JP6769311B2 - 双ドラム式連続鋳造用ダミーシート及び薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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ホットバンドは、湯面高さが不安定な場合にサイド堰に生成した地金が剥離することによって生じる場合が多い。同様に、鋳造初期の湯面上昇中に発生し易い。それまで溶鋼に接していなかったサイド堰表面に、溶鋼が接触して冷却されて、地金が生成し易いためである。
また、特許文献4には、サイド堰を上下に分割し、上部側を左右方向に揺動させることにより、サイド堰表面において地金が厚く形成されることを抑制する手段が提案されている。
さらに、特許文献5には、サイド堰にガス吹込みノズルを設け、鋳造の際に溶鋼中にガスを吹き込み、そのバブリング作用により、サイド堰表面に生成した地金を溶鋼溜まり部の中央部ないし上部へ移動させて無害化させる手段が提案されている。
さらに、特許文献5のように、サイド堰からガスを吹き込む場合、耐火物加工が必要なうえ、溶鋼溜まり部のシール性の確保、およびガス通気孔の閉塞防止を両立することが非常に困難であった。
これらMg,Ca,Bi,Sr,Znといった金属元素は、沸点が1570℃以下と低く、例えば1600℃程度の溶鋼中に浸漬された際に確実に気化し、気化したガスによってサイド堰近傍の溶鋼を確実に撹拌することができる。
この場合、サイド堰の近傍で前記高蒸気圧金属元素が気化するため、気化したガスによってサイド堰近傍の溶鋼を確実に撹拌することができ、サイド堰表面における地金の発生及び成長を抑制することが可能となる。
この場合、補強部材が補強部本体と短冊部とを有しており、これら補強部本体と短冊部に選択的に前記高蒸気圧金属部材を配設されているので、溶鋼中に高蒸気圧金属部材を浸漬させて高蒸気圧金属元素を気化させ、サイド堰近傍の溶鋼を撹拌する時期を調整することが可能となる。
この場合、前記補強部材の幅方向両端部にそれぞれ配置されている前記高蒸気圧金属部材は、各端部当たり、前記高蒸気圧金属元素としてMg及びCaの1種または2種を0.1g以上29g以下の範囲で含んでいるので、溶鋼中に高蒸気圧金属部材が浸漬された際に十分な量のガスが発生し、サイド堰近傍の溶鋼を十分に撹拌することができる。また、ガスの発生量が必要以上に多くならず、補強部材が溶鋼によって確実に鋳包まれ、補強部材と薄肉鋳片とを確実に連結することができる。
0.0010≦W(Mg)/24.3+W(Ca)/40+W(Bi)/209+W(Sr)/87.6+W(Zn)/65.4≦0.0300 ・・・(1)
ここで、本実施形態において製造される薄肉鋳片1は、各種組成の鋼からなり、その幅が300mm以上2000mmの範囲内、厚さが1mm以上5mm以下の範囲内とされている。
本実施形態である双ドラム式連続鋳造装置10は、図1に示すように、一対の冷却ドラム11、11と、薄肉鋳片1を曲げるベンダーロール12、12と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール13、13と、一対の冷却ドラム11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ドラム11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼溜まり部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼溜まり部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル20と、を備えている。
この双ドラム式連続鋳造用ダミーシート30は、図2に示すように、一対の冷却ドラム11,11の下方からドラムキス点Kまで配置されるシート本体31と、このシート本体31の長手方向の一端から延在し、溶鋼溜まり部16内へと延在して配置される補強部材32と、を備えている。
また、本実施形態である双ドラム式連続鋳造用ダミーシート30として、図3に示すように、補強部材32が、シート本体31に連接される補強部本体32aと、この補強部本体32aの一端から延在する短冊部32bと、を備えたものを用いてもよい。
そこで、本実施形態である双ドラム式連続鋳造用ダミーシート30においては、補強部材32の少なくとも幅方向両端部に、沸点が1600℃以下の高蒸気圧金属元素を含有する高蒸気圧金属部材35が配設されている。この高蒸気圧金属部材35は、溶鋼3中に浸漬された際に、上述の高蒸気圧金属元素が気化してガスを発生する構成とされており、発生したガスによってサイド堰15近傍の溶鋼3を撹拌する。
例えば、鋳造開始直後の湯面上昇中に、初めてサイド堰15の表面に溶鋼3が接した時に生ずる地金の生成を防止する目的で、鋳造初期に溶鋼3を撹拌する場合には、図2に示すように、ドラムキス点Kに近い箇所に取り付けることが好ましい。これにより、ドラム回転開始前の湯面上昇中、あるいは回転開始直後に、高蒸気圧金属部材35が溶鋼3中に浸漬され、高蒸気圧金属元素が気化し、サイド堰15近傍の溶鋼3が撹拌される。ただし、補強部材32と薄肉鋳片1の連結部近傍も撹拌されるので、両者の連結を脆弱にする可能性がある。そこで、高蒸気圧金属元素の量はある程度抑えた方が良い。
図2又は図3の配置例のどちらを使用するか、また、図3の配置例でどの位置に取り付けるか等は、防止すべき地金の生成時期を見極めて、適宜、設定すれば良い。
Mg(沸点:1103±5℃)
Ca(沸点:1492℃)
Bi(沸点:1560±5℃)
Sr(沸点:1366±5℃)
Zn(沸点: 906℃)
また、高蒸気圧金属元素としてCaを用いる場合には、Fe−Ca合金、Fe−Si−Ca合金、Ni−Ca合金、CaSi粉粒体等を適用することができる。さらに、Fe−Si−Mg−Ca合金を適用してもよい。
また、高蒸気圧金属元素としてSrを用いる場合には、金属Sr等を適用することができる。
さらに、高蒸気圧金属元素としてZnを用いる場合には、金属Zn、Zn−Sn合金等を適用することができる。
以上のように、補強部材32に高蒸気圧金属元素を含む高蒸気圧金属部材35を取り付けることで、高蒸気圧金属部材35が溶鋼3に浸漬された際に、高蒸気圧金属元素を気化させることが可能となり、サイド堰15近傍の溶鋼を撹拌することができる。
0.0010≦W(Mg)/24.3+W(Ca)/40+W(Bi)/209+W(Sr)/87.6+W(Zn)/65.4≦0.0300 ・・・(1)
上述の溶鋼撹拌領域は、高蒸気圧金属元素を含む高蒸気圧金属部材35の幅位置(高蒸気圧金属部材35の形状に幅がある場合は、中心線の位置)とサイド堰15までの距離を2倍した領域にある溶鋼3とした。すなわち、冷却ドラム11の軸方向から見て、両冷却ドラム11,11間の溶鋼溜まり部16のくさび形状の面積と、高蒸気圧金属部材35の幅方向位置とサイド堰15との2倍の距離との積で算出した。
商用生産規模の双ドラム式連続鋳造装置10における冷却ドラム11の直径は、500〜1200mm程度であり、溶鋼溜まり部16の湯面弧角を40degとし、高蒸気圧金属部材35の取り付け位置をダミーシート30の幅端部から25〜50mm程度と仮定した場合、上述の溶鋼溜まり部16のうち高蒸気圧金属部材35の配設位置の幅方向中心位置とサイド堰15との間の幅方向長さを2倍した領域(溶鋼撹拌領域)の溶鋼重量は幅方向の両端でそれぞれ4.2〜23.9kgとなる。ここで、上述の(1)式の下限と上限とを考慮すると、Mg及びCaの1種または2種の重量範囲は、0.1g以上29g以下となる。
なお、高蒸気圧金属元素としてMg及びCaの1種または2種を用いた場合には、通常の商業用双ドラム式連続鋳造装置10に適用する際には、上述の(1)式に対応するMg及びCaの1種または2種の重量範囲は0.1g以上29g以下となる。
一方、高蒸気圧金属部材35が、図3のように、溶鋼溜まり部16よりもドラム回転方向後方側の位置に取り付けられた場合には、冷却ドラム11の回転が開始された後に、高蒸気圧金属部材35が溶鋼3中に浸漬され、高蒸気圧金属元素が気化することでサイド堰15近傍の溶鋼を撹拌することができる。
このように、高蒸気圧金属部材35の取り付け位置によってサイド堰15近傍の溶鋼を撹拌するタイミングを調整することができ、鋼種や鋳造条件等に応じて適切なタイミングでサイド堰15近傍の溶鋼を撹拌することで、サイド堰15表面における地金の発生・成長を抑制することができる。
及び薄肉鋳片の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ベンダーロール及びピンチロールを配設した薄肉鋳片の製造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
C;0.05質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.65質量%、P;0.01質量%、S;0.007質量%、Al;0.03質量%を含有する炭素鋼からなる薄肉鋳片を、上述の実施形態に示す双ドラム式連続鋳造装置を用いて製造した。
冷却ドラムの直径:1200mm
鋳造幅:1300mm
鋳造厚み:平均2.0mm
鋳造速度:平均50m/min
鋳造雰囲気:Ar+N2
鋳造量:10トン
湯面レベル弧角:40deg
溶鋼と冷却ドラムの接触弧長:419mm
シート本体:軟鋼製シート材、幅1290mm
補強部本体:鉄製、幅1290mm、長さ400mm
短冊部:鉄製、幅10mm、長さ:最大1200mm
そして、表1に示すように、高蒸気圧金属元素を含む高蒸気圧金属部材を補強部材(補強部本体又は短冊部)に取り付けた。
3 溶鋼
10 双ドラム式連続鋳造装置
11 冷却ドラム
15 サイド堰
16 溶鋼溜まり部
30 双ドラム式連続鋳造用ダミーシート
31 シート本体
32 補強部材
32a 補強部本体
32b 短冊部
35 高蒸気圧金属部材
Claims (7)
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置に用いられる双ドラム式連続鋳造用ダミーシートであって、
前記一対の冷却ドラムに挟持されるシート本体と、このシート本体の長手方向の一端から延在し、前記溶鋼中に挿入される補強部材と、を備えており、
前記補強部材の少なくとも幅方向両端部に、それぞれ、沸点が1600℃以下の高蒸気圧金属元素を含有する高蒸気圧金属部材が配設されていることを特徴とする双ドラム式連続鋳造用ダミーシート。 - 前記高蒸気圧金属元素は、Mg,Ca,Bi,Sr,Znから選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の双ドラム式連続鋳造用ダミーシート。
- 前記高蒸気圧金属部材は、少なくとも前記シート本体の幅端部から100mm以内の範囲内に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の双ドラム式連続鋳造用ダミーシート。
- 前記補強部材は、前記シート本体に連接される補強部本体と、この補強部本体の一端から延在する短冊部と、を備えており、
前記補強部本体及び前記短冊部の少なくとも一方又は両方に、前記高蒸気圧金属部材が配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の双ドラム式連続鋳造用ダミーシート。 - 前記補強部材の幅方向両端部にそれぞれ配置されている前記高蒸気圧金属部材は、前記高蒸気圧金属元素としてMg及びCaの1種または2種を含有しており、
各端部に配設されたそれぞれの前記高蒸気圧金属部材に含まれるMg及びCaの1種または2種の重量が0.1g以上29g以下の範囲とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の双ドラム式連続鋳造用ダミーシート。 - 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶鋼溜まり部に溶鋼を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
鋳造開始時に、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の双ドラム式連続鋳造用ダミーシートを用いることを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - 前記補強部材の幅方向両端部にそれぞれ配置されている前記高蒸気圧金属部材は、前記高蒸気圧金属元素としてMg,Ca,Bi,Sr,Znから選択される1種または2種以上を含有しており、
各端部に配設されたそれぞれの前記高蒸気圧金属部材において、前記溶鋼溜まり部のうち前記高蒸気圧金属部材の配設位置の幅方向中心位置とサイド堰との間の幅方向長さを2倍した領域に存在する溶鋼量1kg当たりに対する各高蒸気圧金属元素の重量(g)をW(Mg),W(Ca),W(Bi),W(Sr),W(Zn)とした場合に、以下の(1)式を満足するように含有することを特徴とする請求項6に記載の薄肉鋳片の製造方法。
0.0010≦W(Mg)/24.3+W(Ca)/40+W(Bi)/209+W(Sr)/87.6+W(Zn)/65.4≦0.0300 ・・・(1)
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