以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まずは、本発明の基本的な構成について説明する。
<基本的構成>
図1から図5は、本発明の実施例としてのプリント装置の基本的な構成の説明図である。本例のプリント装置は、プリント媒体としてのシートを供給するためのシート供給装置と、そのシートに画像をプリントするプリント部と、を含むインクジェットプリント装置である。尚、説明のために図中に示すように座標軸を設定する。すなわち、ロールRのシート幅方向をX軸方向、後述するプリント部400においてシートが搬送される方向をY軸方向、重力方向をZ軸方向とする。
図1に示すように、本例のプリント装置100には、長尺の連続シート(ウェブと呼ぶこともある)であるシート1をロール状に巻回したロールR(ロールシート)を上段と下段の2カ所のロール保持部にそれぞれセットすることが可能である。それらのロールRから選択的に引き出されたシート1に画像がプリントされる。ユーザは、操作パネル28に備わる各種のスイッチなどを用いて、シート1のサイズ指定、オンライン/オフラインの切り換えなど、プリント装置100に対する各種コマンドなどを入力することができる。
図2は、プリント装置100の要部の概略断面図である。2本のロールRに対応する2つの供給装置200が上下に配備されている。供給装置200によってロールRから引き出されたシート1は、シート搬送部(搬送機構)300によって、シート搬送経路に沿って画像をプリント可能なプリント部400に搬送される。プリント部400は、インクジェット式のプリントヘッド18からインクを吐出することによって、シート1に画像をプリントする。プリントヘッド18は、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出する。プリントヘッド18はインクジェット方式のみに限定されず、またプリント部400のプリント方式も限定されず、例えば、シリアルスキャン方式あるいはフルライン方式などであってもよい。シリアルスキャン方式の場合には、シート1の搬送動作と、シート1の搬送方向と交差する方向におけるプリントヘッド18の走査と、を伴って画像をプリントする。フルライン方式の場合には、シート1の搬送方向と交差する方向に延在する長尺なプリントヘッド18を用い、シート1を連続的に搬送しつつ画像をプリントする。
ロールRは、その中空穴部にスプール部材2が挿入された状態で供給装置200のロール保持部にセットされ、そのスプール部材2がロール駆動用のモータ33(図5参照)によって正転および逆転駆動される。供給装置200には、駆動部3、ガイド体としてのアーム部材(移動体)4、アーム回転軸5、センサユニット6、揺動部材7、従動回転体(接触体)8,9、分離フラッパー(上側ガイド体)10、およびフラッパー回転軸11が備えられている。接触体としての従動回転体8,9と、それに連動してシート1をガイドするガイド体としてのアーム部材4と、は、ロール(R)の外周面に圧接して、ロールRから送り出されるシート1をガイドするガイドを構成する。
搬送ガイド12は、供給装置200から引き出されるシート1の表裏面をガイドしつつ、そのシート1をプリント部400へ導く。搬送ローラ14は、後述する搬送ローラ駆動用のモータ35(図5参照)によって、矢印D1,D2方向に正転および逆転される。ニップローラ15は、搬送ローラ14の回転に応じて従動回転可能であり、ニップ力調整用のモータ37(図5参照)によって、搬送ローラ14に対して接離可能、かつニップ力の調整が可能である。搬送ローラ14によるシート1の搬送速度は、ロールRの回転によるシート1の引き出し速度よりも高く設定されており、これによりシート1にバックテンションを与えて、それを張った状態のまま搬送することができる。
プリント部400のプラテン17はシート1の位置を規制し、カッタ20は、画像がプリントされたシート1を切断する。ロールRのカバー42は、画像がプリントされたシート1が供給装置200に戻ることを防止する。このようなプリント装置100における動作は、後述するCPU201(図5参照)によって制御される。
図3は供給装置200の説明図であり、図3(a)におけるロールRは、その外径が比較的大きい状態にある。搬送ガイド12には、アーム回転軸5によって、アーム部材(移動体)4が矢印A1,A2方向に回転可能に取り付けられている。アーム部材4の上部には、ロールRから引き出されるシート1の下面をガイドするガイド部4b(下側ガイド体)が形成されている。アーム部材4と駆動部3の回転カム3aとの間には、アーム部材4を矢印A1方向に押圧するねじりコイルばね3cが介在されている。回転カム3aは、後述する押圧力調整用のモータ34(図5参照)によって回転され、その回転位置に応じて、ねじりコイルばね3cがアーム部材4を矢印A1方向に押圧する力が変化する。シート1の先端部(先端を含むシート1の一部)を、アーム部材4と分離フラッパー10との間を通してシート供給パス内にセットするときには、回転カム3aの回転位置に応じて、ねじりコイルばね3cによるアーム部材4の押圧力が3段階に切り換えられる。すなわち、比較的小さな力(弱ニップの押圧力)による押圧状態と、比較的大きな力(強ニップの押圧力)による押圧状態と、押圧力の解除状態と、に切り換えられる。
アーム部材4には揺動部材7が揺動自在に取り付けられ、その揺動部材7には、ロールRの周方向にずれて位置する第1および第2の従動回転体(回転体)8,9が回転可能に取り付けられている。これらの従動回転体8,9は、ロールRの外形に応じて移動し、アーム部材4に対する矢印A1方向の押圧力によって、重力方向の下方からロールRの外周部を圧接する。すなわち、従動回転体8,9は、ロールRの水平方向の中心軸よりも重力方向の下方から、ロールRの外周部に圧接する。その圧接力は、アーム部材4を矢印A1方向に押圧する押圧力に応じて変更される。
それぞれが揺動部材7を持った複数のアーム部材4が、X軸方向における位置が異なるように設けられている。揺動部材7には、図3(b)に示すように軸受け部7aと軸留め部7bとが設けられており、これらによって、アーム部材4の回転軸4aが所定のガタ付きをもって受け入れられる。
軸受け部7aは、揺動部材7の重心位置に設けられており、揺動部材7がX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向のそれぞれにおいて安定した姿勢となるように回転軸4aに支持される。また、回転軸4aがガタ付きをもって受け入れられているため、X軸方向におけるどの位置の揺動部材7も、アーム部材4に対する矢印A1方向の押圧力によって、ロールRの外周部に沿うように変位する。このような構成(イコライズ機構)により、ロールRの外周部に対する第1および第2の従動回転体8,9の圧接姿勢の変化が許容される。この結果、シート1と第1および第2の従動回転体8,9との接触領域が常に最大となるように保たれ、かつシート1に対する押圧力が均等化されて、シート1の搬送力のバラツキを抑えることができる。従動回転体8,9がロールRの外周部に圧接することにより、シート1の弛みの発生が抑制されて、その搬送力が増強される。
プリント装置100の本体(プリンタ本体)には、アーム部材4の上方に位置する分離フラッパー10がフラッパー回転軸11を中心として矢印B1,B2方向に回転可能に取り付けられている。分離フラッパー10は、その自重によってロールRの外周面に当接して軽く押圧する構成となっている。ロールRをさらに強く押圧する必要がある場合には、ばねなどの付勢部材による付勢力を用いてもよい。分離フラッパー10におけるロールRとの接触部分には、押圧力がシート1に及ぼす影響を抑えるために、従動コロ10aが回転自在に備えられている。また、分離フラッパー10の先端の分離部10bは、ロールRからシートの先端部を分離しやすくするために、ロールRの表面に極力近い位置まで延在するように形成されている。
シート1は、従動回転体8,9の上を通ってロールRから引き出され、その下面がアーム部材4の上部のガイド部4bによってガイドされてから、分離フラッパー10とアーム部材4との間に形成される供給パスを通して供給される。このように、ロールRの外周部に対して下方から従動回転体8,9を圧接させ、それらの従動回転体8,9の上を通って引き出されるシート1の下面をガイド部4bによってガイドする。これにより、シート1の自重を利用して、シート1をスムーズに供給することができる。また、ロールRの外径に応じて、従動回転体8,9とガイド部4bが移動することにより、ロールRの外径に拘らず、ロールRからシート1を確実に引き出して搬送することができる。
本実施形態における装置の特徴の一つは、シートの自動ローディング機能(自動給紙機能)である。自動ローディングにおいては、ユーザが未使用のロールRを装置にセットすると、装置がロールRをシート供給時(給紙時)とは逆の方向(逆方向または第2方向と称する、図3(a)の矢印C2の方向)に回転させながらシートの先端を検出する。次いで、装置がシート供給時の回転方向(順方向または第1方向と称する、図3(a)の矢印C1の方向)にロールRを回転させて、ロールRから分かれたシートの先端部を自動的に送り出す。センサユニット6は、ロールRの外周面からシート1の先端部が剥がれてシート剥離(シート分離)したことを検出する先端検出センサを含むユニットである。センサユニット6により検出されたシート1の先端部分は、アーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に自動的に挿入されて送り出される。この自動ローディング機能の、より詳細な手順については後述する。
また、本例のプリント装置100は、上下2つの供給装置200を備えており、一方の供給装置200からシート1を供給している状態から、他方の供給装置200からシート1を供給する状態に切り換えることができる。このような場合、一方の供給装置200は、それまで供給していたシート1をロールRに巻き戻す。そのシート1の先端は、それがセンサユニット6もしくはセンサユニット6の近傍に設けた別のシート端部センサによって検出される位置まで退避される。
図4は、ロールRの外径が比較的小さいときにおける供給装置200の説明図である。アーム部材4は、ねじりコイルばね3cによって常に矢印A1方向に押圧されているため、ロールRの外径の減少に応じて矢印A1方向に回転する。また、ロールRの外径の変化に応じて回転カム3aを回転させることにより、ロールRの外径の変化に拘らず、ねじりコイルばね3cによるアーム部材4の押圧力を所定の範囲に維持することができる。また、分離フラッパー10も常に矢印B1方向に押圧されているため、ロールRの外径の減少に応じて矢印B1方向に回転する。これにより分離フラッパー10は、ロールRの外径が小さくなった場合にも搬送ガイド12との間に供給パスを形成して、下面10cによってシート1の上面をガイドする。このように、ロールRの外径の変化に応じて、アーム部材4と分離フラッパー10が回転することにより、ロールRの外径の如何に拘らず、それらの間にほぼ一定の大きさの供給パスが形成される。
図5は、プリント装置100における制御系の構成例を説明するためのブロック図である。プリント装置100のCPU201は、ROM204に記憶された制御プラグラムに従って、供給装置200、シート搬送部300、およびプリント部400を含むプリント装置100の各部を制御する。CPU201には、操作パネル28から、シート1の種類、幅、および種々の設定情報などが入出力インターフェイス202を介して入力される。またCPU201は、外部インターフェイス205を介して、パーソナルコンピュータなどのホスト装置を含む種々の外部装置29に接続されており、外部装置29との間において、プリントデータなどの種々の情報の授受を行う。またCPU201は、RAM203に対して、シート1に関する情報などの書き込みおよび読み出しをする。モータ33は、スプール部材2を介してロールRを正転および逆転させるためのロール駆動用のモータであり、ロールRを回転駆動可能な駆動機構(回転機構)を構成する。押圧力調整用のモータ34は、アーム部材4に対する押圧力を調整するために回転カム3aを回転させるモータであり、搬送ローラ駆動用のモータ35は、搬送ローラ14を正転および逆転させるためのモータである。ロールセンサ32は、ロールRが供給装置200にセットされたときに、ロールRのスプール部材2を検出するためのセンサである。ロール回転量センサ36は、スプール部材2、つまりロールRの回転量を検出するためのセンサ(回転角度検出センサ)であり、例えば、ロールRの回転量に応じた数のパルスを出力するロータリーエンコーダである。
<シートの供給準備処理>
図6は、ロールRのセットから始まるシート1の供給準備処理を説明するためのフローチャートである。
プリント装置100のCPU201は、アーム部材4を「弱ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(弱ニップ状態)で待機しており、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(ステップS1)。本例においては、ロールセンサ32がロールRのスプール部材2を検出したときに、ロールRがセットされたと判定する。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(ステップS2)。次いで、CPU201は、シート1の先端部を、アーム部材4と分離フラッパー10との間を通してシート供給パス内にセットするシート先端セット処理を実行する(ステップS3)。このシート先端セット処理(自動ローディング)によって、シート1の先端部がシート供給パス内にセット(挿入)される。シート先端セット処理の詳細については後述する。
その後、CPU201は、ロール駆動用のモータ33によりロールRを矢印C1方向に回転させて、シート1の供給を開始する(ステップS4)。シート1の先端がセンサユニット6によって検出されたときに(ステップS5)、CPU201は、搬送ローラ14を矢印D1方向に正転させて、シート1の先端をピックアップした後に、モータ33およびモータ35を停止する(ステップS6)。その後、CPU201は、アーム部材4を矢印A1方向に押圧する押圧力を解除して、第1および第2の従動回転体8,9をロールRから離間(ニップ解除状態)させる(ステップS7)。
その後、CPU201は、シート搬送部300内においてシートが斜めに傾いたまま搬送(斜行)されたか否かを判定する。具体的には、シート搬送部300内においてシート1を所定量搬送させて、そのときに生じる斜行量を、プリントヘッド18を搭載するキャリッジもしくはシート搬送部300に備わるセンサによって検出する。その斜行量が所定の許容量よりも大きい場合には、シート1にバックテンションを与えながら、搬送ローラ14およびロールRの正転および逆転を伴ってシート1のフィードとバックフィードとを繰り返す。このような動作により、シート1の斜行を補正する(ステップS8)。このように、シート1の斜行の補正時、およびシート1に対する画像のプリント動作時に、供給装置200をニップ解除状態とすることにより、従動回転体8,9が、シート1の斜行の補正精度および画像のプリント精度に及ぼす影響を回避することができる。その後、CPU201は、シート搬送部300によって、シート1の先端をプリント部400におけるプリント開始前の待機位置(定位置)まで移動させる(ステップS9)。これにより、シート1の供給準備が完了する。その後、シート1は、ロールRの回転を伴ってロールRから引き出され、シート搬送部300によってプリント部400に搬送される。
以下、本発明の実施形態として、このようなプリント装置100の基本的構成における図5のシート先端セット処理(ステップS20)について説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態においては、センサユニット6として、シート1の下向きの表面(ロールにおいて外周面となっていたシート外面であり且つプリント部でプリントされる面)との対向間隔に応じて出力が変化する光学センサを用いる。そして、ロールRの逆方向(矢印C2方向)の回転中におけるセンサユニット6の出力の変化に基づいて、シート1の先端部がロールRの外周面から剥がれて分離したことを検出した後に、ロールRを矢印C1の順方向に回転させてシート1を供給する。
本例のセンサユニット6には、図7のように、LEDなどの発光部6cと、フォトダイオードなどの受光部6dと、が内蔵されている。発光部6cからロールRへ向けて照射された光は、ロールRにおけるシート1の表面にて反射されてから、受光部6dによって検知される。発光部6cから照射されて受光部6dによって検出される光は、ロールRにおけるシート1の表面から反射される正反射光を含む。受光部6bの出力値は、センサユニット6とシート1の表面との対向間隔に応じて変化する。つまり、受光部6bの出力値は、センサユニット6とシート1の表面との間の距離が小さいほど大きくなり、その距離が大きいほぼ小さくなる。センサユニット6は、センサユニット6とシート1の表面との間の距離に応じて検出信号の出力値が変化する構成であればよく、発光部6cおよび受光部6dは、LEDおよびフォトダイオードのみに限定されない。また、受光部6dによって検出される光は、正反射光のみに限定されない。センサユニット6はCPU201(図5参照)に接続されており、CPU201は、任意のタイミングでセンサユニット6の検出結果を取得する。
図8および図9は、センサユニット6を用いるシート先端セット処理(図6中のステップS3)の説明図である。前述したように、シート先端セット処理(自動ローディング)は、ロールRがセットされた後に、そのロールRのシート1の先端部をアーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に自動的に挿入して送り出す処理である。アーム部材4は、シート1の表面(外面)と対向し、分離フラッパー10はシート1の裏面(内面)と対向する。
CPU201は、シート先端セット処理に開始に先立ち、まずは、ロールRがセットされたか否かを判定する(図6中のステップS1)。本例においては、ロールセンサ32がロールRのスプール部材2を検出したときに、ロールRがセットされたと判定する。CPU201は、ロールRがセットされた後に、アーム部材4を「強ニップの押圧力」によって矢印A1方向に押圧する状態(強ニップ状態)に切り換える(図6中のステップS2)。
その後のシート先端セット処理(図6中のステップS3)において、CPU201は、まず、ロールRを矢印C2の逆方向に回転(逆回転)させる(ステップS11)。そして、ロールRの逆回転中に、センサユニット6の検出信号の出力(センサ出力)がHレベルの範囲内(第1レベル範囲内)からLレベルの範囲内(第2レベル範囲内)に変化したか否かを判定する(ステップS12)。図9(a)は、センサ出力の波形の一例の説明図であり、ロールRの逆回転の開始時におけるロールRの回転角度を0度とする。
本例の場合は、ロールRが170度逆回転したときに、図9(b)のように、シート1の先端部がセンサユニット6に近づき、図9(a)のように、センサ出力がLレベルからHレベルに変化する。具体的には、ロールRが170度逆回転したときに、シート1の先端部が分離フラッパー10の従動コロ10aの位置を通過して、シート1の先端部がアーム部材4の上に自重落下し、シート1の先端部が図9(b)のようにセンサユニット6に近づく。その後、さらにロールRが200度逆回転したときに、図9(c)のように、シート1の先端部がセンサユニット6の上を通過して、センサユニット6は再びロールRの表面からの反射光を受光してセンサ出力がLレベルに変化する。その後、さらにロールRが角度θ逆回転したときに、シート1の先端部が従動回転体8の位置を越える。
HレベルとLレベルは、センサユニット6の出力強度を2レベルに分割したものであり、センサユニット6とロールRのシート1との対向間隔が小さいときにHレベルとなり、それが大きいときにLレベルとなる。これらのレベルを分割する境界としての閾値THは、予め設定されて、プリンタ本体あるいはセンサユニット6内部の不揮発性メモリに保存されている。閾値THは、センサ出力L0,H0に基づいて設定される。すなわち、ロールRを1回転以上(例えば、複数回)回転させたときのセンサ出力の最小レベルと最大レベルとの中間の値を基準として設定される。例えば、最小レベルのセンサ出力をL0とし、最大レベルのセンサ出力をH0とした場合、閾値THは、これらのセンサ出力L0,H0の中間値(TH=(H0+L0)/2)として設定することができる。センサユニット6のばら付きなどにより閾値THが変動するため、個々のセンサユニット6毎にセンサ出力L0,H0を測定し、その測定値に基づいて閾値THを設定することが望ましい。
図9(b)のように、シート1の先端部がセンサユニット6を通過したときには、センサ出力がHレベルからLレベルへ変化し、その後、センサ出力のLレベルが一定期間継続した場合には、ロールRの回転を停止させる(ステップS13,S14)。具体的には、センサ出力がHレベルからLレベルへ変化してから、さらに一定角度AだけロールRが逆回転する一定期間において、センサ出力がLレベルを継続したか否かを判定し、それが継続したときにロールRの回転を停止させる。一定角度Aは、角度θよりも小さい角度であり、本例の場合は、角度θの半分の角度(A=θ/2)である。ステップS14においてロールRの回転が停止されたときには、センサユニット6と従動回転体8との間のアーム部材4上に、シート1の先端部が位置する。したがって、その後にロールRを矢印C1に正回転させることによって(ステップS15)、アーム部材4と分離フラッパー10との間のシート供給パス内に、シート1の先端部を自動的に挿入して送り出すことができる(自動ローディング)。
ロールRが1周以上(360度以上)逆回転してもセンサ出力がHレベルからLレベルへ変化しなかった場合、およびロールRが1周以上逆回転してもセンサ出力のLレベルを一定期間継続しなかった場合には、ステップS16からステップS17に移行する。つまり、ロールRが1回転する間にシート1の先端部がロールRの外周面から分離しなかった場合、およびロールRが1回転する間に、ロールRの外周面から分離したシート1の先端がセンサユニット6の上から離れなかった場合には、ステップS17に移行する。ステップS17においては、ロールRの回転を停止し、自動ローディング(自動給紙)が実行できなかったことをユーザに通知して、ユーザに対して、シート1の先端部をシート供給パス内に挿入するための手動操作(手動給紙)を促す。
以上のように、本実施形態においては、ロールRがセットされた後に、自動的にシート1の先端部をシート供給パス内に挿入して送り出すことができる。したがってユーザは、ロールRをセットした後に、手動によってシート1の先端部をシート供給パス内に挿入する必要がなく、ロールRのセット時の作業負担が軽減される。
さらに本実施形態においては、シート1の先端部の剥離量が小さい場合にジャムが発生しやすくなることを考慮して、図10のように、シート1の先端部を検出するシートセンサ31を備える。
例えば、光沢紙のように、摩擦係数の大きい受容層を表面と裏面に有するシート1を搬送する場合には、シート1の先端部の裏面(内面)とロールRの外周面との間の摩擦力によって、シート1の先端部の剥離量が小さくなるおそれがある。このような剥離量は、シート1の種類、環境温度、および環境湿度等の条件により異なる。シート1の先端部の剥離量が不十分であった場合には、前述したように、センサユニット6によってシート1の先端部の剥離を検出した後に、ロールRを正転させてシート1の先端部をシート供給パス内に導いたしても、ジャムが発生するおそれがある。すなわち、剥離量が不十分であった場合には、図10(a)のように、分離フラッパー10の従動コロ10aの外周面におけるロールRに近い部分にシート1の先端部が当たる。その結果、図10(b)のように、シート1の先端部が従動コロ10aとロールRとの間に挟まれて、シート1の先端部が分離できなくなる。その状態のまま、ロールRの正転を続行した場合には、図10(c)のように、シート1の先端部が揺動部材7に衝突してジャムが発生するおそれがある。
本例のシートセンサ31は搬送ガイド12上に配備されており、センサユニット6よりも、シート1の供給方向の下流側に位置する。シートセンサ31は、シート1の先端部の剥離が検出されてからロールRの正転を開始した後に、そのシート1の先端部を検出する。シート1の先端部がシートセンサ31によって検出されるべき時刻に、その先端部が検出されなかったときには、その先端部の分離が失敗したと判定し、その先端部が揺動部材7に衝突する前にタイムアウトエラーを出力する。タイムアウトエラーの出力により、ロールRの回転が停止され、ユーザに対してシート1の先端部の剥離の失敗が通知される。さらに本例において、分離フラッパー10の角度からロールRの巻径を検知するための検出部を備え、ロールRを回転させるときの角速度と、ロールRの巻径と、に基づいて、シート1の先端部の搬送速度を制御できる。
図11は、シート1の先端部を送り出すためにロールRが正転を開始したときからの動作の説明図である。前述したように、センサユニット6によってシート1の先端部の剥離が検出されたことを条件として、ロールRが正転を開始する。図11において、時間軸の上側に、シート1の先端部の分離が成功したときの動作を示し、時間軸の下側に、シート1の先端部の分離に失敗したときの動作を示す。距離LA(第1距離)は、シート1の先端部がセンサユニット6によって検出されてから、その先端部がシートセンサ31によって検出されるまでの間におけるシート1の搬送距離である。つまり、距離LAは、センサユニット6の検出位置と、シートセンサ31の検出位置(所定位置)と、の間の距離である。距離LB(第2距離)は、シート1の先端部がセンサユニット6によって検出されてから、その先端部が従動回転体9に衝突するまでの間におけるシート1の搬送距離である。つまり、距離LBは、ロールRの矢印C1の正転方向における、センサユニット6の検出位置から、ロールRの外周面に対する従動回転体9の圧接位置(当接位置)までの距離である。以下の説明におけるシート搬送速度は、ロールRの角速度ではなく、単位時間当たりにシート1の先端部が搬送される距離とする。
図11(a)のように、距離LA,LBの関係がLA>LBとなるように、シートセンサ31の配備位置を設定した場合には、タイウムアウトエラーを出力する前に、シート1の先端部が揺動部材7に衝突してしまう。図11(b)のように、距離LA,LBの関係がLA<LBとなるように、シートセンサ31の配備位置を設定した場合には、シート1の先端部が揺動部材7に衝突する前にタイムアウトエラーを出力することができる。したがって、図11(b)のように、シートセンサ31の配備位置を設定する。
また、シート1の先端部がセンサユニット6によって検出されてから、その先端部が揺動部材7に衝突するまでの間におけるシート1の搬送距離LBは、ロールRの巻径に応じて異なる。紙管などの管にシート1が巻回されることによってロールRが構成されている場合には、シート1の残りが少なくなって、ロールRの巻径が紙管などの管の外径に近づくにしたがって、ロールRの巻径が小さくなる。ロールRの巻径が最小となったときに、図11(c)のように、距離LBが最小距離LB(1)となる。また、ロールRの巻径が最大のときに、距離LBが最大距離LB(2)となる。仮に、最大距離LB(2)を基準として、距離LAおよびタイムアウトエラーの出力タイミングを設定した場合には、ロールRの巻径が最小となったときに、タイムアウトエラーを出力する前に、シート1の先端部が揺動部材7に衝突する可能性がある。したがって、距離LBは、ロールRの巻径が最小となったときの最小距離LB(1)よりも小さくなるように設定する。
距離LAは、図12(a)中の破線のように、センサユニット6とシートセンサ31との間における搬送ガイド12のガイド面に沿う距離として、おおよそ定義することができる。また距離LBは、図12(b)中の破線のように、センサユニット6と揺動部材7との間におけるロールRの外周面に沿う距離として、おおよそ定義することができる。シート1の先端部の剥離状態は、シート1の種類、環境温度、および環境湿度などによって変化する。そのため、シート1の先端部が揺動部材7に衝突するときに、その先端部が図13のように下方を向く剥離状態のときには、その先端部は比較的早く揺動部材7に衝突する。このような場合には、距離LBは、図12(b)中の距離LBよりも短くなる。このようなシート1の先端部の挙動を考慮して、距離LBは、最小距離LB(1)よりも小さくすることが望ましい。
前述したように、シート1の先端部の剥離が検出されてからロールRの正転を開始した後に、シート1の先端部がシートセンサ31によって検出されるべき時刻に、その先端部が検出されなかったときに、タイムアウトエラーを出力する。そのタイムアウトエラーは、シート1の先端部が揺動部材7に衝突する前に出力される。シート1の先端部がシートセンサ31によって検出されるべき時刻TAは、CPU201によって算出される。すなわち、その時刻TAは、ロールRの正転の開始後にセンサユニット6がシートの先端部を検出した時点を基準として、ROM204に記憶されている距離LAと、シート1の先端部の搬送速度と、に基づいて算出される。また、シート1の先端部が揺動部材7に衝突する時刻TBは、ROM204に記憶されている最小距離LB(1)と、シート1の先端部の搬送速度と、に基づいてCPU201により算出される。タイムアウトエラーを出力する時刻(タイムアウト時刻)TCは、これらの時刻TA,TBの間に設定する。また、ロールRの巻径を検出するための検出部を備えない場合には、ロールRの巻径が最小であることを前提として時刻TA,TBを算出し、それらの時刻TA,TBの間にタイムアウト時刻TCを設定すればよい。これにより、シート1の先端部の分離が成功しているにも拘わらず、その先端部がシートセンサ31によって検出される前に、タイムアウトエラーを出力する事態を回避することができる。
図14は、シート1の先端部の分離が成功したか否かを判定する分離判定処理を説明するためのフローチャートである。
前述したように、CPU201は、シート1の先端部の剥離が検出されてからロールRの正転を開始する。その後、CPU201は、センサユニット6がシート1の先端部を検知した時点から、経過時間の計時を開始する(ステップS21)。具体的には、所定のサンプリングタイムの経過毎に経過回数をカウントする。CPU201は、そのサンプリングタイム毎に、シートセンサ31がシート1の先端部を検出したか否かを判定する(ステップS22)。CPU201は、シート1の先端部が検出された場合には、シート1の先端部の分離が成功したと判断して、シート1を供給する通常の処理に移行する(ステップS24)。CPU201は、シート1の先端部が検出されない場合には、ステップS21にて経過時間の計時を開始してから、タイムアウト時刻TC以上経過したか否かを判定する(ステップS23)。タイムアウト時刻TC以上経過していなければ先のステップS22に戻り、タイムアウト時刻TC以上経過している場合には、タームアウトエラーを出力する(ステップS25)。
(変形例)
センサユニット6として光学センサに限らず、検出対象であるシート外面までの距離に応じてその出力値が変化するセンサであれば、光学センサ以外の距離センサを用いることができる。例えば、対象物までの距離を非接触で検出する超音波センサや静電センサなどの距離センサを用いることもできる。
プリント装置は、2本のロールシートのそれぞれに対応する2つのシート供給装置を備える構成のみに限定されず、1つあるいは3つ以上のシート供給装置を備える構成であってもよい。また、プリント装置は、シート供給装置から供給されるシートに対して画像をプリントする構成であればよく、インクジェットプリント装置のみに限定されない。また、プリント装置のプリント方式および構成も任意である。例えば、プリントヘッドの走査と、シートの搬送動作と、を繰り返して画像をプリントするシリアルスキャン方式、あるいは長尺なプリントヘッドと対向する位置に対してシートを連続的に搬送して画像をプリントするフルライン方式のいずれであってもよい。
また本発明は、プリント媒体としてのシートをプリント装置に供給するシート供給装置の他、種々のシート供給装置に対して適用可能である。例えば、スキャナやコピー機などの読取装置に読み取り対象のシートを供給する装置、およびシート状の加工材料を切断装置などの加工装置に供給する装置などに対しても適用することができる。このようなシート供給装置は、プリント装置、読取装置、加工装置などの装置とは別に構成することができ、またシート供給装置用の制御部(CPU)を備えてもよい。
本発明は、紙、フィルム、および布などを含む種々のシートの供給装置、および、その供給装置を含むプリント装置および画像の読取り装置などの種々のシート処理装置として広く適用することができる。画像の読取り装置は、供給装置から供給されたシートの記録画像を読取りヘッドによって読取る。また、シート処理装置は、プリント装置および画像の読取り装置のみに限定されず、供給装置から供給されたシートに対して種々の処理(加工、塗布、照射、検査など)を施す装置であればよい。シートの供給装置を独立した装置として構成する場合には、その装置にCPUを含む制御部を備えることができる。また、シートの供給装置をシート処理装置に備える場合には、それらの供給装置およびシート処理装置の少なくとも一方にCPUを含む制御部を備えることができる。