本発明の硬化性組成物は、エポキシ樹脂成分(A)と、アミン化合物(B)とを含有し、前記エポキシ樹脂成分(A)が、下記構造式(1)
(式中R
1は炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基、又はグリシジルオキシアリール基を有する炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基である。式中R
2は炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは0又は1〜4の整数である。)
で表されるエポキシ化合物(A1)及び脂肪族エポキシ樹脂(A2)を必須の成分として含有することを特徴とする。
前記エポキシ化合物(A1)は、前記構造式(1)で表される化合物であれば何れの化合物でも良く、一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。前記構造式(1)中のR2は炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、の何れかであり、nは0又は1〜4の整数である。前記炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。中でも、硬化物における機械強度と低吸水性とのバランスに優れることから、前記構造式(1)中のnが0であるか、又はR2が炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであることが好ましく、nが0であることがより好ましい。
前記構造式(1)中のR1は炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基、又はグリシジルオキシアリール基を有する炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基である。以後の説明においては、前記R1が炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基であるものをエポキシ化合物(A1−1)、前記R1がグリシジルオキシアリール基を有する炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基であるものをエポキシ化合物(A1−2)とする。
前記エポキシ化合物(A1−1)について、前記炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよいし、分岐構造を有するものであってもよい。また、飽和の脂肪族炭化水素基であってもよいし、一つ乃至複数の不飽和結合を有していてもよい。中でも、硬化物における低吸水性が一層優れることから、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。不飽和結合を有する場合、その数は1〜3の範囲であることが好ましい。また、その炭素原子数は、硬化物における機械強度と低吸水性とのバランスに優れることから、炭素原子数12〜20の範囲であることがより好ましい。
前記エポキシ化合物(A1−2)について、前記グリシジルオキシアリール基を有する炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基とは、炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基中の水素原子の一つ乃至複数がグリシジルオキシアリール基で置換された構造部位のことである。中でも、硬化性組成物の粘度と硬化物における耐熱性や機械強度、低吸水性とのバランスに優れることから、グリシジルオキシアリール基を一つ有するものが好ましい。
前記エポキシ化合物(A1−2)における炭素原子数10〜30の脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよいし、分岐構造を有するものであってもよい。また、飽和の脂肪族炭化水素基であってもよいし、一つ乃至複数の不飽和結合を有していてもよい。中でも、硬化物における低吸水性が一層優れることから、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。不飽和結合を有する場合、その数は1〜3の範囲であることが好ましい。また、その炭素原子数は、硬化物における機械強度と低吸水性とのバランスに優れることから、炭素原子数12〜20の範囲であることがより好ましい。
前記グリシジルオキシアリール基は、例えば、下記構造式(2)
(式中Arはフェニレン基、ナフチレン基、またはこれらの芳香核上に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基等の置換基を一つ乃至複数有する構造部位である。)
で表される構造部位等が挙げられる。
前記構造式(2)における脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
前記構造式(2)中のArは、硬化性組成物の粘度と硬化物における耐熱性や機械強度、低吸水性とのバランスに優れることから、フェニレン基又はその芳香核上に炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子を一つ乃至複数有する構造部位であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。前記エポキシ化合物(A1−2)の好ましい形態としては、例えば、下記構造式(3)
(式中R
2は炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、nは0又は1〜4の整数である。R
3は直接結合又は炭素原子数1〜28の脂肪族炭化水素基、R
4は炭素原子数1〜28の脂肪族炭化水素基であり、R
3とR
4との炭素原子数の合計は9〜29である。)
で表されるものが挙げられる。
前記脂肪族エポキシ樹脂(A2)は、例えば、各種の脂肪族ポリオール化合物のグリシジルエーテル化物が挙げられる。前記脂肪族エポキシ樹脂(A2)は一種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記脂肪族ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチルプロパンジオール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。中でも、硬化物における機械物性に優れる硬化性組成物となることから、前記脂肪族ジオール化合物のグリシジルエーテル化物が好ましい。
前記エポキシ樹脂成分(A)は、前記エポキシ化合物(A1)及び脂肪族エポキシ樹脂(A2)以外のその他のエポキシ樹脂成分(A3)を含有していても良い。その他のエポキシ樹脂成分(A3)は、例えば、ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルオキシナフタレン、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応物型エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物−アルコキシ基含有芳香族化合物共縮合型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、これら以外のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記ビフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビフェノールやテトラメチルビフェノール等のビフェノール化合物をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。中でも、エポキシ当量が150〜200g/eqの範囲であるものが好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。中でも、エポキシ当量が158〜200g/eqの範囲であるものが好ましい。
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノール、クレゾール、ナフトール、ビスフェノール、ビフェノール等、各種フェノール化合物の一種乃至複数種からなるノボラック樹脂をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
前記トリフェノールメタン型エポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(4)で表される構造部位を繰り返し構造単位として有するものが挙げられる。
[式中R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は構造式(4)で表される構造部位と*印が付されたメチン基を介して連結する結合点の何れかである。nは1以上の整数である。]
前記フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルオキシベンゼン又はグリシジルオキシナフタレン構造が、下記構造式(5−1)〜(5−3)の何れかで表される構造部位にて結節された分子構造を有するものが挙げられる。
(式中Xは炭素原子数2〜6のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基の何れかである。]
前記ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(6−1)〜(6−3)の何れかで表されるエポキシ化合物等が挙げられる。
前記その他のエポキシ樹脂成分(A3)の中でも、硬化性組成物の粘度と硬化物における耐熱性や機械強度、低吸水性とのバランスに優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂の何れかが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記エポキシ樹脂成分(A)中の各成分の含有量は特に限定されず、所望の性能や用途等によって適宜調整することができる。より好ましい組成配分として、前記エポキシ化合物(A1)の割合は、前記エポキシ樹脂成分(A)の0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。また、前記脂肪族エポキシ樹脂(A2)の割合は、前記エポキシ樹脂成分(A)の0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。更に、ビスフェノール型エポキシ樹脂の割合が、前記エポキシ樹脂成分(A)の20〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。
前記アミン化合物(B)は、前記エポキシ樹脂成分(A)の硬化剤或いは硬化促進剤として用いるものである。アミン化合物(B)は一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。アミン化合物(B)の具体例としては、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト等の脂肪族アミン化合物;
N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、p−メンタン−1,8−ジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等のシクロ環含有アミン化合物;
ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等、分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物;
ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、キヌクリジン(1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン)、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピロール、ピラゾール、ピリジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)−1,3,5−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン等の複素環式アミン化合物;
フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルトルエンジアミン、キシリレンジアミン、α−メチルベンジルメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香環含有アミン化合物;
イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、3−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、3−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、5−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,3−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩等のイミダゾール化合物;
2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂成分(A)とアミン化合物(B)との配合割合は特に限定されるものではなく、所望の硬化物性能や、用途に応じて適宜調整することができる。配合の一例として、例えば、前記アミン化合物(B)として3級アミン、前記イミダゾール化合物或いはイミダゾリン化合物以外のアミン化合物を用いる場合、前記エポキシ樹脂成分(A)中のエポキシ基1モルに対し、アミン化合物(B)中の活性水素の合計モル数が0.5〜1.05モルの範囲であることが好ましい。
また、前記アミン化合物(B)として3級アミン、前記イミダゾール化合物或いはイミダゾリン化合物を用いる場合には、硬化性組成物中の前記アミン化合物(B)の割合が、0.1〜10質量%の割合で含まれることが好ましい。
本発明では、前記アミン化合物(B)と合せて、その他の硬化剤或いは硬化促進剤(B’)を用いても良い。その他の硬化剤或いは硬化促進剤(B’)は、エポキシ樹脂の硬化剤或いは硬化促進剤として一般的に用いられている様々な化合物の何れを用いても良い。具体的には、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドエチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等の酸無水物;
ジシアンジアミド、或いは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と前記アミン化合物(B)とを反応させて得られるアミド化合物;
ポリヒドロキシベンゼン、ポリヒドロキシナフタレン、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、フェノール、クレゾール、ナフトール、ビスフェノール、ビフェノール等、各種フェノール化合物の一種乃至複数種からなるノボラック型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、テトラフェノールエタン型フェノール樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型フェノール樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型フェノール樹脂樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応物型フェノール樹脂、フェノール性水酸基含有化合物−アルコキシ基含有芳香族化合物共縮合型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;
p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチル尿素、N−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素等の尿素化合物;
リン系化合物;有機酸金属塩;ルイス酸;アミン錯塩等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂成分(A)、アミン化合物(B)、及びその他の硬化剤或いは硬化促進剤(B’)の配合割合は特に限定されるものではなく、所望の硬化物性能や、用途に応じて適宜調整することができる。
本発明の硬化性組成物には、前記エポキシ樹脂成分(A)、アミン化合物(B)、及びその他の硬化剤或いは硬化促進剤(B’)以外のその他の樹脂成分(C)を含有することもできる。その他の樹脂成分(C)としては、例えば、酸変性ポリブタジエン、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などを挙げることができる。
前記酸変性ポリブタジエンは、エポキシ樹脂成分との反応性を有する成分であり、酸変性ポリブタジエンを併用することにより、得られる硬化物において優れた機械強度、耐熱性、および耐湿熱性を発現させることができる。
前記酸変性ポリブタジエンとしては、ブタジエン骨格に、1,3−ブタジエンや、2−メチル−1,3−ブタジエン由来の骨格を有するものが挙げられる。1,3−ブタジエン由来のものとしては、1,2−ビニル型、1,4−トランス型、1,4−シス型のいずれかの構造を有するものやこれらの構造を2種以上有するものが挙げられる。2−メチル−1,3−ブタジエン由来のものとしては、1,2−ビニル型、3,4−ビニル型、1,4−シス型、1,4−トランス型のいずれかの構造を有するものや、これらの構造を2種以上有するものが挙げられる。
前記酸変性ポリブタジエンの酸変性成分としては、特に限定されないが、不飽和カルボン酸を挙げることができる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、反応性の点から無水イタコン酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
前記酸変性ポリブタジエン中の不飽和カルボン酸の含有量は、前記エポキシ樹脂成分(A)との反応性の観点から、酸変性ポリブタジエンが1,3−ブタジエン由来のものから構成される場合には、その酸価は5mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましく、20mgKOH/g〜300mgKOH/gであることがより好ましく、50mgKOH/g〜200mgKOH/gであることがさらに好ましい。
また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリブタジエン中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
酸変性ポリブタジエンの平均モル質量は、酸変性ポリブタジエンが1,3−ブタジエン由来のものから構成される場合、1,000〜8,000であることが好ましく、2,000〜7,000であることがより好ましい。酸変性ポリブタジエンが、2−メチル−1,3−ブタジエン由来のものから構成される場合は、1,000〜60,000であることが好ましく、15,000〜40,000であることがより好ましい。平均モル質量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
酸変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものをそのまま用いてもよい。市販のものとしては、例えば、エボニック・デグサ社製無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(polyvest MA75、Polyvest EP MA120等)、クラレ社製無水マレイン酸変性ポリイソプレン(LIR−403、LIR−410)などを使用することができる。
硬化性組成物中の前記酸変性ポリブタジエンの含有量は、得られる硬化物の伸び、耐熱性、耐湿熱性が良好となる点から、硬化性組成物の樹脂成分の合計質量を100質量部としたとき、1質量部〜40質量部の割合で含まれていることが好ましく、3質量部〜30質量部の割合で含まれていることがさらに好ましい。なお、前記硬化性組成物の樹脂成分の合計とは、前記エポキシ樹脂成分(A)、アミン化合物(B)、その他の硬化剤或いは硬化促進剤(B’)、及びその他の樹脂成分(C)の合計のことである。
前記ポリエーテルスルホン樹脂は、熱可塑性樹脂であり、硬化性組成物の硬化反応において、架橋ネットワークには含まれないが、高Tgを有する優れた改質剤効果により、得られる硬化物において、さらに優れた機械強度と耐熱性を発現させることができる。
硬化性組成物中の前記ポリエーテルスルホン樹脂の含有量は、得られる硬化物の機械強度と、耐熱性が良好となる点から、硬化性組成物の樹脂成分の合計質量を100質量部としたとき、1質量部〜30質量部の割合で含まれていることが好ましく、3質量部〜20質量部の割合で含まれていることがさらに好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂は、例えば、2価又は2官能型のフェノールとハロゲン化カルボニルとの重縮合物、或いは、2価又は2官能型のフェノールと炭酸ジエステルとをエステル交換法により重合させたものが挙げられる。
前記2価又は2官能型のフェノールは、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これら2価のフェノールの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料としたものが特に好ましい。
他方、2価又は2官能型のフェノールと反応させるハロゲン化カルボニル又は炭酸ジエステルは、例えば、ホスゲン;二価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物などが挙げられる。
また、前記ポリカーボネート樹脂は、そのポリマー鎖の分子構造が直鎖構造であるもののほか、これに分岐構造を有していてもよい。斯かる分岐構造は、原料成分として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を用いることにより導入することができる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
この中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含むポリフェニレンエーテルであってもよい。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、その樹脂構造にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、シリル基、水酸基、無水ジカルボキル基等の反応性官能基を、グラフト反応や、共重合等何らかの方法で導入した変性ポリフェニレンエーテル樹脂も本発明の目的を損なわない範囲で使用できる。
本発明の硬化性組成物は、前記ポリカーボネート樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂を含有することで、得られる硬化物においてより優れた機械強度を発現できるようになる。
本発明の硬化性組成物は、難燃剤/難燃助剤、充填材、添加剤、有機溶剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。硬化性組成物を製造する際の配合順序は、本発明の効果が達成できる方法であれば特に限定されない。すなわち、すべての成分を予め混合して用いてもよいし、適宜順番に混合して用いてもよい。また、配合方法は、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造することができる。以下で、本発明の硬化性組成物に含有可能な各種部材について説明する。
・難燃剤/難燃助剤
本発明の硬化性組成物は、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を含有していてもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物が挙げられる。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1質量部〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.05質量部〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5質量部〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.005質量部〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
・充填材
本発明の硬化性組成物は、充填材を含有していてもよい。本発明の硬化性組成物が充填材を含有すると、得られる硬化物において優れた機械特性を発現させることができるようになる。
充填材としては、例えば、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、硼酸マグネシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミや、ケナフ繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、石英繊維等の繊維状補強剤や、非繊維状補強剤等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。また、これらは、有機物や無機物等で被覆されていてもよい。
また、充填材としてガラス繊維を用いる場合、長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して用いることが出来る。ガラス繊維は使用する樹脂用に表面処理した物を用いるのが好ましい。充填材は配合されることによって、燃焼時に生成する不燃層(又は炭化層)の強度を一層向上させることができる。燃焼時に一度生成した不燃層(又は炭化層)が破損しにくくなり、安定した断熱能力を発揮できるようになり、より大きな難燃効果が得られる。さらに、材料に高い剛性も付与することができる。
・添加剤
本発明の硬化性組成物は、添加剤を含有していてもよい。本発明の硬化性組成物が添加剤を含有すると、得られる硬化物において剛性や寸法安定性等、他の特性が向上する。添加剤としては、例えば可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、応力緩和剤、離型剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防カビ剤、防汚剤、導電性高分子等を添加することも可能である。
・有機溶剤
本発明の硬化性組成物は、フィラメントワインディング法にて繊維強化樹脂成形品を製造する場合などには、有機溶剤を含有していてもよい。ここで使用し得る有機溶剤としては、メチルエチルケトンアセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
本発明の硬化性組成物は、低粘度でかつ硬化性に優れ、得られる硬化物において高い機械強度と低吸水性とを有することから、塗料や電気・電子材料、接着剤、成型品等、様々な用途に用いることができる。本発明の硬化性組成物はそれ自体を硬化させて用いる用途の他、繊維強化複合材料や繊維強化樹脂成形品等にも好適に用いることができる。以下にこれらについて説明する。
・硬化性組成物の硬化物
本発明の硬化性組成物から硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよく、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよい。例えば、硬化性組成物を、室温〜250℃程度の温度範囲で加熱する方法が挙げられる。成形方法なども硬化性組成物の一般的な方法が用いること可能であり、特に本発明の硬化性組成物に特有の条件は不要である。
・繊維強化複合材料
本発明の繊維強化複合材料とは、硬化性組成物を強化繊維に含浸させた後の硬化前の状態の材料のことである。ここで、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化複合材料において優れた成形性を有することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械的強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。
本発明の硬化性組成物から繊維強化複合材料を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、硬化性組成物を構成する各成分を均一に混合してワニスを製造し、次いで、前記で得られたワニスに強化繊維を一方向に引き揃えた一方向強化繊維を浸漬させる方法(プルトルージョン法やフィラメントワインディング法での硬化前の状態)や、強化繊維の織物を重ねて凹型にセットし、その後、凸型で密閉してから樹脂を注入し圧力含浸させる方法(RTM法での硬化前の状態)等が挙げられる。
本発明の繊維強化複合材料は、前記硬化性組成物が必ずしも繊維束の内部まで含浸されている必要はなく、繊維の表面付近に該硬化性組成物が局在化している態様であっても良い。
さらに、本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料の全体積に対する強化繊維の体積含有率が40%〜85%であることが好ましく、強度の点から50%〜70%の範囲であることがさらに好ましい。体積含有率が40%未満の場合、前記硬化性組成物の含有量が多すぎて得られる硬化物の難燃性が不足したり、比弾性率と比強度に優れる繊維強化複合材料に要求される諸特性を満たすことができなかったりする場合がある。また、体積含有率が85%を超えると、強化繊維と樹脂組成物の接着性が低下してしまう場合がある。
・繊維強化樹脂成形品
本発明の繊維強化樹脂成形品とは、強化繊維と硬化性組成物の硬化物とを有する成形品であり、繊維強化複合材料を熱硬化させて得られるものである。本発明の繊維強化樹脂成形品として、具体的には、繊維強化成形品における強化繊維の体積含有率が40%〜85%の範囲であることが好ましく、強度の観点から50%〜70%の範囲であることが特に好ましい。そのような繊維強化樹脂成形品としては、例えば、フロントサブフレーム、リアサブフレーム、フロントピラー、センターピラー、サイドメンバー、クロスメンバー、サイドシル、ルーフレール、プロペラシャフトなどの自動車部品、電線ケーブルのコア部材、海底油田用のパイプ材、印刷機用ロール・パイプ材、ロボットフォーク材、航空機の一次構造材、二次構造材などを挙げることができる。
本発明の硬化性組成物から繊維強化成形品を得る方法としては、特に限定されないが、引き抜き成形法(プルトルージョン法)、フィラメントワインディング法、RTM法などを用いることが好ましい。引き抜き成形法(プルトルージョン法)とは、繊維強化複合材料を金型内へ導入して、加熱硬化したのち、引き抜き装置で引き抜くことにより繊維強化樹脂成形品を成形する方法であり、フィラメントワインディング法とは、繊維強化複合材料(一方向繊維を含む)を、アルミライナーやプラスチックライナー等に回転させながら巻きつけたのち、加熱硬化させて繊維強化樹脂成形品を成形する方法であり、RTM法とは、凹型と凸型の2種類の金型を使用する方法であって、前記金型内で繊維強化複合材料を加熱硬化させて繊維強化樹脂成形品を成形する方法である。なお、大型製品や複雑な形状の繊維強化樹脂成形品を成形する場合には、RTM法を用いることが好ましい。
繊維強化樹脂成形品の成形条件としては、繊維強化複合材料を50℃〜250℃の温度範囲で熱硬化させて成形することが好ましく、70℃〜220℃の温度範囲で成形することがより好ましい。かかる成形温度が低すぎると、十分な速硬化性が得られない場合があり、逆に高すぎると、熱歪みによる反りが発生しやすくなったりする場合があるためである。他の成形条件としては、繊維強化複合材料を50℃〜100℃で予備硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120℃〜200℃の温度条件で処理するなど、2段階で硬化させる方法などを挙げることができる。
本発明の硬化性組成物から繊維強化成形品を得る他の方法としては、金型に繊維骨材を敷き、前記ワニスや繊維骨材を多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法などが挙げられる。
次に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
製造例1 ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(A3−4)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン240質量部、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85質量部、イソプロピルアルコール376質量部、48%水酸化カリウム水溶液88質量部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。次いで、75℃で2時間攪拌して反応させた。反応終了後、第1リン酸ソーダ108質量部を添加して中和し、イソプロピルアルコールを減圧条件下で留去した。メチルイソブチルケトン480質量部を加え、有機層を水200質量部で3回水洗し、メチルイソブチルケトンを加熱減圧条件下で留去して中間体245質量部を得た。
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら先で得た中間体84質量部、エピクロルヒドリン463質量部、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部を3時間かけて添加し、50℃で更に1時間反応させた。反応終了後、150℃に加熱し、減圧条件下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。メチルイソブチルケトン300質量部及びn−ブタノール50質量部を加え溶解し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して、80℃で2時間反応させた。次いで、有機層を水100質量部で3回洗浄し、洗浄液のpHが中性となったことを確認した。共沸させて系内を脱水し、精密濾過を経た後に、有機溶媒を減圧条件下で留去して、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(A3−4)126質量部を得た。得られたナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(A3−4)のエポキシ当量は173g/eqであった。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(A3−4)は、下記構造式(i)で表される化合物を39.6質量%、下記構造式(ii)で表される化合物を10.5質量%、その他の成分を49.9質量%含有するものであった。
実施例1〜5及び比較例1、2
下記表1に示す配合に従って各成分を配合し、均一に撹拌混合して、硬化性組成物を得た。該硬化性組成物について、下記の要領で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
実施例及び比較例で用いた各成分の詳細は下記の通りである。
・A1−1:下記構造式(1−1)で表されるエポキシ化合物(Cardlite社製「NC−513」)
・A1−2:下記構造式(1−2)で表されるエポキシ化合物(Cardlite社製「NC−514」)
・A2−1:1,4−ブタンジオール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX−214」)
・A3−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 840S」エポキシ当量184g/eq)
・A3−2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830S」エポキシ当量168g/eq)
・A3−3:トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON EXA−7250」エポキシ当量164g/eq)
・A3−4:製造例1で得たナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(A3−4)
・A3−5:4,4’−メチレンビス[N,N−ビス(オキシラン−2−イルメチル)アニリン](SYNASIA社製「S−720」エポキシ当量118g/eq)
・B−1:ポリオキシプロピレンジアミン(Huntsman社製「ジェファーミン D−230」)
・B−2:ジエチルトルエンジアミン(Lonza社製「DETDA 80」)
・B−3:トリエチレンテトラミン(東ソー社製「TETA」)
・B−4:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(Air Products社製「アンカミン K−54」)
・B−5:2−エチル−4−メチルイミダゾール
<粘度の測定>
粘度計(TOKI SANGYO CO.LTD.VISCOMETER TV−22)を用い、先で得た硬化性組成物の粘度を25℃、50rmp条件下で測定した。
<耐熱性の評価>
先で得た硬化性組成物を、幅90mm、長さ110mm、高さ4mmの型枠内に流し込み、下記1〜4の何れかの条件で硬化させた。得られた硬化物をダイヤモンドカッターで幅5mm、長さ50mmに切り出し、これを試験片とした。次に、粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DMS6100」)を用いて試験片の両持ち曲げによる動的粘弾性を測定し、tanδが最大となる値の温度をガラス転移温度(Tg)として、以下の通り評価した。
・A:ガラス転移温度(Tg)が120℃以上
・B:ガラス転移温度(Tg)が70℃以上120℃未満
なお、動的粘弾性測定の測定条件は、温度条件 室温〜260℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hz、歪振幅10μmとした。
・硬化条件1:70℃で5時間硬化
・硬化条件2:70℃で3時間硬化後、130℃で3時間硬化
・硬化条件3:150℃で2時間硬化
・硬化条件4:100℃で2時間硬化後、165℃で3時間硬化
<曲げ強度及び曲げ弾性率の測定>
先で得た硬化性組成物を幅90mm、長さ110mm、高さ4mmの型枠内に流し込み、前記1〜4の何れかの条件で硬化させた。JIS K6911に準拠して、硬化物の曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
<吸水率の測定>
先で得た硬化性組成物を幅90mm、長さ110mm、高さ4mmの型枠内に流し込み、前記1〜4の何れかの条件で硬化させた。得られた硬化物の質量を測定した後、40℃に加温した蒸留水に浸漬し、90日間放置して吸水させた。吸水処理後の硬化物の質量を測定し、下記計算式にて硬化物の吸水率を算出した。
(吸水率)=[{(吸水処理後の硬化物の質量)−(吸水処理前の硬化物の質量)}/(吸水処理前の硬化物の質量)]×100
<最高温度到達時間の測定>
予め均一に撹拌混合して40℃に加温したエポキシ樹脂成分中に、アミン化合物を配合し、配合物の温度を測定しながら撹拌混合した。アミン化合物を配合した時点から、配合物の温度が最高温度に達するまでの時間を測定した。当該時間が長いほど、硬化時の発熱が制御し易く、ハンドリング性の高い硬化性組成物である。