図1に示されるように、一実施形態に係る測距装置1は、車両2に搭載されうる。測距装置1は、制御装置10と、投波器40と、受波器50と、記憶装置60とを備える。
図2に示されるように、測距装置1は、制御装置10と、投波器40−1〜40−Nと、受波器50−1〜50−Mと、記憶装置60とを備える。投波器40−1〜40−Nは、投波器40ともいう。受波器50−1〜50−Mは、受波器50ともいう。制御装置10は、投波器40を1個備えてよいし、2個以上備えてよい。制御装置10は、受波器50を1個備えてよいし、2個以上備えてよい。投波器40の数と受波器50の数とは、同じであってよいし、異なってよい。
制御装置10は、投波器40、受波器50及び記憶装置60それぞれに、電気的に接続される。制御装置10は、投波器40に、送信信号を出力する。投波器40は、送信信号に基づく測定波を対象空間に対して送信する。対象空間に測定対象が存在すると、測定波は、当該測定対象で反射する。制御装置10は、受波器50から、測定対象で反射された反射波に基づく受信信号を取得する。制御装置10は、送信信号と受信信号とに基づいて、測定対象までの距離を算出する。本開示において、測定対象は、対象空間に存在する物体を指す。測定対象は、対象空間に存在しない場合がある。測定対象を含む記載は、対象空間に物体が存在するときの記載である。
制御装置10は、例えばプロセッサとして構成される。制御装置10は、1以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、及び特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御装置10は、1つ又は複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、及びSiP(System In a Package)のいずれかであってよい。制御装置10は、記憶装置60に、各種情報、又は測距装置1の各構成部を動作させるためのプログラム等を格納してよい。
記憶装置60は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶装置60は、制御装置10のワークメモリとして機能してよい。
投波器40は、入力された信号に基づいて、強度を制御した測定波を射出する。測定波は、光、電磁波又は超音波等を含みうる。投波器40から射出される測定波は、所定の波長を有する搬送波を送信信号に基づき振幅変調して得られる。測定波は、対象空間に向けて送信され、測定対象で反射される。測定対象で反射された測定波は、反射波ともいう。反射波は、光、電磁波又は超音波等を含みうる。
投波器40は、例えばLED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光素子を備えてよい。発光素子は、所定の波長を有する光を射出してよい。投波器40は、複数の発光素子を備えてよい。複数の発光素子は、それぞれ異なる波長の光を射出してよい。発光素子は、例えば、近赤外光を含む赤外光を射出してよい。発光素子は、赤外光に限られず、他の波長の光を射出してよい。投波器40は、発光素子を備える場合、投光器ともいう。投波器40は、例えばアンテナ等を含む電磁波を発する発生素子を備えてよい。電磁波の発生素子は、所定の波長の電磁波を射出してよい。投波器40は、超音波を発する発生素子を備えてよい。超音波の発生素子は、所定の波長の超音波を射出してよい。
受波器50は、入射した反射波の強度に応じた電圧又は電流を出力する。受波器50が出力する電圧又は電流によって生成される信号は、受信信号ともいう。反射波が受波器50に入射した場合、受信信号は、測定対象までの距離に係る情報を含む。
受波器50は、例えばPD(Photo Diode)又はPT(Photo Transister)等の受光素子を備えてよい。受光素子は、所定の波長を有する光を受光した場合に、光の強度に応じた電圧又は電流を出力してよい。受光素子は、複数の受光素子を備えてよい。複数の受光素子は、それぞれ異なる波長の光を受光した場合に、光の強度に応じた電圧又は電流を出力してよい。受波器50は、受光素子を備える場合、受光器ともいう。受波器50は、例えばアンテナ等を含む電磁波を受信する受信素子を備えてよい。受波器50は、例えばマイク等を含む超音波を受信する受信素子を備えてよい。
測距装置1は、位相差方式又はパルス方式等の種々の方式によって、測定対象までの距離を測定しうる。
[1.位相差方式]
位相差方式は、対象空間に対して送信した信号と、測定対象から受信した信号との周波数の差に基づく方式である。測距装置1が位相差方式で測距を行う場合、測距装置1は、例えば、対象空間に対して周波数変調した信号を送信する。測距装置1は、測定対象で反射された信号を受信する。測距装置1は、送信した信号の周波数変調パターンと、送信した信号及び受信した信号の間の周波数の差とに基づいて、測定対象までの距離を算出しうる。
位相差方式は、例えば、2周波CW(Continuous Wave)方式、又は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式等を含む。以下、測距装置1がFMCW方式で測距を行う場合について説明する。
<1.1 機能ブロック>
図3に示されるように、制御装置10は、パターン生成部11と、クロック生成部12と、信号生成部13と、タイミング信号生成部14とを備える。制御装置10は、情報取得部15と、距離算出部16と、R信号乗算器17Rと、I信号乗算器17Iとを備える。制御装置10は、複素変換部21と、LPF(Low Pass Filter)部22と、ノッチフィルタ部23と、FFT(Fast Fourier Transform)部24と、ピーク検出部25とを備える。制御装置10は、D−A変換器26と、A−D変換器27と、投波器ドライバ41と、ゲイン調整器52とを備える。制御装置10の各構成部の機能は、1つのプロセッサで実行されてよい。制御装置10の各構成部の機能は、複数のプロセッサで適宜分散して実行されてよい。制御装置10は、投波器40に接続される。制御装置10は、例えば、投波器ドライバ41を介して、投波器40に接続される。制御装置10は、受波器50に接続される。制御装置10は、例えば、ゲイン調整器52を介して、受波器50に接続される。制御装置10は、記憶装置60に接続される。制御装置10の各構成部は、適宜記憶装置60に接続される。
パターン生成部11は、投波器40から送信信号を送信するパターンを生成する。送信信号を送信するパターンは、信号送信パターンともいう。パターン生成部11は、生成した信号送信パターンを記憶装置60に格納する。信号送信パターンは、所定の期間内に設けられる複数の区間において、どの区間で信号を送信するかを示す。複数の区間のそれぞれは、フレームともいう。信号送信パターンは、例えば図4に示されるように、フレーム番号に対応づけられるフレームの系列を含む。実線で示される矩形は、信号を送信するフレームを示す。破線で示される矩形は、信号を送信しないフレームを示す。信号を送信するフレームは、送信フレームともいう。信号を送信しないフレームは、非送信フレームともいう。図4に示される例において、フレーム番号1、4及びMに対応づけられるフレームにおいて、信号が送信される。フレームは、所定の間隔で設定される時刻に対応づけられてよい。フレームの長さは、所定の時間であってよい。各フレームは、所定の期間内で連続して設けられてよい。各フレームは、所定の期間内で離散的に設けられてよい。各フレームは、所定の間隔をあけて設けられてよい。
パターン生成部11は、ランダム関数から得られる系列に基づいて、信号送信パターンを生成してよい。ランダム関数は、例えば疑似ノイズパターンであってよい。疑似ノイズパターンは、PN(Pseude Noise)パターンともいう。ランダム関数は、PNパターンに限られない。ランダム関数は、乱数の系列を発生する種々の関数、配列又はパターンであってよい。
パターン生成部11は、ランダム関数に限られず、他の情報に基づいて信号送信パターンを生成してよい。パターン生成部11は、所定のパターン列に基づいて信号送信パターンを生成してよい。パターン生成部11は、所定の関数に基づいて信号送信パターンを生成してよい。
クロック生成部12は、制御装置10の各構成部の動作の基準となるクロック信号を生成する。クロック信号は、例えば一定の周期を有する方形波である。クロック生成部12は、信号生成部13と、タイミング信号生成部14とに接続される。クロック生成部12は、制御装置10の他の構成部に接続されてよい。
タイミング信号生成部14は、タイミング信号を生成する。タイミング信号は、記憶装置60に格納された信号送信パターンに対応するタイミングを示す信号である。タイミング信号生成部14は、例えば図4に示される信号送信パターンに基づいて、フレーム番号が1、4及びMであるフレームに対応する時刻に信号を発生する。タイミング信号は、例えばパルスであってよい。
情報取得部15は、外部からの情報を取得する。情報取得部15は、取得した情報を記憶装置60に格納する。情報取得部15は、GPS(Global Positioning System)受信器からクロックを取得してよい。情報取得部15は、GPS受信器から、1PPS(Pulse Per Second)信号を取得してよい。情報取得部15は、GPS受信器から位置情報又は方位情報を取得してよい。情報取得部15は、カーナビゲーションシステムから位置情報又は方位情報を取得してよい。情報取得部15は、ジャイロセンサから方位情報を取得してよい。情報取得部15は、外部のサーバから周囲の状態に係る情報等の種々の情報を取得してよい。
信号生成部13は、送信信号を生成する。送信信号は、例えば図5に示されるようなチャープ信号であってよい。チャープ信号は、時間の経過とともに周波数が連続的に変化する信号である。周波数が連続的に変化する信号は、周波数変調連続波ともいう。チャープ信号の周波数の変化は、増加又は減少であってよい。チャープ信号の周波数の変化は、単調増加又は単調減少であってよい。チャープ信号の周波数の変化は、増加と減少とを組み合わせたものであってよい。チャープ信号の周波数は、周期的に変化してよい。送信信号は、周波数が変調された信号であってよい。送信信号は、実部と虚部とを含む複素信号であってよい。送信信号は、チャープ信号であり、且つ、複素信号である、複素チャープ信号であってよい。
信号生成部13は、予め設定されたパターンに基づく周波数変化で、チャープ信号を生成してよい。信号生成部13は、ランダム関数から得られる系列に基づく周波数変化で、チャープ信号を生成してよい。
信号生成部13は、記憶装置60に格納された信号送信パターンと、タイミング信号とに基づくタイミングで、送信信号を生成してよい。本実施形態では、信号生成部13は、送信信号として、実部と虚部とを有する複素チャープ信号を生成すると仮定する。信号生成部13は、複素チャープ信号に限られず、複素信号でないチャープ信号、又は、他の種類の信号を生成してよい。
複素チャープ信号の実部は、R(Real Part)信号ともいう。複素チャープ信号の虚部は、I(Imaginary Part)信号ともいう。R信号は、信号生成部13から、D−A変換器26及びR信号乗算器17Rに送信信号として出力される。I信号は、信号生成部13から、I信号乗算器17Iに出力される。
D−A変換器26は、デジタル信号をアナログ信号に変換して、変換したアナログ信号を出力する。D−A変換器26は、デジタル信号として入力された送信信号をアナログ信号に変換して、投波器40に出力する。
投波器ドライバ41は、D−A変換器26から入力された送信信号を増幅し、投波器40に対して出力する。投波器ドライバ41は、送信信号をオフセットして、送信信号の瞬時値が0以上となるようにしてよい。
投波器40は、投波器ドライバ41から取得した送信信号に基づいて、測定波を射出する。投波器が近赤外線を含む光を射出する場合、発光素子の光は送信信号で振幅変調して射出されてよい。すなわち、測定波は周波数がチャープした信号で振幅変調された光となる。投波器40がミリ波帯等の電磁波、超音波等を射出する場合、測定波は信号生成部13で生成した送信信号と同様の波形を有することができる。すなわち、投波器40は、測定波そのものの周波数をチャープさせることができる。受波器50は、測定対象で反射された反射波を受信する。受波器50は、反射波に基づく受信信号をゲイン調整器52に出力する。
ゲイン調整器52は、受波器50から受信信号を取得する。ゲイン調整器52は、送信信号の振幅に基づいて、受信信号にゲインをかけ、A−D変換器27に出力する。ゲイン調整器52は、受信信号の振幅を送信信号の振幅に近づけてよい。ゲイン調整器52は、受信信号の振幅を送信信号の振幅と同一のレベル又は略同一のレベルにしてよい。ゲイン調整器52は、受信信号にかけたゲイン値を記憶装置60に格納してよい。
A−D変換器27は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。A−D変換器27は、アナログ信号として入力された受信信号をデジタル信号に変換して、複素変換部21に出力する。A−D変換器27は、タイミング信号生成部14に接続されてよい。A−D変換器27は、タイミング信号に応じたタイミングで動作してよい。このようにすることで、A−D変換器27での消費電力が低減されうる。A−D変換器27は、デジタル信号に変換した受信信号に係る情報を記憶装置60に格納してよい。
複素変換部21は、受信信号を複素変換する。受信信号は、R信号とI信号とを含む複素信号に変換される。複素変換部21は、R信号とI信号とをそれぞれ、R信号乗算器17RとI信号乗算器17Iとに出力する。複素信号は、例えば、ヒルベルト変換によって生成されてよい。ヒルベルト変換は、信号に対して、正の周波数成分の位相をπ/2遅らせ、負の周波数成分の位相をπ/2早めるという操作を行う。複素信号は、直交変換等の他の方法によって生成されてよい。
複素信号は、A−D変換器27でデジタル信号に変換される前の、アナログ信号としての受信信号から、90度位相差分波器によって生成されてよい。この場合、R信号とI信号とは、アナログ信号として生成され、それぞれA−D変換器27でデジタル信号に変換される。
R信号乗算器17Rは、信号生成部13から入力されるR信号と、複素変換部21から入力されるR信号とを乗算する。I信号乗算器17Iは、信号生成部13から入力されるI信号と、複素変換部21から入力されるI信号とを乗算する。R信号乗算器17R及びI信号乗算器17Iは、単に乗算器17ともいう。乗算器17は、信号の乗算で得られた信号をLPF部22に出力する。乗算器17は、混合器ともいう。
互いに異なる周波数を有する2つの信号が乗算される場合、三角関数の積和の公式に基づいて、各信号の周波数の和を周波数とする信号と、各信号の周波数の差を周波数とする信号とが生成される。本実施形態では、周波数(fa)を有する信号と、周波数(fb)を有する信号とが乗算されると仮定する。この場合、周波数(fa+fb)を有する信号と、周波数(fa−fb)を有する信号とが生成される。周波数(fa+fb)の信号は、和周波信号ともいう。周波数(fa−fb)の信号は、差周波信号ともいう。2つの信号が乗算されて得られる信号は、ビート信号ともいう。ビート信号は、比較的低周波数の差周波信号と、比較的高周波数の和周波信号とを含む。ビート信号は、例えば図6に示されるような波形で示される。
LPF部22は、ローパスフィルタを備える。ローパスフィルタは、例えば所定の周波数未満の信号を通過させ、所定の周波数以上の信号をカットする。本実施形態では、LPF部22は、和周波信号をカットし、差周波信号を通過させると仮定する。LPF部22は、ビート信号から和周波信号をカットして、差周波信号をノッチフィルタ部23に出力する。LPF部22は、複素信号が入力される場合、入力された信号の実部及び虚部それぞれについてフィルタ処理を行う。
ノッチフィルタ部23は、ノッチフィルタを備える。ノッチフィルタは、バンドストップフィルタともいう。ノッチフィルタは、信号から、狭帯域の周波数成分をカットする。ビート信号は、LPF部22からノッチフィルタ部23に入力される。ノッチフィルタ部23は、フィルタ処理する前にビート信号を記憶装置60に格納してよい。ノッチフィルタ部23は、記憶装置60からビート信号を取得してよい。
ノッチフィルタ部23は、カット対象となる周波数帯域に係る情報に基づいて、信号から所定の周波数成分をカットする。ノッチフィルタ部23は、カット対象となる周波数帯域に係る情報を記憶装置60から取得してよい。ノッチフィルタ部23は、ビート信号から、所定の周波数成分をカットした信号をFFT部24に出力する。ノッチフィルタ部23は、複素信号が入力される場合、入力された信号の実部及び虚部それぞれについてフィルタ処理を行う。
FFT部24は、入力された信号を、フーリエ変換によって周波数解析する。FFT部24は、デジタル信号として入力された信号を、離散フーリエ変換又は高速フーリエ変換等によって周波数解析してよい。
FFT部24は、複素信号が入力される場合、フーリエ変換によって複素数のフーリエ係数を算出する。この場合、各周波数に対応するフーリエ係数の絶対値は、信号の振幅スペクトルを表す。各周波数に対応するフーリエ係数の偏角は、信号の位相スペクトルを表す。FFT部24は、実信号が入力される場合、フーリエ変換によって実数のフーリエ係数を算出する。この場合、各周波数に対応するフーリエ係数は、信号の振幅スペクトルを表す。
FFT部24は、フーリエ変換によって算出した信号の振幅スペクトルを、ピーク検出部25に出力する。FFT部24は、信号の振幅スペクトルを記憶装置60に格納してよい。FFT部24は、信号送信パターンに送信フレームが複数設定されている場合、他の送信フレームで得られた信号の振幅スペクトルを記憶装置60から取得してよい。FFT部24は、各送信フレームで得られた信号の振幅スペクトルを積算して、記憶装置60に格納してよい。振幅スペクトルを積算して得られるスペクトルは、積算振幅スペクトルともいう。
ピーク検出部25は、信号の振幅スペクトルに基づいて、信号のピーク周波数を検出する。ピーク検出部25は、信号の振幅スペクトルをFFT部24から取得してよい。ピーク検出部25は、信号の振幅スペクトルを記憶装置60から取得してよい。例えば図7に示される振幅スペクトルで表される信号からは、ピーク周波数としてfpが検出されうる。図7において、横軸及び縦軸はそれぞれ、周波数及び振幅を示す。ピーク検出部25は、検出したピーク周波数を記憶装置60に格納してよい。ピーク検出部25は、振幅が最大値となっている周波数をピーク周波数として検出してよい。ピーク検出部25は、振幅が極大値となっている周波数のうち、最も低い周波数をピーク周波数として検出してよい。
ピーク検出部25は、積算振幅スペクトルを記憶装置60から取得してよい。ピーク検出部25は、積算振幅スペクトルに基づいて、信号のピーク周波数を検出してよい。
距離算出部16は、ピーク検出部25で検出されたピーク周波数に基づいて、測定対象までの距離を算出する。距離算出部16は、制御装置10の内部における信号遅延を考慮して、測定対象までの距離を算出してよい。距離算出部16は、ピーク周波数における振幅に基づいて、測定対象からの距離を算出してよい。ピーク周波数における振幅は、ピーク振幅ともいう。距離算出部16は、ピーク振幅が所定の振幅以上である場合に、ピーク振幅に応じて、測定対象からの距離を算出してよい。距離算出部16は、ピーク振幅が所定の振幅未満である場合に、測定対象からの距離を算出しないようにしてよい。このようにすることで、測定対象が誤って検出されにくくなる。距離算出部16は、積算振幅スペクトルから検出されたピーク周波数に基づいて、測定対象までの距離を算出してよい。このようにすることで、測距結果が、受信信号に突発的に含まれうるノイズ成分の影響を受けにくくなる。
<1.2 測距方法の例>
測距装置1は、例えば図8に示されるフローチャートの処理を各構成部に実行させることによって、測定対象までの距離を測定する。図8では、測定波を光とした場合を例示している。
制御装置10は、パターン生成部11で、送信パターンを生成する(ステップS1)。パターン生成部11は、送信パターンを記憶装置60に格納する。ステップS1のより具体的な処理は、後述する図16及び図22に例示される。しかし、ステップS1の処理はこれらに限られない。
制御装置10は、信号生成部13で、送信信号を生成する(ステップS2)。本実施形態では、送信信号は、R信号とI信号とを有する複素チャープ信号であると仮定する。信号生成部13は、タイミング信号生成部14から入力されるタイミング信号で示されるタイミングで送信信号を出力する。R信号は、D−A変換器26と乗算器17とに出力される。R信号は、D−A変換器26でアナログ信号に変換される。I信号は、乗算器17に出力される。
投波器40は、投波器ドライバ41を介して入力される送信信号に応じて振幅変調した光を、対象空間に対して射出する(ステップS3)。
受波器50は、測定対象で反射された光を受光する(ステップS4)。受波器50は、受光した光の強度に応じた電圧又は電流の信号を受信信号として出力する。ゲイン調整器52は、受信信号にゲインをかける。A−D変換器27は、タイミング信号生成部14から入力されるタイミング信号で示されるタイミングで受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してよい。複素変換部21は、実数信号としての受信信号を、複素信号に変換する。
制御装置10は、乗算器17で、信号生成部13から入力されるR信号及びI信号と、複素変換部21から入力されるR信号及びI信号とをそれぞれ乗算して、ビート信号を生成する。制御装置10は、LPF部22で、ビート信号のうち所定の周波数以下の信号成分を通過させ、差周波信号を生成する(ステップS5)。
制御装置10は、FFT部24で、差周波信号をフーリエ変換して、周波数解析する(ステップS6)。ピーク検出部25は、差周波信号の周波数スペクトルに基づいて、差周波信号のピーク周波数を検出する。ピーク検出部25は、差周波信号のピーク周波数を記憶装置60に格納する。
制御装置10は、距離算出部16で、差周波信号のピーク周波数に基づいて、測定対象からの距離を算出する(ステップS7)。制御装置10は、図8のフローチャートの処理を終了する。
<1.3 複数の測定対象がある場合>
送信信号が複数の測定対象で反射される場合、差周波信号は、各測定対象からの距離に係る情報を含む。この場合、差周波信号の周波数スペクトルは、複数のピーク周波数を含みうる。本実施形態に係る測距装置1は、図9に示されるフローチャートの処理を各構成部に実行させることによって、各測定対象までの距離をそれぞれ算出しうる。
制御装置10は、LPF部22から出力された差周波信号を記憶装置60に格納する(ステップS11)。LPF部22から出力された差周波信号は、第1の差周波信号ともいう。
制御装置10は、FFT部24によって、第1の差周波信号をフーリエ変換する(ステップS12)。フーリエ変換によって、第1の差周波信号の周波数スペクトルが算出される。
制御装置10は、ピーク検出部25によって、第1の差周波信号のピーク周波数を検出する(ステップS13)。第1の差周波信号のピーク周波数は、第1の周波数ともいう。図11に例示される周波数スペクトルにおいて、f1が第1周波数として検出されうる。
制御装置10は、ピーク振幅が所定の振幅以上であるか判定する(ステップS14)。制御装置10は、ピーク振幅が所定の振幅以上でない場合(ステップS14:NO)、図9のフローチャートの処理を終了する。制御装置10は、ピーク振幅が所定の振幅以上である場合(ステップS14:YES)、ノッチフィルタ処理を行う(ステップS15)。
ノッチフィルタ処理は、図10に示される手順で実行される。制御装置10は、ピーク周波数に基づいて、ノッチフィルタ処理の対象とするカット帯域を決定する(ステップS101)。制御装置10は、ピーク周波数を含むカット帯域を決定してよい。制御装置10は、ピーク周波数を中心として所定の周波数の幅を有するカット帯域を決定してよい。
制御装置10は、ノッチフィルタ部23によって、第1の差周波信号に対して、カット帯域の周波数成分をカットするフィルタ処理を実行する(ステップS102)。第1の差周波信号からカット帯域の周波数成分をカットして得られた信号は、仮信号ともいう。
制御装置10は、FFT部24によって、仮信号をフーリエ変換する(ステップS103)。フーリエ変換によって、仮信号の周波数スペクトルが算出される。
制御装置10は、ピーク検出部25によって、仮信号のピーク周波数を検出する(ステップS104)。制御装置10は、第1の差周波信号のピーク周波数を検出した場合と同じ条件で、仮信号のピーク周波数を検出する。仮信号の周波数スペクトルが図12に例示されるような周波数スペクトルである場合、f2が仮信号のピーク周波数でありうる。
制御装置10は、仮信号のピーク周波数が第1の差周波信号のピーク周波数から所定値以上変化したか判定する(ステップS105)。
制御装置10は、仮信号のピーク周波数が第1の差周波信号のピーク周波数から所定値以上変化していない場合(ステップS105:NO)、カット帯域を変更する(ステップS106)。所定値は、適宜定められうる。制御装置10は、カット帯域を低周波側又は高周波側にシフトさせてよい。制御装置10は、カット帯域を広く又は狭くしてよい。制御装置10は、ステップS102に戻る。
制御装置10は、仮信号のピーク周波数が第1の差周波信号のピーク周波数から所定値以上変化した場合(ステップS105:YES)、仮信号を第2の差周波信号として、記憶装置60に格納する(ステップS107)。
制御装置10は、第1の周波数を記憶装置60に格納する(ステップS108)。制御装置10は、カット帯域を変更していない場合、第1の差周波信号のピーク周波数として得られた第1の周波数をそのまま記憶装置60に格納する。制御装置10は、カット帯域を変更した場合、変更したカット帯域に応じて第1の周波数を変更し、記憶装置60に格納する。制御装置10は、変更したカット帯域の中心の周波数を第1の周波数としてよい。制御装置10は、図10のフローチャートの処理を終了する。
図9のフローチャートに戻って、制御装置10は、第2の差周波信号をフーリエ変換する(ステップS12)。制御装置10は、第2の差周波信号に対して、ステップS12〜ステップS15の処理を実行する。この場合、ステップS15では、第2の差周波信号に対してノッチフィルタ処理が実行される。第2の差周波信号に対する処理によって、第3の差周波信号が生成されうる。第2の差周波信号に対する処理によって、第2の差周波信号のピーク周波数が第2の周波数として決定されうる。
図9のフローチャートの処理は、差周波信号の周波数スペクトルから検出されるピーク振幅が所定の振幅未満となるまで続けられる。このようにすることで、測定対象が複数存在しうる場合に、各測定対象までの距離を精度よく測定しうる。所定の振幅は、測定対象を誤って検出する可能性が高くなるピーク振幅として設定されてよい。
<1.4 ランダム関数により信号送信パターンを生成する場合>
複数の実施形態の1つにおいて、パターン生成部11は、所定の長さの周期ごとに、ランダム関数に基づいて決定されるタイミングで測定波を射出させるように信号送信パターンを生成する。決定されるタイミングは、図4におけるフレームの信号を発生させる時刻に対応する。したがって、パターン生成部11は、ランダム関数を用いて、使用するフレームのフレーム番号を選択しているともいえる。パターン生成部11は、生成した信号送信パターンを記憶装置60に記憶する。タイミング信号生成部14は、この信号送信パターンに基づいてタイミング信号を生成する。さらに、信号生成部13は、このタイミング信号に基づいて送信信号を生成する。したがって、ランダム関数に基づいて決定されるタイミングで、測定波を射出するように、送信信号が生成される。
パターン生成部11は、ランダム関数のシードを、測距装置1に固有の値に基づいて生成することができる。ランダム関数のシードとは、ランダム関数の一連の疑似乱数系列における乱数を読み出す開始点である。装置固有の値には、装置の製造番号を含むことができる。また、パターン生成部11は、ランダム関数のシードを、測距装置1が搭載された車両2に固有の値から生成することもできる。車両2に固有な値としては、車体番号、車両登録番号等を用いることができる。また、パターン生成部11は、情報取得部15を介して、車両2のECU(Electronic Control Unit)、車両2に搭載されたGPS受信機等から、車両2の走行情報及び/又は車両2の位置情報等を取得してよい。パターン生成部11は、これらの値の少なくとも一つに基づいてランダム関数のシードを生成してよい。車両2の走行情報は、車速、リバース(後退信号)、シフトポジション、エンジン回転数を含む。車両2の位置情報には、GPS信号そのもの、緯度、経度、高度、方位等を含む。ランダム関数のシードには、上記の各値をそのまま使用してよい。又は、ランダム関数のシードは、上記の各値から算出してよい。
図13に示すように、従来の方法による測距装置では、測距は固定のフレーム間隔t0で行われる。仮に、対向車に同じ測距方式を採用する測距装置が搭載されている場合、対向車からの測定波が、自車の送信フレームと少なくとも部分的に重複して、自車の受波器50により受信されうる。その場合、自車の受信すべき反射波と対向車からの測定波とが干渉しうる。本願において、干渉とは、受波器において、異なる測定装置からの測定波が、自装置が測定対象とする反射波と時間的に重なって、正常な測定が妨害されることを意味する。自車と対向車とが同じフレーム間隔t0で測距を行っている場合、対向車からの複数の測定波が連続して干渉を生じる虞がある。その場合、測距装置1は、正常な測距ができなくなりうる。
複数の実施形態の1つに係る測距装置1では、図14に示すように測定波がランダムに射出される。すなわち、投波器40が、1周期(T)の間に、ランダム関数に基づいて決定された複数のフレームn1,n2,n3,n4で測定波を射出する。ここで、n1,n2,n3,n4はフレーム番号を表す。また、フレームn1,n2,n3,n4は、信号を送信する送信フレームである。測距装置1は、このパターンで測定波の射出を繰り返す。一例として、FMCW方式において、1フレームの長さ(Δt)を100μs(マイクロ秒)、1周期(T)を100ms(ミリ秒)とし、1周期(T)を1フレームの長さ(Δt)で分割すると、1000回の測定波の送信機会がある。パターン生成部11は、この1000回の送信機会から、測定波を射出するために、ランダムに複数のタイミングを選択する。1周期の送信機会は1000回に限られず、フレームの長さ(Δt)及び1周期(T)の長さを変えて、5000回や10000回等、種々の回数とすることが可能である。以下では、1周期(T)の中で測定に使用されるフレームを4つとして説明する。なお、1周期(T)の測定に使用されるフレームは4つに限られない。
自車及び対向車に搭載された測距装置1が、ともにランダムなタイミングで測定を行う場合、図14に示すように、互いの測定波は連続的に干渉し難くなる。仮に、1周期(T)の間に1フレームの測定波が干渉を生じたとしても、他のフレームは干渉を生じない可能性が高くなる。図14に示すように、1周期(T)に4つの測定フレームがある場合、仮に、1つのフレームが干渉を生じても、他の3つのフレームでの測定が可能となる。これにより、連続的に測距が不能になることを防止しうる。
さらに、パターン生成部11は、投波器40が測定波の射出を行っていないとき、ランダム関数で決定されたタイミングで受波器50から受信されるノイズの大きさに基づいて、投波器40に測定波を射出させる態様を変化させることができる。投波器40が測定波の射出を行っていないときとは、測距装置1の起動時、及び、測距装置1の稼働中に定期的に設ける測距を行わない期間等を含む。投波器40が測定波の射出を行っていないときとは、測距装置1が測距を行っていないときということができる。ランダム関数で決定されたタイミングとは、1周期の中で、測距時において測距が行われる予定のタイミングである。測距を行う予定のタイミングの組合せを送信予定パターンとよぶ。また、ランダム関数で決定されたタイミングは、測距時において測定を行う予定の各送信フレームに対応する。このフレームを送信予定フレームとよぶ。
測距を行っていないとき、受波器50で受信したノイズは、ゲイン調整器52を介してA−D変換器27でデジタル信号に変換され、時間情報とともに記憶装置60に一時的に記憶される。測距装置1が測距を行っていないとき、ゲイン調整器52はノイズを増幅しなくてもよく、所定の倍率でのみ増幅してよい。ゲイン調整器52は、ノイズのゲイン調整をしてもよい。この場合、パターン生成部11は、ゲイン調整器52から記憶装置60に出力されるゲインの値を反映して、以下に説明する閾値との比較を行う。パターン生成部11は、記憶装置60に記憶された、ノイズの強度とその発生時間を取得できる。したがって、パターン生成部11は、各送信予定フレームに対するノイズの大きさを識別できる。
測定波を射出させる態様を変化させるとは、測距が行われる予定の複数のタイミングに、他のタイミングを追加することを含む。すなわち、パターン生成部11は、ランダム関数で決定されたタイミングに対応する各フレームで受信されるノイズが、所定の閾値を上回る場合、ランダム関数で設定された複数の送信予定フレームに加え、送信予定フレームとして他のフレームを加える。所定の閾値は、例えば、測距を行う際の測定波の反射波を検出することが可能か否かに基づいて決定される値である。
図15に具体例を示す。1周期の間に4つの送信予定フレームn1,n2,n3,n4あると仮定する。ここで、n1〜n4は、図4を用いて説明したフレーム番号である。パターン生成部11は、受信したノイズの中に送信予定フレームと干渉するものがある場合、送信予定フレーム数を増加させる。図15の例では、フレームn2及びn3が受信ノイズと干渉する。したがって、パターン生成部11は、上述のランダム関数とは別のランダム関数を用いて、或いは、同じランダム関数に対して別のシードを用いて、さらに2つのフレームn5,n6を選択して追加する。フレームn5,n6の選定には、他の手段を用いてよい。これによって、フレームn1〜n6で測距を行い、フレームn2,フレームn3で測距ができなくても、4つのフレームn1,n4,n5,n6で正しい測距が可能になる。
測距可能なフレームを所定数に揃えることは、正確な測距を行うために有用である。例えば、図8のステップS6において、ピーク検出部25は、1周期中に所定数の送信フレームで得られた信号の振幅スペクトルを積算した積算振幅スペクトルから、信号のピーク周波数を検出しうる。この場合、測距を継続的に安定して行うためには、所定数の測定可能な送信フレームが必要となる。あるいは、図8のステップS6において、ピーク検出部25は差周波信号のピークが所定の閾値を超えた場合に、距離の算出を行う対象とすることができる。ピーク検出部25は、1周期の所定数のフレームに渡り測距が可能だった場合に、測定された距離の平均値をとるなどの処置を行い、距離を算出するようにしてよい。このような場合も、測距が可能なフレームを所定数に維持することにより、正確な測距を継続して行うことが期待できる。
また、測定波を射出させる態様を変化させるとは、投波器40の射出する測定波の周波数を追加又は切換えさせることを含む。この場合、投波器40は、投光器とし、互いに異なる波長の光を射出可能な複数の発光素子を備えてよい。また、受波器50は、投波器40の発光素子の波長に対応して、反射波を複数の波長に分解して波長ごとに検出可能とすることができる。さらに、パターン生成部11が生成する信号送信パターンには、使用する発光素子情報を含む。受波器50は、測距装置1が測距を行わないとき、受波器50から取得したノイズを投波器40の発光素子の波長ごとに分解して、その大きさを記憶装置60に記憶する。ランダム関数で決定された各送信予定フレームで受信されるノイズが、所定の閾値を上回る場合、パターン生成部11は、測定波を発する発光素子を、投波器40が有する異なる波長のものに切り替えてよい。あるいは、パターン生成部11は、異なる波長の発光素子を追加して発光させてよい。
次に、図16を用いて、一実施形態に係るパターン生成部11によるランダム関数を用いた送信パターン生成処理を説明する。図16のフロー図は、図8のフロー図のステップS1の処理に相当する。また、本送信パターン生成処理は、パルス方式の測距装置に適用してよい。その場合、図16のフロー図は、後述する図22のフロー図のステップS11の処理に相当する。
ステップS201において、パターン生成部11は、ランダム関数を用いて測距を行う複数のタイミングを送信予定パターンとして生成する。言い換えれば、パターン生成部11は、送信予定フレームのパターンを、ランダムな時間間隔となるように生成する(ステップS201)。
次に、測距を行っていないとき、受波器50が、ノイズを受信しノイズの大きさを時間とともに記憶装置60に記憶する。パターン生成部11は、記憶装置60に記憶されたノイズの大きさと時間とから、送信予定フレームで他装置との間で干渉が生じるか否かを判定する(ステップS202)。
パターン生成部11は、送信予定フレームで検出されたノイズが、所定の閾値より高い場合、ステップS204の処理に進む。また、ノイズが所定の閾値よりも高くはない場合、ステップS205の処理に進む(ステップS203)。
ノイズの大きさが、所定の閾値より高い場合、パターン生成部11は、ステップS201で選択した複数の送信予定フレームに加え、送信予定フレームとして他のタイミングのフレームを追加する(ステップS204)。他のタイミングは、ランダム関数により生成されてよい。また、代替的に又は付加的に、パターン生成部11は、測定波の波長を切り替え、又は、異なる波長の測定波を追加してよい。
パターン生成部11は、ステップS203でNoのとき、送信予定パターンに従って、信号送信パターンを生成する。また、パターン生成部11は、ステップS203でYesであった場合、ステップS204に基づく変更を加えて、信号送信パターンを生成する(ステップS205)。
なお、複数の実施形態の1つにおいて、投波器40が複数設けられている場合、ランダム関数により選択された複数のタイミングのそれぞれごとに、各投波器40から順次測定波を射出させることができる。例えば、図17に示すように、4つの投波器40−1〜40−4が設けられている場合、連続するフレームで、各投波器40−1〜40−4から順次測定波を射出させることができる。図中の破線は時間軸上で一連の測定が行われる期間を示す。例えば、投波器40−1が、フレームn1で測定波を射出するとする。次に、投波器40−2,40−3,40−4はそれぞれ、フレームn1+1,n1+2,n1+3で測定波を射出する。破線で囲まれた期間は、一連の測定を行う期間に対応し、時間軸上にランダムに配置される。この一連の測定を行う期間をフレーム群と呼んでよい。この場合、パターン生成部11は、1周期(T)をフレーム群の長さで分割し、信号を送信するフレーム群を時間軸上にランダムに配置するように、フレーム送信信号を生成してよい。このように、複数の投波器による順次の測定を、1周期(T)の中でランダムに配置することにより、投波器が1台の場合と同様に他装置との干渉の影響を抑制して、正確な測距を継続して行うことができる。
<1.5 複数の投波器がある場合>
複数の実施形態の1つにおいて、測距装置1は、図18に示すように、複数の投波器群40−1G〜40−NGを備える。各投波器群40−kG(k=1〜N)は、投波器40−ka,40−kb,40−kcを含んで構成される。図18に示す例では、投波器群40−kGは3つ投波器を含むが、これに限らず、任意の個数の投波器を含むことができる。以降の説明において、各投波器群40−kGを構成する投波器40−ka,40−kb,40−kcのうち任意の投波器を40−kxとして説明する。
各投波器40−kxは、発光ダイオード等の指向性の高い光を測定波として射出する発光素子を含む。投波器40−kxは、該投波器40−kxから測定波が射出される範囲の水平方向の角度θ1〜θ3(図19(a)参照)が、受波器50−kが反射波を受信可能な角度θ4(図19(b)参照)より狭い。各投波器40−kxから測定波が射出される範囲の水平方向の角度θ1〜θ3は、測定対象の大きさに伴い、適宜設計され、測定の対象とする測定対象が小さく、より高い方位分解能が求められるほど、小さくなるように定められる。各投波器40−kxから測定波が射出される範囲の鉛直方向の角度θ5(図19(c)参照)は、水平方向の角度θ1〜θ3と同程度とする。「同程度」とは、角度θ5が完全に角度θ1〜θ3と同一であることを含むだけでなく、角度θ5が角度θ4より小さいことを含む。角度θ5が、測定対象の大きさに伴い決定される角度θ4より大きくないことによって、太陽光によるノイズを低減させることができる。
投波器40−kxは、該投波器40−kxの測定波の最大出力を与える方向が水平方向よりも上側を向くのがよい。具体的には、投波器40−kxは、測定対象が存在すると想定される距離範囲内において地面に対して測定波を射出しない角度範囲となるように配置されればよい。投波器40−kxが投光器の場合は、光軸が水平方向より上側を向くようにしてよい。
各投波器群40−kGは、車両2−1〜2−3(以下適宜車両2とする)の異なる位置に配置され、車両2の外側に向けて、水平方向に互いに異なる範囲に測定波を射出する。各投波器群40−kGは、それぞれ該車両2の異なる位置に、それぞれ異なる範囲に測定波を射出するように配置される。例えば、図18に示すように、車両2の前側面の左側に前方向に測定波を射出する投波器群40−1Gが配置され、車両2の前側面の右側には前方向に測定波を射出する投波器群40−2Gが配置される。車両2の後側面の右側には後方向に測定波を射出する投波器群40−3Gが配置され、車両2の後側面の左側には後方向に測定波を射出する投波器群40−4Gが配置されてもよい。
図18に示す例においては、車両2の4箇所に投波器群40−1G〜40−4Gが配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、車両2の前側面及び後側面の中央に投波器群40−kGが配置されてもよいし、車両2の右側面及び左側面に該車両2のそれぞれ右方向、左方向に測定波を射出する投波器群40−kGが配置されてもよい。
ここで、投波器40−kxが射出する測定波の角度範囲について説明する。投波器群40−kGを構成する複数の投波器40−ka,40−kb,40kcは、互いに略隣接して配置され、水平方向に異なる角度範囲に測定波を射出する。
具体的には、投波器40−1bは、進行方向を中心に、所定の角度範囲(第1角度範囲)に測定波を射出する。投波器40−1aは、第1角度範囲の水平方向左端から左方向に広がる第2角度範囲に測定波を射出する。投波器40−1cは、第1角度範囲の水平方向右端から右方向に広がる第3角度範囲に測定波を射出する。第1角度範囲の大きさ(角度θ1)、第2角度範囲の大きさ(角度θ2)、第3角度範囲の大きさ(角度θ3)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、角度θ1、角度θ2、角度θ3のうちのいずれか2つが同一であってもよい。投波器群40−2G,40−3G,40−4Gについても同様である。また、図18に示す例では、投波器40−1a,40−2a,40−3a,40−4aそれぞれの角度θ1は同一であってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。投波器40−kb,40−kcについても同様である。
上述においては、投波器40−1aは、第1角度範囲の水平方向左端から左方向に広がる第2角度範囲に測定波を射出するとしたが、この限りではない。例えば、第1角度範囲と第2角度範囲との間に測定波が射出されない範囲があってもよいし、第1角度範囲と第2角度範囲とが部分的に重なっていてもよい。第1角度範囲と第3角度範囲とについても同様である。
測距装置1が複数の投波器群40−1G〜40−NGを含む場合、パターン生成部11は、各投波器群40−kGにそれぞれ測定波を射出させる送信信号を送信するための、フレーム群を含む信号送信パターンを生成する。
具体的には、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として、順次、投波器群40−kGから測定波を射出させるように信号送信パターンを生成する。この送信信号パターンは、投波器群40−kGごとに異なって定められた所定の経過時間後に、測定波が射出されるように生成される。そのため、各投波器群40−kGに係る信号送信パターンは、投波器群40−1Gが測定波を射出しているタイミングでは、他の投波器群40−2G〜40−NGが測定波を射出しないように生成される。このとき、パターン生成部11は、情報取得部15によって取得されたクロックを基準タイミングとしたフレーム群を含む信号送信パターンを生成してよい。
一例では、パターン生成部11は、外側面に配置されている投波器群40−1G〜40−NGが、所定の経過時間で順次射出するよう、各投波器群40−kGに対応した信号送信パターンを生成する。その際、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として、車両2の中心から見て基準方向から時計回りに測定波を射出するよう信号送信パターンを生成してよい。各投波器群40−1G〜40−NGが測定波を射出する順はこれに限られない。例えば、基準方向に位置する外側面から反時計回りで順に配置されている投波器群40−NG〜40−1Gが順に測定波を射出してよい。また、例えば、基準方向に位置する外側面から最も近い投波器群40−kGが測定波を射出し、次に、基準方向に位置する外側面から最も遠い投波器40−kGが測定波を射出するとしてよい。
図20に示すタイミングチャートの例を用いて、パターン生成部11が信号送信パターンを生成する方法について具体的に説明する。この例においては、パターン生成部11が取得した基準方向は車両2の前方を向く方向である。この場合、図20(a)に示すように、タイミング信号生成部14及び情報取得部15が車両2のGPS受信機からt=0で1PPS信号を受信する。タイミング信号生成部14は、1PPS信号に基づいてタイミング信号を生成させる。パターン生成部11は、1PPS信号の信号タイミングを基準タイミングとする信号送信パターンを生成する。パターン生成部11は、図20(b)に示すように、投波器群40−2Gに係る信号送信パターンを生成する。すなわち、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として時間t1経過後に、基準方向から時計回りで最初に位置する投波器群40−2Gが測定波を射出し、その後、周期Tの間隔で測定波を射出する。また、パターン生成部11は、図20(c)に示すようなタイミングで測定波が射出されるように、投波器群40−3Gに係る信号送信パターンを生成する。すなわち、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として時間t2(t1<t2<T)経過後に、基準方向から時計回りで次に位置する投波器群40−3Gが測定波を射出し、その後、周期Tの間隔で測定波を射出する。さらに、パターン生成部11は、図20(d)に示すようなタイミングで測定波が射出されるように、投波器群40−4Gに係る信号送信パターンを生成する。すなわち、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として時間t3(t2<t3<T)経過後に、基準方向から時計回りで次に位置する投波器群40−4Gが測定波を射出し、その後、周期Tの間隔で測定波を射出する。同様にして、パターン生成部11は、図20(e)に示すようなタイミングで測定波が射出されるように、投波器群40−1Gに係る信号送信パターンを生成する。すなわち、パターン生成部11は、基準タイミングを起点として時間t4(t3<t4<T)経過後に、基準方向から時計回りで最後に位置する投波器群40−1Gが測定波を射出し、その後、周期Tの間隔で測定波を射出する。
上述のように、各投波器群40−kGがそれぞれ複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcを含む場合、パターン生成部11はフレーム群を含む信号送信パターンを生成する。信号送信パターンのフレーム群には、各投波器群40−kGにそれぞれ含まれる複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcが順に測定波を射出するような複数のフレームが含まれる。すなわち、パターン生成部11は、複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcによる測定が時間的に重複しないような、複数のフレームを含む信号送信パターンを生成する。
具体的には、図21(a)に示すように、情報取得部15及びタイミング信号生成部14が、GPSからt=0で1PPS信号を受信する。パターン生成部11は、図21(b)に示すように、フレーム群を含む信号送信パターンを生成する。このフレーム群は、基準タイミングを起点として、時間t1〜t11の経過時間に投波器40−2aが測定波を射出するようなフレームを有する。また、フレーム群は、時間t12〜t13の経過時間に投波器40−2bが測定波を射出するようなフレームを有する。フレーム群は、時間t14〜t15の経過時間に投波器40−2cが測定波を射出するようなフレームを有する。
また、パターン生成部11は、図21(c)に示すように、フレーム群を含む信号送信パターンを生成する。このフレーム群は、基準タイミングを起点として時間t2〜t21までの経過時間に投波器40−3aが測定波を射出するようなフレームを有する。また、フレーム群は、時間t22〜t23の経過時間に投波器40−3bが測定波を射出するようなフレームを有する。フレーム群は、時間t24〜t25の経過時間に、投波器40−3cが測定波を射出するようなフレームを有する。パターン生成部11は、図4(d)及び(e)に示すように、投波器群40−4,40−1についても同様にして信号送信パターンを生成する。
各受波器50−kは、対応する投波器群40−kGから射出された測定波が測定対象に反射して得られる反射波を受信可能に構成される。具体的には、受波器50−kは、投波器群40−kGを構成する投波器40−ka,40−kb,40−kcから射出された測定波が測定対象に反射して得られる反射波を受信可能に構成される。
受波器50−kが受信可能な反射波の水平方向の角度θ4(図19(b)参照)は、対応する投波器群40−kGに含まれる投波器40−ka,40−kb,40−kcが射出する測定波の水平方向の角度θ1〜θ3より大きい。これにより、受波器50−kは投波器40−ka,40−kb,40−kcのいずれから送信された測定波の反射波も受信することができる。また、受波器50−kが受信可能な反射波の鉛直方向の角度θ6(図19(d)参照)は、投波器40−kが射出する測定波の鉛直方向の角度θ5(図19(c)参照)と同程度としてよい。「同程度」とは、完全に同一であることを含むだけでなく、受波器50−kの水平方向の角度範囲より小さい範囲を含む。これにより、受波器50−kは、太陽光によるノイズを低減することができる。
また、受波器50−kは、該受波器50−kの最大感度を与える方向は水平方向よりも下側を向くように設置されるのがよい。あるいは、受波器50−kの受信可能な鉛直方向の角度範囲は、測定対象が存在すると想定される距離範囲において、車両2の車体と同程度の高さの測定対象からの反射波を受信できる角度であり、受波器50−kが取り付けられる位置等に基づいて適宜設定される。
車両2のうち第2車両2−2は、第1車両2−1が搭載している上述の測距装置1と同様の測距装置1を搭載し、第1車両2−1の前方を走行している。第2車両2−2に配置されている投波器群40−1G〜40−NGは、GPSの1PPS信号を基準タイミングとして、基準方向に基づいて、順次、測定波を射出する。すなわち、第2車両2−2の各投波器群40−1G〜40−NGは、第1車両2−1の同じ位置にそれぞれ配置されている投波器群40−1G〜40−NGと同じタイミングで、それぞれの車体からみて同じ方向に測定波を射出する。図18に示す例では、第1車両2−1の投波器群40−1Gから測定波が射出されるタイミングで、第2車両2−2の投波器群40−1Gから測定波が射出される。同様にして、第1車両2−1の投波器群40−2Gから測定波が射出されるタイミングで、第2車両2−2の投波器群40−2Gから測定波が射出される。投波器群40−3G及び40−4Gについても同様である。
そのため、第1車両2−1の測距装置1が、第2車両2−2の方向に測定波を射出するタイミングで、第2車両2−2の測距装置は第1車両2−1の方向に測定波を射出しない。また、第1車両2−1の測距装置1が、前方車の方向に測定波を射出しないタイミングで、第2車両2−2の測距装置が第1車両2−1の方向に測定波を射出する。これにより、第1車両2−1が射出した測定波が測定対象に反射して得られた反射波と、第2車両2−2の測距装置から第1車両2−1の方向に射出された測定波とを受波器50が同時に受信することはない。これによって、測距装置1が、第2車両2−2から射出された測定波を反射波であると誤認するのを防ぐことができる。したがって、測距装置1は、測定波と、該測定波の反射波に基づいて距離を正確に測定することができる。
第3車両2−3は、第1車両2−1が搭載している上述の測距装置1と同様の測距装置1を搭載し、第1車両2−1に対向して走行する。第3車両2−3に配置されている投波器群40−1〜40−Nは、第1車両2−1の同じ位置に配置されている投波器群40−1G〜40−NGと、GPSの1PPS信号を基準クロックとした同じタイミングで同じ方向に測定波を射出する。図18に示す例では、第1車両2−1の投波器群40−1Gから測定波が射出されるタイミングで、第3車両2−3の投波器群40−3Gから測定波が射出される。また、第1車両2−1の投波器群40−2Gから測定波が射出されるタイミングで、第3車両2−3の投波器群40−4Gから測定波が射出される。
そのため、第1車両2−1の測距装置1が、第3車両2−3の方向に測定波を射出するタイミングで、第3車両2−3の測距装置は第1車両2−1の方向に測定波を射出しない。また、第1車両2−1の測距装置1が、第3車両2−3の方向に測定波を射出しないタイミングで、第3車両2−3の測距装置1が第1車両2−1の方向に測定波を射出する。これにより、第1車両2−1の測距装置1が射出した測定波が測定対象に反射して得られた反射波と、第3車両2−3から第1車両2−1の方向に射出された測定波とを受波器50が受信することによる誤認を防ぐことができる。すなわち、測距装置1が、第3車両2−3の測距装置から射出された測定波を、自身の測定波に係る反射波であると誤認するのを防ぐことができる。したがって、測距装置1は、測定波と、該測定波の反射波に基づいて距離を正確に測定することができる。
測距装置1は、複数の投波器群40−1〜40−Nを備える場合、例えば図8に示されるフローチャートの処理を各構成部に実行させることによって、測定対象までの距離を測定する。
パターン生成部11は、信号送信パターンを生成する(ステップS1)。パターン生成部11は、信号送信パターンを記憶装置60に格納する。
測距装置1が複数の投波器群40−1〜40−Nを備える場合の、ステップS1の信号送信パターン生成について図22を参照して詳細に説明する。
情報取得部15は、車両2が備える方位センサから所定の基準方向を示す方位情報を取得する(ステップS301)。方位センサには、地磁気方位センサ、ジャイロセンサ、GPSコンパス等種々のセンサを用いることができる。
ステップS301で方位情報が取得されると、情報取得部15は、GPSから1PPS信号を取得する(ステップS302)。
ステップS301で方位情報が取得され、ステップS302で1PPS信号が取得されると、パターン生成部11は、基準方向に基づいて、投波器群40−kの測定波を射出する順を決定する(ステップS303)。例えば、パターン生成部11は、車両2の中心から基準方向に位置する外側面から時計回りで配置されている順に、投波器群40−kGが測定波を射出すると決定する。
ステップS303で投波器群40−kGが測定波を射出する順が決定されると、パターン生成部11は、基準タイミングから異なる所定時間の経過後に、順に射出するよう、各投波器群40−kGに対応した信号送信パターンを生成する(ステップS304)。このとき、パターン生成部11は、各投波器群40−kGを構成する投波器40−ka,40−kb,40−kcによる送信フレームが時間的に重複しないように信号送信パターンを生成する。
ステップS304で信号送信パターンが生成されると、図7に戻って、信号生成部13が信号送信パターンに基づいて、各投波器群40−kGに測定波を射出させるための送信信号を生成する(ステップS2)。
ステップS2で送信信号が生成されると、投波器群40−kGは、投波器ドライバ41を介して入力される送信信号に応じて振幅変調した測定波を、対象空間に対して射出する(ステップS3)。
ステップS3で測定波が射出された後、受波器50−kは、測定対象で反射された反射波を受信する(ステップS4)。具体的には、受波器50−kは、対応する投波器群40−kに含まれる投波器40−ka,40−kb,40−kcからそれぞれ射出され、測定対象に反射された反射波を受信する。
以降のステップS5〜S7については、上述の<測距の動作例>と同様である。
同様にして、複数の投波器群40−1G〜40−NGを有する測距装置1の構成は後述するパルス方式の測距装置に適用しうる。その場合、図24のステップS21に示される送信パターン生成の処理は、図22を用いて上述した送信パターン生成の処理と同様である。
測距装置1は、基準タイミングを起点として投波器群40−kGごとに異なって定められた所定の経過時間後に、他の測距装置と同期した基準方向に基づいて順次、投波器群40−kGから測定波を射出させる。これにより、投波器群40−kGに設定された各フレーム群において、測定波を射出する投波器群40−kGの配置された方向は各測距装置間で同方向となる。すなわち、測距装置1が他の測距装置の方向に測定波を射出するタイミングで、当該他の測距装置が測距装置1の方向に測定波を射出しない。これにより、自らが射出した測定波に係る反射波と、他の測距装置から射出された測定波とを、同じ送信フレームで受信することによって、他の測距装置から射出された測定波を自らの反射波であると誤認するのを防ぐことができる。したがって、測距装置1は、射出された測定波と、該測定波の反射波に基づいて距離を正確に測定することができる。
上述の実施形態では、投波器群40−kGにおいて、隣接して配置される複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcによる測定は時間的に重複しない。そのため、測距装置1は、受波器50によって受信した反射波が、隣接して配置された投波器40−kxのうちのいずれの投波器から射出された測定波が反射したものであるかを識別することができる。これにより、測距装置1は、射出された測定波と該測定波の反射波とを用いた距離の測定を正確に行うことができる。言いかえれば、測距装置1は、受波器50−kによって受信した測定波の混信を防ぐことができる。
上述の実施形態では、複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcは、異なる角度範囲に測定波を射出し、受波器50−kは、複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcから射出された測定波が測定対象に反射して得られる反射波を受信可能である。そのため、微小な測定対象までの測距を目的として指向性の高い光を射出するデバイスを用いた場合も、広い範囲にわたって存在する可能性のある測定対象を測距することができる。なお、微小な測定対象とは、測距装置からみて比較的狭い角度範囲を占める測定対象を意味する。比較的狭い角度範囲とは、例えば、水平方向に45度未満の範囲である。
上述の実施形態では、複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcによる送信フレームが異なり、測定が時間的に重複しない。そのため、測距装置1は、複数の投波器40−ka,40−kb,40−kcからそれぞれ射出される測定波及び反射波が干渉することを防ぐことができる。
上述の実施形態では、パターン生成部11は、情報取得部15がGPSから受信した1PPS信号の信号タイミングを基準タイミングとした。そして、パターン生成部11は、該基準タイミングを起点に、投波器群40−kGごとに異なって定められた所定の経過時間後に複数の投波器群40−1G〜40NGのそれぞれから測定波を射出させるよう信号送信パターンを生成した。しかし、本発明の実施形態は、これに限られない。例えば、パターン生成部11は、車両2に固有のクロックを基準タイミングとして、該基準タイミングを起点に、複数の投波器群40−1G〜40−NGのそれぞれから測定波を射出させるよう信号送信パターンを生成してもよい。第1車両2−1に固有のクロックは、第1車両2−1を一意に識別する識別番号ごとに製造時に予め決定されている。そのため、第1車両2−1のクロックは、第2車両2−1及び第3車両2−3のクロックとは異なるものである。
[2.パルス方式]
パルス方式は、対象空間に対して送信した信号と、測定対象から受信した信号との時間差に基づく方式である。測距装置1がパルス方式で測距を行う場合、測距装置1は、対象空間に対してパルス信号を送信する。測距装置1は、測定対象で反射されたパルス信号を受信する。測距装置1は、パルス信号を送信してからパルス信号を受信するまでの時間に基づいて、測定対象までの距離を算出しうる。
パルス方式は、例えば、単一パルスを送信する方式、又は、複数のパルスを含む信号を送信するパルス圧縮方式等を含む。以下、測距装置1がパルス圧縮方式で測距を行う場合について説明する。
パルス方式で測定される距離の分解能は、パルス幅に比例しうる。一方で、パルス幅を短くした場合、測定可能な距離が短くなりうる。パルス圧縮方式では、パルス幅の長いパルスが変調して送信されることによって、測定可能な距離が長くされうる。受信したパルスを圧縮することによって、距離分解能が小さくされうる。
<2.1 機能ブロック>
図23に示されるように、制御装置10は、パターン生成部11と、クロック生成部12と、信号生成部13と、タイミング信号生成部14とを備える。制御装置10は、情報取得部15と、距離算出部16とを備える。制御装置10は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ部31と、直交変調部32とを備える。制御装置10は、送信側FFT部33と、受信側FFT部34と、相関演算部54と、ノイズフィルタ部35と、サンプリング周波数変換部36と、逆FFT部37とを備える。制御装置10は、送信側コンパレータ38と、受信側コンパレータ39と、投波器ドライバ41と、センシングアンプ53とを備える。制御装置10は、投波器ドライバ41を介して、投波器40に接続される。制御装置10は、センシングアンプ53を介して、受波器50に接続される。制御装置10の各構成部は、記憶装置60に接続される。
パターン生成部11と、クロック生成部12と、タイミング信号生成部14と、情報取得部15とは、上述のFMCW方式と同様の構成であってよい。これらの説明は省略する。
信号生成部13は、記憶装置60に格納された信号送信パターンと、タイミング信号とに基づくタイミングで、送信信号を生成する。送信信号は、パルス信号であってよい。送信信号は、周波数変調をかけたパルス信号であってよい。送信信号は、時間とともに周波数が増加するチャープ・パルス信号であってよい。
FIRフィルタ部31は、入力された信号に対してFIRフィルタ処理を行う。FIRフィルタ処理は、時系列のデータ列の中の有限の区間のデータに基づいて、新たなデータ列を生成する処理であってよい。チャープ・パルス信号に対してFIRフィルタ処理が実行される場合、チャープ・パルス信号の周波数帯域が広げられうる。
直交変調部32は、入力された信号を直交変調する。直交変調は、IQ変調又は複素変調ともいう。直交変調は、例えば正弦波と余弦波等のように位相がπ/2だけずれている2つの信号をそれぞれ元の信号に乗算することによって、元の信号から直交する2つの信号を生成する方法である。正弦波と乗算されて生成される信号は、R信号となりうる。余弦波と乗算されて生成される信号は、I信号となりうる。言い換えれば、直交変調部32は、入力された信号を複素信号に変換しうる。R信号は、送信側コンパレータ38に送信信号として出力される。R信号は、送信側FFT部33に出力される。I信号は、送信側FFT部33に出力される。
送信側FFT部33は、入力された信号をフーリエ変換によって周波数スペクトルを算出する。送信側FFT部33は、上述のFMCW方式のFFT部24と同様の構成であってよい。直交変調部32から入力された信号から算出される周波数スペクトルは、実部と虚部とを有する。送信側FFT部33は、周波数スペクトルの実部及び虚部を相関演算部54に出力する。
送信側コンパレータ38は、コンパレータを備える。コンパレータは、入力された信号の2値化処理を行う。コンパレータは、例えば、所定の閾値以上の値の信号が入力された場合、所定の閾値より大きい第1の所定値を出力してよい。コンパレータは、例えば、所定の閾値未満の値の信号が入力された場合、所定の閾値より小さい第2の所定値を出力してよい。所定の閾値、並びに、第1の所定値及び第2の所定値は、適宜設定されうる。第1の所定値及び第2の所定値は、例えば、投波器ドライバ41が入力を受け付ける電圧又は電流の範囲に応じて設定されてよい。所定の閾値は、例えば、第1の所定値及び第2の所定値の中間値に近い値に設定されてよい。送信側コンパレータ38は、直交変調部32から入力された送信信号を2値化処理して、パルス信号を生成する。送信側コンパレータ38は、パルス信号を送信信号として投波器ドライバ41に出力する。
投波器ドライバ41は、送信側コンパレータ38から入力された送信信号を増幅し、投波器40に対して出力する。
投波器40は、投波器ドライバ41から取得した送信信号に基づいて、測定波を射出する。受波器50は、測定対象で反射された反射波を受信する。受波器50は、反射波に基づく受信信号をセンシングアンプ53に出力する。
センシングアンプ53は、受波器50から受信信号として電流信号を取得する。センシングアンプ53は、電流信号を電圧信号に変換する。センシングアンプ53は、受信側コンパレータ39における2値化処理の閾値に基づいて、電圧信号にゲインをかける。センシングアンプ53は、電圧信号にかけたゲイン値を記憶装置60に格納してよい。センシングアンプ53は、ゲイン調整した電圧信号を受信側コンパレータ39に出力する。センシングアンプ53は、タイミング信号生成部14に接続されてよい。センシングアンプ53は、タイミング信号に応じたタイミングで動作してよい。このようにすることで、センシングアンプ53での消費電力が低減されうる。
受信側コンパレータ39は、コンパレータを備える。コンパレータの説明は、省略する。受信側コンパレータ39は、センシングアンプ53から入力された電圧信号を2値化処理して、パルス信号を生成する。受信側コンパレータ39は、パルス信号を受信信号として受信側FFT部34に出力する。受信側コンパレータ39は、受信信号に係る情報を記憶装置60に格納してよい。
受信側FFT部34は、入力された信号をフーリエ変換によって周波数スペクトルを算出する。受信側FFT部34は、上述のFMCW方式のFFT部24又は本方式の送信側FFT部33と同様の構成であってよい。受信側コンパレータ39から入力された信号から算出される周波数スペクトルは、実部と虚部とを有する。受信側FFT部34は、周波数スペクトルの実部及び虚部を相関演算部54に出力する。
相関演算部54は、周波数スペクトルの相関結果を算出する。周波数スペクトルの相関結果は、入力された2つの周波数スペクトルに基づいて算出される。例えば第1の周波数スペクトルと第2の周波数スペクトルとが相関演算部54に入力される場合、相関演算部54は、第1の周波数スペクトルと、第2の周波数スペクトルの複素共役との積を算出する。第1の周波数スペクトル及び第2の周波数スペクトルはそれぞれ、次の式(1)及び式(2)のように表される。jは、虚数単位を表す記号である。
(第1の周波数スペクトル)=(第1実部)+j×(第1虚部) (1)
(第2の周波数スペクトル)=(第2実部)+j×(第2虚部) (2)
第2の周波数スペクトルの複素共役は、次の式(3)のように表される。
(第2の周波数スペクトルの複素共役)=(第2実部)−j×(第2虚部) (3)
第1のスペクトルと、第2のスペクトルの複素共役との積は、2つのスペクトルの相関結果に対応する。
相関演算部54は、送信側FFT部33から入力される周波数スペクトルと、受信側FFT部34から入力される周波数スペクトルの複素共役との積を、周波数スペクトルの相関結果として算出する。周波数スペクトルの相関結果は、相関スペクトルともいう。相関演算部54は、相関スペクトルをノイズフィルタ部35に出力する。
ノイズフィルタ部35は、例えばローパスフィルタを備える。ノイズフィルタ部35は、相関スペクトルからノイズ成分を除去し、サンプリング周波数変換部36に出力する。ノイズフィルタ部35は、相関スペクトルの実部及び虚部それぞれについてフィルタ処理を行う。
サンプリング周波数変換部36は、周波数スペクトルのサンプリング周波数を変換する。サンプリング周波数変換部36は、デシメーションとインターポレーションとを実行する。
デシメーションは、例えば、周波数スペクトルに含まれるデータのうち所定数のデータを削除する処理である。デシメーションは、周波数スペクトルに含まれるデータを周波数の順に所定の周期で削除する処理であってよい。
インターポレーションは、例えば、周波数スペクトルに含まれるデータを補間するようにデータを追加する処理である。インターポレーションは、所定数のデータが削除された周波数スペクトルに対して、データを補間する処理であってよい。
サンプリング周波数変換部36は、サンプリング周波数を変換した相関スペクトルを逆FFT部37に出力する。サンプリング周波数変換部36は、相関スペクトルの実部及び虚部それぞれについてサンプリング周波数を変換する。
逆FFT部37は、相関スペクトルを、逆フーリエ変換によって時間領域で表される信号に変換する。逆フーリエ変換は、逆離散フーリエ変換又は逆高速フーリエ変換等であってよい。逆FFT部37は、相関スペクトルを記憶装置60に格納してよい。逆FFT部37は、信号送信パターンに送信フレームが複数設定されている場合、他の送信フレームで得られた相関スペクトルを記憶装置60にから取得してよい。逆FFT部37は、各送信フレームで得られた相関スペクトルを積算して、記憶装置60に格納してよい。相関スペクトルを積算して得られるスペクトルは、積算相関スペクトルともいう。逆FFT部37は、積算相関スペクトルを逆フーリエ変換してよい。
相関スペクトルに逆フーリエ変換を実行して得られる信号は、相関信号ともいう。相関信号は、送信信号と受信信号との相関を示す。逆FFT部37は、相関信号を記憶装置60に格納してよい。逆FFT部37は、相関信号を距離算出部16に出力してよい。逆FFT部37は、周波数スペクトルを変換した信号を、複素信号として出力してよい。積算相関スペクトルに逆フーリエ変換を実行して得られる信号は、積算相関信号ともいう。逆FFT部37は、積算相関信号を記憶装置60に格納してよい。逆FFT部37は、積算相関信号を距離算出部16に出力してよい。
距離算出部16は、相関信号に基づいて、測定対象までの距離を算出する。距離算出部16は、相関信号を記憶装置60から取得してよい。距離算出部16は、相関信号を逆FFT部37から取得してよい。距離算出部16は、相関信号に基づいて、送信信号と受信信号との時間差を算出してよい。距離算出部16は、送信信号と受信信号との時間差に基づいて、測定対象までの距離を算出してよい。距離算出部16は、制御装置10の内部における信号遅延を考慮して、測定対象までの距離を算出してよい。距離算出部16は、積算相関信号に基づいて、測定対象までの距離を算出してよい。このようにすることで、測距結果が、受信信号に突発的に含まれうるノイズ成分の影響を受けにくくなる。
<2.2 測距方法の例>
測距装置1は、例えば図24に示されるフローチャートの処理を各構成部に実行させることによって、測定対象までの距離を測定する。
制御装置10は、パターン生成部11で、送信パターンを生成する(ステップS21)。パターン生成部11は、送信パターンを記憶装置60に格納する。ステップS21のより具体的な処理は、図16及び図22に例示される。ステップS21の処理はこれらに限られない。
制御装置10は、信号生成部13で、送信信号を生成する(ステップS22)。本実施形態では、送信信号は、周波数変調をかけたパルス信号であると仮定する。信号生成部13は、タイミング信号生成部14から入力されるタイミング信号で示されるタイミングで送信信号を出力する。送信信号は、直交変調部32で、実部と虚部とを有する複素信号に変換される。送信信号の実部は、送信側コンパレータ38と送信側FFT部33とに出力される。送信信号の虚部は、送信側FFT部33に出力される。送信信号の実部は、送信側コンパレータ38で2値化され、投波器ドライバ41に出力される。
投波器40は、投波器ドライバ41を介して入力される送信信号に応じて振幅変調した光を、対象空間に対して射出する(ステップS23)。
受波器50は、測定対象で反射された光を受光する(ステップS24)。受波器50は、受光した光の強度に応じた電流信号を受信信号として出力する。センシングアンプ53は、電流信号を電圧信号に変換する。センシングアンプ53は、電圧信号にゲインをかけて、受信側コンパレータ39に出力する。センシングアンプ53は、タイミング信号生成部14から入力されるタイミング信号で示されるタイミングで受信信号を変換してよい。
制御装置10は、送信信号と受信信号との間で、周波数相関の演算を実行する(ステップS25)。送信側FFT部33と受信側FFT部34とはそれぞれ、入力された信号をフーリエ変換し、相関演算部54に出力する。相関演算部54は、送信側FFT部33から入力された周波数スペクトルと、受信側FFT部34から入力された周波数スペクトルの複素共役とを乗算し、相関スペクトルを算出する。相関演算部54は、相関スペクトルをノイズフィルタ部35に出力する。
制御装置10は、相関スペクトルから測距波形を算出する(ステップS26)。ノイズフィルタ部35は、相関スペクトルからノイズ成分を除去し、サンプリング周波数変換部36に出力する。サンプリング周波数変換部36は、相関スペクトルのサンプリング周波数を変換し、逆FFT部37に出力する。逆FFT部37は、相関スペクトルを逆フーリエ変換し、測距波形を算出する。
制御装置10は、距離算出部16で、測距波形に基づいて、測定対象からの距離を算出する(ステップS27)。制御装置10は、図24のフローチャートの処理を終了する。
本開示に係る構成は、以上説明してきた実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形又は変更が可能である。例えば、各構成部、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
本開示に係る構成を説明する図は、模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものと必ずしも一致しない。
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の周波数は、第2の周波数と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。