JP6763707B2 - バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物 - Google Patents

バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6763707B2
JP6763707B2 JP2016130721A JP2016130721A JP6763707B2 JP 6763707 B2 JP6763707 B2 JP 6763707B2 JP 2016130721 A JP2016130721 A JP 2016130721A JP 2016130721 A JP2016130721 A JP 2016130721A JP 6763707 B2 JP6763707 B2 JP 6763707B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid ester
diglycerin
oil
biofilm formation
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016130721A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018002641A (ja
Inventor
知次郎 小出
知次郎 小出
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Riken Vitamin Co Ltd
Original Assignee
Riken Vitamin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Riken Vitamin Co Ltd filed Critical Riken Vitamin Co Ltd
Priority to JP2016130721A priority Critical patent/JP6763707B2/ja
Publication of JP2018002641A publication Critical patent/JP2018002641A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6763707B2 publication Critical patent/JP6763707B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、微生物によるバイオフィルムの形成を抑制するために用いる組成物に関する。
バイオフィルムとは、細菌やカビ等の微生物が固体や液体の表面に付着することによって形成される微生物集合体であり、様々な環境に存在する。このバイオフィルムと呼ばれる微生物集合体は、日常生活の分野、食品産業の分野及び医療の分野等、各分野において深く関与して多くの問題を引き起こしている。例えば、日常生活の分野においては、台所、浴室、トイレ等の排水口に存在するヌメリもバイオフィルムであり、悪臭の要因となることが指摘されている。食品産業の分野においては、各種配管や各種製造設備等に微生物が付着してバイオフィルムを形成し、微生物汚染の要因になることが指摘されている。医療の分野に関しては、カテーテル内部やコンタクトレンズ、義歯等にバイオフィルムが形成され、感染症を引き起こす要因となることが指摘されている。
特に、義歯の汚れは義歯性口内炎だけでなく口角炎等を引き起こすことも指摘され、更に、バイオフィルムの形成(デンチャープラークの堆積)が助長され、ますます口腔内環境が悪化することも指摘されている。そして、このバイオフィルムには高頻度でカンジダ菌が検出されることが報告されている。
バイオフィルムの形成を抑制する従来技術としては、モノグリセリンモノカプリル酸エステルを含む炭素数7〜14の飽和脂肪酸残基を有するモノグリセリンモノ脂肪酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステルを有効成分とする、カンジダ菌によるバイオフィルムの形成を抑制するためのバイオフィルム抑制剤(特許文献1)が開示されている。しかし、特許文献1の表2から、グリセリルジラウレート(モノグリセリンジ脂肪酸エステル)は、グリセリルモノラウレート(モノグリセリンモノ脂肪酸エステル)と比較してバイオフィルム抑制力が低いこと、即ち、モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が2分子の場合は好ましくないことが知られている。さらには、特許文献1の表2から、ジグリセリルモノカプリレート(ジグリセリンモノカプリル酸エステル)のバイオフィルム抑制力が低いこと、即ちジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としてカプリル酸は好ましくないことが知られている。
特開2013‐231002号公報
本発明の目的は、バイオフィルムの形成を抑制する効果に優れたバイオフィルム形成抑制用組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、ジグリセリンジカプリル酸エステルを油相に含有する水中油型組成物であって、該水中油型組成物中の油滴が微細化されたものが上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき更に研究を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の構成を包含する。
[1]ジグリセリンジカプリル酸エステルを油相に含有し、油滴の粒子径がメジアン径で15μm以下であることを特徴とするバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物[2]上記[1]に記載のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有することを特徴とするバイオフィルム形成を抑制する口腔用組成物。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物は、カンジダ菌に由来するバイオフィルムの形成を抑制する効果に優れている。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物は、有効成分として油相にジグリセリンジカプリル酸エステルを含有し、該水中油型組成物中の油滴の粒子径がメジアン径で15μm以下(好ましくは10μm以下)である。該油滴は、少なくともジグリセリンジカプリル酸エステルから構成される。
上記ジグリセリンジカプリル酸エステルは、1分子のジグリセリンと2分子のカプリル酸とがエステル結合したものである。
ジグリセリンジカプリル酸エステルは、ジグリセリンジカプリル酸エステルを含む混合物であってもよく、例えば、ジグリセリンとカプリル酸とのエステル化物が挙げられる。これらは、通常、ジグリセリンジカプリル酸エステルの他に、ジグリセリンモノカプリル酸エステル、ジグリセリントリカプリル酸エステル、ジグリセリンテトラカプリル酸エステル、ジグリセリン、カプリル酸等を含む混合物である。
ジグリセリンジカプリル酸エステルを含む混合物としては、好ましくは、エステル中のジエステル含量が20%以上であり、より好ましくはジエステル含量が35%以上である。
ジグリセリンジカプリル酸エステルの原料として用いられるジグリセリンとしては、通常グリセリンに、好ましくは少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約1.5〜2.4、好ましくは平均重合度が約2.0のジグリセリン混合物が挙げられる。また、ジグリセリンはグリシドール又はエピクロルヒドリン等を原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色等の処理を行ってよい。
本発明においては、上記ジグリセリン混合物を、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィー等を用いる公知方法又は自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン2分子からなるジグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度ジグリセリンが、好ましく用いられる。
ジグリセリンジカプリル酸エステルの原料として用いられるカプリル酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とするものであれば特に制限はないが、純度が50%以上のものが好ましい。純度が50%未満であると、本発明のバイオフィルム形成抑制効果が十分に発揮されない虞がある。なお、カプリル酸は、化学合成で得られるものであってもよい。
ジグリセリンジカプリル酸エステルのエステル化反応による製造方法を例示すれば以下の通りである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット又は邪魔板等を備えた通常の反応容器に、ジグリセリンとカプリル酸を約1.0:0.7〜1.0:2.5、のモル比で仕込み、通常触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。前記所定温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応における圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価約3以下を目安とするのが好ましい。得られた反応液は、未反応のカプリル酸、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノカプリル酸エステル、ジグリセリンジカプリル酸エステル、ジグリセリントリカプリル酸エステル及びジグリセリンテトラカプリル酸エステル等を含む混合物である。この混合物を本発明で使用してもよい。
エステル化反応終了後、所望により反応混合物中に残存する触媒を中和してもよい。その際、エステル化反応の温度が約200℃以上の場合は、液温を約180〜200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。中和後、得られた反応混合物を、所望により冷却して、約100〜180℃、好ましくは約130〜150℃に保ち、好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置するのが好ましい。未反応のジグリセリンが下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
上記処理により得られたジグリセリンジカプリル酸エステルは、ジエステル体の含有量が通常約20%以上40%未満のものであるが、所望により、該ジグリセリンジカプリル酸エステルを、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してジエステル体を約50%以上、好ましくは約70%以上含むジグリセリンジカプリル酸エステルを得ることもできる。また所望により、蒸留後脱色、脱臭等の処理を行ってよい。
ジグリセリンジカプリル酸エステルは、市販されているものを用いることができ、例えば、ポエムFB‐28(商品名;理研ビタミン社製 ジエステル含量38%)が挙げられる。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物は、少なくともジグリセリンジカプリル酸エステルが油相を構成し、水性成分が水相として連続相を構成する。該水性成分に特に制限はないが、例えば水及び多価アルコール(即ち、多価アルコール水溶液)を使用することができる。また、本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物が後述する「ジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤」を含有する場合は、水性成分として水を単独で使用することもできる。
上記水としては、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば蒸留水、イオン交換樹脂処理水、逆浸透膜(RO)処理水又は限外ろ過膜(UF)処理水等の精製水、水道水、地下水あるいは涌水等の天然水又はアルカリイオン水等が挙げられる。
上記多価アルコールは、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基をもつ化合物であれば特に制限はなく、例えば、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類、デキストリンあるいは水飴等のでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖、蜂蜜等の転化糖、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン及び還元水飴等が好ましく、特にグリセリンが好ましい。これら多価アルコールは、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物は、ジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤を含有することができる。該ジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤は、水中油型組成物中に含まれる油滴を微細な状態〔例えば、粒子径(メジアン径)10μm以下、好ましくは5μm以下〕で安定に存在させるために用いられる。
ジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤としては、水中油型組成物中に含まれる油滴を微細な状態で安定に存在させる作用を有するものであれば特に制限はないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの他、グリセリン酢酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ジグリセリンジカプリル酸エステルを除く。以下同じ)及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。またレシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン及び酵素処理レシチン等が含まれる。これらの中でも、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルは、アトラス法により計算されたHLB値(以下、単に「HLB」という)が10以上、好ましくは11以上、更に好ましくは13以上のものが好ましい。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の製造方法に特に制限はないが、その好ましい製造方法の概略は以下の通りである。
即ち、上記ジグリセリンジカプリル酸エステル及び水性成分(例えば、水及び多価アルコール等)並びに必要に応じてジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤を65〜90℃に加熱し、これを撹拌することにより油滴の粒子径がメジアン径で15μm以下(好ましくは10μm以下)となるように乳化又は可溶化し、水中油型組成物とする。次に、必要であれば得られた水中油型組成物を冷却し、本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を得る。得られた水中油型組成物の性状は乳化剤の濃度等により異なり一様ではないが、液状、ペースト状又はゲル状を呈する。
上記撹拌を実施するための装置としては特に限定されず、例えば、撹拌機、加熱用のジャケット又は邪魔板等を備えた通常の撹拌・混合槽を用いることができる。撹拌機に装備する撹拌翼の形状はプロペラ型、かい十字型、ファンタービン型、ディスクタービン型又はいかり型のいずれでも良いが、好ましくはディスクタービン型又はいかり型である。また、TKホモミクサー(製品名;プライミクス社製)、クレアミックス(製品名;エムテクニック社製)等の高速回転式ホモジナイザーも使用することができる。乳化液の冷却は、前記加熱用のジャケットに水又は冷媒を通すことにより行われるのが好ましい。
また、上記撹拌では、水中油型組成物の油滴を所望の粒子径にするため、撹拌機の回転速度を適宜調整することができる。その回転速度が大きいと油滴の粒子径の小さい水中油型組成物が得られる傾向にある。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物100質量%中のジグリセリンジカプリル酸エステル及び水性成分の配合割合は特に制限されないが、例えばジグリセリンジカプリル酸エステルが1.0〜40.0質量%、好ましくは5.0〜20.0質量%であり、残余が水性成分となるように調整するのが好ましい。また、本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物がジグリセリンジカプリル酸エステル以外の乳化剤を含有する場合、その配合割合は、該水中油型組成物100質量%中、0.1〜20.0質量%、好ましくは0.5〜10.0質量%となるように調整するのが好ましい。
本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物は、有害微生物、特にカンジダ菌に由来するバイオフィルムの形成抑制に有効である。対象となるカンジダ菌は特に制限はなく、カンジダ属に属する真菌全般を指し、具体的には例えば、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラシロシス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・ギリエルモンジイ、カンジダ・クルセイ等が挙げられる。
バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有するバイオフィルム形成を抑制する口腔用組成物も本発明の形態の1つである。
バイオフィルム形成を抑制する口腔用組成物としては、本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有する、例えば、練歯磨、液状歯磨、泡状歯磨等の歯磨剤、入歯安定剤、歯肉マッサージクリーム、局所塗布剤、洗口剤、マウスウォッシュ、口中清涼剤、タブレット、口腔用ウエットティッシュ、口腔湿潤用ジェル剤等が挙げられる。バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有するバイオフィルム形成を抑制する食品も本発明の形態の1つである。バイオフィルム形成を抑制する食品としては、本発明のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有する、例えば、トローチ剤、チューインガム、フィルム状食品等が挙げられる。これらはデンチャープラークの堆積等を防止することができる。
この他、バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有するバイオフィルム形成を抑制する化粧品、医薬部外品、医薬品等も本発明の形態に包含される。
上記したバイオフィルム形成を抑制する口腔用組成物、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等に含まれるバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の配合量は、有効成分であるジグリセリンジカプリル酸エステルとして、好ましくは0.0001〜5.0質量%であり、より好ましくは0.0005〜1.0質量%である。0.0001質量%未満であるとバイオフィルム形成抑制効果が不十分である場合があり、5.0質量%を超えると風味に悪影響を与える場合がある。
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
[製造例1:ジグリセリンジカプリル酸エステルの製造]
先ず、撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた反応釜にグリセリン20kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液100mLを加え、窒素ガス気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。得られた反応生成物を約90℃まで冷却し、リン酸約20gを添加して中和した後ろ過し、ろ液を160℃、250Paの条件下で減圧蒸留してグリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で真空蒸留してグリセリン3%、ジグリセリン92%、トリグリセリン5%を含む留分(ジグリセリン混合物)約3.0kgを得た。次に、留分に対して1質量%の活性炭を加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られたジグリセリンは、水酸基価が約1359、平均重合度が約2.0であり、ジグリセリンの含有量は98質量%であった。
次に、撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、上記方法で得たジグリセリン176.6g(約1.06モル)及びカプリル酸(商品名:NAA−82;日油社製)123.4g(約0.86モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液1.5mLを加え、常圧下、窒素ガス気流中、200℃で1時間エステル化反応した後、更に温度を230℃に上げ、酸価1.0以下となるまで約2時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を冷却してジグリセリンジカプリル酸エステル(試作品)約270gを得た。
上記製造例1により得られたジグリセリンジカプリル酸エステル(試作品)の各形態のエステル含量を表1に示す。なお、各形態のエステル含量の測定方法は、下記方法で行った。
[各形態のエステル含量の測定方法]
HPLCを用いてエステル組成分析を行い、定量は絶対検量線法により行った。即ち、データ処理装置によってクロマトグラム上に記録された被検試料の各形態のエステルに相当するピーク面積を測定し、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したモノグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、又はトリグリセリンモノステアリン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、被検試料の各形態のエステル含量を求めた。HPLC分析条件を以下に示した。
[HPLC分析条件]
装置 島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC−10A;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO−10A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:C−R7A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−802;昭和電工社製)
2本連結
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検出器 RI検出器(型式:RID−6A;島津製作所社製)
カラム温度 40℃
検液注入量 15μL(in THF)
Figure 0006763707
[バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の製造]
(1)原材料
1)ジグリセリンジカプリル酸エステル(試作品)
2)高純度粉末レシチン(商品名:レシオンP;理研ビタミン社製)
3)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート(HLB15.0;和光純薬社製)
4)ポリグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ−0381V;HLB14.0;理研ビタミン社製)
5)グリセリン(ミヨシ油脂社製)
6)還元水飴(商品名:アマミール;三菱商事フードテック社製)
7)水
(2)バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の配合
上記原材料を用いて作製したバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の本発明品1〜6及び比較例品(各70g)の配合組成を表2に示した。
Figure 0006763707
(3)バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の製造方法
(3−1)本発明品1〜4及び比較例品の製造
表2に示す成分を100mL容ビーカーに秤量し、湯浴中で加温した。80℃に達温後、TKホモミクサー(製品名;プライミクス社製)を用いて7,000rpmで5分間撹拌した。撹拌後、加温及び撹拌により蒸発した分の水を補うため加水して重量調整し、本発明品1〜4及び比較例品(各70g)を得た。
(3−2)本発明品5及び6の製造
TKホモミクサーの回転速度を10,000rpmとしたこと以外は、前記(3−1)と同様に実施し、本発明品5及び6(各70g)を得た。
(4)バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の粒子径測定
600nmにおける透過率が80〜90%となるよう、0.1g〜0.5gの本発明品1〜6及び比較例品をそれぞれ水100mLに分散させて得た液をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950(堀場製作所社製)を用いて粒子径(メジアン径)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0006763707
[バイオフィルム形成抑制効果の評価]
バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の本発明品1〜6及び比較例品のそれぞれを用いて、供試菌(カンジダ・アルビカンス NBRC 1594株)に由来するバイオフィルムの形成抑制効果の評価を行った。
(1)供試菌液の調整
121℃、15分間オートクレーブ滅菌したポテトデキストロース寒天培地(DIFCO社製)を滅菌済みシャーレにて加えて固化し、寒天平板を作製した。凍結保存品の供試菌をこの寒天平板に塗抹して、30℃にて2日間培養した。2%グルコース含有酵母ニトロゲンベース(DIFCO社製)を10倍希釈し、121℃、15分間オートクレーブ滅菌した培地20mlをバッフル付き三角フラスコに分注し、上記寒天培地で培養した供試菌を一白金耳取り植菌した。その後、30℃、150rpmにて24時間撹拌培養し、前培養液とした。次いで、遠心分離(4700rpm、10分、20℃)をおこない集菌した。集菌した菌を生理食塩水20mlを用いて洗浄し、再び遠心分離(4700rpm、10分、20℃)をおこない集菌した。集菌した菌をサブローブドウ糖培地(ペプトン1.0質量%、ブドウ糖4.0質量%を含み、1規定の塩酸を用いてpH5.7に調整した液体培地。以下、「SG培地」という。)10mlに加え、再懸濁した。この再懸濁液をSG培地で20倍希釈したものを供試菌液として用いた。供試菌液中の菌数は、3.2×10個/mlであった。
(2)バイオフィルム形成方法
バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物の本発明品1〜6及び比較例品を被験試料とし、各被験試料を水で溶解して被験試料液とし、該被験試料液2μL、供試菌液198μLを、96穴マイクロプレート(商品名:TCプレート96well(Cell+);ザルスタット社製)の各ウェル(穴)に加えた。なお、被験試料液中の被験試料濃度は、供試菌液と加えた際の濃度、即ち各ウェル中のジグリセリンジカプリル酸エステルの濃度がそれぞれ1ppm、5ppm、25ppm、50ppm、100ppmとなるように調製した。その後、被験試料液及び供試菌液を加えた96穴マイクロプレートを30℃、2日間の静置培養を行って各ウェル中にバイオフィルムを形成した。
また、コントロール(被験試料無添加)として、被験試料液2μLと供試菌液198μLをウェルに加えるのに替えて、被験試料を用いずに水2μLと供試菌液198μLをウェルに加える以外は同様の操作を行って各ウェル中にバイオフィルムを形成した。
(3)形成させたバイオフィルムの定量方法
静置培養終了後、各ウェルの被験試料液及び培養液等の液部を除去し、各ウェルの付着物(菌体、分泌物及び沈着物等)をバイオフィルムとし、各ウェルに0.01質量%のクリスタルバイオレット水溶液(商品名:Becton;Dickinson and Company社製)50μLを添加し、バイオフィルムを染色した。次いで、各ウェルから添加したクリスタルバイオレット液を除き、200μLの蒸留水で2回洗浄後、エタノール200μLを加えて各ウェルからバイオフィルムを染色していたクリスタルバイオレットを溶出させることにより、マイクロプレートに固着したバイオフィルムを定量した。定量方法としては、マイクロプレートリーダー(型式:SH−9000Lab;CORONA ELECTRIC社製)を用いて、各ウェルの600nmにおける吸光度(O.D.600)を測定した。
(4)バイオフィルム形成抑制効果の評価方法
コントロールのウェルに形成したバイオフィルムの600nmにおける吸光度を基準吸光度とし、その数値の時にバイオフィルム形成率100%とした。それぞれの被験試料の吸光度と基準吸光度と対比してバイオフィルム形成率を計算し、各被験試料のバイオフィルム形成率を縦軸、ジグリセリンジカプリル酸エステルの濃度を横軸とした対数近似曲線グラフを作成した。
上記対数近似曲線のグラフを用い、各ウェルの吸光度が、基準吸光度の50%に相当するバイオフィルム形成率、すなわちバイオフィルム形成率50%となるジグリセリンジカプリル酸エステルの濃度(以下、「50%阻害濃度」という。)を各被験試料について算出した。
被験試料のバイオフィルム形成抑制効果の判定は、被験試料の50%阻害濃度が20ppm以下の場合にバイオフィルム形成の抑制に優れているとし、被験試料の50%阻害濃度が20ppmを超える場合にバイオフィルム形成の抑制に劣ると判定した。得られた結果を表4に示す。
Figure 0006763707
表4の結果より、本発明品1〜6は、バイオフィルム形成抑制効果の評価が、いずれも50%阻害濃度が20ppm以下でありバイオフィルム形成抑制効果に優れていた。
一方、比較例品のバイオフィルム形成抑制効果の評価は50%阻害濃度が20ppmを超えるものでありバイオフィルム形成抑制効果に劣っていた。
[製造例1:タブレットの製造]
下記表5の配合により、各成分を均一に混合し水を加えて混練りした後、乾燥させて単発式打錠機にて本発明品1を含有するタブレットを製造した。
Figure 0006763707
[製造例2:フィルム状食品の製造]
下記表6の配合により、各成分を均一に混合し水を加えて混練りした後プラスチックフィルムに展延し乾燥させ、本発明品1を含有するフィルム状食品を製造した。
Figure 0006763707
本発明は、バイオフィルム形成の抑制が求められる食品及び化粧品産業の分野並びに医療の分野等、各分野において利用することができる。

Claims (2)

  1. ジグリセリンとカプリル酸とのエステル化物であってジエステル含量が35%以上のものを油相に含有し、油滴の粒子径がメジアン径で15μm以下であることを特徴とするバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物。
  2. 請求項1に記載のバイオフィルム形成抑制用水中油型組成物を含有することを特徴とするバイオフィルム形成を抑制する口腔用組成物。
JP2016130721A 2016-06-30 2016-06-30 バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物 Active JP6763707B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016130721A JP6763707B2 (ja) 2016-06-30 2016-06-30 バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016130721A JP6763707B2 (ja) 2016-06-30 2016-06-30 バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018002641A JP2018002641A (ja) 2018-01-11
JP6763707B2 true JP6763707B2 (ja) 2020-09-30

Family

ID=60948454

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016130721A Active JP6763707B2 (ja) 2016-06-30 2016-06-30 バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6763707B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7337083B2 (ja) * 2017-11-21 2023-09-01 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 口腔用植物系水中油型エマルジョン及び使用方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018002641A (ja) 2018-01-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1006128B1 (fr) Maltodextrines branchées et leur procédé de préparation
EP3042940B1 (en) Low-toxicity sophorolipid-containing composition and use therefor
CN105593370B (zh) 槐糖脂化合物以及包含所述槐糖脂化合物的组合物
EP2620160A1 (en) Composition for oral use
JP6763707B2 (ja) バイオフィルム形成抑制用水中油型組成物
EP2902009A1 (en) Cosmetic composition, containing xylitol fatty acid esters as active ingredient, having continuous cooling effect
JP5051987B2 (ja) 化粧料およびその製造方法
JP2007070304A (ja) 化粧料およびその製造方法
JP5024978B2 (ja) 抗酸化剤
JP6729913B2 (ja) 抗炎症剤
JP2007209251A (ja) コエンザイムq10含有組成物
JP6150271B2 (ja) 口腔内好気性細菌用静菌剤
JP6646651B2 (ja) バイオフィルム形成抑制剤
CN1747962A (zh) 化合物、其制备方法和用途
KR20230001597A (ko) 햄프 줄기 발효추출물을 유효성분으로 함유하는 안티인플라메이징 조성물
JP2009183210A (ja) グリセリンリシノール酸モノエステル及びポリグリセリンリシノール酸モノエステルの製造方法
JP5143127B2 (ja) 皮膚外用剤及び飲食品
JP4633399B2 (ja) グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤
JP5650882B2 (ja) ラジカル生成抑制剤
JP7459419B2 (ja) ラメラ形成促進剤
JP6149252B2 (ja) 口腔内嫌気性細菌用静菌剤
JP2019089723A (ja) 保湿剤
JP2008173108A (ja) 菓子
JP4994684B2 (ja) 保湿剤、細胞賦活剤、及び抗酸化剤
JP2005281174A (ja) 活性酸素消去剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190402

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200212

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200609

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200908

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200910

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6763707

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250