実施例に係る冷凍・冷蔵ショーケースにつき、図1から図8を参照して説明する。以下、図1の紙面左側を冷凍・冷蔵ショーケースの正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
図1に示されるように、冷凍・冷蔵ショーケース1は、主に商店やスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の食品等を取り扱う販売店舗に設置され、商品を低温に保ったまま保冷、または冷凍した状態で陳列するために設置されるものであり、正面側を開口した内箱3により囲まれた保冷室5には、商品を陳列する棚板6,6,…が上下方向に複数設置され、内箱3の下部に設けられた底部3bにも商品(図示省略)を陳列可能になっており、商品を多数載置可能な構成となっている。尚、本実施例の冷凍・冷蔵ショーケース1は、商品を冷凍した状態で陳列する態様を例に挙げ説明する。
冷凍・冷蔵ショーケース1は、前面(図の左方)が開放された略コ字形をなす断熱構造の外箱2と、その内方の、同じく前面が開放された略コ字形の内箱3とからなるケース本体を備え、その内部空間は保冷室5(庫内)となっている。内箱3の背面部3aには、前後に延びるブラケット28,28,…の後端が取付けられており、ブラケット28,28,…の上に棚板6,6,…が配設されている。この各棚板6,6,…と内箱3の底部3bとの上面に、商品(図示略)が陳列されるようになっている。
外箱2と内箱3との間には、通風路7が形成され、この通風路7の鉛直部と水平底部には、それぞれ蒸発器8と送風機9が設置されている。後述するように蒸発器8は、その周囲の空気を冷却することができるようになっている。また、蒸発器8の前面側には、断熱材29が設けられており、蒸発器8と内箱3を介した保冷室5側との熱交換が抑えられている。ケース本体の上部の前端には、通風路7と連通する冷気吹出口10が下向きに形成され、またケース本体の下部前端の上端には、上方に開口する冷気の吸込口11が形成されている。蒸発器8は、通常運転時(営業時間中)における冷却設定温度(吹出口温度)が、−27℃前後となるように設定されており、本実施例の条件下において庫内温度が−20℃前後となっている(図6、図7参照)。
送風機9を作動させると、蒸発器8により冷却された冷気は、矢印のように、通風路7内を上方に向かって流れ、冷気吹出口10より、下方の吸込口11に向かって吹き出される。これにより、ケース本体の前面の開放面に冷気のエアカーテン12が形成されるとともに、その冷気の一部が保冷室5内に流入することにより、陳列商品が保冷されるようになる。
次に、冷凍・冷蔵ショーケース1における蒸発器8について説明する。図1及び図3に示されるように、蒸発器8は、その内部に冷媒16が流れる銅管である伝熱管15を備え、この伝熱管15は、複数のフィン30,30,…を貫通して蛇行するように延びており、これにより、伝熱管15と周囲の空気との接触面積が増え、送風機9からの送風が効率よく当たり、冷却効率が向上している。詳しくは、図3に示されるように、伝熱管15は、複数のフィン30,30,…(説明の便宜上、一部図示)を貫通する複数の直管部15a,15a,…と、隣接する直管部15a,15aの端部同士を繋ぐUベンド部15b,15b,…と、から構成されており、組み立てが容易となっている。この伝熱管15は、構造上、Uベンド部15b,15b,…が端部に位置しており、Uベンド部15b,15b,…に対して送風機9からの送風が当たりづらくなっているため、Uベンド部15b,15b,…には、直管部15a,15a,…に比べて着霜し易くなっている。尚、この伝熱管15は、銅管に限られず、熱伝導率の高い金属製や樹脂製の管であってもよい。
また、蒸発器8の伝熱管15において熱交換が起こりにくいUベンド部15b,15b,…の中でも通風路7内の冷却前の空気と接触し、着霜が最も大きくなる通風路7上流側に位置するUベンド部15b’の近傍には、Uベンド部15b’の表面温度を計測する温度センサ13が設けられている。この温度センサ13は、図示しない制御部に接続されており、該制御部は後述する三方切換弁25に接続されている。伝熱管15のUベンド部15b’における表面温度を温度センサ13によって計測することで、前記制御部は後述の除霜運転パターンβにおいて伝熱管15の外表面の着霜状況を判断することができる。尚、棚板6,6,…の近傍及び冷気吹出口10の近傍にも、図示しない温度センサが設けられており、庫内温度及び蒸発器8を通過した空気の温度を計測可能となっている。
尚、本実施例では、温度センサ13がUベンド部15b’の表面温度を計測する形態を例示したが、伝熱管15の他の部位の表面温度を計測するようになっていてもよい。また、前記説明では、各温度センサにより、伝熱管15の表面温度、蒸発器8を通過した空気の温度、及び庫内温度を計測していたが、温度センサは、伝熱管15の表面温度、蒸発器8を通過した空気の温度、または庫内温度のうち、少なくとも1箇所を計測できる位置に設けられていればよい。
また、蒸発器8の下方位置、つまり冷凍・冷蔵ショーケース1の空気の循環経路において蒸発器8よりも上流側の位置には、電気加熱式の除霜ヒータ4(加熱手段)が配設されている。この除霜ヒータ4は、前記制御部に接続されており、該制御部により該除霜ヒータ4と所定の電源との間の回路が通電状態とされることで加熱される。尚、前記制御部は、タイムテーブルに従って所定の時間毎に除霜ヒータ4と所定の電源との間の回路を通電状態とするとともに、温度センサ13から得られる情報に基づき除霜ヒータ4と所定の電源との間の回路を非通電状態とする。
図2に示されるように、この蒸発器8は、冷凍サイクルの配管系統Cの一部である。詳しくは、蒸発器8の上流側の端部には、液化状態の冷媒16を所定の蒸発圧力(温度)となるように減圧して気化状態とする膨張弁17が設けられているとともに、膨張弁17には、冷媒16を貯留する受液器18が供給管19を介して接続されている。尚、膨張弁17と供給管19との間には、開閉弁14が配設されており、膨張弁17及び供給管19間の流路を適宜開閉可能となっている。
また、蒸発器8の下流側の端部には、切換回路20(蒸発圧力調整装置・冷媒温度変更手段)が接続され、切換回路20の下流側には、蒸発器8内で蒸発した気化状態の冷媒16を吸い込むとともに、該冷媒16を圧縮して受液器18側に送り出す圧縮器21(ポンプ)が接続されており、圧縮器21は、凝縮器22を介して受液器18に接続されている。この凝縮器22は、圧縮器21により圧縮された高圧気化状態の冷媒16の熱を外部に放出して冷媒16を液化状態にするものである。
尚、図2において、冷媒16について液体(液化)状態のものを実線で、気体(気化)状態のものを破線で示した。また、受液器18内の液化状態の冷媒16の温度は、例えば夏場では、35℃から40℃程度となっており、冬場では、20℃程度となっている。
図2及び図4に示されるように、切換回路20は、蒸発器8の伝熱管15に連通する第1配管23(他方の流通経路)と、第1配管23に設けられるバイパス管である第2配管24(一方の流通経路)と、第1配管23及び第2配管24の上流側交点に設けられる三方切換弁25(切換手段)と、第2配管24に設けられる蒸発圧力調整弁26(EPR)と、蒸発圧力調整弁26の下流側に設けられる逆止弁27と、から成る。
三方切換弁25は、第2配管24を閉塞し、伝熱管15と第1配管23とを連通させる態様(図4参照)と、第1配管23を閉塞し、伝熱管15と第2配管24とを連通させる態様(図5参照)と、に切り換え可能となっている。この三方切換弁25は、前記制御部によって適宜切換制御されるようになっている。この三方切換弁25が切り換わることによって、蒸発器8が、周囲の空気を冷却する冷却運転パターンαと、伝熱管15に付着した霜を取り除く除霜運転パターンβにおける第1除霜運転β1と、にそれぞれ切り換え可能となっている。尚、蒸発器8の冷却運転パターンαと除霜運転パターンβとの動作については後段にて詳述する。
蒸発圧力調整弁26は、設定された設定圧力以上で第2配管24内の流路を開放し、設定圧力よりも低い圧力で第2配管24内の流路を閉塞する弁体であり、蒸発器8内に流入する冷媒16の圧力を調整するようになっている。この設定圧力は、蒸発器8が冷却運転パターン時における該蒸発器8内の冷媒16の所定の蒸発圧力よりも高い圧力に設定されている。
逆止弁27は、三方切換弁25を第2配管24側に切り換えた際に、下流側の冷媒16が、蒸発圧力調整弁26側に逆流するのを防いでいる。
このように構成された冷凍・冷蔵ショーケース1は、図6(b)及び図7に示されるように、冷却運転パターンαと、除霜運転パターンβと、を備えている。本実施例の冷凍・冷蔵ショーケース1は、営業時間中及び営業時間外に冷却運転パターンαが行われ、営業時間外における所定期間には除霜運転パターンβが行われる。尚、除霜運転パターンβは、営業時間中に行われてもよいし、営業時間中や営業時間外に関わらず所定の運転周期で行われるようになっていてもよい。さらに尚、除霜運転パターンβは、営業時間中または営業時間外に複数回行われてもよい。
除霜運転パターンβは、冷却運転パターンα時に伝熱管15内に流される冷媒16よりも高温の冷媒16を伝熱管15内に流すことにより除霜を行う第1除霜運転β1と、除霜ヒータ4を用いて伝熱管15を外側から加熱することにより除霜を行う第2除霜運転β2とを組み合わせて行われる。尚、詳細は後述するが、第1除霜運転β1において冷媒16を蒸発圧力調整弁26に通すことによりその温度を高めている。
次に、蒸発器8が冷却運転パターンαである時の冷凍サイクルの配管系統Cの運転態様について説明する。尚、冷却運転パターンαにあっては、蒸発器8が冷却運転を行い、除霜ヒータ4がOFF状態となっている(図6(b)及び図7参照)。図2及び図4に示されるように、蒸発器8が冷却運転パターンαである時には、三方切換弁25により、第2配管24を閉塞し、且つ伝熱管15と第1配管23とを連通させる。圧縮器21が作動すると、受液器18に貯留された液化状態の冷媒16が、蒸発器8に向けて供給管19及び膨張弁17を介して送り出される。この液化状態の冷媒16は、膨張弁17によって所定の蒸発圧力となるように減圧され、気化状態となる。蒸発器8の伝熱管15内に流入した気化状態の冷媒16が、通風路7内の空気から熱を奪うことにより、通風路7内の空気が冷却される。
蒸発器8の伝熱管15を通過した気化状態の冷媒16は、伝熱管15に連通した第1配管23に流入し、圧縮器21及び凝縮器22を介して受液器18に戻される。この動作を繰り返すことにより、蒸発器8の冷却運転パターンαが連続して継続される。
尚、蒸発器8が冷却運転パターンαである時には、伝熱管15内に流入した気化状態の冷媒16によって伝熱管15の表面温度は−37℃前後となっている(図6(a)、図7参照)。
次いで、蒸発器8が除霜運転パターンβにおける第1除霜運転β1である時の冷凍サイクルの配管系統Cの運転態様について説明する。尚、除霜運転パターンβにおける第1除霜運転β1にあっては、蒸発器8が除霜運転を行い、除霜ヒータ4がOFF状態となっている(図6(b)及び図7参照)。図2及び図5に示されるように、蒸発器8が除霜運転パターンβにおける第1除霜運転β1である時には、三方切換弁25により、第1配管23を閉塞し、伝熱管15と第2配管24とを連通させる。蒸発器8の伝熱管15を通過した気化状態の冷媒16は、伝熱管15と連通した第2配管24に流入する。
このとき、伝熱管15内及び第2配管24内の冷媒16は、前述のように蒸発圧力調整弁26の設定圧力よりも低い圧力(所定の蒸発圧力)となっているため、蒸発圧力調整弁26は、第2配管24を閉塞した状態となっている。第2配管24に流入する冷媒16は、閉塞状態の蒸発圧力調整弁26に塞き止められることにより、蒸発器8の上流に設けられた膨張弁17から閉塞状態の蒸発圧力調整弁26までの区間の圧力が高まっていき、該圧力が設定圧力以上に高まることにより、蒸発圧力調整弁26が開き第2配管24を冷媒16が通過可能とした状態となる。換言すれば、蒸発圧力調整弁26は、膨張弁17から蒸発圧力調整弁26までの区間に流入する冷媒16の蒸発圧力が設定圧力以下に低下しないように制御している。
これによれば、蒸発圧力調整弁26を利用した切換回路20によって蒸発器8を冷却運転から第1除霜運転β1に切り換えることにより、蒸発器8の伝熱管15内に流入した冷媒16は、蒸発圧力調整弁26により圧縮され、冷却運転時よりも高い蒸発圧力となり、その温度が0℃以上(例えば5℃)に上昇する(図示略)。このように、切換回路20によって冷媒16の温度を変更できるため、圧縮器21の出力(回転数)を一定にしながら、言い換えれば圧縮器21の出力を変更しなくても、蒸発器8の冷却運転と第1除霜運転β1との切換制御が簡便である。
また、蒸発器8が除霜運転パターンβにおける第1除霜運転β1の状態(三方切換弁25の切換により伝熱管15と第2配管24とが連通した状態)にあっては、温度が0℃以上に上昇した冷媒16により伝熱管15の内部から熱伝導により熱が伝熱管15の外表面に伝えられる。このため、冷媒16の熱によって屈曲した伝熱管15において、特に着霜しやすく、且つ除霜し難いUベンド部15b,15b,…であっても隅々まで除霜することができる。また、伝熱管15の外表面に付着した霜の付着面(言い換えると霜の根元)から融解させることができる。
ここで、除霜ヒータを用いた加熱方式のみの除霜の場合(従来技術の場合)、蒸発器への冷媒の流入を停止した状態で、除霜ヒータにより蒸発器を外部から加熱することにより除霜を行うため、除霜ヒータの大きな熱量を利用して短時間で除霜を行うことができるが、冷却運転を停止した状態で霜が溶けるまで除霜ヒータにより蒸発器が加熱されるため、庫内温度を必要以上に上昇させてしまい、庫内に陳列された商品を劣化させてしまう虞があった。また、冷媒の流れを止めるオフサイクル方式の除霜は、送風機の送風のみで解凍する(または送風機も止めて自然解凍する)ため、霜を溶かすまでに時間がかかり、その間は蒸発器による冷却ができず、庫内温度が例えば7〜8℃程度に上昇してしまう上に、その温度が上昇した状態から所望の庫内温度まで再度冷却しなければならない。尚、ここでいう、庫内温度とは、棚板6,6,…付近(商品に近い場所)の温度を指す。
さらに、前記除霜ヒータ4のみを用いた加熱方式の除霜及びオフサイクル方式の除霜にあっては、開閉弁14で供給管19を閉塞することにより蒸発器8への冷媒16の流れを止めることが一般的であるため、前記開閉弁14を閉塞した直後には、圧縮器21の吸い込みにより伝熱管15内の冷媒16の蒸発圧力が急激に下がり、冷媒16の温度が瞬間的に例えば−40℃まで低下するとともに、その後、徐々に伝熱管15の温度が上昇するようになっており、伝熱管15の表面温度が一時的に低下することにより伝熱管15の外表面に付着した霜が溶けにくくなった状態から伝熱管15の温度を上昇させる必要があり、除霜運転に移行するまでに長い時間がかかっていたが、本実施例の蒸発器8は、切換回路20により即座に冷媒16の温度を上昇させるため、冷却運転と第1除霜運転β1との切り換えを短時間で行うことができるようになっている。
また、膨張弁17から蒸発圧力調整弁26までの区間の圧力が、設定圧力以上に高まると、蒸発圧力調整弁26が開放されるため、蒸発圧力調整弁26が開放された状態にあっては、膨張弁17から蒸発圧力調整弁26までの区間の圧力が前記設定圧力となり、冷媒16の蒸発温度は設定圧力に対応する温度となる。すなわち、温度が略一定に保たれ、庫内温度の急激な上昇を防止できるとともに、蒸発温度が低下することもなく、確実に除霜運転が遂行される。また、設定圧力以上に圧力が高まることにより開かれた蒸発圧力調整弁26を通過した冷媒16は、逆止弁27を介して圧縮器21に流入する。
次いで、蒸発器8の一日の動作態様について図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7に示されるように、営業時間中には、冷凍・冷蔵ショーケース1が冷却運転パターンαで運用されており、夜間等の営業時間外には、少なくとも1回除霜運転パターンβとなる。
営業時間外において蒸発器8が冷却運転パターンαから除霜運転パターンβに切り換わると、先ず、第2除霜運転β2が開始される。詳しくは、タイムテーブルに従って前記制御部が除霜ヒータ4を加熱状態(除霜ヒータ4がON状態)としたときに、冷却運転パターンαから除霜運転パターンβに切り換わることとなる。
この第2除霜運転β2では、除霜ヒータ4がON状態となり、その輻射熱により伝熱管15の外表面に付着した霜の一部を溶かす。尚、第2除霜運転β2では、除霜ヒータ4の輻射熱や対流熱により蒸発器8の伝熱管15の表面温度、吹出口温度、及び庫内温度が大きく上昇するが、蒸発器8は冷却運転を継続しているため、各箇所の急激な温度上昇が抑制される。
次いで、温度センサ13により冷却運転パターンαにおいて−35℃前後であった伝熱管15の表面温度が−15℃まで上昇したことが検知されると、前記制御部が除霜ヒータ4と所定の電源との間の回路を非通電状態(除霜ヒータ4がOFF状態)とするとともに、第1配管23を閉塞し、伝熱管15と第2配管24とを連通するように三方切換弁25を動作させて第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り替える(図5参照)。つまり、除霜運転パターンβにおける第2除霜運転β2から第1除霜運転β1への切り換え設定温度は、−15℃となっている。尚、第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換えられたときの吹出口温度は、本実施例の条件下で−13℃前後となっており、庫内温度は、本実施例の条件下で−15℃前後となっている。さらに尚、第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り替えた状態にあっては、伝熱管15の外周面に霜が残っている。
このように、除霜運転パターンβにおいて、温度センサ13が所定の設定温度(例えば、−15℃)を検知したことに基づいて蒸発器8を第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換えられることにより、庫内温度の制御精度を高めることができる。すなわち、伝熱管15の表面温度を基準として第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り替えるため、時間を基準として制御する場合に比べて、伝熱管15の外表面に付着した霜残りの状態にバラつきが生じにくく、第2除霜運転β2から第1除霜運転β1への切り替え時の庫内温度を略一定(例えば、−15℃程度)にできる。
第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換わると、伝熱管15の表面温度は、第2除霜運転β2における温度上昇よりも緩やかに温度上昇する。これは、第2除霜運転β2において動作する除霜ヒータ4の熱量よりも第1除霜運転β1において伝熱管15内を流れる冷媒16の熱量が小さいためである。
そして、温度センサ13により伝熱管15の表面温度が2℃まで上昇したことが検知されると、前記制御部は、蒸発器8を第1除霜運転β1から冷却運転に戻す。すなわち、冷凍・冷蔵ショーケース1を冷却運転パターンαで動作させる。第1除霜運転β1から冷却運転に戻したとき(第1除霜運転β1終了時)の吹出口温度は、5℃前後となっており、庫内温度は、3℃前後となっている。このように、温度センサ13が所定の設定温度(例えば、2℃)を検知したことに基づいて第1除霜運転β1から冷却運転に切り換えられるため、第1除霜運転β1から冷却運転への切り替え時の庫内温度を略一定(例えば、3℃)にできる。つまり、除霜運転パターンβにおいて庫内温度が、所定の温度(例えば、3℃)よりも著しく高くなることを防止できる。
尚、図示しないが、第1除霜運転β1から冷却運転に戻す際には、開閉弁14を所定期間閉鎖状態とする。これによれば、圧縮器21の吸い込みにより伝熱管15内の冷媒16の蒸発圧力が急激に下がり、冷媒16の温度を瞬間的に冷やすことができるため、短時間で蒸発器8を冷却状態(例えば、伝熱管15の表面温度が−37℃前後となる状態)とすることができる(図6(a)参照)。
以上説明したように、冷凍・冷蔵ショーケース1は、冷媒16を蒸発器8内に流すことにより庫内を冷却する冷却運転パターンαと、蒸発器8の着霜を除去する除霜運転パターンβとを有しており、除霜運転パターンβにおいて、冷却運転パターンαよりも高温の冷媒16を蒸発器8内に流すことにより除霜を行う第1除霜運転β1と、除霜ヒータ4を用いて蒸発器8を外側から加熱することにより除霜を行う第2除霜運転β2とを組み合わせて行うようになっている。
具体的には、例えば、商品を冷凍するために庫内温度を低くする際には、商品を冷蔵する場合等に比べて伝熱管15の外表面に着霜する霜が大きくなるため、熱量の大きな除霜ヒータ4を用いた第2除霜運転β2を行う必要があるが、第2除霜運転β2だけでなく、該第2除霜運転β2よりも小さな熱量となる第1除霜運転β1を行うことにより、除霜運転パターンβにおける第2除霜運転β2の時間を少なくできるため、庫内温度の上昇を抑えることができる。尚、第1除霜運転β1にあっては、伝熱管15の外表面に付着した霜の付着面(言い換えると霜の根元)から融解させることができるので、同一の熱量で外面から除霜する場合に比べて効率よく除霜できる。
また、霜が比較的大きく発達した除霜運転パターンβの最初の状態において、熱量の大きい除霜ヒータ4を用いた第2除霜運転β2を行うことにより、伝熱管15の外表面に付着した霜を溶けやすい状態とし、短時間の第1除霜運転β1で除霜を完了させることができるため、庫内温度の上昇を抑えつつ除霜することができる。
さらに、伝熱管15の外表面の温度が低い状態(冷却運転パターンα時の伝熱管15の外表面の温度)で第2除霜運転β2が開始されることとなり、第2除霜運転β2時における庫内温度の過度な上昇を防ぐことができる。また、第2除霜運転β2では、蒸発器8は冷却運転を継続しているため、庫内温度の過度な上昇を効率よく防ぐことができる。
また、除霜運転パターンβの最後は、前記第1除霜運転β1のみが行われる。これによれば、除霜運転パターンβの最後に、熱量の大きい除霜ヒータ4を用いた第2除霜運転β2に比べて熱量の小さい冷媒16を用いた第1除霜運転β1のみが行われるため、庫内温度の過度な上昇を防ぐことができる。換言すれば、除霜運転パターンβの最初に比べ伝熱管15の表面温度が高い状態となっている除霜運転パターンβの最後で熱量の大きい除霜ヒータ4を用いた第2除霜運転β2を行わないので、庫内温度の過度な上昇を防ぐとともに、短時間で庫内温度を冷却状態へ復帰させることができる。
また、第1除霜運転β1と第2除霜運転β2とを組み合わせて行うことにより、熱量の大きい除霜ヒータ4を用いた第2除霜運転β2によって蒸発器8を外部から加熱して伝熱管15全体の温度を上昇させた状態で、第1除霜運転β1によって冷媒16の熱を伝熱管15の内部から外表面に伝え、伝熱管15の外表面に付着した霜の付着面から融解させることができるため、熱量の小さい第1除霜運転β1であっても除霜運転パターンβを短時間で行うことができる。
また、除霜運転パターンβにあっては、第1除霜運転β1と第2除霜運転β2とを同時に行わないため、庫内温度の急激な上昇を防止でき、庫内温度が所定の上限設定温度(例えば、3℃)に達するまでに効率よく除霜を行うことができるようになっている。
また、上述したように、蒸発器8の動作態様(冷却運転パターンαと除霜運転パターンβとの切り換え)は、予め定められたタイムテーブルに沿って動作する除霜ヒータ4により行われており、このタイムテーブルは、適宜変更することが可能となっている。そのため、タイムテーブルを適宜変更すれば、季節や店内環境、冷凍・冷蔵ショーケース1の周辺環境によって変化する伝熱管15の着霜状態に合わせて、適切に蒸発器8の動作態様を切り換えることができ、蒸発器8の冷却能力を確実に維持できる。
尚、蒸発圧力調整装置の変形例として次のようなものもある。図8に示すように、蒸発圧力調整装置は、伝熱管15とその下流側に配置される配管231との間に配設される電子式の蒸発圧力調整弁261である。この蒸発圧力調整弁261は、流路の開度を調整可能な図示しないバルブを内部に備えており、図示しない制御部と接続されている。尚、本変形例のバルブは、流路の開口度合が10〜100%の間で適宜調整できるようになっている。
前記制御部は、冷却運転パターンαの際に蒸発圧力調整弁261に内蔵されるバルブを100%(最大)の開口度合とし、第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換える際に前記バルブを100%から10%(最少)の開口度合とするとともに、除霜運転パターンβを終了するまでに前記バルブを10%の開口度合から漸次拡大するように動作させる。これによれば、伝熱管15の外表面に着霜する霜が大きく残っている状態(第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換える際)には、バルブを10%の開度度合として即座に冷媒16の温度(蒸発圧力)を上昇させるとともに、その後霜が溶けていくことに合わせて、漸次開度度合を拡大させることで冷媒16の温度が漸次低下するように調整されることとなる。つまり、伝熱管15の外表面の着霜状況に合わせて段階的に冷媒16の温度を調整できるため、庫内温度の上昇を抑えながら効率よく除霜できる。尚、蒸発圧力調整弁261におけるバルブの開口度合の変化は蒸発器8の運転状況に合わせて種々に設定できる。また、蒸発圧力調整弁261におけるバルブの開口度合の調整可能範囲は、自由に設定できる。
尚、前記実施例では、デフロストパターンにおいて、第1除霜運転β1と第2除霜運転β2との動作時間帯をずらして行う形態について説明したが、例えば、第1除霜運転β1と第2除霜運転β2との動作時間帯の一部または全部が重なるようにして、除霜効率を高めるようにしてもよい。
また、前記実施例のデフロストパターンでは、第2除霜運転β2を最初に行っていたが、第1除霜運転β1を最初に行い、霜の内側を溶けやすくしても構わない。また、前記実施例のデフロストパターンでは、第1除霜運転β1を最後に行っていたが、第2除霜運転β2を最後に行って霜残りを確実に防止するようにしても構わない。また、前記実施例のデフロストパターンでは、第1除霜運転β1と第2除霜運転β2とを1回ずつ行っていたが、複数回ずつ行うようにしてもよい。つまり、デフロストパターンの態様は、適宜変更可能である。
また、前記実施例では、伝熱管15の表面温度が−15℃まで上昇したときに、第2除霜運転β2から第1除霜運転β1に切り換えられ、伝熱管15の表面温度が2℃まで上昇したときに第1除霜運転β1から冷却運転に切り換えられるようになっていたが、これに限られず、例えば、伝熱管15の表面温度が所定の温度(−15℃または2℃)よりも低い温度となったことを検知した後、その所定時間経過後に蒸発器8の運転態様を切り換えるようにして(いわゆる遅延制御として)もよい。
また、蒸発器8と膨張弁17との間に蒸発圧力調整弁26を設け、蒸発器8の上流側で蒸発圧力を調整するようにしてもよい。
また、蒸発器8への通風を遮断するダンパーを設けてもよい。これによれば、除霜運転パターン時にダンパーによって蒸発器8への通風を遮断することで、送風機9からの送風が蒸発器8に当たらなくなり、自然対流の状況下で蒸発器8の除霜を行うことができるため、除霜効率が高まる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、1つの蒸発器を用いる態様について説明したが、2つ以上の蒸発器を用いてもよく、これにより、一方の蒸発器が除霜運転パターンであっても他方の蒸発器が冷却運転パターンとして庫内温度の上昇を抑えることができるようになる。
また、前記実施例では、冷媒温度変更手段を、蒸発圧力調整装置としての切換回路20として説明したが、これに限られず、例えば、冷凍サイクルの配管系統に、温度の異なる冷媒がそれぞれ収容された受液器を複数設け、選択された受液器から膨張弁17に冷媒が流入するように切換弁などにより制御されていてもよい。
また、前記実施例では、切換手段を三方切換弁25として説明したが、例えば切換回路20における第1配管23及び第2配管24にそれぞれ2方向切換弁を設け、各2方向切換弁を適宜開放及び閉塞させることで、第1除霜運転β1及び第2除霜運転β2を切り換えるようにしてもよい。
また、前記実施例では、冷凍・冷蔵ショーケース1が商品を冷凍状態で陳列する態様について説明したが、膨張弁17の減圧能力や蒸発圧力調整弁26の設定圧力を変更することにより、庫内温度を冷蔵や常温に近い状態の冷蔵等の温度帯に変更してもよい。
また、前記実施例では、蒸発器8の除霜運転パターンにおける第2除霜運転β2は、第1除霜運転β1よりも短い時間で行われるものとして説明したが、例えば第2除霜運転β2を第1除霜運転β1よりも長い時間で行うようにしてもよい。尚、第2除霜運転β2での除霜時間が長くなるほど第1除霜運転β1での除霜効率が高まるが、第2除霜運転β2での除霜時間が長くなるほど庫内温度への影響が大きくなる虞があるので、蒸発器8の除霜運転パターンにおける第1除霜運転β1及び第2除霜運転β2の時間の割合設定は庫内温度への影響を考慮した上で行われることが好ましい。