JP6782932B2 - Npr−aアゴニストの新規用途 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬に関する。
ナトリウム利尿ペプチドと称されるペプチドには、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、及びC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)がある。これらは、グアニレートシクラーゼドメインを有する受容体と特異的に結合し、具体的には、ANPとBNPはナトリウム利尿ペプチド受容体GC−A(別名:NPR−A)と、CNPはナトリウム利尿ペプチド受容体GC−B(別名:NPR−B)とそれぞれ結合することで、細胞内のGMP濃度を上昇させて様々な生理活性を発現することが知られている。
ANPは、心房細胞で産生されて分泌されるアミノ酸28個から成るペプチドであるが、腎臓では利尿作用を示し、血管では血管平滑筋を弛緩・拡張する等の血圧調整作用を奏することから、臨床において、ヒト型ANP(hANP)は急性心不全治療薬として用いられている。また、近年では、癌細胞の増殖や転移を抑制する報告や、各臓器の線維化を抑制する報告も多数なされている。
例えば、特許文献1、2、及び非特許文献1には、ANPに加えて、Long Acting Natriuretic Peptide、Vessel Dilator、及びKaliuretic Peptideの4つのペプチドが、膵癌、前立腺癌、小細胞性肺癌、乳癌等の各腫瘍細胞に直接作用して、DNA合成を阻害したりすることで、腫瘍の増殖を抑制できると報告している。
また、特許文献3は、ANPの受容体に着目したものであり、siRNA等を用いてNPR−Aの合成を阻害したり、ANPアナログを用いたりしてNPR−Aの活性を抑制することで、ANPカスケードによって誘導される癌等の疾患を治療できると開示されている。
非特許文献2には、ANPが血管内皮細胞の炎症反応を抑制することで、癌細胞そのものの血管内皮細胞への吸着を抑制して、癌細胞の転移が抑制されるとの報告がなされている。
また、特許文献4では、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストが、GC−Aを発現する腫瘍細胞に対しては、直接作用して上皮間葉転換(EMT)をはじめとした遊走能及び浸潤能の取得を抑制することで転移を抑制する効果(直接効果)を示すことに加え、細胞内cGMPの上昇に伴って生成されたシグナル伝達物質が血管やリンパ管の内皮細胞に作用することによって該血管内皮への腫瘍細胞の接着・浸潤が阻害されて、腫瘍の転移を抑制する効果(間接効果)をも発揮すると開示されている。そして、かかるGC−Aアゴニストは腫瘍細胞の転移や浸潤を抑制することができることから、他の抗腫瘍剤と併用してもよいことが記載されており、例えば、実施例において、シスプラチンとの併用により、シスプラチンがGC−Aアゴニストによる癌細胞へのアポトーシス誘導活性を増強していると開示されている。
特許文献5には、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Bアゴニストが癌関連線維芽細胞(CAF)の、悪性腫瘍を増悪させる各因子やサイトカインの産生を抑制し、また、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストが癌細胞のEMTを抑制し、癌細胞からの悪性腫瘍を増悪させる各因子やサイトカインの産生を特異的に抑制することから、これらを併用することで、悪性腫瘍を増悪させる各成長因子や炎症性サイトカイン等の産生がより顕著に抑制され、且つ、癌細胞のEMTが抑制されることが報告されている。
また、線維化抑制については、腹膜線維症や腎線維症のモデル動物にANPを投与することで改善効果があることが報告されている(非特許文献3、4参照)。非特許文献5では、ANPとシルデナフィルを併用することで、肺線維症が抑制されることが開示されている。
US6943147号公報 US2005/0209139号公報 US2005/0272650号公報 WO2012/118042号公報 WO2013/027680号公報
in vivo 21; 973-978(2007) PNAS, March 31, 2015, vol.112, No.13, 4086-4091 Nephrol Dial Transplant(2012), 27: 526-536 Regulatory Peptides(2009), 154(1-3), 44-53 British Journal of Pharmacology(2014), 171(14), 3463-3475
しかしながら、ANPによる悪性腫瘍の増殖抑制効果は未だ不明なものである。例えば、特許文献1では、1μMのANPが細胞実験においてコントロールと比較して約34%の癌細胞の減少を示す(特許文献1、Fig.2)が、多くの癌細胞は生き残ることになり、抗癌剤としての有効性は示唆されない。特許文献2では、細胞実験においてANPの濃度を1mMに上げると89%の癌細胞が減少することが記載されている(特許文献2、Fig.3)が、細胞実験としては高濃度での実験であり、細胞毒性を生じて細胞増殖が抑制されている可能性が疑われる。ANPは臨床において血圧低下の副作用が見られるため、投与量に注意が必要な薬剤として知られていることからも、細胞実験において高濃度で癌細胞の増殖が抑制されたからといって、ANPが抗癌剤として利用できるとは言えない。また、例えば、SCIENCE 307, 58-62, (2005)に記載されているように、腫瘍組織中の血管構造は未熟な血管が多く作られて異常構造をとることから、血管壁が崩れたり、血管透過性の亢進に伴って血液内成分が周囲組織に漏出することによって、腫瘍組織中の癌細胞まで薬剤が届きにくいことが知られている。よって、in vitroの実験系においてANPの腫瘍増殖抑制効果が確認されたとしても、in vivoにおいて確認されるANPの作用は癌細胞への直接作用によるものであるとは考えにくく、例えば、特許文献4において開示されたシスプラチンによってANPのアポトーシス誘導活性が増強されたとする報告は、メカニズムとして十分ではないことが分かる。
また、線維化抑制の報告についても、線維化状態が進行することによって血管構造が壊れ、薬剤が届きにくいことから、ANPが直接作用しているとは考えにくい。また、非特許文献5の図4からは、ヒト肺線維芽細胞を用いた実験ではANPとシルデナフィルを併用すると分化能の抑制が確認された一方、ANP単独では分化能の抑制が確認されないことからも、ANPの直接作用は不明であり、メカニズムは十分でないことが分かる。
本発明の課題は、悪性腫瘍あるいは肺線維症又は間質性肺炎を効果的に治療又はその悪性化を抑制することができる医薬を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決する為に検討を重ねた結果、腫瘍深部への到達が難しい抗癌剤として、微小管阻害作用を有する化合物を、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと組み合わせることにより、腫瘍組織中の血管をGC−Aアゴニストによって保護する(成熟化する)ことで、微小管阻害作用を有する化合物を癌細胞へ効率的に到達させることが可能となって、該化合物による抗腫瘍効果がより発揮されることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔10〕に関する。
〔1〕 (A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有し、(B)抗悪性腫瘍剤投与の5日以上前に投与されることを特徴とする、前記(B)抗悪性腫瘍剤の治療効果の増強剤。
〔2〕 (A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニスト、及び(B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤を組み合わせてなる医薬。
〔3〕 (A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有する、(B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤の悪性腫瘍の治療効果の増強剤。
〔4〕 (A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを有効成分として含む、(B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤と併用するための医薬組成物。
〔5〕 (B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤を有効成分として含む、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと併用するための医薬組成物。
〔6〕 (A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを有効成分として含む、(B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤による治療を受けている患者用の医薬組成物。
〔7〕 (B’)微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤を有効成分として含む、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストによる治療を受けている患者用の医薬組成物。
〔8〕 ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有する、肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療のために用いられる医薬組成物。
〔9〕 ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを投与することを特徴とする、肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療方法。
〔10〕 肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療のための、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニスト。
本発明の医薬は、微小管阻害作用を有する化合物を単独で服用する場合に比べて、より強力に抗腫瘍効果を発揮するという優れた効果を奏するものである。
また、本発明は、腫瘍組織中の血管をGC−Aアゴニストによって保護する(成熟化する)ことで、抗癌剤を癌細胞へ効率的に到達させる、というコンセプトがもとになっており、微小管阻害作用を有する化合物以外の抗癌剤であっても、癌細胞に到達させることが困難な薬剤にとっては、同様の効果が期待される。
図1は、乳癌マウス同所移植モデルにおける腫瘍内の血管状態を示す図である。上段がコントロール群、下段がANP群であり、左列が血管内皮細胞を染色した図、真ん中列が壁細胞を染色した図、右列が核染色も含めた全染色図を合わせた図である。 図2は、乳癌マウス同所移植モデルにおける腫瘍血管の壁細胞の裏打ち率を示す図である。 図3は、乳癌マウス同所移植モデルにおける腫瘍内のシスプラチン濃度を示す図である。 図4は、肺癌を同所移植した遺伝子改変マウスにおける腫瘍内の血管状態を示す図である。上から順に、WT(野生型)群、EC−GCA−Tg(GC−A過剰発現)群、Flox/flox(コントロール)群、EC−GCA−KO(GC−Aノックアウト)群であり、左列が血管内皮細胞を染色した図、真ん中列が壁細胞を染色した図、右列が核染色も含めた全染色図を合わせた図である。 図5は、肺癌を同所移植した遺伝子改変マウスにおける腫瘍血管の壁細胞の裏打ち率を示す図である。 図6は、肺癌マウス同所移植モデルにおける腫瘍内のシスプラチン濃度を示す図である。 図7は、シスプラチン誘発骨髄抑制モデルにおける体重と血液成分の推移を示す図である。 図8は、シスプラチン誘発骨髄抑制モデルにおける骨髄成分の推移を示す図である。 図9は、シスプラチン誘発骨髄抑制モデルにおける血清中G−CSF濃度の推移を示す図である。 図10は、乳癌マウス同所移植モデルにおけるANPとDTX投与後の併用効果を示す図である。 図11は、乳癌マウス同所移植モデルにおけるANPとCDDP(シスプラチン)の併用時のANP投与期間による腫瘍ボリュームの推移を示す図である。 図12は、乳癌マウス同所移植モデルにおけるANPと抗PD−1抗体の併用効果を示す図である。 図13は、肺線維症マウスモデルにおけるANP投与による肺線維化面積を示す図である。 図14は、組織特異的トランスジェニックにおける肺線維化面積を示す図である。
本発明の医薬は、有効成分として、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと(B)抗悪性腫瘍剤とを併用することを特徴とする。具体的には、例えば、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと白金製剤とを併用するものであったり、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと(B’)微小管阻害作用を有する化合物とを併用するものであったり、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと(B’)PD−1経路阻害剤とを併用するものが挙げられる。
<(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニスト>
本発明において、「ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニスト」とは、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−A(以下、単に「GC−A」と表記する場合もある(Chinkers M,etal.,Nature 338;78-83,1989))に結合し、そのグアニレートシクラーゼを活性化する作用(以下、「GC−Aアゴニスト活性」)を有する物質を意味し、本明細書においては単に「GC−Aアゴニスト」と表記される場合もある。代表的なGC−Aアゴニストとしては、例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial Natriuretic Peptide:ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(Brain Natriuretic Peptide:BNP)が挙げられる。本発明のGC−Aアゴニストとしては、GC−Aアゴニスト活性を有するものであれば特に限定されず、ANP、BNP、並びにそれらの変異体などを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明におけるANPとしては、28個のアミノ酸よりなるヒト由来ANP(SLRRSSCFGG RMDRIGAQSG LGCNSFRY:配列番号1)、ラット由来ANP/マウス由来ANP(SLRRSSCFGG RIDRIGAQSG LGCNSFRY:配列番号2)などが挙げられる。ヒト由来ANPについては、Biochem.Biophys.Res.Commun., 118巻, 131頁, 1984年に記載のα−hANPが、一般名カルペリチド(carperitide)として、日本において製造販売承認を取得し、販売(商品名:ハンプ、HANP)されている。α−ANPは、一般的にはHuman pro−ANP[99−126]としても知られている。
本発明におけるBNPとしては、32個のアミノ酸よりなるヒト由来BNP(SPKMVQGSGC FGRKMDRISS SSGLGCKVLR RH:配列番号3)、ブタ由来BNP(SPKTMRDSGC FGRRLDRIGS LSGLGCNVLR RY:配列番号4)を例示することができる。また、45個のアミノ酸よりなるラット由来BNP(SQDSAFRIQE RLRNSKMAHS SSCFGQKIDR IGAVSRLGCD GLRLF:配列番号5)、マウス由来BNP(SQGSTLRVQQ RPQNSKVTHI SSCFGHKIDR IGSVSRLGCN ALKLL:配列番号6)も例示することができる。ヒト由来BNPは、一般名ネシリチド(nesiritide)として、米国等で薬事承認を受けており、商品名:ナトレコール(Natrecor)として販売されている。
本発明において、ANP又はBNPの「変異体」とは、ANP又はBNPのアミノ酸配列の一箇所〜数箇所において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加(以下、まとめて「置換等」という)されたものであって、且つ、GC−Aアゴニスト活性を有するもの、を意味する。「数箇所」とは、通常3箇所程度、好ましくは2箇所程度である。「数個」とは、通常10個程度、好ましくは5個程度、より好ましくは3個程度、更に好ましくは2個程度である。複数箇所で置換等される場合には、置換、欠失、挿入、及び付加の何れか一つであっても良く、二つ以上が組み合わされていても良い。また、置換等されるアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であってもよく、そのアシル化体等の修飾物であってもよく、人工的に合成されたアミノ酸類似体であってもよい。
例えば、ANPの変異体は、GC−Aアゴニスト活性を有する限り、例えば、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列中の所望の一箇所〜数箇所において1〜数個のアミノ酸が置換等されていても良い。また、BNPの変異体は、GC−Aアゴニスト活性を有する限り、配列番号3、4、5、又は6に記載のアミノ酸配列の所望の一箇所〜数箇所において1〜数個のアミノ酸が置換等されていても良い。
ANPの変異体の具体例としては、例えば、hANPの12位のMetがIleに置換されたラットα−rANP(Biochem.Biophys.Res.Commun., 121巻, 585頁, 1984年)、hANPにおいてN末のSer−Leu−Arg−Arg−Ser−Serが欠失したANP等が挙げられる。この様なANP又はBNP変異体に関しては、例えば、Medicinal Research Review, 10巻, 115頁, 1990年に記載されている一連のペプチド等が挙げられる。また、アミノ酸配列の1乃至複数のアミノ酸が欠失するとともにアミノ酸配列の1乃至複数のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された例としては、例えば、15アミノ酸残基から成るmini−ANP(Science, 270巻, 1657頁, 1995年)等が挙げられる。
さらに、本発明のANP又はBNPは、GC−Aアゴニスト活性を有する限り、誘導体や修飾体であってもよい。
ANP又はBNPの「誘導体」とは、ANP、BNP又はそれらの変異体のアミノ酸配列を含み、さらに別のペプチド又はタンパク質が付加された融合ペプチドであり、且つ、ANP又はBNPの有する生物活性の少なくとも一部を保持する融合ペプチドを意味する。このような生物活性(本発明においては、GC−Aに結合し、そのグアニレートシクラーゼを活性化する作用)の少なくとも一部を有する融合ペプチドを、ANP又はBNPの誘導体ともいう。本発明の誘導体において、ANP、BNP又はそれらの変異体の、C末端又はN末端の一方に付加ペプチドが融合されていてもよく、C末端及びN末端の両方に付加ペプチドが融合されたものであっても良い。付加されるペプチドとしては、特に限定されないが、そのペプチド自身が生理活性を有さないものが好ましい。また、付加ペプチドは直接結合していてもよく、1〜数個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して結合していても良い。リンカー配列としては、様々なものが知られているが、Gly、Ala、Ser等を多く含むものが好ましく使用される。そのような付加ペプチドとしては、免疫グロブリン(好ましくはIgG)のFc部位、血清アルブミン、グレリンのC末端側配列などを挙げることができる(例えばANPを免疫グロブリンのFc部位と結合させた融合タンパク質(米国特許出願公開2010/0310561号明細書等参照)、GLP−1を血清アルブミンと結合させた融合タンパク質(国際特許公開第2002/046227号等参照))。
「誘導体」としては、好ましくはhANPの誘導体及びhBNPの誘導体である。具体的には、例えばANPを免疫グロブリンのFc部位と結合させた融合タンパク質(米国特許出願公開第2010/0310561号明細書等参照)がANPの生物活性を保持したまま、血中滞留性が改善されることが知られている。また、ANP及びBNPの各種誘導体に関しては、例えば、Medicinal Research Review,10巻,115頁,1990年に記載されている一連のペプチドが挙げられる。
また、ANPの誘導体の具体例として、国際公開第2009/142307号(対応米国特許出願公開第2010/305031号明細書)に開示された各種のANP誘導体などを挙げることができる。ここでは、ANPに、グレリンのC末端に由来する部分配列を付加した誘導体において、元ペプチドの生理活性を保持したまま、血中滞留性が改善されたことが報告されている。この報告では、hANPのN末端又はC末端の何れか一方及びそれらの両方にグレリンのC末端由来の部分ペプチドを付加した多様な誘導体のいずれにおいても、GC−Aアゴニスト活性が保持され、その血中半減期が延長された。
ANP又はBNPの「修飾体」とは、ANP、BNP又はそれらの変異体に含まれるアミノ酸の1箇所から数箇所が、別の化学物質との化学反応により修飾されたもので、且つ、ANP又はBNPの有する生物活性の少なくとも一部を保持するもの、を意味する。修飾を受ける部位は、ANP又はBNPの活性を保持する限り、いずれの部位を選択してもよい。例えばポリマーのようなある程度大きな化学物質を付加する修飾では、ANP又はBNPの活性部位、又は、受容体結合部位以外の箇所において修飾されることが好ましい。また、分解酵素による切断を防止するための修飾の場合、当該切断を受ける箇所が修飾されたものも採用する事ができる。また、別の化学物質は直接結合していてもよく、1〜数個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して結合していても良い。リンカー配列としては、様々なものが知られているが、Gly、Ala、Arg、Lys等を含むものが好ましく使用される。
化学修飾の方法としては、様々な方法が知られているが、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)など製薬技術において利用される(薬理上用いられる)高分子ポリマーを付加する方法や、Lys残基等の側鎖のアミノ基にリンカーとなる化合物を付加させ、それを介して別のタンパク質等(例えば血清アルブミン)と結合させる方法などが知られているが、これらに限定されず、様々な方法を採用することができる。また、ANP又はBNPの修飾体の製造方法については、米国特許出願公開第2009/0175821号明細書などを参考に、適宜作製することができる。修飾体は、好ましくは製薬上用いられる高分子ポリマーを付加することにより化学修飾されたものである。
例えば、ANPの修飾体は、GC−Aアゴニスト活性を有する限り、配列番号1又は2のアミノ酸配列中の所望の1つ〜複数の箇所において修飾されていても良いが、好ましくは、配列表の配列番号1又は2のアミノ酸配列を含み、その配列番号7(Cys -Phe -Gly -Xaa1 -Xaa2 -Xaa3 -Asp -Arg -Ile -Xaa5 -Xaa6 -Xaa7 -Xaa8 -Xaa9 -Leu -Gly -Cys -Xaa10 -Xaa11 -Xaa12 -Arg(ここで、Xaa3はMet、Leu又はIle)(「リング構造」)に表示されたアミノ酸に相当するもの以外のアミノ酸の少なくとも一つにおいて、化学修飾を受けているものである。より好ましくは、配列番号1又は2のアミノ酸配列中の配列番号7に表示されたアミノ酸以外のアミノ酸において1箇所〜数箇所で修飾されたものであり、さらに好ましくは配列番号1又は2のアミノ酸配列の1乃至6位及び28位の何れか1箇所〜数箇所で修飾されたものである。また、BNPの変異体は、GC−Aアゴニスト活性を有する限り、配列番号3〜6のアミノ酸配列の所望の1つ〜複数の箇所において修飾されていても良いが、好ましくは、配列表の配列番号3〜6のアミノ酸配列を含み、その配列番号7に表示されたアミノ酸に相当するもの以外のアミノ酸の少なくとも一つにおいて、化学修飾を受けているものである。より好ましくは、配列番号3〜6のアミノ酸配列中の配列番号7に表示されたアミノ酸以外のアミノ酸において1箇所〜数箇所で修飾されたものであり、より好ましくは配列番号3又は4のアミノ酸配列の1乃至9位、31位及び32位の何れか1箇所〜数箇所で修飾されたもの、或いは、配列番号5又は6に記載のアミノ酸配列の1位乃至22位、44位及び45位の何れか1箇所〜数箇所で修飾されたものである。さらに、上述したANP又はBNPの活性断片、変異体及びそれらの誘導体の修飾体も本発明に含まれる。このような各種修飾体もGC−Aアゴニスト活性を保持する限り、本発明に用いることができる。
このようなGC−Aアゴニストとして採用されうる修飾体の具体例としては、例えばhANP、hBNP、又はその変異体に、PEG、PVA等の親水性ポリマーやアルキル基、アリール基などの炭化水素基に代表される疎水性基が、リンカーを介して又は介さずに、結合された各種修飾体において、GC−Aアゴニスト活性を保持することが知られている(米国特許第7662773号明細書、国際特許公開第2009/020934号等参照)。
ANP又はBNPと、GC−A受容体との結合は、ANP及びBNPのリング構造とそのC末端テール部分が重要であるため、特にそのN末端部に別の配列又は物質が結合した誘導体や修飾体は、その付加ペプチドや修飾物がリング構造に影響を与えることが少なく、GC−A受容体との結合を阻害することなくGC−Aアゴニスト活性を保持することになる。このことは、上述の多くの文献により実証されている。
本発明においては、ANP、BNP、並びにそれらの変異体は、天然の細胞又は組織から採取されたものでもよく、遺伝子工学的、細胞工学的な手法を用いて調製したものであってもよく、化学合成したものであってもよい。このような調製は、公知技術に従って行うことができる。
なお、ある物質がGC−Aアゴニスト活性を有するか否かについては、当業者であれば従来知られている方法により容易に測定を実施することができる。具体的には、例えば、GC−A(Chinkers M,et al., Nature 338; 78-83, 1989)を強制発現させた培養細胞に物質を添加し、細胞内cGMPレベルを測定することで可能である。GC−Aアゴニスト活性の一部が保持されるとは、同一の試験系を用いて、GC−Aアゴニスト物質とANP又はBNP(当該アゴニスト物質がANP又はBNPの配列を参考にして作製されたものである場合は、当該参考としたペプチド)とを並べてGC−Aアゴニスト活性を測定した場合に、該アゴニスト物質によるcGMP上昇活性のピークが、少なくともANP又はBNPが示すcGMP上昇活性ピークの約10%以上を保持することを通常意味するが、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上、更に好ましくは約70%以上を保持することを意味する。また、ピークにおいて活性の上昇が大きくなくても、生体に投与した場合の活性持続時間が長いものは、本発明に用いることができる。
本発明におけるGC−Aアゴニストとして好ましいものは、ANP、BNP、それらの変異体であり、より好ましくは、hANP又はhBNPである。
また、上述したGC−Aアゴニストとして、当該アゴニストの薬学的に許容される塩を用いてもよい。薬学的に許容される塩としては、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、又は有機酸、例えばギ酸、酢酸、酪酸、コハク酸、クエン酸等の酸付加塩を挙げることができる。また、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等の金属塩、有機塩基による塩の形態をとるものであってもよい。
<(B)抗悪性腫瘍剤>
本発明における抗悪性腫瘍剤としては、白金製剤、微小管阻害作用を有する化合物又はPD−1経路阻害剤を用いることができる。なお、本明細書において、抗悪性腫瘍剤のことを抗癌剤と記載することもある。
〔白金製剤〕
白金製剤(プラチナ製剤)は、DNAの二重らせん構造に結合してDNAの複製を阻害する他、癌細胞を自滅(アポトーシス)へ導く働きも併せ持つものである。
本発明において、白金製剤(プラチナ製剤)としては、抗腫瘍性白金錯体を有効成分として含む製剤を用いることができる。具体的には、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ゼニプラチン、エンロプラチン、ロバプラチン、オルマプラチン、ロボプラチン、セブリプラチン、ミボプラチン又はスピロプラチン等が例示される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔(B’−1)微小管阻害作用を有する化合物〕
微小管は細胞分裂の際に紡錘体を形成したり、細胞内小器官の配置や物質輸送など、細胞の正常機能の維持に重要な役割を果たしていることから、当該微小管の阻害作用を有する化合物を作用させることで腫瘍細胞の増殖を抑制できると考えられている。
本発明において、微小管阻害作用を有する化合物としては、タキサン系抗悪性腫瘍剤、ビンアルカロイド系悪性腫瘍剤が含まれる。タキサン系抗悪性腫瘍剤は、微小管の脱重合を阻害して異常な形のチューブリンを形成するものであり、具体的には、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル等が例示される。ビンアルカロイド系悪性腫瘍剤は、チューブリンが脱重合して微小管を形成するのを阻害するものであり、具体的には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン等が例示される。また、その他の微小管阻害作用を有する化合物としては、エリブリン等が例示される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔(B’−2)PD−1経路阻害剤〕
PD−1は、免疫チェックポイントプロテインであり、活性化T細胞やB細胞上に発現して、感染に対する免疫反応中に末梢におけるT細胞活性化を制限したり、抗腫瘍T細胞反応を抑制する作用を有することから、当該PD−1の経路を阻害する化合物を作用させることで免疫反応を誘導して、腫瘍増殖を抑制できると考えられている。
本発明において、PD−1経路阻害剤としては、PD−1、PD−L1、及びPD−L2等に対する阻害剤が含まれており、PD−1もしくはPD−1リガンドに対する抗体、PD−1もしくはPD−1リガンドに対する抗体をコードする核酸が例示される。具体的には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ等が例示される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
現在上市されている抗癌剤の副作用としては、体重減少、骨髄抑制、腎障害等がよく知られている。癌治療は一般的に、治療が行われる日と行わない日を組み合せた1〜数週間程度の周期(コース又はクール)を設定して治療を行うが、上記副作用が原因となり、周期を重ね、癌治療が長期化すると抗癌剤の投与量を減らさざるを得ず、最終的には抗癌剤を使用し続けることが難しくなり、治療を中止せざるを得なくなる。そのため、副作用を予防又は軽減する対策が重要となってくる。例えば、微小管阻害作用を有する化合物である、ドセタキセルは、従来、単独でも抗悪性腫瘍剤として用いられているが、重篤な骨髄抑制(汎血球減少、白血球減少、好中球減少(発熱性好中球減少を含む)、ヘモグロビン減少、血小板減少等)が高頻度に起こることが知られており、異常が認められた場合、投与間隔の延長、投与量の減量、休薬等の適切な処置を行うこと、発熱性好中球減少症を抑制するG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤の適切な使用について考慮することが推奨されている。但し、多くのG−CSF製剤は血中半減期が短いことから、好中球数が回復するまで連日投与が必要となり、患者の身体的かつ金銭的負担が大きいことが知られている。本発明では、詳細なメカニズムは不明なるも、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと併用した場合、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストにより腫瘍組織中の血管が保護されて崩壊が抑制されることから、血流を介して、微小管阻害作用を有する化合物が腫瘍細胞中に効率よく送達されたり、PD−1経路阻害剤が腫瘍組織中に存在する免疫細胞に効率よく送達されることになり、ひいては、腫瘍細胞中の微小管阻害作用を有する化合物濃度が上昇し、あるいは自己免疫反応が活性化することで腫瘍増殖を抑制することができると考えられる。さらには、癌ペプチドワクチンや腫瘍溶解性ウイルスなどによって誘導された腫瘍障害性の免疫細胞などが血流を介して腫瘍組織へ効率よく送達されることにより、腫瘍増殖を効率よく阻害できると考えられる。また、微小管阻害作用を有する化合物は副作用として骨髄抑制作用を有することから、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと併用することにより、微小管阻害作用を有する化合物の投与量の減量が可能となり、これまで、副作用が原因で治療を中止せざるを得なかった患者への抗癌剤の投与を続けることが可能になるという効果が奏されると考えられる。さらに、本発明者らは、ANPを数日前から事前投与した所に抗癌剤を投与したところ、抗癌剤の主たる副作用である白血球減少(骨髄抑制作用)が見られなかったことを確認しており、その機序として、内因性の血清G−CSF濃度が高められることを確認している。ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと併用することにより、骨髄抑制の副作用の出現を低減し、さらには血中G−CSF濃度が高められることから、本発明によりG−CSF製剤の投与量の減量が可能となる、あるいは、全く不要となるという効果も奏されると考えられる。
本発明の医薬は、(A)成分と(B)成分を組み合わせたものであれば特に限定はなく、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の抗腫瘍成分を含有することができる。具体的には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、ホルモン、ビタミン、抗腫瘍性抗体、分子標的薬、その他の抗腫瘍剤等を挙げることができる。これらの含有量は特に限定されない。
より具体的に、アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN−オキシドもしくはクロラムブチル等のアルキル化剤;カルボコンもしくはチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤;ディブロモマンニトールもしくはディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、ストレプトゾシン、クロロゾトシンもしくはラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤;ブスルファン、トシル酸インプロスルファン、ダカルバジン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン又はテモゾロミド等が挙げられる。
各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、チオイノシン、ネララビン、フルダラビンもしくはペントスタチン等のプリン代謝拮抗剤;フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン、エノシタビン、カペシタビンもしくはゲムシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤;メトトレキサート、トリメトレキサートもしくはペメトレキセド等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、THP−アドリアマイシン、4’−エピドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシンもしくはミトキサントロン等のアントラサイクリン系抗生物質抗腫瘍剤;クロモマイシンA3又はアクチノマイシンD等が挙げられる。
抗腫瘍性植物成分としては、例えば、(B)成分として用いた成分以外のタキサン類(パクリタキセル、ドセタキセル等);(B)成分として用いた成分以外のビンアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン等);イリノテカン、ノギテカン等のカンプトテシン誘導体;又はエトポシド、テニポシド、ソブゾキサン等のエピポドフィロトキシン類が挙げられる。
BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子又はインドメタシン等が挙げられる。
ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、メドロキシプロゲステロン、タモキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、ゴセレリン、ビカルタミド、フルタミド、リュープロレリン、レトロゾール等が挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンC又はビタミンA等が挙げられる。
抗腫瘍性抗体、分子標的薬としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、デノスマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、イブリツモマブチウキセタン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ダサチニブ、タミバロテン、トレチノイン、パニツムマブ、ボルテゾミブ等が挙げられる。
その他の抗腫瘍剤としては、例えば、(B)成分として用いた成分以外の白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア、クレスチン等が挙げられる。また、免疫抗体薬((B)成分として用いた成分以外の抗PD−1抗体:ニボルマブ、ペムブロリズマブ等、PD−L1抗体:アテゾリズマブ等、抗CTLA4抗体:イピリムマブ等)、生物製剤関連(インターフェロン・α、インターフェロン・β、インターフェロン・γ、インターロイキン2、ウベニメクス乾燥BCG、レンチナン等)等が挙げられる。
さらに、近年ではバイアグラ(登録商標)に代表されるPDE5阻害剤が悪性腫瘍に対する抑制効果を有することが報告されており(Das et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (2010), vol/107, No. 42, pp.18202-18207)、本発明の医薬はこれらPDE5阻害剤と併用することもできる。PDE5阻害剤としては、PDE5酵素によるcGMPの分解を阻害する活性を有する物質であれば、特に限定されず、様々な薬剤を採用することができる(例えば、M. P. Govannoni, et al.(Curr. Med. Chem.(2010) 17, pp. 2564-2587)等参照)。好ましくは、シルデナフィル(sildenafil)、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)、ウデナフィル(udenafil)、ミロデナフィル(mirodenafil)、SLx-2101、ロデナフィル(lodenafil)、 Lodenafil carbonate、Exisulindなど、及びそれらの誘導体、ならびにそれらの薬理学的に許容される塩であり、より好ましくは、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ミロデナフィル又はそれらの薬理学上許容される塩であり、更に好ましくは、クエン酸シルデナフィル、塩酸バルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル又はミロデナフィルであり、更により好ましくは、クエン酸シルデナフィルである。これらの薬剤については、上記の参考文献(その引用文献を含む)の記載及び周知の技術により、製造及び製剤化することができる。
また、その他の製剤原料として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、清涼化剤、コーティング剤、安定化剤、流動化剤、粘稠剤、溶解補助剤、増粘剤、緩衝剤、香料、着色剤、吸着剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、乳化剤、希釈剤等の添加剤を含有してもよい。これらの含有量は特に限定されない。
本発明の医薬は、(A)成分と(B)成分を組み合わせたものであれば特に限定はなく、当業者に公知の方法に従って、調製することができる。また、その形状や大きさも特に限定はなく、経口投与及び非経口投与のいずれの剤形をも採用することができる。非経口投与の場合は、腫瘍部位に直接投与することも可能である。具体的には、経口投与の場合は、錠剤(口腔内速崩解錠、咀嚼可能錠、発泡錠、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤を含む)、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口投与の場合は、経肺剤形(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤形、経皮投与剤形(例えば軟膏、クリーム剤)、注射剤形等が挙げられる。注射剤形の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。また、(A)成分を含む場合は、消化管内での分解を受けにくい製剤設計を行ったり、消化管以外の粘膜から吸収可能な剤形とする製剤設計も可能である。
例えば、(A)成分の注射剤と、(B)成分の注射剤を組み合わせたもの(キットを含む)が挙げられる。また、(A)成分の経肺吸入剤と、(B)成分の注射剤を組み合わせたもの(キットを含む)等も例示される。
本発明の医薬は、(A)成分と(B)成分を有効成分として組み合わせることを特徴とするのであって、その使用形態としては、(A)成分と(B)成分それぞれについて別途調製された単剤を同時に使用する態様と、(A)成分と(B)成分それぞれについて別途調製された単剤を順次に使用する態様と、(A)成分と(B)成分それぞれについて別途調製された単剤を別々に使用する態様と、(A)成分と(B)成分を一緒に処方して調製された製剤(合剤)として使用する態様とが挙げられる。また、(A)成分による治療を受けている患者に(B)成分を有効成分として使用する態様、あるいは、(B)成分による治療を受けている患者に(A)成分を有効成分として使用する態様、も本発明に含まれる。なお、(A)成分と(B)成分を順次に又は別々に使用する場合は、いずれの使用が先であってもよく、別々に使用する場合の間隔は患者の症状などにより異なり、最終的には医師の判断に従って適宜設定することができる。特に(B)成分の副作用を回避することを目的とする場合は、(A)成分を(B)成分の投与日の1〜7日前(例えば、2〜3日前、5日以上前)に投与してもよい。
本発明の医薬として用いる場合の(A)成分と(B)成分の投与量は、投与形態、患者の症状、年令、体重、性別、あるいは他の併用される薬物(あるとすれば)などにより異なり、最終的には医師の判断に委ねられる。例えば、体重60kgの成人1日あたり、(A)成分を0.1〜1000mg静脈内投与、及び(B)成分を0.1〜10000mg静脈内投与する態様が挙げられ、好ましくは(A)成分を0.1〜100mg静脈内投与及び(B)成分を0.1〜1000mg静脈内投与する態様、より好ましくは(A)成分を1〜10mg静脈内投与及び(B)成分を1〜500mg静脈内投与する態様が挙げられる。かかる投与量は一度に投与しても分割して投与してもよく、投与期間は各成分で適宜設定される。なお、非経口投与、例えば静脈内投与する場合は、ボーラス投与のみならず、インフュージョンポンプ、カテーテル等を用いて持続的に投与してもよい。
(A)成分を投与する場合には、例えば凍結乾燥製剤を注射用水に溶解して微量輸液ポンプ(それがない場合には、小児用微量輸液セット)等を用いて連続投与(継続投与ともいう)することができる。連続投与する場合の投与期間としては、通常数時間〜数日間であり、例えば、1〜14日間であり、好ましくは3〜7日間程度である。この場合の投与量としての上限は、例えば約50μg/kg/分(一日当たり、約72mg/kg)以下の濃度を適宜採用することができ、約5μg/kg/分(一日当たり、約7.2mg/kg)以下であってもよく、好ましくは約0.5μg/kg/分(一日当たり、約720μg/kg)以下であり、より好ましくは約0.2μg/kg/分以下であり、更に好ましくは約0.1μg/kg/分以下であり、更により好ましくは約0.05μg/kg/分以下である。また下限としては、通常約0.0001μg/kg/分(一日あたり約0.144μg/kg)以上であり、好ましくは約0.001μg/kg/分(一日あたり約1.44μg/kg)以上、より好ましくは約0.01μg/kg/分(一日あたり約14.4μg/kg)以上である。これらは、投与期間中、一定であっても適宜組み合わせて変動させてもよい。具体的な投与方法としては、例えば、3〜4日間程度、約0.025μg/kg/分を採用することができ、この場合の1日当りの投与量は、約36μg/kgとなる。
(A)成分は、前述のように血管を弛緩・拡張し血圧を低下させる作用を有することから、悪性腫瘍の治療又は悪性化の抑制若しくは予防に当たっては、血圧を必要以上に低下させない速度で投与することが好ましく、投与時及び投与直後には血圧をモニターすることが好ましい。また、この場合の(A)成分の投与期間は、通常数時間以上、好ましくは1日間以上である。この期間、継続投与することが好ましく、その期間は通常1日以上であり、好ましくは1〜14日間程度であり、より好ましくは、1〜5日間程度である。長期間に亘って悪性腫瘍を制御する場合、上記の投与方法を適宜繰り返したり、患者の状態に応じて投与量や投与期間を適宜変更したりすることができる。
また、上記の静脈注射と同様の効果をもたらすように(A)成分の血中濃度(例えば、約0.01ng/mL〜約1.6ng/mL、好ましくは約0.1ng/mL〜約1.6ng/mL、より好ましくは約0.4ng/mL〜約1.6ng/mL)をコントロール可能な持続性製剤、例えば、持続性皮下注射等を用いることもできる。持続性製剤を用いる場合は、製剤及び患者の状態に応じて投与量や投与間隔を適宜変更することが可能であるが、好ましくは、週1回投与である。
具体的にANPを例えば静脈に投与する場合には、例えば、hANPの1000μg(例えば、ハンプ注射用1000(商品名)、第一三共社製)を注射用水10mLに溶解し、“体重×約0.06mL/時間”の速度(約0.1μg/kg/分)又はそれ以下の投与速度で投与することが好ましい。投与速度は、上記の速度に限られることなく、病状により、約0.2μg/kg/分以下の速度(好ましくは、約0.01μg/kg/分以上)で、血圧や心拍数をモニターしながら適宜調整することが好ましい。特に、hANPを、約0.025μg/kg/分の用量で3又は4日間程度継続投与しても、血圧、心拍等の血行動態を大きく変動させないことが確認されており、この用量用法を採用することも好ましい。
hBNPを例えば静脈に投与する場合には、例えば、約0.01μg/kg/分を連続投与することが好ましく、更にその連続投与前に、約2μg/kgのhBNPをボーラス投与することを組み合わせた投与方法を採用することもできる。この場合にも、血圧を必要以上に低下させない速度で投与することが好ましく、投与時及び投与直後には血圧をモニターすることが推奨される。
ANP及びBNPが上記の投与速度で血圧や心拍数等に大きな影響を与えない場合には、さらに投与速度を上げてもよい。
天然型(hANP、hBNPなど)ではなく、ANP、BNPの変異体を用いる場合、その活性の強さ、体内における持続性、分子量等、その物質の特徴を考慮して、投与量、投与方法、投与速度、投与頻度等を適宜決定することができる。また、hANP又はhBNPについて、放出制御製剤技術又は持続化製剤技術、ペプチドの分解を受けにくくした各種の変異体、誘導体又は修飾体等を採用することにより、連続投与又はボーラス投与に限定されず、より患者への負担の少ない投与方法、投与頻度等の選択が可能となる。
(B)成分は、既知の臨床実践を参照して投与することができ、例えば、静脈内にボーラス投与することができる。投与量および投与計画は特定の疾病症状および患者の全症状にしたがって変更することができる。年齢、症状または副作用の発現に応じて、また、本発明の医薬は腫瘍組織中の血管を(A)成分によって保護して(B)成分を効率的に癌細胞へ到達させることが可能となることから、適宜減量することもできる。本発明の医薬を使用する場合、(B)成分は、特に限定されないが、通常成人1日あたり0.01〜10000mg/m、好ましくは0.1〜1000mg/m、より好ましくは1〜500mg/mであり、これを通常1日1〜3回に分けて投与することができる。患者が過度の毒性を経験した場合は、投与量の減量が必要となる。投与量および投与計画は、本発明の併用療法に加えて、1またはそれ以上の追加の化学療法剤が使用される場合にも変更してもよい。投与計画は、特定の患者を治療している医師により決定することができる。
また、シスプラチンを静脈に投与する場合、特に限定されないが、例えば、投与量を、成人(体重60kg)1日あたり、0.01〜10000mg/m、好ましくは0.1〜1000mg/m、より好ましくは1〜500mg/mであり、更に好ましくは10〜150mg/mとする。
より具体的には、パクリタキセルを静脈に投与する場合、特に限定されないが、例えば、投与量を、成人(体重60kg)1日あたり、0.01〜10000mg/m、好ましくは0.1〜1000mg/m、より好ましくは1〜500mg/m、更に好ましくは50〜250mg/mとする。
また、ドセタキセルを静脈に投与する場合、特に限定されないが、例えば、投与量を、成人(体重60kg)1日あたり、0.01〜10000mg/m、好ましくは0.1〜1000mg/m、より好ましくは1〜500mg/m、更に好ましくは50〜100mg/mとする。
また、PD−1抗体を静脈に投与する場合は、特に限定されないが、例えば、投与量を、成人(体重60kg)1日あたり、0.01〜50mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kg、更に好ましくは1〜5mg/kgとする。
本発明の医薬は、(A)成分の血管保護作用により(B)成分の抗悪性腫瘍効果が、(B)成分の単独使用時に比べて増強されて発揮されるという優れた効果を奏する。即ち、本発明の医薬組成物は、悪性腫瘍の治療又は悪性化の抑制のために用いられる。悪性腫瘍としては、固形癌であっても浸潤癌であってもよく、例えば、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌、前立腺癌、血管肉腫、子宮頸癌、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍)が例示される。
また、本発明の医薬は、癌の治療だけでなく、癌治療後の再発予防、転移の防止にも使用できる。よって、本発明の医薬の好適態様として、癌治療用医薬、癌再発予防用医薬、癌転移抑制用医薬が挙げられる。
本発明はまた、悪性腫瘍の治療又は悪性化の抑制を必要とする個体に、(A)成分と(B)成分を組み合わせて治療有効量を投与することを含む、悪性腫瘍の治療方法を提供する。
本明細書中において悪性腫瘍の治療又は悪性化の抑制を必要とする個体とは、好ましくは悪性腫瘍の縮小又は根治を必要とするヒトであるが、ペット動物等であってもよい。
また、本明細書中において治療有効量とは、(A)成分と(B)成分を組み合わせて上記個体に投与した場合に、投与していない個体と比較して、悪性腫瘍の増殖を抑制する量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び個体の年齢、体重、症状等によって適宜設定され一定ではない。
本発明の治療方法においては、前記治療有効量となるよう、(A)成分と(B)成分を組み合わせてそのまま上記個体に投与してもよく、本発明の医薬の使用形態に応じて投与することができる。
また、本発明は、腫瘍組織中の血管をGC−Aアゴニストによって保護する(成熟化する)ことで、抗癌剤を癌細胞へ効率的に到達させる、というコンセプトが基になっていることから、(B’)成分以外の抗癌剤であっても、癌細胞に到達させることが困難な薬剤にとっては、同様の効果が期待される。よって、本発明の医薬は、前記した(A)成分と白金製剤又は(B’)成分を組み合わせたものであるが、(B)成分として、前記したその他の抗腫瘍成分を(A)成分に組み合わせることを妨げるものではない。また、前記以外にも、投与後、血中に存在するが、癌細胞に到達させることが困難な薬剤であれば、特に限定されず、例えば、免疫抗体薬(抗CTLA4抗体:イピリムマブ等、抗Tim−3抗体:MBG453等、抗LAG3抗体:BMS−986016等、抗OX−40抗体:MEDI−6469等、抗ICOS抗体:GSK−3359609等、抗B7RP−1抗体:AMG−557等、抗B7−H3抗体:エノブリツズマブ等、抗4−1−BB抗体:ウレルマブ等、抗GITR抗体:MK−4166等、抗CD27抗体:ヴァルリルマブ等、抗CSF−1受容体抗体:エマクツズマブ等)、免疫調節蛋白質(可溶性LAG3:IMP−321等)、免疫調節低分子(JAK2阻害剤:パクリチニブ等、Fms/Kit/Flt−3阻害剤:ペキダルチニブ等)、腫瘍溶解性ウイルス(T−VEC等)、癌ワクチン(NeuVax、ITK−1、TG−4010、シュプーラセル−T等)等が挙げられる。免疫抗体薬は腫瘍細胞、もしくは腫瘍に浸潤したT細胞をはじめとする免疫細胞を標的にしており、効果を発揮するためには、患者の腫瘍における血流を改善し、十分な量のT細胞及び免疫抗体薬が腫瘍深部に到達することが重要であることから、本発明と同様に、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストと組み合わせることにより、免疫抗体薬の抗腫瘍効果がより発揮されることが期待される。また、例えば、癌ワクチンの1種である癌ペプチドワクチンの場合は、免疫細胞に貪食されることで細胞傷害性T細胞の産生を促進することから、(A)成分と組み合わせることにより、癌ペプチドワクチンの抗腫瘍効果がより発揮されることが期待される。
また、(A)成分を(B)成分の投与日の好ましくは1日以上前、より好ましくは2日以上前、更に好ましくは3日以上前、更に好ましくは5日以上前、更に好ましくは7日以上前の日から連日投与又は持続性製剤により投与することが望ましい。
本発明の別の態様としては、(A)成分の血管保護作用により、(B)成分の抗悪性腫瘍効果が(B)成分単独使用時に比べて増強されて発揮されるという優れた効果に基づいて、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有する、(B)抗悪性腫瘍剤の治療効果の増強剤を提供する。なお、ここでいう各成分の種類やその使用量、使用方法は、本発明の医薬の項を参照することができるが、例えば、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有し、(B)抗悪性腫瘍剤投与の5日以上前に投与されることを特徴とする、(B)抗悪性腫瘍剤の治療効果の増強剤を例示することができる。
前記した増強剤において、好適な例としては、具体的には、(B)成分投与の3日前に、(A)成分の最高血中濃度が好ましくは0.01ng/mL〜1.6ng/mL、より好ましくは約0.1ng/mL〜1.6ng/mL、更に好ましくは約0.4ng/mL〜約1.6ng/mLとなるように投与されることを特徴とする、増強剤が挙げられる。
また更に、(A)成分の血管保護作用により、(B)成分の抗悪性腫瘍効果が(B)成分単独使用時に比べて増強されて発揮されるという効果の観点から、本発明はまた、以下の医薬組成物を提供する。
・ (A)成分を有効成分として含む、(B)成分と併用するための医薬組成物。
・ (B)成分を有効成分として含む、(A)成分と併用するための医薬組成物。
・ (A)成分を有効成分として含む、(B)成分による治療を受けている患者用の医薬・ (B)成分を有効成分として含む、(A)成分による治療を受けている患者用の医薬組成物。
なお、ここでいう各成分の種類やその使用量、使用方法、その目的は、本発明の医薬の項を参照することができる
本発明では、前記した(A)成分と(B)成分を組み合わせることを特徴とするが、(B)成分として用いることが可能なPD−1抗体は、副作用として肺線維症や突発性間質性肺炎を有することが知られている。しかしながら、(A)成分は血管内皮細胞に特異的に作用して血管からの様々な増殖因子や各種炎症サイトカインの産生を抑制するため、(B)成分による副作用発現を低減することが可能となって、肺線維症や突発性間質性肺炎の治療又は改善効果を得ることが可能になると推察される。よって、本発明はまた、(A)ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストを含有する、肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療のために用いられる医薬組成物を提供する。
肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療のために用いられる医薬組成物としては、前記した(A)成分を含有するものであればよく、(A)成分の詳細については、本発明の医薬の項を参照することができるが、例えば、(A)成分を通常数時間〜数日間、好ましくは1〜14日間、より好ましくは3〜7日間程度で投与することができる。この場合の投与量としての上限は、例えば約50μg/kg/分(一日当たり、約72mg/kg)以下の濃度を適宜採用することができ、約5μg/kg/分(一日当たり、約7.2mg/kg)以下であってもよく、好ましくは約0.5μg/kg/分(一日当たり、約720μg/kg)以下であり、より好ましくは約0.2μg/kg/分以下であり、更に好ましくは約0.1μg/kg/分以下であり、更により好ましくは約0.05μg/kg/分以下である。また下限としては、通常約0.0001μg/kg/分(一日あたり約0.144μg/kg)以上であり、好ましくは約0.001μg/kg/分(一日あたり約1.44μg/kg)以上、より好ましくは約0.01μg/kg/分(一日あたり約14.4μg/kg)以上である。
なお、対象となる肺線維症又は間質性肺炎としては、特に限定はないが、本発明の医薬の項で説明した(B)成分の副作用である場合が例示される。なお、ここで、(B)成分の限定は特にないが、例えば、PD−1、PD−L1、及びPD−L2から選ばれる少なくとも1種に対する阻害剤が好適例としてが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例は本発明をより良く理解するために例示するものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることを意図するものではない。
本実施例では、まずは、ナトリウム利尿ペプチド受容体GC−Aアゴニストによる血管の保護作用を検討した実験例を試験例1シリーズとして示す。なお、全ての実験において、測定値の群間比較には、一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。
試験例1−1−1 乳癌マウス同所移植モデルに対するANPの腫瘍血管保護作用
マウスは7週齢の雌のBalb/cマウス(日本SLC)を使用した。また、Osmotic pumpはALZET(Cupertino,CA)のMODEL2001(7日間投与用)を使用した。hANP(配列番号1)は公知の方法に従って製造したものを用いた。
4T1乳癌細胞(和光純薬)を、FBS freeのRPMI-1640を用いて1×106 cell/100μLになるように調製した。この懸濁液を、上記マウスに1匹当たり100μL、右乳腺内に注入した。1週間後に腫瘍を摘出し、この腫瘍から3×3mmサイズの腫瘍片を作製した。
次に、新しく準備したマウスに、1匹につき1個ずつ右乳腺へ3×3mm腫瘍片を同所移植した。移植後5日目に、マウスを無作為に2群(コントロール群、ANP群)に群分けし(各群5〜7匹)、コントロール群には生理食塩水を充填したOsmotic pumpを、ANP群にはhANPを充填したOsmotic pumpを、それぞれマウスの背部皮下に埋め込んだ後、hANPについては1.5μg/kg/分の投与量で投与を開始し、移植後7日目に腫瘍を摘出した。
摘出した腫瘍サンプルを4%ホルマリンで1〜2日間浸けた後、パラフィン切片を作製し、脱パラフィン処理後、免疫染色を行った。免疫染色に使用した一次抗体(血管内皮細胞染色用)はRabbit anti-mouse CD31(abcam、ab28364)であり、二次抗体はAlexa Fluor 488 goat anti-rabbit(abcam、A11034)を使用した。αSMA(壁細胞染色用)の一次抗体は、Anti-actin,α-smooth muscle-Cy3 antibody(Sigma-Aldrich、C6198)を使用した。核染色は、Vectashield hard set with DAPI(Vector Laboratories、H1500)を使用した。蛍光顕微鏡はIX-81(Olympus)を使用し、撮影を行った(図1)。図1に示す写真のうち、“CD31”の箇所では、血管内皮細胞が染色されている様子を示しており、“αSMA”の箇所では、壁細胞が染色されている様子を示している。“Merged”の箇所では、血管内皮細胞と壁細胞に加えて、青色の細胞核が染色されているものが全て写し出された像が示されている。
一般に、正常な(成熟した)血管は、血管内皮細胞の周りに壁細胞がきちんと裏打ちをした(ほぼ100%)構造をとるものであるが、図1より、コントロール群では壁細胞が認められないことから、腫瘍血管は壁細胞が脱落した未熟な構造をとることが分かる。一方、ANP群は壁細胞が認められることから、ANP投与により腫瘍部における血管内皮細胞が壁細胞により裏打ちされた構造をとることが分かり、ANPは腫瘍血管の成熟化作用(保護作用)を有することが示唆される。
ここで、CD31陽性血管における抗αSMA陽性血管の割合(pericyte-coating index、血管成熟化の指標)を、下記式:
pericyte-coating index = (CD31とαSMAの二重陽性血管数)/CD31陽性血管数×100
に従って測定・算出した。具体的には、腫瘍部の血管を1匹につき無作為に10ヶ所抽出し、上記計算式に従い、測定・算出したものを平均化し、各群の平均を算出した結果を図2に示す。図2より、ANP群では、コントロール群と比較して、pericyte-coated indexは有意に高値であり、ANP投与により、腫瘍血管の成熟化作用が発揮されたことが示唆されている。
試験例1−1−2 乳癌マウス同所移植モデルに対するANPの腫瘍血管保護作用
試験例1−1−1と同様にして乳癌マウス同所移植モデルを作製し、移植後5日目に、マウスを無作為に2群(コントロール群、ANP群)に群分けし(各群5〜7匹)、コントロール群には生理食塩水を充填したOsmotic pumpを、ANP群にはhANPを充填したOsmotic pumpを、それぞれマウスの背部皮下に埋め込んだ後、hANPについては1.5μg/kg/分の投与量で投与を開始した。次いで、移植後7日目に、それぞれの群に、日本化薬社のシスプラチン注「マルコ」を用いて、1匹当たり10mg/kg(約300μL)のシスプラチン(CDDP)を尾静脈投与し、5分後に腫瘍を摘出した。
摘出した腫瘍について、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)法を用いて、腫瘍内シスプラチン濃度を測定し、各群の平均値を算出した。結果を図3に示す。図3より、ANP群では、コントロール群と比較して、腫瘍内シスプラチン濃度は有意に高値であり、ANP投与により腫瘍内の血管が保護されて、薬剤到達(シスプラチン量)が効率良く行われたことが分かる。
試験例1−2−1 肺癌マウス同所移植モデルに対するANPの血管を介した腫瘍血管保護作用
本試験例では、ANPが血管に特異的に作用していることを示す為、血管特異的GC−A遺伝子改変マウスを用いた。遺伝子改変マウスについては、既報の通りに作製されたマウスを使用した(Nojiri et al., PNAS 2015)。
LLC肺癌細胞(和光純薬)を、PBSを用いて5×104cell/20μLになるように調製した。この懸濁液にマトリジェル(Corning)を同量(20μL)加えたものを、各マウスに1匹当たり40μL、右下肺内に注入した。1週間後に腫瘍を摘出し、この腫瘍から3×3mmサイズの腫瘍片を作製した。
次に、新しく準備したマウスに、1匹につき1個ずつ右肺へ3×3mm腫瘍片を同所移植し、移植後7日目に腫瘍を摘出した。
試験例1−1−1と同様にして、腫瘍内の血管状態について、免疫染色を行って調べた。結果を図4に示す。また、壁細胞の裏打ち率についても同様に調べた。結果を図5に示す。その結果、血管内皮特異的EC−GCA−Tg(過剰発現)マウスでは、WT(野生型)群と比較して、pericyte-coated indexは有意に高値であった。以上より、ANPは血管に特異的に作用し、腫瘍血管の成熟化作用を発揮したことが示された。なお、血管内皮特異的EC−GCA−KO(ノックアウト)マウスでは、コントロールマウス(Flox/flox)と比較して、pericyte-coated indexについて有意差を認めなかった。
試験例1−2−2 肺癌マウス同所移植モデルに対するANPの血管を介した腫瘍血管成熟化作用
本試験例では、試験例2−1と同様に、血管特異的GC−A遺伝子改変マウスを用いた。また、他のマウスについては、8〜10週齢の雄のC57BL/6マウス(日本SLC)を使用した。Osmotic pumpはALZET(Cupertino,CA)のMODEL2002(14日間投与用)を使用した。hANP(配列番号1)は公知の方法に従って製造したものを用いた。
試験例1−2−1と同様にして肺癌マウス同所移植モデルを作製し、遺伝子改変マウスについては、移植後7日目に、日本化薬社のシスプラチン注「マルコ」を用いて、1匹当たり10mg/kg(約300μL)のシスプラチン(CDDP)を尾静脈投与し、5分後に腫瘍を摘出した。また、C57BL/6マウスについては、移植後5日目にマウスを無作為に2群(コントロール群、ANP群)に群分けし(各群5〜7匹)、コントロール群には生理食塩水を充填したOsmotic pumpを、ANP群にはhANPを充填したOsmotic pumpを、それぞれマウスの背部皮下に埋め込んだ後、hANPについては1.5μg/kg/分の投与量で投与を開始し、移植後7日目に、それぞれの群に、日本化薬社のシスプラチン注「マルコ」を用いて、1匹当たり10mg/kg(約300μL)のシスプラチン(CDDP)を尾静脈投与し、5分後に腫瘍を摘出した。
摘出した腫瘍について、試験例1−1−2と同様にして、腫瘍内シスプラチン濃度を測定し、各群の平均値を算出した。結果を図6に示す。図6より、ANP群では、コントロール群と比較して、腫瘍内シスプラチン濃度は有意に高値であり、ANP投与により薬剤到達(シスプラチン量)が効率良く行われたことを示している。また、血管内皮特異的EC−GCA−Tg(過剰発現)マウスでは、WT(野生型)群と比較して、腫瘍内シスプラチン濃度は有意に高値であった。以上より、ANPは血管に特異的に作用することにより、腫瘍内の血管を保護して崩壊を抑制することが分かる。
試験例1−3 シスプラチン誘発骨髄抑制モデルに対するANPの作用
8週齢の雄のC57BL/6マウス(日本SLC)を使用した。Osmotic pumpはALZET(Cupertino,CA)のMODEL2002(14日間投与用)を使用した。hANP(配列番号1)は公知の方法に従って製造したものを、シスプラチン(CDDP)は日本化薬社のシスプラチン注「マルコ」を用いた。
先ず、マウスを無作為に2群(コントロール群、ANP群)に群分けし(各群5〜7匹)、コントロール群には生理食塩水を充填したOsmotic pumpを、ANP群にはhANPを充填したOsmotic pumpを、それぞれマウスの背部皮下に予め埋め込んだ。
次に、CDDP投与を行う1日前(Day-1)に、ANP群については1.5μg/kg/分の投与量で投与を開始した。翌日それぞれの群にCDDPを1匹当たり16mg/kg(約480μL)で腹腔内投与し、Day0(CDDP投与前)、2、4、8、14に、マウス6匹ずつ、体重測定を行ってから屠殺し、大腿静脈より血液採取を行った後、骨髄採取も行った。
得られた血液からは、白血球数、血小板数、ヘモグロビン値を、動物用全自動血球計数器「セルタックα」MEK-6450(日本光電)を用いて測定した。骨髄からは、骨髄内全細胞数、生細胞数、及びgranulocyte macrophage colony forming units (GM-CFU)を、StemCell Technologies社のアッセイキットを用いて測定した。血液の結果を図7に、骨髄の結果を図8に示す。
また、CDDP投与後早期のメカニズムを明らかにする為に、同様の実験を、Day0(CDDP投与前)、0.5、1、2に、マウス大腿静脈より採血を行い、血清保存後、血清中G-CSF濃度を、Mouse G-CSF Quantikine ELISA Kit (Cat. MCS00;R&D systems社)を用いて測定した。結果を図9に示す。
図7より、コントロール群と比較して、ANP群で白血球数がDay2、4で有意に高値であった。図8より、コントロール群と比較して、ANP群で骨髄内生細胞数及びGM-CFU値がDay2、4、8で有意に高値であった。また、図9より、コントロール群と比較して、ANP群ではDay0.5で高い傾向を示し、Day1では有意に高値であった。
以上より、ANPは血漿G-CSF値を増加させることによって、シスプラチン等の抗癌剤により誘発される副作用である骨髄抑制に対して軽減効果を発揮すると考えられる。
試験例2 乳癌マウス同所移植モデルに対するANPとタキサン系抗癌剤の併用効果
マウスは7週齢の雌のBalb/cマウス(日本SLC)を使用した。また、Osmotic pumpはALZET(Cupertino,CA)のMODEL2004(28日間投与用)を使用した。hANP(配列番号1)は公知の方法に従って製造したものを、代表的なタキサン系抗癌剤である、日本化薬社のドセタキセル点滴静注液20mg/1mL「NK」を用いた。
4T1乳癌細胞(和光純薬)を、FBS freeのRPMI-1640を用いて1×106 cell/100μLになるように調製した。この懸濁液を、上記マウスに1匹当たり100μL、右乳腺内に注入した。1週間後に腫瘍を摘出し、この腫瘍から3×3mmサイズの腫瘍片を作製した。
次に、新しく準備したマウスに、1匹につき1個ずつ右乳腺へ3×3mm腫瘍片を同所移植した。移植後5日目に、マウスを無作為に4群(コントロール群、ANP群、ドセタキセル(DTX)群、併用群)に群分けし(各群6匹)、表1に記載の内容物を充填したOsmotic pumpをマウスの背部皮下に埋め込み、hANPを充填したものについては1.5μg/kg/分の投与量となるよう設定して投与を開始した。その後、移植後7日目に、表1に記載の生理食塩水又はDTXを1匹当たり約100μL尾静脈投与した。
投与期間も含めて移植後4週間観察を続け、1週毎に、移植した腫瘍の大きさを計測し、腫瘍ボリュームを以下の推定式で求め、各群の平均値を算出した。結果を図10に示す。
腫瘍ボリューム(mm)=(π/6)×d
d=縦と横の平均径(mm)
図10より、コントロール群とANP群は特に差を認めなかった。一方、DTX群は、コントロール群やANP群と比較して腫瘍の増殖が有意に抑制されたが、併用群はDTX群と比較しても腫瘍の増殖が有意に抑制された。以上の結果より、DTXの抗腫瘍作用(腫瘍増殖抑制作用)がANP投与によって増強される効果があることが示された。
試験例3 乳癌マウス同所移植モデルに対するANPとプラチナ系抗癌剤の併用効果に関するANP投与期間の検討
本試験例では、マウスは7週齢の雌のBalb/cマウスを使用した。また、Osmotic pumpはALZETのMODEL1002(14日間投与用)を使用した。
Balb/cマウスの背部皮下に、生理食塩水を入れたOsmotic pumpを埋め込んだものをコントロール群とした。同様に、hANPを0.5μg/kg/分(ANP群)の投与量で投与されるように調製されたOsmotic pumpをマウスの皮下に埋め込んだANP投与群を作製した。
シスプラチン(CDDP)投与は、1匹当たり10mg/kg(約300μL)のCDDPを尾静脈投与し、コントロール群では、生理食塩水を同量尾静脈投与した。
4T1乳癌細胞を、FBS freeのRPMI-1640を用いて、4T1細胞が1×106cell/100μLになるように調製した。この懸濁液を、上記マウスに1匹当たり100μL、右乳腺内に注入した。1週間後に、腫瘍を摘出し、この腫瘍から5×5mm細片を作成した。新しく準備したマウスに1匹につき、1個ずつ右乳腺へ5×5mm腫瘍片を同所移植した。マウスを無作為に6群(下記に示す6群)に分け、それぞれの群に応じたANP投与のタイミングに調整したOsmotic pumpをマウス皮下に埋め込み、投与を開始した。移植後7日目に、生理食塩水もしくはシスプラチン10mg/kgを尾静脈投与した。
(各群)
コントロール群:生理食塩水を充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、Day7に生理食塩水を尾静脈投与
vehicle+CDDP群:生理食塩水を充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、Day7に10mg/kgのCDDPを尾静脈投与
ANP1日投与+CDDP群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay6に埋め込み、Day7に10mg/kgのCDDPを尾静脈投与
ANP3日投与+CDDP群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay4に埋め込み、Day7に10mg/kgのCDDPを尾静脈投与
ANP5日投与+CDDP群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay2に埋め込み、Day7に10mg/kgのCDDPを尾静脈投与
ANP7日投与+CDDP群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、Day7に10mg/kgのCDDPを尾静脈投与
投与期間も含めて移植後4週間観察を続け、1週毎に、細胞注入部の腫瘍の大きさを計測し、腫瘍ボリュームを試験例2と同様にして算出し、各群の平均値を算出した。結果を図11に示す。
図11に示されるように、コントロール群と比較して、vehicle+CDDP群では有意に腫瘍増殖が抑制された。一方、vehicle+CDDP群と比較して、ANP1日投与+CDDP群及びANP3日投与+CDDP群では、腫瘍増殖抑制効果に関して有意差を認めなかったが、ANP5日投与+CDDP群及びANP7日投与+CDDP群コントロール+CDDP群では、有意に腫瘍増殖抑制効果が大きかった。以上の結果より、CDDPの抗腫瘍作用(腫瘍増殖抑制作用)が、ANP投与によって増強させる為には、ANP投与期間が少なくとも5日間以上要することが示された。
試験例4 乳癌マウス同所移植モデルに対するANPと抗PD−1抗体の併用効果
本試験例では、マウスは7週齢の雌のBalb/cマウスを使用した。また、Osmotic pumpはALZETのMODEL2004(28日間投与用)を使用した。
Balb/cマウスの背部皮下に、生理食塩水を入れたOsmotic pumpを埋め込んだものをvehicle群とした。同様に、hANPを0.5μg/kg/分(ANP群)の投与量で投与されるように調製されたOsmotic pumpをマウスの皮下に埋め込んだANP群を作製した。
代表的な免疫チェックポイント阻害剤である、抗PD−1抗体の投与に関しては、BioXCell社の抗マウスPD-1抗体を用いて、20又は10mg/kg(計100μL/1匹になるように注射用水を用いて調製)を腹腔内投与し、コントロール群では、抗マウスIgG(BE0260, BioXCell社)を同量(100μL)腹腔内投与した。
4T1乳癌細胞(和光純薬)を、FBS freeのRPMI-1640を用いて、4T1細胞が1×106cell/100 μlになるように調製した。この懸濁液を、上記マウスに1匹当たり100μl、右乳腺内に注入した。1週間後に、腫瘍を摘出し、この腫瘍から3×3mm細片を作成した。新しく準備したマウスに1匹につき、1個ずつ右乳腺へ3×3mm腫瘍片を同所移植した。移植と同じ日に、マウスを無作為に4群(下記に示す4群)に群分けし、以下の通り、それぞれの群に応じた投与に調整したOsmotic pumpをマウス皮下に埋め込み、投与を開始した。また、移植後7,13,19日目には、以下の通り、それぞれの群に応じた投与に調整した抗マウスIgG又は抗PD-1抗体を腹腔内投与した。
(各群)
コントロール群:生理食塩水を充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、抗マウスIgGをDay7に20mg/kg、Day13、19に10mg/kgをそれぞれ腹腔内投与
ANP群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込んだ
vehicle+抗PD-1抗体群:生理食塩水を充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、抗マウスPD-1抗体をDay7に20mg/kg、Day13、19に10mg/kgをそれぞれ腹腔内投与
ANP+DTX群:hANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpをDay0に埋め込み、抗マウスPD-1抗体をDay7に20mg/kg、Day13、19に10mg/kgをそれぞれ腹腔内投与
投与開始後さらに4週間観察を続け、1週毎に、細胞注入部の腫瘍の大きさを計測し、腫瘍ボリュームを試験例2と同様にして算出し、各群の平均値を算出した。結果を図12に示す。
図12に示されるように、コントロール群とANP群は特に差を認めなかった。一方、vehicle+抗PD-1抗体群は、コントロール群やANP群と比較して、腫瘍の増殖が有意に抑制された。さらに、ANP+抗PD-1抗体群は、vehicle+抗PD-1抗体群と比較しても、腫瘍の増殖が有意に抑制された。以上の結果より、抗PD-1抗体の抗腫瘍作用(腫瘍増殖抑制作用)が、ANP投与によって、増強させる効果があることが示された。
試験例5−1 肺線維症マウスモデルに対するANPの効果
本試験例では、マウスは7週齢の雄のC57BL/6Nマウス(日本SLC)を使用した。また、Osmotic pumpはALZET(Cupertino, CA)のMODEL1002(14日間投与用)を使用した。
C57BL/6Nマウスの背部皮下に、生理食塩水を入れたOsmotic pumpを埋め込んだものをコントロール群とした。同様に、hANPを0.5μg/kg/分(ANP群)の投与量で投与されるように調製されたOsmotic pumpをマウスの皮下に埋め込んだANP群を作製した。
代表的な肺線維症誘発剤である、ブレオマイシンの投与に関しては、日本化薬社のブレオ注射用5mgを用いて、1mg/kg(計80μL/1匹になるように注射用水を用いて調製)を気管内投与し、コントロール群では、生理食塩水を同量(80μL)気管内投与した。ブレオマイシン及び生理食塩水投与後、21日目に犠牲死させ、マウス肺を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)で伸展固定し、パラフィン包埋ブロックを作製後、マッソン・トリクローム染色を行った。染色標本について、ボックス型蛍光撮像装置 FSX100(Olympus)で撮影を行った。肺線維化面積率については、線維化面積/全体の肺面積と定義し、CellSens Dimension software version 1.6 (Olympus)で自動算出を行った。結果を図13に示す。
(各群)
コントロール群:生理食塩水を気管内投与した群
Vehicle+ブレオマイシン投与群:生理食塩水を充填したOsmotic pumpを埋め込み、3日後にブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与した群
ANP+ブレオマイシン投与群:ANPを0.5μg/kg/分の投与量で投与するように充填したOsmotic pumpを埋め込み、3日後にブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与した群
図13に示されるように、コントロール群では認められない肺線維化面積が、vehicle+ブレオマイシン群では、顕著に増大するが、ANP投与によって、有意に抑制されることが示された。
試験例5−2 組織特異的トランスジェニック(Tg)マウスを用いた肺線維症抑制効果
本試験例では、12週齢の野生型マウス、血管内皮特異的GC-A-Tg(Tie2-Cre-GC-A-Tg)マウス、繊維芽細胞特異的GC-A-Tg(Periostin-Cre-GC-A-Tg)マウスを使用し、ブレオマイシンの投与は前述と同様の方法で行った。
前述と同様に、各群のマウスに対してブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与し、21日目に犠牲死させ、マウス肺を4%パラホルムアルデヒドで伸展固定し、パラフィン包埋ブロックを作製後、マッソン・トリクローム染色を行った。染色標本について、ボックス型蛍光撮像装置 FSX100(Olympus)で撮影を行った。肺線維化面積率については、試験例5−1と同様にして算出し、肺線維化面積について、野生型マウスを1とした場合の各群の割合を表示した。結果を図14に示す。
(各群)
野生型マウス群:野生型マウスにブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与した群
血管内皮特異的GC-A-Tg群:血管内皮特異的GC-A-Tgマウスにブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与した群
繊維芽細胞特異的GC-A-Tg群:繊維芽細胞特異的GC-A-Tg マウスにブレオマイシン(1mg/kg)を気管内投与した群
図14に示されるように、野生型マウス群と比較して、血管内皮特異的GC-A-Tgマウスでは肺線維化面積が有意に抑制されており、繊維芽細胞特異GC-A-Tgマウスでは有意な抑制は認められなかった。以上より、ANPは血管を介して肺線維化抑制効果を発揮することが示唆される。
本発明の医薬は、血流を介して抗悪性腫瘍剤を効果的に腫瘍細胞内に到達させることができることから、強力な効果を有する悪性腫瘍治療用医薬として有用である。
配列表の配列番号1は、ヒト由来ANPのポリペプチドである。
配列表の配列番号2は、ラット由来ANP/マウス由来ANPのポリペプチドである。
配列表の配列番号3は、ヒト由来BNPのポリペプチドである。
配列表の配列番号4は、ブタ由来BNPのポリペプチドである。
配列表の配列番号5は、ラット由来BNPのポリペプチドである。
配列表の配列番号6は、マウス由来BNPのポリペプチドである。
配列表の配列番号7は、ANP又はBNPにおけるリング構造のポリペプチドである。

Claims (2)

  1. 心房性ナトリウム利尿ペプチド又は脳性ナトリウム利尿ペプチドを含有する、肺線維症又は間質性肺炎の予防又は治療のために用いられる医薬組成物。
  2. 心房性ナトリウム利尿ペプチドが、配列表の配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項記載の医薬組成物。
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