JP2018038610A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シミングを効率的に行うことができる磁気共鳴イメージング装置を提供すること。【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、収集部と、第1算出部と、第2算出部とを備える。収集部は、静磁場磁石に第1の電流値を持つ電流が流れているときの第1の磁束密度に関する第1のデータを収集する。第1算出部は、前記第1のデータに基づいて、前記静磁場磁石に前記第1の電流値より大きい第2の電流値を持つ電流が流れているときの第2の磁束密度を算出する。第2算出部は、前記第2の磁束密度の値に基づいて、前記静磁場磁石により発生する静磁場の均一性を補正するシムの配置を算出する。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージング装置におけるパッシブシミングの方法としては、定格磁場の中に鉄片等のシム部材を持ち込み、持ち込んだシム部材を、磁石ボアチューブ等の内筒壁面へ、接着剤や、ネジなどの機械的な締結部材で固定する方法がある。また、別の方法として、定格磁場での磁場測定を実施した後にいったん消磁し、磁場のない状態でシムの着脱及び固定を行い、シムの着脱及び固定後に、再び定格磁場まで励磁する方法がある。
しかしながら、前者の例の場合、シム部材が定格磁場中で静磁場発生装置から磁場吸引力を受けるので、例えば調整に時間がかかる場合がある。また、例えば接着剤を用いてシミングを行う場合、接着剤が硬化するまでの間、手で押さえつけるなどなんらかの手段でシム部材が動かないように保持する必要がある場合がある。また、後者の例の場合、例えば冷媒の消費量が増大する。また、後者の例の場合、消磁を行う作業が含まれることにより、例えば作業時間が増大する。
特許第5627415号明細書
本発明が解決しようとする課題は、シミングを効率的に行うことができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、収集部と、第1算出部と、第2算出部とを備える。収集部は、静磁場磁石に第1の電流値を持つ電流が流れているときの第1の磁束密度に関する第1のデータを収集する。第1算出部は、前記第1のデータに基づいて、前記静磁場磁石に前記第1の電流値より大きい第2の電流値を持つ電流が流れているときの第2の磁束密度を算出する。第2算出部は、前記第2の磁束密度の値に基づいて、前記静磁場磁石により発生する静磁場の均一性を補正するシムの配置を算出する。
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示した図である。 図2は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行うシミング処理の手順を示したフローチャートである。 図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行うシミング処理の手順である図2のS150の部分の詳細を示したフローチャートである。 図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行うシミング処理で使用する鉄シムのB−H曲線について説明した図である。 図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行うシミング処理について、測定点における磁束密度の構成要素について説明した図である。 図6は、実施形態に係る画像処理装置の別の例を示した図である。
以下、添付図面を用いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、画像処理装置130とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及び画像処理装置130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源(図示されていない)から電流の供給を受けて励磁する。かかる静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。
なお、静磁場磁石101の代わりに、永久磁石が、磁石として用いられてもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、画像処理装置130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
シーケンス制御回路120は、画像処理装置130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
なお、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを画像処理装置130へ転送する。
画像処理装置130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。画像処理装置130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能150a、制御機能150b、生成機能150c、収集機能150d、第1算出機能150e及び第2算出機能150fを備える。
実施形態では、インタフェース機能150a、制御機能150b、生成機能150c、収集機能150d、第1算出機能150e及び第2算出機能150fにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能150a、制御機能150b、生成機能150c、収集機能150d、第1算出機能150e及び第2算出機能150fにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、収集機能150d、第1算出機能150e、第2算出機能150fは、収集部、第1算出部、第2算出部の一例である。
なお、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
処理回路150は、インタフェース機能150aにより、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース機能150aを有する処理回路150は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能150bによってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
記憶回路132は、インタフェース機能150aを有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能150bを有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、生成機能150cを有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能150bを有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、生成機能150cを有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
処理回路150は、制御機能150bにより、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能150bを有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能150bを有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
処理回路150は、生成機能150cにより、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
また、処理回路150は、収集機能150d、第1算出機能150e、第2算出機能150fといった各種機能を備える。これらの機能については後述する。
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100には、シミングが行われる。シミングとは、磁気共鳴イメージング装置100の有する静磁場磁石101等により発生する静磁場の空間的な不均一性を補正し、均一性を向上させるための調整操作である。シミングは、典型的には、磁気共鳴イメージング装置100の据え付け時に行われる。ここで、磁気共鳴イメージング装置100は、例えばパッシブシミングを行ってシミングを行う。ここで、パッシブシミングとは、例えば、静磁場磁石101等が発生する静磁場中にシム(鉄片)などを配置することによって、撮像領域における静磁場を均一化するシミングのことである。パッシブシミングの例としては、図示しない鉄片などの微小なパッシブシム部材を、磁石等の内筒壁面へ、接着剤や、ネジ等の機械的な締結部材で固定する方法がある。また、パッシブシミングの別の例としては、パッシブシムを取り付けるためのシム固定部品(例えば、シムを決まった位置へ固定するためのシムトレイ(図示しない)等)の中に、パッシブシム部材を挿入することにより、パッシブシム部材の固定を行う方法がある。また、別の例として、磁気共鳴イメージング装置100は、例えばアクティブシミングを行ってシミングを行う。ここで、アクティブシミングとは、例えば、図示しないシムコイルに電流を流し、シムコイルに電流が流れることにより発生する磁場を用いて、撮像領域における静磁場を均一化するシミングのことである。
続いて、実施形態に係る背景について、簡単に説明する。
磁気共鳴イメージング装置におけるパッシブシミングの方法としては、定格磁場の中に、鉄片等のシム部材を持ち込み、持ち込んだシム部材を、磁石ボアチューブ等の内筒壁面へ、接着剤や、ネジなどの機械的な締結部材で固定する方法がある。また、別の方法として、定格磁場での磁場測定を実施した後にいったん消磁し、磁場のない状態でシムの着脱及び固定を行い、シムの着脱及び固定後に、再び定格磁場まで励磁する方法がある。
しかしながら、前者の例の場合、シム部材が、定格磁場中で、静磁場派生装置から磁場吸引力等を受けるので、例えば調整に時間がかかる場合がある。また、例えば接着剤を用いてシミングを行う場合、接着剤が硬化するまでの間、手で押さえつける等の手段で、シム部材が動かないように保持する必要がある場合がある。また、後者の例の場合、例えば冷媒の消費量が増大する。また、後者の例の場合、消磁を行う作業が含まれることにより、例えば作業時間が増大する。
従って、定格磁場より低い磁場である低磁場において、シミングが行われるのが望ましい。かかる背景のもと、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、収集機能150dと、第1算出機能150eと、第2算出機能150fとを備える。この時、処理回路150は、収集機能150dにより、低磁場における磁束密度を測定する。処理回路150は、第1算出機能150eにより、低磁場における磁束密度に基づいて定格磁場における磁束密度を算出し、第2算出機能150fにより、算出した磁束密度に基づいて、シムの配置を算出する。
なお、シムのB−H曲線が非線形な振る舞いを示す場合には、前述の第1算出部が、低磁場における磁束密度に基づいて定格磁場における磁束密度を算出するステップは、シムのB−H曲線の非線形を考慮して実行されるのが望ましい。かかる場合、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、図3で後述する処理を行うことにより、シムのB−H曲線が非線形な振る舞いを示す場合でも、低磁場における磁束密度に基づいて、定格磁場における磁束密度の推定値を算出することができる。
かかる構成を備えることにより、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、励消磁を繰り返す工程に代えて、低磁場への励磁及び定格磁場への励磁の2ステップの工程で例えばシミングを行うことができる場合は、ユーザの作業時間等を低減させることができる。また、これに伴い、例えば液体ヘリウムなど冷媒の消費量を低減することができる。
例えば、冷媒の消費量の改善効果は、(低磁場の磁場強度/定格磁場の磁場強度)に比例するので、例えば定格磁場の50%である低磁場で励磁をした場合、冷媒消費量は、定格励磁の場合と比較して25%となる。また、例えば、ユーザの作業時間は、(低磁場の磁場強度/定格磁場の磁場強度)に比例するので、例えば定格磁場の50%である低磁場で励磁をした場合、ユーザの作業時間は、定格励磁の場合と比較して50%となる。
続いて、図2〜図5を用いて、実施形態に係る処理の詳細について説明する。図2及び図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の行う処理のシミング手順を示したフローチャートである。図2は、磁気共鳴イメージング装置100の行うシミング処理の全体を示したフローチャートである。これに対して、図3は、図2のステップS150について詳しく説明したフローチャートである。図4及び図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理について説明した図である。
はじめに、処理回路150は、制御機能150bにより、ステップS130で印加する低磁場の強度を設定する(ステップS100)。例えば、処理回路150は、入力装置134を通じて、ステップS130において静磁場電源が印加する静磁場の強度に関する入力を受け付け、受け付けた値を、ステップS130において静磁場電源が印加する静磁場の強度のおおよその値として設定する。ここで、静磁場電源が印加する静磁場の強度は、静磁場電源が静磁場磁石101に流す電流値と対応付けられている。従って、静磁場電源が印加する静磁場の強度の値を設定する、とは、例えば、静磁場電源が静磁場磁石101に流す電流の値を設定することを意味する。
なお、以下、物質中など、必要がある時には、磁界H(あるいは磁場)と、磁束密度Bを区別して扱う。ここで、磁束密度Bとは、電場E(あるいは電界)と共に、真空中のマックスウェル方程式を構成する変数のことを指す。これに対して、磁界Hとは、電束密度Dと共に、物質中のマックスウェル方程式を構成する変数のことを指す。
ここで、真空中では、磁束密度Bは、磁界Hと、定数である真空の透磁率μを用いて、B=μHで表される。一方、シムなどの物質中では、磁束密度Bは、磁界Hと、物質固有の透磁率μとを用いて、例えば、式(1)で表される。
Figure 2018038610
ここで、磁気モーメントMは、磁界Hによって物質中に生じた磁気モーメントの大きさを表す。鉄片などの強磁性体以外の物質の場合、磁気モーメントMは、小さな値になるが、シムの鉄片など強磁性体の物質の場合、磁気モーメントMは、大きな値になる。この磁気モーメントMが生じることにより、系の外部に新たな磁界が生じる。
なお、磁気モーメントMは、式(1)を変形することにより、以下の式(2)で表される。
Figure 2018038610
式(1)は、外部から印加された外部磁場による磁界Hによって、物質中に磁気モーメントMが誘起された結果、系の外部に新たに生じた磁界(内部磁界)と、もともと外部から印加された外部磁場による磁界Hとの合計が、磁束密度Bであることを示している。磁束密度Bと、磁界Hとは、物質中では比例関係になるので、この比例定数であるμを透磁率と呼ぶ。透磁率μは、例えばB−H曲線が非線形な場合、磁界Hに依存する。
すなわち、以下の文章では、シム中など物質中においては、磁束密度Bと磁界H(磁場)を区別する。一方、真空中では、磁束密度Bの測定と磁界H(磁場)の測定とは実質的に同等であることから、磁束密度Bの測定及び磁界Hの測定の両方を、単に「磁場を測定する」と呼ぶ。
すなわち、例えばステップS100における、低磁場の「強度」とは、一般的な「磁場の強度」を意味し、これは例えば磁束密度Bの大きさを意味する。しかしながら、実施形態はこれに限られず、磁界Hの強度を意味すると解釈してもよい。
続いて、処理回路150は、ステップS100で設定された低磁場の強度(磁束密度B0L)におけるパッシブシムの磁場吸引力F(B0L)の値を計算する(ステップS110)。ここで、低磁場とは、定格磁場より低い磁場のことを意味する。続いて、処理回路150は、ステップS110において計算された磁場吸引力F(B0L)が、安全基準を満たしているか否かを判定する(ステップS120)。処理回路150が、ステップS110において計算された磁場吸引力F(B0L)が、安全基準を満たしていると判断した場合(ステップS120 Yes)、処理はステップS130に進む。一方、処理回路150が、ステップS110において計算された磁場吸引力F(B0L)が、安全基準を満たしていないと判断した場合(ステップS120 No)、処理はステップS100に戻り、ステップS130において印加される低磁場の強度の設定の再検討が行われる。具体的には、処理回路150は、かかる場合、最初に設定した磁場の強度の値より低い磁場の強度の値を、低磁場の強度として設定し、この値が、安全基準を満たしているか否か、再度検討が行われる。
続いて、静磁場電源は、ステップS100で設定された値の低磁場を印加する(ステップS130)。具体的には、静磁場電源は、静磁場磁石101に、低磁場に対応する電流値である第1の電流値Iの電流を流す。以下、シムが、例えば所定の配置である第1の配置に配置されている場合で説明する。ここで、第1の配置とは、例えば磁気共鳴イメージング装置100の据え付け時において設定した初期配置のことである。
続いて、磁気共鳴イメージング装置100は、例えば受信回路110や、所定のコイル及び電子回路により構成される、図示しない測定装置により、低磁場における磁束密度である第1の磁束密度Bの値を測定する(ステップS140)。換言すると、処理回路150は、収集機能150dにより、第1の磁束密度Bに関する第1のデータを収集する。第1の磁束密度Bは、低磁場に対応する第1の電流値Iを持つ電流が静磁場磁石101に流れ、シムが所定の配置である第1の配置に配置されているときの磁束密度である。
ここで、ステップS140において収集される第1の磁束密度Bは、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることにより直接的に発生した磁束密度B0Lに概ね等しい。しかし、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることによりシムが有することになった磁気モーメントMが周囲に作る磁束密度B1Lの分だけ、磁束密度B0Lと異なる値になる。具体的には、第1の磁束密度Bの測定位置をyとすると、測定位置yにおける第1の磁束密度Bの値は、以下の式(3)で与えられる。
Figure 2018038610
ここで、B(y)は、測定位置yにおける第1の磁束密度Bであり、測定値である。また、B0L(y)は、測定位置yにおける、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることにより直接的に発生したと考えられる磁束密度B0Lである。また、B1L(y)は、測定位置yにおける、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることによりシムが有することになった磁気モーメントMが周囲に作る磁束密度B1Lである。処理回路150は、シムがない場合を仮定し、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることにより直接的に発生したと考えられる磁束密度B0Lの値を推定する。後述するように、磁束密度B0Lの値は、測定したB(y)から、計算により求めるB1L(y)を減算する処理を行うことにより求める。処理回路150は、推定された磁束密度B0Lの値に基づいて、静磁場磁石101に第2の電流値Iが流れることにより直接的に発生したと考えられる磁束密度BORの値を推定し、推定した磁束密度BORの値の値に基づいて、定格磁場における磁束密度である第2の磁束密度Bの値を算出する。なお、測定位置yは、例えば3次元位置の位置ベクトルをシンボリックに表したものであり、例えば、磁場中心を原点とした極座標(r、θ、φ)の組で特徴づけられる。
続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、定格磁場における磁束密度である第2の磁束密度Bの値を算出する(ステップS150)。具体的には、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1のデータに基づいて、静磁場磁石101に第1の電流値Iより大きい第2の電流値Iを持つ電流が流れ、シムが第1の配置に配置されているときの第2の磁束密度Bの値を算出する。
ここで、シムのB−H曲線が線形な特性である場合には、磁束密度と電流とは比例するから、処理回路150は、第2の磁束密度Bの値を容易に算出することができる。かかる場合、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1のデータに基づいて、静磁場磁石101に第1の電流値Iより大きい第2の電流値Iを持つ電流が流れているときの第2の磁束密度Bの値を、例えばB=I/I×Bにより算出する。
しかしながら、シムのB−H曲線が非線形な特性である場合には、トータルの磁束密度と電流とは単純には比例しないから、第2の磁束密度Bの値の算出に工夫が必要となる。かかる背景に鑑みて、処理回路150は、ステップS150において、第1算出機能150eにより、第1のデータと、シムの磁気的特性とに基づいて、第2の磁束密度Bの値を算出する。ここで、シムの磁気的特性とは、例えば、シムに印加される磁界Hの大きさと、シムに生じる磁束密度Bの大きさとの対応関係である。
かかる処理の詳細を、図3のフローチャート及び、図4、図5を用いて説明する。図3のフローチャートとは、図2のステップS150の処理をより詳細に説明したフローチャートである。
はじめに、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1の電流値Iに基づいて、低磁場において静磁場磁石101によりシム内に作られる磁界HL;シムを算出する(ステップS150a)。具体的には、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1の電流値Iに基づいて、アンペールの法則やビオ・サバールの法則等を用いてシム内に作られる磁界HL;シムを算出する。
続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、シムの磁気的特性及びステップS150aにおいて算出されたシム内に作られる磁界HL;シムに基づいて、シム内における磁束密度BL;シムを算出する(ステップS150b)。ここで、シムの磁気的特性とは、例えば、シムに印加される磁界Hの大きさと、シムに生じる磁束密度Bの大きさとの対応関係、いわゆるB−H曲線である。B−H曲線は、物質に固有の曲線であり、例えばシムの材質等が同じであれば、同一の曲線を描く。従って、処理回路150は、例えば所定の測定を事前に行うことにより、シムのB−H曲線を事前に取得することができる。また、別の例として、処理回路150は、例えば所定のデータベースを参照することにより、シムのB−H曲線を事前に取得することができる。画像処理装置130は、このようにして事前に取得したシムのB−H曲線を、例えば記憶回路132に記憶してもよい。かかる場合、処理回路150は、記憶回路132に記憶されたシムのB−H曲線を、例えば収集機能150dを用いて収集する。
図4に、シムのB−H曲線の例が示されている。横軸は、シム内に印加された磁界Hを表す。縦軸は、シムに生じる磁束密度Bを表す。B−H曲線30は、シムのB−H曲線を表す。点31は、低磁場におけるB−H曲線30上の位置を表す。点32は、定格磁場におけるB−H曲線30上の位置を表す。図4において、磁界Hは、低磁場において、シム内に作られる磁界を表し、ステップS150aにおいて算出された磁界HL;シムを表す。第1の磁束密度Bは、低磁場における、シム内における磁束密度を表し、ステップS150bにおいて算出される磁束密度BL;シムに対応する。磁界Hは、定格磁場において、シム内に作られる磁界を表し、ステップS150gにおいて算出される磁界HR;シムを表す。磁束密度Bは、定格磁場における、シム内における磁束密度を表し、ステップS150hにおいて算出される磁束密度BR;シムに対応する。
このように、ステップS150bにおいて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、ステップS150aにおいて算出されたシム内に作られる磁界HL;シムの値(H)と、記憶回路132から取得したB−H曲線30との交点である点31を算出し、算出した点31の縦軸の値Bに基づいて、シム内における磁束密度BL;シムを算出する。
なお、シムの磁気的特性の例としては、上述した例に限られない。例えば、シムの磁気的特性は、磁界Hまたは磁束密度Bのうち少なくとも一方の関数として表されたシムの透磁率μであってもよい。処理回路150は、第1算出機能150eにより、式(1)の右辺を評価することにより、シム内における磁束密度BL;シムを、シム内における磁界HL:シム及び透磁率μ(H)(又はμ(B))に基づいて算出することができる。
続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、シム内に作られる磁界HL;シムと、シム内における磁束密度BL;シムとに基づいて、低磁場におけるシムの磁気モーメントMを算出する(ステップS150c)。例えば、処理回路150は、第1算出機能150cにより、式(2)を用いて、M=B−μにより、低磁場におけるシムの磁気モーメントMを算出する。
ところで、与えられた磁気モーメントmが、所定の位置rに作る磁束密度Bの算出方法は既知である。実際、磁束密度Bは、所定の定数倍を除くと、−grad(m・r/r )で与えられる。ここで、mは磁気モーメントを表す3次元ベクトルであり、rは、磁気モーメントがある位置を原点としたときの3次元位置ベクトルであり、rはrの大きさを表すスカラー量である。
換言すると、処理回路150は、ステップS150cで算出された低磁場におけるシムの磁気モーメントMの値に基づいて、磁束密度の測定位置における、磁気モーメントMにより生じる磁束密度B1Lの値を算出する(ステップS150d)。
かかる状況は、例えば式(4)に示されている。
Figure 2018038610
ここで、yは測定位置を表す。また、xは、シムの位置を表す。B1L(y)は、測定位置yにおける、ステップS150dで算出される磁束密度の値を表す。M(x)は、位置xにおける、ステップS150cで算出された磁気モーメントMの値を表す。係数R(x、y)は、位置xにおける磁気モーメントM(x)が、測定位置yにおける磁束密度B1L(y)に対して持つ寄与の大きさを表す情報である。
図5は、式(3)及び式(4)の状況を、図示化したものである。コイル10a及びコイル10bは、静磁場磁石101を表している。シムトレイ11aは、シムが配置されるシムトレイを示している。測定位置12は、ステップS140において第1の磁束密度Bが測定される測定位置を示している。シム20a、シム20b、シム20c、シム20d、シム20e、シム20fは、シム部材である強磁性体が挿入されたシムトレイ11aの領域を表している。これに対して、領域21a、領域21b、領域21c、領域21d、領域21eは、シム部材である強磁性体が挿入されていないシムトレイ11aの領域を表している。直線22aは、シム20aと測定位置12とを結んだ直線である。同様に、直線22b、直線22c、直線22d、直線22e、直線22fは、それぞれシム20b、シム20c、シム20d、シム20e、シム20fと測定位置12とを結んだ直線である。
図5の左図は、式(3)におけるB(y)、すなわち測定位置yにおける第1の磁束密度Bを表している。図5の中央の図は、式(3)における、B0L(y)、すなわち、測定位置yにおける、コイル10a及びコイル10bに第1の電流値Iが流れることにより直接的に発生した磁束密度である第3の磁束密度B0Lを表している。図5の右の図は、式(3)における、磁束密度B1L(y)、すなわち、測定位置yにおける、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることによりシム20a、シム20b、シム20c、シム20d、シム20e、シム20fが有することになった磁気モーメントMが周囲に作る磁束密度B1Lを表している。
式(4)に示されているように、磁束密度B1L(y)は、シムが有することになった磁気モーメントM(x)の項と、シムの配置に関する情報R(x、y)との積を、シムの位置xに対して積分したものになる。図5の右図の例では、例えば、測定位置12における磁束密度B1Lは、シム20aの有する磁気モーメントに、直線22aの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものと、シム20bの有する磁気モーメントに、直線22bの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものと、シム20cの有する磁気モーメントに、直線22cの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものと、シム20dの有する磁気モーメントに、直線22dの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものと、シム20eの有する磁気モーメントに、直線22eの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものと、シム20fの有する磁気モーメントに、直線22fの長さ及び向きに基づいて算出された係数を乗じたものとの和になる。なお、領域21a、領域21b、領域21c、領域21d、領域21eは、シム部材である強磁性体が挿入されていない領域のため、これらの領域の磁気モーメントは略ゼロとなり、従って、これらの領域の磁束密度B1Lへの寄与は略ゼロとなる。
続いて、処理回路150は、測定値である低磁場における磁束密度B(y)と、計算値である低磁場においてシムの磁化により生じる磁束密度B1L(y)とを用いて、低磁場において、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れることにより直接的に発生したと考えられる磁束密度B0Lの値を算出する(ステップS150e)。換言すると、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1のデータと、シムの磁気的特性とに基づいて、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れ、シムがなかったと仮定した場合の磁束密度である第3の磁束密度B0Lを算出する。具体的には、処理回路は、式(3)を用いて、B0L(y)=B(y)−B1L(y)により第3の磁束密度B0Lの値を算出する。
ここで、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れ、シムがなかったと仮定した場合の磁束密度である第3の磁束密度B0L(y)について説明する。第3の磁束密度B0L(y)は、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れ、シムがなかったと仮定した場合の磁束密度である。一見すると、第3の磁束密度B0L(y)は、第1の電流値Iの値と、静磁場磁石101と測定位置との関係とから、例えばビオ・サバールの法則等により単純に計算可能のように見えるが、現実の静磁場磁石101は複雑な形状をしており、また例えば磁場により静磁場磁石101自身がわずかに変形してしまう場合があるので、第3の磁束密度B0L(y)の値は、例えば、ビオ・サバールの法則等の理論計算による理論値のみでは、十分な精度が得られない。
従って、処理回路150は、低磁場における測定値である第1の磁束密度B(y)から、シムによる効果をおおまかに見積もった磁束密度B1L(y)を減じることで、第3の磁束密度B0Lを算出する。すなわち、第3の磁束密度B0Lは、第1の電流値Iの値を基にビオ・サバールの法則等により単純に計算された磁束密度の値に、さまざまな現実の効果であって、シムによる非線形効果として取り除かれた効果以外の効果が取り込まれた値となる。これら様々の効果は、一般に微小量であるので、第1の電流値Iに対して線形な効果として取り扱うことができる。
続いて、処理回路150は、低磁場(第1の電流値I)においてシムがなかったと仮定した場合に、静磁場磁石101により直接生じる磁束密度B0Lに基づいて、定格磁場(第2の電流値I)においてシムがなかったと仮定した場合に、静磁場磁石101により直接生じる磁束密度B0Rを算出する(ステップS150f)。具体的には、処理回路150は、磁束密度B0Rを、例えばB0R=I/I×B0Lにより算出する。
一方で、処理回路150は、ステップS150g〜ステップS150jにおいて、定格磁場においてシムの磁化により生じる磁束密度B1Rを算出する。ここで、式(3)と同様に考えると、以下の式(5)が成り立つ。
Figure 2018038610
ここで、磁束密度B1Rは、静磁場磁石101に第2の電流値Iを持つ電流が流れた場合にシムに生じる磁気モーメントMにより生じる磁束密度である。また、磁束密度B0Rは、静磁場磁石101に第1の電流値Iより大きい第2の電流値Iを持つ電流が流れ、シムがなかったと仮定した場合の磁束密度である。
ステップS150aと同様に、処理回路150は、第1算出機能150gにより、第2の電流値Iに基づいて、定格磁場において静磁場磁石101によりシム内に作られる磁界HR;シムを算出する(ステップS150g)。具体的には、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第2の電流値Iに基づいて、アンペールの法則やビオ・サバールの法則等を用いてシム内に作られる磁界HR;シムを算出する。
続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、シムの磁気的特性に基づいて、ステップS150gにおいて算出されたシム内に作られる磁界HR;シムに基づいて、シム内における磁束密度BR;シムを算出する(ステップS150h)。
具体的には、ステップS150hにおいて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、図4に示されているように、ステップS150hにおいて算出された磁界HR;シムの値(H)と、記憶回路132から取得したB−H曲線30との交点である点32を算出し、算出した点32の縦軸の値Bに基づいて、シム内における磁束密度BR;シムを算出する。
続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、シム内に作られる磁界HR;シムと、シム内における磁束密度BR;シムとに基づいて、定格磁場におけるシムの磁気モーメントMを算出する(ステップS150i)。例えば、処理回路150は、第1算出機能150eにより、式(2)を用いて、M=B−μにより、定格磁場におけるシムの磁気モーメントMを算出する。
式(4)と同様に考えて、静磁場磁石101に第2の電流値Iを持つ電流が流れた場合にシムに生じる磁気モーメントMにより生じる磁束密度である磁束密度B1Rは、式(4)におけるシムの配置に関する情報R(x、y)を用いて、以下の式(6)で表される。
Figure 2018038610
処理回路150は、第1算出機能150eにより、式(6)により、定格磁場におけるシムの磁気モーメントMと、シムの配置に関する情報Rとに基づいて、定格磁場においてシムの磁化に生じる磁束密度である磁束密度B1Rを算出する(ステップS150j)。換言すると、処理回路150は、第1算出機能150eにより、ステップS150g〜ステップS150jの一連の処理により、シムの配置に関する情報Rと、シムの磁気的特性とに基づいて、静磁場磁石101に第2の電流値Iを持つ電流が流れた場合にシムに生じる磁気モーメントMによる磁束密度B1Rを算出する。
続いて、処理回路150は、式(5)により、ステップS150fで得られた定格磁場における静磁場磁石101により直接生じる磁束密度B0Rと、ステップS150jで得られた定格磁場においてシムの磁化により生じる磁束密度B1Rとを加算して、定格磁場における磁束密度である第2の磁束密度Bを算出する(ステップS150k)。換言すると、処理回路150は、第1算出機能150eにより、磁束密度B1Rに、磁束密度B0Rを加算することにより、磁束密度Bを算出する。
このように、ステップS150a〜ステップS150kの処理により、処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1のデータと、シムの磁気的特性とに基づいて、静磁場磁石101に第1の電流値Iが流れ、シムがなかったと仮定した場合の第3の磁束密度B0Lを算出する。続いて、処理回路150は、第1算出機能150eにより、算出された第3の磁束密度B0Lと、シムの磁気的特性とに基づいて、静磁場磁石101に第1の電流値Iより大きい第2の電流値Iを持つ電流が流れ、シムが第1の配置に配置されているときの第2の磁束密度Bを、例えばB―H曲線が非線形な場合であっても、算出することができる。
図2に戻り、処理回路150は、定格磁場におけるシムの配置(シムの配置に関する情報)を算出する(ステップS160)。換言すると、処理回路150は、第2算出機能150fにより、ステップS150で算出された第2の磁束密度Bの値に基づいて、シムが配置される第2の配置を算出する。
第2の配置の算出方法の具体例として、処理回路150は、第2算出機能150fにより、例えば、望ましい磁束密度の分布と、第2の磁束密度Bとの差を算出し、算出した磁束密度の差を、所定の基底、例えば球面調和関数で展開する。処理回路150は、展開した球面調和関数の種類と、展開係数の大きさに基づいて、どの場所にどれだけの大きさの磁気モーメントが存在すると望ましいかを算出し、算出結果に基づいて、シムが配置される第2の配置を算出する。
なお、「シムの配置に関する情報」とは、典型的には、シムの位置に関する情報を指すが、実施形態はこれに限られない。例えば、「シムの配置に関する情報」には、シムの枚数に関する情報が含まれる。また、例えば、「シムの配置に関する情報」には、シムの磁気モーメントの大きさや向きに関する情報が含まれる。
続いて、処理回路150は、ステップS160で算出した第2の配置を、記憶回路132に送信して記憶させる(ステップS170)。記憶されたシムの第2の配置は、必要に応じて処理回路150によって呼び出され、例えばシムの初期配置として利用される。
続いて、ユーザは、低磁場において、シムを配置する(ステップS180)。処理回路150は、ユーザがシムを配置し終わるまで待機する。ステップS180は、定格磁場に比較して低い磁場において行われるので、定格磁場に比較してシムの磁場吸引力が小さく、作業効率が上昇する。
続いて、磁気共鳴イメージング装置100は、例えば受信回路110や、図示しない測定装置により、シムが第2の配置に配置された状態で、低磁場における磁束密度の値を測定する(ステップS190)。換言すると、処理回路150は、収集機能150dにより、静磁場磁石101に低磁場に対応する電流値である第1の電流値Iを持つ電流が流れ、シムが第2の配置に配置されているときの磁束密度に関するデータを収集する。
続いて、処理回路150は、ステップS190で収集機能150dにより収集した、低磁場における、シムが第2の配置に配置された状態における磁束密度の値を基に、定格磁場における、シムが第2の配置に配置された状態における磁場均一性を計算する(ステップS200)。ここで、処理回路150は、計算する磁場均一性として、例えば、空間的な位置各点における磁場均一性E(y)を算出する。ここで、yは、例えば3次元位置の位置ベクトルをシンボリックに表したものであり、例えば、磁場中心を原点とした極座標(r、θ、φ)の組で特徴づけられる。磁場均一性E(y)は、シムの配置である第2の配置に、シムの磁気モーメントMを通じて依存する。
続いて、処理回路150は、ステップS200で計算された定格磁場における磁場均一性E(y)が、所定の基準を満たすか否かについて判定する(ステップS210)。この判定基準としては、例えば、磁場均一性E(y)のばらつきが、所定の値未満であるか否かである。ステップ200で計算された磁場均一性E(y)が所定の基準を満たさない場合(ステップS210 No)、すなわち、シムが第2の配置に配置された状態においては磁場均一性が不十分な場合は、配置が更新され、処理は再びステップS150に戻る。
ここで、配置が更新される、とは、例えば、ステップS150a〜ステップS150kにおいて、シムが第2の配置に配置されている状態が、前述したステップS150a〜ステップS150kの処理における、「シムが第1の配置に配置されている状態」として取り扱われることを意味する。また、例えば、ステップS150a〜ステップS150kにおいて、ステップS190で測定された磁束密度の値が、ステップS140で測定された第1の磁束密度Bの値として取り扱われることを意味する。また、ステップS150に基づいて、ステップS160において、定格磁場におけるシムの配置が新たに算出される。
このように、シムの配置が、ステップS210の条件を満たすまで、ステップS150〜ステップS200の処理が繰り返され、シムの配置が更新される。
ステップS200で計算された磁場均一性E(y)が、所定の基準を満たす場合(ステップS210 Yes)、処理はステップS220に進む。すなわち、静磁場電源は、定格磁場を印加する(ステップS220)。具体的には、静磁場電源は、静磁場磁石101に、定格磁場に対応する電流値である第2の電流値Iを持つ電流を流す。
続いて、磁気共鳴イメージング装置100は、例えば受信回路110や、図示しない測定装置により、シムが第2の配置に配置された状態で、定格磁場における磁束密度の値を測定する(ステップS230)。換言すると、処理回路150は、収集機能150dにより、静磁場磁石101に定格磁場に対応する電流値である第2の電流値Iを持つ電流が流れ、シムが第2の配置に配置されているときの磁束密度に関するデータを収集する。
続いて、処理回路150は、ステップS230で収集機能150dにより収集した、定格磁場における、シムが第2の配置に配置された状態における磁束密度の値を基に、定格磁場における、シムが第2の配置に配置された状態における磁場均一性E(y)を計算する(ステップS240)。ここで、yは、例えば3次元位置の位置ベクトルをシンボリックに表したものであり、例えば、磁場中心を原点とした極座標(r、θ、φ)の組で特徴づけられる。
続いて、処理回路150は、ステップS240で計算された定格磁場における磁場均一性E(y)が、所定の基準を満たすか否かについて判定する(ステップS250)。ステップS200で計算された磁場均一性E(y)が所定の基準を満たさない場合(ステップS250 No)、すなわち、理論予測された配置が実際にはうまくいっていない場合、処理はステップS130に戻り、処理は最初からやり直しになる。この際、静磁場電源は、磁場を定格磁場から低磁場まで減磁する。
一方、ステップS240で計算された磁場均一性E(y)が、所定の基準を満たす場合(ステップS250 Yes)、シミング完了と判断され、処理は終了する。
実施形態は、前述の実施形態に限られない。図1においては、画像処理装置130が磁気共鳴イメージング装置100の中に組み込まれている場合について説明したが、図6に示されるように、磁気共鳴イメージング装置100と独立した画像処理装置130Xが、図1に示された画像処理装置100と同様の処理を行っても良い。かかる場合、記憶回路132X、処理回路151、入力装置134X、ディスプレイ135Xは、図1の記憶回路132、処理回路150、入力装置134、ディスプレイ135と同様の処理を行い、また、収集機能151a、第1算出機能151b、第2算出機能151cは、収集機能150d、第1算出機能150e、第2算出機能150fと例えば同様の機能を有する。
また、例えば、ステップS110において、処理回路150は、低磁場におけるパッシブシムの磁場吸引力F(B)の値を計算する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、ステップS110において、処理回路150は、定格磁場におけるパッシブシムの磁場吸引力F(B)の値を計算してもよい。この場合、ステップS120において、処理回路150は、磁場吸引力F(B)が安全基準を満たしているか否かを判定し、判定した結果を基に、ステップS130以降の処理を実行するか否かを判断してもよい。
ステップS130において、シムが、例えば所定の配置である第1の配置に配置されている場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、シムが、ステップS130においては配置されていなくてもよい。かかる場合、静磁場電源は、ステップS130において、シムが配置されていない状態で、ステップS100で設定された値の低磁場(第1の磁束密度B)に対応する第1の電流値Iの電流を静磁場磁石101に印加する。処理回路150は、収集機能150dにより、ステップS140において、シムが配置されていない状態で、静磁場磁石101に第1の電流値Iを持つ電流が流れているときの第1の磁束密度Bに関する第1のデータを収集する。ステップS150において、処理回路150は、第1算出機能150eにより、静磁場磁石101に第1の電流値Iより大きい第2の電流値I(定格磁場に概ね対応する電流値)を持つ電流が流れている時の第2の磁束密度Bを算出する。ステップS160において、処理回路150は、第2算出機能150fにより、ステップS150で算出した第2の磁束密度Bの値に基づいて、静磁場磁石101により発生する静磁場の均一性を補正するシムの配置を算出する。
また、実施形態では、ステップS150aにおいて、処理回路150が、第1算出機能150eにより、第1の電流値Iに基づいて、低磁場において静磁場磁石101により直接生じる磁束密度である第3の磁束密度B0Lの値を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。例えば、磁気共鳴イメージング装置100は、受信回路110又は図示しない測定装置により、シムが配置されていない場合における磁束密度を測定することにより、第3の磁束密度B0Lの値を算出してもよい。かかる場合、処理回路150は、収集機能150dにより、静磁場磁石101に所定の電流Iを流し、シムが配置されていない場合の磁束密度Bに関するデータを更に収集する。処理回路150は、第1算出機能150eにより、第1のデータと、第2のデータと、シムの磁気的特性とに基づいて、第2の磁束密度Bの値を算出する。
ここで、所定の電流Iが、第1の電流値Iと同じ場合、第3の磁束密度B0Lは、磁束密度Bに等しくなる。この場合、処理回路150は、ステップS150eにおいて、第3の磁束密度B0Lを算出するのではなく、磁束密度Bの値を、第3の磁束密度B0Lの値とする。
また、所定の電流Iが、第1の電流値Iと異なる場合、処理回路150は、ステップS150eにおいて、第3の磁束密度B0Lの値を、B0L=B×I/Iにより算出する。
ステップS150a〜ステップS150fの処理と、ステップS150g〜ステップS150jの処理とは、並列的に行われることが可能な処理である。従って、例えば、処理回路150は、例えば、ステップS150g〜ステップS150jの処理の後、ステップS150a〜ステップS150fの処理を行ってもよい。
実施形態では、ヒステリシスが少ない場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。励磁、消磁の過程でヒステリシスが生じる場合においても、実施形態は同様に適用可能である。また、実施形態では、パッシブシミングの場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、アクティブシミングを行う場合においても、実施形態は同様に適用可能である。
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピュータが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータ又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピュータがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
また、記憶媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
なお、実施形態におけるコンピュータ又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
以上のように、少なくとも一つの実施形態によれば、シミングを効率的に行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
150 処理回路
150d 収集機能
150e 第1算出機能
150f 第2算出機能

Claims (9)

  1. 静磁場磁石に第1の電流値を持つ電流が流れているときの第1の磁束密度に関する第1のデータを収集する収集部と、
    前記第1のデータに基づいて、前記静磁場磁石に前記第1の電流値より大きい第2の電流値を持つ電流が流れているときの第2の磁束密度を算出する第1算出部と、
    前記第2の磁束密度の値に基づいて、前記静磁場磁石により発生する静磁場の均一性を補正するシムの配置を算出する第2算出部とを
    備える磁気共鳴イメージング装置。
  2. 静磁場磁石に第1の電流値を持つ電流が流れ、シムが第1の配置に配置されているときの第1の磁束密度に関する第1のデータを収集する収集部と、
    前記第1のデータに基づいて、前記静磁場磁石に前記第1の電流値より大きい第2の電流値を持つ電流が流れ、前記シムが前記第1の配置に配置されているときの第2の磁束密度の値を算出する第1算出部とを
    備える磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記第1算出部は、前記第1のデータと、前記シムの磁気的特性とに基づいて、前記第2の磁束密度の値を算出する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記第1算出部が算出した前記第2の磁束密度の値に基づいて、前記シムが配置される第2の配置を算出する第2算出部を更に備える、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 前記磁気的特性は、前記シムに印加される磁界の大きさと前記シムに生じる磁束密度の大きさとの対応関係である、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  6. 前記磁気的特性は、磁界または磁束密度のうち少なくとも一方の関数として表された前記シムの透磁率である、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  7. 前記第1算出部は、前記第1のデータと、前記シムの磁気的特性とに基づいて、前記静磁場磁石に前記第1の電流値が流れ、前記シムがなかったと仮定した場合の磁束密度である第3の磁束密度を算出し、算出された前記第3の磁束密度と、前記シムの磁気的特性とに基づいて、前記第2の磁束密度の値を算出する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  8. 前記収集部は、前記静磁場磁石に所定の電流値を流し、前記シムが配置されていない場合の磁束密度に関する第2のデータを収集し、
    前記第1算出部は、前記第1のデータと、前記第2のデータと、前記シムの磁気的特性とに基づいて、前記第2の磁束密度の値を算出する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  9. 前記第1算出部は、前記第1のデータに基づいて、前記磁気的特性を補正し、補正した磁気的特性に基づいて、前記第2の磁束密度の値を算出する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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