次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る流量調整バルブについて説明する。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る流量調整バルブの斜視図であり、図2乃至図4は、図1の流量調整バルブの縦断面図である。図2は、閉弁状態を示しており、図3は、開弁操作直後の状態を示しており、図4は、開弁状態を示している。
図1乃至図4に示すように、本実施形態の流量調整バルブ1は、流路2、3を流れる液体の流量を調整するためのものである。液体は、通常、水または湯である。図2乃至図4において、流路2、3は左右方向に延びているが、本実施形態の流量調整バルブ1は、流路2、3が鉛直方向に延びるように配置されることが意図されている。具体的には、上流側の流路2が鉛直下方に位置し、下流側の流路3が鉛直上方に位置することが意図されている。
図2乃至図4に示すように、本実施の形態の流量調整バルブ1は、弾性要素であるダイヤフラム膜11を介して下流側の流路3内に変位可能に支持された主弁体10を備えている。ダイヤフラム膜11と主弁体10とは、樹脂によって一体的に製造されている。
主弁体10を挟んで流路3と反対側に、背圧室形成部材20が設けられており、当該背圧室形成部材20と主弁体10とによって背圧室4が形成されている。背圧室4は、後述するように上流側の流路2から所定の圧力で供給される液体(水または湯)が収容されるようになっている。そして、当該液体の圧力によって、主弁体10を閉弁方向に付勢する力が生成されるようになっている。
[主弁体]
本実施形態の主弁体10は、軸線X回りに略対称な形状を有しており、主弁体10の重心は、軸線X上に存在している。
本実施形態の主弁体10は、閉弁時に下流側の流路3に対して着座する際に当該流路3の弁座3sに対して当接する当接部15を有している。当接部15は、主弁体10の他の部位よりも硬質な材料によって製造されている。
本実施形態では、上流側の流路2と背圧室4とを連通する2つの流入孔12が、主弁体10に設けられている。2つの流入孔12は、主弁体10の軸線Xを挟んで対称な位置に対をなすように配置されている。図5に、主弁体10の平面図を示す。これに対応して、上流側の流路2は、下流側の流路3の上方(図2乃至図4において)に位置する流入孔12に回り込むまわりこみ流路2bを有している。また、図2乃至図4に示すように、2つの流入孔12の各々は、主弁体10内において直線的な断面円形経路として設けられている。
以上のような配置関係により、本実施形態の流量調整バルブ1が鉛直方向に延びる流路2、3に対して配置される、すなわち、主弁体10の開閉方向が水平方向であるように配置される時、2つの流入孔12は、主弁体10の軸線Xに対して上側の領域と下側の領域とのそれぞれに1つずつが配置されることになる。
次に、本実施形態では、下流側の流路3と背圧室4とを連通する1つの流出孔13が、主弁体10に設けられている。流出孔13は、主弁体10の軸線X上に、直線的な断面円形の経路として設けられている。
[長手部材]
そして、流出孔13の背圧室側の端13e(図4参照)を開閉するパイロット弁体30が、長手部材32に保持されていて、当該長手部材32によって当該長手部材32の軸方向に移動されるようになっている。
パイロット弁体30と、長手部材32と、当該長手部材32を後述するリフター40に対して軸方向の一方側に付勢された状態で接続する付勢接続部材である弾性樹脂部材72と、長手部材32とリフター40とを係合させる抜け止め機構であるEリング71と、を抽出して図6乃至図9に示す。図6は、これら部材が組み付けられた状態の正面図であり、図7は、図6の縦断面図であり、図8は、これら部材を斜め上方から見た斜視図であり、図9は、斜め下方から見た斜視図である。図10は、Eリング71の拡大斜視図である。
図2乃至図9に示すように、本実施形態の長手部材32は、2つのOリングからなる水密シール34を介して背圧室形成部材20を貫通する領域を含むシャフト部材32aと、パイロット弁体30を接着・圧入嵌合などにより保持する先端部材32bと、を含んで構成されている。
図6及び図7に示すように、先端部材32bは、シャフト部材32aに対して、軸方向に所定の範囲で相対的に摺動可能に接続されている。具体的には、先端部材32bの上方側(図2乃至図9において)が上方に延出してシャフト部材32aを包囲して、互いの摺動を案内するようになっている。そして、先端部材32bとシャフト部材32aとの間に、先端部材32bとシャフト部材32aとを互いから離れる方向に付勢する弾性部材32cが設けられている。弾性部材32cは、本実施形態ではコイルバネである。
図8及び図9に示すように、先端部材32bには、径方向外側面に、液体移動用の流路32gが形成されている。
図2乃至図4に示すように、シャフト部材32aは、水密シール34を介して、液体が存在し得る背圧室側の領域と液体が存在しない大気側の領域との両方に連続して延びている。そして、シャフト部材32aの断面積、特にシャフト部材32aが水密シール34を貫通する領域の断面積が、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さくなっている。本実施形態では、シャフト部材32aの断面は一様な円形である。シャフト部材32aの軸方向移動を案内するために、水密シール34の外方(大気側)に、第1スペーサ部材35が設けられており、水密シール34の内方(背圧室側)に、第2スペーサ部材36が設けられている。第2スペーサ部材36は、図2に示すように、後述する背圧室形成部材20の中空部21内で延びていて、当該中空部21内での先端部材32bの移動を案内する機能をも有している。
[ステッピングモーター]
続いて、シャフト部材32aを軸方向に移動させる構成について説明する。本実施形態では、シャフト部材32aの移動のために、ステッピングモーター60が利用される。
本実施形態のステッピングモーター60は、回転駆動される回転軸61がハウジング62の外部に露出してなる一般的なステッピングモーターである。回転軸61は、図11乃至図15に示す継手部材50の回転軸受容部56に結合されている。すなわち、継手部材50は、回転軸61と一体的に回転する。
[継手部材]
図11は、継手部材50の斜視図であり、図12は、継手部材50の平面図であり、図13は、継手部材50の正面図である。図11乃至図13に示すように、継手部材50には、外周側に突出するストッパ規制部58が設けられている。
図14は、図12のXIV−XIV線断面図であり、図15は、図13のXV−XV線断面図である。図14及び図15に示すように、継手部材50の内部には、断面略十字状で軸方向に延びる筒状の嵌合孔54が設けられている。
継手部材50の外周側を取り囲むように、図16乃至図18に示すような断面略C形状に切り欠かれた筒形状のストッパ80が設けられている。図16は、ストッパ80の斜視図であり、図17は、ストッパ80の平面図であり、図18は、図17のXVIII−XVIII線断面図である。当該ストッパ80は、継手部材50のストッパ規制部58の回動範囲を所定の範囲(例えば90°)に制限するようになっている。ストッパ80の詳細については後述する。
[リフター]
図19乃至図21は、本実施形態のリフター40を抽出して示している。図19は、リフター40の上方から見た斜視図であり、図20は、リフター40の下方から見た斜視図であり、図21は、リフター40の縦断面図である。
図19乃至図21に示すように、本実施形態のリフター40は、上方部において断面略十字状に突出する筒状の嵌合凸部45が設けられている。そして、当該嵌合凸部45が継手部材50の嵌合孔54内に収容されていて、継手部材50とリフター40とを回転方向に係合すると共に、継手部材50とリフター40との相対的な軸方向移動を案内している。この相対的な軸方向移動に関しては、図2乃至図4に示すように、継手部材50とリフター40との間に付勢部材としてのコイルバネ73が介在していて、リフター40は常に継手部材50(すなわち回転軸61(回転部材))に対して背圧室の側に付勢されている。
本実施形態のリフター40の下方部は、略中空円筒状に形成されていて、回転方向に120°毎に分配された3つの突起42が内方及び下方に突出するように設けられている。
[背圧室形成部材]
一方、図2乃至図4に示すように、本実施形態の背圧室形成部材20は、主弁体10の軸線Xの延長線上に、中空円筒状に形成された中空部21を有しており、当該中空部21内を長手部材32の先端部材32bが軸方向に移動するようになっている。
ここで、図22は、本実施形態の背圧室形成部材20の斜視図であり、図23は、図21の背圧室形成部材20の正面図である。図22及び図23から分かるように、中空部21は上方側の円筒状部22によって規定されている。そして、円筒状部22の外周面上に、リフター40の3つの突起42の各々に当接し、リフター40の回転に伴って(コイルバネ73による付勢力と相俟って)当該突起42を軸方向に案内することでリフター40を軸方向に移動させる3つの案内斜面23が設けられている。なお、後述するケース部材91との結合のため、下方側の側面に係合突起24が設けられている。
以上のような構成により軸方向に移動するリフター40のシャフト部材受容孔43(図19及び図21参照)に、シャフト部材32aが係合されている。具体的には、図2乃至図4に示すように、シャフト部材受容孔43の上方に隣接して抜け止め機構としてのEリング71が圧入嵌合されていて、当該Eリング71に対してシャフト部材32aに設けられた切欠部が係合している。そして、付勢接続部材としての弾性樹脂部材72が、シャフト部材32aの上端を背圧室側に付勢した状態で、リフター40の弾性樹脂部材受容部47(図21参照)に圧入嵌合されている。
[その他の部材]
その他、本実施形態において、付勢部材としてのコイルバネ73は、継手部材50を介してステッピングモーター60の回転軸61を常に同一の回転方向に付勢している。これによって、ステッピングモーター60の内部部材についても当該回転軸61を介して回転方向に一方向に片寄せしている。また、当該コイルバネ73は、ステッピングモーター60のディテントトルク以下の力で付勢するようになっている。
また、長手部材32の弾性部材32cの弾性力は、付勢接続部材としての弾性樹脂部材72の弾性力よりも小さくなっている。
[基本的な作用効果]
図2に示すように、閉弁時においては、ダイヤフラム膜11を介して流路3内に設けられた主弁体10が、背圧室4に収容された液体の圧力(流路2内での供給圧力に依存する)によって閉弁方向に付勢されている。
そして、開弁開始時には、主弁体10に設けられた流出孔13を開放するべく、パイロット弁体30が制御される。
具体的には、ステッピングモーター60が回転駆動され、回転軸61と共に継手部材50が回動を開始する。これに伴って、継手部材50の嵌合孔54とリフター40の嵌合凸部45との係合によって、リフター40が回動する。
リフター40の突起42は、コイルバネ73によって常に案内斜面23に対して付勢されており、リフター40の回動に伴って案内斜面23上を案内されていく。これにより、リフター40は軸方向にも移動する。
シャフト部材32aは、Eリング71及び弾性樹脂部材72を介してリフター40に接続されており、リフター40の軸方向移動に伴って軸方向に移動する。これにより、シャフト部材32aに接続されているパイロット弁体30が軸方向に移動する。
パイロット弁体30が軸方向に主弁体10から離れる方向に(図2の上向きに)移動することで流出孔13の背圧室側の端13eが開放されると、背圧室4内の液体が当該流出孔13を通って下流側の流路3内へと放出(供給)され始める。この状態が、図3に示されている。このとき、背圧室4内部の圧力が低下するため、主弁体10は開放される。
背圧室4内の液体が流出孔13を通って放出されはじめると、主弁体10に設けられた流入孔11を介して新たな液体が背圧室4に流入する。この背圧室4への流入量と、流出穴12を通って放出される流出量とが同一となる(背圧室4内の液体量が変動しない)位置まで、主弁体10が移動し、その位置に保持される。この状態が、図4に示されている。このとき、流出量はパイロット弁体30と主弁体10との相対的な距離に依存している。
以上のように主弁体10は移動するので、結局、主弁体10の位置は、パイロット弁体30の位置に依存する。すなわち、パイロット弁体30の位置を制御することによって、主弁体10の位置を制御することができ、ひいては流量を制御することができる。
なお、本実施形態では、リフター40に回転方向に分配された3つの突起42が設けられており、リフター40の回転に伴って当該突起42を案内斜面23が案内することでリフター40を軸方向に移動させるようになっている。このような構成によれば、360度以上回転させて利用するいわゆるネジ式に比べて送り角度(回転角度に対する軸方向移動量)を大きく設定することができるので、回転運動の軸方向運動への変換を好適な態様で実現できる。例えば、わずかな回転でパイロット弁体30を大きく動作させることができ、応答性が向上している。
[作用効果(1):シャフト部材32a及び先端部材32bがもたらす作用効果]
本実施形態では、シャフト部材32aの水密シール34を貫通する領域の断面積が、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さい。このため、パイロット弁体30に作用する力の影響に関して、シャフト部材32aによる保持力の程度が、流出孔13の開度変化に伴う負圧変化の程度よりも小さくなっている。
前述したように、従来のパイロット弁体は、流出孔の直径の3倍程度の直径を有する長手部材によって保持されている。この場合、図24に示すように、そのような大径の長手部材が開弁方向に付勢される力(水密シールを介して大気側に抜け出る領域の断面が受ける大気圧と、長手部材の接水面に作用する水圧の差に相当する)が十分に作用しているため(閉弁によって、長手部材の流出孔13を塞ぐ領域に作用する力が水圧から大気圧に変わっても、依然として開弁方向に付勢する力が優勢である(閉弁のために下向きの力を付与する必要がある))、流出孔が閉じる直前に大きくなる負圧を受けても、長手部材による保持力の方が依然として優勢であるため、パイロット弁体の挙動にブレや振らつきが生じる虞はなく、パイロット弁体の制御は安定的である。
図25に示すように、シャフト部材32aの直径と流出孔13の直径とを同程度にした変形例の場合には、流出孔13が開いている間はシャフト部材32aによる保持力が十分に作用しているが、流出孔13が閉じる直前の負圧を受けると、シャフト部材32aによる保持力が相殺されて、パイロット弁体30の挙動にブレや振らつきが生じて、パイロット弁体30の制御が不安定になる。作用する力の合計がゼロに近いと、正負に振れて不安定になるためである。(閉弁によって、長手部材の流出孔13を塞ぐ領域に作用する力が水圧から大気圧に変わると、開弁方向に付勢する力がなくなる。)
これらに対して、本実施形態では、パイロット弁体30を保持するシャフト部材32aの直径を流出孔13の直径よりも小さくしている。この場合、図26に示すように、パイロット弁体30の開度が大きい場合には、シャフト部材32aによる保持力が十分に作用しているが、パイロット弁体30の開度が小さくなるにつれて次第に大きくなる負圧によってシャフト部材32aによる保持力が相殺されて、パイロット弁体30が所定の開度(図26のA点)の時点で、パイロット弁体30の挙動にブレや振らつきが生じ得る。しかし、当該開度(図26のA点)においては、流量が少量では無いので、さほど高い制御精度は必要なく、すなわち、実用上の問題は全く無い。そして、いわゆる閉まり際で最も高い制御精度が望まれる微小開度の領域においては、負圧の方がシャフト部材32aによる保持力よりも優勢であるため、パイロット弁体30の挙動にブレや振らつきが生じること虞がなく、パイロット弁体30の制御は安定的である。(閉弁によって、長手部材の流出孔13を塞ぐ領域に作用する力が水圧から大気圧に変わると、閉弁方向に付勢する力が優勢となる(閉弁のために下向きの力を付与する必要がない)。)
しかも、本実施形態によれば、パイロット弁体30の移動のために小径のシャフト部材32aを移動させればよいため、相対的に低いエネルギーで十分である。また、シャフト部材32aの移動の際の水密シール34による抵抗も小さいという効果もある。更に、パイロット弁体30に作用する力が、閉まり際において閉まる方向であることは、他の付勢力なしでも確実な閉弁を可能にするという効果もある。
また、本実施形態では、長手部材32が、水密シール34を貫通する領域を含むシャフト部材32aと、パイロット弁体30を保持する先端部材32bと、に分離されている。これにより、シャフト部材32aの断面積だけを、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さく構成すればよく、先端部材32bの断面積は、自由に設計することができる。換言すれば、小さい断面積を有するシャフト部材32aの長さを、先端部材32bの分だけ短くすることができる。これにより、シャフト部材32aに折れや曲がりが発生することを抑制することができる。
また、本実施形態では、先端部材32bはシャフト部材32aに対して軸方向に所定の範囲で相対的に摺動可能に接続されており、先端部材32bとシャフト部材32aとの間に先端部材32bとシャフト部材32aとを互いから離れる方向に付勢する弾性部材32cが設けられている。これにより、弾性部材32cの緩衝作用により、パイロット弁体30が流出孔13に対して過剰な力で押し付けられるということが回避される。また、これにより、シャフト部材32aに僅かな傾きが生じた場合であっても、パイロット弁体30が流出孔13の位置に追従するように作用して閉弁動作を確実に行うことができる。
ここで、パイロット弁体30が流出孔13に対して過剰な力で押し付けられることを回避する構成としては、先端部材32bをシャフト部材32aに対して軸方向に所定の範囲で相対的に摺動可能に接続しておいて、先端部材32bと中空部21(図2乃至図4参照)の上面とを互いから離れる方向に付勢する弾性部材が設けられてもよい。
また、本実施形態では、先端部材32bの径方向外側面に、液体移動用の流路32gが形成されている。これにより、先端部材32bが移動する際に液体の存在が当該移動の妨げとなることを、効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、シャフト部材32aはリフター40の一部を貫通しており、シャフト部材32aは、抜け止め機構であるEリング71を介して、リフター40に係合されている。これにより、シャフト部材32aが細くても、リフター40に確実に固定することができる。また、シャフト部材32aを細くすることができるため、シャフト部材32aと各部材との接触面積を小さくでき、シャフト部材32aと各部材との間に生じる摺動抵抗を小さくできるという利点も得られる。
また、本実施形態では、先端部材32bの一端にパイロット弁体30が接着されている。これにより、先端部材32bとパイロット弁体30との間で「がたつき」が生じることを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、長手部材32の弾性部材32cの弾性力は、付勢接続部材である弾性樹脂部材72の弾性力よりも小さい。これにより、長手部材32の破損を効果的に抑制することができる。
[作用効果(2):弾性樹脂部材72がもたらす作用効果]
本実施形態では、シャフト部材32aは、リフター40に対して、付勢接続部材である弾性樹脂部材72によって、軸方向に背圧室側に付勢された状態で接続されている。これにより、シャフト部材32aとリフター40との間の接続態様に起因して生じる可能性があるバックラッシュの発生を、より一層確実に抑制することができる。このことは、コイルバネ73によって回転軸61とリフター40との間で生じる可能性があるバックラッシュの発生が抑制されていることと相俟って、流量調整制御におけるヒステリシス抑制の効果を高める。
また、パイロット弁体30の位置決めにおいて、ばらつきが発生する虞が顕著に小さくなるので、止水領域を最小限度としても確実に止水を行うことができる。このことにより、確実な止水と素早い応答性との両立が可能となる。
また、パイロット弁体30のブレや振らつきが防止される。
また、本実施形態では、シャフト部材32aがリフター40に対して弾性樹脂部材72によって付勢されている方向と、リフター40が回転軸61に対してコイルバネ73によって付勢されている方向とは、いずれもパイロット弁体30を閉じる方向である。これにより、ステッピングモーター60が故障した場合において、パイロット弁体30は安定的に閉弁状態を維持することができる。
また、本実施形態では、弾性樹脂部材72は、リフター40と一体的に回転する。これにより、リフター40と弾性樹脂部材72との間に大きな捩りモーメントが発生せず、弾性樹脂部材72とリフター40との間の摺動抵抗の発生も低減されるため、ステッピングモーター60にかかるトルクを軽減させることができ、また、ステッピングモーター60を小型化することもできる。
[作用効果(3):対称配置の流入孔12がもたらす作用効果]
本実施形態によれば、前述のような主弁体10及び2つの流入孔12の形態及び配置を採用することにより、パイロット弁体30が流出孔13を開放している状態において、各流入孔12から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントの和の絶対値が、略0N・mとなっている。
主弁体10及び2つの流入孔12の形態ないし配置が、以上のような条件を満たすように調整されることにより、主弁体10が移動中に傾斜してしまうことが確実に抑制される。
なお、2つの流入孔12の各々から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントないし当該モーメントによって作用する力は、実際に測定されてもよいが、流量調整バルブ1の設計に際して広く利用されているCAE(Computer Aided Engineering)やCFD(Computational Fluid Dynamics)と呼ばれるコンピュータを利用した解析手法によって評価することができる。具体的には、主弁体10の寸法データに基いて3Dモデルを用意し、水の流れをコンピュータを利用して解析することで、主弁体10に作用するモーメントや力の向き乃至大きさを求めることができる。一例として、株式会社ソフトウェアクレイドルが提供している「SCRYU/Tetra」が利用できる。
本実施形態では、流入孔12の個数は「2つ」となっているが、各流入孔12から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントの和の絶対値が0.001N・m以下となるのであれば、3つ以上であっても差し支え無い。
また、本実施形態では、2つの流入孔12は主弁体10に設けられている。これにより、流入孔12の個数、位置、形状、サイズ等の設計を、主弁体10の設計と同時に行うことができる。
また、本実施形態では、2つの流入孔12の各々は、主弁体10内において直線的な経路として設けられている。これにより、流入孔12内での圧力損失が小さく、また、流体の流入及び/または空気の排出を効率よく行うことができる。
また、本実施形態の主弁体10は、軸線X回りに略対称な形状を有しており、主弁体10の重心は、当該軸線X上に存在している。これにより、主弁体10自身の重力に対するバランスがよく、主弁体10が移動中に傾斜してしまうことを抑制するための設計が容易である。
また、本実施形態では、2つの流入孔12は、主弁体10の軸線Xを挟んで対称な位置に対をなすように配置されている。これにより、対をなすように配置された流入孔12からの液体流入により主弁体10に作用するモーメントが互いに相殺し合うため、主弁体10が移動中に傾斜してしまうことが効果的に抑制される。
ここで、流入孔12の断面が等方性でない場合には、対をなす流入孔12は、その断面形状において、主弁体10の軸線に対して鏡像対称であることが好ましい。
また、本実施形態では、主弁体10の開閉方向が水平方向であるように配置される時、2つの流入孔12は、主弁体10の軸線Xに対して上側の領域と下側の領域とのそれぞれに1つずつが配置されることになる。この場合、背圧室4内に流体が存在していない状況下(例えば設備設置時)において、上下の流入孔12からバランスよく液体が流入して空気の排出が促されるため、液体による内部置換がスムーズで、いわゆるエア噛みという現象が生じにくい。また、水抜きを行う場合の空気置換も、同様にスムーズである。
[ストッパの調整とその作用効果]
本実施形態の流量調整バルブ1の組立工程において生じ得るばらつき(各部材のばらつきの累積)に起因して、パイロット弁体30のストロークの所望範囲を実現するためには、ストッパ80による規制範囲を、個々の流量調整バルブ1毎に調整することが効果的である。
具体的には、例えば閉弁位置(最も閉弁側のパイロット弁体30の制御位置)について、余裕が小さ過ぎれば止水不良が発生する懸念が高まり、余裕が大き過ぎれば開弁応答性が低下するという問題があるため、個々の流量調整バルブ1毎に、適切な閉弁位置を実現できるよう、パイロット弁体30のストロークを調整することが好ましい。
そこで、本実施形態の流量調整バルブ1においては、ストッパ80が、位置変更可能な仮固定状態と、位置変更不可能な固定状態と、のいずれかにて選択的に保持されるようになっている。
図16乃至図18に示すように、本実施形態のストッパ80は、継手部材50のストッパ規制部58の回動範囲を制限するべく断面略C形状に切り欠かれた筒形状を有している。これにより、ストッパ80自体のコストを低廉に抑えることができ、また、当該ストッパ80の配置を小スペース内に収めることが容易である。
そして、このようなストッパ80が、図18に矢印で示すように軸線方向の両側から挟圧されて拡径状態となることで、位置変更不可能な固定状態とされている。このような構成が採用されることで、ストッパ80の仮固定状態と固定状態との切り替えが、低廉なコストで実現されている。また、挟圧されて拡径状態となったストッパ80が元に戻ろうとする(縮径する)力がストッパ80の軸線方向の長さを増す方向に働くため、結果的に挟圧力が増すことになって固定状態が安定する。
具体的には、本実施形態の場合、図1乃至図4に示すように、ストッパ80は、リフター40の外周側に配置されたケース部材91と、ステッピングモーター60のハウジング62に固定された蓋部材92と、によって挟圧されて固定状態となっている。逆に、ケース部材91と蓋部材92との間に隙間を介在させた状態では、ストッパ80はその軸線回りに回動することができ、すなわち、位置変更可能な仮固定状態となっている。
蓋部材92は、ストッパ80の仮固定状態と固定状態とを切り替えるための構成と、ステッピングモーター60を固定するための構成と、を兼ねているため、部品点数の増大を抑制することに貢献している。
本実施形態では、ケース部材91及び蓋部材92は、1本のネジ部材93によって互いに締結されることで、ストッパ80を挟圧しているが、ネジ部材93の本数は2本以上であってもよいし、ネジ部材以外の締結部材が用いられてもよい。
ここで、図2乃至図4から分かるように、ネジ部材93の回転軸線は、ストッパ80の軸線に対してオフセットされている。これにより、当該ネジ部材93を操作する際に、ストッパ80が不所望に回動して位置を変えてしまうことが防止されている。
また、図18から分かるように、本実施形態のストッパ80の軸線方向の下端には、外周側に向かって軸線方向の長さが大きくなるという傾斜82(内周側が凹んだ円錐面の一部に相当)82が設けられている。このような形態により、ストッパ80は、狭圧される際に軸線回りにバランス良く拡径される。また、部材の偏心がおきにくく、ストッパ80が狭圧されて拡径された状態で安定するため、ストッパ80の位置変更不可能な固定状態が安定する。ストッパ80の下端に加えて、あるいは下端の代わりに、ストッパ80の上端に同様の傾斜が設けられてもよい。
本実施形態では、更に、ストッパ80の軸線方向の下端に挟圧を適用するケース部材91(図2乃至図4に示す)の上面に、外周側に向かって軸線方向の長さが小さくなるという傾斜面91t(外周側が凹んだ円錐面の一部に相当)が形成されている。これによっても、ストッパ80は、狭圧される際に軸線回りにバランス良く拡径される。ケース部材91の上面に加えて、あるいはその代わりに、蓋部材92の下面に同様の傾斜面が設けられてもよい。
本実施形態では、ストッパ80の一部が、蓋部材92に設けられた窓部92wから外部に露出している。また、図16及び図17に示すように、ストッパ80には、目盛りとして機能する縦縞模様が付されており、更に、調整作業用のツマミ部81が設けられている。一方、窓部92wの方にも、目印92iが付されている。これらの相対位置関係を調整することで、ストッパ80の位置を個々の流量調整バルブ1毎に調整することができる。
具体的には、ストッパ保持部材としてのケース部材91及び蓋部材92によって、ストッパ80が位置変更可能な仮固定状態にて保持される。具体的には、ケース部材91と蓋部材92との間に隙間が介在した状態(蓋部材92が少し浮かされた状態)が維持される。この状態で、流量調整バルブ1が流路に接続され、ステッピングモーター60の駆動がなされ、通水及び止水の試験が行われる。試験を行いながら、ツマミ部81を左右に回動させて、所望の止水制御が得られるストッパ80の位置を探る。そして、探り当てたストッパ80の位置で、ケース部材91と蓋部材92とを互いに締結して、ストッパ80を挟圧して拡径させる。これにより、ストッパ80は、位置変更不可能な固定状態になる。
通水及び止水の試験は、ステッピングモーター60を用いないで、マニュアル調整ジグ85を用いて行ってもよい。図27は、マニュアル調整ジグ85を斜め上方からみた斜視図であり、図28は、マニュアル調整ジグ85を斜め下方からみた斜視図であり、図29は、マニュアル調整ジグ85を用いて継手部材50及びストッパ80の位置を調整する作業時の流量調整バルブ1の斜視図である。
マニュアル調整ジグ85を用いる場合でも、ストッパ保持部材としてのケース部材91及び蓋部材92によって、ストッパ80が位置変更可能な仮固定状態にて保持される。具体的には、ケース部材91と蓋部材92との間に隙間が介在した状態(蓋部材92が少し浮かされた状態)が維持される。一方、ステッピングモーター60(回転軸61及びハウジング62を含む)が蓋部材92から取り外された状態で、流量調整バルブ1が流路に接続される。
そして、ステッピングモーター60の代わりに、マニュアル調整ジグ85が継手部材50に回転軸受容部56に接続され、当該マニュアル調整ジグ85を用いて手動で継手部材50及びストッパ80を回動させながら、通水及び止水の試験が行われる。試験を行いながら、マニュアル調整ジグ85を左右に回動させて、所望の止水制御が得られる継手部材50及びストッパ80の位置を探る。そして、探り当てたストッパ80の位置で、ケース部材91と蓋部材92とを締結して、ストッパ80を挟圧して拡径させる。これにより、ストッパ80は、位置変更不可能な固定状態になる。
以上のように、本実施形態によれば、個々の流量調整バルブ1毎にストッパ80の位置を容易に調整できるため、適切な閉弁位置を実現できるような弁体のストローク調整を個々の流量調整バルブ1毎に容易に実現することができる。
[駆動ユニットのユニット化とその作用効果]
本実施形態の流量調整バルブ1の分解斜視図を、図30に示す。また、図30の領域A、B、Cの拡大図を、それぞれ図31乃至図33に示す。
本実施形態の流量調整バルブでは、図31及び図32に示された部材が、一体的にユニット化されて駆動ユニット101を構成している。そして、当該駆動ユニット101が、流路2、3及び主弁体10を含む基部102に対して、一体的に着脱可能となっている。
このような構成により、通常のメンテナンス作業時においては、駆動ユニット101を基部102に対して取り外すだけで足りる。すなわち、駆動ユニット101の内部を分解する必要が無い。このため、駆動ユニット101を構成する部材間のばらつきの累積については、メンテナンス作業の前後で変更がない。これにより、ストッパ80による規制範囲の再調整を行わなくても、高い流量調整性能を維持することができる。
また、このような構成により、駆動ユニット101が基部102から取り外された時、主弁体10もパイロット弁体30も露出状態となる。従って、これらの弁体10、30に対するメンテナンス作業を、迅速且つ容易に行うことができる。特に、メンテナンス頻度(特には交換頻度)の高い主弁体10が、駆動ユニット101に対して別体となっているため、メンテナンス作業の作業性が高い。
これらの事情の理解を促すため、駆動ユニット101と基部102とを互いから取り外し、更に基部102の主弁体10を取り外した分解斜視図を、図34及び図35に示しておく。図34は、斜め上方からの分解斜視図であり、図35は、斜め下方からの分解斜視図である。
また、本実施形態では、駆動ユニット101の各構成部材を締結する締結部材と、駆動ユニット101と基部102とを組み付ける組付部材と、が互いに異なる種類の部材となっている。具体的には、ケース部材91と蓋部材92とを互いに締結する1本のネジ部材93と、ステッピングモーター60のハウジング62を蓋部材92に固定する2本のネジ部材96とが、それぞれ特殊なネジ部材となっている。特殊なネジ部材とは、いわゆる星形ネジ部材等、特殊な工具を必要とする異形のネジ部材を意味する。そして、ユニット101と基部102とを組み付ける組付部材103が、4本の通常のネジ部材からなっている。これにより、組付部材103に対する取り外し作業中に、誤って駆動ユニット101内のネジ部材93、96に対する取り外し作業が実施されてしまうことを、効果的に防止している。
また、本実施形態では、図32から分かるように、4本の通常のネジ部材である組付部材103は同一方向に延びている。これにより、これらのネジ部材に対する操作性が高い。例えば、流量調整バルブ1を回転させたり姿勢を変えたりする必要なく、駆動ユニット101の基部102に対する着脱作業を実施することができる。
また、本実施形態では、駆動ユニット101の最下端である背圧室形成部材20の下端と、基部102の対応する受容部102a(図34参照)との間に、主弁体10のダイヤフラム膜11に連続するシール部11s(図2参照)が介在している。このダイヤフラム膜11は、水密部材として機能し、背圧室4からの液体の漏れを防止している。一方、駆動ユニット101のケース部材91の下面91b(図35参照)と、基部102の対応する上面102b(図34参照)とは、直接に当接するようになっている。
これにより、組付部材である4本のネジ部材103のトルク管理を行わなくても、シール部11sに常に所定の「シール代」を提供することができる。また、4本のネジ部材103の組付程度のばらつきに起因して駆動ユニット101が傾斜するという心配もない。
なお、本実施形態では、駆動ユニット101の組立後、ケース部材91と蓋部材92とを互いに締結する1本のネジ部材93は、アクセスしにくい位置に配置されている。これは、調整したストッパ80の位置が誤って変動してしまうことを防止する上で効果的である。
[本実施形態から得られる中間概念(1):長手部材32に関する観点から]
本実施形態から抽出できる流量調整バルブ1は、弾性要素(例えばダイヤフラム膜11)を介して流路2、3内に変位可能に支持された主弁体10と、流路の上流側2から所定の圧力で供給される液体(例えば水及び/または湯)が収容されると共に当該液体によって主弁体10を閉弁方向に付勢する力が生成される背圧室4と、流路の上流側2と背圧室4とを連通する流入孔12と、流路の下流側3と背圧室4とを連通する流出孔13と、流出孔13を開閉するパイロット弁体30と、パイロット弁体30を保持すると共に当該パイロット弁体30をそれ自身の軸方向に移動させる長手部材32と、回転する回転部材(例えばモーターの回転軸61)と、回転部材の回転に伴って回転可能であり、当該回転中に連動して長手部材32の軸方向にも移動可能であるリフター40と、を備えている。そして、リフター40と長手部材32とは、軸方向に一体的に移動するように接続されており、長手部材32は、水密シール34を介して、液体が存在し得る背圧室側の領域と液体が存在しない大気側の領域との両方に連続して延びており、長手部材32の水密シール34を貫通する領域の断面積が、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さい。
このような特徴により、背圧室4とパイロット弁体30とを利用した構成を採用しているため、小さい力で主弁体10を操作することができる。
そして、長手部材32の水密シール34を貫通する領域の断面積が、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さいため、パイロット弁体30に作用する力の影響に関して、長手部材32による保持力の程度が、流出孔13の開度変化に伴う負圧変化の程度よりも小さくなっている。
この場合、図26を用いて説明したように、パイロット弁体30の開度が大きい場合には、長手部材32による保持力が十分に作用しているが、パイロット弁体30の開度が小さくなるにつれて次第に大きくなる負圧によって長手部材32による保持力が相殺されて、パイロット弁体30が所定の開度(図26のA点)の時点で、パイロット弁体30の挙動にブレや振らつきが生じ得る。しかし、当該開度(図26のA点)においては、流量が少量では無いので、さほど高い制御精度は必要なく、すなわち、実用上の問題は全く無い。そして、いわゆる閉まり際で安定した流量制御、つまり主弁体の安定的な移動及び保持を達成するために高い制御精度が望まれる微小開度の領域においては、負圧の方が長手部材による保持力よりも優勢であるため、パイロット弁体の挙動にブレや振らつきが生じる虞がなく、パイロット弁体の制御は安定的である。(閉弁によって、長手部材の流出孔13を塞ぐ領域に作用する力が水圧から大気圧に変わると、閉弁方向に付勢する力が優勢となる(閉弁のために下向きの力を付与する必要がない)。)
しかも、パイロット弁体30の移動のために細い長手部材32を移動させればよいため、相対的に低いエネルギーで十分である。また、長手部材32の移動の際の水密シール34による抵抗が小さいという効果もある。更に、パイロット弁体30に作用する力が、閉まり際において閉まる方向であることは、他の付勢力なしでも確実な閉弁を可能にするという効果もある。
ここで、流出孔13の開口断面ないし長手部材32の断面の形状は、円形である場合に限られない。
また、前述の通り、長手部材32は、水密シール34を貫通する領域を含むシャフト部材32aと、パイロット弁体30を保持する先端部材32bと、を含んで構成されることが好ましい。この場合、シャフト部材32aの断面積だけを、流出孔13の背圧室側の端13eの開口面積よりも小さく構成すればよく、先端部材32bの断面積は、自由に設計することができる。換言すれば、小さい断面積を有するシャフト部材32aの長さを、先端部材32bの分だけ短くすることができ、シャフト部材32aに折れや曲がりが発生することを抑制できる。
また、前述の通り、先端部材32bは、シャフト部材32aに対して、軸方向に所定の範囲で相対的に摺動可能に接続されており、先端部材32bを閉弁方向に付勢する弾性部材32cが設けられていることが好ましい。この場合、弾性部材32cの緩衝作用により、パイロット弁体30が流出孔13に対して過剰な力で押し付けられるということが回避される。また、この場合、シャフト部材32aに僅かな傾きが生じた場合であっても、パイロット弁体30が流出孔13の位置に追従するように作用して閉弁動作を確実に行うことができる。
また、前述の通り、先端部材32bは、径方向外側面の少なくとも一部に、液体移動用の流路32gが形成されていることが好ましい。この場合、先端部材32bが移動する際に液体の存在が当該移動の妨げとなることを、効果的に抑制することができる。
また、前述の通り、長手部材32は、リフター40の一部を貫通しており、長手部材32は、抜け止め機構を介して、リフター40に係合されていることが好ましい。この場合、長手部材32がリフター40から抜け外れることを確実に防止することができる。更には、抜け止め機構は、Eリング71を有していることが好ましい。この場合、長手部材32が細くても、リフター40に確実に固定することができる。また、長手部材32を細くすることができるため、長手部材32と各部材との接触面積を小さくでき、長手部材と各部材との間に生じる摺動抵抗を小さくできるという利点も得られる。
また、前述の通り、長手部材32は、リフター40に対して、付勢接続部材によって前記軸方向の一方側に付勢された状態で接続されていることが好ましい。この場合、長手部材32が軸方向の一方側に付勢されているため、パイロット弁体30のブレや振らつきが防止される。この作用は、パイロット弁体30に作用する力の合計がゼロになる所定の開度(図26のA点)の付近において、特に効果的である。
なお、当該中間概念(1)による流量調整バルブ1においては、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61に限定されないで、手動で回転される回転部材であってもよい。すなわち、流量調整バルブ1は、手動式の流量調整バルブであってもよい。
[本実施形態から得られる中間概念(2):弾性樹脂部材72に関する観点から]
本実施形態から抽出できる流量調整バルブ1は、弾性要素(例えばダイヤフラム膜11)を介して流路2、3内に変位可能に支持された主弁体10と、流路の上流側2から所定の圧力で供給される液体(例えば水及び/または湯)が収容されると共に当該液体によって主弁体10を閉弁方向に付勢する力が生成される背圧室4と、流路の上流側2と背圧室4とを連通する流入孔12と、流路の下流側3と背圧室4とを連通する流出孔13と、流出孔13の背圧室側の端13eを開閉するパイロット弁体30と、パイロット弁体30を保持すると共に当該パイロット弁体30をそれ自身の軸方向に移動させる長手部材32と、回転する回転部材(例えば回転軸61)と、回転部材の回転に伴って回転可能であり、当該回転中に連動して長手部材32の軸方向にも移動可能であるリフター40と、を備えている。そして、リフター40と長手部材32とは、軸方向に一体的に移動するように接続されており、長手部材32は、リフター40に対して、付勢接続部材(例えば弾性樹脂部材72)によって軸方向の一方側に付勢された状態で接続されている。
このような特徴により、背圧室4とパイロット弁体30とを利用した構成を採用しているため、小さい力で主弁体10を操作することができる。
そして、長手部材32がリフター40に対して付勢接続部材によって軸方向の一方側に付勢された状態で接続されているため、長手部材32とリフター40との間の接続態様に起因して生じる可能性があるバックラッシュの発生を、より一層確実に抑制することができる。このことは、流量調整制御におけるヒステリシス抑制の効果を高める。また、パイロット弁体30の位置決めにおいて、ばらつきが発生する虞が顕著に小さくなるので、止水領域を最小限度としても確実に止水を行うことができる。このことにより、確実な止水と素早い応答性との両立が可能である。
構成部材を片寄せするという観点から、前述の通り、リフター40は、回転部材(例えば回転軸61)に対して、付勢部材、例えばコイルバネ73、によって軸方向の一方側に付勢されていることが好ましい。この場合、回転部材(例えば回転軸61)とリフター40との間で生じる可能性があるバックラッシュの発生を、確実に抑制することができる。このことは、流量調整制御におけるヒステリシス抑制の効果を高める。
また、前述の通り、リフター40と回転方向に係合してリフター40に回転部材の回転を伝達する継手部材50を有していて、付勢部材(例えばコイルバネ73)は、継手部材50とリフター40とを軸方向に互いに離間する方向に付勢して、継手部材50と付勢部材とリフター40とが一体的に回転することが好ましい。この場合、継手部材50と付勢部材とリフター40とが一体的に回転することにより、付勢部材に捻りモーメントがかからず、且つ、回転部材と継手部材50との相対位置も固定されるため、回転運動をスムーズに軸方向運動に変換できる。
また、前述の通り、回転部材は、モーターの回転軸61であり、付勢部材(例えばコイルバネ73)は、継手部材50を介して、当該回転軸61を常に同一の回転方向に付勢していることが好ましい。この場合、継手部材50とリフター40との間に離間する方向の力が発生している時、両者の係合によって継手部材50には回転する方向にも力が発生することになる。この回転する方向の力をモーターの回転軸61にも伝達することによって、モーターの内部部材について当該回転軸61を介して回転方向に一方向に片寄せすることができる。このことは、流量調整制御におけるヒステリシス抑制の効果を高める。モーターは、ステッピングモーター60であれば、流量制御をコンピュータ制御によって実現することができる。また、小流量の制御であっても、ステッピングモーター60を微細に制御することで、安定的した吐水が可能である。もっとも、ステッピングモーター60に限定されないで、他のタイプのモーターが用いられてよい。
また、前述の通り、付勢部材(例えばコイルバネ73)は、モーターのディテントトルク以下の力で付勢していることが好ましい。この場合、パイロット弁体30の位置決め状態を維持する際に、当該モーターに常に電力を供給しておく必要がない。
また、前述の通り、リフター40に突起42が設けられていて、リフター40の突起42に当接しリフター40の回転に伴って当該突起42を軸方向に案内することでリフター40を当該軸方向に移動させる案内斜面23を有することが好ましい。この場合、360度以上回転させて利用するいわゆるネジ式に比べて送り角度(回転角度に対する軸方向移動量)を大きく設定することができるので、回転運動の軸方向運動への変換を好適な態様で実現できる。これによれば、わずかな回転で弁体を大きく動作させることができるようになり、応答性が向上する。
特に、リフター40に回転方向に複数の突起42が設けられていて、リフター40の複数の突起42の各々に当接しリフター40の回転に伴って当該突起42を軸方向に案内することでリフター40を当該軸方向に移動させる複数の案内斜面23を有することが好ましい。突起42と案内斜面23との当接による案内箇所が複数であれば、回転運動の軸方向運動への変換がより一層スムーズである。例えば、複数の突起42は、前述の通り、回転方向に等分配された(120°毎に配置された)3個が設けられることが好ましい。
また、前述の通り、長手部材32がリフター40に対して付勢接続部材(例えば弾性樹脂部材72)によって付勢されている方向は、リフター40が回転部材(例えば回転軸61)に対して付勢部材(例えばコイルバネ73)によって付勢されている方向と、同一であることが好ましい。この場合、より一層確実に、流量調整制御におけるヒステリシスを抑制することができる。
また、前述の通り、長手部材32がリフター40に対して付勢接続部材(例えば弾性樹脂部材72)によって付勢されている方向と、リフター40が回転部材(例えば回転軸61)に対して付勢部材(例えばコイルバネ73)によって付勢されている方向とは、パイロット弁体30を閉じる方向であることが好ましい。この場合、回転部材が故障した場合において、パイロット弁体30は安定的に閉弁状態を維持することができる。
また、前述の通り、長手部材32の一端に、パイロット弁体30が接着されていることが好ましい。この場合、長手部材32とパイロット弁体30との間で「がたつき」が生じることを効果的に抑制することができる。
また、前述の通り、長手部材32は、軸方向に伸縮する弾性を有していることが好ましい。この場合、パイロット弁体30が過剰に流出孔13に押し付けられた際に、長手部材32の弾性によって当該過剰な力を吸収できる。
また、前述の通り、長手部材32の弾性力は、付勢接続部材(弾性樹脂部材72)の弾性力よりも小さいことが好ましい。この場合、長手部材32の方が付勢接続部材よりも収縮しやすいため、長手部材32の破損を効果的に抑制することができる。
また、前述の通り、付勢接続部材はリフター40と一体的に回転することが好ましい。この場合、リフター40と付勢接続部材との間に大きなモーメントが発生せず、付勢接続部材とリフター40との間の摺動抵抗の発生も低減されるため、回転部材にかかるトルクを軽減させることができ、また、回転部材(の駆動機構)を小型化することもできる。
なお、当該中間概念(2)による流量調整バルブ1においても、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61に限定されないで、手動で回転される回転部材であってもよい。すなわち、流量調整バルブ1は、手動式の流量調整バルブであってもよい。
[本実施形態から得られる中間概念(3):流入孔11に関する観点から]
本実施形態から抽出できる流量調整バルブ1は、ダイヤフラム膜11を介して流路2、3内に変位可能に支持された主弁体10と、流路の上流側2から所定の圧力で供給される液体が収容されると共に当該液体によって主弁体10を閉弁方向に付勢する力が生成される背圧室4と、流路の上流側2と背圧室4とを連通する流入孔12と、流路の下流側3と背圧室4とを連通する流出孔13と、流出孔13を開閉するパイロット弁体30と、を備えている。そして、流入孔12は、複数が設けられており、パイロット弁体30が流出孔13を開放している状態において、複数の流入孔12の各々から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントの和が互いに相殺されている(0.001N・m以下に収まるように調整されている)。
このような特徴により、背圧室4とパイロット弁体30とを利用した構成を採用しているため、小さい力で主弁体10を操作することができる。
そして、複数の流入孔12が設けられていて、パイロット弁体30が流出孔13を開放している状態において当該複数の流入孔12の各々から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントの和の絶対値が、0.001N・m以下に収まるように調整されていることにより、主弁体10が移動中に傾斜する力が相殺し合って主弁体10の姿勢が安定的に保持される。
前述の通り、複数の流入孔12の各々から背圧室4に流入する液体に基づいて主弁体10に作用するモーメントは、流量調整バルブ1の設計に際して広く利用されているCAE(Computer Aided Engineering)やCFD(Computational Fluid Dynamics)と呼ばれるコンピュータを利用した解析手法によって評価することができる。
また、前述の通り、複数の流入孔12は、主弁体10に設けられていることが好ましい。この場合、流入孔12の個数、位置、形状、サイズ等の設計を、主弁体10の設計と同時に行うことができる。
また、前述の通り、複数の流入孔12の各々は、主弁体10内において直線的な経路として設けられていることが好ましい。この場合、流入孔12内での圧力損失が小さいため、流体の流入及び/または空気の排出を効率よく行うことができる。
また、前述の通り、主弁体10は、軸線X回りに略対称な形状を有しており(図2参照)、主弁体10の重心は軸線X上に存在していることが好ましい。この場合、主弁体10自身の重力に対するバランスがよいため、主弁体10が移動中(開閉動作中)に傾斜してしまうことを抑制するための設計が容易である。
また、前述の通り、複数の流入孔12は、主弁体10の軸線Xを挟んで対称な位置に対をなすように配置されていることが好ましい。この場合、対をなすように配置された流入孔12からの液体流入により主弁体10に作用するモーメントが互いに相殺し合うため、主弁体10が移動中に傾斜してしまうことが効果的に抑制される。なお、対をなす流入孔12は、その(断面)形状においても、主弁体10の軸線Xに対して鏡像対称であることが好ましい。もっとも、通常は、各流入孔12の断面は円形(等方的)である。
また、前述の通り、主弁体10は、当該主弁体10の開閉方向が水平方向であるように配置され、複数の流入孔12は、主弁体10の軸線Xに対して上側の領域と下側の領域とのそれぞれに、少なくとも1つが配置されていることが好ましい。この場合、背圧室4内に液体が存在していない状況下(例えば設備設置時)において、上下の流入孔12からバランスよく液体が流入して空気の排出が促されるため、液体による内部置換がスムーズで、いわゆるエア噛みという現象が生じにくい。また、水抜きを行う場合の空気置換も、同様にスムーズである。
また、前述の通り、主弁体10は、軸線X回りに回転しないように、ダイヤフラム膜11を介して流路2、3内に固定されていることが好ましい。この場合、主弁体10に対する流入孔12の位置を適切に位置決めしておけば、所望の相対位置に流入孔を配置することが容易である。
また、前述の通り、パイロット弁体30は、ステッピングモーター60によって駆動されることが好ましい。この場合、パイロット弁体30の動作を高精度に制御することができる。
なお、当該中間概念(3)による流量調整バルブ1においても、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61に限定されないで、手動で回転される回転部材であってもよい。すなわち、流量調整バルブ1は、手動式の流量調整バルブであってもよい。
[本実施形態から得られる中間概念(4):ストッパ80に関する観点から]
本実施形態から抽出できる流量調整バルブ1は、回転する回転部材(例えば回転軸61)と、回転部材の回転に伴って直線移動可能であるリフター40と、リフター40の直線移動に伴って直線方向に移動可能な弁体(例えばパイロット弁体30)と、位置変更不可能な固定状態においてリフター40の移動範囲を制限するストッパ80と、当該ストッパ80を、位置変更可能な仮固定状態と、前記固定状態と、のいずれかにて選択的に保持するストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92)と、を備えている。
このような特徴により、ストッパ80を仮固定状態として、当該ストッパ80の位置を変更することができる。具体的には、例えば、ストッパ80を位置変更可能な仮固定状態にて保持した後、ストッパ80の位置を変更させながら通水及び止水の試験を行って止水領域の調整を行い、当該調整の後で、ストッパ80を位置変更不可能な固定状態にて保持することができる。これにより、個々の流量調整バルブ1毎に、適切な閉弁位置を実現できるよう弁体(例えばパイロット弁体30)のストロークを調整することができる。
前述の通り、ストッパ80の仮固定状態において位置変更可能な範囲は、止水領域を含む。この場合、ストッパ80を位置変更可能な仮固定状態にて保持した後、当該ストッパ80の位置を変更させながら止水の試験を行って止水領域の調整を行うことができる。そして、当該調整の後で、ストッパ80を位置変更不可能な固定状態にて保持することができる。これにより、個々の流量調整バルブ1毎に、適切な閉弁位置を実現できるよう弁体のストロークを調整することができる。
また、本実施形態の蓋部材92の窓部92wのように、少なくともストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92)がストッパ80を仮固定状態で保持している時、ストッパ80の少なくとも一部を外部に露出させる構成を有していることが好ましい。この場合、外部に露出しているストッパ80の少なくとも一部に働きかけることで、当該ストッパ80の位置を変更することが容易である。更に、当該ストッパ80の少なくとも一部は、調整作業用のツマミ部81であることが好適である。
また、前述の通り、ストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92)がストッパ80を仮固定状態で保持している時、ストッパ80の仮固定位置に関する目盛りが外部から視認可能であることが好ましい。この場合、止水領域等の調整を図る際に調整者が当該目盛りを外部から視認して活用することができるため、ストッパの位置を変更しながら止水領域等の調整を図る作業が容易である。具体的には、本実施形態では、ストッパ80に付された縦縞模様及びツマミ部81と、窓部92wに設けられた目印92iと、の相対位置関係を活用することで、ストッパ80の位置を変更しながら止水領域等の調整を図ることが容易である。
また、前述の通り、リフター40は、回転部材である回転軸61の回転に伴って回転するようになっており、リフター40には、突起42が設けられており、リフター40の突起42に当接してリフター40の回転に伴って当該突起42を回転軸線方向に案内することでリフター40を回転軸線方向に移動させる案内斜面23を有しており、ストッパ80は、リフターの回動範囲を360°未満に制限していることが好ましい。この場合、360度以上回転させて利用するいわゆるネジ式に比べて送り角度(回転角度に対する軸方向移動量)を大きく設定することができるので、回転運動の軸方向運動への変換を好適な態様で実現できる。これによれば、わずかな回転で弁体を大きく動作させることができるようになり、応答性が向上する
また、前述の通り、回転部材は、リフター40と回転方向に係合して当該リフター40に回転を伝達する継手部材50を有しており、継手部材50は、外周側に突出するストッパ規制部58を有しており、ストッパ80は、断面略C形状に切り欠かれた筒形状を有していて、継手部材50の外周側の少なくとも一部を取り囲み、継手部材50のストッパ規制部58の回動範囲を制限することによって、リフター40の回動動囲を制限するようになっている。この場合、リフター40の回動範囲を360°未満に制限することが容易であり、ストッパ80が継手部材50の外周側の少なくとも一部を取り囲むために占めるスペースが小さいために省スペース化も図れ、ストッパ80自体のコストを低廉に抑えることもできる。
また、前述の通り、ストッパ80は、軸線方向の両側から挟圧されて拡径状態となることで、位置変更不可能な固定状態となることが好ましい。この場合、挟圧されて拡径状態となったストッパが元に戻ろうとする(縮径する)力が軸線方向の長さを増す方向に働くため、結果的に挟圧力が増すことになって固定状態が安定する。また、ストッパの仮固定状態と固定状態とを切り替えるための構成を柔軟に設計することが可能であるため、当該構成を低廉なコストで実現することができる。
また、前述の通り、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61であり、ストッパ80は、リフター40の外周側に配置されたケース部材91と、ステッピングモーター60のハウジング62に固定された蓋部材92と、によって挟圧されるようになっており、前記ケース部材と前記蓋部材とを締結する締結部材を更に備える。この場合、ストッパ80の仮固定状態と固定状態とを切り替えるための構成と、ステッピングモーター60を固定するための構成と、を蓋部材92が兼ねるため、部品点数の増大を抑制することができる。
また、前述の通り、リフター40を収容するケース部材91と、ケース部材91を上方側から塞ぐ蓋部材92と、ケース部材91と蓋部材92とを締結する締結部材(例えば特殊なネジ部材93)と、を更に備え、ストッパ80の少なくとも一部が、ケース部材91と蓋部材92とにより挟まれて位置固定されるようになっていることが好ましい。この場合、ストッパ80の少なくとも一部がケース部材91と蓋部材92とにより上下からの挟み込みの力で位置固定されるため、位置固定後にストッパ80が不所望に移動してしまうおそれが低減される。また、部品点数を少なくすることができるという効果もある。
この場合も、前述の通り、ストッパ80は、断面略C形状に切り欠かれた筒形状を有していて、軸線方向の両側から挟圧されて拡径状態となることで、位置変更不可能な固定状態となることが好ましい。この場合、ストッパ80が占めるスペースを小さく抑えることができ、また、ストッパ80自体のコストも低廉に抑えることができる。また、挟圧されて拡径状態となったストッパ80が元に戻ろうとする(縮径する)力が軸線方向の長さを増す方向に働くため、結果的に挟圧力が増すことになって固定状態が安定する。更に、ストッパ80の仮固定状態と固定状態とを切り替えるための構成を柔軟に設計することが可能であるため、当該構成を低廉なコストで実現することができる。
また、この場合も、前述の通り、回転部材は、モーターの回転軸であり、ケース部材91は、リフター40の外周側に配置されており、蓋部材92は、モーターのハウジングに固定されており、ストッパ80は、ケース部材91と蓋部材92とによって挟圧されるようになっていることが好ましい。この場合、ストッパ80の仮固定状態と固定状態とを切り替えるための構成と、モーターを固定するための構成と、を蓋部材92が兼ねるため、部品点数の増大を抑制することができる。
また、前述の通り、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61であることが好ましい。この場合、流量制御をコンピュータ制御によって実現することもできる。また、小流量の制御であっても、ステッピングモーター60を微細に制御することで、安定的した吐水が可能である。
また、前述の通り、締結部材は、1以上のネジ部材93であり、ネジ部材93の各々の回転軸線は、ストッパ80の軸線に対してオフセットされていることが好ましい。この場合、ネジ部材93の各々を操作してもストッパ80が連れ回ってしまうことが抑制されるため、ネジ部材93の各々を操作する際にストッパ80が不所望に回動して位置を変えてしまうことが抑制される。
また、前述の通り、ストッパ80の軸線方向の一端または両端に、外周側に向かって軸線方向の長さが大きくなるという傾斜82が設けられていることが好ましい。この場合、ストッパ80が狭圧されて拡径された状態で安定するため、部材の偏心がおきにくく、ストッパ80の位置変更不可能な固定状態が安定する。
また、前述の通り、ストッパ80の軸線方向の一端に挟圧を適用する部材が当該ストッパと当接する面は、外周側に向かって軸線方向の長さが小さくなるという傾斜面となっていることが好ましい。この場合にも、ストッパ80が狭圧されて拡径された状態で安定するため、部材の偏心がおきにくく、ストッパ80の位置変更不可能な固定状態が安定する。
なお、本実施形態のストッパ80は、継手部材50のストッパ規制部58の回動を規制することでリフター40の回動範囲を規制するようになっているが、リフター40の直線移動範囲を規制するように設置されてもよい。具体的には、例えば、リフター40の外周側に突起が設けられ、ケース部材91の内周側に当該突起の移動範囲を規制するようなストッパが設置されてもよい。
また、前記のいずれかの特徴を有する流量調整バルブ1を2つ備え、当該2つの流量調整バルブ1の一方が、給水源と接続されており、当該2つの流量調整バルブ1の他方が、給湯源と接続されていることを特徴とする湯水混合水栓システムが提供され得る。この場合、安定した湯水の混合を行うことができる。
また、前記のいずれかの特徴を有する流量調整バルブ1の製造方法であって、ストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92)に、ストッパ80を位置変更可能な仮固定状態にて保持させる仮固定工程と、ストッパ80が仮固定状態に保持された状態で、ストッパ80の位置を変更させながら通水及び止水の試験を行って止水領域の調整を行う調整工程と、当該調整工程の後に、ストッパ保持部材に、ストッパ80を位置変更不可能な固定状態にて保持させる固定工程と、を備えたことを特徴とする製造方法が提供され得る。
この方法により、個々の流量調整バルブ毎に、適切な閉弁位置を実現できるよう、弁体(パイロット弁体30)のストロークを調整することができる。
更に、前記したような継手部材50を有する流量調整バルブ1の製造方法であって、ストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92)に、ストッパ80を位置変更可能な仮固定状態にて保持させる仮固定工程と、ストッパ80が仮固定状態に保持された状態で、ストッパ80の位置を継手部材50と一緒に変更させながら通水及び止水の試験を行って止水領域の調整を行う調整工程と、当該調整工程の後に、ストッパ保持部材に、ストッパ80を位置変更不可能な固定状態にて保持させる固定工程と、を備えたことを特徴とする製造方法が提供され得る。
この方法によっても、個々の流量調整バルブ毎に、適切な閉弁位置を実現できるよう、弁体(パイロット弁体30)のストロークを調整することができる。ストッパ80の位置を継手部材50と一緒に変更させる際には、マニュアル調整ジグ85を用いることが好ましい。
なお、当該中間概念(4)による流量調整バルブ1においても、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61に限定されないで、手動で回転される回転部材であってもよい。すなわち、流量調整バルブ1は、手動式の流量調整バルブであってもよい。
また、当該中間概念(4)による流量調整バルブ1の弁体というのは、流量調整バルブ1の主弁体10であってもよいし(パイロット弁体を有しない構成を含む)、背圧室4の圧力を利用して主弁体10を移動させるパイロット弁体30であってもよい。
[本実施形態から得られる中間概念(5):駆動ユニット101に関する観点から]
本実施形態から抽出できる流量調整バルブ1は、回転する回転部材(例えば回転軸61)と、回転部材の回転に伴って直線移動可能であるリフター40と、リフター40の直線移動に伴って直線方向に移動可能な弁体(例えばパイロット弁体30)と、当該弁体が閉弁状態の時に接触する弁座(例えば流出孔13の背圧室側の端13e)を有する基部102と、を備えている。そして、回転部材である回転軸61、リフター40及びパイロット弁体30を含む構成部材群が、一体的にユニット化されて駆動ユニット101を構成しており、当該駆動ユニット101は、基部102に対して、一体的に着脱可能である。
このような特徴により、通常のメンテナンス作業時においては、駆動ユニット101を基部102に対して取り外すだけで足り、駆動ユニット101の分解の必要が無い。このため、駆動ユニット101を構成する部材間のばらつきの累積については、メンテナンス作業の前後で変更がない。これにより、ストッパ80による規制範囲の再調整を行わなくても、高い流量調整性能を維持することができる。
前述の通り、駆動ユニット101は、基部102から取り外された時、弁体が露出状態となる。この場合、弁体に対するメンテナンス作業が極めて容易である。
当該中間概念(5)による流量調整バルブ1の弁体というのは、流量調整バルブ1の主弁体10であってもよいし(パイロット弁体を有しない構成を含む)、背圧室4の圧力を利用して主弁体10を移動させるパイロット弁体30であってもよい。
前述の実施形態のように、弁体がパイロット弁体30であり、基部102がダイヤフラム膜11を介して流路2、3内に支持された主弁体10を含んでおり、駆動ユニット101と主弁体10との間に背圧室4が形成されており、流路の上流側2と背圧室4とを連通する流入孔12が設けられており、流路の下流側3と背圧室4とを連通する流出孔13がパイロット弁体30によって開閉可能に設けられている場合、メンテナンス頻度の高い主弁体10が駆動ユニット101に対して別体となっていることにより、メンテナンス作業の作業性が高い。
また、前述の実施形態のように、駆動ユニット101が、主弁体10と対面する背圧室形成部材20を有しており、パイロット弁体30をリフター40に接続する長手部材32が、水密シール34を介して背圧室形成部材20を貫通しており、リフター40、長手部材32及びパイロット弁体30は、背圧室形成部材20に対して直線移動可能となっている場合、回転部材及びリフター40が水密シール34によって液体から遮断されるため、採用できる部品の選択の幅が広がる。
また、前述の通り、駆動ユニット101の各構成部材を締結する締結部材と、駆動ユニット101と基部102とを組み付ける組付部材と、を更に備え、締結部材と組付部材とは、異なる種類の部材であることが好ましい。この場合、組付部材に対する取り外し作業中に、誤って締結部材に対する取り外し作業が実施されてしまうことを効果的に防止することができる。
特に、締結部材は、特殊なネジ部材93、96であり、組付部材は、通常のネジ部材103であることが更に好ましい。この場合、特段のコストを要することなく、組付部材に対する取り外し作業中に誤って締結部材に対する取り外し作業が実施されてしまうことを防止することができる。なお、特殊なネジ部材とは、いわゆる星形ネジ部材等、異形のネジ部材を意味する。
また、前述の通り、駆動ユニット101と基部102とを組み付ける組付部材は、同一方向に延びる複数のネジ部材103であることが好ましい。この場合、組付部材である複数のネジ部材103が同一方向に整列されていることにより、当該複数のネジ部材103に対する操作性が高い。具体的には、流量調整バルブ1を回転させたり姿勢を変えたりする必要なく、駆動ユニット101の基部102に対する着脱作業を実施することができる。
また、前述の通り、駆動ユニット101の一部と基部102の一部との間には、水密部材(例えばシール部11s)が設けられており、駆動ユニット101の他の一部と基部102の他の一部とは、当接していることが好ましい。この場合、水密部材によって所望の領域における水密機能を発揮できる一方、当接によって、例えば組付部材103のトルク管理を行わなくても、常に所定の「シール代」を得ることができる。また、複数個所に組付部材103が設けられている場合でも、それらの組付程度のばらつきに起因して駆動ユニット101が傾斜するという心配がない。
また、前述の通り、駆動ユニット101は、位置変更不可能な固定状態においてリフター40の移動範囲を制限するストッパ80と、当該ストッパ80を、位置変更可能な仮固定状態と、前記固定状態と、のいずれかにて選択的に保持するストッパ保持部材(例えばケース部材91及び蓋部材92))と、を更に有しており、ストッパ保持部材がストッパ80を前記仮固定状態で保持している時、ストッパ80の少なくとも一部が駆動ユニット101の外部に露出していることが好ましい。この場合、駆動ユニット101の組立後においても、外部に露出しているストッパ80の少なくとも一部に働きかけることで、当該ストッパ80の位置を変更することが容易である。
なお、当該中間概念(5)による流量調整バルブ1においても、回転部材は、ステッピングモーター60の回転軸61に限定されないで、手動で回転される回転部材であってもよい。すなわち、流量調整バルブ1は、手動式の流量調整バルブであってもよい。