以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
緩衝器100は、例えば、車両(図示せず)の車体と車軸との間に設けられ減衰力を発生させて車体の振動を抑制する。
図1に示すように、緩衝器100は、シリンダ10と、シリンダ10に摺動自在に挿入されるピストン20と、シリンダ10に進退自在に設けられるピストンロッド30と、を備える。ピストン20は、シリンダ10内を伸側室1と圧側室2とに区画する。伸側室1及び圧側室2には、作動油(作動流体)が封入される。ピストンロッド30は、ピストン20に連結される。
以下において、ピストンロッド30に沿う方向を「軸方向」と称し、ピストンロッド30を中心とする放射方向を「径方向」と称し、ピストンロッド30の周りに沿う方向を「周方向」と称する。
シリンダ10は、両端が開口する略筒状のシリンダチューブ11を備える。ピストンロッド30は、シリンダチューブ11の一方の開口11aから延出する。シリンダチューブ11の内周には、シリンダロッドを摺動自在に支持するロッドガイド12が設けられる。シリンダチューブ11の開口11aは、シール部材13によって閉塞される。
シリンダチューブ11の他方の開口(図示省略)は、ボトム部材14により閉塞される。ボトム部材14には、緩衝器100を車両に取り付けるための取付部14aが形成される。ピストンロッド30におけるシリンダ10の外側に位置する端部には、緩衝器100を車両に取り付けるためのおねじ(図示省略)が形成される。
ピストンロッド30がシリンダ10から退出すると、緩衝器100は伸長する。このとき、ピストン20は、ピストンロッド30とともに、伸側室1を縮小し圧側室2を拡大する方向に移動する。ピストンロッド30がシリンダ10に進入すると、緩衝器100は収縮する。このとき、ピストン20は、ピストンロッド30とともに、圧側室2を縮小し伸側室1を拡大する方向に移動する。
ピストン20には、伸側室1に臨む伸側端面21と、圧側室2に臨む圧側端面22と、伸側端面21と圧側端面22との間を貫通するピストン通路23と、ピストン通路23とは別に伸側端面21と圧側端面22との間を貫通するピストン通路24と、が形成される。伸側室1と圧側室2とは、ピストン通路23及びピストン通路24を通じて互いに連通する。
ピストン通路23には減衰バルブ(減衰力発生部)51が設けられ、ピストン通路24には減衰バルブ(減衰力発生部)52が設けられる。減衰バルブ51は、ピストン20の圧側端面22に積層される複数の環状のリーフバルブによって形成される。減衰バルブ52は、ピストン20の伸側端面21に積層される複数の環状のリーフバルブによって形成される。減衰バルブ51及び減衰バルブ52の各々は、1枚のリーフバルブによって形成されていてもよい。
減衰バルブ51は、伸側室1と圧側室2との差圧に応じて、ピストン通路23を開閉する。減衰バルブ52は、圧側室2と伸側室1との差圧に応じて、ピストン通路24を開閉する。
具体的には、伸側室1と圧側室2との差圧が減衰バルブ51の開弁圧に達していない状態では、減衰バルブ51は圧側端面22に着座し、ピストン通路23における作動油の流れを遮断する。緩衝器100が伸長作動し伸側室1と圧側室2との差圧が減衰バルブ51の開弁圧に達すると、減衰バルブ51は圧側端面22から離れ、ピストン通路23における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ51は、ピストン通路23を通過する作動油の流れに抵抗を付与し、伸側室1と圧側室2との間に差圧を生じさせる。減衰バルブ51の撓み量は、ピストンナット53によって制限される。
同様に、圧側室2と伸側室1との差圧が減衰バルブ52の開弁圧に達していない状態では、減衰バルブ52は伸側端面21に着座し、ピストン通路24における作動油の流れを遮断する。緩衝器100が収縮作動し圧側室2と伸側室1との差圧が減衰バルブ52の開弁圧に達すると、減衰バルブ52は伸側端面21から離れ、ピストン通路24における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ52は、ピストン通路24を通過する作動油の流れに抵抗を付与し、圧側室2と伸側室1との間に差圧を生じさせる。減衰バルブ52の撓み量は、バルブストッパ54によって制限される。
このように、減衰バルブ51及び減衰バルブ52は、ピストン20に設けられ、ピストンロッド30の進退に伴って伸側室1と圧側室2の間を行き来する作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する。
緩衝器100は、いわゆる「単筒式緩衝器」であり、シリンダ10内に摺動自在に収容される隔壁部材40を備える。隔壁部材40は、ピストン20とボトム部材14との間に設けられ、シリンダチューブ11、ボトム部材14及び隔壁部材40によって気室3が形成される。気室3は、隔壁部材40によって圧側室2と隔てられる。隔壁部材40の外周には、気室3の気密性を保持するシール部材41が設けられる。
緩衝器100が収縮作動してピストンロッド30がシリンダ10に進入すると、進入したピストンロッド30の体積の分だけ気室3内の気体が圧縮されて、隔壁部材40は気室3が収縮する方向へ移動する。緩衝器100が伸長作動してピストンロッド30がシリンダ10から退出すると、退出したピストンロッド30の体積の分だけ気室3内の気体が膨張して、隔壁部材40は気室3が拡大する方向へ移動する。
このように、気室3は、緩衝器100の作動に伴うシリンダ10内の容積変化を補償する。緩衝器100の作動に伴うシリンダ10内の容積変化は、シリンダ10に連通するリザーバによって補償されてもよい。
緩衝器100は、減衰バルブ51及び減衰バルブ52による減衰力を変化させる減衰力可変部60を更に備える。減衰力可変部60の構造について、詳述する。
減衰力可変部60は、圧力室4を画定する有底筒状のハウジング61と、ピストン20を支持するピストン支持部62と、を有する。ハウジング61は、底部61aと、底部61aから環状に延在する円筒部61bと、円筒部61bの内径よりも大きい内径を有する大径部61cと、を有する。大径部61cは、円筒部61bから連続して形成される。
ハウジング61は、ピストンロッド30に設けられるハウジング支持部70を介してピストンロッド30に固定される。ハウジング支持部70には、ピストンロッド30の先端部31と螺合する雌ねじ孔71が形成される。ハウジング支持部70の外周には互いに平行な一対の平面部が形成される。この一対の平面部を治具で把持することによって、ハウジング支持部70をピストンロッド30の先端部31に強固に螺合することができる。
ハウジング支持部70の外周面には雄ねじ72が形成され、雄ねじ72と大径部61cとが螺合する。つまり、ハウジング61の開口は、ピストンロッド30の先端部31とハウジング支持部70とによって閉塞される。
ハウジング支持部70には、雌ねじ孔71の内周面に開口する雌ねじ孔73が形成される。雌ねじ孔73には、ピストンロッド30とハウジング支持部70との螺合の緩みを防止する止めねじ74がねじ込まれる。
ピストン支持部62は、ハウジング61の底部61aから軸方向に延在する。ピストン20には、軸方向に延在する孔25が形成され、ピストン支持部62はピストン20の孔25を挿通する。バルブストッパ54、減衰バルブ52、ピストン20及び減衰バルブ51は、固定部材としてのピストンナット53を用いてピストン支持部62に固定される。
具体的には、ピストン支持部62の外径は、ハウジング61の底部61aの外径よりも小さく、底部61aとピストン支持部62との間に段部63が形成される。バルブストッパ54、減衰バルブ52、及び減衰バルブ51は環状に形成され、ピストン支持部62の外周に設けられる。ピストン支持部62の外周面には雄ねじ62aが形成され、ピストンナット53の内周面が雄ねじ62aに螺合する。ピストンナット53とピストン支持部62との螺合によって、バルブストッパ54、減衰バルブ52、ピストン20、及び減衰バルブ51が段部63とピストンナット53とによって挟持される。
ハウジング61には、圧力室4と伸側室1とを連通する伸側通路64a及び伸側通路64bが形成される。ピストン支持部62には、圧力室4と圧側室2とを連通する圧側通路65が形成される。伸側通路64a、伸側通路64b及び圧側通路65は、ドリル加工によって形成される。伸側通路64a及び伸側通路64bと、圧力室4と、圧側通路65と、によって、減衰バルブ51及び減衰バルブ52を迂回して伸側室1と圧側室2とを連通する迂回通路が形成される。
ハウジング61の外形は、互いに平行な平面を有する形状、例えば六角形状であることが好ましい。この場合には、ハウジング61の外周を治具で把持してハウジング61をハウジング支持部70に締結することができるので、治具をピストン支持部62の圧側通路65に差し込んでハウジング61をハウジング支持部70に締結する場合と比べ、治具が壊れ難い。
ハウジング61とピストン支持部62とは、一体的に形成される。そのため、伸側通路64a、伸側通路64b及び圧側通路65を同じ工程でドリル加工によって形成すればよく、伸側通路64a、伸側通路64b及び圧側通路65を別々の工程で形成しなくて済む。したがって、緩衝器100の製造における工数を削減することができる。
伸側通路64a及び伸側通路64bは、圧力室4を伸側室1から隔てるハウジング61に形成される一方で、圧側通路65は、ピストン20の孔25を挿通するピストン支持部62に形成される。ピストン支持部62は、孔25を挿通するように比較的長く形成される必要があるのに対して、ハウジング61にはそのような必要がない。つまり、ハウジング61の壁の厚みは、ピストン支持部62の長さよりも小さく、伸側通路64a及び伸側通路64bの流路長は、圧側通路65の流路長よりも短い。
伸側通路64a及び伸側通路64bは、作動油の流れに抵抗を付与するオリフィスとして形成される。以下において、伸側通路64a及び伸側通路64bを、それぞれ、「オリフィス64a」及び「オリフィス64b」とも称する。
圧力室4と伸側室1とがオリフィス64a及びオリフィス64bを通じて連通するので、緩衝器100の動作に伴って、作動油はオリフィス64a及びオリフィス64bを通じて圧力室4と伸側室1との間を行き来する。オリフィス64a及びオリフィス64bを通過する作動油の量は、伸側室1と圧力室4との差圧に応じて変化する。オリフィス64a及びオリフィス64bを通過する作動油の量の変化に伴って、ピストン20のピストン通路23及びピストン通路24を通過する作動油の量も変化する。したがって、減衰バルブ51及び減衰バルブ52が発生する減衰力が変化する。
伸側通路64a及び伸側通路64bの流路長は圧側通路65の流路長よりも短いので、圧側通路65をオリフィスとして形成する場合と比較して、伸側通路64a及び伸側通路64bをオリフィスとして形成するのは容易である。したがって、オリフィス64a及びオリフィス64bを高い成形精度で容易に形成することができ、所望の減衰力特性を有する緩衝器100を容易に製造することができる。
伸側通路64aの全体がオリフィスとして形成される必要はなく、伸側通路64aの一部がオリフィスとして形成されていてもよい。つまり、伸側通路64aにオリフィスが設けられていればよい。同様に、伸側通路64bの全体がオリフィスとして形成される必要はなく、伸側通路64bにオリフィスが設けられていればよい。
減衰力可変部60は、フリーピストン66を更に備える。フリーピストン66は、円板部66aと円筒部66bとを有する。円板部66a及び円筒部66bの外径は、ハウジング61の円筒部61bの内径と略等しい。フリーピストン66は、円筒部66bがハウジング61の底部61aに対向する向きに、ハウジング61の円筒部61b内に摺動自在に収容される。
圧力室4は、フリーピストン66によって、伸側圧力室5と圧側圧力室6とに区画される。伸側圧力室5は、オリフィス64a及びオリフィス64bを通じて伸側室1と連通する。圧側圧力室6は、圧側通路65を通じて圧側室2と連通する。伸側圧力室5内には第1コイルばね67が設けられ、圧側圧力室6内には第2コイルばね68が設けられる。
具体的には、第1コイルばね67は、フリーピストン66の円板部66aとハウジング支持部70との間に設けられる。第2コイルばね68は、フリーピストン66の円板部66aとハウジング61の底部61aとの間に設けられる。第1コイルばね67及び第2コイルばね68の伸縮方向はフリーピストン66の摺動方向と一致する。フリーピストン66は、第1コイルばね67と第2コイルばね68の付勢力が釣り合う中立位置で支持される。
フリーピストン66の円板部66aの外周面には、環状溝66cが形成される。環状溝66cは、円板部66aに形成される連通路66dを通じて伸側圧力室5と連通する。
オリフィス64bは、ハウジング61の円筒部61bに形成される。具体的には、オリフィス64bは、フリーピストン66が第1コイルばね67及び第2コイルばね68に支持された中立位置にある状態で、環状溝66cと対向するように形成される。
フリーピストン66が中立位置近傍にある場合には、伸側室1は、オリフィス64b、環状溝66c、及び連通路66dを通じて伸側圧力室5と連通する。フリーピストン66が中立位置から所定以上変位した場合には、オリフィス64bは、フリーピストン66によって閉塞される。
つまり、オリフィス64bは、フリーピストン66の摺動に伴って流路面積が変化する可変オリフィスである。オリフィス64bの流路面積は、フリーピストン66が中立位置近傍にある場合に最も大きく、中立位置からのフリーピストン66の変異量が増加するのにしたがって減少する。オリフィス64bが閉塞されるフリーピストン66の変位量は、オリフィス64bの大きさや、環状溝66cの幅を変更することで任意に設定できる。
オリフィス64aは、フリーピストン66の移動範囲外に形成され、フリーピストン66によって塞がれない。つまり、オリフィス64aは、フリーピストン66の摺動に関わらず流路面積が一定である固定オリフィスである。
このように、緩衝器100では、伸側通路64aが固定オリフィスとして形成され伸側通路64bが可変オリフィスとして形成される。伸側通路64a及び伸側通路64bは、圧側通路65よりも短いので、圧側通路65に異なるオリフィスを複数設ける場合と比較して、伸側通路64a及び伸側通路64bに異なるオリフィスを複数設けるのは容易である。したがって、固定オリフィスと可変オリフィスとを高い成形精度で容易に形成することができ、所望の減衰力特性を有する緩衝器を容易に製造することができる。
ハウジング支持部70は、フリーピストン66の所定以上の移動を制限する制限部75を有する。制限部75は、伸側圧力室5内に設けられ、フリーピストン66に当接することによって、伸側圧力室5を縮小し圧側圧力室6を拡大する方向へのフリーピストン66の移動を制限する。制限部75は、ハウジング支持部70とは別に形成されていてもよい。
ハウジング61には、制限部75と間隔を空けて対向する対向面61dが形成される。対向面61dは、伸側圧力室5に臨み、オリフィス64aは対向面61dに開口する。そのため、フリーピストン66の移動は、フリーピストン66がオリフィス64aの開口に達する前に制限部75によって制限される。したがって、フリーピストン66によってオリフィス64aが塞がれるのを防止することができる。
制限部75は、ハウジング61の大径部61c内に収容される。大径部61cの内径はハウジング61の円筒部61bの内径よりも大きく、円筒部61bの内径はフリーピストン66の外径と略等しいので、大径部61cの内径はフリーピストン66の外径よりも大きい。そのため、制限部75の外径を拡大してもハウジング61の対向面61dと制限部75との間隔が確保される。したがって、フリーピストン66によって固定オリフィスが塞がれるのを防止することができ、オリフィス64aを通じて伸側圧力室5と伸側室1との間で作動油を確実に行き来させることができる。
制限部75の外径の拡大に伴って、制限部75とフリーピストン66との接触面積が増加する。接触面積の増加によって、フリーピストン66が制限部75に衝突する際に生じる音が弱まる。したがって、制限部75とフリーピストン66との接触によって生じる異音の発生を防止することができる。
ハウジング支持部70の雄ねじ72は、制限部75の外周面にも形成される。ハウジング61をハウジング支持部70に螺合させる際には、ハウジング61及びハウジング支持部70が把持される。
ハウジング61及びハウジング支持部70の外径は、ピストン支持部62の外径よりも大きい。そのため、ピストン支持部62を螺合によりピストンロッド30に固定する場合と比較して、ハウジング61及びハウジング支持部70に強い締め付けトルクを作用させることができる。したがって、ハウジング61とハウジング支持部70とを強固に固定することができ、減衰力可変部60をピストンロッド30に強固に固定することができる。
緩衝器100は、特にストラット式の緩衝器に好適である。ストラット式の緩衝器には径方向の力が作用するが、この力により減衰力可変部60とピストンロッド30との螺合が緩むのを防止することができる。
ハウジング支持部70は、第1コイルばね67を支持するばね支持部76を有する。ばね支持部76に雌ねじ孔71が形成される。制限部75は、ばね支持部76から軸方向に延在する。
ハウジング支持部70の雄ねじ72は、制限部75の外周面と、ばね支持部76の外周面と、に形成される。つまり、ばね支持部76には、雌ねじ孔71と雄ねじ72とが形成される。雄ねじ72の一部と雌ねじ孔71とが径方向に重複するので、ハウジング支持部70を軸方向に拡大させることなく雄ねじ72を長くすることができる。したがって、ハウジング61とハウジング支持部70との螺合の強度を高めることができるとともに、ピストンロッド30とピストン20との間の寸法を短くすることができる。
ハウジング61の大径部61cは、制限部75にかしめられたかしめ部61eを有する。かしめ部61eは、制限部75に大径部61cを螺合させた状態で、大径部61cの開口端を径方向内側に折り曲げることによって形成される。かしめ部61eによって、ハウジング61の大径部61cと制限部75との相対回転が生じにくい。したがって、ハウジング61と制限部75との螺合の緩みを防止することができ、ハウジング61を制限部75に強固に固定することができる。緩衝器100は、螺合の緩みを防止するための接着剤を必要とせず、接着剤が異物としてシリンダ10内に混入することを防ぐことができる。
緩衝器100は、特にストラット式の緩衝器に好適である。接着剤を用いることなく、ストラット式の緩衝器に作用する径方向の力によりハウジング61と制限部75との螺合が緩むのを防止することができる。
緩衝器100において、ピストンロッド30が径方向の力を受けると、ピストンロッド30には、ピストンロッド30とロッドガイド12との接触部を中心としてピストンロッド30を回転させようとするモーメント荷重が生じる。モーメント荷重によって、ピストン20はシリンダ10の内周面に押し付けられる。ロッドガイド12とピストン20との間の距離が短いほど、モーメント荷重によってピストン20に生じる押し付け力は大きく、ピストン20及びシリンダ10が破損しやすい。
ロッドガイド12とピストン20との間の距離は、緩衝器100が最も伸長したときにもっとも小さくなり、このときのロッドガイド12とピストン20との間の距離は、「嵌合長」とも呼ばれる。ストローク長(最伸長時における緩衝器100の長さと最収縮時における緩衝器100の長さと、の差を言う)を短くすることなく嵌合長を長くすることが求められている。
緩衝器100では、ハウジング61は、ピストンロッド30とピストン20との間に設けられる。そのため、緩衝器100の嵌合長は、ハウジング61をピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設けた場合と比較して、ハウジング61の長さ分、ピストン20はピストンロッド30から離れる。また、ハウジング61に相当する部材を、ピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設ける必要がないので、緩衝器100は、ハウジング61をピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設けた場合と略同じだけ収縮する。したがって、ストローク長を短くすることなく嵌合長を長くすることができる。
径方向の力は、特にストラット式の緩衝器に生じやすい。緩衝器100をストラット式の緩衝器に適用することによって、嵌合長を長くすることができ、径方向の力によるピストン20及びシリンダ10の破損を防止することができる。
次に、緩衝器100の動作について説明する。
緩衝器100は、減衰力可変部60を備えることで、入力振動周波数に応じて減衰力を変化させることができる。なお、加振速度は一定として説明する。
まず、入力振動周波数が高い場合について説明する。
緩衝器100の伸長動作時には、伸側室1の圧力が上昇し、作動油がピストン20のピストン通路23を通って圧側室2に移動する。伸側通路64a及び伸側通路64bを通じて伸側室1と連通する伸側圧力室5内の圧力も上昇するので、フリーピストン66は第2コイルばね68を圧縮して伸側圧力室5を拡大する方向へ変位する。伸側圧力室5の拡大に伴い、圧側圧力室6内の作動油が圧側通路65を通じて圧側室2に移動する。
このとき、伸側圧力室5が拡大した分だけ伸側室1から伸側圧力室5に作動油が流入するので、ピストン20のピストン通路23を通過する作動油の量が減少する。その結果、緩衝器100が発生する減衰力が小さくなる。
同様に、緩衝器100の収縮動作時には、フリーピストン66が圧側圧力室6を拡大する方向に変位し、圧側圧力室6が拡大した分だけ圧側室2から圧側圧力室6に作動油が流入する。ピストン20のピストン通路24を通過する作動油の量が減少し、緩衝器100が発生する減衰力が小さくなる。
続いて、入力振動周波数が低い場合について説明する。
緩衝器100の伸長動作の初期には、入力振動周波数が高い場合と同様に、フリーピストン66が伸側圧力室5を拡大する方向に変位し、伸側室1から伸側圧力室5に作動油が流入する。
入力振動周波数が低い場合には、ピストン20の変位量が大きく、フリーピストン66もこれに追従して大きく変位する。フリーピストン66が大きく変位するほど、第2コイルばね68の反力が大きくなる。また、オリフィス64bの流路面積が減少して伸側室1から伸側圧力室5へ作動油が移動するときの流路抵抗も大きくなる。その結果、フリーピストン66の変位が徐々に抑制され、圧側圧力室6から圧側室2に流入する作動油の量が減少する。その結果、ピストン20のピストン通路23を通過する作動油の量が増加し、入力振動周波数が高い場合よりも減衰力が大きくなる。
同様に、緩衝器100の収縮動作時においても、フリーピストン66が大きく変位することで、圧側室2から圧側圧力室6に流入する作動油の量が減少する。したがって、ピストン20のピストン通路24を通過する作動油の量が増加し、入力振動周波数が高い場合よりも減衰力が大きくなる。
以上のように、緩衝器100が発生する減衰力は、入力振動周波数に応じて変化する。
次に、緩衝器100を製造する方法について、図2から図4を参照して説明する。ここでは、主に、ピストン20及び減衰力可変部60をピストンロッド30に組み付ける方法について説明する。
まず、図2に示すように、ピストンロッド30にハウジング支持部70を固定する。具体的には、ピストンロッド30の先端部31にハウジング支持部70の雌ねじ孔71を螺合させ、その後、雌ねじ孔73に止めねじ74をねじ込む。
次に、図3に示すように、ハウジング61内に第2コイルばね68及びフリーピストン66を挿入する。フリーピストン66とハウジング支持部70との間に第1コイルばね67を配置した状態で、大径部61cの内周面をハウジング支持部70の雄ねじ72に螺合させる。このとき、ハウジング61の大径部61cを把持すればよく、ハウジング61により大きいトルクを作用させることができる。したがって、ハウジング支持部70とハウジング61とを強固に固定することができる。
次に、図4に示すように、ハウジング61の大径部61cの開口端を径方向内側に折り曲げて大径部61cにかしめ部61eを形成し、ハウジング61を制限部75にかしめる。その後、ピストン支持部62を、バルブストッパ54、減衰バルブ52、ピストン20、及び減衰バルブ52に、この順に挿通する。ピストンナット53をピストン支持部62の雄ねじ62aに螺合させることによって、ピストン20等が段部63とピストンナット53とによって挟持される。
以上により、ピストンロッド30へのピストン20及び減衰力可変部60の組み付けが完了する。
次に、本実施形態の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態の変形例に係る緩衝器200の部分断面図である。
緩衝器200では、ピストンロッド30とハウジング支持部70とが一体的に形成される。別体として形成されたピストンロッド30とハウジング支持部70とを、例えば摩擦圧接によって接合することによって、ピストンロッド30とハウジング支持部70とが一体化される。
ピストンロッド30とハウジング支持部70とが接合によって固定されるので、ハウジング支持部70に雌ねじ孔71及び雌ねじ孔73(図1参照)を形成する必要がなく、緩衝器200は止めねじ74(図1参照)を必要としない。したがって、蓋部270の成形における工数を減らすことができるとともに、緩衝器200の部品数を減らすことができる。
次に、本実施形態の別の変形例について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態の別の変形例に係る緩衝器300の部分断面図である。
緩衝器300では、緩衝器200と同様に、ピストンロッド30とハウジング支持部70とが一体的に形成される。ピストンロッド30及びハウジング支持部70は、中空である。したがって、ピストンロッド30及びハウジング支持部70を軽量化することができ、緩衝器300を軽量化することができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
本実施形態では、緩衝器100,200,300は、シリンダ10と、シリンダ10に摺動自在に収容され、シリンダ10内を伸側室1と圧側室2とに区画するピストン20と、シリンダ10内に進退自在に設けられ、ピストン20に連結されたピストンロッド30と、ピストン20に設けられ、ピストンロッド30の進退に伴って伸側室1と圧側室2の間を行き来する作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰バルブ51,52と、減衰バルブ51,52による減衰力を変化させる減衰力可変部60と、を備え、減衰力可変部60は、ピストンロッド30に固定され、減衰バルブ51,52を迂回して伸側室1と圧側室2とを連通する圧力室4を画定するハウジング61と、ハウジング61と一体的に形成されピストン20を支持するピストン支持部62と、を有し、ハウジング61に圧力室4と伸側室1とを連通する伸側通路64a,64bが形成され、ピストン支持部62に圧力室4と圧側室2とを連通する圧側通路65が形成される。
この構成では、ハウジング61とピストン支持部62とが一体的に形成され、ハウジング61及びピストン支持部62にそれぞれ伸側通路64a,64b及び圧側通路65が形成される。伸側通路64a,64bを形成する工程と同じ工程で圧側通路65を形成すればよく、伸側通路64a,64bと圧側通路65とを別々の工程で形成しなくて済む。したがって、緩衝器100,200,300の製造における工数を削減することができる。
また、本実施形態では、伸側通路64a,64bの流路長は、圧側通路65の流路長よりも短く、伸側通路64a,64bには、作動油の流れに抵抗を付与することによって減衰バルブ51,52を通過する作動油の量を変化させるオリフィス64a,64bが設けられる。
この構成では、伸側通路64a,64bは圧側通路65よりも短いので、圧側通路65にオリフィスを設ける場合と比較して、伸側通路64a,64bにオリフィスを設けるのは容易である。したがって、オリフィス64a,64bを高い成形精度で容易に形成することができ、所望の減衰力特性を有する緩衝器100,200,300を容易に製造することができる。
また、本実施形態では、減衰力可変部60は、ハウジング61内に摺動自在に収容されるフリーピストン66を更に備え、伸側通路64a,64bは、ハウジング61に複数形成され、伸側通路64aにおけるオリフィス64aは、フリーピストン66の摺動に関わらず流路面積が一定である固定オリフィスであり、伸側通路64bにおけるオリフィス64bは、フリーピストン66の摺動に伴って流路面積が変化する可変オリフィスである。
この構成では、伸側通路64a,64bがハウジング61に複数形成されるので、圧側通路65を形成する工程と同じ工程で複数の伸側通路64a,64bを形成すればよく、圧側通路65及び複数の伸側通路64a,64bを別々の工程で形成しなくて済む。したがって、緩衝器100,200,300の製造における工数を削減することができる。また、伸側通路64aにおけるオリフィス64aが固定オリフィスであり伸側通路64bにおけるオリフィス64bが可変オリフィスである。複数の圧側通路65に異なるオリフィスをそれぞれ設ける場合と比較して、伸側通路64a,64bに異なるオリフィスをそれぞれ設けるのは容易である。したがって、固定オリフィス64aと可変オリフィス64bとを高い成形精度で容易に形成することができ、所望の減衰力特性を有する緩衝器100,200,300を容易に製造することができる。
また、本実施形態では、フリーピストン66は、圧力室4を、伸側通路64a,64bを通じて伸側室1と連通する伸側圧力室5と、圧側通路65を通じて圧側室2と連通する圧側圧力室6と、に区画し、減衰力可変部60は、伸側圧力室5内に設けられフリーピストン66の所定以上の移動を制限する制限部75を更に備え、ハウジング61は、制限部75と間隔を空けて対向し伸側圧力室5に臨む対向面61dを有し、固定オリフィス64aは、対向面61dに開口する。
この構成では、固定オリフィス64aが対向面61dに開口するので、フリーピストン66が固定オリフィス64aの開口に達する前にフリーピストン66の移動が制限部75によって制限される。したがって、フリーピストン66によって固定オリフィス64aが塞がれるのを防止することができる。
また、本実施形態では、ハウジング61は、フリーピストン66の外径よりも大きい内径を有する大径部61cを有し、制限部75は、大径部61c内に収容される。
第5のこの構成では、制限部75が大径部61cに収容されるので、制限部75の外径を拡大してもフリーピストン66の対向面61dと制限部75との間隔が確保される。制限部75の外径の拡大に伴って、制限部75とフリーピストン66との接触面積が増加し、フリーピストン66が制限部75に衝突する際に生じる音が弱まる。したがって、フリーピストン66によって固定オリフィスが塞がれるのを防止することができるとともに、制限部75とフリーピストン66との衝突によって生じる異音の発生を防止することができる。
また、本実施形態では、緩衝器100,200,300は、ピストンロッド30に設けられ、ハウジング61との螺合によりハウジング61を支持するハウジング支持部70を更に有し、ハウジング61及びハウジング支持部70は、ピストン支持部62の外径よりも大きい外径を有する。
この構成では、ハウジング61及びハウジング支持部70の外径がピストン支持部62の外径よりも大きいので、ピストン支持部62を螺合によりピストンロッド30に固定する場合と比較して、ハウジング61及びハウジング支持部70に強い締め付けトルクを作用させることができる。したがって、ハウジング61とハウジング支持部70とを強固に固定することができ、減衰力可変部60をピストンロッド30に強固に固定することができる。
また、本実施形態では、ハウジング61は、ハウジング支持部70にかしめられたかしめ部61eを有する。
第7のこの構成では、ハウジング61がハウジング支持部70にかしめられるので、ハウジング61とハウジング支持部70とは相対回転しにくい。したがって、ハウジング61とハウジング支持部70との螺合の緩みを防止することができる。
また、本実施形態では、ハウジング61は、ピストン20とピストンロッド30との間に設けられる。
この構成では、ハウジング61がピストン20とピストンロッド30との間に設けられる。そのため、ハウジング61をピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設けた場合と比較して、ハウジング61の長さ分、ピストン20はピストンロッド30から離れる。また、ハウジング61に相当する部材を、ピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設ける必要がないので、緩衝器100,200,300は、ハウジング61をピストン20におけるピストンロッド30とは反対側に設けた場合と略同じだけ収縮する。したがって、ストローク長を短くすることなく嵌合長を長くすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、緩衝器100,200,300を、単筒式緩衝器として説明しているが、2つのシリンダの隙間に気室が形成される複筒式緩衝器や、気室としてシリンダの外部にタンクを設けた緩衝器等に本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、減衰力可変部60のフリーピストン66が、第1コイルばね67及び第2コイルばね68により支持されているが、コイルばね以外の弾性体、例えば、ゴム等により支持されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、フリーピストン66とハウジング61とハウジング支持部70とにより伸側圧力室5が区画され、ハウジング61に形成されたオリフィス64a及びオリフィス64bにより伸側室1と伸側圧力室5とが連通している。オリフィス64a及びオリフィス64bの数や大きさは、所望の減衰力特性に応じて任意に設定される。また、オリフィス64a及びオリフィス64bのいずれか一方のみを備える構成としてもよい。更に、ハウジング61の開口を閉塞せずに大きく開放し、伸側圧力室5を区画しない、つまり、伸側圧力室5を有さない構成としてもよい。
また、上記実施形態では、減衰力可変部60は、入力振動周波数に応じて減衰力を変化させる周波数感応部である。減衰力可変部60は、ピストン20の速度に応じて減衰力を変化させる速度感応部であってもよい。この場合には、伸側通路64a及び伸側通路64bにはオリフィスが設けられていなくてもよい。
また、上記実施形態では、フリーピストン66とハウジング61とハウジング支持部70とにより伸側圧力室5が区画され、ハウジング61に形成されたオリフィス64a及びオリフィス64bにより伸側室1と伸側圧力室5とが連通している。オリフィス64a及びオリフィス64bの数や大きさは、所望の減衰力特性に応じて任意に設定される。また、オリフィス64a及びオリフィス64bのいずれか一方のみを備える構成としてもよい。更に、ハウジング61の開口を閉塞せずに大きく開放し、伸側圧力室5を区画しない、つまり、伸側圧力室5を有さない構成としてもよい。
また、上記実施形態では、伸側圧力室5と圧側圧力室6とがフリーピストン66によって隔てられている。フリーピストン66の円板部に孔を形成し、伸側圧力室5と圧側圧力室6とをこの孔を通じて直接連通させてもよい。