以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図に適宜示される矢印UPを画像形成装置10の上方向とし、矢印FRを画像形成装置10の前方向とする。また、図1における紙面手前方向を画像形成装置10の左方向とし、後述する定着装置70の加熱ロール64及び加圧ロール66の回転軸方向を左右方向とする。
図1に示されるように、画像形成装置10の筐体としての画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という)12の内部には、入力される画像データに対して画像処理を行う画像処理部16が設けられている。画像処理部16は、入力された画像データをイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の階調データに処理するようになっており、処理された階調データを受け取って、レーザー光Lにより画像露光する露光装置18が装置本体12内の中央側に設けられている。
また、露光装置18の上方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成部の一例としての画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kが、水平方向に対して傾斜する方向に間隔をおいて配置されており、装置本体12に対して着脱可能とされている。なお、以下において、Y、M、C、Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y、M、C、Kの英字を省略する。
各画像形成ユニット20は、同様に構成されており、予め決められた速度で回転駆動される円柱状の像保持体22と、像保持体22の周面を帯電する一次帯電用の帯電部材24と、帯電した像保持体22の周面に露光装置18の画像露光によって形成された静電潜像を予め決められた色のトナーで現像してトナー画像として可視化する現像装置26と、トナー画像を転写した後の像保持体22の周面を清掃する清掃ブレード(図示省略)と、を含んで構成されている。
更に、装置本体12の内部には、各現像装置26にトナーを供給するトナー供給装置14Y、14M、14C、14Kが設けられている。また、露光装置18には、4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kに対して共通に構成された4つの半導体レーザー(図示省略)が設けられており、各半導体レーザーからレーザー光Lが階調データに応じて出射されるようになっている。
なお、各半導体レーザーから出射されたレーザー光Lは、図示しないシリンドリカルレンズを介して、回転多面鏡であるポリゴンミラー(図示省略)に照射され、そのポリゴンミラーによって偏向走査されるようになっている。そして、ポリゴンミラーによって偏向走査されたレーザー光Lは、図示しない結像レンズ及び複数枚のミラーを介して、像保持体22の周面に照射され、その像保持体22の周面を走査露光するようになっている。
また、露光装置18には、その上方に配置された4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの各現像装置26等からトナー等が落下するおそれがあるため、その周囲が、略直方体形状のフレーム28によって密閉されている。そして、フレーム28の上部には、4本のレーザー光Lを、それぞれ各像保持体22の周面に向けて透過させる透明なガラス製のウインドウ29が設けられている。
一方、各画像形成ユニット20の上方には、一次転写ユニット30が設けられている。一次転写ユニット30は、無端状の中間転写ベルト32と、中間転写ベルト32が巻き掛けられるとともに回転駆動して中間転写ベルト32を矢印方向に周回させる駆動ロール34と、中間転写ベルト32が巻き掛けられるとともに中間転写ベルト32に張力を付与する張力付与ロール36と、張力付与ロール36の上方に設けられて中間転写ベルト32と従動回転する従動ロール38と、中間転写ベルト32を挟んで各像保持体22の反対側に配置された各一次転写ロール40Y、40M、40C、40Kと、を含んで構成されている。
そして、この4つの一次転写ロール40Y、40M、40C、40Kによって、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの各像保持体22の周面に順次形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が、中間転写ベルト32の外周面に多重に転写される構成となっている。なお、中間転写ベルト32を挟んで駆動ロール34の反対側には、中間転写ベルト32の外周面を清掃する清掃ブレード42が設けられている。
また、中間転写ベルト32を挟んで従動ロール38の反対側には、二次転写ロール44が設けられており、中間転写ベルト32と二次転写ロール44との接触部が二次転写位置とされている。したがって、中間転写ベルト32の外周面に多重に転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像は、その中間転写ベルト32によって搬送され、二次転写位置にて、記録媒体の一例としてのシート部材Pに二次転写されるようになっている。
また、二次転写位置に対してシート部材Pの搬送方向下流側(以下、単に「下流側」という)には、シート部材Pに転写されたトナー画像を、そのシート部材Pに定着する定着装置70が設けられている。定着装置70は、左右方向に長い筐体68(図2参照)を有しており、その筐体68内には少なくとも加圧ロール66が設けられている。
定着装置70は、加熱ロール64と加圧ロール66との接触部をシート部材Pが通過した際に、そのシート部材Pを加熱及び加圧することにより、そのシート部材Pにトナー画像を定着するようになっている。また、定着装置70の下流側には、トナー画像が定着されたシート部材Pを装置本体12の上部に設けられた排出部48に排出する排出ロール46が設けられている。
一方、装置本体12内の下側には、シート部材Pが収容される給紙部材50が設けられている。そして、給紙部材50の下流側には、給紙部材50に収容されているシート部材Pを搬送経路へ送り出す給紙ロール52が設けられており、給紙ロール52の下流側には、シート部材Pを1枚ずつ分離して搬送する一対の分離ロール54が設けられている。
また、分離ロール54の下流側には、転写タイミングを合わせる一対の位置合わせロール56が設けられている。これにより、給紙部材50から供給されたシート部材Pは、回転する位置合わせロール56によって中間転写ベルト32と二次転写ロール44とが接触する二次転写位置へ、予め決められた転写タイミングで送り出される構成になっている。
また、排出ロール46の前方側には、シート部材Pの両面に画像を形成する(両面印刷する)場合に、そのシート部材Pを再度位置合わせロール56へ搬送するための搬送ロール58が設けられている。この搬送ロール58により、シート部材Pが反転経路に沿って搬送されて表裏が反転され、位置合わせロール56へ再度搬送されるようになっている。
また、装置本体12の前方側には、開口部12Aが形成されており、装置本体12を構成するカバー部材60によって開閉されるようになっている。カバー部材60は、その下端部が、左右方向を軸方向とする支軸62によって回転可能に支持されており、図示の矢印方向に開閉される構成になっている。
ここで、画像形成装置10による画像形成工程について簡単に説明する。
まず、画像処理部16から露光装置18に各色の階調データが順次出力され、露光装置18から各色の階調データに応じて出射された各レーザー光Lが、帯電部材24によって帯電された各像保持体22の周面に走査露光される。これにより、各像保持体22の周面に静電潜像が形成される。
各像保持体22の周面に形成された静電潜像は、各現像装置26によって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像として可視化される。そして、各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kの上方に配置された一次転写ユニット30の各一次転写ロール40Y、40M、40C、40Kにより、像保持体22の周面に形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が、周回する中間転写ベルト32の外周面に多重に転写される。
一方、シート部材Pが、給紙部材50から給紙ロール52及び分離ロール54によって搬送経路に搬送され、更に位置合わせロール56によって予め決められた転写タイミングで二次転写位置へ搬送される。そして、周回する中間転写ベルト32の外周面に多重に転写された各色のトナー画像が、その二次転写位置にて、シート部材Pに二次転写される。
トナー画像が転写されたシート部材Pは、定着装置70へ搬送され、シート部材Pに転写されたトナー画像が、加熱ロール64及び加圧ロール66によって加熱及び加圧されることにより、シート部材Pに定着される。そして、トナー画像が定着されたシート部材Pは、装置本体12の上部に設けられた排出部48に、排出ロール46によって排出される。
なお、シート部材Pの両面に画像を形成する(両面印刷する)場合には、定着装置70によって片面にトナー画像が定着されたシート部材Pを、排出ロール46によって排出部48上に排出させずに、その搬送方向を切り替えて、搬送ロール58によって反転経路へ搬送する。
そして、反転経路に沿って搬送されて表裏が反転されたシート部材Pが、再度位置合わせロール56へ搬送されて、シート部材Pの裏面にトナー画像が転写及び定着される。こうして、両面に画像が形成された(両面印刷された)シート部材Pは、排出ロール46によって排出部48上に排出される。
<第1実施形態>
次に、定着装置70において、シート部材Pの搬送経路及び反転経路の各一部を構成するガイド部の一例としてのガイドリブ72と、その搬送経路を狭める方向へガイドリブ72を付勢する第1実施形態に係る付勢機構80について詳細に説明する。
図2に示されるように、定着装置70の筐体68の上部には、同様の形状に形成された複数のガイドリブ72が、左右方向(加熱ロール64及び加圧ロール66の回転軸方向)に並んで形成されている。各ガイドリブ72は、後方(一方)を向く各周面によって第1搬送面74を形成し、上斜め前方(他方)を向く各周面によって第2搬送面76を形成している。
そして、各ガイドリブ72の第1搬送面74が、加熱ロール64及び加圧ロール66によってトナー画像が定着されたシート部材Pが排出部48へ搬送されるときに通る搬送経路の一部を構成し、各ガイドリブ72の第2搬送面76が、シート部材Pが両面印刷されるときに通る反転経路の一部を構成している。
また、筐体68の左右方向両端部(複数のガイドリブ72の左右方向外側)には、上方を向く左右一対の平板状の被押圧部78が設けられている。各被押圧部78は、カバー部材60で開口部12Aを閉塞したときに、後述する左右一対の付勢機構80の押圧部材86によって上方から押圧される構成になっている(図3参照)。
そして、各被押圧部78が上方から押圧されることにより、筐体68が撓み変形し、各ガイドリブ72の第1搬送面74が、その第1搬送面74と対向して配置された固定搬送面(図示省略)に向かって(搬送経路を狭める方向へ)若干移動させられる構成になっている。これにより、第1搬送面74と固定搬送面とで構成されている搬送経路の一部の幅が、予め決められた幅(例えば普通紙が通れる幅)に設定されるようになっている。
図3に示されるように、付勢機構80は、中央部が回転軸82に支持され、一端部及び他端部が、それぞれ上下逆方向に揺動可能に構成されたアーム部84と、アーム部84の一端部に設けられた押圧部材86と、アーム部84の他端部に設けられ、アーム部84の他端部を上方へ向けて(アーム部84の一端部を下方へ向けて)付勢する付勢手段90と、で構成されている。
押圧部材86は、左右方向を回転軸方向として回転自在に支持された円板状に形成されており、付勢手段90の付勢力によって下方へ付勢されることで、被押圧部78を押圧するようになっている。そして、第1実施形態に係る付勢機構80の付勢手段90は、上端部が、アーム部84の他端部に取り付けられ、下端部が、画像形成装置10に設けられた支持部材88に取り付けられた1枚(又は複数枚でもよい)の皿バネ92で構成されている。
図6に示されるように、皿バネ92は、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値、例えば普通紙と厚紙との境界となる境界値N以上の変位が加えられると、弾性変形して、その境界値Nから先の仮想線で示す付勢力(後述する調整機能が付いていない付勢手段を用いた場合の付勢力)よりも弱い付勢力となるように構成されており、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値(境界値N)以上の変位が加えられない状態になると、元の形状に復元する構成になっている。
このように、皿バネ92は、例えば普通紙よりも厚い厚紙類のシート部材Pがガイドリブ72の第1搬送面74を押し退けて搬送経路を通過しているときには、そのガイドリブ72に対する付勢力を弱める方向に自動的に調整される調整機能付きの付勢手段90となっている。
以上のような構成とされた第1実施形態に係る付勢機構80を備えた定着装置70において、次にその作用について説明する。
シート部材Pが例えば普通紙の場合には、加熱ロール64及び加圧ロール66によってトナー画像が定着されたシート部材Pは、複数のガイドリブ72で形成された第1搬送面74と固定搬送面とで構成された搬送経路を通過する際に、その複数のガイドリブ72で形成された第1搬送面74を上方へ向かって押し退けることなく通過する。
しかしながら、図3(A)に示されるように、シート部材Pの厚みが例えば普通紙よりも厚い場合(例えば厚紙の場合)には、複数のガイドリブ72で形成された第1搬送面74が、厚みの厚いシート部材Pによって上方へ向かって押し退けられる。つまり、厚みの厚いシート部材Pは、第1搬送面74を上方へ向かって押し退けつつ搬送経路を通過する。
ここで、上記調整機能が付いていない付勢手段(図示省略)であると、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、その付勢手段の付勢力に各ガイドリブ72の反発力が加わるため、シート部材Pに対する第1搬送面74の押圧力が相対的に増加する。そのため、厚みの厚いシート部材Pには、複数のガイドリブ72の周面に沿った所謂リブ筋が形成されてしまい、そのリブ筋に起因して画像不良が発生してしまうおそれがある。
しかしながら、上記調整機能付きの付勢手段90、即ち皿バネ92であると、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、その皿バネ92に対して、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられることになるため、皿バネ92が弾性変形し、その付勢力を自動的に弱める。したがって、そのシート部材Pに対して第1搬送面74の押圧力(反発力)が相対的に増加するのが抑制される。
つまり、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、皿バネ92の付勢力が自動的に低減されるため(被押圧部78に対する押圧部材86の押圧力が自動的に低減されるため)、そのシート部材Pに対する第1搬送面74の押圧力が普通紙のときと余り変わらなくなる。したがって、厚みの厚いシート部材Pに、複数のガイドリブ72の周面に沿ったリブ筋が形成されるのが抑制又は防止され、そのリブ筋に起因する画像不良の発生が抑制又は防止される。
なお、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過した後は、皿バネ92が元の形状に復元し、その付勢力が自動的に元に戻る。そのため、図3(B)に示されるように、両面印刷時には、第2搬送面76の位置が普通紙のときの同じ位置に配置される。つまり、シート部材Pは、その厚みが普通紙より厚くなっても、反転経路へスムーズに搬送される。
また、付勢手段90が、皿バネ92であると、付勢手段90が、皿バネ92を用いないで構成されている場合に比べて、シート部材Pが第1搬送面74を押し退けて通過するときに、その第1搬送面74を構成する複数のガイドリブ72の反発力を弱める方向に調整し易い。また、付勢手段90が、皿バネ92であると、設置スペースがコンパクトで済む利点もある。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る付勢機構80について詳細に説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
図4に示されるように、第2実施形態に係る付勢機構80の付勢手段90は、アーム部84の他端部に形成されたカム面85と、そのカム面85を押圧するコイルバネ94と、で構成されている。カム面85は、左右方向から見て(加熱ロール64及び加圧ロール66の回転軸方向から見て)下方へ突出された略三角形状に形成されており、最下端面85Aを頂点部分として、その両側に傾斜カム面85Bを有している。
コイルバネ94は、その上端部に、カム面85に接触させる平坦面95Aを有するカム部95が取り付けられており、通常時には、そのカム部95の平坦面95Aがカム面85の最下端面85A(略三角形状の頂点部分)に接触する構成になっている(図4(B)参照)。なお、コイルバネ94の下端部は、画像形成装置10に設けられた支持部材88に取り付けられている。
したがって、アーム部84のカム面85により、コイルバネ94に、その付勢方向(上方向)と反対方向(下方向)に、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられると、カム部95の平坦面95Aがカム面85の一方(回転軸82から離れる方向側である前側)の傾斜カム面85Bに沿って相対的に移動し、そのカム部95の平坦面95Aがカム面85の最下端面85Aに接触していたときよりも上方へ移動する。
つまり、カム面85により、カム部95を介してコイルバネ94を下方へ押圧していた押圧力が低減され、コイルバネ94の弾性復元力が低減される。これにより、アーム部84の他端部に対するコイルバネ94による付勢力が、図6において仮想線にて示されている付勢力よりも弱い付勢力となる構成になっている。
なお、アーム部84のカム面85により、コイルバネ94に、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられない状態になると、カム部95の平坦面95Aは、上記一方の傾斜カム面85Bに沿って相対的に移動し、再びカム面85の最下端面85Aに接触する元の状態に復帰する構成になっている。
このように、カム面85及びコイルバネ94も、例えば普通紙よりも厚い厚紙等のシート部材Pがガイドリブ72の第1搬送面74を押し退けて搬送経路を通過しているときには、そのガイドリブ72に対する付勢力を弱める方向に自動的に調整される調整機能付きの付勢手段90となっている。
以上のような構成とされた第2実施形態に係る付勢機構80を備えた定着装置70において、次にその作用について説明する。
図4(A)に示されるように、シート部材Pの厚みが例えば普通紙よりも厚い場合(例えば厚紙の場合)には、複数のガイドリブ72で形成された第1搬送面74が、厚みの厚いシート部材Pによって上方へ向かって押し退けられる。つまり、厚みの厚いシート部材Pは、第1搬送面74を上方へ向かって押し退けつつ搬送経路を通過する。
ここで、上記調整機能付きの付勢手段90は、カム面85と、そのカム面85を押圧するコイルバネ94と、で構成されている。したがって、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、そのコイルバネ94に対して、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられることになる。
これにより、コイルバネ94のカム部95の平坦面95Aが、カム面85の上記一方の傾斜カム面85Bに沿って相対的に移動し、コイルバネ94の付勢力を自動的に弱める。よって、そのシート部材Pに対して第1搬送面74の押圧力(反発力)が増加するのが抑制される。
つまり、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、コイルバネ94の付勢力が自動的に低減されるため(被押圧部78に対する押圧部材86の押圧力が自動的に低減されるため)、そのシート部材Pに対する第1搬送面74の押圧力が普通紙のときと余り変わらなくなる。したがって、厚みの厚いシート部材Pに、複数のガイドリブ72の周面に沿ったリブ筋が形成されるのが抑制又は防止され、そのリブ筋に起因する画像不良の発生が抑制又は防止される。
なお、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過した後は、カム部95の平坦面95Aが、カム面85の上記一方の傾斜カム面85Bに沿って相対的に移動し、カム面85の最下端面85Aに接触する元の状態に復帰するため、コイルバネ94による付勢力が自動的に元に戻る。そのため、図4(B)に示されるように、両面印刷時には、第2搬送面76の位置が普通紙のときの同じ位置に配置される。つまり、シート部材Pは、その厚みが普通紙より厚くなっても、反転経路へスムーズに搬送される。
また、付勢手段90が、カム面85及びカム面85を押圧するコイルバネ94で構成されていると、付勢手段90が、カム面85及びカム面85を押圧するコイルバネ94を用いないで構成されている場合に比べて、シート部材Pが第1搬送面74を押し退けて通過するときに、その第1搬送面74を構成する複数のガイドリブ72の反発力を弱める方向に調整し易い。また、付勢手段90が、カム面85及びカム面85を押圧するコイルバネ94で構成されていると、コイルバネ94は皿バネ92よりも安価であるため、コスト的に有利となる利点もある。
<第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る付勢機構80について詳細に説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
図5に示されるように、第3実施形態に係る付勢機構80の付勢手段90は、上面が、アーム部84の他端部における下側の角部84Aに摺動可能に接触し、下端部が、画像形成装置10に設けられた支持部材88に取り付けられた1枚の板バネ96で構成されている。なお、以下において、支持部材88に取り付けられた板バネ96の下端部を支点97とし、アーム部84の角部84Aが接触する板バネ96の上面の一部を作用点98とする。
板バネ96は、その付勢方向と反対方向に、アーム部84の角部84Aによって、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられると、そのアーム部84の角部84Aが板バネ96の上面に沿って支点97側へ摺動し(アーム部84の角部84Aの板バネ96に対する接触位置が変わり)、図6において仮想線にて示されている付勢力よりも弱い付勢力となるように構成されている。
すなわち、アーム部84の角部84Aが、元の接触位置から例えば図5(A)に示される距離Dだけ支点97側へ相対的に移動すると、その距離D分、支点97から作用点98までの距離が短くなる(モーメントが短くなる)ため、板バネ96による付勢力が弱まる構成になっている。
なお、板バネ96は、その付勢方向と反対方向に、アーム部84の角部84Aによって、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられない状態になると、そのアーム部84の角部84Aが、元の接触位置まで(支点97側とは反対側へ)相対的に摺動する構成になっている。
このように、板バネ96も、例えば普通紙よりも厚い厚紙等のシート部材Pがガイドリブ72の第1搬送面74を押し退けて搬送経路を通過しているときには、そのガイドリブ72に対する付勢力を弱める方向に自動的に調整される調整機能付きの付勢手段90となっている。
以上のような構成とされた第3実施形態に係る付勢機構80を備えた定着装置70において、次にその作用について説明する。
図5(A)に示されるように、シート部材Pの厚みが例えば普通紙よりも厚い場合(例えば厚紙の場合)には、複数のガイドリブ72で形成された第1搬送面74が、厚みの厚いシート部材Pによって上方へ向かって押し退けられる。つまり、厚みの厚いシート部材Pは、第1搬送面74を上方へ向かって押し退けつつ搬送経路を通過する。
ここで、上記調整機能付きの付勢手段90は、アーム部84の角部84Aが相対的に摺動する板バネ96で構成されている。したがって、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、その板バネ96に対して、その付勢方向と反対方向に、予め決められた値(図6に示される境界値N)以上の変位が加えられることになる。
これにより、アーム部84の角部84Aが板バネ96の上面を支点97側へ相対的に摺動し(支点97から作用点98までの距離を短くし)、板バネ96の付勢力を自動的に弱める。よって、そのシート部材Pに対して第1搬送面74の押圧力(反発力)が増加するのが抑制される。
つまり、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過する際には、板バネ96の付勢力が自動的に低減されるため(被押圧部78に対する押圧部材86の押圧力が自動的に低減されるため)、そのシート部材Pに対する第1搬送面74の押圧力が普通紙のときと余り変わらなくなる。したがって、厚みの厚いシート部材Pに、複数のガイドリブ72の周面に沿ったリブ筋が形成されるのが抑制又は防止され、そのリブ筋に起因する画像不良の発生が抑制又は防止される。
なお、厚みの厚いシート部材Pが搬送経路を通過した後は、アーム部84の角部84Aが板バネ96の上面を支点97側とは反対側へ相対的に摺動し、元の接触位置に復帰するため、板バネ96による付勢力が自動的に元に戻る。そのため、図5(B)に示されるように、両面印刷時には、第2搬送面76の位置が普通紙のときの同じ位置に配置される。つまり、シート部材Pは、その厚みが普通紙より厚くなっても、反転経路へスムーズに搬送される。
また、付勢手段90が、アーム部84の角部84Aとの接触位置が変わる板バネ96であると、付勢手段90が、アーム部84の角部84Aとの接触位置が変わる板バネ96を用いないで構成されている場合に比べて、シート部材Pが第1搬送面74を押し退けて通過するときに、その第1搬送面74を構成する複数のガイドリブ72の反発力を弱める方向に調整し易い。また、付勢手段90が、板バネ96であると、板バネ96は皿バネ92よりも安価であるため、コスト的に有利となる利点もある。
以上、本実施形態に係る定着装置70について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る定着装置70は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、付勢手段90は、図3に示される皿バネや図5に示される板バネ96、図4に示されるカム面85及びコイルバネ94に限定されるものではない。
また、シート部材Pは、第1搬送面74を押し退けつつ搬送経路を通過する記録媒体であればよく、厚紙に限定されるものではない。また、アーム部84の一端部に設けられる押圧部材86は、図示のものに限定されるものではなく、例えばアーム部の一端部に、左右方向から見て略円弧状に下方へ突出する円弧面(図示省略)が一体に形成された構成とされていてもよい。
また、第3実施形態において、アーム部84の他端部の形状を適宜設計変更し、シート部材Pが第1搬送面74を上方へ向かって押し退けつつ搬送経路を通過する際に、アーム部84の角部84Aが板バネ96を下方へ押圧せずに支点97側へ摺動するように構成されていてもよい。
また、第1搬送面74と固定搬送面とで構成された搬送経路の途中に、シート部材Pが通過することを検知する検知手段が設けられている定着装置(図示省略)の場合でも、本実施形態を適用することが可能である。なお、検知手段としては、例えばシート部材Pが一端部に当たることで他端部を中心に回転する検知爪と、その検知爪が回転したことを検知する光学センサーと、を含んで構成されるものが一例として挙げられる。