本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、光通信システム1aの構成の例を示す図である。光通信システム1aは、光送信器2と、伝送路3と、光受信器4aと、局発光部5とを備える。光送信器2は、レーザ発振器(光源)を備える。光送信器2は、既知信号系列及びデータが付加されたフレームを光信号に変換する。光送信器2は、既知信号系列及びデータが付加されたフレームに応じた光信号を、伝送路3を介して光受信器4aに送信する。局発光部5は、レーザ発振器(光源)を備える。局発光部5は、レーザを光受信器4aに出力する。
図2は、既知信号系列の構成の例を示す図である。光送信器2は、フレームにおける任意の位置に、既知信号系列を付加する。既知信号系列は、特定信号系列を含むN個のサンプルを複数回繰り返すという特定パターンの信号系列である。特定信号系列は、所定間隔で配置されたM個のサンプルから構成される。特定信号系列を構成するサンプルは、所定の信号処理によってシンボルに変換される。特定信号系列は、シンボル単位の周期(以下「シンボル周期」という。)のうちの特定の周期(以下「特定周期」という。)ごとに検出される。つまり、特定信号系列は、Nシンボルごとに検出される。既知信号系列において、特定信号系列は、1種類でもよいし2種類以上でもよい。
図1に示された伝送路3は、例えば光ファイバである。伝送路3は、例えば光スプリッタを更に備えてもよい。伝送路3は、光送信器2から送信された光信号を、光受信器4aに伝送する。
光受信器4aは、光フロントエンド部40と、ADC41(アナログ・デジタル変換部)と、固定フィルタ42と、推定部43aと、適応等化フィルタ44と、位相補償部45と、復号部46とを備える。
光フロントエンド部40は、伝送路3を介して、光信号を光送信器2から取得する。光フロントエンド部40は、局発光部5から出力されたレーザを用いて、多重分離処理及び復調処理を光信号に施す。光フロントエンド部40は、多重分離処理及び復調処理を光信号に施した結果として、既知信号系列が付加されたフレームを含む受信信号を取得する。
ADC41は、受信信号をデジタル信号に変換する。ADC41は、デジタル信号である受信信号を、固定フィルタ42に出力する。
固定フィルタ42は、受信信号に印加された周波数オフセット量の推定値(FOE: Frequency Offset Estimation)を、推定部43aから取得する。固定フィルタ42は、受信信号に印加された周波数オフセット量の推定値に応じて、受信信号に固定フィルタ処理を施す。すなわち、固定フィルタ42は、周波数オフセット量の推定値だけ周波数オフセットを戻して、受信信号に固定フィルタ処理を施す。これによって、固定フィルタ42は、受信信号における波長分散による遅延特性を補償することができる。固定フィルタ42は、固定フィルタ処理が施された結果として得られた特定の周波数の受信信号を、推定部43a及び適応等化フィルタ44に出力する。
推定部43aは、既知信号系列を用いて、受信信号の周波数オフセット量及び波長分散を推定する。推定部43aは、既知信号系列の自己相関の出力に基づくブロック同期を用いて、受信信号の周波数オフセット量を推定する。推定部43aは、既知信号系列の相互相関の出力に基づくサンプル同期を用いて、受信信号の周波数オフセット量を更に推定してもよい。
推定部43aは、既知信号系列が付加されたフレームの自己相関係数を算出する。推定部43aは、自己相関係数のピーク(電力のピーク成分)を検出する。推定部43aは、自己相関係数のピークに基づいて、受信信号の位相回転量を算出する。推定部43aは、受信信号の位相回転量に基づいて、受信信号の周波数オフセット量を算出する。
推定部43aは、固定フィルタ処理が施されたデジタル信号である受信信号を、固定フィルタ42の出力から取得する。推定部43aは、固定フィルタ処理が施されたデジタル信号である受信信号を用いて、伝送路パラメータを推定する。すなわち、推定部43aは、受信信号の周波数オフセット量を推定する。推定部43aは、受信信号の周波数オフセット量の推定値を、固定フィルタ42に出力する。
周波数オフセット量は、光通信システムごとに規定される。光通信では、レーザの周波数オフセット量の範囲は、+/−2.5GHzと規定されている。このため、光送信器2のレーザと局発光部5のレーザとで、+/−5GHzが基準例となる。光通信システムごとに規定される周波数オフセット量の範囲(以下「所要推定範囲」という。)は、光送信器2のレーザ発振器(光源)と局発光部5のレーザ発振器との各性能に応じて異なる。
適応等化フィルタ44は、固定フィルタ処理が施されたデジタル信号である受信信号に、適応等化フィルタ処理を施す。
位相補償部45は、適応等化フィルタ処理が施された受信信号の位相を補償する。
復号部46は、位相が補償された受信信号に復号処理を施す。
次に、推定部43aの詳細を説明する。
推定部43aは、第1推定回路47(ブロック同期回路)と、第2推定回路48(サンプル同期回路)とを備える。第1推定回路47は、受信信号にブロック同期処理を施すことによって、受信信号における周波数オフセット量を推定する。
所要推定範囲は、既知信号系列の特定パターンに応じて、第1推定回路47が推定可能である周波数オフセット量の範囲(以下「推定可能範囲」という。)を超える場合がある。すなわち、推定可能範囲は、既知信号系列に基づく特定周期に依存する。
第1推定回路47は、所要推定範囲が推定可能範囲を超えていない場合、周波数オフセット量の推定値を決定することができる。第1推定回路47は、周波数オフセット量の推定値を決定することができた場合、決定された周波数オフセット量の推定値を、固定フィルタ42に出力する。
第1推定回路47は、所要推定範囲が推定可能範囲を超えている場合、周波数オフセット量の推定値の候補を第2推定回路48に出力する。すなわち、第1推定回路47は、周波数オフセット量の推定値を決定することができない場合、周波数オフセット量の推定値の候補を第2推定回路48に出力する。自己相関係数のピーク成分の位相が180度以上回転している場合、第1推定回路47は、位相回転量を正しく推定できない。例えば、自己相関係数のピーク成分の位相が190度回転している場合、第1推定回路47は、自己相関係数のピーク成分の位相が−170度回転していると推定する。
第1推定回路47は、受信信号のフレームを複数のブロックに分割する。第1推定回路47は、自己相関処理をブロックごとに実行する。第1推定回路47は、自己相関処理によって特定周期「Nシンボル」の成分を特定パターンから抽出する。すなわち、第1推定回路47は、周期ごとの自己相関の出力として特定周期の自己相関係数の成分を出力する。
第1推定回路47は、単一のフレームに対して施される処理(内部ループ処理)において、フレームにおける既知信号系列の時間方向の位置(時刻)を検出する。ここで、第1推定回路47は、単一のフレームにおいて特定周期の自己相関係数の成分量(電力)が多いブロックを特定する。第1推定回路47は、特定されたブロックに既知信号系列が含まれていると判定する。
ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を第1推定回路47が平均化できるように、時間方向に関して同じ位置関係で、毎フレームは第1推定回路47に到来する。第1推定回路47は、時間的に隣接する複数のフレームに対して施される処理(外部ループ処理)において、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を平均化する。すなわち、第1推定回路47は、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を、バッファに蓄積された複数のフレームについて平均化する。
第1推定回路47は、単一のフレームにおいて、時間方向で偶数番目のブロックと時間方向で奇数番目のブロックとのうちの少なくとも一方に基づいて、第1推定回路47における信号処理を実行する。偶数番目のブロックと奇数番目のブロックとのうちのいずれか一方に基づいて第1推定回路47が信号処理を実行する場合、第1推定回路47の回路規模は、偶数番目のブロックと奇数番目のブロックとの両方に基づいて第1推定回路47が信号処理を実行する場合と比較して小さくてもよい。
第1推定回路47は、受信信号のX偏波及びY偏波のうちの少なくとも一方に基づいて、第1推定回路47における信号処理を実行する。第1推定回路47は、受信信号のX偏波及びY偏波を加算した結果に基づいて、第1推定回路47における信号処理を実行してもよい。これによって、第1推定回路47は、受信信号の偏波が回転している場合でも、信号処理のタイミングに受信信号をサンプル単位で同期させることができる。
図3は、第1推定回路47の例を示す図である。第1推定回路47は、サンプル加算回路470と、自己相関回路471と、特定周期成分取得回路472と、バッファ473と、フレーム平均化回路474と、最大位置検出回路475と、オフセット量推定回路476とを備える。各機能部のうち一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部である。また、各機能部のうち一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部でもよい。
サンプル加算回路470(取得部)は、受信信号のフレームを複数のブロックに分割する。サンプル加算回路470は、サンプル同士を加算する処理(以下「サンプル加算処理」という。)を、各フレームに施す。これによって、サンプル加算回路470は、自己相関回路471が自己相関処理を施す受信信号のサンプルの数を削減することができる。サンプル加算回路470は、加算されるサンプルの数を、送信信号のオーバーサンプリング数に応じて決定する。例えば、オーバーサンプリング数が2である場合、サンプル加算処理の出力におけるフレームのサンプル数は、サンプル加算処理の入力におけるフレームのサンプル数の(2分の1)である。
自己相関回路471は、サンプル加算処理されたフレームにおける既知信号系列の周期性を、自己相関に基づいて検出する。すなわち、自己相関回路471は、サンプル加算処理されたフレームにおける既知信号系列の周期性を、自己相関の出力として取得する。自己相関回路471は、既知信号系列同士の自己相関に基づいて、既知信号系列の周期性を検出する。自己相関回路471は、時間軸上の演算を含む自己相関関数である式(1)に基づいて、既知信号系列の周期性を検出する。Rff(t)は、自己相関係数(自己相関の出力)を表す。f(τ)及びf(t−τ)は受信信号を表す。
自己相関回路471は、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform)と高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)とを用いる演算を含む自己相関関数としての式(2)に基づいて、既知信号系列の周期性を検出してもよい。Rff(t)は、自己相関係数(自己相関の出力)を表す。ifftは、逆高速フーリエ変換を表す。fftは、高速フーリエ変換を表す。f(t)は受信信号を表す。
自己相関回路471は、式(1)及び式(2)に表されているように、受信信号の周波数成分とその周波数成分の複素共役(conj)の成分とを乗算する。これによって、自己相関回路471は、伝送路3において光信号に生じた線形の歪み成分を打ち消すことができる。したがって、自己相関係数は、伝送路3において光信号に生じた線形の歪み成分の影響を受け難い。
図4は、特定パターンを有する既知信号系列の自己相関の出力の例を示す図である。
横軸は、シンボル周期のインデックス(i)を表す。縦軸は、特定周期の自己相関係数の成分量(受信信号の電力)を表す。仮に、既知信号系列が特定パターンを有しない場合、特定周期の自己相関係数の成分量のピーク値は、インデックス「0番目」のシンボル周期の位置に現れる。既知信号系列は、既知信号系列が特定パターンを有しているので、特定パターンに応じたシンボル周期の位置に特定周期の自己相関係数の成分量のピーク値が現れる。
自己相関回路471は、既知信号系列が複数種類の特定信号系列を有する場合、一部の種類の特定信号系列を用いる同期特性が劣化したとしても、他の種類の特定信号系列により同期特性を維持することが可能である。
特定周期成分取得回路472は、特定周期の自己相関係数の成分量のピーク値と受信信号の電力の折り返し周期の自己相関係数の成分量とを加算した結果を出力する。例えば、特定周期成分取得回路472は、特定周期の自己相関係数の成分量のピーク値と受信信号の電力の折り返し周期の自己相関係数の成分量とについて、自己相関係数Rff同士を加算する。特定周期成分取得回路472は、特定周期の成分量のピーク値と受信信号の電力の折り返し周期の自己相関係数の成分量とについて複素数を考慮して、自己相関係数Rff同士を加算してもよい。例えば、特定周期成分取得回路472は、式(3)に表されているように、特定周期の自己相関係数の成分量のピーク値と受信信号の電力の折り返し周期の自己相関係数の成分量とを加算する。特定周期成分取得回路472は、複数のフレームについて、加算結果をバッファ473に記録する。
ここで、Ppeakは、インデックス(i)が示すシンボル周期の位置における特定周期の自己相関係数の成分量(電力)を表す。Rffは、自己相関係数を表す。ipeakは、特定周期の自己相関係数の成分量(電力)のピーク値を示すシンボル周期のインデックスを表す。iflapは、折り返し周期のシンボル周期のインデックスを表す。
バッファ473は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有する。バッファ473は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶装置を有してもよい。バッファ473は、特定周期成分取得回路472による加算結果を、複数のフレームについて記憶する。
フレーム平均化回路474(平均化部)は、時間的に隣接する複数のフレームに対して施される処理(外部ループ処理)において、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量(自己相関の出力)を平均化する。すなわち、フレーム平均化回路474は、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を、バッファに蓄積された複数のフレームについて平均化する。例えば、フレーム平均化回路474は、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を複数のフレームについて加算した結果をフレームの個数で除算することによって、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を平均化する。例えば、フレーム平均化回路474は、忘却係数を用いて、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を平均化してもよい。
最大位置検出回路475(最大成分検出部)は、特定周期成分取得回路472による加算結果に基づいて、特定周期の自己相関係数の成分量が最大値を示す時刻を、既知信号系列の受信時刻として検出する。すなわち、最大位置検出回路475は、既知信号系列を含むフレームにおいて、平均化された特定周期の自己相関係数の成分量が最大となる位置を検出する。最大位置検出回路475は、特定周期の自己相関係数の最大成分(ピーク成分)を検出する。最大位置検出回路475は、第1推定回路47の信号処理に、受信信号をサンプル単位(シンボル単位)で同期させる。
オフセット量推定回路476(オフセット量推定部)は、自己相関係数の複素数の成分量に基づいて、周波数オフセット量を推定する。光信号に周波数オフセットが印加された場合、位相回転θは、式(4)のように表される。
ここで、Nは、特定周期を表す。Speakは、図4に示されているような特定周期の自己相関係数の最大成分量(ピーク値)を表す。周波数オフセット量の推定に用いられる値は、自己相関の出力(自己相関係数)の複素平面上の値である。図4では、理解しやすいように、自己相関の出力は絶対値で表現されている。Rsは、変調速度を表す。
図2に示されている既知信号系列の自己相関の例では、特定周期「Nシンボル」ごとに自己相関係数の成分量にピークが生じる。周波数オフセットが光信号に付加された場合、自己相関係数の最大成分の位相は、「Nシンボル」回転する。このため、オフセット量推定回路476は、自己相関係数の最大成分の回転量を推定する。オフセット量推定回路476は、自己相関係数の最大成分の回転量を1秒あたりの量に変換することによって、周波数オフセット量の推定値を算出する。
図5は、自己相関係数の最大成分(ピーク成分の加算後の複素数値)の複素平面上の分布の例を示す図である。図5における自己相関係数の最大成分の周波数オフセット量の範囲は、−5GHzから5GHzまでの範囲である。第1推定回路47が推定可能である周波数オフセット量の最大値FOEmaxは、式(5)のように表される。
ここで、Rsは、変調速度を表す。Nは、特定周期(シンボル単位)を表す。したがって、推定可能範囲は、式(6)のように表される。
図6は、周波数オフセット量の推定可能範囲の例を示す図である。所要推定範囲は、送信器の光源と受信器の光源との各性能に応じて定められる。周波数オフセット量の推定値の候補の個数は、推定可能範囲の集合が所要推定範囲を含むように定められる。図6では、(FOE−4FOEmax)の推定可能範囲と、(FOE−2FOEmax)の推定可能範囲と、(FOEmax)の推定可能範囲と、(FOE+2FOEmax)の推定可能範囲と、(FOE+4FOEmax)の推定可能範囲との集合が、所要推定範囲を含む。式(6)に表されているように、周波数オフセット量の推定値の候補同士の間隔は、2FOEmaxである。例えば、(FOE+4FOEmax)の推定可能範囲内の(FOE)と(FOE+2FOEmax)の推定可能範囲内の(FOE)との間隔は、2FOEmaxである。
受信信号に付加される周波数オフセット量(FO)が単一の推定可能範囲を超える場合、第2推定回路48は、周波数オフセット量の推定値の候補のうちから推定値を決定(選択)するために、周波数オフセット量の粗推定値を算出する。すなわち、単一の推定可能範囲を所要推定範囲が超えている場合、第2推定回路48は、周波数オフセット量の推定値の候補のうちから推定値を決定するために、周波数オフセット量の粗推定値を算出する。
例えば、周波数オフセット量の真値が1GHzである場合、第1推定回路47は、周波数オフセット量の推定値の候補の例として、−5GHzと、−2GHzと、1GHzと、4GHzとを得る。第2推定回路48は、周波数オフセット量の粗推定値として、例えば、1.8GHzを得る。第2推定回路48は、周波数オフセット量の推定値の候補である−5GHzと−2GHzと1GHzと4GHzとのうち粗推定値(1.8GHz)に近い1GHzを、周波数オフセット量の推定値と決定する。
第2推定回路48は、第1推定回路47によって検出されたブロック(以下「検出ブロック」という。)を、第1推定回路47から取得する。第2推定回路48は、検出ブロックにおける既知信号系列と待受信号の信号系列との相互相関係数(相互相関の出力)を取得する。第2推定回路48は、ブロックごとの相互相関係数を、バッファに蓄積された複数のフレームについて平均化する。第2推定回路48は、第2推定回路48の信号処理に受信信号をサンプル単位で同期させる。
第2推定回路48は、時間的に隣接する複数のフレームに対して施される処理(外部ループ処理)において、ブロックごとの特定周期の自己相関係数の成分量を平均化する。第2推定回路48は、同期特性を改善するために,既知信号系列に加えて他の種類の既知信号系列を使用してもよい。第2推定回路48は、既知信号系列と既知信号系列13及び14との少なくとも一方をフレームが有する場合、一部の種類の既知信号系列を用いる同期特性が劣化したとしても、光信号に生じた線形の歪み成分を他の種類の既知信号系列を用いて補償することができる。
第2推定回路48は、サンプル加算回路480と、差動処理回路481と、差動成分加算回路482と、偏波間成分加算回路483と、待受信号部484と、相互相関取得回路485と、バッファ486と、フレーム平均化回路487と、隣接サンプル加算回路488と、最大位置検出回路489と、第1粗推定回路490とを備える。なお、第2推定回路48は、隣接サンプル加算回路488を備えなくてもよい。
サンプル加算回路480は、検出ブロックを第1推定回路47から取得する。サンプル加算回路480は、検出ブロックにサンプル加算処理を施す。サンプル加算回路480は、加算されるサンプルの数を、送信信号のオーバーサンプリング数に関わらず決定する。決定されたサンプルの数に応じて、サンプル加算回路480は、サンプル加算処理が施された既知信号系列と待受信号とが同系列の信号となるように、待受信号部484が保持する待受信号の系列にもサンプル加算処理を施す。
差動処理回路481は、サンプル加算処理が施されたブロックをサンプル加算回路480から取得する。差動処理回路481は、選択されたシンボル(自シンボル)から0個以上先のシンボルと選択されたシンボルとを乗算する。
差動成分加算回路482は、差動成分加算回路482によって複数のシンボルについて生成された差動成分を加算する。差動成分加算回路482は、差動成分加算回路482によって複数のシンボルについて一度に生成された差動成分を加算してもよい。
偏波間成分加算回路483は、信号のX偏波及びY偏波を加算する。これによって、第2推定回路48は、受信信号の偏波が回転している場合でも、信号処理のタイミングに受信信号をサンプル単位で同期させることができる。
待受信号部484は、待受信号を相互相関取得回路485に出力する。待受信号(待受パターン)は、既知信号系列と同系列の信号である。
自己相関回路471は、既知信号系列同士の自己相関に基づいて既知信号系列の周期性を検出し、検出された周期性に基づいて受信信号をブロック同期させる。これに対して、相互相関取得回路485は、既知信号系列と待受信号との相互相関に基づいて既知信号系列と受信信号の一致性を検出し、検出された一致性に基づいて受信信号をサンプル同期する。相互相関取得回路485は、式(2)に基づいて同期を取得する場合、式(2)における(fft)の信号系列のうちの一方を受信信号とする。相互相関取得回路485は、式(2)に基づいて同期を取得する場合、式(2)における(fft)の信号系列のうちの他方を待受信号とする。
相互相関取得回路485は、既知信号系列と待受信号との相互相関の出力を、バッファ486に記録する。相互相関取得回路485は、逆高速フーリエ変換と高速フーリエ変換とを用いる演算を含む相互相関関数としての式(2)に基づいて、相互相関の出力としてサンプル(シンボル)ごとの相互相関係数を取得する。
バッファ486は、RAMやレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有する。バッファ486は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶装置を有してもよい。バッファ486は、サンプルごとの相互相関の出力としての相互相関係数を記憶する。
フレーム平均化回路487は、時間的に隣接する複数のフレームに対して施される処理(外部ループ処理)において、サンプルごとの相互相関の出力を平均化する。
隣接サンプル加算回路488は、平均化されたサンプルごとの相互相関の出力を、隣り合う任意のサンプル同士で加算する。これによって、隣接サンプル加算回路488は、相互相関の出力の最大値を大きくすることができる。
最大位置検出回路489は、フレーム平均化回路487によって平均化されたサンプルごとの相互相関の出力に基づいて、サンプルごとの相互相関の出力が最大値を示す時刻を、既知信号系列の受信時刻として検出する。
第1粗推定回路490(粗推定部)は、サンプル(シンボル)ごとの相互相関係数に基づいて、式(7)のように周波数オフセット量の粗推定値を算出する。
ここで、Speakは、特定周期の相互相関係数の最大成分量を表す。Rsは、変調速度を表す。第1粗推定回路490は、第1推定回路47によって検出された周波数オフセット量の推定値の候補のうちで、周波数オフセット量の粗推定値に近い推定値を、周波数オフセット量の推定値と決定する。第1粗推定回路490は、周波数オフセット量の推定値を固定フィルタ42に出力する。
以上のように、第1実施形態の光受信器4aは、取得部としてのサンプル加算回路470と、自己相関取得部としての自己相関回路471と、特定周期成分取得部としての特定周期成分取得回路472と、最大成分検出部としての最大位置検出回路475と、オフセット量推定部としてのオフセット量推定回路476とを備える。サンプル加算回路470は、時間方向に特定周期で配置された複数の特定信号系列を含む既知信号系列を取得する。自己相関回路471は、特定信号系列同士の自己相関係数の成分量を周期ごとに取得する。特定周期成分取得回路472は、周期ごとの自己相関係数の成分量のうちから、特定周期の自己相関係数の成分量を取得する。最大位置検出回路475は、特定周期の自己相関係数の最大成分を検出する。オフセット量推定回路476は、自己相関係数の最大成分の回転量に基づいて周波数オフセット量を推定する。
これによって、第1実施形態の光受信器4aは、周波数オフセット量を正確に推定することが可能である。第1実施形態の光受信器4aは、簡易な回路でも、周波数オフセット量を正確に推定することが可能である。
第1実施形態の光受信器4aは、第1粗推定回路490を更に備えてもよい。第1粗推定回路490は、周波数オフセット量の推定値の候補のうちで、サンプル同期に基づいて得られた周波数オフセット量の粗推定値に近い推定値を、周波数オフセット量の推定値と決定する。
(第2実施形態)
第2実施形態では、受信信号のスペクトルの重心に基づいて推定部が周波数オフセット量を推定する点が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
図8は、光通信システム1bの構成の例を示す図である。光通信システム1bは、光送信器2と、伝送路3と、光受信器4bと、局発光部5とを備える。光送信器2は、レーザ発振器(光源)を備える。光送信器2は、既知信号系列及びデータが付加されたフレームを、光信号に変換する。光送信器2は、既知信号系列及びデータが付加されたフレームに応じた光信号を、伝送路3を介して光受信器4bに送信する。局発光部5は、レーザを光受信器4bに出力する。
光受信器4bは、光フロントエンド部40と、ADC41(アナログ・デジタル変換部)と、固定フィルタ42と、推定部43bと、適応等化フィルタ44と、位相補償部45と、復号部46とを備える。推定部43bは、既知信号系列を用いて、受信信号の周波数オフセット量及び波長分散を推定する。推定部43bは、第1推定回路47(ブロック同期回路)と、第2推定回路48としての重心検出部49とを備える。
第1推定回路47は、所要推定範囲が推定可能範囲を超えている場合、周波数オフセット量の推定値の候補を重心検出部49に出力する。すなわち、第1推定回路47は、周波数オフセット量の推定値を決定することができない場合、周波数オフセット量の推定値の候補を重心検出部49に出力する。
図9は、重心検出部49の構成の例を示す図である。重心検出部49は、FFT回路491と、重心算出回路492と、第2粗推定回路493とを備える。FFT回路491は、高速フーリエ変換によって、受信信号のスペクトルを生成する。
図10は、受信信号のスペクトルの例を示す図である。横軸は周波数を表す。縦軸は電力(P)を表す。重心算出回路492は、受信信号のスペクトルの重心xGを、式(8)のように検出する。
ここで、Pnは、各ビンにおける電力を表す。fnは、各ビンの周波数を表す。重心算出回路492は、受信信号のスペクトルの重心xGに基づいて、周波数オフセット量を推定する。すなわち、重心算出回路492は、受信信号のスペクトルの重心xGと予め定められた重心との間の周波数差に基づいて、周波数オフセット量を推定する。
第2粗推定回路493(粗推定部)は、第1推定回路47によって検出された周波数オフセット量の推定値の候補のうちで、周波数オフセット量の粗推定値に近い推定値を、周波数オフセット量の推定値と決定する。第2粗推定回路493は、決定された周波数オフセット量の推定値を、固定フィルタ42に出力する。
以上のように、第2実施形態の光受信器4bは、取得部としてのサンプル加算回路470と、自己相関取得部としての自己相関回路471と、特定周期成分取得部としての特定周期成分取得回路472と、最大成分検出部としての最大位置検出回路475と、オフセット量推定部としてのオフセット量推定回路476とを備える。
これによって、第2実施形態の光受信器4bは、周波数オフセット量を正確に推定することが可能である。第2実施形態の光受信器4bは、簡易な回路でも、周波数オフセット量を正確に推定することが可能である。
第2実施形態の光受信器4bは、第2粗推定回路493を更に備えてもよい。第2粗推定回路493は、周波数オフセット量の推定値の候補のうちで、受信信号のスペクトルの重心位置に基づいて得られた周波数オフセット量の粗推定値に近い推定値を、周波数オフセット量の推定値と決定する。
上述した実施形態における光受信器、光通信システムの少なくとも一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。