2b・2cの外側に傾斜している対向内側面2m・2nと導体1b・1cの内周面との間に先端2s・2t方向に漸増する直角三角形状のスペースがそれぞれ発生している。このスペースを冷却スペース81とする。
なお、脚部2b・2cの形状は、上記のような対向内側面2m・2nが外側に傾斜している場合だけでなく、図示していないが脚部2b・2cの外側面が先端2s・2t側に近付くに連れて内側に傾斜している場合もある。この場合、上記直角三角形状のスペースは脚部2b・2cの外側面側に発生する。また、脚部2b・2cの対向内側面2m・2n及び外側面側の両方に傾斜面が設けられる場合もあり、上記三角形状のスペースは脚部2b・2cの内外両側面に沿って発生する。
なお、既述のように導体1の表面には絶縁被膜が形成されていること、後述するように全体としての導体1自体の発熱が小さいところから、従来必要とされていた導体1間に冷却用隙間を設ける必要は特になく、互いに密着させて巻き付けることが可能である。導体1間の冷却用隙間は、特に必要な場合のみ設けられる。図4の図面では、上下のコイル、内外層のコイルの間には間隙が生じるように誇張して描かれているが、実際では殆ど隙間はない。
ケーシング4は、磁性体コア2とコイル状の導体1及び冷却機構7の一部を構成する冷却ファン5などを収納する樹脂製(ここではABS製)のものである。このケーシング4は、上面が開口したケーシング本体46と、その開口を覆う蓋部41、及びハンドル49とで形成されており、図示しないボルトで固定され、前記上面開口が閉塞されている。
ハンドル49はケーシング4の後方に伸びるようにケーシング本体46の底部48に設けられている。ケーシング本体46の前面には、内部スペースに通じる吸気口47が設けられている。
患者の患部に接触する蓋部41の磁束発生面42には、外方に膨出した四角形(長方形)の凸部43が2箇所に平行し、且つケーシング4の前後方向に伸びるように形成されている。そして、凸部43の内側の面は凸部43に対応して浅く凹んでいる。この四角形の凸部43の内面側の凹部には磁性体コア2の脚部2b・2cの先端2s・2tが嵌め込まれている(図3)。
また、蓋部41の前面には横長のスリットの吹き出し口44が上下方向にわたって複数段で穿設されている。そしてこの吹き出し口44は、磁性体コア2の脚部2b・2cの間の空間に一致して設けられている。そして、蓋部41の背面には、コード取付部45が後方に突出するように設けられている。このコード取付部45には給電コード50が接続されている。
ケーシング4内に収納された磁性体コア2は、ケーシング本体46の底部48に立設された柱部分を介してサポート51により蓋部41に押圧されている。そして、このサポート51と底部48の間には吸気口47に繋がる吸気スペース83が設けられている。
そして、磁性体コア2の背面側のファン収納スペース84でこの吸気スペース83と、上記排気側の冷却スペース81とが繋がっている。
この磁性体コア2の背面側のファン収納スペース84にはファン5が設置されている。これら吸気口47、冷却スペース81、ファン収納スペース84、吸気スペース83、吹き出し口44及びファン5とで冷却機構7が構成される。(ファン5に代えて給気ホース(図示せず)を吸気口47に接続してもよい。)
次に、本装置Aの作用について説明する。使用する本装置Aは図8(a)、図10に示す「シングルコイル」とし、他については「シングルコイル」との相違を中心に説明する。
図10において、一方の励磁電流供給線10bから励磁電流(パルス電流或いは交流電流)を供給すると、励磁電流は一方の脚部2bに巻かれた導体2bに反時計方向に流れ、続いて他方の脚部2cに巻かれた導体1cに時計方向に流れ、他方の励磁電流供給線10cに流れる。
これにより一方の脚部2bの先端2sの磁極はSとなり、他方の脚部2cの先端2sの磁極はNとなる。そして、一方向の励磁電流が流れ終わると、該励磁電流は反転して他方の励磁電流供給線10cから反対方向の励磁電流が流れ、これが他方の脚部2cに巻かれた導体1cに時計方向に流れ、続いて一方の脚部2bに巻かれた導体1bに反時計方向に流れ、一方の励磁電流供給線10bに流れる。これにより他方の脚部2cの先端2sの磁極はSとなり、一方の脚部2bの先端2tの磁極はNとなり、磁極が反転する。これを所定周期で繰り返す。磁性体コア2の両先端2s・2t間に磁束Gが発生する。
発生した磁束Gは、患部(図では、顎の下)の深部では開き角度θ=0に比べてより深くまで到達する磁束G3、皮膚では開き角度θ=0に比べて弱められた磁束G1が作用する。そしてその作用として深部では強められた渦電流U3、皮膚では弱められた渦電流U1が発生し、当該部分を磁気刺激する。
ここで従来の磁性体コアと比較すると、従来の磁性体コアの脚部は、その横断面積が一定の角柱であったので、先端に向かうに連れて脚部間での磁極間磁束の漏れが発生していた。このため、この漏れ磁束によって導体1の先端2s・2t側の部分に局所的な渦電流が発生し、この部分の温度が規制値以上に高くなっていた。
本装置Aの磁性体コア2の脚部2b・2cは、本体部分2a側の基部2k・2lから先端に向けてその横断面積Sb・Scが次第に小さくなるように形成されているので、先端部分の内側面からの磁極間磁束の漏れが抑制される。その結果、導体1に渦電流Uが発生せず、導体1の先端側の部分の昇温が抑制されるようになった。これと同時に上記のような磁束漏れを抑制できるようになったので、先端2s・2tから出る磁束密度を一定に保つことが出来た。これはエネルギーロスを減らすもので、装置の小型化に寄与する。
特に、図3のように脚部2b・2cの対向内側面2m・2nが開いている場合、上記のように開き角度θ=0に比べて、対向内側面2m・2n側の先端部分から発生する磁束G1の密度が弱く、反対側である外側の先端部分から発生する磁束G3が届く深さが深くなるので、開き角度θ=0に比べて、深部(治療対象の筋肉のモーターポイントP)に対してより強い磁気刺激が与えることが出来、皮膚のような患部の浅い部分に対しては弱い磁気刺激となるので、患者に与える不快感を軽減できる。
これによりトレーニングでは、痛みを生じさせることなく顎の筋肉(或いは、腕の筋肉)が大きく収縮し、嚥下用や腕の筋肉の効果的なトレーニングが可能になる。
また、磁性体コア2で、これを薄板3の平面同士が重なるように積層すれば、即ち、磁性体コア2の積層面(平面)を本体部分2aと両脚部2b・2cとを同時に横断する面(垂直面)Mに平行にして積層すれば、導体1b・1cの通電時に一方の脚部2b(2c)と他方の脚部2c(2b)との間で発生する磁極間磁束の方向が薄板3の積層方向に対して垂直となっているために脚部2b・2cの層間絶縁(薄板3の絶縁膜)により分断され、渦電流Uの発生が、抑制される(図9)。その結果、脚部2b・2cの昇温が抑制される。
そして通電中、冷却機構7は作動を続け(即ち、ファン5や給気ホースによる給・排気が行われる。)、吸気口47から冷却気体(空気)6が吸気スペース83に流れ込み、ファン5によって冷却スペース81に送り込まれる。この冷却スペース81を流れる冷却用の空気6は導体1や磁性体コア2の脚部2b・2cに直接接触して導体1や磁性体コア2の脚部2b・2cの熱を奪い、吹き出し口44から外部に吹き出される。
なお、冷却スペース81の前後は導体1で阻まれているため、冷却用の空気6が該導体1にぶつかって冷却スペース81内で十分な乱流を生じ、その結果、高い冷却効果を発揮する。
以上のように、磁性体コア2の積層方向と形状、及び冷却構造を改善することで、室温25℃において、磁気パルスを15分間連続して発生させた場合(総パルス数6000発)でも機器温度は基準の43℃未満でとなり、患者に熱的な危険を生じさせないように出来た。
次に、上記の改善に加えて結線構造の改善と昇温抑制の関係に付いて説明する。
図8(a)のような「シングルコイル」の場合、励磁電流を流すと、既述のように磁性体コア2の両脚部2b・2cの先端側のインダクタンスが基部側のインダクタンスより部分的に低くなる。そのために、脚部1b・1cの先端部分に面する上下幅広の導体1b・1cの先端側の部分に集中して励磁電流が流れる。その結果、「シングルコイル」では、上記空冷を中心に磁性体コア2の積層方向と形状の改善により装置の昇温抑制を行っている。
そこで取られた昇温抑制のための導体1b・1cの改善に付いて説明する。この場合において、導体1b・1cを脚部2b・2cの長手方向で複数層(段)に分割しておけば、或いは径方向で多重層に形成しておけば、「シングルコイル」と異なり、先端2s・2t側に位置する部分への電流密度の集中が緩和され、各層の電流密度が平均化されて各層の昇温が更に抑制される。以下、その作用を簡単に説明する。
導体1b・1cに励磁電流を通電すると、一方の脚部2bの先端2sにN極(S極)が現れ、他方の脚部2cの先端2tにその反対のS極(N極)が現れ、交互に極性が切り替わり両極間に磁束Gが発生する。この点は、本発明において共通する。
(並行コイルのストレート構造:図11)
第1の結線構造(並行コイルのストレート構造)では、通電時、脚部2b・2cの先端部分のインダクタンスが基部2k・2lの部分より小さくなる。それ故、脚部2b・2cに巻き付けられたコイル1b1/1c1〜1bn/1cnにおいて、励磁電流は先端2s・2t側から基部2k・2l側に向かうにつれて減少する。即ち、脚部2b・2cの先端部分に巻き付けられた第1層1b1/1c1には、それ以下の基部2k・2l側の層1b2〜1bn/1c2〜1cnより多くの励磁電流が流れる。しかしながら、縦長幅広帯状の一体物である「シングルコイル」に比べてこの場合は、導体1b・1cが複数の線材に分割されているため、電流密度の偏りが軽減される。
なお、本発明の磁性体コア2は、既述のように脚部2b・2c間からの磁極間漏れ磁束が大幅に抑制されているため、各導体層1b1〜1bn/1c1〜1cnにおける渦電流の発生は小さい。
その結果、「並行コイルのストレート構造」は「シングルコイル」に比べて軽減された電流密度の偏りより、導体1b・1cの発熱が「シングルコイル」に比べて大幅に抑制される。
(並行コイルのクロス構造:図12)
次に、第1実施例の第2の結線構造(並行コイルのクロス構造)について説明する(図12)。導体1b・1cに励磁電流を流すと、インダクタンスの関係から、上記のように第1層1b1/1c1にやや偏って励磁電流が流れようとするが、この第1層1b1/1c1に接続されている基部2k・2l側の第n層1bn/1cnは第1層1b1/1c1に比べて励磁電流が流れにくいので、第n層1bn/1cnが律速となって第1層1b1/1c1に流れる励磁電流が抑制される。換言すれば、第1層1b1/1c1に流れる励磁電流は第n層1bn/1cnと同じになる。これにより全体としてほぼ均一で抑制された励磁電流が各層の導体1中を流れる。その結果、上記第1結線構造に比べてより発熱を抑制することができる。
なお、(並行コイル)としては図3、図4の上下2層構造が含まれ、「ストレート結線」と「クロス結線構造」が適用される。
(多重コイルのストレート構造:図13)
次に第2実施例の第1の結線構造(多重コイルのストレート構造)について説明する。導体1b’・1c’は、これを構成する線材が既述のように、大径から細径まで直径の異なるコイルスプリング状のもので、脚部2b・2cに密着多重に巻かれて構成されている。即ち、導体1b’・1c’の細径のものは太径のものの内側に入れ子状態で配置されている。そして、第1実施例の「ストレート構造」と同様、一方の脚部2b’の各導体層1b1’〜1bn’を構成する線材が、他方の脚部2c’の各導体層1c1’〜1cn’の線材にそれぞれ並列接続されている。
この導体1b’/1c’に通電すると、内外の各導体層1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’には脚部2b・2cの上から下(又は下から上)に向かって励磁電流が流れる。この時、上記のようにインダクタンスの関係から上記のように各導体層1b1’〜1bn’/1c1’〜1cn’において脚部2b・2cの基部側部分が律速となり、電流密度の偏りが相当程度解消されることになる。
(多重コイルのクロス構造:図14)
第2実施例の第2結線構造(多重コイルのクロス構造)は、一方の脚部2bに多重に巻設された最内側の第1層1b1’は、前記他方の脚部2cの最外層の第n層1cn’に接続され、一方の脚部2bの最外層の第n層1bn’は、他方の脚部2cの最内側の第1層1c1’に接続され、逆順に接続されている。
上記に示すように、通電時、脚部2b・2cの先端部分のインダクタンスが基部側より小さくなるが、この影響は径方向においても先端部分に近い内側の層程、顕著に現れる。
換言すれば、第1層1b1’/1c1’の先端部分と、最外層1bn’/1cn’の先端部分とを比較すると、第1層1b1’/1c1’の方が大きな影響を受ける。その結果、第1層1b1’/1c1’を流れる励磁電流は、最外層1bn’/1cn’のそれよりも若干強くなる。それ故、このように逆順に接続されているこの場合は、インダクタンスの影響が最も小さい第n層1bn’(1cn’)の基部側が律速となり、電流密度の偏りが少なく昇温もよりよく抑制できる。
以上から各層の接続が「クロス接続」の場合、「ストレート接続」と比べて先端側(内側)の線材に発生する起電力と基部側(外側)の線材に発生する逆方向の起電力とが相殺し、導体1b・1cの昇温がより抑制されることになる。
以上から、既述のように磁性体コア2の積層方向と形状、及び冷却構造の改善に加えて結線構造を改善することで、例えば、顎の小さい患者用の小型の磁気刺激装置Aで、仕様の15分を大幅に下回る6分40秒で100回(6000発)の磁気刺激が可能となった。これにより、患者及び施術者の負担を大幅に軽減できるようになった。
A:連続磁気刺激装置、G・G1・G3:磁束、L:内側面間の間隔、K・M:面、P:モーターポイント、θ:開き角度、1・1b・1c(1b’・1c’):導体、1b1〜1bn/1c1〜1cn(1b1’〜1bn ’/1c1’〜1cn ’):コイル(層、段)、2:磁性体コア、2a:本体部分、2b・2c:脚部、2k・2l:基部、2m・2n:(対向)内側面、2s・2t:先端、3:薄板、3a:薄板、3b・3c:脚部構成突片、4:ケーシング、6:冷却気体(空気)、7:冷却機構、7b:ファン、10b・10c:励磁電流供給線、41:蓋部、42:磁束発生面、43:凸部、44:吹き出し口、45:コード取付部、46:ケーシング本体:47:吸気口、48:底部、49:ハンドル、50:給電コード、51:サポート、81:冷却スペース、83:吸気スペース、84:ファン収納スペース

Claims (8)

  1. 本体部分と、前記本体部分から同方向に突出した脚部とで構成された磁性体コアと、
    前記脚部のそれぞれの周囲に巻設されたコイル状の導体と、
    前記磁性体コアと導体とを収納したケーシングとを含む磁気刺激装置において、
    前記脚部の対向内側面間の間隔が基部から先端向けて次第に拡大するように形成されることで、前記脚部は、前記脚部を同時に横断する面に平行なその横断面積が本体部分側の基部から先端に向けて、次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする磁気刺激装置。
  2. 磁性体コアは薄板の積層体で構成されており、その積層面は、磁性体コアの本体部分と両脚部とを同時に縦断する面に平行であることを特徴とする請求項1に記載の磁気刺激装置。
  3. 脚部の内側面と、前記脚部に巻設され、前記内側面に対向する導体の対向面との間に、前記ケーシング内に取り込まれた冷却気体が通流する冷却スペースがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気刺激装置。
  4. 導体は、脚部の先端から基部に向かって複数層に分割して巻着された線材で構成され、
    前記線材は、隣接する各層毎に接続されるようになっていることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気刺激装置。
  5. 導体は、脚部の先端から基部に向かって複数層に分割して巻着された線材で構成され、
    一方の脚部の先端から基部に向かう各層の線材は、他方の脚部の各層の線材に基部側から先端に向かって順に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気刺激装置。
  6. 導体は、脚部それぞれに入れ子にて多重に巻着されることにより、内外で複数層に巻設された線材で構成され、
    前記線材は、対応する内側同士、外側同士で同層毎に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気刺激装置。
  7. 導体は、脚部それぞれに入れ子にて多重に巻着されることにより、内外で複数層に巻設された線材で構成され、
    前記線材は、内側の線材に対して対応する外側の線材が各層毎に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気刺激装置。
  8. 磁性体コアと、導体と、送風用のファンと、これらを収納したケーシングとで構成された磁気刺激装置において、
    磁性体コアは、本体部分と、前記本体部分から同方向に突出し、その対向内側面間の間隔がその基部から先端に向けて次第に拡大するように形成されている脚部とで構成され、且つ複数の薄板の平面同士が重なり合った積層体で構成されており、
    導体は、前記脚部のそれぞれの周囲にコイル状に巻設されており、
    ファンは、前記脚部の対向内側面間に向けて配置されていることを特徴とする磁気刺激装置。
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