JP6778449B2 - 線虫変異体を含むがんの診断薬および該変異体を用いた走性行動評価方法 - Google Patents

線虫変異体を含むがんの診断薬および該変異体を用いた走性行動評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、線虫変異体を含むがんの診断薬および該変異体を用いた走性行動評価方法を提供する。
線虫は、がん患者の尿に対して誘引行動を示し、健常者の尿に対して忌避行動を示す。従って、線虫の走性行動に基づいて尿が由来する対象が、がん患者であるのか、健常者であるのかを判別することができる(特許文献1)。より具体的には、特許文献1には、242検体の中規模試験により、がん患者を100%の感度および95%の特異度で検出することができたことが記載されている。
WO2015/088039
本発明者らは、上記走性行動に基づく評価において偽陽性となる健常者を抽出するための技術開発を行っていた。本発明者らは、米国ミネソタ大学の生物科学部のCaenorhabditis Genetics Center (CGC)にAB1株として登録された線虫が、線虫の変異体であり、通常はがん患者および健常者において忌避行動を示すが、一部の健常者において誘引行動を示すことを見出した。また、AB1株は、野生株を用いた検査で偽陽性となる健常者の尿に対しては、誘引行動を示した。本発明は、これらの知見に基づく発明である。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物。
(2)対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、上記(1)に記載の組成物。
(3)野生株が誘引行動を示した尿を対象とする、上記(1)に記載の組成物。
(4)偽陽性の対象を検出することに用いるための、上記(3)に記載の組成物。
(5)野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、上記(2)に記載の組成物。
(6)対象ががんに罹患しているか否かを決定する方法であって、
対象の尿に対するAB1株の走性行動を観察することと、
AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると決定することと
を含む、方法。
(7)対象ががんに罹患しているか否かを決定する方法であって、
対象の尿に対する線虫の野生株とAB1株の走性行動を観察することと、
野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはその可能性がある、と決定することと
を含む、方法。
(8)野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象は、がんに罹患していない、またはその可能性があると決定することをさらに含む、上記(7)に記載の方法。
(9)線虫の野生株とAB1株との混合物を培養することをさらに含む、上記(8)に記載の方法。
(10)野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、上記(9)に記載の方法。
図1は、実施例1に記載した線虫の行動評価に用いたシャーレ1の平面図を示す。 図2は、各種がん患者の尿に対する野生株とAB1株の走性インデックスを示す。
発明の具体的な説明
本明細書では、「対象」とは、哺乳動物を意味し、例えば、霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、オランウータン、マーモセット、およびヒト)、例えば、ヒトを意味する。本明細書では、対象は好ましくはヒトである。また、本明細書では、「対象」には、健常者、がんであると疑われる対象およびがんに罹患している対象が含まれる意味で用いられる。
本明細書では、「がん」は、悪性腫瘍を意味する。がんには、造血器腫瘍、上皮癌(カルシノーマ)、および非上皮性の肉腫(サルコーマ)に大きく分類され得る。造血器腫瘍としては、白血病、悪性リンパ腫、および骨髄腫などが挙げられる。上皮癌としては、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、頭頸部がん、および舌がんが挙げられる。肉腫としては、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、および血管肉腫が挙げられる。本明細書では、「がん」は、ステージ0の早期がん、およびステージ1の早期がんなどの早期がんを含む。
本明細書では、「がん診断に用いるための組成物」を単に「がんの診断薬」ということがある。
本明細書では、「線虫」とは、カエノラブディチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)を意味する。線虫は、米国ミネソタ大学の生物科学部のCaenorhabditis Genetics Center (CGC)に様々な環境から単離された株が登録および公開され、分譲可能である。従って、当業者であれば、知られているほとんどの株をCGCから入手することができる。自家受精により繁殖できるという観点では、雌雄同体が好ましく用いられ得る。
本明細書では、「走性行動」とは、誘引行動または忌避行動を意味する。誘引行動とは、ある物質からの物理的距離を縮める行動を意味し、忌避行動とは、ある物質からの物理的距離を広げる行動を意味する。誘引行動を誘発する物質を誘引物質といい、忌避行動を誘発する物質を忌避物質という。線虫は嗅覚により誘引物質に対して誘引し、忌避物質から忌避するという性質を有している。誘引物質に対して誘引する行動を誘引行動(本明細書では「陽性」ということがある)といい、忌避物質から忌避する行動を忌避行動(本明細書では「陰性」ということがある)という。また、誘引行動と忌避行動とを合わせて走性行動という。
本明細書では、「野生株」とは、線虫の野生株であり、例えば、N2 Bristol株が挙げられる。本明細書における野生株は、がんを有する対象から得られた尿には誘引行動を示し、がんを有しない対象から得られた尿には忌避行動を示す株とすることができる。
本明細書では、「AB1株」とは、CGCにおいてAB1(登録番号5459)として登録されている線虫株を指す(WBG 10(2) 140-141、及びWBG 8(2) 52参照)。天然から分離された線虫の変異体であると考えられる。
本発明者らは、既にWO2015/088039で示したように、線虫は、がん患者の尿に対して誘引行動を示し、健常者の尿に対して忌避行動を示す。従って、線虫の走性行動に基づいて尿が由来する対象が、がん患者であるのか、健常者であるのかを判別することができる。ところが、線虫の走性行動をより詳細に調べると、一定の割合で健常者であるにも関わらず、誘引行動を示す場合(以下、「偽陽性」ともいう)が存在することが明らかとなってきた。偽陰性を検出するため、本発明者らは様々な線虫株を試験した。その結果、偽陽性に対して誘引行動を示す株(AB1株)を単離することに成功した。
線虫の走性行動評価系を用いた尿の分析方法
線虫の走性行動評価系を用いた尿の分析方法は、対象から得られた被検試料(例えば、尿)と線虫とを一定距離離して配置し、線虫が被検試料に対して誘引行動を示すか、忌避行動を示すかを観察することによって行うことができる。そして、野生株が誘引行動を示した場合には、対象は、がんに罹患している、またはその可能性があると評価することができる。このようにして、WO2015/088039では、242検体の中規模試験により、がん患者を100%の感度および95%の特異度で検出することができた。
より詳細には、線虫の走性行動評価系を用いた尿の分析方法は例えば、
シャーレ(例えば、固形培地を導入したシャーレ)に対象から得られた被検試料(例えば、尿)を配置することと、
被検試料が配置されたシャーレに、被検試料と一定距離離れた位置に線虫を配置することと、
配置後、線虫に行動させることと、
線虫が被検試料に対して走性行動を示した場合には、対象ががんに罹患している、またはがんに罹患している可能性があると評価することと、
を含みうる。
線虫の走性行動は、被検試料に近づいた線虫数と被検試料から遠のいた線虫数の差や比により評価することができる。線虫数の差に基づく評価の場合には、差が正の値である場合には、全体として被検試料は、誘引行動を誘発するものであり、がん患者に由来するものであると評価することができ、負の値である場合には、全体として被検試料は、忌避行動を誘発するものであり、健常者に由来するものであると評価することができる。また、線虫の走性行動は、例えば、以下のように走性インデックスを指標として評価することができる。
Figure 0006778449
{式中、Aは、被検試料に対して誘引行動を示した線虫の数であり、Bは、被検試料に対して忌避行動を示した線虫の数である。}
走性インデックスが正の値である場合には、全体として被検試料は、誘引行動を誘発するものであり、がん患者に由来するものであると評価することができ、負の値である場合には、全体として被検試料は、忌避行動を誘発するものであり、健常者に由来するものであると評価することができる。
線虫は、遺伝子改変技術により標識してもよい。標識としては、例えば、蛍光タンパク質が挙げられ、蛍光タンパク質を発現する線虫は、特定波長の励起光を照射することで特定波長の蛍光を発し、個体を特定することができる。蛍光タンパク質としては、特に限定されないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、GCaMPが挙げられる。
AB1株について
線虫のAB1株は、野生株とは異なり、がん患者および健常者に対して忌避行動を示す。しかし、AB1株は一部の健常者に対しては誘引行動を示す。誘引行動を示す尿は、医師らにより健常者であると診断された対象の尿であった。従って、AB1株で陽性を示した対象は、健常者である可能性が高い。
従って、本発明では、AB1株を対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるために用いることができる。この側面では、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物を提供するものである。言い換えると、本発明では、AB1株を含む組成物であって、がん診断において健常者を検出することに用いるための組成物が提供される。
一方で、AB1株で陽性を示した対象は、通常の野生株を用いた評価では陽性であり、偽陽性の対象であった。従って、AB1株で陽性を示し、通常の野生株で陽性である対象は、偽陽性である可能性が高い。
従って、本発明では、野生株で陽性である対象に対して、偽陽性であるか否かを判別することに、AB1株を用いることができる。この側面では、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、組成物を提供するものである。本発明はまた、本発明は、対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株であり、対象が、線虫の野生株を用いた当該患者の尿に対して誘引行動を誘発した対象である、組成物を提供するものである。
AB1株を用いた尿に対する走性行動の評価方法(1)
本発明では、AB1株を用いて尿に対する走性行動を、例えば、以下のように評価することができる。
AB1株は、一部の健常者の尿に対して誘引行動を示す。従って、AB1株は、健常者の尿を検出することに用いることができる。評価方法は、例えば、以下の通り実施できる。
まず、対象の尿(すなわち、対象から得られた尿)に対するAB1株の走性行動を観察する。AB1株が誘引行動を示した尿は、健常者から得られた尿である、またはその可能性がある。従って、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
AB1株を用いた尿に対する走性行動の評価方法(2)
本発明では、AB1株は、他の線虫野生株を用いた走性行動評価試験において偽陽性を示した対象において陽性を示し、その他の対象においては陰性を示す。従って、AB1株は、他の線虫野生株を用いた走性行動評価で陽性であった対象から偽陽性である、またはその可能性がある対象を検出することにも、用いることができる。評価方法は、例えば、以下評価方法(A)または(B)の通り実施できる。
評価方法(A)
まず、対象の尿(すなわち、対象から得られた尿)に対する野生株の走性行動を観察する。野生株が誘引行動を示した尿(すなわち、「陽性」の尿)は、がん患者の尿である可能性が高い。ここで、上記陽性である尿に対するAB1株の走性行動を観察する。AB1株が誘引行動を示した尿は、健常者から得られた尿である、またはその可能性がある。従って、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、偽陽性である、またはその可能性があると決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
評価方法(B)
上記評価方法(A)では、野生型線虫(野生株)とAB1株とを別々に用いて試験した。評価方法(B)では、野生株とAB1株とを混合して用いる。
野生株とAB1株とは、別々に培養することができる。別々に培養する場合には、行動評価時に、野生株とAB1株とを混合して用いることができる。野生株とAB1株とは、特に限定されないが2:1〜1:2の数量比で、好ましくは略1:1の数量比で混合して用いることができる。また、野生株とAB1株とは、特に限定されないが同一条件下で培養することができる。
野生株とAB1株とは、一緒に混ぜて培養することもできる。一緒に培養する場合には、培養時に野生株とAB1株とを混合して、一緒に培養することができる。野生株とAB1株とは、特に限定されないが2:1〜1:2の数量比で、好ましくは略1:1の数量比で混合して培養することができる。AB1株は、野生株と増殖速度がほぼ同じであるので、培養開始時に1:1で混合すると、培養後に得られる線虫数量比も1:1程度となり得る。
AB1株は、目印として標識しておくことができる。標識としては、特に限定されないが例えば、可視化できる標識、例えば、蛍光標識、より好ましくは蛍光タンパク質による標識を用いることができる。蛍光タンパク質は、遺伝子改変技術によって線虫に安定発現させることができる。なお、本発明では、蛍光タンパク質を発現するAB1株が提供されるという側面も有している。あるいは、野生株を目印として標識してもよい。標識としては、特に限定されないが例えば、可視化できる標識、例えば、蛍光標識、より好ましくは蛍光タンパク質による標識を用いることができる。蛍光タンパク質は、遺伝子改変技術によって線虫に安定発現させることができる。標識は、野生株若しくはAB1のいずれか一方または両方に導入することができる。野生株およびAB1株の両方を標識する場合は、野生株およびAB1株が区別可能に標識され得る。
その後、対象の尿と上記で得られた線虫混合物とを用いて走性行動を観察することができる。その結果、野生株およびAB1株の両方で誘引行動を誘発した尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはがんに罹患していない可能性がある、と決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことができる。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、がんに罹患してない、またはがんに罹患していない可能性があると示される。
上記評価方法(B)は、野生株が誘引行動を誘発し、AB1株が忌避行動を誘発した尿が由来する対象は、がんに罹患している、またはその可能性が高いと決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことをさらに含んでいてもよい。上記評価方法(B)はまた、野生株もAB1株も忌避行動を誘発した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性が高いと決定する(または、評価する、予測する、推測する、若しくは診断する)ことをさらに含んでいてもよい。すなわち、AB1株が誘引行動を示した尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があると示される。
上記のAB1株を用いた尿に対する走性行動の評価方法においては、本発明のAB1株を含む組成物を用いることができる。
本発明では、本発明の上記方法によってがんに罹患している、またはその可能性が高いと決定された対象に、抗がん剤を投与することを含む、がんの予防および/または治療方法が提供される。この態様では、がんの予防および/または治療方法は、AB1株が誘引行動を示した尿に由来する対象をがんに罹患している、またはその可能性が高いと決定することをさらに含み得る。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
実施例1:異なる複数の線虫株を用いた嗅覚に基づく走性行動の調査
本実施例では、様々な土壌から単離された異なる複数株を用いて嗅覚に基づく走性行動を評価した。
線虫株をCaenorhabditis Genetics Center (CGC)から購入して、線虫の嗅覚に基づく走性行動を評価した。具体的には、線虫の飼育は、以下表1に記載のNGMプレートを用いて行った。
Figure 0006778449
また、線虫の走性行動評価は、以下表2に記載のアッセイプレート(径5cmまたは9cmシャーレ)を用いて行った。
Figure 0006778449
匂い物質としては、各種がん患者の尿サンプルを用いた。より具体的には、乳がん、胃がん、胆管がん、大腸がん、盲腸、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、および健常者(偽陽性の健常者を含む)のそれぞれの尿検体を10倍ないしは100倍に希釈して使用した。
それぞれの線虫を20℃で4日間培養した。実施例で用いたプレートを図1に示す。図1における、プレートのサンプル配置部位5の箇所に上記匂い物質を塗布し、プレートの線虫配置部位3に線虫を配置して、その後23℃において線虫の行動観察を行った。
線虫を配置した30分後に領域2および領域4に存在する線虫数をカウントし、以下式により走性インデックスを求めた。
(走性インデックス)={N(2)−N(4)}/{N(2)+N(4)}
{式中、N(2)は、図1の領域2に分布した線虫の数であり、N(4)は、図1の領域4に分布した線虫の数である。}
その結果、通常の線虫の野生株は、がん患者の尿に対して誘引して近づき、健常者の尿に対して忌避して遠ざかる行動を示す。しかしながら、発明者らは、線虫株の中から、がん患者の尿に対しても健常者の尿に対しても忌避行動を示す株を見出した。その株は、AB1という株であった。AB1株は、1984年に単離され、CGCに登録された株であり、CGCから入手可能である。
AB1株の行動をさらに評価したところ、他の野生株が誘引行動を示してしまう偽陽性の健常者の尿に対して、誘引行動を示すことが分かった。
この結果から、AB1株は嗅覚に基づく誘引行動において野生株とは異なる挙動を示す変異体であることが明らかとなった。
この結果からはまた、通常の野生株では誘引行動を示し、AB1株が忌避行動を示すものは、陽性であることが示され、通常の野生株でもAB1株でも忌避行動を示すものは偽陽性であることが示されることが理解できる。
次に、AB1株を蛍光標識した。具体的には、AB1株の体壁筋に緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させ、励起光を照射することで蛍光を発するAB1株を作成した。具体的には、myo−3プロモーター下流にGFP遺伝子を作動可能に連結した遺伝子を含むプラスミドをAB1株の生殖腺にインジェクションし、形質転換体を得た。この株にγ線を照射してインジェクションしたプラスミドを染色体にインテグレートさせた。
さらに、標識したAB1株の成虫と野生株の成虫のそれぞれ同数を餌をまいた寒天培地に播種し、3〜5日後に標識したAB1株と野生株とを含む混合物を得た。それぞれが約半数であることを確認し、これを走性行動評価に用いた。行動評価では、可視光およびGFPの励起光照射下で線虫を観察し、それぞれの走性インデックスを求めることができた。結果は図2に示される通りであった。
図2に示されるように、通常の野生株(図1ではN2 Bristol株)では、がん患者の尿に対する走性インデックスが正の値であり、誘引行動を示し、健常者の尿に対しては、走性インデックスが負の値であり、忌避行動を示す。これに対して、AB1株では、がん患者の尿に対しても健常者の尿に対しても、走性インデックスが負の値であり、忌避行動を示すことが明らかとなった。また、N2 Bristol株の他に8種類の野生株で試験を行ったが、全てN2 Bristol株と同様の走性行動を示した。
このようにして、AB1と通常の野生株とを用いることにより偽陽性の割合を低減することが可能となり、評価精度が向上することが期待できる。

Claims (9)

  1. 対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫がAB1株である、組成物。
  2. 対象ががんに罹患しているか否かを対象の尿に対する走性行動に基づいて評価することに用いるための、線虫を含む組成物であって、線虫が野生型株とAB1株との混合物である、請求項1に記載の組成物。
  3. 野生株が誘引行動を示した尿を対象とする、請求項1に記載の組成物。
  4. 偽陽性の対象を検出することに用いるための、請求項3に記載の組成物。
  5. 野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、請求項2に記載の組成物。
  6. 対象ががんに罹患しているか否かを予測するための方法であって、
    対象の尿に対するAB1株の走性行動を観察することを含み
    尿に対するAB1株による誘引行動は、当該尿が由来する対象は、健常者である、またはその可能性があることを示す、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
  7. 対象ががんに罹患しているか否かを予測するための方法であって、
    対象の尿に対する線虫の野生株とAB1株の走性行動を観察することを含み
    尿に対する野生株およびAB1株の両方による誘引行動は、当該尿が由来する対象はがんに罹患してない、またはその可能性があることを示す、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
  8. 線虫の野生株とAB1株との混合物を培養することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
  9. 野生型株およびAB1株のいずれか少なくとも1つが標識されている、請求項8に記載の方法。
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