JP6773048B2 - 発光装置 - Google Patents

発光装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6773048B2
JP6773048B2 JP2017552415A JP2017552415A JP6773048B2 JP 6773048 B2 JP6773048 B2 JP 6773048B2 JP 2017552415 A JP2017552415 A JP 2017552415A JP 2017552415 A JP2017552415 A JP 2017552415A JP 6773048 B2 JP6773048 B2 JP 6773048B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light emitting
transition metal
layer
gas barrier
emitting device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017552415A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017090577A1 (ja
Inventor
森 孝博
孝博 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Publication of JPWO2017090577A1 publication Critical patent/JPWO2017090577A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6773048B2 publication Critical patent/JP6773048B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05BELECTRIC HEATING; ELECTRIC LIGHT SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; CIRCUIT ARRANGEMENTS FOR ELECTRIC LIGHT SOURCES, IN GENERAL
    • H05B33/00Electroluminescent light sources
    • H05B33/02Details
    • H05B33/04Sealing arrangements, e.g. against humidity
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B9/00Layered products comprising a layer of a particular substance not covered by groups B32B11/00 - B32B29/00
    • HELECTRICITY
    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05BELECTRIC HEATING; ELECTRIC LIGHT SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; CIRCUIT ARRANGEMENTS FOR ELECTRIC LIGHT SOURCES, IN GENERAL
    • H05B33/00Electroluminescent light sources
    • H05B33/02Details
    • HELECTRICITY
    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05BELECTRIC HEATING; ELECTRIC LIGHT SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; CIRCUIT ARRANGEMENTS FOR ELECTRIC LIGHT SOURCES, IN GENERAL
    • H05B33/00Electroluminescent light sources
    • H05B33/12Light sources with substantially two-dimensional radiating surfaces
    • H05B33/14Light sources with substantially two-dimensional radiating surfaces characterised by the chemical or physical composition or the arrangement of the electroluminescent material, or by the simultaneous addition of the electroluminescent material in or onto the light source

Description

本発明は発光装置に関し、より詳しくは携帯時の小型化が可能な発光装置に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう。)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として応用されている。
特に近年では、薄型・軽量なガスバリアー層を有する樹脂基材を用いたフレキシブルな有機EL素子が注目されており、曲面を有する意匠性の高い光源として応用されている。
しかしながら、有機EL素子に曲げモーメントを加えることで、有機EL素子を構成する層間にずり応力が発生し、層の剥離を惹起してしまうことが問題となっており、屈曲時においても層間の剥離が発生しない有機EL素子が求められており、様々な検討がなされている。
一つの方法として、ガラス基板にガスバリアー層を形成した後、樹脂基材へ剥離転写する方法が検討されている(特許文献1参照。)。
しかしながら、現在検討されている発光装置は、フレキシブル性を検証するためのプロトタイプに過ぎず、実用可能な装置としての具体的な構成の提示はされていない。したがって、発光装置の劣化を抑制する発光装置の具体的な構成が求められていた。
特開2015−173249号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、携帯時の小型化が可能な発光装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において2つの樹脂基材に挟まれた有機発光素子の、樹脂基材と有機発光素子間にガスバリアー層を有する発光装置において、携帯時折り畳んだり、巻き取るときに 、有機発光素子の形
成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内とすることで上記課題が解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.発光面側樹脂基材、有機発光素子及び背面側基材がこの順で積層された発光部を有する発光装置であって、前記発光面側樹脂基材と有機発光素子間、又は前記有機発光素子と背面側基材間の少なくともいずれか一方に無機素材を主成分とするガスバリアー層を有し、かつ、発光装置が、支持部材上に固定部と可動部を有して支持され、さらに、携帯時に前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内の曲面部を有し、
前記携帯時、折り畳み形態を有し、前記発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であり、
さらに、前記支持部材として、2つの支持筐体を有し、これら2つの支持筐体間に、前記折り畳み形態時に、前記部位Bを背後から押圧するヒンジ部が設けられ、
前記発光装置を開いたときに、前記ヒンジ部が前記発光部と接していないことを特徴とする発光装置。
.前記ガスバリアー層の総厚さが、20〜1000nmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の発光装置。
.前記有機発光素子の前記可動部が形成する前記曲面の曲率半径が、1.0〜5.0mmの範囲内の曲面部を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の発光装置。
.前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の発光装置。
.前記ガスバリアー層が、前記遷移金属M2を金属の主成分として含有する領域と前記非遷移金属M1を金属の主成分として含有する領域との間に、前記混合領域を有すること特徴とする、第項に記載の発光装置。
.前記ガスバリアー層内の厚さ方向における全領域が、前記遷移金属及び非遷移金属が含有されている混合領域であることを特徴とする第項又は第項に記載の発光装置。
7.前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1を主成分として含有するガスバリアー層1とガスバリアー層2の二つの層と、当該二つの層の間に遷移金属M2を含有する層とを有し、
前記ガスバリアー層1と前記遷移金属M2を含有する層との界面1、及び、前記ガスバリアー層2と前非遷移金属M2を含有する層との界面2に、それぞれ前記混合領域を有することを特徴とする第4項に記載の発光装置。
.前記混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、下記関係式(2)を満たすことを特徴とする第4項から第項までのいずれか一項に記載の発光装置。
化学組成式(1): (M1)(M2)
関係式(2): (2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、
x、y、z:化学量論係数、 a:M1の最大価数、b:M2の最大価数
を表す。)
.前記非遷移金属が、ケイ素であることを特徴とする第4項から第項までのいずれか一項に記載の発光装置。
10.前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする第4項から第項までのいずれか一項に記載の発光装置。
11.有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする第1項から第10項までのいずれか一項に記載の発光装置。
本発明の上記手段により、携帯時の小型化が可能な発光装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来、フレキシブルな発光素子は知られているが、その具体的な構成については知られていなかった。本発明では携帯時、折り畳んだり、巻き取るときの発光素子に係るストレスを、少なくできるために小型化が可能になると考えられる。
本発明の発光装置の発光部の断面図の一例 折り畳み形態を有する発光装置を説明する模式図の一例 折り畳み形態を有する発光装置を説明する模式図の一例 折り畳み形態を有する発光装置を説明する模式図の一例 折り曲げ形態を有する発光装置を説明する模式図の一例 巻き取り時と引き出し時の粘着剤の厚さ変化を示す概念図 巻き取り時と引き出し時の粘着剤の厚さ変化を示す概念図 巻き取り時と引き出し時の粘着剤の厚さ変化を示す概念図 巻き取り時と引き出し時の粘着剤の厚さ変化を示す概念図 支持部材の好ましい形状を示す一例 非遷移金属及び遷移金属の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルと混合領域を説明するためのグラフの一例 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図
本発明の発光装置は、発光面側樹脂基材、有機発光素子及び背面側基材がこの順で積層された発光部を有する発光装置であって、前記発光面側樹脂基材と有機発光素子間、又は前記有機発光素子と背面側基材間の少なくともいずれか一方に無機素材を主成分とするガスバリアー層を有し、かつ、発光装置が、支持部材上に固定部と可動部を有して支持され、さらに、携帯時に前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内の曲面部を有し、
前記携帯時、折り畳み形態を有し、前記発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であり、
さらに、前記支持部材として、2つの支持筐体を有し、これら2つの支持筐体間に、前記折り畳み形態時に、前記部位Bを背後から押圧するヒンジ部が設けられ、
前記発光装置を開いたときに、前記ヒンジ部が前記発光部と接していないことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、携帯時、折り畳み形態を有し、前記発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であることが好ましい。これにより、有機発光素子にかかるストレスが少なくかつ小型の折り畳み形態の発光装置を得ることができる。
本発明の実施態様としては、携帯時、巻き取り形態を有し、剛性を有する前記支持部材上に前記背面側基材が粘弾性を有するシート状部材を介して設置され、前記発光面側樹脂基材が外側にして巻き取られ、かつ、発光装置の巻き取り外側の端部が、相対的に位置がずれないように固定された前記固定部であり、巻き取り内側が、相対的に位置が変化可能な前記可動部であることが好ましい。これにより、巻き取り時に生じる巻径差による発光装置と支持部材との位置関係のずれを少なくして、有機発光素子にかかるストレスが少なくできるため、小型の巻き取り形態の発光装置を得ることができる。
さらに、本発明においては、ガスバリアー層の総厚さが、20〜1000nmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な屈曲耐久性とガスバリアー性とを両立させる効果が得られる。
前記有機発光素子の前記可動部が形成する前記曲面の曲率半径が、1.0〜5.0mmの範囲内の曲面部を有することが小型の発光装置を実現する上で好ましい。
本発明の実施態様としては、前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することが好ましい。これにより、ガスバリアー層が薄層であっても非常に高いガスバリアー性が得られるようになるため、ガスバリアー層薄層化によって、さらに良好な屈曲耐久性とガスバリアー性とを両立させる効果が得られる。
また、前記実施態様においては、前記ガスバリアー層が、前記遷移金属M2を金属の主成分として含有する領域と前記非遷移金属M1を金属の主成分として含有する領域との間に、前記混合領域を有することが、好ましい。
さらに、前記ガスバリアー層内の厚さ方向における全領域が、前記遷移金属及び非遷移金属が含有されている混合領域であることが好ましい。これにより、非常に高いガスバリアー性が得られる。
前記混合領域の組成を、前記化学組成式(1)で表したとき、前記関係式(2)を満たすことが好ましい。これにより、より良好なガスバリアー性が得られる。
さらに、本発明においては、前記非遷移金属が、ケイ素であることが好ましい。
また前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることが好ましい。この金属元素の組合せが、最も良好なガスバリアー性が得られる。
本発明の発光装置は、有機EL素子を具備していることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《本発明の発光装置の概要》
本発明の発光装置は、発光面側樹脂基材、有機発光素子及び背面側基材がこの順で積層された発光部を有する発光装置であって、前記発光面側樹脂基材と有機発光素子間、又は前記有機発光素子と背面側基材間の少なくともいずれか一方に無機素材を主成分とするガスバリアー層を有し、かつ、発光装置が、支持部材上に固定部と可動部を有して支持され、さらに、携帯時に前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内の曲面部を有し、
前記携帯時、折り畳み形態を有し、前記発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であり、
さらに、前記支持部材として、2つの支持筐体を有し、これら2つの支持筐体間に、前記折り畳み形態時に、前記部位Bを背後から押圧するヒンジ部が設けられ、
前記発光装置を開いたときに、前記ヒンジ部が前記発光部と接していないことを特徴とする。
本発明に係るガスバリアー層のガスバリアー性は、基材上に当該ガスバリアー層を形成させた積層体で算出した際、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3cm3/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高ガスバリアー性であることが好ましい。
図1は、本発明の発光装置の発光部の断面図の一例である。
発光装置は、発光面側樹脂基材2、有機発光素子3及び背面側基材4がこの順で積層された発光部Lを有する、この例では、発光面側樹脂基材2と有機発光素子3との間及び有機発光素子3と背面側基材4との間にガスバリアー層5を有している。有機発光素子3は、例えば、有機EL素子であってよく、2つの電極6を介して少なくとも発光層を含む有機機能層ユニット7を有しており、封止部材8で封止されている。発光面側樹脂基材2又は基材4は両面にハードコート層を有していても良く、また中間層として接着層や、最外層に接着層を介して保護フィルムを有していても良い。有機機能層ユニットは、発光層以外に正孔輸送層、電子輸送層、などを有している。
この発光装置は、携帯時に前記有機発光素子7の可動部が形成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内の曲面部を有する。部位Aの曲率半径Ar又は部位Bの曲率半径Brが1.0未満の場合、繰り返しの屈曲により基材自体が劣化するため好ましくない。また、曲率半径が10.0mmを超えると小型の発光装置としては適当ではない。
ここで、固定部とは、発光装置が支持部材上に固定されて発光装置と支持部材の位置関係が変化しない部分をいい、可動部とは、発光装置が支持部材上に固定されておらず、支持部材と接していないか、又は、粘弾性を有するシート状部材を介して設置されており、発光装置を折り曲げたとき、支持部材と発光装置の位置関係が、折り曲げの内側と外側で生じる巻径差によるずれを吸収し、わずかに変化する部分をいう。
また、有機発光素子3は、2つの基材2及び4に挟まれていることが好ましく、2つの基材が同様の厚さ、及び、同様の弾性率を有することがより好ましい。2つの基材が同様の厚さ、及び、同様の弾性率を有することによって、発光装置を曲げたとき、曲げ中心に位置する有機発光素子3にかかる応力をゼロに近づける効果を期待することができる。
また、好ましくは発光装置の総厚さは、総厚が20〜200μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは30〜150μmの範囲内であり、さらに好ましくは30〜100μmの範囲内である。薄くすることにより、屈曲させた際に、有機発光素子1にかかる応力をより小さくすることができると考えられる。
さらに、ガスバリアー層5の総厚さは、20〜1000nmの範囲内であることが、ガスバリアー層のガスバリアー性と折り曲げ耐性を両立する観点から好ましい。
このような発光装置により、携帯時の発光装置を小型化することが可能になる。好ましい実施形態としては、携帯時、折り畳み形態の発光装置と、巻き取り形態の発光装置を挙げることができる。
《折り畳み形態を有する発光装置》
携帯時、折り畳み形態を有する発光装置は、発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であることが好ましい。ここで折り畳み形態を有する発光装置の場合可動部は通常複数の曲面を有するため、部位Aと部位Bの曲率半径は最小曲率半径を用いる。前記部位Aと部位Bの最小曲率半径とは、曲げられたとき有機発光素子が有する複数の曲面の曲率半径の中で、それぞれ最小のものをいう。
図2A〜2Cは、折り畳み形態を有する発光装置を説明する模式図の一例である。
図2Aは2つの支持部材として支持筐体10と支持筐体11に支持された発光装置が折り曲げられた状態を示している。折り曲げられた発光装置1は、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを変曲点を介して有している。発光部Lが支持筐体10と支持筐体11に支持された部分が固定部であり、部位A及び部位Bが可動部である。
図2Cは発光装置1を開いた時の状態を示している。支持筐体10及び11の間にヒンジ部12を有しているヒンジ部12は支持筐体10、11とともに発光装置を保護する機能を有している。なお発光装置1を開いたときヒンジ部12は発光部Lと接している必要はない。
従来、折り曲げ部をU字型にする形態は知られている。しかしU字型の形態の場合、小型化を図るため、発光面側樹脂基材同士の間隙を2mm未満にすると折り曲げ時の発光装置にかかるストレス大きくなり、折り曲げ耐久性等に問題が生じやすい欠点があった。
このストレスを小さくし、かつ小型化を可能にするために、本発明では、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、さらに、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.6〜1.1の範囲内であり、さらに好ましくは0.8〜1.05の範囲内である。なぜなら、ヒンジ部12の長さを一定とした場合、発光面を内側に曲げたときの曲率と、外側に曲げたときの曲率とが近似する構成が、最小曲率を最も大きくする方法であるからである。
このように、部位Aと部位Bが形成する曲面の曲率半径を近づけるために、発光部Lはその一部が剛性の高い支持部材上に固定されていることが好ましい。折り畳み形態を有する発光装置の場合は、具体的にはヒンジ部12以外の発光部Lは支持部材として支持筐体に固定されていることが必要である。ヒンジ部は、自由に折り畳みできるように支持筐体とは固定されない。
ヒンジ部12がない状態で発光装置を折り畳む、と図2Bのように曲率半径の小さな部分が生じてしまう(最小曲率半径Brが小さくなる)が、ヒンジ部12を固定部側に適度に押し込むことにより(図2Aにおいてヒンジ部12を左側に押圧する。)、部位Bの形成する曲面を円に近くすることができる。しかし押し込み過ぎるとC/Lが小さくなる。この場合上記ループは上下に広がる形状になり、可動部のコンパクト性が損なわれてしまう。上記B部分がほぼ円状になることが好ましく、部位Aの最小曲率半径が、部位Bの最小曲率半径に対して小さくなり過ぎないためC/Lは0.35以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。C/Lの上限としては、Br/Arの値が本発明の範囲となるように調整されていればよい。
なお、支持部材からの突き出し長さCは、図2A〜2CにおいてA+Bの長さを意味する。上記図で、10と11の可動部に接する位置が異なる(図のループの上下でA、Bの長さが異なる)場合、Cはその平均値とする。
このように、部位Aと部位Bの曲率半径を近似させることにより、部位Aと部位Bにかかる発光装置の発光部Lに対するストレスを軽減することができる。
ヒンジ部12の長さは4〜17mmの範囲内であることが好ましい。
通常、部位Aの最小曲率半径は部位Bの最小曲率半径より大きくなるため、部位Aと部位Bの最小曲率半径を調節する手段を有することが好ましい。最小曲率半径を調整する方法は、部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値が上記の範囲内となることが好ましい。例えば、折り曲げたとき、発光装置の折り曲げ部分を背後から支持するヒンジ部を構成する部材を用いて発光装置の背後から押圧することで調節することが可能である。
もちろん、本態様の発光装置において、最小曲率半径Ar、最小曲率半径Brが小さくなるほど、すなわち、可動部である折り畳み部位の形状をよりコンパクトにすることを重視して、それぞれの最小曲率半径が、1.0mmに近づく設計がなされた発光装置ほど、繰り返しの折り畳みによる可動部へのダメージは大きくなる。しかし、そういった設計の装置においても、本発明の範囲となる可動部を有することで、本発明の範囲外の可動部を有する装置に対して折り畳み耐久性が向上する効果が得られるものである。
《巻き取り形態を有する発光装置》
前記携帯時、巻き取り形態を有し、剛性を有する支持部材上に前記背面側樹脂基材が粘弾性を有するシート状部材を介して設置され、前記発光面側樹脂基材が外側にして巻き取られ、かつ、発光装置の巻き取り外側の端部が、相対的に位置がずれないように固定された前記固定部(以下固定端ともいう。)であり、巻き取り内側は可動部であり、その端部が、相対的に位置が変化可能な自由端であることが好ましい。つまり、発光装置の発光部の背面側基材は、一部が剛性の高い支持部材上に固定されていることが好ましい。巻き取り形態を有する発光装置の場合は、具体的には発光装置の巻き取り外側の巻き取り軸から遠いほうの端部が固定されている。支持部材は発光部を支持できる高い剛性を有していることが好ましい。
図3は、巻き取り形態を有する発光装置を説明する模式図一例である。
巻き取り形態を有する発光装置1は、剛性を有する支持部材21上に発光部Lの前記背面側基材が粘弾性を有するシート状の粘着剤22を介して設置され、発光面側樹脂基材を外側にして筐体23内の巻き取り部材24に巻き取る構造となっている。そして発光装置1の巻き取り外側の巻き取り軸から遠いほうの端部が、相対的に位置がずれないように固定された固定部である。例えば制御部26に固定される。そして巻き取り内側が、相対的に位置が変化可能な可動部である。
支持部材21上に形成した発光部Lを巻き取り形態で巻き取ろうとすると、巻径差で、発光部Lと支持部材21との位置関係にズレを生じてしまう。本発明では、支持部材に対して、発光装置の発光部Lの一端は固定する。このように固定することにより発光装置の配線を確保することができる。そして、発光部Lのもう一端は、支持部材に対して相対位置が変化可能な可動部とすることで発光部Lの可動部が形成する曲率半径を小さくしてもストレスを少なくすることができる。
発光部Lの背面側基材を粘弾性を有するシート状の粘着剤を介して設置することにより、巻き取り時生じるずれを、粘着剤が剪断伸びで変形し吸収するため、巻き取りにより生じるストレスが発光装置に伝わりにくくなると考えられる。発光装置内側として巻き取ると、上記伸びの関係が反対となり、自由端が支持部材上に固定されなくなる場合があるため発光装置外側として巻き取ることが好ましい。
シート状の粘着剤22は、支持部材21上に発光部Lを支持するだけでなく、このように巻き取り時生じるずれを吸収する機能を有するため粘弾性を有することが好ましい。粘弾性を有する粘着剤としてはアクリル系又はシリコン系の粘着剤を用いることができる。
さらに、巻き取り時に生じる支持部材21と発光部Lのずれの大きさは巻き取りが進むにつれ大きくなる。巻き取り時の粘着剤にかかる剪断変形を一定にして、発光部Lにかかるストレスを平均化するためには、巻き取りした後の粘着剤の厚さが一定となることが好ましい。したがって、自由端側の粘着剤の厚さは固定端側の粘着剤よりも厚いほうが好ましい。
図4A〜4Dは巻き取り時と引き出し時の粘着剤の厚さ変化を示す概念図である。例えば、図4Aに示すように、仮に、厚さ100μmの支持部材上に厚さ200μmの粘着剤を介して100mmの長さの厚さ60μmの発光部Lを設置し、これを半径5mmの巻き取り部材を有する筐体に巻き込んだ時、図4Bに示すように自由端における支持部材と発光装置の位置は約3mmずれ、かつ粘着剤の厚さも当初の70%程度になると考えられる。巻き取り時の図は、比較のため自由端を平坦にした模式図である。
図4Cのように、引き出し時、粘着剤の厚さに傾斜を持たせて自由端側を厚くし、巻き取り時に粘着剤の厚さが一定となるように粘着剤を形成することにより、巻き取り時、発光部Lに係るストレスを軽減することができ好ましい。
さらに、図4Dに示すように、巻き取り時に、有機発光素子と粘着剤との自由端を揃えることができる形態でも良い。
また、引き出し及び巻き取りを、滑らかに行うために、支持部材は、引き出し時にエッジが曲がって平面形状を維持する形態のものが好ましい。
図5は、巻き取り形態における支持部材の好ましい形状を示す一例である。支持部材は、巻き取られた状態では平面を維持し、矢印方向に引き出されたときエッジが図のように曲がる形状である。
また、支持部材は例えばスチール板等の金属板を使用することが、剛性を高める上で好ましい。
以下に本発明の構成についてさらに詳細に述べる。
<ガスバリアー層>
本発明に係るガスバリアー層は、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する混合領域を有し、当該混合領域における前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することを特徴とするガスバリアー層である。
更には、ガスバリアー層としては、第3族〜第11族の遷移金属を金属の主成分aとして含有するA領域と、第12族〜第14族の非遷移金属を金属の主成分bとして含有するB領域との間に、主成分a及び主成分bに由来する化合物を含有する混合領域を有する構成であることが好ましい形態である。
また、本発明に係るガスバリアー層においては、層内の全域にわたって、前記混合領域が形成されている構成であることも、好ましい形態である。
この混合領域では、遷移金属と非遷移金属、及び酸素が含有されていることが好ましい。また、この混合領域は、遷移金属の酸化物と非遷移金属の酸化物との混合物、又は、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物の少なくとも一方が含有されていることが好ましい形態であり、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物が含有されていることがより好ましい形態である。
加えて、上記混合領域の組成を下記化学組成式(1)で表したとき、混合領域の少なくとも一部が、下記関係式(2)で規定する条件を満たすことが好ましい。
化学組成式(1):(M1)(M2)
関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
上記各式において、M1は非遷移金属、M2は遷移金属、Oは酸素、Nは窒素を表す。x、y、zは、それぞれ化学量論係数であり、aはM1の最大価数、bはM2の最大価数を表す。
以下、本発明に係るガスバリアー層の詳細について更に説明する。
〔ガスバリアー層を構成する各領域〕
本発明に係るガスバリアー層を構成する領域について説明するが、以下において使用する技術用語の定義について予め説明する。
本発明において、「領域」とは、ガスバリアー層の厚さ方向に対して略垂直な面(すなわち当該ガスバリアー層の最表面に平行な面)で当該ガスバリアー層を一定又は任意の厚さで分割したときに形成される対向する二つの面の間の三次元的範囲内(領域)をいい、当該領域内の構成成分の組成は、厚さ方向において一定であっても、徐々に変化するものであっても良い。
本発明でいう「構成成分」とは、ガスバリアー層の特定領域を構成する化合物及び金属若しくは非金属の単体をいう。また、本発明でいう「主成分」とは、原子組成比として含有量が最大である構成成分をいう。例えば、「金属の主成分」といえば、構成成分の中の金属成分の中で、原子組成比として含有量が最大である金属成分をいう。
本発明でいう「混合物」とは、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に化学結合することなく混じり合っている状態の物をいう。例えば、酸化ニオブと酸化ケイ素がお互いに化学結合することなく混じり合っている状態をいう。
本発明でいう「主成分a及び主成分bに由来する化合物」とは、主成分a及び主成分bそれら自体、並びに主成分aと主成分bが反応して形成された複合化合物をいう。
複合化合物の具体例として「複合酸化物」を挙げて説明すると、「複合酸化物」とは、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に化学結合をして形成された化合物(酸化物)をいう。例えば、ニオブ原子とケイ素原子が直接的に、又は酸素原子を介して化学結合を形成している化学構造を有する化合物をいう。なお、本発明においては、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に分子間相互作用などにより物理的結合をして形成された複合体も本発明に係る「複合酸化物」に含まれるものとする。
次いで、各領域について詳細な説明をする。
(遷移金属含有領域:A領域)
遷移金属含有領域であるA領域とは、遷移金属を金属の主成分aとして含有する領域をいう。
遷移金属(M2)としては、特に制限されず、任意の遷移金属が単独で又は組み合わせて用いられうる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なガスバリアー性が得られる遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすい観点から、好ましく用いることができる。
特に、遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であって、詳細は後述する非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果を得ることができ、特に好ましい組み合わせである。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb、Taが特に好ましい。
A領域の厚さとしては、ガスバリアー性と光学特性との両立の観点から、2〜50nmの範囲であることが好ましく、4〜25nmの範囲であることがより好ましく、5〜15nmの範囲であることがさらに好ましい。
(非遷移金属含有領域:B領域)
非遷移金属含有領域であるB領域とは、非遷移金属を金属の主成分bとして含有する領域をいう。ここでいう「その化合物」すなわち「非遷移金属の化合物」とは、非遷移金属を含む化合物をいい、例えば、非遷移金属酸化物をいう。
非遷移金属(M1)としては、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属が好ましい。当該非遷移金属としては、特に制限されず、第12族〜第14族の任意の金属が単独で又は組み合わせて用いることができるが、例えば、Si、Al、Zn、In及びSnなどが挙げられる。なかでも、当該非遷移金属(M1)として、Si、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
B領域の厚さとしては、ガスバリアー性と生産性との両立の観点から、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、20〜500nmの範囲であることがより好ましく、50〜300nmの範囲であることがさらに好ましい。
(混合領域)
本発明に係る混合領域は、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属(M1)及び第3族元素から第11族の金属から選択される遷移金属(M2)が含有されている領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有する領域である。
ここで、混合領域は、構成成分の化学組成が相互に異なる複数の領域として形成されていてもよく、また、構成成分の化学組成が連続して変化している領域として形成されていてもよい。
なお、ガスバリアー層の混合領域以外の領域は、非遷移金属(M1)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよいし、遷移金属(M2)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよい。
(酸素欠損組成)
本発明においては、混合領域に含有される一部の組成が、酸素が欠損した非化学量論的組成(酸素欠損組成)であることが好ましい。
本発明においては、酸素欠損組成とは、当該混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、当該混合領域の少なくとも一部の組成が、下記関係式(2)で規定する条件を満たすことと定義する。また、当該混合領域における酸素欠損程度を表す酸素欠損度指標としては、当該ある混合領域における(2y+3z)/(a+bx)を算出して得られる値の最小値を用いるものとする。
化学組成式(1)
(M1)(M2)
関係式(2)
(2y+3z)/(a+bx)<1.0
上記各式において、M1は非遷移金属、M2は遷移金属、Oは酸素、Nは窒素を表し、x、y及びzはそれぞれ化学量論係数を表す。aはM1の最大価数、bはM2の最大価数を表す。
以下、特別の区別が必要ない場合、上記化学組成式(1)で表す組成を、単に複合領域の組成と言う。
上述したように、本発明に係る非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合領域の組成は、式(1)である(M1)(M2)で示される。この組成からも明らかなように、上記複合領域の組成は、一部窒化物の構造を含んでいてもよく、窒化物の構造を含んでいる方がガスバリアー性の観点から好ましい。
ここでは、非遷移金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とする。そして、上記複合領域の組成(一部窒化物となっているものを含む)が化学量論的組成になっている場合は、(2y+3z)/(a+bx)=1.0となる。この式は、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、Nの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)ともに、O及びNのいずれか一方と結合していることになる。なお、本発明において、非遷移金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を、それぞれの「最大価数」のa及びbの値として採用するものとする。
一方、本発明に係る混合領域において、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合には、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O、Nの結合手の合計が不足していることを意味し、この様な状態が上記の「酸素欠損」である。
酸素欠損状態においては、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、非遷移金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリアー性が向上すると考えられる。
また、本発明において、混合領域は、前記xの値が、0.02≦x≦49(0<y、0≦z)を満たす領域である。これは、先に、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する、としたことと同一の定義である。
この領域では、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす混合領域が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、ガスバリアー性の向上に寄与すると考えられる。なお、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の存在比率が近いほどガスバリアー性の向上に寄与しうると考えられることから、混合領域は、0.1≦x≦10を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが好ましく、0.2≦x≦5を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことがより好ましく、0.3≦x≦4を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが更に好ましい。
ここで、上述したように、混合領域の範囲内に、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0の関係を満たす領域が存在すれば、ガスバリアー性の向上効果が発揮されることが確認されたが、混合領域は、その組成の少なくとも一部が(2y+3z)/(a+bx)≦0.9を満たすことが好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.85を満たすことがより好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.8を満たすことがさらに好ましい。ここで、混合領域における(2y+3z)/(a+bx)の値が小さくなるほど、ガスバリアー性の向上効果は高くなるものの可視光での吸収も大きくなる。したがって、透明性が望まれる用途に使用するガスバリアー層の場合には、0.2≦(2y+3z)/(a+bx)であることが好ましく、0.3≦(2y+3z)/(a+bx)であることがより好ましく、0.4≦(2y+3z)/(a+bx)であることがさらに好ましい。
なお、本発明において良好なガスバリアー性が得られる混合領域の厚さは、後述するXPS分析法におけるSiO2換算のスパッタ厚さとして、5nm以上であり、この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。混合領域の厚さは、ガスバリアー性の観点からは特に上限はないが、光学特性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
上述したような特定構成の混合領域を有するガスバリアー層は、例えば、有機EL素子等の電子デバイス用のガスバリアー層として使用可能なレベルの非常に高いガスバリアー性を示す。
(XPSによる組成分析と混合領域の厚さの測定)
本発明に係るガスバリアー層の混合領域やA領域及びB領域における組成分布や各領域の厚さ等については、以下に詳述するX線光電分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、略称:XPS)により測定することにより求めることができる。
以下、XPS分析法による混合領域及びA領域、B領域の測定方法について説明する。本発明に係るガスバリアー層の厚さ方向における元素濃度分布曲線(以下、「デプスプロファイル」という。)は、具体的には、非遷移金属M1(例えば、ケイ素)の元素濃度、遷移金属M2(例えば、ニオブ)の元素濃度、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)元素濃度等を、X線光電子分光法の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、ガスバリアー層の表面より内部を露出させつつ順次表面組成分析を行うことにより作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:atom%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向における前記ガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
以下に、本発明に係るガスバリアー層の組成分析に適用可能なXPS分析の具体的な条件の一例を示す。
・分析装置:アルバックファイ社製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを求める。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。なお、分析した元素は、非遷移金属M1(例えば、ケイ素(Si))、遷移金属M2、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)である。
得られたデータから、組成比を計算し、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが共存し、かつ、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49になる範囲を求め、これを混合領域と定義し、その厚さを求める。混合領域の厚さは、XPS分析におけるスパッタ深さをSiO換算で表したものである。
本発明において、混合領域の厚さは5nm以上であるときに「混合領域」と判定する。ガスバリアー性の観点からは、混合領域での厚さの上限はないが、光学特性の観点から、好ましくは5〜100nmの範囲内であり、より好ましくは8〜50nmの範囲内であり、さらに好ましくは、10〜30nmの範囲内である。
以下に、本発明に係るガスバリアー層における混合領域の具体例について、図を用いて説明する。
図6は、ガスバリアー層の厚さ方向における非遷移金属及び遷移金属の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルと混合領域を説明するためのグラフの一例である。図6において、ガスバリアー層の表面(グラフの左端部)より深さ方向に、非遷移金属(M1)、遷移金属(M2)、O、N、Cの元素分析を行い、横軸にスパッタの深さ(層厚:nm)を、縦軸に非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の含有率(atom%)を示したグラフである。
右側より、非遷移金属(M1、例えば、Si)を金属の主成分とする元素組成であるB領域が示され、これに接して左側に遷移金属(M2、例えば、ニオブ)を金属の主成分とする元素組成であるA領域が示されている。混合領域は、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内の元素組成で示される領域であり、A領域の一部とB領域の一部とに重なって示される領域であって、かつ、厚さ5nm以上の領域である。
〔各領域の形成方法〕
(遷移金属含有領域:A領域の形成)
本発明に係る遷移金属(M2)は、前述のとおり良好なガスバリアー性が得られる観点から、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられ、これらの中でも、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する層の形成は、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、混合領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、DCパルススパッタリング、AC(交流)スパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。
プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物、窒酸化物、酸炭化物等の薄膜を形成することができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、層厚等に応じて適宜選択することができる。
スパッタ法は、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物を含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタ方式であってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載の方法や条件を適宜参照することができる。
共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる混合領域を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このような方法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
(非遷移金属含有領域:B領域の形成)
本発明に係るガスバリアー層において、非遷移金属(M1)を含有するB領域を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により、非遷移金属をターゲットとして用いて形成することができる。
また、他の方法としては、非遷移金属としてSiを含むポリシラザン含有塗布液を用いて、湿式塗布法により形成する方法も、好ましい方法の一つである。
本発明において、B領域の形成に適用可能な「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
上述した基材の平面性等を損なわないように、ポリシラザンを用いてガスバリアー層を構成するB領域を形成するためには、特開平8−112879号公報に記載されているような、比較的低温で酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素に変性することが可能なポリシラザンが好ましい。
このようなポリシラザンとしては、下記一般式(1)で表す構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0006773048
式中、R、R及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリアー層を構成するB領域の、薄膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより、隣接する基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる点で好ましい。
用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
なお、パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6又は8員環を中心とする環構造とが共存した構造を有していると推定されている。
ポリシラザンの分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらのポリシラザン化合物は有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン化合物含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
また、その他、ポリシラザンの詳細については、例えば、特開2013−255910号公報の段落(0024)〜同(0040)、特開2013−188942号公報の段落(0037)〜同(0043)、特開2013−151123号公報の段落(0014)〜同(0021)、特開2013−052569号公報の段落(0033)〜同(0045)、特開2013−129557号公報の段落(0062)〜同(0075)、特開2013−226758号公報の段落(0037)〜同(0064)等に記載されている内容を参照して適用することができる。
〈ポリシラザンを含有する塗布液〉
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等、目的にあわせて選択し、複数の有機溶剤を混合してもよい。ポリシラザンを含有する塗布液におけるポリシラザンの濃度は、目的とするガスバリアー層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素への変性を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。例えば、市販品としてのAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNAX120−20、NN120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140のような触媒が含まれるポリシラザン溶液を用いることができる。また、これらの市販品は単独で使用されてもよく、2種以上混合して使用されてもよい。
なお、ポリシラザンを含有する塗布液中において、触媒の添加量は、触媒による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けるため、ポリシラザンに対して2質量%以下に調整することが好ましい。
ポリシラザンを含有する塗布液には、ポリシラザン以外にも無機前駆体化合物を含有させることができる。ポリシラザン以外の無機前駆体化合物としては、塗布液の調製が可能であれば特に限定はされない。例えば、特開2011−143577号公報の段落「0110」〜「0114」に記載のポリシラザン以外の化合物を適宜採用することができる。
(添加元素)
ポリシラザンを含有する塗布液には、Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することができる。Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することで、塗布乾燥過程において、ポリシラザンのN原子とO原子との置き換わりが促進され、塗布乾燥後にSiO2に近い安定した組成へと変化させることができる。
Si以外の金属元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
特に、Al、B、Ti及びZrが好ましく、中でもAlを含む有機金属化合物が好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
本発明に係るガスバリアー性フィルムを構成するポリシラザン含有層における上記添加金属元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して0.05〜10mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5mol%である。
ポリシラザンを用いたB領域の形成においては、ポリシラザン含有層を形成した後、改質処理を施すことが好ましい。
改質処理とは、ポリシラザンを、エネルギーを付与して、その一部又は全てを酸化ケイ素又は酸化窒化ケイ素への転化する処理である。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができ、例えば、公知のプラズマ処理、プラズマイオン注入処理、紫外線照射処理、真空紫外線照射処理等を挙げることができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明において、基材上に塗布方式のポリシラザン含有塗布液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外線(VUV)を照射して改質処理する真空紫外線照射処理を適用してガスバリアー層を形成する方法が好ましい。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられ、例えば、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)等を挙げることができる。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜や酸化窒化ケイ素膜の形成を行う方法である。
これらの改質処理の詳細については、例えば、特開2012−086394号公報の段落(0055)〜同(0091)、特開2012−006154号公報の段落(0049)〜同(0085)、特開2011−251460号公報の段落(0046)〜同(0074)等に記載の内容を参照することができる。
B領域の厚さは、特に制限はないが、1〜500nmの範囲内が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲内である。
(混合領域の形成)
混合領域形成方法としては、前述したように、A領域及びB領域を形成する際に、各々の形成条件を適宜調整して、A領域とB領域との間に混合領域を形成する方法が好ましい。
B領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記非遷移金属(M1)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
B領域を上述した塗布成膜法により形成する場合は、例えば、前記非遷移金属(M1)を含有する成膜原料種(ポリシラザン種等)、触媒種、触媒含有量、塗布膜厚、乾燥温度・時間、改質方法、改質条件からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
A領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
なお、上記した方法によって、混合領域の厚さを制御するには、A領域及びB領域を形成する方法の形成条件を適宜調整して、制御することができる。例えば、A領域を気相成膜法で形成する際には、成膜時間を制御することにより所望の厚さにすることができる。また、これに加えて、非遷移金属と遷移金属の混合領域を直接形成する方法も好ましい。
混合領域を直接形成する方法としては、公知の共蒸着法を用いることが好ましい。このような共蒸着法として、好ましくは、共スパッタ法が挙げられる。本発明において採用される共スパッタ法は、例えば、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方を含む合金からなる複合ターゲットや、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物からなる複合ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた1元スパッタでありうる。
また、本発明における共スパッタ法は、非遷移金属(M1)の単体又はその酸化物と、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。
そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このため、かような手法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
<ガスバリアー層の転写方法>
本発明に係るガスバリアー層は、特開2015−173249号公報に記載されている剥離方法ように、ガラス等の基板上に剥離層を介してガスバリアー層を被剥離層として形成し、その後、被剥離層をプラスチックフィルムに転写して、ガスバリアー性フィルムとして機能させることもできる。また、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の電子デバイスに転写して、封止層として機能させることもできる。
このようなガスバリアー層の形成方法は、特に、軽量、薄型、又は可撓性を有する電子デバイスに、薄膜のガスバリアー層や封止層を形成する工程のクリーン度を管理し易くし、デバイスの歩留まりを向上させる観点から好ましい。
具体には、基板上に、厚さ0.1nm以上10nm未満の剥離層を形成する第1の工程と、前記剥離層上に、前記剥離層と接する第1の層を含む被剥離層を形成する第2の工程と、前記剥離層と前記第1の層の一部を分離し、前記剥離層と前記被剥離層とを分離する第3の工程と、を有する剥離方法によりガスバリアー層を被剥離層として形成することが好ましい。第2の工程と第3の工程のあいだに剥離の起点を形成する工程を設けても良い。
以下に剥離方法の一例を示す。図7A〜7Fは、剥離方法を説明する図である。
<剥離方法>
はじめに、第1の工程として、作製基板101上に厚さ10nm未満の剥離層103を形成し、次いで第2の工程として、剥離層103上に被剥離層105を形成する(図7A)。ここでは、島状の剥離層を形成する例を示したがこれに限られない。また、被剥離層105を島状に形成してもよい。
この工程では、作製基板101から被剥離層105を剥離する際に、作製基板101と剥離層103の界面、剥離層103と被剥離層105の界面、又は剥離層103中で剥離が生じるような材料を選択する。本実施の形態では、被剥離層105と剥離層103の界面で剥離が生じる場合を例示するが、剥離層103や被剥離層105に用いる材料の組み合わせによってはこれに限られない。なお、被剥離層105が積層構造である場合、剥離層103と接する層を特に第1の層と記す。
剥離層103の厚さは、例えば、10nm未満、好ましくは8nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下とすればよい。剥離層103が薄いほど剥離の歩留まりを向上でき好ましい。また、剥離層103の厚さは、例えば、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上とすればよい。剥離層103が厚いほど厚さの均一な膜を成膜でき好ましい。例えば、剥離層103の厚さは1nm以上8nm以下が好ましい。本実施の形態では、厚さ5nmのタングステン膜を用いる。
なお、剥離層103の厚さは、一例としては、層の全体にわたって、上記のような厚さであることが望ましい。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。例えば、剥離層103は、少なくとも一部において、上記のような厚さの領域を有していてもよい。または、剥離層103は、望ましくは、剥離層の50%以上の領域において、より望ましくは、剥離層の90%以上の領域において、上記のような厚さの領域を有していてもよい。つまり、本発明の一態様では、剥離層103の一部に厚さが0.1mm未満の領域や、10nm以上の領域を有していてもよい。
作製基板101には、少なくとも作製工程中の処理温度に耐えうる耐熱性を有する基板を用いる。作製基板101としては、例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、半導体基板、セラミック基板、金属基板、樹脂基板、プラスチック基板などを用いることができる。
なお、量産性を向上させるため、作製基板101として大型のガラス基板を用いることが好ましい。例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm、又は620mm×750mm)、第4世代(680mm×880mm、又は730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス基板、又はこれよりも大型のガラス基板を用いることができる。
作製基板101にガラス基板を用いる場合、作製基板101と剥離層103との間に、下地膜として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成すると、ガラス基板からの汚染を防止でき、好ましい。
剥離層103は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素、該元素を含む合金材料、又は該元素を含む化合物材料等を用いて形成できる。シリコンを含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。また、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、In−Ga−Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。剥離層103に、タングステン、チタン、モリブデンなどの高融点金属材料を用いると、被剥離層105の形成工程の自由度が高まるため好ましい。
剥離層103は、例えばスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法(スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法等を含む)、印刷法、蒸着法等により形成できる。
剥離層103が単層構造の場合、タングステン膜、モリブデン膜、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む膜を形成することが好ましい。また、タングステンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜、モリブデンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜を形成してもよい。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。例えば、Mo:W=3:1[原子数比]、Mo:W=1:1[原子数比]、又はMo:W=1:3[原子数比]などのモリブデンとタングステンの合金膜を用いてもよい。また、モリブデンとタングステンの合金膜は、例えば、Mo:W=49:51[重量%]、Mo:W=61:39[重量%]、Mo:W=14.8:85.2[重量%]の組成の金属ターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
タングステン膜の表面状態を変えることにより、剥離層103と後に形成される被剥離層との密着性を制御することが可能である。例えば、タングステンを含む膜の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、亜酸化窒素(NO)プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶液での処理等を行ってタングステンの酸化物を含む膜を形成してもよい。またプラズマ処理や加熱処理は、酸素、窒素、亜酸化窒素単独、あるいは該ガスとその他のガスとの混合気体雰囲気下で行ってもよい。
本発明の一態様では、厚さ10nm未満のタングステン膜を用いることで、第3の工程において、小さい剥離力で容易に剥離を行うことができるため、上記プラズマ処理や加熱処理を行わなくてもよい。これにより、剥離工程、さらには装置の作製工程を簡略化でき好ましい。
被剥離層105としては、剥離層103上に接するガスバリアー層を作製する。さらに、ガスバリアー層上に機能素子を作製してもよい。
次に、被剥離層105と基板109とを接合層107を用いて貼り合わせ、接合層107を硬化させる(図7B)。ここで、図7Bは図7Cにおける一点鎖線A1−A2間の断面図に相当する。なお、図7Cは、基板109(図示しない)側から見た平面図である。
ここで、接合層107は剥離層103及び被剥離層105と重なるように配置することが好ましい。そして、図7B、7Cに示すように、接合層107の端部は、剥離層103の端部よりも外側に位置しないことが好ましい。
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(剥離の起点を形成する工程)(図7B、7D)。
レーザ光の照射を用いることで、剥離の起点を形成するために基板の切断等をする必要がなく、ゴミ等の発生を抑制でき、好ましい。
レーザ光は、硬化状態の接合層107と、被剥離層105と、剥離層103とが重なる領域に対して照射する(図7Bの矢印P1参照)。
レーザ光は、どちらの基板側から照射してもよいが、散乱した光が機能素子等に照射されることを抑制するため、剥離層103が設けられた作製基板101側から照射することが好ましい。なお、レーザ光を照射する側の基板は、該レーザ光を透過する材料を用いる。
少なくとも第1の層(被剥離層105に含まれる、剥離層103と接する層)にクラックを入れる(膜割れやひびを生じさせる)ことで、第1の層の一部を除去し、剥離の起点を形成できる(図7Dの点線で囲った領域参照)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層105の他の層や、剥離層103、接合層107の一部を除去してもよい。レーザ光の照射によって、膜の一部を溶解、蒸発、又は熱的に破壊することができる。また、剥離の起点の形成方法は問わない。少なくとも第1の層の一部が剥離層から剥離されればよく、第1の層の一部を除去しなくてもよい。
剥離工程時、剥離の起点に、被剥離層105と剥離層103を引き離す力が集中することが好ましいため、硬化状態の接合層107の中央部よりも端部近傍に剥離の起点を形成することが好ましい。特に、端部近傍の中でも、辺部近傍に比べて、角部近傍に剥離の起点を形成することが好ましい。
また、接合層107の端部近傍に連続的もしくは断続的にレーザ光を照射することで、実線状もしくは破線状に剥離の起点を形成すると、剥離が容易となるため好ましい。
剥離の起点を形成するために用いるレーザには特に限定はない。例えば、連続発振型のレーザやパルス発振型のレーザを用いることができる。レーザ光の照射条件(周波数、パワー密度、エネルギー密度、ビームプロファイル等)は、作製基板101や剥離層103の厚さ、材料等を考慮して適宜制御する。
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層105と作製基板101とを分離する(図7E、7F)。これにより、被剥離層105を作製基板101から基板109に転置することができる。このとき、一方の基板を吸着ステージ等に固定することが好ましい。例えば、作製基板101を吸着ステージに固定し、作製基板101から被剥離層105を剥離してもよい。また、基板109を吸着ステージに固定し、基板109から作製基板101を剥離してもよい。なお、剥離の起点よりも外側に形成された接合層107は、作製基板101又は基板109の少なくとも一方に残存することになる。図7E、7Fでは双方の側に残存する例を示すがこれに限られない。
例えば、剥離の起点から、物理的な力(人間の手や治具で引き剥がす処理や、ローラーを回転させながら分離する処理等)によって被剥離層105と作製基板101とを分離すればよい。
また、剥離層103と被剥離層105との界面に水などの液体を浸透させて作製基板101と被剥離層105とを分離してもよい。毛細管現象により液体が剥離層103と被剥離層105の間にしみこむことで、容易に分離することができる。また、剥離時に生じる静電気が、被剥離層105に含まれる機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。なお、液体を霧状又は蒸気にして吹き付けてもよい。液体としては、純水や有機溶剤などを用いることができ、中性、アルカリ性、もしくは酸性の水溶液や、塩が溶けている水溶液などを用いてもよい。
なお、剥離後に、基板109上に残った、被剥離層105と基板109との接着に寄与していない接合層107等を除去してもよい。除去することで、後の工程で機能素子に悪影響を及ぼすこと(不純物の混入など)を抑制でき好ましい。例えば、ふき取り、洗浄等によって、不要な樹脂を除去することができる。以上に示した本発明の一態様の剥離方法では、レーザ光の照射により剥離の起点を形成し、剥離層103と被剥離層105とを剥離しやすい状態にしてから、剥離を行う。これにより、剥離工程の歩留まりを向上させることができる。
<電子デバイス>
上記したような本発明に係るガスバリアー性フィルムは、優れたガスバリアー性、透明性、耐屈曲性を有する。このため、本発明に係るガスバリアー性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスに用いられるガスバリアー性フィルム及びこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子が好ましい。
<基材>
本発明に用いられる発光面側樹脂基材と背面側基材としては、プラスチックフィルムが用いられることが好ましい。用いられるプラスチックフィルムは、有機発光素子やガスバリアー層等を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
樹脂基材の厚さは10〜100μm程度が好ましく、更に好ましくは15〜50μmである。
その他、基材の種類、基材の製造方法等については、特開2013−226758号公報の段落「0125」〜「0136」に開示されている技術を適宜採用することができる。
特に巻き取り形態の発光装置の場合には、背面基材は、剛性の高いものが、発光装置を安定に支持する観点から好ましい。
<有機機能層ユニットの構成と製造方法>
次いで、本発明に好ましく用いることのできる発光素子としての有機EL素子において、透明陽極上に形成される有機機能層ユニットの各層の構成とその製造方法について、代表例として、電荷注入層、発光層、正孔輸送層、電子輸送層及び阻止層の順に説明する。
(電荷注入層)
本発明に係る有機EL素子において、電荷注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
電荷注入層としては、一般には、正孔注入層であれば、透明陽極と発光層又は正孔輸送層との間、電子注入層であれば陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させることができる。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン):PSS(ポリスチレンスルホン酸)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATA(4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン)に代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデン、酸化アルミニウム等に代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、本発明における透明電極が陰極の場合は、金属錯体等の有機材料が特に好適に用いられる。電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、構成材料にもよるが、その層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
(発光層)
本発明に係る有機EL素子において、有機機能層ユニットを構成する発光層は、発光材料としてリン光発光化合物が含有されている構成が好ましい。
この発光層は、電極又は電子輸送層から注入される電子と、正孔輸送層から注入される正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
発光層の厚さの総和は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内がさらに好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
本発明においては、二つ以上の発光層ユニットを積層した構成であっても良い。個々の発光層の厚さとしては、それぞれ1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、さらに好ましくは1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑及び赤のそれぞれの発光色に対応する場合は、青、緑及び赤の各発光層の厚さの関係について特に制限されない。
以上のような発光層は、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)、インクジェット法等の公知の方法により形成することができる。
また発光層は、複数の発光材料を混合してもよく、リン光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)とを同一発光層中に混合して用いてもよい。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光材料(発光ドーパント化合物ともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
〈ホスト化合物〉
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらにリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、あるいは、複数種のホスト化合物を用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
〈発光材料〉
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料又はリン光発光ドーパントともいう。)や蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光材料ともいう。)が挙げられる。
〈リン光発光性化合物〉
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されればよい。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用されている公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、二種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であってもよい。
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、特開2012−069737号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等を挙げることができる。
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としては、Irを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらには、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも1つの配位様式を含む錯体が好ましい。
上記説明したリン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体ともいう)は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of
Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中の参考文献等に記載されている方法を適用することにより合成できる。
〈蛍光発光性化合物〉
蛍光発光性化合物としては、例えば、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料から構成され、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層の機能を有する。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかの特性を有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー及びチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、その他にも、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができ、特に、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(略称:TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン及びN−フェニルカルバゾール等が挙げられる。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。この正孔輸送層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよい。
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープすることにより、p性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報及びJ.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料から構成され、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層及び積層構造の電子輸送層において、発光層に隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層に伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができる。電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の一種又は二種以上からなる単一構造であってもよい。
(阻止層)
阻止層としては、正孔阻止層及び電子阻止層が挙げられ、上記説明した有機機能層ユニットの各構成層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層等を挙げることができる。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に適用する正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
〔陽極〕
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
〔陰極〕
陰極は、有機機能層ユニットに正孔を供給するために機能する電極膜であり、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物が用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニ1ウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO及びSnO等の酸化物半導体などが挙げられる。
陰極は、これらの導電性材料を用い、蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、有機EL素子が、陰極側からも発光光を取り出す、両面発光型の場合には、光透過性の良好な陰極を選択して構成すればよい。
〔封止部材〕
本発明に係る有機EL素子は、透明陽極を含む透明導電性フィルム(TF)、陰極、及び陰極と透明陽極との間に形成される有機機能層ユニットを外気から遮断するため、封止部材で封止する構成を有することが好ましい。
本発明に用いられる封止手段としては、例えば、封止材料と、上記有機EL素子の構成部材を、接着剤で封止樹脂層を形成して接着する方法を挙げることができる。
としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に問わない。
封止に用いる封止材料としては、具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。更には、ポリマーフィルムは、JIS K
7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3cm3/(
・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
封止樹脂層を形成する接着剤の具体例としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
尚、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までの温度範囲で接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止材料への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
<他の発光素子>
なお、以上、発光素子の一例として有機EL素子について述べたが、本発明の一態様はこれに限定されず、他の表示素子、発光素子、半導体素子等を用いてもよい。
例えば、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、又は様々な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子又は発光装置の一例としては、EL素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブなど、電気磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
《有機EL素子の作製》
[有機EL素子1の作製]
下記の方法に従って、有機EL素子1を作製した。
〔透明導電性フィルム1の作製〕
(工程1−1:樹脂基材の準備)
樹脂基材として、両面に易接着加工された厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、KFL12W♯23、以下、PETと略記する。)を用い、ロール・トゥ・ロール方式により、下記のハードコートを両面に形成した。
このPETのガスバリアー層を形成する面とは反対側の面に、アンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。具体的には、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、ガスバリアー層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した。具体的には、JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、樹脂基材を作製した(以下、全ての作製例について、同一の基材を用いている。)。
次いで、上記樹脂基材のガスバリアー層を形成する側の面の反対面に、厚さ20μmの耐熱性アクリル系樹脂からなる粘着剤を有する粘着層を介して、サポートフィルムとして、厚さ75μmのPETフィルムを貼合し、ニップロールで圧着して、サポートフィルム付樹脂基材を得た。
(工程1−2:CVDガスバリアー層の形成)
下記のプラズマCVD法により、樹脂基材上にガスバリアー層を形成した。
〈プラズマCVD法〉
特開2007−307784号公報に記載のプラズマCVD装置を用いて、樹脂基材上に、下記の成膜条件に従って、酸化ケイ素からなる厚さ200nmのガスバリアー層を形成した。
〈成膜条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:30sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:300sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.5kW
プラズマ発生用電源の周波数:13.56MHz
可撓性樹脂基材の搬送速度;0.4m/min
(工程1−3:塗布ガスバリアー層の形成)
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで希釈し、固形分8質量%の塗布液を調製した。
塗布ガスバリアー層の形成には、塗布面側保護フィルム剥離、塗布、乾燥、エキシマ改質処理、塗布面側保護フィルム貼合を連続しておこなえるロール・トゥ・ロール方式の塗布装置を用いた。
上記基材上にダイコーターを用いて、上記塗布液を、乾燥後の厚さが250nmになるよう塗布し、ドライヤーゾーンにおいて80℃で乾燥した。
次いで、連続して、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射ゾーンにおいて、照射エネルギーを6.0J/cmとした条件で真空紫外線照射処理を行って、ガスバリアー層を形成した。この際、照射雰囲気は60℃に加熱した窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%以下とした。ここまで、塗布面に搬送ロール等の接触はなかった。
この工程をさらに2回繰り返し、厚さ250nmの塗布ガスバリアー層を3層積層して形成した。次いで、塗布面に保護フィルムとして自己粘着OPPフィルム(フタムラ化学社製、FSA010M)を貼合した後、巻き取った。
このようにして、合計の厚さが950nmであるガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルム基材1を得た。
ガスバリアー性フィルム基材1の水蒸気透過率を、Ca法を用いて測定した。測定条件は、40℃、90%RHとした。得られた水蒸気透過率は、8.2×10−6g/(m・24h)であった。
〈Ca法による水蒸気透過率の測定〉
(評価用セルの作製)
ガスバリアー性フィルムのガスバリアー層表面をUV洗浄した後、ガスバリアー層表面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。
株式会社 ALSテクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。
Ca蒸着済のガラス板をグローブボックス内に取り出し、封止樹脂層を貼合したガスバリアー性フィルムの封止樹脂層面とガラス板のCa蒸着面とを接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にガラス板を下にして置き、30分間硬化させて、評価用セルを作製した。
なお、ガスバリアー性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリアー性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いた試料を、同様に40℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、500時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
(水蒸気透過率の測定)
上記評価用セルを用いて、500時間経過前後Caの透過濃度の変化からCaと反応した水分量を求め、水蒸気透過率を求めた。
透過濃度測定には、コニカミノルタ社製の白黒透過濃度計 TM−5を用いた。透過濃度は、評価用セルの任意の4点で測定し、その平均値を算出した。
〔有機EL素子の作製〕
(工程1−4:透明陽極の形成)
得られたガスバリアー性フィルム基材1の保護フィルムを剥離したガスバリアー層上に、銀薄膜から構成される透明陽極を下記の方法に従って形成した。
尚、有機EL素子1の外形サイズは、60mm×150mmであり、発光部分のサイズは、40mm×130mmである。
ガスバリアー性フィルム基材1を、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を装填し、真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。
次に、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った抵抗加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で厚さ15nmの銀からなる透明陽極を形成し、透明導電性フィルム1を作製した。
(工程1−5:有機機能層ユニット〜陰極の形成)
引き続き、市販の真空蒸着装置を用い、真空度1×10−4Paまで減圧した後、透明陽極まで形成した透明導電性フィルム1を移動させながら、下記に示す化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、下記に示す化合物A−3(青色発光ドーパント)、化合物A−1(緑色発光ドーパント)、化合物A−2(赤色発光ドーパント)及び化合物H−1(ホスト化合物)を、化合物A−3が膜厚に対し線形に35質量%から5質量%になるように、成膜領域により蒸着速度を変化させ、化合物A−1と化合物A−2は膜厚に依存することなく各々0.2質量%の濃度になるように、蒸着速度0.0002nm/秒で、化合物H−1は64.6質量%から94.6質量%になるように、成膜領域により蒸着速度を変化させて、総層厚が70nmになるよう共蒸着して発光層を形成した。
その後、下記化合物ET−1を膜厚30nmで蒸着して電子輸送層を形成し、更にフッ化カリウム(KF)を厚さ2nmで形成して、有機機能層ユニットを形成した。次いで、アルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成した。
なお、上記化合物HT−1、化合物A−1〜3、化合物H−1、及び、化合物ET−1は、以下に示す化合物である。
Figure 0006773048
(工程1−6:封止工程)
次に、封止基材として、透明導電性フィルム1の作製に用いた、ガスバリアー性フィルム基材1使用し、この封止基材の片面に封止樹脂層として熱硬化型の接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した封止部材を用いて、陰極までを形成した試料に重ね合わせた。このとき、透明陽極及び陰極の引き出し電極の端部が外に出るように、封止部材の封止樹脂層形成面と、有機EL素子の有機機能層ユニット面とを重ね合わせた。
次に、上記積層体を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた樹脂基材〜陰極間で形成した試料と封止部材とに押圧をかけて5分間保持した。続いて、積層体を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、含水率が1ppm以下の窒素雰囲気で、JIS B 9920に準拠して測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度が0.8ppm以下の大気圧下で行った。なお、透明陽極及び陰極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略してある。
次いで、基板側、及び、封止側のガスバリアー性フィルム基材1のサポートフィルムを剥離した。
以上により、全厚が約75μmの白色発光装置である、有機EL素子1を作製した。
《有機EL素子2の作製》
下記の方法に従って、有機EL素子2を作製した。
〔透明導電性フィルム1の作製〕
(工程2−1:樹脂基材の準備)
有機EL素子1と同様にした。
(工程2−2:塗布ガスバリアー層1の形成)
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで希釈し、固形分8質量%の塗布液を調製した。
塗布ガスバリアー層の形成には、塗布面側保護フィルム剥離、塗布、乾燥、エキシマ改質処理、塗布面側保護フィルム貼合を連続しておこなえるロール・トゥ・ロール方式の塗布装置を用いた。
上記基材上にダイコーターを用いて、上記塗布液を、乾燥後の厚さが250nmになるよう塗布し、ドライヤーゾーンにおいて80℃で乾燥した。
次いで、連続して、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射ゾーンにおいて、照射エネルギーを6.0J/cmとした条件で真空紫外線照射処理を行って、塗布ガスバリアー層1を形成した。この際、照射雰囲気は60℃に加熱した窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%以下とした。ここまで、塗布面に搬送ロール等の接触はなかった。
次いで、塗布面に保護フィルムを貼合せずに巻き取った。
(工程2−3:遷移金属含有層の形成)
工程2−2で得られた塗布ガスバリアー層の上に、ロール・トゥ・ロール方式のマグネトロンスパッタ装置を用い、遷移金属含有層である、酸化ニオブ層を形成した。
ターゲットとして、市販の酸素欠損型酸化ニオブターゲットを用い、DCパルス方式によりスパッタを行った。出力密度を4.0kW/cm、T−S間距離を100mm、製膜圧力を0.2Pa、プロセスガスとしてアルゴンと酸素を用い、酸素比率を10%とした。また、膜厚が15nmとなるように、搬送速度を調整した。
(工程2−4:塗布ガスバリアー層2の形成)
固形分4質量%とした以外は、塗布ガスバリアー層1と同様にして塗布液を調製した。また、乾燥後の厚さが110nmになるよう塗布した以外は、塗布ガスバリアー層1と同様にして、塗布ガスバリアー層1を形成した。
次いで、塗布面に保護フィルムとして自己粘着OPPフィルム(フタムラ化学社製、FSA010M)を貼合した後、巻き取った。
このようにして、合計の厚さが375nmであるガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルム基材2を得た。
ガスバリアー性フィルム基材2の水蒸気透過率を、Ca法を用いて測定した。測定条件は、ガスバリアー性フィルム基材1の測定と同じ40℃、90%RHとした。得られた水蒸気透過率は、6.8×10−6g/(m・24h)であった。
また、ガスバリアーの厚さ方向の組成プロファイルをXPS法により分析した。塗布ガスバリアー層1と遷移金属含有層との界面1、及び、遷移金属含有層と塗布ガスバリアー層2との界面2に、SiとNbとを含有する混合領域が形成されていることを確認した。また、混合領域における酸素欠損度の最小値を関係式(2)を用いて求めたところ、界面1では、0.57、界面2では、0.60であった。
〈ガスバリアー層の厚さ方向の組成分布の測定〉
XPS分析により、ガスバリアー層の厚さ方向の組成分布プロファイルを測定した。なお、XPS分析条件は以下の通りである。
〈XPS分析条件〉
・装置:アルバックファイ社製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO2換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを得た。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。なお、分析した元素は、Si、Nb、Ta、Al、O、N、Cである。
ただし、今回作成した試料において、(M1)と(M2)の含有する領域ではAlは検出されなかった。
〈混合領域の厚さの測定〉
遷移金属がNbである場合を例に取ると、上記XPS組成分析から得られたデータから、ガスバリアー層の組成は、(Si)(Nb)で表すことができる。第1層及び第2層を積層した態様においては、第1層と第2層との界面領域で、非遷移金属であるSiと遷移金属であるNbとが共存し、かつ遷移金属Nb/Siの原子数比率の値xが、0.02≦x≦50の範囲内にある領域を「混合領域」とし、当該領域の有無とその厚さ(nm)を測定し、表に記載した。ガスバリアー層を非遷移金属であるSiと遷移金属であるNb(又はTa)の複合酸化物層として形成した態様の場合も同様の測定を行い、当該領域の厚さ(nm)を表に記載した。
〈混合領域の酸素欠損指標の計算〉
上記XPS分析データを用いて、各測定点における(2y+3z)/(a+bx)の値を計算した。ここで、非遷移金属はSiであるため、a=4、また、遷移金属はNbもしくはTaであるため、a=5である。(2y+3z)/(a+bx)の値の最小値を求め、これを酸素欠損度指標として、表に記載した。(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合、酸素欠損の状態であることを示す。
〔有機EL素子の作製〕
(工程2−5:透明陽極の形成)
ガスバリアー性フィルム基材2を用いた以外は、有機EL素子1と同様にした。
(工程2−6:有機機能層ユニット〜陰極の形成)
ガスバリアー性フィルム基材2を用いた以外は、有機EL素子1と同様にした。
(工程2−7:封止工程)
次に、封止基材として、ガスバリアー性フィルム基材2を用いた以外は、有機EL素子1と同様にした。
以上により、全厚が約73μmの白色発光装置である、有機EL素子2を作製した。
有機EL素子1、有機EL素子2ともに、初期発光状態は良好で、ダークスポットの発生はなかった。また、85℃、85%RHの環境下に100時間保存した後も、ダークスポットの発生はなかった。
実施例2
折り畳み形態の発光装置を想定した評価を行った。
図2A、2Bのような折り畳み形態の発光装置を模した発光装置を作成した。
折り畳み時に、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記部位Aの曲率半径Arに対する前記部位Bの曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.0の範囲内になるように、折り畳み時に屈曲部にあてがわれるヒンジ部を有する装置をタイプ(1)(図2A)とし、屈曲部にヒンジ部がない装置をタイプ(2)(図2B)として、ヒンジ部の押し付け位置を調節して前記部位Aと部位Bの曲率半径が表1の値となるように変えて8種の発光装置を作成した。ヒンジ部の長さは16mmである。ヒンジ部を有しない装置であるタイプ(2)の場合は、部位Bの最小曲率半径が1mm未満であった。
各発光装置について、平に伸ばした状態から支持筐体の面を合わせる折り畳みを5000回行った後、及び折り畳みを10000回行った後に発光させて、ヒンジ部における発光部のダークスポット発生の有無を、下記指標1〜5にしたがって評価した。
5:直径100μm以上のダークスポットの発生なし
4:直径100μm以上のダークスポットの発生が1〜2個
3:直径100μm以上のダークスポットの発生が3〜5個
2:直径100μm以上のダークスポットの発生が6〜10個
1:直径100μm以上のダークスポットの発生が11個以上
Figure 0006773048
表1に示すように、本発明の発光装置は、折り畳みによるダークスポットの発生がほとんどなく、良好であった。特に、ガスバリアー層に遷移金属と非遷移金属の混合領域を有するガスバリアー性フィルムを用いた発光装置は、良好な結果を示した。
参考例
巻き取り形態の発光装置を想定した評価を行った。
支持部材として、厚さ100μmのスチールシートを用い、これに上記作製した有機EL素子を貼合して、有機EL素子を外側にして、半径8mmの巻き取り軸に、長手方向に巻き取る形態の、巻き取り形態の発光装置を模した装置を4種作成した。
タイプ(3)の装置は、スチールシートに対して、巻き取り軸に遠い側の短辺部10mm幅を熱硬化型の接着剤(エポキシ系樹脂、100μm厚)で接着し、90℃30分の硬化を行って固定部(固定端)とした。その他の部分は、100μm厚のアクリル系粘着剤シート(日東電工社製)を用いて貼合し、巻き取り軸に近い側の短辺部は自由端とした(図4A参照。右端が固定端。)。
タイプ(4)の装置は、スチールシートに対して、全面を熱硬化型の接着剤(エポキシ系樹脂、100μm厚)で接着し、90℃30分の硬化を行って固定した。
有機EL素子と装置タイプを組み合わせて発光装置11〜14を作成して、各発光装置に対して、100回の巻き取り、巻き戻しを行った後に発光させて、発光状態を確認した。結果を表2に示す。
Figure 0006773048
表2に示したように、参考例の発光装置は、巻き取り、巻き戻しを行っても良好な発光状態を維持し、ダークスポットの発生もなかった。一方、可動部を有しない比較例の発光装置は、巻き取りで有機EL素子が引き伸ばされたことによって形成された、ガスバリアー層クラックに起因すると考えられる線状のダークスポットが多発した。
本発明の発光装置は、携帯時の小型化が可能で、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機EL素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
1 発光装置
2 発光面側樹脂基材
3 有機発光素子
4 背面側基材
5 ガスバリアー層
6 電極
7 有機機能層ユニット
8 封止部材
A 発光面が外側に曲げられた部位
B 発光面が内側に曲げられた部位
L 発光部
10、11 支持筐体
12 ヒンジ部
21 支持部材
22 粘着剤
23 筐体
24 巻き取り部材
25 固定部(固定端)
26 制御部
27 自由端
101 作製基板
103 剥離層
105 被剥離層
107 接合層
109 基板

Claims (11)

  1. 発光面側樹脂基材、有機発光素子及び背面側基材がこの順で積層された発光部を有する発光装置であって、前記発光面側樹脂基材と有機発光素子間、又は前記有機発光素子と背面側基材間の少なくともいずれか一方に無機素材を主成分とするガスバリアー層を有し、かつ、発光装置が、支持部材上に固定部と可動部を有して支持され、さらに、携帯時に前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面の曲率半径が、1.0〜10.0mmの範囲内の曲面部を有し、
    前記携帯時、折り畳み形態を有し、前記発光面側樹脂基材同士が間隙2mm未満で対向し、かつ、前記有機発光素子の前記可動部が形成する曲面が、発光面が外側に曲げられた部位Aと発光面が内側に曲げられた部位Bとを有し、前記部位Aと部位Bとは曲率の変曲点を介して連続して存在し、かつ、前記可動部の長さをLとし、前記可動部が形成するループの、前記支持部材からの突き出し長さをCとした時に、C/Lが0.3以上であり、かつ、前記部位Aの最小曲率半径Arに対する前記部位Bの最小曲率半径Brの比の値(Br/Ar)が、0.4〜1.1の範囲内であり、
    さらに、前記支持部材として、2つの支持筐体を有し、これら2つの支持筐体間に、前記折り畳み形態時に、前記部位Bを背後から押圧するヒンジ部が設けられ、
    前記発光装置を開いたときに、前記ヒンジ部が前記発光部と接していないことを特徴とする発光装置。
  2. 前記ガスバリアー層の総厚さが、20〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記有機発光素子の前記可動部が形成する前記曲面の曲率半径が、1.0〜5.0mmの範囲内の曲面部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
  4. 前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発光装置。
  5. 前記ガスバリアー層が、前記遷移金属M2を金属の主成分として含有する領域と前記非遷移金属M1を金属の主成分として含有する領域との間に、前記混合領域を有すること特徴とする請求項4に記載の発光装置。
  6. 前記ガスバリアー層内の厚さ方向における全領域が、前記遷移金属及び非遷移金属が含
    有されている混合領域であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の発光装置。
  7. 前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1を主成分として含有するガスバリアー層1とガスバリアー層2の二つの層と、当該二つの層の間に遷移金属M2を含有する層とを有し、
    前記ガスバリアー層1と前記遷移金属M2を含有する層との界面1、及び、前記ガスバリアー層2と前非遷移金属M2を含有する層との界面2に、それぞれ前記混合領域を有することを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
  8. 前記混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、下記関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項4から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置。
    化学組成式(1): (M1)(M2)
    関係式(2): (2y+3z)/(a+bx)<1.0
    (ただし式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、
    x、y、z:化学量論係数、 a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
  9. 前記非遷移金属が、ケイ素であることを特徴とする請求項4から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置。
  10. 前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする請求項4から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置。
  11. 有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の発光装置。
JP2017552415A 2015-11-24 2016-11-22 発光装置 Active JP6773048B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015228388 2015-11-24
JP2015228388 2015-11-24
PCT/JP2016/084528 WO2017090577A1 (ja) 2015-11-24 2016-11-22 発光装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017090577A1 JPWO2017090577A1 (ja) 2018-09-06
JP6773048B2 true JP6773048B2 (ja) 2020-10-21

Family

ID=58764320

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017552415A Active JP6773048B2 (ja) 2015-11-24 2016-11-22 発光装置

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP6773048B2 (ja)
CN (1) CN108293279B (ja)
TW (1) TWI638448B (ja)
WO (1) WO2017090577A1 (ja)

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3880497B2 (ja) * 2002-09-27 2007-02-14 Necインフロンティア株式会社 Lan通信システム
CN102341840A (zh) * 2009-03-17 2012-02-01 夏普株式会社 显示装置
JP5246082B2 (ja) * 2009-07-15 2013-07-24 大日本印刷株式会社 ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法、封止体、及び装置
JP5895689B2 (ja) * 2012-04-27 2016-03-30 コニカミノルタ株式会社 電子デバイスおよびその製造方法
US8912018B2 (en) * 2012-12-17 2014-12-16 Universal Display Corporation Manufacturing flexible organic electronic devices
KR102039496B1 (ko) * 2013-08-19 2019-11-04 삼성디스플레이 주식회사 접이식 표시 장치
KR20200139848A (ko) * 2013-08-30 2020-12-14 가부시키가이샤 한도오따이 에네루기 켄큐쇼 표시 장치
JP6513929B2 (ja) * 2013-11-06 2019-05-15 株式会社半導体エネルギー研究所 剥離方法
KR102245808B1 (ko) * 2014-02-12 2021-04-30 삼성디스플레이 주식회사 롤러블 표시 장치
US10236459B2 (en) * 2015-02-04 2019-03-19 Sharp Kabushiki Kaisha Display device and method for producing same

Also Published As

Publication number Publication date
TWI638448B (zh) 2018-10-11
TW201733093A (zh) 2017-09-16
WO2017090577A1 (ja) 2017-06-01
CN108293279A (zh) 2018-07-17
CN108293279B (zh) 2019-12-31
JPWO2017090577A1 (ja) 2018-09-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101885053B1 (ko) 유기 일렉트로루미네센스 소자
WO2014142036A1 (ja) ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子
US10074825B2 (en) Organic electroluminescent element
JP5895689B2 (ja) 電子デバイスおよびその製造方法
JP5895684B2 (ja) ガスバリア性フィルムの製造方法、および前記ガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスの製造方法
JPWO2016039060A1 (ja) ガスバリア性フィルム、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子
JP5835083B2 (ja) 有機エレクトロニクスデバイス
JP2022010127A (ja) ガスバリアフィルムの製造方法、透明導電部材の製造方法、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
WO2016143660A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP5835082B2 (ja) シート状接着剤およびこれを用いてなる電子デバイス
WO2016063869A1 (ja) 光取り出し基板、光取り出し基板の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
JP6773048B2 (ja) 発光装置
US9577217B2 (en) Organic electroluminescent element
JP2015099636A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP6812429B2 (ja) 光取り出しフィルム、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光装置
WO2014196329A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2017222071A (ja) ガスバリアーフィルム、その製造方法及び有機エレクトロルミネッセンスデバイス
WO2014126063A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
WO2015005263A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法
WO2017158920A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
JP2021068679A (ja) 電子デバイス及び電子デバイスの製造方法
WO2014208315A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2016190442A (ja) ガスバリアフィルム、透明導電部材、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2016054097A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、基板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190620

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200602

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200901

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200914

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6773048

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150