JP6778449B2 - 線虫変異体を含むがんの診断薬および該変異体を用いた走性行動評価方法 - Google Patents
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Description
(1)対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物。
(2)対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、上記(1)に記載の組成物。
(3)野生株が誘引行動を示した尿を対象とする、上記(1)に記載の組成物。
(4)偽陽性の対象を検出することに用いるための、上記(3)に記載の組成物。
(5)野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、上記(2)に記載の組成物。
(6)対象ががんに罹患しているか否かを決定する方法であって、
対象の尿に対するAB1株の走性行動を観察することと、
AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると決定することと
を含む、方法。
(7)対象ががんに罹患しているか否かを決定する方法であって、
対象の尿に対する線虫の野生株とAB1株の走性行動を観察することと、
野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはその可能性がある、と決定することと
を含む、方法。
(8)野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象は、がんに罹患していない、またはその可能性があると決定することをさらに含む、上記(7)に記載の方法。
(9)線虫の野生株とAB1株との混合物を培養することをさらに含む、上記(8)に記載の方法。
(10)野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、上記(9)に記載の方法。
線虫の走性行動評価系を用いた尿の分析方法は、対象から得られた被検試料(例えば、尿)と線虫とを一定距離離して配置し、線虫が被検試料に対して誘引行動を示すか、忌避行動を示すかを観察することによって行うことができる。そして、野生株が誘引行動を示した場合には、対象は、がんに罹患している、またはその可能性があると評価することができる。このようにして、WO2015/088039では、242検体の中規模試験により、がん患者を100%の感度および95%の特異度で検出することができた。
シャーレ(例えば、固形培地を導入したシャーレ)に対象から得られた被検試料(例えば、尿)を配置することと、
被検試料が配置されたシャーレに、被検試料と一定距離離れた位置に線虫を配置することと、
配置後、線虫に行動させることと、
線虫が被検試料に対して走性行動を示した場合には、対象ががんに罹患している、またはがんに罹患している可能性があると評価することと、
を含みうる。
線虫のAB1株は、野生株とは異なり、がん患者および健常者に対して忌避行動を示す。しかし、AB1株は一部の健常者に対しては誘引行動を示す。誘引行動を示す尿は、医師らにより健常者であると診断された対象の尿であった。従って、AB1株で陽性を示した対象は、健常者である可能性が高い。
従って、本発明では、AB1株を対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるために用いることができる。この側面では、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物を提供するものである。言い換えると、本発明では、AB1株を含む組成物であって、がん診断において健常者を検出することに用いるための組成物が提供される。
従って、本発明では、野生株で陽性である対象に対して、偽陽性であるか否かを判別することに、AB1株を用いることができる。この側面では、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、組成物を提供するものである。本発明はまた、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株であり、対象が、線虫の野生株を用いた当該患者の尿に対して誘引行動を誘発した対象である、組成物を提供するものである。
本発明では、AB1株を用いて尿に対する走性行動を、例えば、以下のように評価することができる。
まず、対象の尿(すなわち、対象から得られた尿)に対するAB1株の走性行動を観察する。AB1株が誘引行動を示した尿は、健常者から得られた尿である、またはその可能性がある。従って、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
本発明では、AB1株は、他の線虫野生株を用いた走性行動評価試験において偽陽性を示した対象において陽性を示し、その他の対象においては陰性を示す。従って、AB1株は、他の線虫野生株を用いた走性行動評価で陽性であった対象から偽陽性である、またはその可能性がある対象を検出することにも、用いることができる。評価方法は、例えば、以下評価方法(A)または(B)の通り実施できる。
まず、対象の尿(すなわち、対象から得られた尿)に対する野生株の走性行動を観察する。野生株が誘引行動を示した尿(すなわち、「陽性」の尿)は、がん患者の尿である可能性が高い。ここで、上記陽性である尿に対するAB1株の走性行動を観察する。AB1株が誘引行動を示した尿は、健常者から得られた尿である、またはその可能性がある。従って、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、偽陽性である、またはその可能性があると決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
上記評価方法(A)では、野生型線虫(野生株)とAB1株とを別々に用いて試験した。評価方法(B)では、野生株とAB1株とを混合して用いる。
野生株とAB1株とは、別々に培養することができる。別々に培養する場合には、行動評価時に、野生株とAB1株とを混合して用いることができる。野生株とAB1株とは、特に限定されないが2:1〜1:2の数量比で、好ましくは略1:1の数量比で混合して用いることができる。また、野生株とAB1株とは、特に限定されないが同一条件下で培養することができる。
野生株とAB1株とは、一緒に混ぜて培養することもできる。一緒に培養する場合には、培養時に野生株とAB1株とを混合して、一緒に培養することができる。野生株とAB1株とは、特に限定されないが2:1〜1:2の数量比で、好ましくは略1:1の数量比で混合して培養することができる。AB1株は、野生株と増殖速度がほぼ同じであるので、培養開始時に1:1で混合すると、培養後に得られる線虫数量比も1:1程度となり得る。
AB1株は、目印として標識しておくことができる。標識としては、特に限定されないが例えば、可視化できる標識、例えば、蛍光標識、より好ましくは蛍光タンパク質による標識を用いることができる。蛍光タンパク質は、遺伝子改変技術によって線虫に安定発現させることができる。なお、本発明では、蛍光タンパク質を発現するAB1株が提供されるという側面も有している。あるいは、野生株を目印として標識してもよい。標識としては、特に限定されないが例えば、可視化できる標識、例えば、蛍光標識、より好ましくは蛍光タンパク質による標識を用いることができる。蛍光タンパク質は、遺伝子改変技術によって線虫に安定発現させることができる。標識は、野生株若しくはAB1のいずれか一方または両方に導入することができる。野生株およびAB1株の両方を標識する場合は、野生株およびAB1株が区別可能に標識され得る。
その後、対象の尿と上記で得られた線虫混合物とを用いて走性行動を観察することができる。その結果、野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはがんに罹患していない可能性がある、と決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、がんに罹患してない、またはがんに罹患していない可能性があると示される。
上記評価方法(B)は、野生株が誘引行動を誘発し、AB1株が忌避行動を誘発した尿が由来する対象は、がんに罹患している、またはその可能性が高いと決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことをさらに含んでいてもよい。上記評価方法(B)はまた、野生株もAB1株も忌避行動を誘発した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性が高いと決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことをさらに含んでいてもよい。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
本実施例では、様々な土壌から単離された異なる複数株を用いて嗅覚に基づく走性行動を評価した。
(走性インデックス)={N(2)−N(4)}/{N(2)+N(4)}
{式中、N(2)は、図1の領域2に分布した線虫の数であり、N(4)は、図1の領域4に分布した線虫の数である。}
この結果からはまた、通常の野生株では誘引行動を示し、AB1株が忌避行動を示すものは、陽性であることが示され、通常の野生株でもAB1株でも忌避行動を示すものは偽陽性であることが示されることが理解できる。
Claims (9)
- 対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物。
- 対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、請求項1に記載の組成物。
- 野生株が誘引行動を示した尿を対象とする、請求項1に記載の組成物。
- 偽陽性の対象を検出することに用いるための、請求項3に記載の組成物。
- 野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、請求項2に記載の組成物。
- 対象ががんに罹患しているか否かを予測するための方法であって、
対象の尿に対するAB1株の走性行動を観察することを含み、
尿に対するAB1株による誘引行動は、当該尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があることを示す、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。 - 対象ががんに罹患しているか否かを予測するための方法であって、
対象の尿に対する線虫の野生株とAB1株の走性行動を観察することを含み、
尿に対する野生株およびAB1株の両方による誘引行動は、当該尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはその可能性があることを示す、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。 - 線虫の野生株とAB1株との混合物を培養することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
- 野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、請求項8に記載の方法。
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