JP6769075B2 - 芳香族ポリケトン、芳香族ポリケトンの製造方法、芳香族ポリケトン組成物、芳香族ポリケトン膜、芳香族ポリケトン膜付基材、光学素子、画像表示装置及び被覆材料 - Google Patents

芳香族ポリケトン、芳香族ポリケトンの製造方法、芳香族ポリケトン組成物、芳香族ポリケトン膜、芳香族ポリケトン膜付基材、光学素子、画像表示装置及び被覆材料 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族ポリケトン、芳香族ポリケトンの製造方法、芳香族ポリケトン組成物、芳香族ポリケトン膜、芳香族ポリケトン膜付基材、光学素子、画像表示装置及び被覆材料に関する。
主鎖に芳香環とカルボニル基を有する芳香族ポリケトンは、優れた耐熱性と機械特性を有しており、エンジニアリングプラスチックとして利用されている。芳香族ポリケトンに属する高分子のほとんどは、求核芳香族置換反応を利用して重合された芳香族ポリエーテルケトンであり、主鎖にエーテル結合も有している。これに対し、主鎖にエーテル結合を有していない芳香族ポリケトンは、耐熱性及び耐薬品性に優れることが知られている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
近年、ジカルボン酸と2,2’−ジアルコキシビフェニル化合物をFriedel−Craftsアシル化により直接重合することで、高い透明性と耐熱性とを両立した芳香族ポリケトンを得られることが報告され、光学部品への応用が期待されている(例えば、特許文献3参照)。
樹脂材料を光学部品に応用する際は、無機材料では得ることのできない特性として、例えば、無機材料に比べて、軽量さ、及び柔軟さが期待されている。樹脂材料の適応先としては、軽量さを活かしたポータブルデバイスのガラス代替材、コート材等及び柔軟さを活かしたフレキシブルディスプレイ等が挙げられる。
特開昭62−7730号公報 特開2005−272728号公報 特開2013−53194号公報
しかし、特許文献3に記載のジカルボン酸と2,2’−ジアルコキシビフェニル化合物から重合される芳香族ポリケトンは、優れた耐熱性と透明性とを有する一方で、接着性に劣る傾向にある。
本発明は上記現状に鑑みなされたものであり、優れた耐熱性と透明性とを有し、更に接着性の良好な膜を形成可能な芳香族ポリケトン、芳香族ポリケトンの製造方法、芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン組成物及び芳香族ポリケトン膜、並びに芳香族ポリケトン膜を有する芳香族ポリケトン膜付基材、光学素子、画像表示装置及び被覆材料を提供する。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環を含む芳香族ポリケトン。
<2> 下記一般式(1)及び下記一般式(2)からなる群より選択される少なくとも一種で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する<1>に記載の芳香族ポリケトン。
一般式(1)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(2)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
一般式(4)中、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。
<3> 前記一般式(1)で表される構造単位が、下記一般式(1−1)で表される構造単位を含む<2>に記載の芳香族ポリケトン。
一般式(1−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
<4> 前記一般式(2)で表される構造単位が、下記一般式(2−1)で表される構造単位を含む<2>又は<3>に記載の芳香族ポリケトン。
一般式(2−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は前記一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
<5> 下記一般式(5)及び下記一般式(6)からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族モノマと、下記一般式(8)で表されるジカルボン酸モノマとを、酸性媒体中で縮合反応させる芳香族ポリケトンの製造方法。
一般式(5)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(6)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。
一般式(8)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基、塩素原子又は臭素原子を示し、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。
<6> 前記一般式(5)で表される芳香族モノマが、下記一般式(5−1)で表される芳香族モノマを含む<5>に記載の芳香族ポリケトンの製造方法。
一般式(5−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
<7> 前記一般式(6)で表される芳香族モノマが、下記一般式(6−1)で表される芳香族モノマを含む<5>又は<6>に記載の芳香族ポリケトンの製造方法。
一般式(6−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は前記一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
<8> <1>〜<4>のいずれか1項に記載の芳香族ポリケトンと、溶媒と、を含む芳香族ポリケトン組成物。
<9> <1>〜<4>のいずれか1項に記載の芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜。
<10> 基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に設けられる<9>に記載の芳香族ポリケトン膜と、を有する芳香族ポリケトン膜付基材。
<11> <9>に記載の芳香族ポリケトン膜又は<10>に記載の芳香族ポリケトン膜付基材を有する光学素子。
<12> <9>に記載の芳香族ポリケトン膜又は<10>に記載の芳香族ポリケトン膜付基材を有する画像表示装置。
<13> <9>に記載の芳香族ポリケトン膜を有する被覆材料。
本発明によれば、優れた耐熱性と透明性とを有し、更に接着性の良好な膜を形成可能な芳香族ポリケトン、芳香族ポリケトンの製造方法、芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン組成物及び芳香族ポリケトン膜、並びに芳香族ポリケトン膜を有する芳香族ポリケトン膜付基材、光学素子、画像表示装置及び被覆材料を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「透明性」とは、可視光の透過性、少なくとも波長400nmの可視光の透過性が80%以上(膜厚1μm換算)であることを意味する。
本明細書において「耐熱性」とは、芳香族ポリケトンの熱分解開始温度が380℃以上であることを意味する。
本明細書において「接着性」とは、芳香族ポリケトン膜の基材に対する接着力が6.0MPa以上であることを意味する。
<芳香族ポリケトン>
本実施形態の芳香族ポリケトンは、電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環(以下、「特定芳香環」ともいう)を含む。
芳香族ポリケトンにおいて、電子供与性の置換基を2個以上有するときの芳香環の電子密度は、例えば、無置換のときの芳香環に比べて高くなる。この芳香族ポリケトンを用いて得られたポリケトン膜は、耐熱性及び透明性に優れ、更に接着性が良好である。この理由は明らかではないか、以下のように考えることができる。
芳香族ポリケトンは、主鎖にカルボニル基を含むため、耐熱性及び透明性に優れる。電子密度が高い芳香環を含有するモノマは反応性が高く、この芳香環を含有するモノマを用いて合成を行った場合、分子量が高い芳香族ポリケトンが得られる傾向にある。これにより耐熱性に更に優れる芳香族ポリケトンが得られると推察される。また、得られた芳香族ポリケトン中の芳香環は電子供与性の置換基を2個以上有するため、電子密度が高くなっている。この芳香族ポリケトンを用いて得られる芳香族ポリケトン膜は、基板(被覆体)表面上の官能基と、芳香族ポリケトン鎖中の電子密度が高い芳香環との間に、相互作用(分子間力)が働き、優れた接着力を発揮すると推察される。
芳香族ポリケトンは、ポリケトン膜としたときの接着性を高める観点から、特定芳香環を2個以上含む構造単位を有することが好ましい。芳香族ポリケトンが特定芳香環を2個以上含む構造単位を有する場合、特定芳香環同士は、単結合で結合されていても、2価の連結基で結合されていてもよい。
2価の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、イミノ基、カルボニル基等が挙げられる。さらに、上述の連結基から選ばれる任意の連結基同士を2個以上連結した2価の連結基が挙げられる。これらの中でも、2価の連結基としては、酸素原子又は置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましい。
特定芳香環における芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。これらの中でも、反応性を高める観点からベンゼン環を有することが好ましい。
特定芳香環における複数の置換基は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
また、特定芳香環は、必要に応じて、電子供与性基以外の置換基をさらに有していてもよい。電子供与性基以外の置換基としては、芳香環の電子密度が高まるものが好ましい。なお、芳香環において電子供与性基である置換基の置換位置は、特に制限はない。
電子供与性基としては、例えば、パラ位及びメタ位におけるハメットの置換基定数(以下、単に「ハメットの置換基定数」ともいう。)σ値が負の値を示す置換基が挙げられる。ここで、ハメットの置換基定数とは、ハメット則として成立する関係式における置換基に特有の定数である。ハメットの置換基定数σ値が負であることは、置換基が電子供与性であることを示す。なお、ハメットの置換基定数の算出方法及び代表的な置換基に対する定数は、例えば、「Chem.Rev.1991,91,165−195」を参照できる。
但し、電子供与性基である置換基は、文献既知のハメットの置換基定数σ値がある置換基に限定されるものではなく、ハメット則に基づいて算出した場合にハメットの置換基定数σ値が負の値となる置換基も含む。
ハメットの置換基定数σ値が負の値を示す置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基等が挙げられる。中でも、芳香環の電子密度を高める観点から、アミノ基又はアルコキシ基が好ましく、ポリケトンの耐熱性及び透明性を損なわない観点から、アルコキシ基がより好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、neo−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−イコサニル基、n−トリアコンタニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、上述のアルキル基が酸素原子に結合している基が挙げられる。
アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びトリアルキルアミノ基としては、上述のアルキル基が窒素原子に1個〜3個結合している基が挙げられる。
上述の芳香族ポリケトンとしては、例えば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)からなる群より選択される少なくとも一種で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有するものが挙げられる(以下、「特定芳香族ポリケトン」ともいう)。
一般式(1)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示す。Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
Zで示される電子供与性基の詳細は、上述の電子供与性基と同様である。
一般式(1)中、Zの置換位置は特に限定されず、反応制御の観点から2,2’,4,4’位又は3,3’,4,4’位が好ましい。
一般式(1)中、反応制御の観点から、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
で示される炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられる。また、これらの炭化水素基を組み合わせたものでもよい。また、置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアシル基等が挙げられる。Rの置換基としては、Rが電子供与性基となるよう選択されることが好ましい。
なお、炭化水素基が置換基を有する場合、炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数を含めないものとする。以降、同様である。
飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、neo−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−イコサニル基、n−トリアコンタニル基等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、エチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。
一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1−1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
一般式(1−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(1−1)中のR、n及びmのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のR、n及びmと同様である。
反応制御の観点から、Rで示される炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。このような炭化水素基としては、一般式(1)中のRで例示したものと同様のものが挙げられる。また、置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアシル基等が挙げられる。なお、Rの置換基は、ORが電子供与性基となるように選択される。
一般式(2)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(2)中のZ、R、m及びnの詳細は、一般式(1)中のZ、R、m及びnと同様である。
一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。反応制御の観点から、R及びRとしては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。このような炭化水素基としては、一般式(1)中のRで例示したものと同様のものが挙げられる。また置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアシル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される構造単位は、下記一般式(2−1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
一般式(2−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(2−1)中のR、n及びmのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のR、n及びmと同様である。一般式(2−1)中のRの詳細は、一般式(1−1)中のRと同様である。
一般式(4)中、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。
Yで示される2価の炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられる。透明性と耐熱性との両立の観点から、Yで示される2価の炭化水素基は、脂環式炭化水素基を含むことが好ましい。また、Yで示される炭化水素基は、複数の飽和脂肪族炭化水素基、複数の不飽和脂肪族炭化水素基、複数の脂環式炭化水素基、又はそれらを組み合わせてもよい。また、置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタン基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアシル基等が挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、ペンチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1−エチルトリメチレン基、2−エチルトリメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、プロピルエチレン基、エチルメチルエチレン基、ヘキシレン基、1−メチルペンチレン基、1−エチルテトラメチレン基、1−プロピルトリメチレン基、ブチルエチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、トリメチルトリメチレン基、1,1−エチルメチルトリメチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、イコサニレン基、トリアコンタニレン基等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、ビニレン基、アリレン基等のアルケニレン基、エチニレン基等のアルキニレン基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、キュバニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタニレン基、ノルボルニレン基、トリシクロ[5.2.1.0]デカニレン基、アダマンタニレン基、ジアダマンタニレン基、アダマンタン−1,3−ジイルジメチレン基等のシクロアルキレン基、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基などが挙げられる。
耐熱性及び溶解性の観点から、Yで示される2価の炭化水素基はアダマンタニレン基を含むことが好ましい。また接着性の観点から、Yで示される2価の炭化水素基はアダマンタン−1,3−ジイルジメチレン基を含むことが好ましい。
耐熱性の観点からは、芳香族ポリケトンの重量平均分子量(Mw)は、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。
溶解性の観点からは、芳香族ポリケトンの重量平均分子量(Mw)は、350000以下であることが好ましく、300000以下であることがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、200000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましい。
本実施形態の芳香族ポリケトンは、透明性及び耐熱性に優れる。そして、本実施形態の芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜は、シリコン、シリコン酸化物、金属等の基材上に設けても、基材から剥離しにくく接着性に優れる。そのため、本実施形態の芳香族ポリケトンは、透明性に優れた耐熱材として好適に利用することができる。
<芳香族ポリケトンの製造方法>
電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環を含む芳香族ポリケトンの製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を適用することができる。例えば、特定芳香族ポリケトンの場合には、下記一般式(5)及び下記一般式(6)からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族モノマと、下記一般式(8)で表されるジカルボン酸モノマとを、酸性媒体中において縮合反応させて得ることができる。
一般式(5)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(5)中のZ、R、m及びnのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のZ、R、m及びnと同様である。
一般式(6)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(6)中のZ、R、m及びnのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のZ、R、m及びnと同様である。
一般式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。一般式(7)中のR及びRのそれぞれの詳細は、一般式(3)中のR及びRと同様である。
一般式(8)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基、塩素原子又は臭素原子を示し、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。環境適合性の観点から、一般式(8)中のRは水酸基であることが好ましい。また一般式(8)中のYの詳細は、一般式(4)中のYと同様である。
一般式(5)で表される芳香族モノマは、下記一般式(5−1)で表される芳香族モノマを含むことが好ましい。
一般式(5−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(5−1)中のR、n及びmのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のR、n及びmと同様である。一般式(5−1)中のRの詳細は、一般式(1−1)中のRと同様である。
一般式(6)で表される芳香族モノマは、好ましくは下記一般式(6−1)で表される芳香族モノマを含む。
一般式(6−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。
一般式(6−1)中のR、m及びnのそれぞれの詳細は、一般式(1)中のR、m及びnと同様である。一般式(6−1)中のRの詳細は、一般式(1−1)中のRと同様である。
縮合反応に用いる酸性媒体は特に限定されず、塩化アルミニウムの有機溶媒溶液、トリフルオロアルカンスルホン酸の有機溶媒溶液、ポリリン酸又は五酸化二リンと有機スルホン酸との混合物等を用いることができる。反応性と扱いやすさとの観点から、酸性媒体には、五酸化二リンと有機スルホン酸との混合物を用いることが好ましい。さらに得られる芳香族ポリケトンの透明性の観点から、有機スルホン酸としては、メタンスルホン酸が好ましい。
五酸化二リンと有機スルホン酸との混合物中で、五酸化二リンが少なすぎると、芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの反応性に劣る傾向にある。混合比は、混合比の制御及び反応性の観点から、質量比で五酸化二リン:有機スルホン酸=1:5〜1:20が好ましく、1:5〜1:10がより好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの合計量に対する酸性媒体の配合量は、芳香族モノマとジカルボン酸モノマを溶解し得る量であれば特に限定されず、触媒量から溶媒量までの範囲で用いることができる。酸性媒体の配合量は、反応性と扱いやすさとの観点から、ジカルボン酸モノマ1質量部に対して5質量部〜100質量部の範囲が好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応における反応の温度は、反応生成物である芳香族ポリケトンの着色及び副反応を防ぐ観点から、10℃〜100℃が好ましく、反応速度を上げて生産性を向上させる観点から、20℃〜100℃がより好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応における反応の雰囲気は特に限定されず、開放系で行うこともできる。しかし、水分の存在により酸性媒体の反応性が低下する傾向にあるため、乾燥空気、窒素、アルゴン等を用いることが好ましい。想定外の副反応を防ぐ観点から、窒素又はアルゴンを用いることがより好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマと酸性媒体とを含む反応液を撹拌することで、芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応を促進することができる。撹拌方法は特に限定されず、マグネチックスターラ、メカニカルスターラ等を用いることができる。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応における反応時間は、反応温度、目標とする芳香族ポリケトンの分子量、反応に用いるモノマの種類等によって変動させることが可能である。十分に分子量の高い芳香族ポリケトンを得るために、反応時間は1時間〜120時間程度が好ましく、生産性の観点から、1時間〜72時間がより好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応における反応の圧力は特に限定されず、常圧下、加圧下、又は減圧下のいずれで行ってもよい。コストの観点から、常圧下で反応を行うことが好ましい。
芳香族モノマとジカルボン酸モノマとの縮合反応を終えた後、反応液と芳香族ポリケトンの貧溶媒とを接触させて芳香族ポリケトンを析出させ、不純物を貧溶媒相に抽出し、析出した芳香族ポリケトンを濾過、デカンテーション、遠心分離等の方法で液体から分離することができる。さらにこの後、分離した芳香族ポリケトンを再度芳香族ポリケトンの良溶媒に溶解させ、再び芳香族ポリケトンの貧溶媒と接触させて芳香族ポリケトンを析出させ、不純物を貧溶媒相に抽出し、析出した芳香族ポリケトンを濾過、デカンテーション、遠心分離等の方法で液体から分離する工程を繰り返してもよい。
本実施形態の製造方法で得られた芳香族ポリケトンは、従来のポリケトンに比べて、分子量が高くなる傾向にある。また、短い反応時間又は低い反応温度で行った場合であっても、従来のポリケトンと同じ分子量となる傾向にある。
<芳香族ポリケトン組成物>
芳香族ポリケトン組成物は、本実施形態の芳香族ポリケトンと、溶媒と、を含む。芳香族ポリケトンを溶媒に溶解させること等により、芳香族ポリケトンと、溶媒と、を含む芳香族ポリケトン組成物を得ることができる。芳香族ポリケトンを溶媒に溶解させる方法は特に限定されず、当該技術分野で既知の方法を用いることができる。また、必要に応じて、溶解後に、不溶成分を濾別してもよい。
芳香族ポリケトン組成物の具体的な態様としては、ワニス、スラリー等が挙げられる。
溶媒としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ジイソプロピルベンゼン、ヘキシルベンゼン、アニソール、ジグライム、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
芳香族ポリケトン組成物は、芳香族ポリケトン及び溶媒以外に、更に添加剤、架橋剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、接着助剤、界面活性剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤等が挙げられる。また、架橋剤としては、多官能エポキシ化合物、多官能アクリル化合物、多官能オキセタン化合物、複数のヒドロキシ基を有する化合物、複数のヒドロキシメチル基を有する化合物、複数のアルコキシメチル基を有する化合物等が挙げられる。
<芳香族ポリケトン膜及び芳香族ポリケトン膜付基材>
芳香族ポリケトン膜は、本実施形態の芳香族ポリケトンを含む。芳香族ポリケトン膜の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の芳香族ポリケトン組成物を用いて、芳香族ポリケトン膜を得ることができる。芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜は、ジカルボン酸と2,2’−ジアルコキシビフェニル化合物から重合される従来の芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜よりも接着性に優れている。
芳香族ポリケトン膜を得るために、芳香族ポリケトン組成物を基材の少なくとも一部の表面に付与して組成物層を形成する。これにより、基材と、この基材の表面の少なくとも一部に設けられる芳香族ポリケトン膜とを有する、芳香族ポリケトン膜付基材を得ることができる。得られた芳香族ポリケトン膜は、基材を付けたまま用いることもでき、必要に応じて、基材から剥がして用いることもできる。
例えば、芳香族ポリケトン膜を有する芳香族ポリケトン膜付基材は、後述するフィルム状の透明樹脂等の基材の少なくとも一方の面に、芳香族ポリケトン膜を有していてもよい。または、フィルム状の透明樹脂等の基材の両面に、芳香族ポリケトン膜を有していてもよい。また、芳香族ポリケトン膜付基材において、芳香族ポリケトン膜は、一層でも、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
芳香族ポリケトン組成物を基材に付与する方法としては、組成物層を基材上の任意の場所に任意の形状で形成可能な手法であれば特に限定されない。例えば、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法及び回転塗布法が好適に用いられる。
芳香族ポリケトン組成物を付与する基材は特に限定されず、ガラス基板、半導体基板、金属酸化物絶縁体基板(例えば、酸化チタン基板及び酸化ケイ素基板)、窒化ケイ素基板等の透明無機基板、トリアセチルセルロース、透明ポリイミド、ポリカルボナート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン樹脂等の透明樹脂基板などを例示することができる。基材の形状は特に限定されず、板状又はフィルム状であってもよい。
芳香族ポリケトン組成物を基材に付与(塗布)して組成物層を形成した後、乾燥工程において組成物層を乾燥させる。乾燥する方法は特に限定されず、ホットプレート、オーブン等を用いた加熱を挙げることができる。
必要に応じて、乾燥した芳香族ポリケトン膜を更に熱処理してもよい。熱処理の方法は特に限定されず、箱型乾燥機、熱風式コンベアー型乾燥機、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等のオーブンを用いて行なうことができる。また、熱処理工程における雰囲気条件としては、大気中又は窒素等の不活性雰囲気中のいずれを選択することもできる。
<光学素子及び画像表示装置>
光学素子及び画像表示装置は、それぞれ、本実施形態の芳香族ポリケトン膜又は基材とこの基材の表面の少なくとも一部に設けられる芳香族ポリケトン膜とを有する上述の芳香族ポリケトン膜付基材を有する。
光学素子及び画像表示装置は、例えば、芳香族ポリケトン膜付基材を構成する透明樹脂フィルム等の基材側を、粘着剤、接着剤等を介してLCD(液晶ディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)等に用いられている部材に貼り合せることにより、得ることができる。
芳香族ポリケトン膜及びこれを用いた偏光板等の各種光学素子は、液晶表示装置等の各種画像表示装置に好ましく用いることができる。画像表示装置は、芳香族ポリケトン膜を用いる以外は、従来の画像表示装置と同様の構成であってよい。画像表示装置が液晶表示装置である場合は、液晶セル、偏光板等の光学素子、及び必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより製造できる。上述の液晶セルは、特に制限されない。上述の液晶セルは、例えば、TN型、STN型、及びπ型の様々なタイプを使用できる。
画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器などが挙げられる。
<被覆材料>
被覆材料は、本実施形態の芳香族ポリケトン膜を有する。被覆する対象は限定されず、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、各種ディスプレイ、窓ガラス、車載ガラス、カメラレンズなどが挙げられる。被覆材料は、被覆する対象に対して、芳香族ポリケトン膜をラミネート等の方法で接着したものであってもよく、液状の芳香族ポリケトン組成物を塗布してから乾燥させたものであってもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(実施例1) ポリケトンPK1の合成
2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニル10mmolとドデカン二酸10mmolが入ったフラスコに、五酸化二リンとメタンスルホン酸との混合物(質量比1:10)を30ml加え、窒素風船をつけて60℃で40時間撹拌した。反応後、反応液をメタノール500ml中に投じ、生成した析出物を濾取した。得られた固体を蒸留水とメタノールとで洗浄した後、乾燥し、ポリケトンPK1を得た。得られたポリケトンPK1の重量平均分子量は11,000、数平均分子量は3,100であった。
(実施例2) ポリケトンPK2の合成
ドデカン二酸の代わりに1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス体トランス体混合)を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK2を得た。得られたポリケトンPK2の重量平均分子量は41,000、数平均分子量は6,000であった。
(実施例3) ポリケトンPK3の合成
ドデカン二酸の代わりに1,3−アダマンタンジカルボン酸を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK3を得た。得られたポリケトンPK3の重量平均分子量は71,000、数平均分子量は6,200であった。
(実施例4) ポリケトンPK4の合成
ドデカン二酸の代わりに1,3−アダマンタン二酢酸を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK4を得た。得られたポリケトンPK4の重量平均分子量は90,000、数平均分子量は46,000であった。
(実施例5) ポリケトンPK1を用いたワニスの調製
実施例1で得たポリケトンPK1を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に濃度が20%となるように溶解し、ポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(孔径5μm)でろ過して、ポリケトンPK1のワニスを得た。
(実施例6) ポリケトンPK2を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK2を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK2のワニスを得た。
(実施例7) ポリケトンPK3を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK3を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK3のワニスを得た。
(実施例8) ポリケトンPK4を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK4を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK4のワニスを得た。
(実施例9) ポリケトンPK1のワニスを用いた膜の作製
実施例5で得られたポリケトンPK1のワニスを、回転塗布法によりガラス基板又はシリコン基板上に塗布し、ポリケトンPK1の膜付き基材を得た。得られたポリケトンPK1の膜付き基材を、120℃のホットプレート上で3分間乾燥し、更に200℃の窒素ガスオーブン中で1時間乾燥した後、後述の方法で透明性及び接着性を評価した。
(実施例10) ポリケトンPK2のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK2のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK2のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(実施例11) ポリケトンPK3のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK3のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK3のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(実施例12) ポリケトンPK4のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK4のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK4のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(比較合成例1) ポリケトンPK5の合成
2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニルの代わりに2,2’−ジメトキシビフェニルを用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK5を得た。得られたポリケトンPK5の重量平均分子量は8,300、数平均分子量は2,500であった。
(比較合成例2) ポリケトンPK6の合成
2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニルの代わりに2,2’−ジメトキシビフェニルを用いて、ドデカン二酸の代わりに1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス体トランス体混合)を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK6を得た。得られたポリケトンPK6の重量平均分子量は31,000、数平均分子量は3,400であった。
(比較合成例3) ポリケトンPK7の合成
2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニルの代わりに2,2’−ジメトキシビフェニルを用いて、ドデカン二酸の代わりに1,3−アダマンタンジカルボン酸を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK7を得た。得られたポリケトンPK7の重量平均分子量は61,000、数平均分子量は4,100であった。
(比較合成例4) ポリケトンPK8の合成
2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニルの代わりに2,2’−ジメトキシビフェニルを用いて、ドデカン二酸の代わりに1,3−アダマンタン二酢酸を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリケトンPK8を得た。得られたポリケトンPK8の重量平均分子量は80,000、数平均分子量は40,000であった。
(比較調製例1) ポリケトンPK5を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK5を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK5を用いたワニスを得た。
(比較調製例2) ポリケトンPK6を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK6を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK6を用いたワニスを得た。
(比較調製例3) ポリケトンPK7を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK7を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK7を用いたワニスを得た。
(比較調製例4) ポリケトンPK8を用いたワニスの調製
ポリケトンPK1の代わりにポリケトンPK8を用いる以外は実施例5と同様にして、ポリケトンPK8を用いたワニスを得た。
(比較例1) ポリケトンPK5のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK5のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK5のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(比較例2) ポリケトンPK6のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK6のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK6のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(比較例3) ポリケトンPK7のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK7のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK7のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(比較例4) ポリケトンPK8のワニスを用いた膜の作製
ポリケトンPK1のワニスの代わりにポリケトンPK8のワニスを用いる以外は実施例9と同様にして、ポリケトンPK8のワニスを用いた膜を得て、評価を行った。
(分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶離液として、硝酸テトラブチルアンモニウム(TBA・NO)を0.1%溶解させたテトラヒドロフラン(THF)を用いて、GPC法によって測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。詳細は次のとおりである。
・装置名 : RI−8020(検出器)、DP−8020(ポンプ)、SD−8022(デガッサ)(東ソー株式会社)
・カラム : Gelpack GL−A150、GL−A160、GL−A170(製品名、日立化成株式会社)
・検出器 : RI検出器
・流速 : 1ml/min
(熱分解温度の測定)
実施例1〜4及び比較合成例1〜4で得たポリケトン粉末をアルミカップに量り取り、熱重量天秤(「TG−DTA6300」株式会社日立ハイテクサイエンス)を用いて重量減少を測定した。加熱により重量が大きく減少する曲線の接線の交点を熱分解温度と定義する。それぞれのポリケトンの熱分解温度を表1に示す。
(透明性の評価)
実施例9〜12又は比較例1〜4で得た芳香族ポリケトン膜付きガラス基板の400nmにおける紫外光の透過率を、紫外可視分光光度計(「U−3310 Spectrophotometer」日立ハイテク株式会社)を用いた紫外可視吸収スペクトル法によって測定した。膜の付いていないガラス基板をリファレンスとして、膜厚1μmに換算した透過率を表2に示す。
(接着性の評価)
実施例9〜12又は比較例1〜4で得た芳香族ポリケトン膜付きシリコン基板の接着性の評価を、スタッドプル試験(引張り剥離強度試験)によって行った。芳香族ポリケトン膜付きシリコン基板に、エポキシ樹脂系接着剤の付いたスタッドピン(アルミ製のピン)を固定し、150℃のオーブンで1時間加熱してスタッドピンを固着させた。加熱終了後、スタッドプル試験機(Romulus、Quad Group社)を用いて、スタッドピンを垂直下方向に引っ張って、スタッドピンと、芳香族ポリケトン膜付きシリコン基板との分離、又は芳香族ポリケトン膜付きシリコン基板に破壊若しくは分離が起こった時点の強度を測定した。それぞれの芳香族ポリケトン膜付きシリコン基板の強度(接着力)を表2に示す。
表1に示すとおり、芳香族ポリケトンは、比較合成例1〜4で得られた芳香族ポリケトンと比較して、重量平均分子量及び数平均分子量が高い。また、芳香族ポリケトンは、比較合成例1〜4で得られた芳香族ポリケトンと同等以上の耐熱性を有する。
表2に示すとおり、特定芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜は、比較例1〜4で得られた芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜と同等の透明性を有する。さらに、特定芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜は、比較例1〜4で得られた芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜に比べ、接着力が大きく向上する。これは、電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環の電子密度は高く、このような芳香環を含有するモノマを用いて合成したことによって、反応性が向上し、得られた芳香族ポリケトンの分子量が高くなったためと推測する。また、芳香族ポリケトンは、電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環を含むので、芳香族ポリケトン鎖の電荷密度分布に変化が生じ、被覆体と芳香族ポリケトン鎖との相互作用が増加したため、接着力が向上したと推測する。

Claims (12)

  1. 電子供与性の置換基を2個以上有する芳香環を含み、下記一般式(1)及び下記一般式(2)からなる群より選択される少なくとも一種で表される構造単位と、下記一般式(4)で表される構造単位と、を有する芳香族ポリケトン。


    〔一般式(1)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕


    〔一般式(2)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕


    〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。〕


    〔一般式(4)中、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。〕
  2. 前記一般式(1)で表される構造単位が、下記一般式(1−1)で表される構造単位を含む請求項に記載の芳香族ポリケトン。


    〔一般式(1−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕
  3. 前記一般式(2)で表される構造単位が、下記一般式(2−1)で表される構造単位を含む請求項又は請求項に記載の芳香族ポリケトン。


    〔一般式(2−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は前記一般式(3)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕
  4. 下記一般式(5)及び下記一般式(6)からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族モノマと、下記一般式(8)で表されるジカルボン酸モノマとを、酸性媒体中で縮合反応させる芳香族ポリケトンの製造方法。


    〔一般式(5)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕


    〔一般式(6)中、Zはそれぞれ独立に、電子供与性基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は下記一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕


    〔一般式(7)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。〕


    〔一般式(8)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基、塩素原子又は臭素原子を示し、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。〕
  5. 前記一般式(5)で表される芳香族モノマが、下記一般式(5−1)で表される芳香族モノマを含む請求項に記載の芳香族ポリケトンの製造方法。


    〔一般式(5−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕
  6. 前記一般式(6)で表される芳香族モノマが、下記一般式(6−1)で表される芳香族モノマを含む請求項又は請求項に記載の芳香族ポリケトンの製造方法。


    〔一般式(6−1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Xは酸素原子又は前記一般式(7)で表される2価の基を示す。nは2〜4の整数を示し、mは0〜2の整数(ただし、m+n≦4)を示す。〕
  7. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の芳香族ポリケトンと、溶媒と、を含む芳香族ポリケトン組成物。
  8. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の芳香族ポリケトンを含む芳香族ポリケトン膜。
  9. 基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部に設けられる請求項に記載の芳香族ポリケトン膜と、
    を有する芳香族ポリケトン膜付基材。
  10. 請求項に記載の芳香族ポリケトン膜又は請求項に記載の芳香族ポリケトン膜付基材を有する光学素子。
  11. 請求項に記載の芳香族ポリケトン膜又は請求項に記載の芳香族ポリケトン膜付基材を有する画像表示装置。
  12. 請求項に記載の芳香族ポリケトン膜を有する被覆材料。
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