以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する構成要素については、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る動電型3軸加振装置1(以下、「加振装置1」と略記する。)の機構部10の正面図である。以下の説明において、図1における左右方向をX軸方向(左方向をX軸正方向)、上下方向をZ軸方向(上方向をZ軸正方向)、紙面に垂直な方向をY軸方向(紙面裏側から表側に向かう方向をY軸正方向)とする。なお、本実施形態において、Z軸方向は鉛直方向であり、X軸及びY軸方向は水平方向である。また、図2及び図3は、それぞれ加振装置1の機構部10の左側面図及び平面図である。
図1に示すように、加振装置1の機構部10は、その内部に供試体(不図示)が収容された状態で固定される略箱形の振動テーブル400と、振動テーブル400をX軸、Y軸及びZ軸方向にそれぞれ加振する3つの加振ユニット(X軸加振ユニット100、Y軸加振ユニット200及びZ軸加振ユニット300)と、各加振ユニット100、200及び300が取り付けられた装置ベース500を備えている。
各加振ユニット100、200及び300は、それぞれ動電型アクチュエータ(ボイスコイルモータ)を備えた直動加振ユニットである。
X軸加振ユニット100は、スライド連結機構である2軸スライダ(YZスライダ160)を介して振動テーブル400に連結されている。YZスライダ160は、X軸加振ユニット100の加振方向(X軸方向)と直交する2方向(Y軸及びZ軸方向)においてX軸加振ユニット100と振動テーブル400との相対移動(スライド)を許容しつつ、X軸加振ユニット100の振動を正確に振動テーブル400へ伝達可能に構成されている。同様に、Y軸加振ユニット200及びZ軸加振ユニット300は、それぞれZXスライダ260及びXYスライダ360を介して振動テーブル400に連結されている。この構成により、加振装置1は、各加振ユニット100、200及び300を用いて、振動テーブル400及び振動テーブル400に固定された供試体を直交3軸方向に同時且つ独立に加振することができるようになっている。
図4は、加振装置1の駆動制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。駆動制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部20と、振動テーブル400の振動を計測する計測部30と、加振装置1の各部に電力を供給する電源部40と、外部との入出力を行うインタフェース部50を備えている。
インタフェース部50は、例えば、ユーザとの間で入出力を行うためのユーザインタフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインタフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インタフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザインタフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
計測部30は、振動テーブル400に取り付けられた3軸振動センサ(3軸振動ピックアップ)32を備えており、3軸振動センサ32からの信号(例えば、加速度信号や速度信号)を増幅及びデジタル変換して制御部20へ送信する。なお、3軸振動センサ32は、X軸、Y軸及びZ軸方向の振動を独立に検出する。また、計測部30は、3軸振動センサ32の信号に基づいて、振動テーブル400の振動状態を表す各種パラメータ(例えば、速度、加速度、加加速度、加速度レベル(振動レベル)、振幅、パワースペクトル密度の一つ以上を含む)を計算して、制御部20へ送信する。制御部20は、インタフェース部50を介して入力された加振波形や計測部30から入力されたデータに基づいて、各加振ユニット100、200及び300の駆動コイル(後述)に入力する交流電流の大きさや周波数を制御することにより、所望の振幅及び周波数で振動テーブル400を加振することができる。
次に、各加振ユニット100、200及び300の構造を説明する。後述するように、X軸加振ユニット100及びY軸加振ユニット200は、水平駆動用動電型アクチュエータ(以下、単に「水平アクチュエータ」という。)100A及び200Aをそれぞれ備えている。また、Z軸加振ユニット300は、鉛直駆動用動電型アクチュエータ(以下、単に「鉛直アクチュエータ」という。)300Aを備えている。
図5、図6及び図7は、それぞれZ軸加振ユニット300(及び振動テーブル400)の正面図、左側面図及び平面図である。
鉛直アクチュエータ300Aは、供試体や振動テーブルの重量(静荷重)を支持するための空気ばね330(図8)を備えている。一方、水平アクチュエータ100A及び200Aは、振動テーブルを中立位置(原点、基準位置)に戻す復元力を与える中立ばね機構130(図9)及び230(不図示)をそれぞれ備えている。水平アクチュエータ100A及び200Aは、空気ばね330の替わりに中立ばね機構130、230が設けられている点を除いては、鉛直アクチュエータ300Aと同一構成である為、各アクチュエータを代表して鉛直アクチュエータ300Aについて詳細な構成を説明する。
図8に示すように、鉛直アクチュエータ300Aは、筒状体312を有する固定部310と、その下部が固定部310の筒内に収容された可動部320を備えている。可動部320は、固定部310に対して鉛直方向(Z軸方向)に移動可能である。可動部320は、略円柱状のメインフレーム322と、メインフレーム322の下端部に同軸に取り付けられた駆動コイル321を備えている。また、メインフレーム322の上端部には、メインフレーム322と略同径の拡張フレーム324が同軸に取り付けられている。
駆動コイル321は、駆動コイル保持部材321aを介して、メインフレーム322の下端に取り付けられている。メインフレーム322は、下側ほど外径が大きくなるように、側面が緩やかに傾斜した円錐台状に形成されている。また、メインフレーム322は、中心軸上に延びるロッド322aと、中心軸と垂直に配置された天板322b及び底板322cを有している。天板322bと底板322cとは、ロッド322aによって連結されている。ロッド322aの下部は、底板322cを貫通して、更に下方へ延びている。また、天板322bには、拡張フレーム324が取り付けられている。
また、固定部310の筒状体312の内部には、筒状体312と同軸に配置された略円筒形状の内側磁極316が固定されている。筒状体312と内側磁極316は、共に磁性体から形成されている。内側磁極316の外径は駆動コイル321の内径よりも小さく、駆動コイル321は内側磁極316の外周面と筒状体312の内周面とで挟まれた隙間に配置されている。また、内側磁極316の筒内には、ロッド322aをZ軸方向のみに移動可能に支持する軸受318が固定されている。
筒状体312の内周面312aには複数の凹部312bが形成されており、各凹部312bには励磁コイル314が収容されている。励磁コイル314に直流電流(励磁電流)を流すと、筒状体312の内周面312aと内側磁極316の外周面とが接近して対向する箇所において、筒状体312の半径方向に矢印Aで示すような磁界が発生する。この状態で駆動コイル321に駆動電流を流すと、駆動コイル321の軸方向、すなわちZ軸方向にローレンツ力が発生し、可動部320がZ軸方向に駆動される。
また、内側磁極316の筒内には、空気ばね330が収納されている。空気ばね330の下端は筒状体312に固定されている。また、空気ばね330の上面には、ロッド322aに形成されたフランジ部が載せられている。すなわち、空気ばね330は、ロッド322aを介してメインフレーム322を下方から支持する。より詳しく説明すると、空気ばね330によって、可動部320と、可動部320に支持されるXYスライダ360、振動テーブル400及び供試体の重量(静荷重)が支持される。従って、Z軸加振ユニット300に空気ばね330を設けることにより、Z軸加振ユニット300の駆動力(ローレンツ力)によって可動部320や振動テーブル400等の重量(静荷重)を支持する必要が無くなり、可動部320等を振動させるための動荷重のみを与えればよくなるため、Z軸加振ユニット300に供給すべき駆動電流(すなわち消費電力)が低減する。また、必要な駆動力の低減により、駆動コイル321の小型化が可能になるため、可動部320の軽量化により、Z軸加振ユニット300をより高い周波数で駆動することが可能になる。更に、可動部320や振動テーブル400等の重量を支持する為の大きな直流成分を駆動コイル321に供給する必要が無くなる為、電源部40も小型で簡単な構成のものを採用することが可能になる。
また、Z軸加振ユニット300の可動部320を駆動すると、固定部310も駆動軸(Z軸)方向に大きな反力(加振力)を受ける。可動部320と固定部310の間に空気ばね330を設けることにより、可動部320から固定部310への伝達される加振力が緩和される。そのため、例えば、可動部320の振動が、固定部310、装置ベース500及び加振ユニット100、200を介して振動テーブル400へノイズ成分として伝達されることが防止される。
ここで、水平アクチュエータ100Aの構成について説明する。上述したように、水平アクチュエータ100Aは、空気ばね330(図8)の替わりに中立ばね機構130(図9)を備えている点において鉛直アクチュエータ300Aと相違し、その他の基本的な構成において両者は共通する。なお、中立ばね機構130も、空気ばね330と同様に、水平アクチュエータ100Aの固定部110と可動部120とを弾性的に連結する緩衝装置である。また、水平アクチュエータ200Aも、以下に説明する水平アクチュエータ100Aと同一構成のものである。
図9は、中立ばね機構130付近を拡大した、水平アクチュエータ100Aの縦断面図である。破線枠内は、X軸正方向に向かって見た中立ばね機構130の背面図である。
中立ばね機構130は、U形ステー131、ロッド132、ナット133及び一対の圧縮コイルばね134、135(弾性要素)を備えている。U形ステー131は、そのU字の両端に形成されたフランジ部131aにおいて、固定部110の底部(図9における右端部)に固定されている。また、U形ステー131の底部131b(図9における左端部)の中央には、X軸方向に延びるロッド132が通される貫通穴131b1が設けられている。
ロッド132は、その一端(図9における左端)にフランジ部132bが設けられており、フランジ部132bを介して、可動部120のロッド122aの先端(図9における右端)に接続されている。また、ロッド132の他端部(図9における右端部)には、ナット133が嵌められるおねじ部132aが形成されている。
一対のコイルばね134、135は、ロッド132に被せられている。一方のコイルばね134は、ナット133のフランジ部とU形ステー131の底部131b(弾性要素支持プレート)とで挟み込まれて保持されている。他方のコイルばね135は、U形ステー131の底部131bとロッド132のフランジ部132bとで挟み込まれて保持されている。ナット133の締め付けにより、一対のコイルばね134、135には予荷重が与えられている。一対のコイルばね134、135の復元力が釣り合う位置が、水平アクチュエータ100Aの可動部120の可動方向(X軸方向)における中立位置(あるいは、原点若しくは基準位置)となる。可動部120が中立位置から離れると、中立ばね機構130(直接的には、一対のコイルばね134、135)により、可動部120を中立位置へ戻す方向の復元力が可動部120に作用する。これにより、可動部120は、常に中立位置を基準としたX軸方向への往復駆動を行うことが可能になり、作動中に可動部120の位置が揺らぐという問題が解消される。
次に、鉛直アクチュエータ300Aの説明に戻り、可動部320の上部を軸線方向にスライド可能に側方から支持する可動部支持機構340の構成を説明する。
図6及び図8に示すように、鉛直アクチュエータ300Aの可動部320は、その外周に等間隔に配置された4つの可動部支持機構340により、駆動方向(Z軸方向)のみに移動可能に側方から支持されている。
本実施形態の可動部支持機構340は、アングルプレート342及びZ軸リニアガイド344を備えている。また、Z軸リニアガイド344は、Z軸レール344a及びZ軸キャリッジ344bを備えている。なお、本実施形態では、Z軸リニアガイド344には、後述するA型リニアガイド364A(図12−17)と同一構成のものが使用される。なお、リニアガイドは、直線運動を案内する機構であり、Z軸リニアガイド344はZ軸方向の直線運動を案内する。
可動部320の拡張フレーム324の胴部324aの側面には、4組の可動部支持機構340のZ軸方向に延びるZ軸レール344aが、周方向において等間隔に取り付けられている。なお、本実施形態では、図3及び図7に示すように、2対の可動部支持機構340が、それぞれX軸方向及びY軸方向と45°を成す水平方向において対向するように配置されているが、説明の便宜上、その他の図面では、2対の可動部支持機構340がそれぞれX軸方向及びY軸方向において対向するように図示している。また、可動部支持機構340の数量や配置は本実施形態の構成に限定されないが、例えば、可動部320の周囲に略等間隔に配置された3組以上の可動部支持機構340によって可動部320を支持する構成が望ましい。
固定部310(筒状体312)の上面には、筒状体312の内周面に沿って等間隔(90°間隔)に4つのアングルプレート342が固定されている。アングルプレート342は、リブで補強された断面がU字状(若しくはL字状)の固定部材である。各アングルプレート342の直立部342uには、Z軸レール344aと係合するZ軸キャリッジ344bが固定されている。
Z軸キャリッジ344bは、転動体である多数のボールRE(後述)を内蔵し、Z軸レール344aと共に転がり案内であるZ軸リニアガイド344を構成する。すなわち、可動部320は、その上部の拡張フレーム324において、アングルプレート342及びZ軸リニアガイド344からなる4組の支持構造(可動部支持機構340)によってZ軸方向のみにスライド可能に側方から支持され、X軸及びY軸方向には移動できないようになっている。そのため、可動部320がX軸及びY軸方向に振動することによるクロストークの発生が防止される。また、Z軸リニアガイド344(転がり案内)の使用により、可動部320はZ軸方向へスムーズに移動可能になっている。更に、可動部320は、上述のように、その下部においても軸受318によってZ軸方向のみに移動可能に支持されている為、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転も規制され、不要な振動(Z軸方向への制御された並進運動以外の振動)が発生し難くなっている。
また、固定部310のアングルプレート342と可動部320とをZ軸リニアガイド344で連結する場合、アングルプレート342にZ軸レール344aを取り付け、可動部320に取り付けられたZ軸キャリッジ344bをZ軸レール344a上でスライド可能に支持する構成も考えられる。しかしながら、本実施形態では、これとは逆に、可動部320にZ軸レール344aを取り付け、アングルプレート342にZ軸キャリッジ344bを取り付けている。この取付構造を採用することにより、不要な振動が抑制されている。これは、Z軸キャリッジ344bよりもZ軸レール344aの方が、軽量であり、駆動方向(Z軸方向)の寸法が長く(従って単位長さ当たりの質量が小さく)、尚且つ駆動方向の質量分布が均一である為、可動部320にZ軸レール344aを固定した方が、Z軸加振ユニット300を駆動したときの質量分布の変動が少なく、従って、質量分布の変動に伴って生じる振動を低く抑えることができるからである。また、Z軸キャリッジ344bよりもZ軸レール344aの方が、重心が低い(すなわち設置面から重心までの距離が短い)為、可動側にZ軸レール344aを固定した方が、慣性モーメントが小さくなる。従って、この構成により、固定部310の共振周波数を加振周波数帯(例えば、0〜2000Hz以上)よりも十分に高くすることが可能になり、共振による加振精度の低下が抑制される。
次に、Z軸加振ユニット300と振動テーブル400とを連結するXYスライダ360の構成について説明する。
図10は、XYスライダ360の構成を説明する平面図である。図5、図6及び図10に示すように、本実施形態のXYスライダ360は、X軸方向及びY軸方向に等間隔に配列した9つのクロスガイド364(364L1〜L3、364M1〜M3、364R1〜R3)から構成されている。これらの9つのクロスガイド364は、それぞれZ軸加振ユニット300(具体的には、鉛直アクチュエータ300Aの可動部320)と振動テーブル400とをX軸方向及びY軸方向に低抵抗でスライド可能に連結する。
図11は、クロスガイド364の側面図である。クロスガイド364は、A型リニアガイド364AとB型リニアガイド364Bとを、可動方向が互いに直交するように、キャリッジ上面同士を重ね合わせて固定したものである。後述するように、A型リニアガイド364A及びB型リニアガイド364Bのキャリッジは、走行方向に少し長く形成されているため、長さ(L)方向における質量分布と幅(W)方向における質量分布が異なり、これが加振装置1の加振性能に方向性を与える一因となり得る。本実施形態では、A型リニアガイド364AとB型リニアガイド364Bのキャリッジ同士を、一方の長さ方向を他方の幅方向に向けて、直接固定することでクロスキャリッジ(クロスガイド364のキャリッジ)が形成されている。これにより、A型リニアガイド364AとB型リニアガイド364Bの質量分布の方向性が相当程度相殺され、質量分布の方向性の少ないクロスキャリッジが得られる。このようなクロスキャリッジを使用することにより、加振装置1の加振性能の方向性が軽減されている。A型リニアガイド364A及びB型リニアガイド364Bの詳細については、後述する。
図10では、各クロスガイド364を構成する一対のリニアガイド(X軸方向にスライド可能なX軸リニアガイド364X及びY軸方向にスライド可能なY軸リニアガイド364Y)のうち、振動テーブル400側に配置されたものを実線で示し、Z軸加振ユニット300側に配置されたものを破線で示している。実線で示した振動テーブル400側のリニアガイドに着目すると、X軸リニアガイド364Xが振動テーブル400に取り付けられた第1の向きのクロスガイド364(クロスガイド364M1、364L2、364R2、364M3)と、Y軸リニアガイド364Yが振動テーブル400に取り付けられた第2の向きのクロスガイド364(クロスガイド364L1、364R1、364M2、364L3、364R3)が混在していることが分かる。そして、X軸方向及びY軸方向の各方向において、隣り合うクロスガイド364の向きが互い違いになっている。すなわち、第1の向きのクロスガイド364と第2の向きのクロスガイド364とが、X軸方向及びY軸方向の各方向において、交互に並べられている。このように、向きを交互に替えてクロスガイド364を配列することにより、クロスガイド364の質量分布の方向性が平均化され、より方向性の少ない加振性能が実現している。
次に、クロスガイド364を構成するA型リニアガイド364A及びB型リニアガイド364Bの詳細を説明する。
図12、図13及び図14は、それぞれA型リニアガイド364A(B型リニアガイド364B)の平面図、側面図及び正面図である。A型リニアガイド364A(B型リニアガイド364B)は、レール364aとA型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)とを備えている。
A型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)には、キャリッジ上面の四隅に、ボルト固定用の4つのタップ穴(キリ穴)である取付穴HA(取付穴HB)が設けられている。A型キャリッジ364b/AとB型キャリッジ364b/Bとは、取付穴HA、HBの種類を除いて互いに同一の構造を有している。
4つの取付穴HA、HBは、それらの中心線がキャリッジ上面における正方形Sq(図12に鎖線で示す)の各頂点を通るように形成されている。すなわち、A型キャリッジ364b/Aの取付穴HAが形成される間隔(正方形Sqの辺の長さ)は、B型キャリッジ364b/Bの取付穴HBが形成される間隔と一致しており、取付穴HA、HBの配置は、それぞれ4回回転対称性を有している。
そのため、A型キャリッジ364b/AとB型キャリッジ364b/Bとを、互いに走行方向を90度ずらして重ね合わせても、4つの取付穴HAと4つの取付穴HBとがそれぞれ連絡し、4本のボルトによってA型キャリッジ364b/AとB型キャリッジ364b/Bとを連結することができるように構成されている。
また、A型キャリッジ364b/Aの取付穴HAをタップ穴とし、B型キャリッジ364b/Bの取付穴HBをキリ穴としているため、連結板を介さずにA型キャリッジ364b/AとB型キャリッジ364b/Bとを直接連結することができる。これにより、クロスガイド364の小型化及び軽量化が可能になっている。このように、連結板を省いてクロスガイド364を小型・軽量化することにより、クロスガイド364の剛性が高く(すなわち固有振動数が高く)なり、加振装置1の加振性能が向上する。具体的には、より高い周波数まで振動ノイズの少ない加振が可能になる。また、軽量化により、クロスガイド364の加振に(すなわち機構部10の駆動に)必要な電力も低減する。
A型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)のキャリッジ上面における四隅には、それぞれL字状の切欠部C1が形成されている。更に、A型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)の幅方向(図12における上下方向)両側の下部には、走行方向に伸びる一対のL字状の切欠部C2が形成されている。すなわち、取付穴HA(取付穴HB)が形成される幅方向両側から張り出したフランジ部Fを除いて、A型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)の幅方向両端部が削ぎ落とされている。これにより、A型キャリッジ364b/A(B型キャリッジ364b/B)の軽量化が実現されている。
このように、クロスガイド364は、クロスガイド専用のA型リニアガイド364A、B型リニアガイド364B及びこれらを連結する4本のボルトのみから構成されるため、小型、軽量かつ高剛性なものとなっている。これにより、クロスガイド364は共振周波数が高く、振動ノイズの少ないXYスライダ(スライド連結機構)の実現を可能にしている。
また、上述したように、A型キャリッジ364b/AとB型キャリッジ364b/Bとは、取付穴HA、HBを除いて互いに同一の構造を有している。そのため、A型リニアガイド364AとB型リニアガイド364Bとを互いに走行方向を90度ずらして連結することにより、長さ(L)方向及び幅(W)方向における各リニアガイドの質量分布の方向性が相殺され、質量分布の方向性が小さいクロスガイド364が実現している。
また、各キャリッジ364b/A、364b/Bは、それぞれ上下方向(図12において紙面に垂直な方向)の軸周りに略2回回転対称性を有しているが、4回回転対称性は有していない。そのため、各キャリッジ364b/A、364b/Bは、走行方向(図12における左右方向)と横方向(図12における上下方向)とで、外力に対する応答特性が異なる。
それぞれ実質的に2回回転対称性を有し、質量分布が互いに略等しいA型キャリッジ364AbとB型キャリッジ364Bbとを上下方向の軸(回転対称軸)の周りに90度回転させて連結させたクロスガイド364のキャリッジ(クロスキャリッジ)は、略4回回転対称を獲得し、2つの走行方向(X軸方向とY軸方向)の間で外力に対する応答特性がより均質なものとなっている。
クロスガイド364を介して、Z軸加振ユニット300の可動部320と振動テーブル400とを連結することにより、振動テーブル400は、Z軸加振ユニット300の可動部320に対してX軸方向及びY軸方向にスライド可能に連結される。
次に、クロスガイド364を構成する各リニアガイドの内部構造について、A型リニアガイド364Aを例に挙げて説明する。
図15は、A型リニアガイド364Aの横断面図である。また、図16は、図15のI−I断面図である。本実施形態のA型リニアガイド364Aは、転動体であるボールREの外径を通常の半分程度にまで小さくして、転動体の負荷経路の数を通常の2倍の8条とすることにより、レールとキャリッジとの間に介在するボールREの数(有効ボール数)を通常の2倍以上に増やしたものである。これにより、通常の2倍以上の数のボールREに荷重が分配されるため、ボールRE1個当たりの負荷が半減して、リニアガイドの剛性が著しく向上する。また、有効ボール数を増やしたことにより、より均質な転がり案内が可能になり、その結果、キャリッジの運動精度が向上(具体的には、走行時に生じるキャリッジの姿勢変動や振動が低減)している。
A型キャリッジ364b/Aは、メインブロック364b1/Aと、メインブロック364b1/Aの走行方向両端に取り付けられた一対のエンドブロック364b2と、走行方向においてメインブロック364b1/Aを貫通する4つの円柱状の貫通穴h1、h2、h3、h4にそれぞれ挿し込まれた4つのロッド部材R1、R2、R3、R4を備えている。本実施形態のロッド部材R1、R2、R3、R4は、同一構成の部材である。
本実施形態では、メインブロック364b1/Aは金属部材(例えばステンレス鋼)であり、エンドブロック364b2及びロッド部材R1、R2、R3、R4は樹脂部材である。なお、A型キャリッジ364b/Aを構成する各部材の材質は、本実施形態のものに限定されず、金属、樹脂、セラミックス又は各種複合材料(例えば繊維強化プラスチック)等から適宜選択される。
図15に示すように、レール364aの両側面(右側面SR、左側面SL)には、それぞれ長さ方向に伸びる溝Gaが2条ずつ近接して形成されている。また、レール364aの上面の左右の部分(右上面TR、左上面TL)にも、それぞれ長さ方向に伸びる溝Gaが2条ずつ近接して形成されている。
一方、A型キャリッジ364b/Aのメインブロック364b1/Aには、8条(2条×4組)の溝Gbが、各溝Gaと対向する位置にそれぞれ形成されている。対向する溝Gaと溝Gbの各対により、負荷経路P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b、P4a、P4bがそれぞれ形成される。ここで、負荷経路とは、転動体の経路のうち、転動体に荷重が加わる部分をいう。
負荷経路P1a及びP1b(負荷経路対P1)は、レール364aの右側面SRとメインブロック364b1/Aとの間に互いに近接して形成されている。負荷経路P2a及びP2b(負荷経路対P2)は、レール364aの右上面TRとメインブロック364b1/Aとの間に互いに近接して形成されている。負荷経路P3a及びP3b(負荷経路対P3)は、レール364aの左上面TLとメインブロック364b1/Aとの間に互いに近接して形成されている。負荷経路P4a及びP4b(負荷経路対P4)は、レール364aの左側面SLとメインブロック364b1/Aとの間に互いに近接して形成されている。このように互いに平行に近接して形成された転動体の経路の対を以下「経路対」という。
また、レール364aの右側面SR、右上面TR、左上面TL、左側面SLとメインブロック364b1/Aとの間には、それぞれ隙間P1c、P2c、P3c、P4cが形成されている。負荷経路P1aとP1b、P2aとP2b、P3aとP3b、P4aとP4bは、それぞれ隙間P1c、P2c、P3c、P4cに形成されている。
4つの貫通穴h1、h2、h3、h4は、4対の負荷経路対P1、P2、P3、P4のそれぞれと対向する位置に平行に形成されている。
ロッド部材R1、R2、R3、R4には、横断面が略矩形状の貫通穴Q1c、Q2c、Q3c、Q4cが、それぞれ長さ方向に貫通している。各貫通穴Q1c、Q2c、Q3c、Q4cの内周面(具体的には、狭い間隔で対向する2つの面)には、対向する2対の長さ方向に延びる溝Gc、Gd(貫通穴Q2cのみに符号を付す。)からなる無負荷経路Q1aとQ1b、Q2aとQ2b、Q3aとQ3b、Q4aとQ4bがそれぞれ形成されている。
図16に示すように、ロッド部材R3の両端には、メインブロック364b1/Aの貫通穴h3から突き出たU字状の突出部R3pが設けられている。各突出部R3pの外周面には、一対の平行な溝Gcが形成されている。他のロッド部材R1、R2、R4にも、それぞれ一対のU字状の溝Gcが形成された突出部R1p、R2p、R4p(不図示)が設けられている。
エンドブロック364b2には、各突出部R1p、R2p、R3p、R4pを収容する4つの凹部D1、D2、D3、D4(凹部D3のみを図示する。)が形成されている。凹部D3には、突出部R3pに形成された一対の溝Gcとそれぞれ対向する一対の溝Gdが形成されている。対向する二対の溝Gc、Gdにより、二つのU字状の折り返し経路U3a、U3b(経路U3aのみを図示する。)が構成される。同様に、他の3つの凹部D1、D2、D4にも一対の溝Gdが形成されており、対応する突出部R1p、R2p、R4pに形成された一対の溝Gcとの間に、それぞれ一対の折り返し経路U1aとU1b、U2aとU2b、U4aとU4bが構成されている。
また、突出部R1p、R2p、R3p、R4pと凹部D1、D2、D3、D4との間には、それぞれ隙間U1c、U2c、U3c、U4c(不図示)が形成されている。折り返し経路U1aとU1b、U2aとU2b、U3aとU3b、U4aとU4bは、それぞれ隙間U1c、U2c、U3c、U4cに形成されている。
折り返し経路U1a、U1b、U2a、U2b、U3a、U3b、U4a、U4bは、一端が負荷経路P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b、P4a、P4bに、他端が無負荷経路Q1a、Q1b、Q2a、Q2b、Q3a、Q3b、Q4a、Q4bにそれぞれ接続されている。すなわち、8条の負荷経路P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b、P4a、P4bと、8条の無負荷経路Q1a、Q1b、Q2a、Q2b、Q3a、Q3b、Q4a、Q4bとが、8対の折り返し経路U1a、U1b、U2a、U2b、U3a、U3bにより環状に連結されて、8条の循環経路が形成されている。
また、隙間P1c、P2c、P3c、P4cと、貫通穴Q1c、Q2c、Q3c、Q4cとが、一対の隙間U1c、U2c、U3c、U4cにより環状に連結されて、4つの環状隙間CGが形成されている。この4つの環状隙間CGに、上記の4対(8条)の循環経路CPがそれぞれ形成されている。
8条の循環経路CPには、それぞれ多数のステンレス鋼製のボールRE(転動体)が一列に整列して収容されている。また、4つの環状隙間CGには、それぞれ1つの無端ベルト状のリテーナRTが通されている。
図17は、リテーナRTの一部を示す斜視図である。リテーナRTは、可撓性を有する樹脂部材であり、多数の貫通穴RThが長さ方向に一定間隔で2列に形成されている。貫通穴RThの2つの列の間隔は、各環状隙間CGに設けられた2条の循環経路CP(経路対)と同じ間隔となっている。リテーナRTの2列の貫通穴RThには、同じ環状隙間CG内の経路対に配置された多数のボールREが、それぞれ回転可能に嵌め込まれる。そして、リテーナRTは、多数のボールREと共に、環状隙間CG内を循環する。リテーナRTは、ボールRE同士の接触を防ぎ、ボールRE同士の摩擦に基づく振動ノイズやボールREの摩耗を低減させる。
図12に示すように、本実施形態のA型キャリッジ364b/A(及びB型キャリッジ364b/B)は、長さLを125mm以下(約120mm)として、アスペクト比(長さLと幅Wとの比L/W)が1.35以下(約1.32)に抑えられている。
キャリッジを長くすると、走行精度(ウェービング特性等)や剛性が向上するが、重量が増加して加振(加速)性能が低下するというデメリットがある。加振装置に使用する8条列型のキャリッジの長さLは、70−160mmの範囲内(より好ましくは90−140mmの範囲内、更に好ましくは110−130mmの範囲内)とすることが望ましい。
また、各軸方向の加振性能を均一にするため、アスペクト比L/Wは1に近い方が良い。本実施形態のような8条列型のキャリッジのアスペクト比L/Wは、0.65−1.5の範囲内(より好ましくは0.7−1.4の範囲内、更に好ましくは0.75−1.35の範囲内)とすることが望ましい。
このように、X軸方向及びY軸方向に少ない抵抗でスライド可能なXYスライダ360を介してZ軸加振ユニット300と振動テーブル400とを連結することにより、X軸加振ユニット100及びY軸加振ユニット200により振動テーブル400をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ振動させても、振動テーブル400のX軸方向及びY軸方向の振動成分はZ軸加振ユニット300へ伝達されることがない。
また、Z軸加振ユニット300の駆動によって、振動テーブル400にX軸及びY軸方向の力はほとんど加わらない。そのため、クロストークの少ない加振が可能になる。
また、上述したように、本実施形態のA型リニアガイド364Aは、ボールREの外径を通常の半分程度にまで小さくすることで、循環経路CPの条数を通常の2倍の8条としている。また、各負荷経路に配列されるボールREの数も、通常の2倍近くにまで増やされている。その結果、A型キャリッジ364b/Aは、従来の2倍以上(4倍近く)の数のボールREによって、より分散して支持されている。その結果、剛性の向上と走行精度の向上(低ウェービング化)が実現している。
A型リニアガイド364Aのような8条列型のリニアガイドは、これまでは工作機械等における位置精度の向上を目的とした使用に限られていたため、従来の8条列型リニアガイドは、キャリッジ長Lが180mm以上と大きく、また、アスペクト比も2.3以上と重量バランスの低いものとなっていた。その結果、従来の8条列型リニアガイドは、加振装置等の高速駆動を行う機構には適さないものとなっていた。本実施形態のA型リニアガイド364A(B型リニアガイド364B)は、キャリッジの長さLとアスペクト比を小さくすることにより、8条列型リニアガイドを加振装置にも適用可能なものとなっている。また、A型リニアガイド364Aを使用することにより、従来は困難であった2kHzを超える周波数での加振が可能になった。
次に、X軸加振ユニット100と振動テーブル400とを連結するYZスライダ160の構成を説明する。
図18は、X軸加振ユニット100及び振動テーブル400の側面図である。
図19は、X軸加振ユニット100の正面図である。
図20は、YZスライダ160の正面図である。
図21は、振動テーブル400付近の平面図である。
図18に示すように、YZスライダ160は、X軸加振ユニット100の可動部120(拡張フレーム124)の先端面に固定された連結アーム162と、連結アーム162と振動テーブル400とをY軸方向及びZ軸方向にスライド可能に連結するクロスガイド部164とを備えている。
図20に示すように、クロスガイド部164は、2本のY軸レール164a/Y(164a/Y1、164a/Y4)と、6本のZ軸レール164a/Z(164a/Z1、164a/Z2、164a/Z3、164a/Z4、164a/Z5、164a/Z6)と、Y軸レール164a/YとZ軸レール164a/ZとをY軸及びZ軸方向にスライド可能に連結する6個のクロスキャリッジ164b(164b/1、164b/2、164b/3、164b/4、164b/5、164b/6)を備えている。6個のクロスキャリッジ164bは、格子状(Y軸方向:3列、Z軸方向:2列)に配置されている。
上段の3本のZ軸レール164a/Z1、164a/Z2、164a/Z3と下段の1本のY軸レール164a/Y4は、連結アーム162の先端面に固定されている。また、残りの下段の3本のZ軸レール164a/Z4、/Z5、/Z6と上段の1本のY軸レール164a/Y1は、振動テーブル400の側面に固定されている。
クロスキャリッジ164b/1は、Y軸レール164a/Y1と係合するY軸キャリッジ164b/Y1と、Z軸レール164a/Z1と係合するZ軸キャリッジ164b/Z1とを背中合わせに重ねて(すなわち、キャリッジ上面同士を重ね合わせて)固定したものである。Y軸キャリッジ164b/Y1及びZ軸キャリッジ164b/Z1の一方は上述のA型キャリッジ364b/Aと同一構成のものであり、他方は上述のB型キャリッジ364b/Bと同一構成のものである。クロスガイド364のクロスキャリッジと同様に、Y軸キャリッジ164b/Y1とZ軸キャリッジ164b/Z1とは、取付板を介さずに、4本のボルトのみで直接固定されている。
上段の3個のクロスキャリッジ164b/1、164b/2、164b/3は、いずれも上段の1本のY軸レール164a/Y1と係合し、また、上段の3個のZ軸レール164a/Z1、164a/Z2、164a/Z3とそれぞれ係合している。
同様に、下段の3個のクロスキャリッジ164b/4、164b/5、164b/6は、いずれも下段の1本のY軸レール164a/Y4と係合し、また、下段の3個のZ軸レール164a/Z4、164a/Z5、164a/Z6とそれぞれ係合している。
以上に説明したYZスライダ160の構成により、振動テーブル400は、X軸加振ユニット100の可動部120に対してY軸方向及びZ軸方向にスライド可能に連結されている。
このようにY軸方向及びZ軸方向に小さな抵抗でスライド可能なYZスライダ160を介してX軸加振ユニット100と振動テーブル400とを連結することにより、Y軸加振ユニット200及びZ軸加振ユニット300により振動テーブル400をY軸方向及びZ軸方向にそれぞれ振動させても、振動テーブル400のY軸方向及びZ軸方向の振動成分はX軸加振ユニット100へ伝達されることがない。
また、X軸加振ユニット100の駆動によって、振動テーブル400にY軸及びZ軸方向の力はほとんど加わらない。そのため、クロストークの少ない加振が可能になる。
また、Y軸加振ユニット200と振動テーブル400とを連結するZXスライダ260も、YZスライダ160と同一の構成を有しており、振動テーブル400は、Y軸加振ユニット200の可動部220に対してZ軸方向及びX軸方向にスライド可能に連結されている。従って、やはりZ軸加振ユニット300及びX軸加振ユニット100により振動テーブル400をZ軸方向及びX軸方向にそれぞれ振動させても、振動テーブル400のZ軸方向及びX軸方向の振動成分はY軸加振ユニット200へ伝達されることがない。
また、Y軸加振ユニット200の駆動によって、振動テーブル400にZ軸及びX軸方向の力はほとんど加わらない。そのため、クロストークの少ない加振が可能になる。
以上のように、各加振ユニット100、200及び300は、互いに干渉することなく、振動テーブル400を各駆動方向に正確に加振することができる。また、各加振ユニット100、200及び300は、可動部が可動部支持機構により駆動方向のみに移動可能に支持されている為、非駆動方向へは振動し難くなっている。その為、制御されていない非駆動方向の振動が各加振ユニット100、200及び300から振動テーブル400に加わることもない。従って、振動テーブル400の各軸方向の振動は、対応する各加振ユニット100、200及び300の駆動によって正確に制御される。
振動テーブル400は、不要な回転運動(回転振動)の発生を抑えるために、重心が外形寸法の中心位置に略一致するように構成されている。しかしながら、振動テーブル400の各軸方向における片側に2軸スライダ(YZスライダ1160、ZXスライダ1260、XYスライダ1360)が取り付けられると、2軸スライダの一部が振動テーブル400に固定される(より正確には、振動テーブル400に拘束されて、振動テーブル400と共に運動する)ため、被加振部(振動テーブル400及び2軸スライダの一部)の重心が振動テーブル400の中心からずれる。この被加振部の重心の偏りが、振動テーブル400の回転振動を誘起し、その結果として、振動テーブル400上の位置による振動状態(例えば加速度)のばらつきを生じさせていた。
そこで、本実施形態では、2軸スライダの反対側において、2軸スライダによって生じる不釣合いを補償するカウンターバランス部を振動テーブル400に設けて、被加振部(振動テーブル400、カウンターバランス部及び2軸スライダの一部)の重心が振動テーブル400の中心位置と略一致するように構成されている。
図1−3及び図5−7に示すように、振動テーブル400のYZスライダ160が取り付けられた側面とは反対側の側面(すなわち、X軸正方向側の側面)には、X軸カウンターバランス部610(第1カウンターバランス部)が設けられている。
また、振動テーブル400のZXスライダ260が取り付けられた側面とは反対側の側面(すなわち、Y軸正方向側の側面)には、Y軸カウンターバランス部620(第2カウンターバランス部)が設けられている。なお、本実施形態のY軸カウンターバランス部620は、X軸カウンターバランス部610と同一構成のものである。
更に、振動テーブル400のXYスライダ360が取り付けられた下面と反対側の上面(すなわち、Z軸正方向側の側面)には、Z軸カウンターバランス部630(第3カウンターバランス部)が設けられている。
図23は、X軸カウンターバランス部610(及びY軸カウンターバランス部620)の断面図である。なお、X軸カウンターバランス部610は、緩衝層611(緩衝部)と、錘板612(錘部)を備えている。緩衝層611は、錘板612と振動テーブル400の側面との間に挟み込まれて、締め付けられる。
錘板612は、振動テーブル400に2軸スライダを取り付けることによって生じる被加振部の不釣合いを補償するための質量を与える部材である。本実施形態の錘板612の厚さは20mmである。
緩衝層611は、錘板612と振動テーブル400との間での加振周波数よりも高い周波数成分の振動ノイズの伝達を遮断する。また、緩衝層611は、振動テーブル400と錘板612との間でのびびり振動(chattering)の発生を防止する。
錘板612及び緩衝層611は、複数のボルト613によって振動テーブル400の側面に取り付けられる。振動テーブル400の側面には、タップ穴400hが形成され、錘板612には貫通穴612cが形成されている。ボルト613を貫通穴612cに通して、タップ穴400hに捩じ込むことで、錘板612及び緩衝層611が振動テーブル400の側面に締め付けられる。なお、緩衝層611にも、貫通穴612c及びタップ穴400hと連絡する貫通穴が形成されている。
図31(a)に示すように、X軸カウンターバランス部610には、複数の貫通穴612cが格子点状に直交2方向(Y軸方向及びZ軸方向)に等間隔Pで形成されている。本実施形態では、貫通穴612cの間隔Pが50mmとなっている。貫通穴612cの間隔Pを短くする(好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下にする)ことにより、びびり振動の発生が効果的に抑制される。
次に、Z軸カウンターバランス部630の構成を説明する。図24は、Z軸カウンターバランス部630の断面図である。また、図25は、Z軸カウンターバランス部630のボルト固定位置を示す拡大平面図である。なお、図24は、図25におけるJ−J断面図である。
Z軸カウンターバランス部630は、第1緩衝層631(第1緩衝部)、第1錘板632(第1錘部)、第2緩衝層634(第2緩衝部)、第2錘板635(第2錘部)、第3緩衝層637(第3緩衝部)及び第3錘板638(第3錘部)を備えている。第1緩衝層631、第1錘板632、第2緩衝層634、第2錘板635、第3緩衝層637及び第3錘板638は、この順序で振動テーブル400の上面に積み重ねられている。
第1錘板632、第2錘板635及び第3錘板638は、振動テーブル400に2軸スライダを取り付けることによって生じる被加振部の不釣合いを補償するための質量を与える部材であり、本実施形態ではアルミニウム合金の板材である。本実施形態では、第1錘板632、第2錘板635及び第3錘板638の厚さは、それぞれ30mm、20mm及び10mmである。なお、本実施形態の振動テーブル400の幅(X軸方向)及び奥行(Y軸方向)はそれぞれ500mmであり、Z軸カウンターバランス部630の幅及び奥行はそれぞれ約400mmである。
第1緩衝層631、第2緩衝層634及び第3緩衝層637は、それぞれ第1錘板632と振動テーブル400との間又は隣接する錘板632、635、638の間での加振周波数よりも高い周波数成分の振動ノイズの伝達を低減させる。また、第1緩衝層631、第2緩衝層634及び第3緩衝層637は、振動テーブル400と第1錘板632との間又は隣接する錘板632、635、638の間でのびびり振動の発生を防止する。
第1錘板632には、複数の貫通穴632c及び複数のタップ穴632tがそれぞれ格子点状に直交2方向(X軸方向及びY軸方向)に等間隔(本実施形態では、X軸カウンターバランス部610の貫通穴612cと同じ間隔P)で形成されている。なお、図25に示すように、貫通穴632cとタップ穴632tの位置は、各配列方向においてP/2ずれている。すなわち、平面視において、4つの貫通穴632cの中間位置にタップ穴632tが形成されている。ボルト633を貫通穴632cに通して、振動テーブル400の上面に形成されたタップ穴400hに捩じ込むことで、錘板632及び第1緩衝層631が振動テーブル400の上面に締め付けられる。
第2錘板635にも、複数の貫通穴635c及び複数のタップ穴635tがそれぞれ格子点状に直交2方向(X軸方向及びY軸方向)に等間隔Pで形成されている。貫通穴635cとタップ穴635tの位置は、各配列方向においてP/2ずれている。ボルト636を貫通穴635cに通して、第1錘板632の上面に形成されたタップ穴632tに捩じ込むことで、第2錘板635及び第2緩衝層634が第1錘板632の上面に締め付けられる。
第3錘板638には、貫通穴638cのみが形成されている。ボルト639を貫通穴638cに通して、第2錘板635の上面に形成されたタップ穴635tに捩じ込むことで、第3錘板638及び第3緩衝層637が第2錘板635の上面に締め付けられる。
Z軸カウンターバランス部630は、このように、錘板と緩衝層を3層重ねた構成とすることにより、その上に重量物である供試体を載せても、振動ノイズを効果的に抑制することが可能になっている。
また、3層の錘板と緩衝層を一本のボルトで振動テーブル400に直接固定(共締め)するのではなく、隣り合う錘板同士(第1錘板632と第2錘板635、第2錘板635と第3錘板638)を順次個別にボルトで固定する構成を採用することにより、振動テーブル400から第3錘板638への振動ノイズの伝達が効果的に抑制される。
各錘板612、632、635、638の形状は、矩形平板状に限らず、様々な形状に形成することができる。例えば、2軸スライダの形状(質量分布)に対応する形状とすることで、不釣合いを高い精度で補償することが可能になる。
また、各錘板632、635、638の厚さは、供試体の重量や加振条件等に応じて変更してもよい。例えば、錘板632、635及び638を全て同じ厚さとしてもよい。また、上層の錘板ほど厚くしてもよいし、中間の錘板635を最も厚くしてもよい。
また、各錘板612、632、635、638の材質としては、アルミニウム合金や鋼鉄等の一般的な構造材料の他に、振動吸収性を有する鉛、銅、発泡金属、樹脂(プラスチック、ゴムを含む)、繊維強化樹脂等を使用してもよい。
各緩衝層611、631、634、637の厚さは、錘板の質量、緩衝層の材質・特性、加振装置1のサイズ、試験条件等に応じて0.5mmから2mmの範囲内で決定される。緩衝層を厚くし過ぎると、錘板が共振し易くなり、低い周波数領域における加振性能が低下してしまう。また、緩衝層を薄くし過ぎると、振動ノイズを抑制する効果が十分得られない。
緩衝層611、631、634、637には、各種合成樹脂(例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、PEEK(polyether ether ketone)、ポリカーボネート、ポリ四フッ化エチレン等のプラスチック)、各種エラストマー(天然ゴムや各種合成ゴム等の加硫ゴム、ウレタンゴムやシリコーンゴム等の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー)、シリコーンゲル(低架橋密度シリコーン樹脂)、各種ポリマーアロイ、繊維強化プラスチック、発泡樹脂、鉛等の柔らかい金属、発泡金属等の各種材料のシートやフエルト(不織布)等を使用することができる。
また、振動テーブル400と錘板612、632との間(又は隣接する錘板632、635、638の間)に隙間を設けて、この隙間に接着剤やコーキング材を充填して硬化させることで緩衝層を形成してもよい。
また、本実施形態のZ軸カウンターバランス部630は、緩衝層と錘板を3層交互に積層したものであるが、2層又は4層以上積層させた構成としてもよい。また、層毎に緩衝層や錘板の材質や厚さを変更してもよい。
次に、本実施形態の加振装置1の加振均一性について説明する。図26−28は、振動テーブル400上(より正確には、Z軸カウンターバランス部630)の4箇所で測定した相対加速度のスペクトル特性を示すグラフである。また、図29は、Z軸カウンターバランス部630上の監視点(加速度の測定点)を示した図である。
加振装置1は、Z軸カウンターバランス部630の上面中央である基準点MP0が指示値と同じ加速度で振動する(すなわち、基準点MP0における加速度の測定値に基づく一点制御を行う)ように設計されている。なお、基準点MP0を含む5つの監視点のうちの2箇所以上における加速度等の振動状態を表わすパラメータの測定結果(例えば、複数の監視点における測定値の平均値)に基づいて振動を制御する多点制御を行う構成としてもよい。加振装置1の加振均一性は、基準点MP0との加速度の差異が最も大きくなると考えられるZ軸カウンターバランス部630の四隅の領域(監視点MP1、MP2、MP3、MP4)における相対加速度レベルLaを測定することによって評価した。ここで、相対加速度レベルLaとは、基準点MP0における加速度に対する各監視点MP1〜MP4における相対的な加速度レベルであり、次の数式1により定義される。
ここで、
La: 各監視点における相対加速度レベル
a : 各監視点(MP1〜MP4)における加速度
a
0 : 基準点MP0における加速度
また、監視点MP1、MP2、MP3、MP4は、図29に示すように、Z軸カウンターバランス部630の上面を格子状に4×4分割した16領域のうちの4隅の4領域の中央に設定した。
また、加振均一性の評価は、サイン波形で加振した場合と、ランダム波形で加振した場合について、それぞれ全ての加振方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)について行った。
図26、図27及び図28は、それぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の測定結果を示すグラフである。各図の上段(a)はサイン波形で加振した場合の測定結果であり、下段(b)はランダム波形で加振した場合の測定結果である。なお、サイン波形については周波数200−2000Hzの範囲で測定し、ランダム波形については5―2000Hzの範囲で測定した。
図26−28に示すように、いずれの条件においても、1kHz以下の周波数領域では相対加速度レベルが±3dB未満に抑えられていた。また、2kHz以下の周波数領域では、一部の測定条件を除いて相対加速度レベルが±6dB未満に抑えられており、全ての測定条件において相対加速度レベルが±10dB未満に抑えられていた。カウンターバランス部を装着しない状態では、2kHz以下の周波数領域においては、いずれの測定条件でも相対加速度レベルが±10dBを超えており、カウンターバランス部の装着による加振均一性の顕著な向上が確認された。
図30は、X軸カウンターバランス部610の変形例の断面図である。この変形例では、緩衝層611の替わりにスペーサー611a(例えば、平座金)が使用される。スペーサー611aが介在する固定点を除き、錘板612と振動テーブル400との間には隙間が設けられ、錘板612は振動テーブル400と非接触に保持される。そのため、振動テーブル400と錘板612との間で振動が伝達し難くなっている。また、振動テーブル400と錘板612との間でのびびり振動の発生も防止される。
スペーサー611aには、ステンレス鋼等の各種鋼鉄や、アルミニウム合金、黄銅等の銅合金、チタン合金等の各種非鉄金属の他、上述した緩衝層611に使用可能な材料を使用することができる。
また、スペーサー611aは、振動テーブル400又は錘板612と一体にボス状の突起部として形成してもよい。また、振動テーブル400と錘板612との間の隙間に充填剤(例えば、シリコーン樹脂)を充填してもよい。
また、Z軸カウンターバランス部630の緩衝層631、634、637の一つ以上をスペーサー611aに変更してもよい。
図31は、X軸カウンターバランス部の外観図である。(a)は第1実施形態のX軸カウンターバランス部610を示し、(b)及び(c)はそれぞれ変形例610A及び610Bを示す。第1実施形態のX軸カウンターバランス部610は、1枚の錘板612(及び1枚の緩衝層611)から1体に形成されている。これに対して、(b)の変形例610Aでは、錘板612及び緩衝層611が長さ方向(図中左右方向)に4分割されている。また、(c)の変形例610Bでは、錘板612及び緩衝層611が更に幅方向(図中上下方向)にも2分割され、合計8分割されている。X軸カウンターバランス部610を小さな要素に分割することにより、共振周波数が高くなり、試験周波数領域における振動ノイズの発生が低減される。
また、本実施形態では、X軸カウンターバランス部610、Y軸カウンターバランス部620及びZ軸カウンターバランス部630が全て振動テーブル400の外面に取り付けられているが、これらの一つ以上を振動テーブル400の内側に取り付けても良い。
また、本実施形態では、振動テーブル400自体は不釣合いを有していないが、2軸スライダを装着した状態で釣合いが取れる(振動テーブルの重心が外形中心に一致する)ように、振動テーブル400に予め初期不釣合いを与えてもよい。初期不釣合いは、例えば、箱状の振動テーブルの肉厚や振動テーブル内部の補強リブの配置を不均一にすることにより付与することができる。
次に、各加振ユニットの固定部を装置ベース500に取り付ける構造について説明する。
図1−3及び図5−7に示すように、Z軸加振ユニット300の固定部310は、Z軸加振ユニット300のY軸方向両側に配置された一対の支持ユニット350(固定部支持機構、フローティング機構又は弾性支持機構ともいう。)を介して、装置ベース500の上面に取り付けられている。
図5及び図7に示すように、各支持ユニット350は、可動ブロック358、一対のアングルプレート(固定ブロック)352及び一対のリニアガイド354を備えている。可動ブロック358は、Z軸加振ユニット300の固定部310の側面に固定された支持部材である。一対のアングルプレート352は、可動ブロック358のX軸方向両端面とそれぞれ対向して配置されており、装置ベース500の上面に固定されている。可動ブロック358のX軸方向両端と各アングルプレート352とは、リニアガイド354によって、それぞれZ軸方向にスライド可能に連結されている。
リニアガイド354は、レール354aと、レール354aと係合するキャリッジ354bを備えている。可動ブロック358のX軸方向両端面には、レール354aが取り付けられている。また、各アングルプレート352には、対向するレール354aと係合するキャリッジ354bが取り付けられている。また、可動ブロック358と装置ベース500との間には、一対の空気ばね356がX軸方向に並べて配置されており、可動ブロック358は一対の空気ばね356を介して装置ベース500に支持されている。
このように、Z軸加振ユニット300は、その固定部310がリニアガイド354及び空気ばね356を備えた支持ユニット350により装置ベース500に対して駆動方向(Z軸方向)に弾性的に支持されているため、Z軸加振ユニット300の駆動時に固定部310に加わるZ軸方向の強い反力(加振力)は、装置ベース500には直接伝達されず、空気ばね356によって特に高周波成分が大きく減衰される。そのため、Z軸加振ユニット300から装置ベース500及び他の加振ユニット100、200を介して振動テーブル400に伝達される振動ノイズが大きく低減される。
図18−19に示すように、水平アクチュエータ100Aの固定部110は、X軸加振ユニット100のY軸方向両側に配置された一対の支持ユニット150を介して、装置ベース500の上面に取り付けられている。各支持ユニット150は、装置ベース500の上面に固定された逆T字状の固定ブロック152と、X軸加振ユニット100の固定部110の側面に取り付けられた略直方体状の可動ブロック158と、固定ブロック152と可動ブロック158とをX軸方向にスライド可能に連結するリニアガイド154と、可動ブロック158と固定ブロック152とを弾性的に連結するばね機構156を備えている。
リニアガイド154は、固定ブロック152の上面に取り付けられたX軸方向に延びるレール154aと、可動ブロック158の下面に取り付けられた、レール154aと係合する一対のキャリッジ154bを備えている。また、固定ブロック152のX軸負方向側の側面には、上方に延びるL字状のアーム155が固定されている。可動ブロック158とアーム155とは、ばね機構156によって連結されている。
図22は、支持ユニット150のばね機構156付近を拡大した側面図である。ばね機構156は、ボルト156a、固定板156b、リング156c、ナット156d、防振ばね156e、緩衝板156f、ワッシャ156g及びナット156hを備えている。アーム155の上部にはX軸方向に延びる貫通穴155hが設けられていて、この貫通穴155hにボルト156aが通されている。ボルト156aの先端は、固定板156bを介して可動ブロック158に固定されている。また、ボルト156aの先端部は、円筒状のリング156cを貫通している。
リング156cは、ボルト156aに捩じ込まれたナット156dと固定板156bとの間で挟み込まれて固定されている。また、ボルト156aの先端側は、円筒状の防振ばね156eの中空部に挿し込まれている。防振ばね156eは、固定板156bとアーム155との間で挟み込まれて保持されている。また、防振ばね156eの中空部の一端側にはリング156cが嵌め込まれている。
なお、防振ばね156eは、鋼製の圧縮コイルばねをアクリル樹脂等の粘弾性体(ダンパー)に埋め込んだ円筒状の部材である。防振ばね156eの替わりにコイルばね単体を使用してもよい。また、コイルばねと直列又は並列に別体のダンバー(例えば防振ゴムやオイルダンパー)を設けてもよい。
ボルト156aの頭部側には、2つのナット156hが取り付けられている。また、ボルト156aは、緩衝板156f及びワッシャ156gにそれぞれ設けられた貫通穴に通されている。緩衝板156fは、2つのナット156hで支持されたワッシャ156gとアーム155との間で挟み込まれて保持されている。緩衝板156fは、例えば防振ゴムやポリウレタン等の樹脂(すなわち、ゴム弾性体及び/又は粘弾性体)から形成されている。
ボルト156aの締め付けにより、防振ばね156e及び緩衝板156fには予荷重(X軸方向の圧縮荷重)が与えられている。そして、可動ブロック158に固定された水平アクチュエータ100Aは、防振ばね156eと緩衝板156fの復元力が釣り合う中立位置に保持される。すなわち、ばね機構156も、中立ばね機構として機能する。
X軸加振ユニット100が振動テーブル400をX軸方向に加振すると、その反力が支持ユニット150の可動ブロック158に伝わり、更にばね機構156(防振ばね156e、緩衝板156f)及びアーム155を介して固定ブロック152に伝わる。防振ばね156e及び緩衝板156fは、その低い共振周波数よりも大きな周波数の振動を減衰するため、支持ユニット150によってX軸加振ユニット100から装置ベース500への振動ノイズの伝達が抑制される。
なお、支持ユニット150に加わるX軸正方向の反力はX軸負方向の反力よりも小さい。そのため、本実施形態ではX軸正方向の反力を受ける弾性要素として、小型で安価な緩衝板156fが使用されている。X軸正方向の反力が大きくなる場合には、緩衝板156fに替えて防振ばねやコイルばねを使用してもよい。また、いずれの方向の反力も低い場合には、防振ばね156eに替えて緩衝板を使用してもよい。
上記の構成により、X軸加振ユニット100の固定部110は、リニアガイド154及びばね機構156を備えた支持ユニット150により、装置ベース500に対して駆動方向(X軸方向)に柔らかく弾性的に支持されるため、X軸加振ユニット100の駆動時に固定部110に加わるX軸方向の強い反力(加振力)は、装置ベース500に直接伝達されず、ばね機構156によって特に高周波成分が減衰されてから装置ベース500に伝達される。そのため、X軸加振ユニット100から振動テーブル400に伝達される振動ノイズが軽減する。
Y軸加振ユニット200も、水平アクチュエータ100Aと同一構成の水平アクチュエータ200Aを備えている。水平アクチュエータ200Aの固定部210も、一対の支持ユニット250(図2)によりY軸方向において装置ベース500に弾性的に支持されている。支持ユニット250は、X軸加振ユニット100の支持ユニット150と同一構成のものであるため、重複する細部の説明は省略する。
以上のように、各加振ユニット100、200、300を、弾性要素(空気ばね又はばね機構)を備えた支持ユニット150、250、350により弾性的に支持する構成を採用することにより、装置ベース500を介した加振ユニット間の特に高周波数成分の振動(ノイズ)の伝達が抑制されるため、より高精度の加振が可能になっている。
なお、Z軸加振ユニット300を支持する支持ユニット350には、供試体及び振動テーブル400を加振するための動荷重に加えて、Z軸加振ユニット300、振動テーブル400及び供試体の重量(静荷重)が加わる。そのため、比較的に小型で大荷重の支持が可能な空気ばね356が採用されている。一方、X軸加振ユニット100を支持する支持ユニット150及びY軸加振ユニット200を支持する支持ユニット250には、大きな静荷重が加わらないため、比較的に小型で構成が単純なコイルばねが使用されている。
本実施形態では、加振性能を大きく左右する2軸スライダ(YZスライダ160、ZXスライダ260、XYスライダ360)に低ウェービングの8条列リニアガイドを使用することで、振動テーブル400の回転振動が抑制され、その結果、振動テーブル400上の振動状態(加速度)の均一性が著しく向上した。従来は基準点(振動テーブル上面中央)のみでしか加振性能の仕様を規定することができなかったが、この均一性の向上により、振動テーブル上の広い領域で加振性能の仕様の規定が可能になった。
更に、カウンターバランス部を設ける(あるいは、予め所定の不釣合いを振動テーブルに付与する)ことで、被加振部(振動テーブル及び2軸スライダの一部を含む)の重心を振動テーブルの中心に合わせることにより、振動テーブル上の振動(加速度)のばらつきを、1kHzまでの周波数領域で3dB以下、2kHzまでの周波数領域で略6dB以下まで低減することが可能になった。
<XYスライダの変形例>
図32は、XYスライダの変形例360Aの構成を説明する平面図である。本変形例は、上述した第1実施形態(図10)のXYスライダ360から、中央に配置された第2の向きのクロスガイド364M2を取り除いたものである。本変形例のXYスライダ360Aにおいては、X軸リニアガイド364Xが振動テーブル400に取り付けられた第1の向きのクロスガイド364P(クロスガイド364M1、364L2、364R2、364M3)と、Y軸リニアガイド364Yが振動テーブル400に取り付けられた第2の向きのクロスガイド364S(クロスガイド364L1、364R1、364L3、364R3)とが同数になっている。
ここで、クロスガイド364の加振方向による挙動の違いについて説明する。図33(a)は第1の向きのクロスガイド364Pの正面図であり、(b)はその左側面図である。
図33(a)に示すように、振動テーブル400がX軸方向に加振される場合、振動テーブル400にX軸リニアガイド364X(X軸レール364a/X)が取り付けられた第1の向きのクロスガイド364Pにおいては、振動テーブル400に固定されたX軸レール364a/Xのみ(実線)が振動テーブル400と共にX軸方向に加振され、クロスキャリッジ364c及びY軸レール364a/Y(破線)はX軸方向に加振されない。
他方、図33(b)に示すように、振動テーブル400がY軸方向に加振される場合、第1の向きのクロスガイド364Pにおいては、X軸レール364a/X及びクロスキャリッジ364c(実線)が振動テーブル400と共にY軸方向に加振され、Y軸レール364a/Yのみ(破線)がY軸方向に加振されない。
また、振動テーブル400にY軸リニアガイド364Y(Y軸レール364a/Y)が取り付けられた第2の向きのクロスガイド364Sにおいては、上述した第1の向きのクロスガイド364Pとは逆に、振動テーブル400がX軸方向に加振される場合、Y軸レール364a/Y及びクロスキャリッジ364c(実線)が振動テーブル400と共にX軸方向に加振され、X軸レール364a/Xのみ(破線)がX軸方向には加振されない。また、振動テーブル400がY軸方向に加振される場合には、Y軸レール364a/Yのみ(実線)が振動テーブル400と共にY軸方向に加振され、クロスキャリッジ364c及びX軸レール364a/X(破線)はY軸方向に加振されない。
表1は、上述したクロスガイド364の取付方向及び振動テーブル400の加振方向とクロスガイド364の被加振部(振動テーブル400と共に加振されるクロスガイド364の構成要素)との関係を整理したものである。
このように、クロスガイド364は、加振方向と取り付ける向きによって、振動テーブル400と共に加振される部分が異なる。例えば、振動テーブル400がX軸方向に加振される場合、上述したように、第1の向きのクロスガイド364Pにおいては、X軸レール364a/XのみがX軸方向に加振されるが、第2の向きのクロスガイド364Sにおいては、Y軸レール364a/Y及びクロスキャリッジ364cがX軸方向に加振される。そして、加振方向とクロスガイド364の被加振部の要素の数(すなわち被加振部の質量)との関係は、第1の向きのクロスガイド364Pと第2の向きのクロスガイド364Sとで真逆になる。
表1に示すように、一方の取付方向のクロスガイド364(例えば第1の向きのクロスガイド364P)のみでXYスライダを構成すると、振動テーブル400をX軸方向に加振したときとY軸方向に加振したときとで、クロスガイド364の被加振部の質量が変化する。これにより、加振装置1の加振性能に方向性が生じることになる。しかし、第1の向きのクロスガイド364Pと第2の向きのクロスガイド364Sを同数(複数対)設けることにより、X軸及びY軸方向のいずれの方向に加振した場合でも、クロスガイド364の被加振部の質量の合計が一定となるため、加振性能の方向性が軽減される。
従って、4対の第1の向きのクロスガイド364Pと第2の向きのクロスガイド364Sから構成された本変形例のXYスライダ360Aは、第2の向きのクロスガイド364Sが第1の向きのクロスガイド364Pよりも一つ多い第1実施形態のXYスライダ360よりも方向性が少なく、均一な加振を可能にする。
また、XYスライダ360Aに含まれるクロスガイド364の総数が第1実施形態のXYスライダ360よりも少ないため、被加振部が軽量化し、より高い周波数の加振が可能になる。
また、二つの取付方向のクロスガイド364P、364Sを各方向に交互に(均一に)配置することにより、各クロスガイド364P、364Sの挙動の方向性や質量分布の偏りが効果的に打ち消されるため、振動テーブル400の各部をより均一に加振することが可能になる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、2軸スライダ(スライド連結機構)の構成のみが第1実施形態と相違する。以下の第2実施形態の説明では、主に第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
図34は、本発明の第2実施形態に係る加振装置2000の振動テーブル2400付近を拡大した斜視図(一部透視図)である。なお、図34において、振動テーブル2400は輪郭線のみを二点鎖線で示す。また、各カウンターバランス部の図示を省略する。
本実施形態の各2軸スライダ(YZスライダ2160、ZXスライダ2260、XYスライダ2360)は、第1実施形態のXYスライダ360と同様に、格子状(3行3列)に等間隔で配置された9個のクロスガイド2164、2264、2364から構成される。クロスガイド2164、2264、2364は、第1実施形態のXYスライダ360のクロスガイド364と同一構成のものである。
本実施形態のXYスライダ2360は、第1実施形態のXYスライダ360(図10)と同じ構成のものである。すなわち、X軸方向又はY軸方向において隣り合う任意の2つのクロスガイド2364が、互いに上下(Z軸方向)逆向きに配置されている。すなわち、X軸方向又はY軸方向において隣り合う任意の2つのクロスガイド2364の一方のX軸レール2364a/Xが可動部2320の先端面(天板2324b)に固定され、他方のX軸レール2364a/Xが振動テーブル2400の下面に固定されている。この配置により、個々のクロスガイド2364が有する質量分布や運動特性の方向性が平均化され、方向性(或いは、方向性の斑)の少ない加振性能が得られる。
また、振動テーブル2400の下面の略全面が、均等に密に配置された9つのクロスガイド2364を介して一様に加振されるため、振動テーブル2400内での振動状態の斑が少ない、均一な加振が可能になる。
本実施形態では、YZスライダ2160のクロスガイド2164及びZXスライダ2260のクロスガイド2264にも、第1実施形態と同じクロスガイド364(第1の向きのクロスガイド364P、第2の向きのクロスガイド364S)の配置構成が採用されている。
具体的には、YZスライダ2160については、Y軸方向又はZ軸方向において隣り合う任意の2つのクロスガイド2164の一方のY軸レール2164a/Yは可動部2120の先端面(天板2124b)に固定され、他方のY軸レール2164a/Yは振動テーブル2400の側面に固定されている。
また、ZXスライダ2260については、Z軸方向又はX軸方向において隣り合う任意の2つのクロスガイド2264の一方のX軸レール2264a/Xは可動部2220の先端面(天板2224b)に固定され、他方のX軸レール2264a/Xは振動テーブル2400の側面に固定されている。
このように、直交3方向において、上述したXYスライダ2360と同じ構成により、振動テーブル2400の各面が均一に加振される。そのため、振動テーブル2400の全体に亘って、振動状態の斑が少ない、均一な加振が可能になる。また、直交3方向において、同じ構成の2軸スライダ(YZスライダ2160、ZXスライダ2260、XYスライダ2360)を介して振動テーブル2400を加振するため、より方向性の少ない加振が可能になる。
なお、振動テーブル2400の高さが短い場合は、第2実施形態の3行3列に配列された9個のクロスガイド2164、2264のうち、最上段又は最下段の3個を除いた、2行3列に配列された6個のクロスガイド2164、2264によりYZスライダ2160及びZXスライダ2260を構成してもよい。この場合、変形例360A(図32)と同様に、同数の第1の向きのクロスガイドと第2の向きのクロスガイドが直交2方向において交互に配置された構成となるため、加振性能の方向性が軽減されると共に、振動テーブル2400の各部をより均一に加振することが可能になる。
<第3実施形態>
図35は、本発明の第3実施形態に係る加振装置3000の振動テーブル3400付近を拡大した斜視図(一部透視図)である。なお、図35において、振動テーブル3400は輪郭線のみを二点鎖線で示す。また、各カウンターバランス部の図示を省略する。
本実施形態は、上述したXYスライダの変形例360A(図32)におけるクロスガイド364(第1の向きのクロスガイド364P、第2の向きのクロスガイド364S)の配置構成を、各2軸スライダ(YZスライダ3160、ZXスライダ3260、XYスライダ3360)に適用したものである。
本実施形態のYZスライダ3160及びZXスライダ3260は、第1実施形態のYZスライダ160及びZXスライダ260よりも多くのクロスガイド3164及び3264により振動テーブル3400と各水平アクチュエータ3100A及び3200Aとを連結するため、振動テーブル3400をより均一に加振することができる。また、本実施形態のYZスライダ3160及びZXスライダ3260は、変形例360A(図32)と同様に、同数の第1の向きのクロスガイドと第2の向きのクロスガイドを交互に配置した構成を有しているため、加振性能の方向性が軽減されると共に、振動テーブル3400の各部をより均一に加振することが可能になる。
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
上記の各実施形態は、本発明を動電型の加振装置に適用した例であるが、本発明はこの構成に限定されず、他の方式の加振ユニット(例えば、回転電動機や油圧回転モータと送りねじ機構等の回転−直動変換機構とを組み合わせた直動加振ユニット、リニアモータ等)を使用した加振装置にも本発明を適用することができる。例えば、特許文献1に記載のサーボモータとボールねじ機構を使用した加振ユニットに本発明を適用することができる。
また、上記の各実施形態は、動電型3軸同時加振装置に本発明を適用した例であるが、当然ながら本発明は1軸又は2軸の加振装置にも適用することができる。
また、第1実施形態では、支持ユニット350(固定部支持機構)の振動を減衰する緩衝手段として空気ばねが使用されているが、防振効果のある他の種類のばね(例えば鋼製のコイルばね)や弾性体(防振ゴム等)を使用する構成とすることもできる。
スライド連結機構の各軸のリニアガイドの数(1本、2本、3本、4本、5本以上)や配置は、振動テーブルの大きさ、供試体の大きさや質量分布、試験条件(周波数、振幅)等に応じて、適宜選択される。また、第1実施形態のXYスライダ360や、第3実施形態のYZスライダ2160、ZXスライダ2260、XYスライダ2360が備えるクロスガイドの数も、9つに限らず、振動テーブルの大きさや供試体の荷重、試験条件等に応じて、3つ以上の任意の数量とすることができる。
上記の実施形態では、リニアガイドの転動体としてボールRE(玉)が使用されているが、ローラ(ころ)を転動体として使用してもよい。
上記の各実施形態では、リニアガイドに8条の負荷経路が形成されているが、5条、6条、7条又は9条以上の多数の負荷経路を設けてもよい。また、上記の実施形態のリニアガイドには、近接して形成された経路対が複数対設けられているが、必ずしも経路対を基本単位として負荷経路を設ける必要はない。複数の負荷経路を均等な間隔で設けてもよいし、あるいは全く不均等な間隔で設けてもよい。
上記の各実施形態では、鉛直方向をZ軸方向を称しているが、鉛直方向をY軸方向又はX軸方向と称しても良い。また、各加振方向を水平方向又は垂直方向とすることが望ましいが、3軸の加振方向の2軸以上を非垂直且つ非水平な方向となるように加振装置を配置してもよい。
上記の各実施形態では、クロスガイドが直交2方向に等間隔に正方格子状に配置されているが、六方格子状に配置(正三角形配列)してもよい。例えば、XYスライダにおいて、XY平面上の正三角形の周期構造(単位格子)の重心に第1の向きのクロスガイドを配置し、該正三角形の各頂点に第2の向きのクロスガイドを配置する構成とすることができる。