JP6777126B2 - 摩擦攪拌接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板と回転工具(以下、ツールという)との摩擦熱によって鋼板を接合する摩擦攪拌接合方法に関するものである。
一般に、摩擦攪拌接合技術は、突き合わされた(あるいは重ね合わされた)2枚の金属板の間に丸棒状のツールを挿入して回転させながら、金属板とツールを相対的に移動させて金属板同士を接合する技術である。つまり、ツールの回転によって摩擦熱が発生し、金属板が軟化すると同時に、その軟化した部分がツールの回転によって攪拌されて生じる塑性流動を活用して金属板同士を接合する技術である。そして、接合される金属板と回転するツールを相対的に移動させることによって、線状の接合部が形成される。したがって摩擦攪拌接合の技術は、溶加材(たとえば溶接ワイヤ、溶接フラックス等)を使用せずに金属板を接合できるという利点を有する。
図1は、摩擦攪拌接合におけるツールと金属板の配置の例を模式的に示す斜視図である。以下では、図1を参照して、2枚の金属板を突き合わせた状態で摩擦攪拌接合を行なう例について説明する。
摩擦攪拌接合を行なうにあたって、図1に示すように、2枚の金属板1a、1bの側面を互いに突き合わせて配置する。摩擦攪拌接合を開始する前は、当然、金属板1a、1bは単に当接するのみで接合していない。
次いで、金属板1a、1bが当接した未接合の部位2(以下、未接合部という)に丸棒状のツール3を挿入し、さらにツール3を回転させながら未接合部2に沿って移動させる。その進行方向を矢印Aとして図1に示す。矢印Aは、金属板1a、1bに対するツール3の相対的な進行方向であり、金属板1a、1bを固定してツール3を移動させる場合の進行方向を示す。ツール3を固定して金属板1a、1bを移動させる場合は、矢印Aの逆方向へ金属板1a、1bを移動させる。なお、ツール3を回転させるための動力は、モーター等の駆動力源(図示せず)から回転駆動軸6を介して伝達される。
こうして、金属板1a、1bの未接合部2とツール3との摩擦によって摩擦熱が発生し、その摩擦熱によってツール3周辺の金属板1a、1bが軟化し、さらに攪拌されて塑性流動が発生する。この時、未接合部2の下側(すなわち金属板1a、1bの裏面)には裏当て材7を配設して、軟化した金属板1a、1bが塑性流動によって下方から漏出するのを防止する。
ツール3の上部には円筒状(すなわちツール3よりも太径)のショルダー4が配設される。ショルダー4の下端には、ツール3とショルダー4の直径差によって段差面5が形成されており、ツール3が未接合部2に挿入されることによって、ショルダー4の段差面5が金属板1a、1bに当接する。こうして、ツール3の回転とともにショルダー4も一体的に同じ回転速度で回転しながら、同じ移動速度で矢印Aの方向へ進行する。そして、ショルダー4の段差面5は、摩擦熱を発生させ、かつ軟化した金属板1a、1bが上方から漏出するのを防止する。なお図1の矢印Bは、ツール3およびショルダー4の回転方向を示す。回転方向は矢印Bの逆方向であっても何ら問題はない。
このようにしてツール3が通過すると、軟化しかつ塑性流動した部位が自然冷却されて固相接合して、接合部8が形成される。
以上に説明したような摩擦攪拌接合は、ツール3の回転によって発生する摩擦熱が主要な熱源であるから、融点の低い金属板(たとえばアルミニウム板等)の接合に好適な技術である。
これに対して鋼板は融点が高く、ツール3の摩擦熱で軟化させるのは困難である。とりわけ高強度鋼板は、近年、様々な用途で使用されているが、融点が通常の鋼板よりも上昇するので、ツール3に加わる負荷が著しく増大し、その結果、
(A)ツール3が矢印Aの方向へ進行する速度(以下、接合速度という)が低下する、
(B)接合部8に欠陥が発生し易くなる、
(C)ツール3の寿命が短くなる
等の問題が生じる。そこで、図2に示すように、ツール3の進行方向の前方に予熱手段10を配設して、鋼板9a、9bの未接合部2を予め加熱して軟化させた後に、ツール3で摩擦熱を発生させかつ塑性流動させる技術が検討されている。なお図2では、裏当て材は図示を省略する。
たとえば特許文献1には、予熱手段としてガスノズルを用いて摩擦攪拌接合を行なう技術が開示されている。この技術は、各種燃料ガス(たとえばアセチレンガス、プロパンガス、天然ガス等)と酸素をガスノズルに供給して燃焼させて、ガス炎で未接合部を予熱する。予熱装置は、ツールの進行方向の前方に配置され、ツールの移動に連動して同じ速度、同じ方向へ進行する。つまり、ツールと予熱手段が常に一定の間隔を保ちながら、摩擦攪拌接合を行なう。したがって、この技術を鋼板の摩擦攪拌接合に適用した場合、噴射されるガス炎はツール近傍の未接合部のみを加熱するので、予熱に加えてツールの摩擦熱によって鋼板が迅速に軟化し、摩擦攪拌接合を容易に行なうことができる。
特許文献2には、予熱手段として誘導加熱装置を用いる技術が開示されている。この技術は、予熱による未接合部の温度上昇を精度良く制御できるので、鋼板の摩擦攪拌接合に適用すれば、摩擦攪拌接合を開始するまでの所要時間を短縮できる。さらに、接合部の割れを防止し、ひいては接合部の強度を向上することが可能となる。
特許文献3には、予熱手段としてレーザ光を用いる技術が開示されている。この技術を鋼板の摩擦攪拌接合に適用すれば、レーザ光で鋼板を軟化温度まで加熱できるので、ツールの寿命を向上することが可能となる。
これらの従来の予熱技術を通常の鋼板の摩擦攪拌接合に適用すれば、上記した(A)〜(C)の問題を解消することができる。
しかし従来の予熱技術を高強度鋼板に適用すると、予熱手段による加熱およびツールによる摩擦熱の影響を受ける部位(以下、熱影響部という)が焼戻し軟化を起こし、さらに予熱手段とツールが通過した後、熱影響部が冷却されて硬化する。こうして、接合部ならびに熱影響部の強度や靭性が局部的に変動し、その結果、接合部と熱影響部で構成される継手としての強度が低下するという新たな問題が生じる。
特許第3081808号公報 特許第4235874号公報 特許第4537132号公報
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、鋼板の摩擦撹拌接合、とりわけ高強度鋼板の摩擦撹拌接合において接合速度の向上、接合部の欠陥防止、ツールの寿命延長を可能とし、かつ接合部と熱影響部を含む継手としての強度(以下、継手強度という)を向上することが可能な摩擦撹拌接合方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記した課題を解決するために、種々の条件で鋼板の摩擦撹拌接合を行なって、ツールの回転速度、接合速度、ショルダー径等の条件が継手強度やツールの寿命に及ぼす影響について調査した。その結果、
(a)ツールと予熱手段を併用することによって、ツールの進行方向の前側縁部に接触または近接する鋼板の温度(以下、前縁温度という)を十分に上昇させて、鋼板を軟化させることが可能となり、ひいてはツールの寿命延長、接合速度の向上、接合部の欠陥防止を図ることができる、
(b)鋼板の前縁温度を過剰に上昇させると、熱影響部が拡大するので、その強度や靭性の局部的な変動が顕著になり、継手強度の低下を招く、
(c)鋼板の前縁温度に加えて、ツールの回転速度、ショルダー径、接合速度が継手強度に多大な影響を及ぼす
等の知見を得た。なお、本発明における前縁温度は、ツールの進行方向前側の鋼板表面の領域のうち、明らかに鋼板の塑性変形が発生していない、最も近接した領域を指す。したがって、条件によってはツールから5mm程度離れた領域までを含む。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、2枚の鋼板を突き合わせて、あるいは重ね合わせて、摩擦攪拌接合するにあたり、摩擦攪拌接合において回転するツールの回転速度Rを5回/分超かつ5000回/分未満とし、ツールの進行方向の前側縁部に接触する鋼板の前縁温度Tを25℃以上とし、ツールのショルダー径Dを8〜40mmとし、ツールの進行に伴う接合速度Vを0.1〜5m/分として摩擦攪拌接合を行なう摩擦攪拌接合方法である。
本発明の摩擦撹拌接合方法においては、接合速度Vを1〜5m/分とすることが好ましい。また、2枚の鋼板の引張強さが同じである場合はその引張強さをS(MPa)とし、2枚の鋼板の引張強さが異なる場合は強度が高い方の引張強さをS(MPa)として、下記(1)式で算出されるF値が200≦F≦1000を満足する範囲内で摩擦攪拌接合を行なうことが好ましい。
F=a×b×D/(V×S) ・・・(1)
ただし、a値を回転速度R(回/分)との関係で
5<R<200のとき a=40×(R+100)
200≦R<1000のとき a=10×(R+1000)
1000≦R<5000のとき a=4×(R+4000)
とし、b値を前縁温度T(℃)との関係で
25≦T<150のとき b=(T/100)+0.5
150≦T<750のとき b=(T/150)+1
750≦Tのとき b=(T/200)+2.25
とする。
さらに、摩擦攪拌接合を行なう間に接合速度Vを増加させることによるF値の調整を2回以上行なうこと、ツールの進行方向の前方に位置する鋼板を予熱することによって前縁温度Tを25℃以上に維持することが好ましい。そして、接合する2枚の鋼板のうちの少なくとも1枚の引張強さが980MPa以上である場合に本発明を適用すれば、多大な効果が期待できる。
本発明によれば、鋼板の摩擦撹拌接合、とりわけ高強度鋼板の摩擦撹拌接合において接合速度の向上、接合部の欠陥防止、ツールの寿命延長を可能とし、かつ継手強度を向上することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
摩擦攪拌接合を行なう際のツールと金属板の配置の例を模式的に示す斜視図である。 摩擦攪拌接合を行なう際のツール、予熱手段と金属板の配置の例を模式的に示す斜視図である。
本発明によれば、図1に示すように予熱手段を使用せず、鋼板の前縁温度Tが室温のままで摩擦撹拌接合を行なうことができる。ここで、室温は25℃以上とする。
また、図2に示すようにツール3の進行方向の前方に予熱手段10を配設して、鋼板9a、9bの未接合部2を予熱することによって、前縁温度Tを室温よりも上昇させて摩擦撹拌接合を行なっても良い。特に高強度鋼板(引張強さ980MPa以上)の摩擦撹拌接合を行なう際には、予熱手段10を用いることが好ましい。
まず図1を参照して、予熱手段を使用せずに摩擦撹拌接合を行なう場合について説明する。ただし図1中の金属板1a、1bは、いずれも鋼板として以下に説明する。
摩擦攪拌接合を行なうにあたって、2枚の鋼板1a、1bの側面を互いに突き合わせて配置する。そして、鋼板1a、1bの未接合部2に丸棒状のツール3を挿入し、さらにツール3を回転させながら未接合部2に沿って移動させる。ツール3の形状は、表面が平滑な丸棒、あるいは表面に加工(たとえば螺旋状の溝等)が施された丸棒とする。また、ツール3の材質は、強度と耐熱性を備えたセラミックスや耐熱金属等を使用する。
ツール3の回転速度Rが5回/分以下では、摩擦撹拌接合に必要な摩擦熱を発生させることができない。一方、回転速度Rが5000回/分以上では、軟化した鋼板1a、1bの塑性流動が過剰に発生して、接合部8に欠陥が生じ易くなる。また、過大な摩擦熱が発生して、ツール3の耐久性に悪影響を及ぼす原因になる。したがって、回転速度Rは5回/分超かつ5000回/分未満の範囲内とする。望ましくは、安全性を確保する観点から、回転速度Rは100回/分超かつ4000回/分未満の範囲内とする。
さらに望ましくは、回転速度Rは、500回/分以上かつ4000回/分未満である。本発明で想定しているような接合速度の比較的速い摩擦撹拌接合において、安定した入熱量が得られるので、回転速度Rをこの範囲に設定しても、良好に摩擦撹拌接合を行なうことができる。
ツール3の移動に伴う接合部8先端の移動速度(すなわち接合速度V)が0.1m/分未満では、摩擦撹拌接合の効率が低下するだけでなく、予熱手段を使用しなくても鋼板1a、1bの前縁温度Tが過剰に上昇するので、熱影響部が拡大し、強度や靭性の局部的な変動が顕著になる。一方、接合速度Vが5m/分を超えると、摩擦撹拌接合に必要な摩擦熱を得ることができず、しかもツール3の破損、折損が発生し易くなる。したがって、接合速度Vは0.1〜5m/分の範囲内とする。好ましくは1〜5m/分である。
ツール3の進行方向の前側縁部に接触する鋼板1a、1bの前縁温度Tは、既に説明した通り25℃以上である。予熱による軟化の効果、および過剰な加熱による組織変化を抑制するためには、好ましくは50℃以上1000℃以下である。
ツール3の上部には円筒状のショルダー4が配設される。ショルダーの直径D(以下、ショルダー径という)が8mm未満では、軟化した鋼板1a、1bの漏出を防止できない。一方、ショルダー径Dが40mmを超えると、ショルダー4の段差面5と鋼板1a、1bとの摩擦によって、熱影響部が拡大し、強度や靭性の局部的な変動が顕著になる。したがって、ショルダー径Dは8〜40mmの範囲内とする。好ましくは、10〜30mmの範囲内である。
接合する2枚の鋼板1a、1bは、引張強度が同じ鋼板でも良いし、引張強度が異なる鋼板でも良い。引張強度が同じ鋼板1a、1bの摩擦撹拌接合を行なう場合は、その引張強度をS(MPa)とし、引張強度が異なる鋼板1a、1bの摩擦撹拌接合を行なう場合は、強度が高い方の引張強度をS(MPa)として、下記の(1)式で算出されるF値が200≦F≦1000を満足する範囲内で摩擦攪拌接合を行なう。
F=a×b×D/(V×S) ・・・(1)
ただし、a値は、回転速度R(回/分)との関係で
5<R<200のとき a=40×(R+100)
200≦R<1000のとき a=10×(R+1000)
1000≦R<5000のとき a=4×(R+4000)
であり、b値は、前縁温度T(℃)との関係で
25≦T<150のとき b=(T/100)+0.5
150≦T<750のとき b=(T/150)+1
750≦Tのとき b=(T/200)+2.25
である。
つまり、ツール3の回転速度Rに応じて摩擦による発熱量は変化し、回転速度Rが200回/分未満では、回転速度Rが増加すれば、発熱量も増加する。回転速度Rが200回/分以上1000回/分未満では、ツール3が鋼板1a、1b上で滑ってしまうので、摩擦が減少し、回転速度Rの増加に起因する発熱量の増加は抑制されるため、Rの係数はR<200に比べて小さい。回転速度Rが1000回/分以上5000回/分未満では、ツール3と鋼板1a、1bとの滑りが著しくなり、回転速度Rの増加に起因する発熱量の増加は更に抑制されるため、Rの係数はR<1000に比べてさらに小さくなる。このようなツール3の回転速度Vが摩擦熱に及ぼす影響を評価するための指標としてa値を使用する。
図1に示すように予熱手段を使用しない場合は、鋼板1a、1bの温度は室温であるが、前縁温度Tはツール3の回転による摩擦熱で上昇する。そのため、25≦T<150、150≦T<750、ならびに750≦Tの範囲に区分してTの係数およびb値を設定する。つまり、前縁温度Tが25℃以上150℃未満では、前縁温度Tの上昇に応じて予熱によって得られる効果が著しく増大する。前縁温度Tが150℃以上750℃未満では、前縁温度Tの上昇に応じて予熱による効果が増大するため、Tの係数はT<150に比べて小さい。前縁温度Tが750℃以上では、前縁温度Tの上昇に応じて予熱による効果は減少するため、Tの係数はT<750に比べてさらに小さくする必要がある。このような前縁温度Tが及ぼす影響を評価するための指標としてb値を使用する。a値およびb値の係数は、さらにRおよびTを変化させた実験を行ない、接合時の継手状態を考慮して十分な効果が得られる範囲から決定した。
接合速度Vは、2m/分以上が好ましい。つまり、上記の式を満たし、かつ接合速度Vが2m/分以上の範囲で、継手効率(=100×継手強度/鋼板の引張強さ)が著しく向上する。
こうして鋼板1a、1bの摩擦撹拌接合を行なうと、ツール3の回転による摩擦熱が鋼板1a、1bに蓄積されて、前縁温度Tが徐々に上昇していく。そこで、鋼板1a、1bの前縁温度を測定しながら摩擦撹拌接合を行なって、その測定値が予め設定された閾値を超えたときに接合速度Vを増加させることによって、F値を適正な200〜1000の範囲に維持することが好ましい。これにより鋼板1a、1bの板厚方向の均熱性が改善され、その結果、継手特性の安定化を図り、しかも施工能率の向上を図ることができる。
また、このようなF値の調整は、接合速度や予熱温度の変更にあわせて、摩擦撹拌接合を行なう間に2回以上行なうことが好ましい。ただし、F値の調整(すなわち変更)を行なう場合は、変更前のF値(以下、F1という)に対して、変更後のF値(以下、F2という)を20%以内の増減量に留めることが好ましい。その理由は、F値の変更(F1→F2)に起因する接合状況の変動を防止できるからである。
以上のようにして、鋼板の摩擦撹拌接合を効率良く円滑に行なうことができ、しかも継手強度を向上することができる。
引張強さが980MPa以上の高強度鋼板の摩擦撹拌接合を行なう際には、図2に示すように、予熱手段を用いることが好ましい。そこで図2を参照して、予熱手段10を使用してツール3に加わる負荷を軽減しながら摩擦撹拌接合を行なう場合について説明する。
予熱手段10を使用する場合も、ツール3の回転速度Rは5回/分超かつ5000回/分未満の範囲内、ショルダー径Dは8〜40mmの範囲内、接合速度Vは0.1〜5m/分の範囲内(好ましくは1〜5m/分、さらに好ましくは2〜5m/分)とし、鋼板9a、9bの前縁温度Tは25℃以上とする。また、(1)式で算出されるF値は200≦F≦1000の範囲内とする。これらの限定理由は既に述べた通りであるから、ここでは説明を省略する。
接合する2枚の鋼板9a、9bの両方が高強度鋼板である場合、および、2枚の鋼板9a、9bの片方が高強度鋼板である場合のいずれにおいても、本発明を適用することによって、摩擦撹拌接合を効率良く円滑に行なうことができ、しかも継手強度を向上することができる。
予熱手段10の構成は、特に限定しないが、高周波誘導加熱やレーザ光で加熱するのが好ましい。
予熱手段10の中心軸とツール3の中心軸との距離が近すぎると、ツール3が予熱と摩擦熱によって過剰に加熱されるので、ツール3が破損、折損し易くなる。一方、距離が遠すぎると、予熱によってツール3に加わる負荷を軽減する効果が得られない。したがって、予熱手段10の中心軸とツール3の中心軸との距離は、1〜100mmの範囲内が好ましい。
予熱手段10で加熱する領域の面積が狭すぎると、予熱によってツール3に加わる負荷を軽減する効果が得られない。一方、面積が広すぎると、高強度鋼板の焼戻し軟化に起因する強度や靭性の局部的な変動が発生し易くなり、その結果、継手強度の低下を招く。したがって、予熱手段10で加熱する領域の面積は、0.1〜100cm2の範囲内が好ましい。
以上、本発明を適用して鋼板(あるいは高強度鋼板)の突き合わせ接合を行なう場合について説明したが、重ね合わせ接合にも本発明の摩擦撹拌接合方法を適用できる。
<実施例1>
2枚の同一の高強度鋼板(板厚2.3mm)を突き合わせて、表1、2に示す条件で摩擦撹拌接合を行なった。接合は1回あたり直線200mmの接合とし、複数回繰り返し実施した。各接合試験において、ツールは新品かあるいは摩耗が一切認められないものを用いた。予熱として、ツール前方を30mm×30mmの面加熱が可能なコイルを用いて高周波加熱を行なった。周波数は10〜80kHzとし、所定の温度となるように出力を調整した。ツールはTiC製の丸棒(表面は平滑)を使用し、ツールの中心軸を高強度鋼板の表面に対して鉛直に設定した。さらに、高強度鋼板の表面をサーモグラフィで撮影して、前縁温度Tを測定した。表1中のNo.23(T=21℃)は、予熱を行なわない例である。また、接合の可否の◎は2枚の高強度鋼板を接合でき、かつ接合部上に外観から観察される一切の欠陥がなかった例、〇は接合できたが、1mあたりに1〜2カ所の軽微な欠陥があった例、×はツールが破損して接合できなかった例である。
Figure 0006777126
Figure 0006777126
こうして、摩擦撹拌接合におけるツールの寿命を調査した。その結果、1本のツールで長さ5m以上の接合が可能であったものを◎、5m未満3m以上であったものを〇、3m未満であったものを×として表1、2に示す。
そして、得られた継手の引張試験を行なった。その結果を、継手効率(=100×継手強度/鋼板強度)が90%以上のものを◎、80%以上のものを〇、80%未満のものを×として表1、表2に示す。
表1、表2から明らかなように、発明例は、ツールの寿命および継手効率ともに◎、〇と評価された。
<実施例2>
2枚の高強度鋼板(板厚2.3mm)を突き合わせて、表3、4に示す条件で摩擦撹拌接合を行なった。高強度鋼板の引張強度を、それぞれS1(MPa)、S2(MPa)、S1≧S2とする。接合は直線1000mmの接合とし、破損するまで繰り返し実施した。その間、高強度鋼板の表面をサーモグラフィで撮影して、前縁温度Tを測定した。なお、接合速度Vを変更する前のTの目標値をT1(℃)、変更した後の目標値をT2(℃)とする。
摩擦撹拌接合において、未接合部に挿入されたツールが移動し始めて、前縁温度Tが目標値T1に到達したときに接合速度Vを変更するように設定した。変更する前の前の接合速度をV1(m/分)、変更した後の接合速度をV2(m/分)とする。また、接合速度Vの変更(V1→V2)に要する時間を測定した。
各接合試験において、ツールは新品かあるいは摩耗が一切認められないものを用いた。ツールはTiC製の丸棒(表面は平滑)を使用し、ツールの中心軸を高強度鋼板の表面に対して鉛直に設定した。予熱として、ツールの移動方向の前方5mmの位置にレーザ光を照射した。出力は、所定の温度が得られるように0.5〜5kWの範囲内で調整した。
Figure 0006777126
Figure 0006777126
これらの摩擦撹拌接合において、2枚の高強度鋼板を接合でき、かつ接合部に目視で観察される欠陥が皆無であった例を◎、接合はできたが、軽微な欠陥が1mあたり1〜2個認められた例を〇、ツールが破損して接合できなかった例を×として表4に示す。
こうして摩擦撹拌接合を行ない、ツールの寿命を調査した。その結果、1本のツールで長さ5m以上の接合が可能であったものを◎、長さ3m以上5m未満の接合が可能であったものを〇、接合の長さが3m未満であったものを×として表4に示す。
さらに、得られた夫々の接合継手の接合線に対して、引張方向が垂直となるように複数の引張試験片を採取した。その際、接合を開始した部位から接合速度Vを変更した部位までの区間から1〜3個の引張試験片(以下、サンプル1群という)、接合速度Vを変更した部位から接合を終了した部位までの区間から1〜3個の引張試験片(以下、サンプル2群という)を採取した。
比較のために、接合速度Vを変更せずに摩擦撹拌接合を行ない、接合を開始した部位から200mmまでの区間から引張試験片(以下、サンプル1群という)を採取し、接合を終了した部位から200mmまでの区間から引張試験片(以下、サンプル2群という)を採取した。その場合の前縁温度TならびにF値は、T2ならびにF2として表4に示す。
採取した引張試験片の引張試験を行なった結果は、継手効率(=100×継手強度/S2)の最低値が93%以上のものを◎+、90%以上93%未満のものを◎、80%以上90%未満のものを〇、80%未満のものを×として表4に示す。
次に、継手効率の評価が◎+または◎であったもののうち、サンプル1群とサンプル2群のそれぞれの継手強度の平均値を算出し、両者の差(すなわち継手強度の変化)がサンプル2群を基準として3%以下のものを◎、3%超5%以下のものを〇、5%超のものを×として表4に示す。
表3、4から明らかなように、本発明を適用することによって、接合速度を増加させるだけでなく、接合部全長にわたって優れた継手効率を安定して保持できることが確かめられた。
1a 金属板
1b 金属板
2 未接合部
3 ツール
4 ショルダー
5 段差面
6 回転駆動軸
7 裏当て材
8 接合部
9a 鋼板
9b 鋼板
10 予熱手段

Claims (5)

  1. 2枚の鋼板を突き合わせて、あるいは重ね合わせて、摩擦攪拌接合するにあたり、該摩擦攪拌接合において回転するツールの回転速度Rを5回/分超かつ5000回/分未満とし、前記ツールの進行方向の前側縁部に接触する前記鋼板の前縁温度Tを25℃以上とし、前記ツールのショルダー径Dを8〜40mmとし、前記ツールの進行に伴う接合速度Vを0.1〜5m/分とするとともに、前記2枚の鋼板の引張強さが同じである場合はその引張強さをS(MPa)とし、前記2枚の鋼板の引張強さが異なる場合は強度が高い方の引張強さをS(MPa)として、下記(1)式で算出されるF値が200≦F≦1000を満足する範囲内で前記摩擦攪拌接合を行なうことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
    F=a×b×D/(V×S) ・・・(1)
    ただし、a値を前記回転速度R(回/分)との関係で
    5<R<200のとき a=40×(R+100)
    200≦R<1000のとき a=10×(R+1000)
    1000≦R<5000のとき a=4×(R+4000)
    とし、b値を前記前縁温度T(℃)との関係で
    25≦T<150のとき b=(T/100)+0.5
    150≦T<750のとき b=(T/150)+1
    750≦Tのとき b=(T/200)+2.25
    とする。
  2. 前記接合速度Vを1〜5m/分とすることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。
  3. 前記摩擦攪拌接合を行なう間に、前記接合速度Vを増加させることによる前記F値の調整を2回以上行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦攪拌接合方法。
  4. 前記ツールの進行方向の前方に位置する前記鋼板を予熱することによって前記前縁温度Tを25℃以上に維持して前記摩擦攪拌接合を行なうことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合方法。
  5. 前記2枚の鋼板のうちの少なくとも1枚の引張強さが980MPa以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合方法。
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