JP6773357B1 - 風車翼の修理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の風車翼の修理方法であって、前記第1の補修部材には、繊維強化プラスチックを使用することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の補修部材には、炭素繊維シートを使用することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の修理工程の前に、前記風車翼の前記損傷部を囲むように足場を建設する工程を含むことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の修理工程において、前記第2の補修部材を複数枚使用し、1周毎に1枚とし、順次巻き付け位置をずらしながら巻き付けて固定することを特徴とする。
図1は、本発明の一実施例に係る風力発電装置を示す概略図である。風力発電装置10は、風の力でタービンを回して発電する装置で、主にローター部と、発電機部と、支持部から構成される。ローター部は、図1に示すように3枚の風車翼1と、風車翼1が取り付けられるハブ4と、ハブ4に固定されるローター軸(図示せず)を含んで構成される。なお、風車翼1は図1に示したものに限定されず、何枚でもよく、どの様な形状でもよい。発電機部は、ナセル5と呼ばれる筐体に、図示しない発電機軸、発電機、制御機器、増速機等を含んで構成される。支持部は、ローター部と発電機部を支えるタワー2と基礎3を含んで構成される。風力発電装置10の設置場所は、陸上でもよいし、洋上でもよい。
まず、風車翼1の損傷部9の修理方法の概略について、図2を参照して説明する。図2は、本実施例に係る全体の修理工程を示す説明図である。
風車翼1の損傷部9を発見する方法として、一般に、技術者が現場で地上から目視点検を実施することが多い。しかし、損傷部9が黒い汚れなのか損傷なのかを判断するには、近距離での点検が必要である。また、過去に損傷し、修理した後に再度、損傷した箇所も多く、過去に修理が施された箇所なのか否かを詳しく検査する必要がある。損傷部9の損傷状態をより詳しく検査するために、超音波による検査機器の使用した方法やX線撮影による方法、スコープ装置を使用した方法などがとられている。本実施例では、損傷部9がある風車翼1を、地上に最も近接する低い位置まで回転させた後、技術者がその位置まで高所作業用の安全帯を付けて登り、又はゴンドラ等を使用して登り、目視で損傷部9を詳しく点検した後、必要に応じて上記の検査方法を採用する。
風車翼1の損傷部9の調査及び検討が完了した後、第1の修理工程に進む。第1の修理工程の詳細については後述するが、損傷部9を含む所定の範囲を削り取り、その範囲に第1の補修部材を積層して固定する工程である。但し、損傷部9が非常に軽微な場合には、第1の補修部材を積層せずに、パテ塗りを実施して硬化させることもあり得る。本実施例は、削り取った範囲に第1の補修部材を積層して、接着剤で固定する修理方法を実施する。その方法以外にも第1の修理工程には、様々な公知の方法を適用することができる。例えば、削り取った範囲に繊維を載せて真空含浸法により樹脂を削り取った部分に注入し硬化させる方法や、紫外線硬化タイプのプリプレグを削り取った範囲に載せて、紫外線を照射することにより硬化させる方法、プリプレグのパッチを削り取った範囲に載せて、熱を加えることにより硬化させる方法が適用できる(特許文献1参照)。
第1の修理工程が完了した後、第2の修理工程に進む。第2の修理工程の詳細については後述するが、第1の補修部材で固定された部分又はパテ塗りで固定された部分を、シート状の第2の補修部材を用いて、風車翼1の周方向に巻き付けて固定する工程である。なお、本明細書において、「巻き付け」の用語は、風車翼1の周方向に1回以上巻き付けることに限定されず、風車翼1の周方向に沿って丸くする意味で使用し、半周巻き、4分の3周巻きなどが含まれる。第1の修理工程に加えて、この第2の修理工程を実施することで、より強固かつ安定した状態で、補修部材を損傷部分に固定でき、風車翼1の強度を保つことができる。
第1の修理工程と第2の修理工程が完了した後、ビニルエステル系樹脂等の接着剤を塗布し、その上にサーフェイスマットを敷き、再度接着剤を塗布して含浸させる。サーフェイスマットは樹脂との含浸性と親和性に優れ、空気が溜まらない平滑仕上げ用のものを使用する。サーフェイスマットを使用することで平滑性に優れた表面に仕上げ、美観を向上させることができる。また、耐食性も向上させることができる。本実施例では、ガラス繊維素材で厚さが0.1〜0.2mm程度の薄手のサーフェイスマットを使用する。
風車翼1用のトップコートを塗布する。それにより、風車翼1の表面をむらなく均一に仕上げることができる。なお、この仕上げ工程は、第1の修理工程のみを実施する場合にも同様に行うことができる。最後に修理部分を風車翼1と同じ色で塗装する。以上のようにして、風車翼1の損傷部9の修理が完了する。
次に風車翼1の第1の修理工程の詳細について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、本実施例に係る第1の修理工程を示す説明図である。図4は、本実施例に係る風車翼1の損傷部9と、第1の修理を施した後の損傷部周辺の断面図を示す模式図である。図5は、本実施例で使用される足場の模式図である。
風車翼1の損傷部9の調査及び検討が完了した後、その損傷部9の寸法によって、第1の補修部材の寸法と必要な枚数の準備を計画する。本実施例では第1の補修部材には、風車翼1の母材と同様にFRP材を使用する。第1の補修部材の材料はこれに限定されず、前述のプリプレグ材(ガラス繊維や炭素繊維のような補強材料に樹脂等を予め含浸させた素材)などを使用することもできる。
次に、ステップS10の修理設計に基づいて、必要な枚数のFRP材シート12と、必要な量のプライマーと接着剤(ビニルエステル系樹脂)を準備する。また、足場設計に基づいて、図5の足場20の模式図に示すように、風車翼1の損傷部9に達するような高さで、損傷部9とタワー2を囲んで建設する。損傷部9を含む風車翼1を最も低い位置まで回転させると、その風車翼1とタワー2が近接するため、本実施例では、風車翼1だけでなく、タワー2を含めて囲んだ大きさの足場20を建設する。それにより、足場20の構成が安定し、充分な足場面積が確保できる。また、風車翼1やナセル5が回転して風車翼1が足場20へ接触すると、風車翼1が更に損傷を受け、足場20も損傷を受けるため、風車翼1とナセル5は強風でも動かないように、固定する必要がある。なお、足場20の構成は、これに限定されず、風車翼1だけを囲む構成としてもよい。
ステップS11の施工準備が完了した後、サンダーを用いて、損傷部9を含む所定の範囲の母材11を切断する。切断後、風車翼1の母材11の古い塗膜を削り落とすサンダーケレン作業を行う。サンダーケレン作業により、接着面の面荒らしができる。風車翼1の母材11と、補修材であるFRP材シート12は、全く同一の材料ではないため、接着不良になる可能性がある。そのため、少しでも接着面を増やすために、接着面の面荒らしが重要になる。この接着面の面荒らしの良否が接着面の強度に重大な影響を与えるため、サンダーケレン作業を充分に行う。なお、面荒らしの方法は、これに限定されず、ブラスト処理等でもよい。また、サンダーケレン作業後は、大量の粉塵が発生するため、清掃し、その後に溶剤を用いて脱脂処理を行う。それにより、表面に付着している異物を良好に除去でき、後の接着に適した状態にすることができる。
次に、損傷部9を含む所定の範囲の母材11に、準備したプライマーをローラー刷毛で塗布する。これは、FRP材シート12を積層する際、下地処理として接着剤の役目をする。次に、準備したビニルエステル系樹脂(接着剤)をローラー刷毛で塗布し、1枚目のFRP材シート12を敷く。その上に、ビニルエステル系樹脂をローラー刷毛で塗布し、よく含浸させる。その際、FRP材シート12の下に空気が混入しないよう、注意する必要がある。その後、所定の高さ(凹部が埋まる高さ)になるまで上記の作業を20〜30回繰り返し、FRP材シート12を積層する。なお、前述のように、損傷部9が軽微な場合には、FRP材シート12を積層する代わりにパテ塗りで固定してもよい。
次に風車翼1の第2の修理工程の詳細について、図6〜図9を参照して説明する。図6は本実施例に係る第2の修理工程を示す説明図である。図7は、本実施例係る修理工程における修理の様子を示す説明図である。図8は、本実施例に係る風車翼1の損傷部9と、第2の修理を施した断面図を示す模式図である。図9は、本実施例に係る風車翼1の修理完了後の概略図である。
第1の修理工程が完了した後、FRP材シート12が積層された面積又はパテ塗りで固定された面積を基に、第2の補修部材の寸法と必要な枚数の準備を計画する。本実施例では第2の補修部材には、風車翼1の母材(FRP材)とは異なる炭素繊維シート(以下、CF材シートと略称する)13を使用する。本発明の第2の補修部材の材料はこれに限定されず、ガラス繊維材やFRP材、炭素繊維を用いた複合材料(例えば炭素繊維強化プラスチック)のシートを使用することもできる。
次に、ステップS20の修理設計に基づいて、CF材シート13と接着剤(ビニルエステル系樹脂)を必要な分だけ準備する。また、足場20を建設する場合には、設計に基づいて、図5の模式図に示すように、足場20を建設する。
FRP材シート12が積層された部分又はパテ塗りで固定された部分を覆って、CF材シート13を巻きつける部分に準備したビニルエステル系樹脂をローラー刷毛で塗布する。次に、準備した1枚目のCF材シート13を敷き、その上からビニルエステル系樹脂をローラー刷毛で塗布し、よく含浸させる。その際、CF材シート13の下に空気が混入しないよう、注意する必要がある。
また、本発明の風車翼の修理方法は、第1の修理工程のみを施す修理方法より修理費用は若干増加となるが、信頼性は格段に向上し、風車翼を本体から取り外さないため、安価に実施できる。
2 タワー
3 基礎
4 ハブ
5 ナセル
9 損傷部
10 風力発電装置
11 風車翼の母材
12 FRP材シート
13 CF材シート
20 足場
Claims (5)
- 風力発電装置の風車翼における損傷部の修理方法であって、
前記損傷部を含む所定の範囲を削り取り、前記所定の範囲に第1の補修部材を積層して固定する又はパテ塗りで固定する第1の修理工程と、
前記第1の補修部材で固定された部分又はパテ塗りで固定された部分に、シート状の第2の補修部材を用いて、前記風車翼の周方向に巻き付けて接着し、前記第1の補修部材で固定された部分又はパテ塗りで固定された部分を前記風車翼に固定する第2の修理工程と、
を有することを特徴とする風車翼の修理方法。 - 請求項1に記載の風車翼の修理方法であって、前記第1の補修部材には、繊維強化プラスチックを使用することを特徴とする風車翼の修理方法。
- 請求項1又は2に記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の補修部材には、炭素繊維シートを使用することを特徴とする風車翼の修理方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の修理工程の前に、前記風車翼の前記損傷部を囲むように足場を建設する工程を含むことを特徴とする風車翼の修理方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の風車翼の修理方法であって、前記第2の修理工程において、前記第2の補修部材を複数枚使用し、1周毎に1枚とし、順次巻き付け位置をずらしながら巻き付けて固定することを特徴とする風車翼の修理方法。
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