(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信用高周波コイル4、送信回路5、受信用高周波コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、処理回路13〜16を備える。
静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内側の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却液(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有しており、真空容器の内側の空間に静磁場を発生させる。
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを備える。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、水平方向に設定され、y軸の方向は、鉛直方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が備える3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を内側の空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
送信用高周波コイル4は、内側の空間に高周波磁場を印加する。具体的には、送信用高周波コイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。そして、送信用高周波コイル4は、送信回路5から出力される高周波(Radio Frequency:RF)パルスに基づいて、内側の空間に高周波磁場を印加する。
送信回路5は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、高周波増幅回路を備える。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波パルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力される高周波パルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力される高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力される高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅回路は、振幅変調回路から出力される高周波パルスを増幅して送信用高周波コイル4に出力する。
受信用高周波コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信用高周波コイル6は、送信用高周波コイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、送信用高周波コイル4によって印加される高周波磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信用高周波コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信用高周波コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、頭部用の受信用高周波コイル、頚部用の受信用高周波コイル、肩用の受信用高周波コイル、胸部用の受信用高周波コイル、腹部用の受信用高周波コイル、下肢用の受信用高周波コイル、脊椎用の受信用高周波コイル等である。
受信回路7は、受信用高周波コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を備える。選択回路は、受信用高周波コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
なお、ここでは、送信用高周波コイル4が高周波磁場を印加し、受信用高周波コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各高周波コイルの形態はこれに限られない。例えば、送信用高周波コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信用高周波コイル6が、高周波磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信用高周波コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信用高周波コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信用高周波コイル6が送信機能を有している場合は、送信回路5は、受信用高周波コイル6にも高周波パルスを出力する。
架台8は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、及び送信用高周波コイル4を収容する。具体的には、架台8は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び送信用高周波コイル4それぞれをボアBの周囲に配置した状態で支持する。ここで、架台8におけるボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
寝台9は、被検体Sが載置される天板9aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台8におけるボアBの内側へ天板9aを挿入する。例えば、寝台9は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
入力回路10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路16へ出力する。例えば、入力回路10は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能13aは、寝台9に接続され、制御用の電気信号を寝台9へ出力することで、寝台9の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力回路10を介して、天板9aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板9aを移動するように、寝台9が有する天板9aの駆動機構を動作させる。
処理回路14は、実行機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。実行機能14aは、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、各種パルスシーケンスを実行する。具体的には、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信用高周波コイル4に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
また、実行機能14aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に格納する。なお、実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に格納される。
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。画像生成機能15aは、記憶回路12に格納されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、実行機能14aによって記憶回路12に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に格納する。
処理回路16は、制御機能16aを有する。例えば、処理回路16は、プロセッサによって実現される。制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御機能16aは、入力回路10を介して操作者からパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、制御機能16aは、生成したシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、制御機能16aは、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路12から読み出し、読み出した画像をディスプレイ11に出力する。
ここで、例えば、上述した処理回路13〜16が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路13〜16は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
また、図1に示す例では、寝台制御機能13a、実行機能14a、画像生成機能15a及び制御機能16aの各処理機能が、それぞれ単一の処理回路によって実現されることとしたが、実施形態はこれに限られない。これらの処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、上述した実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路12にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。ここで、一般的に、MRI装置が病院等の据付場所に据え付けられる際には、各ユニットの配線及び組み立て、静磁場磁石の励磁及び磁場調整、傾斜磁場調整、高周波系調整、画像試験等の総合試験等の作業が行われる。据付場所の構造や静磁場磁石の強度及び機種にもよるが、このような据え付けの作業には、長い時間を要することが多い。
例えば、MRI装置は、製造場所において、静磁場磁石の励磁及び磁場調整、傾斜磁場調整、高周波系調整、総合試験の作業が行われた後に、据付場所へ出荷される。そして、MRI装置は、据付場所へ搬入された後に、さらに、製造場所と同様に、静磁場磁石の励磁及び磁場調整、傾斜磁場調整、高周波系調整、総合試験の作業が行われる。
図2は、MRI装置の据付方法の一例の流れを示す図である。ここで、図2に示すステップS101〜S107は、製造場所における作業を示しており、ステップS111〜S116は、据付場所における作業を示している。
例えば、図2に示すように、まず、製造場所において、各ユニットの配線及び組み立ての作業が行われる(ステップS101)。この作業では、高周波磁場の遮蔽のためのシールドルーム内に静磁場磁石が配置され、その後、設置された静磁場磁石に対して、MRI装置を構成する各ユニットの配線や各ユニットの組み立てが行われる。
続いて、製造場所において、静磁場磁石の励磁及び磁場調整の作業が行われる(ステップS102)。この作業では、撮像に必要な静磁場を発生させるために、静磁場磁石の励磁及び磁場均一性の調整が行われる。例えば、励磁の作業では、静磁場磁石の超伝導磁石に永久電流としての電流を流して安定した静磁場を発生させることが行われる。また、例えば、磁場均一性の調整の作業では、必要に応じて、発生した静磁場の分布を測定して、静磁場磁石の円筒周辺に配置された鉄片の分布を変更したり、傾斜磁場コイルや電流シムコイルに流す電流を変化させたりすることによって、静磁場の空間分布を補正することが行われる。
続いて、製造場所において、傾斜磁場調整の作業が行われる(ステップS103)。この作業では、傾斜磁場電源の電流応答性の調整や渦磁場補正用のパラメータの調整等が行われる。なお、ここで調整されたパラメータは、例えば、傾斜磁場電源や傾斜磁場コイル等を制御するための情報として記憶回路に記憶され、撮像が行われる際に処理回路によって適宜に参照されて用いられる。
続いて、製造場所において、高周波系調整の作業が行われる(ステップS104)。この作業では、送信用高周波コイルのチューニング調整やSAR(Specific Absorption Rate)保護機構に関するパラメータ測定等が行われる。なお、ここで調整されたパラメータは、例えば、送信回路や送信用高周波コイル等を制御するための情報として記憶回路に記憶され、撮像が行われる際に処理回路によって適宜に参照されて用いられる。
続いて、製造場所において、総合試験の作業が行われる(ステップS105)。この作業では、画像試験や各機能の動作確認等が行われる。
続いて、製造場所において、静磁場磁石の減磁の作業が行われる(ステップS106)。この作業では、静磁場磁石の超伝導磁石に流れる電流を止めて静磁場が発生しない状態にする減磁等が行われる。
そして、製造場所において、解体及び梱包の作業が行われる(ステップS107)。この作業では、調整及び試験後の各ユニットの解体及び梱包、並びに、据付場所への出荷が行われる。
その後、据付場所において、搬入の作業が行われる(ステップS111)。この作業では、製造場所から出荷されたMRI装置の据付場所への搬入が行われる。
続いて、据付場所において、製造場所における作業と同様に、各ユニットの配線及び組み立ての作業(ステップS112)、静磁場磁石の励磁及び磁場調整の作業(ステップS113)、傾斜磁場調整の作業(ステップS114)、高周波系調整の作業(ステップS115)、及び、総合試験の作業(ステップS116)が順に行われる。
以上の一連の作業により、MRI装置の据え付けが完了する。
ここで、上述した静磁場磁石の励磁及び磁場調整の作業は、MRI装置が設置される場所による状態の変化を受けやすいため、製造場所だけでなく、据付場所でも実施が必要である。しかし、それ以外の作業については、製造場所で既に一度行われているため、状況に応じて、据付場所での実施は省略又は簡略化することも可能である。
例えば、傾斜磁場調整の作業は、主に、静磁場磁石と傾斜磁場コイルとの相対位置や、傾斜磁場コイルの個体差によって異なる。また、高周波系調整の作業は、主に、傾斜磁場コイルと送信用高周波コイルとの相対位置や、送信用高周波コイル周辺の高周波系部品(例えば、送信用ケーブルの取り回しや90度ハイブリッド等)と送信用高周波コイルとの相対位置によって異なる。そのため、製造場所での調整後、傾斜磁場コイル、送信用高周波コイル、及び、送信用高周波コイル周辺の高周波系部品を静磁場磁石から抜き出さずに、静磁場磁石に対して各コイル及び各部品の相対位置を維持したまま据付場所に搬入すれば、据付場所における傾斜磁場調整及び高周波系調整の作業を省略することができる。また、総合試験の作業のうち、据付場所で配線をし直していない箇所の動作確認については、製造場所での動作確認で代用することができる。また、画像試験についても、同様に最小限で済ますことができる。これにより、据付場所での作業にかかる時間を短縮することができる。
しかしながら、一般的に、このような製造場所及び据付場所での作業には、熟練した作業者が必要であり、特に、据付場所での作業は作業者の出張費等も含めて多額の費用がかかることが多い。また、上述したように据付場所での作業にかかる時間を短縮し、かつ、品質を維持するためには、製造場所での励磁の作業から画像試験を含めた総合試験までの作業が不可欠である。そのため、一台のMRI装置当たりに、製造場所での励磁及び磁場調整、並びに減磁の作業と、据付場所での励磁及び磁場調整の作業とが必要となる。
ここで、例えば、励磁及び磁場調整の作業については、静磁場磁石の種類や作業方法によっても大きく異なるが、1.5テスラや3テスラを超える超伝導磁石を用いた静磁場磁石では、準備のための期間も含めて半日〜1日程度の時間がかかることもあり得る。また、減磁の作業についても、同程度の時間がかかることがあり得る。そして、例えば、一回の励磁及び磁場調整、並びに減磁の作業には、励磁する静磁場の強度や静磁場磁石の種類によっても異なるが、60〜100万円程度の出費がかかることもあり得る。
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、以下で説明するように、据え付けの作業にかかる時間を短縮することができるように構成されている。
具体的には、MRI装置100は、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を支持する支持部材をさらに備える。この支持部材は、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を互いの相対位置を固定した状態で支持し、かつ、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を支持した状態で静磁場磁石1の軸方向における側部に対して着脱可能に構成されている。
図3は、第1の実施形態に係る支持部材の構成例を示す斜視図である。また、図4は、第1の実施形態に係る支持部材の構成例を示す断面図である。ここで、図4は、静磁場磁石1の中心軸を通る鉛直方向に沿った断面を示している。なお、図4では、説明の便宜上、傾斜磁場コイル2に接続される部品18を上側の断面に示している。
例えば、図3及び4に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、支持部材17をさらに備える。支持部材17は、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を互いの相対位置を固定した状態で支持している。
また、本実施形態では、支持部材17は、傾斜磁場コイル2に接続される部品18、及び、送信用高周波コイル4に接続される部品19を、各部品の位置を固定した状態でさらに支持している。ここで、例えば、傾斜磁場コイル2に接続される部品18は、傾斜磁場コイル2にケーブルを接続するための端子を支持する端子台等である。また、例えば、送信用高周波コイル4に接続される部品19は、前述した送信回路5に含まれる発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、高周波増幅回路等である。
また、本実施形態では、支持部材17は、傾斜磁場コイル2と傾斜磁場コイル2に接続される部品18とを接続するケーブル20、及び、送信用高周波コイル4と送信用高周波コイル4に接続される部品19とを接続するケーブル21を、各ケーブルの位置を固定した状態でさらに支持している。
例えば、図3に示すように、支持部材17は、中心部に孔を有する円形の平板状に形成された平板部17aを有しており、平板部17aの一面が静磁場磁石1の軸方向における一方の端面1aに接触した状態で、静磁場磁石1に取り付けられる。そして、本実施形態では、支持部材17において、静磁場磁石1に接触している面の反対側にある面上に、傾斜磁場コイル2に接続される部品18、及び、送信用高周波コイル4に接続される部品19が固定されている。すなわち、本実施形態では、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に接続される部品18及び19、並びに、ケーブル20及び21が、静磁場磁石1の軸方向における両方の端面のうちの一方の端面1aのみに固定されている。
また、例えば、図4に示すように、支持部材17は、静磁場磁石1の軸方向に突出する第1の凸部17bを有しており、当該第1の凸部17bが静磁場磁石1の内周側に形成された筒孔1bの開口端に嵌合した状態で、静磁場磁石1に取り付けられる。ここで、本実施形態では、第1の凸部17bは、平板部17aに形成されている孔の周囲に沿って設けられており、突端部に傾斜磁場コイル2が固定されている。そして、本実施形態では、傾斜磁場コイル2と傾斜磁場コイル2に接続される部品18とを接続するケーブル20が、第1の凸部17bに形成された貫通孔を通して固定されている。
また、例えば、図4に示すように、支持部材17は、第1の凸部17bの内周側に配置され、静磁場磁石1の軸方向に第1の凸部17bよりもさらに突出するように形成された第2の凸部17cをさらに有している。ここで、第2の凸部17cは、第1の凸部17bと同様に、平板部17aに形成されている孔の周囲に沿って設けられており、突端部に送信用高周波コイル4が固定されている。
ここで、第1の凸部17b及び第2の凸部17cの形状は、静磁場磁石1の筒孔1bの開口端付近における傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4の配置及び形状に合うように成形されている。
このように、本実施形態では、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、それぞれのコイルが機能するために必要な部品18及び19が、それぞれの相対位置関係を維持するための支持部材17によって強固に固定されている。また、撮像中や輸送中の振動による影響を防ぐため、傾斜磁場コイル2と部品18との間に接続されるケーブル20、及び、送信用高周波コイル4と部品19との間に接続されるケーブル21も、支持部材17に固定されている。
そして、支持部材17は、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を支持した状態で静磁場磁石1の軸方向における一方の側部に対して着脱可能に構成されている。例えば、支持部材17は、ボルト等の固定部材によって、静磁場磁石1の軸方向における側部に対して固定又は取り外しが可能となっている。これにより、支持部材17は、必要に応じて、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、上述した部品18及び19並びにケーブル20及び21と一体で、静磁場磁石1に固定、又は、静磁場磁石1から取り外しが可能となっている。
なお、本実施形態では、このように傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及び支持部材17を一体化した構成をコイルアセンブリと呼ぶ。ここで、本実施形態では、上述した部品18及び19並びにケーブル20及び21もコイルアセンブリに含まれている。すなわち、本実施形態では、コイルアセンブリは、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、支持部材17、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に接続される部品18及び19、並びにケーブル20及び21を備え、これらの相対位置を固定した状態で静磁場磁石1に対して着脱可能な構成となっている。
図5は、第1の実施形態に係るコイルアセンブリ30を静磁場磁石1から取り外した状態を示す図である。例えば、図5に示すように、本実施形態では、コイルアセンブリ30が、静磁場磁石1に対して着脱可能な構成となっている。ここで、本実施形態では、支持部材17によって、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に接続される部品18及び19、並びにケーブル20及び21が、それぞれの間の相対的な位置関係を変化させることなく、静磁場磁石1に固定、又は、静磁場磁石1から取り外しが可能となっている。
具体的には、コイルアセンブリ30が静磁場磁石1に取り付けられる際には、静磁場磁石1の筒孔1bに対して、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4が挿入される。また、コイルアセンブリ30が静磁場磁石1から取り外される際には、静磁場磁石1の筒孔1bから、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4が抜き出される。すなわち、本実施形態に係るコイルアセンブリ30は、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4の相対位置を固定した状態で、静磁場磁石1の筒孔1bに対して傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を挿抜可能に構成されている。
なお、ここでは、支持部材17が、平板状に形成された平板部17aを有する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、支持部材17は、平板部17aの代わりに、棒状のフレーム部材や枠状のフレーム部材を有していてもよい。
図6は、第1の実施形態に係る支持部材17の変形例を示す図である。例えば、図6に示すように、本変形例に係る支持部材17は、円形の枠状に形成された第1のフレーム部材17dと、棒状に形成された複数の第2のフレーム部材17eとを有する。第1のフレーム部材17dは、支持部材17における所定の位置を中心とした周方向に沿って配置されている。また、第2のフレーム部材17eは、第1のフレーム部材17dの外周から半径方向に沿って延在するように配置されている。ここで、第1のフレーム部材17d及び第2のフレーム部材17eは、1つ又は複数の部材により一体形成されている。
この変形例では、支持部材17は、第1のフレーム部材17d及び第2のフレーム部材17eが静磁場磁石1の軸方向における一方の端面1aに接触した状態で、静磁場磁石1に取り付けられる。このように、支持部材17が棒状のフレーム部材や枠状のフレーム部材で構成されることによって、平板状の支持部材17と比べて、支持部材17の重量を減らすことができ、コイルアセンブリ30を静磁場磁石1から抜き出したり組み込んだりする際の作業者の負担を軽減することができる。
また、他の変形例として、例えば、支持部材17に含まれる平板部17aが、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、各部品及び各ケーブルが固定される部分を除いた箇所で複数の部品に分割されており、各部品が所定の間隔を空けて連結されることで、支持部材17が構成されていてもよい。
このように、支持部材17は、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、各部品及び各ケーブルを互いの相対位置を固定した状態で支持できる構造を有していれば、各種の形状及び構成で実現することができる。
また、上述した構成では、支持部材17が、静磁場磁石1の軸方向における一方の側部に対して着脱可能に構成されているが、これに加えて、静磁場磁石1の軸方向における他方の側部に、別の支持部材が着脱可能に取り付けられてもよい。その場合には、当該別の支持部材は、静磁場磁石1の軸方向における一方の側からコイルアセンブリ30が取り付けられた後に、他方の側から取り付けられる。そして、当該別の支持部材は、静磁場磁石1の軸方向における他方の側から、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を互いの相対位置を固定した状態で支持する。
この変形例では、静磁場磁石1の軸方向における一方の側部に着脱される支持部材17については、少なくとも、当該支持部材17に固定される傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、各部品及び各ケーブルを支持できるだけの強度を有していればよい。そして、他方の側部に着脱される別の支持部材が、撮像中における傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、各部品及び各ケーブルの振動に耐え得るだけの強度を補完できるように構成されていればよい。したがって、この例でも、支持部材17の重量を減らすことができ、コイルアセンブリ30を静磁場磁石1から抜き出したり組み込んだりする際の作業者の負担を軽減することができるようになる。
そして、上述した構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、以下で説明する据付方法によって、据付場所への据え付けが行われる。
本実施形態に係るMRI装置100の据付方法は、コイルアセンブリ30を治具用の静磁場磁石(調整治具磁石)に組み付けた状態で、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に関する調整を行い、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に関する調整が行われた後に、治具用の静磁場磁石からコイルアセンブリ30を取り外し、コイルアセンブリ30が治具用の静磁場磁石から取り外された後に、当該コイルアセンブリ30を治具用の静磁場磁石とは異なる据付用の静磁場磁石1に組み付けることを含む。
図7は、第1の実施形態に係る治具用の静磁場磁石を示す図である。ここで、図7は、配線及び組み立て前の製造場所の様子を示しており、左側に、本実施形態に係る治具用の静磁場磁石201を示しており、右側に、据付対象となるMRI装置100の静磁場磁石1を示している。また、図7の左側に示す破線Mは、磁場強度の等高線を表しており、高強度の静磁場が発生していることを示している。
例えば、図7に示すように、治具用の静磁場磁石201は、据付用の静磁場磁石1と同一の構成を有している。これにより、本実施形態では、支持部材17によって、傾斜磁場コイル2と、送信用高周波コイル4と、上述した部品18及び19並びにケーブル20及び21とが、それぞれの間の相対的な位置関係を変化させることなく、治具用の静磁場磁石201に固定、又は、治具用の静磁場磁石201から取り外しが可能となっている。すなわち、本実施形態では、コイルアセンブリ30が、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4の相対位置を固定した状態で、治具用の静磁場磁石201の筒孔に対して傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4を挿抜可能に構成されている。
本実施形態では、例えば、図7の左側に示すように、治具用の静磁場磁石201は、MRI装置100の製造場所に設置されたシールドルーム300内に配置されており、MRI装置100の据え付けが行われる際には、あらかじめ励磁された状態とされている。
図8は、第1の実施形態に係るMRI装置100の据付方法の流れを示す図である。ここで、図8に示すステップS201〜S207は、製造場所における作業を示しており、ステップS211〜S214は、据付場所における作業を示している。また、図9〜12は、第1の実施形態に係るMRI装置100の据付方法における製造場所の様子を示す図である。また、図13は、第1の実施形態に係るMRI装置100の据付方法における据付場所の様子を示す図である。
本実施形態に係る据付方法では、例えば、図7に示したように、製造場所において、治具用の静磁場磁石201がシールドルーム300内に配置されており、あらかじめ励磁された状態とされている(図9の(a)を参照)。
そして、例えば、図8に示すように、本実施形態に係る据付方法では、まず、製造場所において、各ユニットの配線及び組み立ての作業が行われる(ステップS201)。この作業では、据付用の静磁場磁石1に対して、MRI装置100を構成する各ユニットの配線や各ユニットの組み立てが行われる(図9の(b)を参照)。
ここで、本実施形態では、コイルアセンブリ30が、静磁場磁石1に対して限られた数のボルト等の固定部材によって固定されており、かつ、支持部材17によって、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、上述した部品18及び19並びにケーブル20及び21それぞれの間の相対的な位置関係が保たれた構造となっている。このため、コイルアセンブリ30は、適切な治具を使えば、高磁場が発生している状態でも静磁場磁石1から安全に引き抜くことができる。なお、この段階では、据付用の静磁場磁石1はまだ励磁されておらず、静磁場が発生していない状態であるため、磁場吸引の心配もなく安全に作業を行うことができる。
続いて、製造場所において、治具用の静磁場磁石201への組込みの作業が行われる(ステップS202)。この作業では、組み立てられた傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品(図3〜5に示した部品18及び19)を含むコイルアセンブリ30を据付用の静磁場磁石1から抜き出し(図9の(c)を参照)、静磁場が発生している治具用の静磁場磁石201に挿入して組み込むことが行われる(図10の(d)〜(f)を参照)。
続いて、製造場所において、傾斜磁場調整の作業(ステップS203)、高周波系調整の作業(ステップS204)、及び、総合試験の作業(ステップS205)が順に行われる。これらの作業では、例えば、ファントムF等の調整用の治具類を用いて、図2に示したステップS103〜S105の作業と同様に、傾斜磁場電源3の電流応答性の調整や渦磁場補正用のパラメータの調整等、送信用高周波コイル4のチューニング調整やSAR保護機構に関するパラメータ測定等、画像試験や各機能の動作確認等が行われる(図11の(g)を参照)。
続いて、製造場所において、治具用の静磁場磁石201からの抜き出し、及び、据付用の静磁場磁石1への組込みの作業が行われる(ステップS206)。この作業では、調整や試験が完了した、組み立てられた傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品を含むコイルアセンブリ30を治具用の静磁場磁石201から引き抜き(図11の(h)及び(i)を参照)、据付用の静磁場磁石1に挿入し組込むことが行われる(図12の(j)及び(k)を参照)。
そして、製造場所において、解体及び梱包の作業が行われる(ステップS207)。この作業では、調整及び試験後の各ユニットの解体及び梱包、並びに、据付場所への出荷が行われる(図12の(l)を参照)。
ここで、解体及び梱包、並びに出荷の作業は、それぞれ、組み立てられた傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品を含むコイルアセンブリ30を据付用の静磁場磁石1から抜き出さずに、静磁場磁石1に対して各コイル及び各部品の相対位置を維持したままで行われる。
その後、据付場所において、搬入の作業が行われる(ステップS211)。この作業では、製造場所から出荷されたMRI装置100の据付場所への搬入が行われる。なお、この作業でも、製造場所からの出荷の作業と同様にコイルアセンブリ30を据付用の静磁場磁石1から抜き出さずに、静磁場磁石1に対して各コイル及び各部品の相対位置を維持したまま、据付場所に設定されたシールドルーム400への搬入が行われる(図13の(m)を参照)。
続いて、据付場所において、各ユニットの配線及び組み立ての作業(ステップS212)が行われ(図13の(n)を参照)、その後、図2に示したステップS113の作業と同様に、静磁場磁石1の励磁及び磁場調整の作業(ステップS213)が行われる(図13の(o)を参照)。
続いて、据付場所において、総合試験(簡易版)の作業(ステップS214)が行われる(図13の(p)を参照)。これにより、MRI装置100の据え付けに係る作業が完了する(図13の(q)を参照)。
ここで、本実施形態では、傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品を含むコイルアセンブリ30が、各コイル及び各部品の相対位置が維持されたまま据付場所に搬入されるため、前述したように、据付場所における作業の一部を省略又は簡略化することができる。すなわち、本実施形態では、傾斜磁場調整及び高周波系調整の作業が省略され、総合試験についても、製造場所での動作確認で代用すること等によって、最小限の作業が行われる。
以上の一連の作業により、MRI装置100の据え付けが完了する。
上述したように、第1の実施形態では、製造場所に励磁された状態の治具用の静磁場磁石201を用意しておき、その治具用の静磁場磁石201を利用することによって、MRI装置100の据え付けが行われる。これにより、一台のMRI装置当たりに必要となっていた製造場所での励磁及び磁場調整、並びに減磁の作業を省略することができる。
したがって、第1の実施形態によれば、MRI装置100の据え付けにかかる時間を短縮することができる。また、第1の実施形態によれば、MRI装置100の据え付けにかかる費用を低減させることができる。
また、第1の実施形態によれば、製造場所でデータ収集や画像生成を行うことで、総合的に動作状態を確認することができるので、傾斜磁場調整又は高周波系調整の不良や、各ユニットの初期不良、配線又は組み立てのミスを製造段階で検出することができる。これにより、高い品質を維持することができる。
また、第1の実施形態によれば、製造場所での作業において、励磁されたままの治具用の静磁場磁石201を使用するため、MRI装置100の製造のために、一台ごとに励磁及び磁場調整と減磁とを繰り返す必要がなくなる。これにより、MRI装置100を何台製造しても、製造場所において、励磁及び磁場調整並びに減磁のための時間及び費用が発生しないため、大幅な作業時間の短縮及び製造コストの低減が可能である。
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、製造場所において、据付用の静磁場磁石1に対して、MRI装置100を構成する各ユニットの組み立てが行われる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、製造場所において、治具用の静磁場磁石201に対して、直接、各ユニットの組み立てが行われてもよい。
以下では、このような場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態で説明したMRI装置100について、第1の実施形態で説明した据付方法とは異なる作業手順で据え付けの作業が行われる。
図14は、第2の実施形態に係るMRI装置100の据付方法の流れを示す図である。ここで、図14に示すステップS301〜S306は、製造場所における作業を示しており、ステップS211〜S214は、据付場所における作業を示している。また、図15及び16は、第2の実施形態に係るMRI装置100の据付方法における製造場所の様子を示す図である。
本実施形態に係る据付方法でも、第1の実施形態と同様に、製造場所において、治具用の静磁場磁石201がシールドルーム300内に配置されており、あらかじめ励磁された状態とされている(図15の(a)を参照)。
そして、例えば、図14に示すように、本実施形態に係る据付方法では、まず、製造場所において、各ユニットの配線及び組み立ての作業が行われる(ステップS301)。この作業では、MRI装置100を構成する各ユニットの配線が行われ、治具用の静磁場磁石201に対して、直接、各ユニットの組み立てが行われる(図15の(b)を参照)。
ここで、第1の実施形態では、各ユニットが組み付けられる据付用の静磁場磁石1は静磁場が発生していない状態であるため磁場吸引の心配はなかったが、本実施形態では、治具用の静磁場磁石201は、あらかじめ励磁されている。そのため、治具用の静磁場磁石201に対して各ユニットが組み付けられる際には、非磁性の工具や非磁性の組み付け治具等の適切な治具を用いて、組み付けの作業が行われる。
続いて、製造場所において、傾斜磁場調整の作業(ステップS302)、高周波系調整の作業(ステップS303)、及び、総合試験の作業(ステップS304)が順に行われる。これらの作業では、第1の実施形態に係る据付方法におけるステップS203〜S205と同様の作業が行われる(図15の(c)を参照)。
続いて、製造場所において、治具用の静磁場磁石201からの抜き出し、及び、据付用の静磁場磁石1への組込みの作業の作業が行われる(ステップS305)。この作業では、図8に示した第1の実施形態に係る据付方法におけるステップS206と同様の作業が行われる(図16の(d)及び(e)を参照)。
そして、製造場所において、解体及び梱包の作業が行われる(ステップS306)。この作業では、図8に示した第1の実施形態に係る据付方法におけるステップS207と同様に、調整及び試験後の各ユニットの解体及び梱包、並びに、据付場所への出荷が行われる(図16の(f)を参照)。
その後、据付場所において、図8に示した第1の実施形態に係る据付方法におけるステップS211〜S214と同様に、搬入の作業、各ユニットの配線及び組み立ての作業、静磁場磁石1の励磁及び磁場調整の作業、総合試験(簡易版)の作業が行われる。
以上の一連の作業により、MRI装置100の据え付けが完了する。
上述したように、第2の実施形態では、製造場所において、治具用の静磁場磁石201に対して、直接、各ユニットの組み立てが行われる。そのため、非磁性の治具を用いる必要はあるものの、第1の実施形態に係る据付方法と比べて、据付用の静磁場磁石1からコイルアセンブリ30を抜き出して、治具用の静磁場磁石201に挿入して組み込む作業(図8に示したステップS202及び図9の(c)〜図10の(f)に示した作業)が不要になる。
したがって、第2の実施形態によれば、MRI装置100の据え付けにかかる時間をより短縮することができる。
なお、上述した第1及び第2の実施形態に係る据付方法では、製造場所において、調整や試験が完了した傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品を含むコイルアセンブリ30を据付用の静磁場磁石1に組み込んだうえで、それらを出荷し、据付場所へ搬入する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
例えば、製造場所において、調整や試験が完了した傾斜磁場コイル2、送信用高周波コイル4、及びそれらの付属部品を含むコイルアセンブリ30を出荷し、据付場所において、既に設置済みの静磁場磁石1にコイルアセンブリ30を組み込んでもよい。この方法によれば、例えば、病院等に設置済みのMRI装置について、静磁場磁石は交換せずに、傾斜磁場コイル、送信用高周波コイル、及びそれらの付属部品だけを交換するような場合でも、据え付けにかかる時間の短縮や費用の低減を実現することができる。
また、上述した第1及び第2の実施形態では、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4だけでなく、傾斜磁場コイル2に接続される部品18、及び、送信用高周波コイル4に接続される部品19、傾斜磁場コイル2と傾斜磁場コイル2に接続される部品18とを接続するケーブル20、及び、送信用高周波コイル4と送信用高周波コイル4に接続される部品19とを接続するケーブル21も支持部材17に固定される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
例えば、各部品及び各ケーブルは、必ずしも支持部材17に固定されなくてもよい。また、例えば、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4に加えて、各部品が支持部材17に固定される場合でも、各ケーブルは、必ずしも支持部材17に固定されなくてもよい。すなわち、支持部材17には、少なくとも、傾斜磁場コイル2及び送信用高周波コイル4が固定されていればよい。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、据え付けにかかる時間を短縮することができる磁気共鳴イメージング装置、コイルアセンブリ、及び磁気共鳴イメージング装置の据付方法を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。