JP6763036B2 - アルミニウム合金ブレージングシート、その製造方法、アルミニウム合金シート及び熱交換器 - Google Patents

アルミニウム合金ブレージングシート、その製造方法、アルミニウム合金シート及び熱交換器 Download PDF

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Description

本発明は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのアルミニウム又はアルミニウム合金のろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法、並びにそれを用いてろう付け加熱を行うことにより得られるアルミニウム合金シート及び熱交換器に関する。
アルミニウム製の熱交換器や機械用部品など、細かな接合部を多数有するアルミニウム製品の接合方法としてろう付け接合が広く用いられている。アルミニウム又はアルミニウム合金をろう付け接合するには、表面を覆っている酸化皮膜を破壊して、溶融したろう材を露出させ、母材あるいは同じく溶融したろう材に濡れさせることが必須であり、酸化皮膜を破壊するためには、大別して窒素ガス炉中でフラックスを使用する方法と真空加熱炉中でフラックスを使用しない方法とがあり、いずれも実用化されている。
窒素ガス炉中でフラックスを使用する方法では、ろう付加熱中にフラックスが酸化皮膜と反応し、酸化皮膜を破壊する。しかしながら、フラックスの費用およびフラックスを塗布する工程の費用が嵩む問題がある。また、フラックスが不均一に塗布された場合、ろう付不良が発生するリスクがある。一方、真空加熱炉中でフラックスを使用しない方法は、Al−Si−Mg系合金からなるろう材が用いられ、真空中での加熱によりろう材中のMg蒸発し、材料表面の酸化皮膜を破壊する。しかしながら、高価な真空加熱設備が必要であるという欠点がある。また、蒸発したMgが炉内に付着するため、付着したMgを除去するメンテナンス費も高いという問題がある。そこで、窒素ガス炉中でフラックスを使用しないで接合するニーズが高まっている。
こうしたニーズに応えるため、例えば、特許文献1では、ろう材中にMgを含有させることで、面接合が可能になると提案している。また、特許文献2では、心材中にMgを含有させ、ろう付加熱中にろう材中へMgを拡散させることで、単純なフィン/チューブ継手でフィレット形成が可能になると提案している。しかしながら、これらの手法では隙間を有する実践的な継手において、フラックス塗布なしでは十分なフィレットを形成することができない。すなわち、これらの手法は、酸化皮膜をMgによって粒子状にバラバラした後、溶融したろう材と酸化皮膜の熱膨張差あるいはろうの流動などの外力によって、溶融したろう材の新生面を露出させ、濡れを生じさせる。このため、これらの手法では、実践的な継手においては歪なフィレットを形成してしまう。実践的な継手においても均一なフィレットを形成させるためには、溶融したろう材の新生面をろう材表面の全面で露出させる必要がある。
また、特許文献1では、ろう付加熱前の酸化皮膜上に存在するMgO皮膜の厚さを抑制することが有効であると提案している。しかしながら、ろう材に0.1%以上のMgを含有する特許文献1では、実践的な継手においては、ろう付加熱中にMgO系皮膜が部分的に形成し、フィレットの形成を阻害することで、フィレット切れが生じてしまう。一方、特許文献3では、ろう材に0.05%以上のMgを含有した材料において、ろう付加熱前に酸洗処理を施すことで、MgO系皮膜を除去し、フレックスレスでろう付可能にする手法を提案している。しかしながら、特許文献1と同じく、ろう付加熱中のMgO系皮膜の形成を十分には抑制できない。
特開2013−215797号公報 特開2004−358519号公報 特開平11−285817号公報
本発明は、上記の問題を解消するためになされたもので、その目的は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けにおいて、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明により達成される。
すなわち、本発明(1)は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMn、1.2質量%以下のSi、1.0質量%以下のFe、1.5質量%以下のCu、3.0質量%以下のZn及び0.2質量%以下のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金の心材と、該心材の片面又は両面にクラッドされており、各X原子の含有量が0〜0.03質量%のX原子と、4.0〜13.0質量%のSiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金のろう材と、からなり、
該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が表面に形成されるブレージングシートであり、
ろう付け加熱前の該ブレージングシートの表面に形成されている該酸化皮膜中の、Alに対する各X原子の原子換算のモル比が0.2以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート(心材が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMnと、0.1〜1.2質量%のSiと、0.1〜1.0質量%のFeと、0.05〜1.5質量%のCuと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものを除く。)を提供するものである。
また、本発明(2)は、心材とろう材とを重ね、あるいは、心材とろう材と犠牲陽極材とを重ね合わせ、次いで、熱間及び冷間で圧延を行い、ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であり、製造工程中に、中間焼鈍又は最終焼鈍を行うアルミニウム合金ブレージングシートであり、ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が表面に形成されるブレージングシートの製造方法であって、
該心材は、各X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMn、1.2質量%以下のSi、1.0質量%以下のFe、1.5質量%以下のCu、3.0質量%以下のZn及び0.2質量%以下のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、該ろう材は、各X原子の含有量が0〜0.03質量%のX原子と、4.0〜13.0質量%のSiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZr)のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
製造工程中に行う中間焼鈍又は最終焼鈍において、酸素濃度が1000ppm以下且つ露点が−20℃以下に管理された雰囲気中で、250〜450℃で加熱して中間焼鈍又は最終焼鈍を行い、次いで、250℃以下で炉出しすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法(心材が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMnと、0.1〜1.2質量%のSiと、0.1〜1.0質量%のFeと、0.05〜1.5質量%のCuと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものを除く。)を提供するものである。
また、本発明(3)は、(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られるアルミニウム合金シートであり、
該アルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されていること、
を特徴とするアルミニウム合金シートを提供するものである。
また、本発明(4)は、(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを用いて、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られる熱交換器であり、
該熱交換器中のろう付け加熱された後のアルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されていること、
を特徴とする熱交換器を提供するものである。
本発明によれば、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けにおいて、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法を提供することができる。
実施例及び比較例におけるカップ試験片の組付けを示す図である。 実施例の試験No.30のろう付け加熱後の試験材表面のSEM写真である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
アルミニウム又はアルミニウム合金の心材と、該心材の片面又は両面にクラッドされており、4.0〜13.0質量%のSiを含有するアルミニウム合金のろう材と、からなり、
該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が、表面に形成されるブレージングシートであること、を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しないで不活性ガス雰囲気中で、ろう付け加熱することにより、アルミニウム又はアルミニウム合金のろう
付けを行うろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートである。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる心材と、心材の片面又は両面にクラッドされているアルミニウム合金からなるろう材と、からなる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートでは、心材及びろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)のうちのいずれか1種又は2種以上を含有する。つまり、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートには、(A)心材のみがX原子を含有する形態、(B)ろう材のみがX原子を含有する形態、(C)心材及びろう材の両方がX原子を含有する形態、がある。なお、本発明において、X原子とは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrの総称であり、これらの原子のうちの1種又は2種以上を指す。
X原子は、ろう付け加熱中に、ろう材の表面に形成されている酸化皮膜を破壊し、効果的に溶融ろう材の新生面を露出させる。そして、X原子は、酸化物生成エネルギーがAlより小さいため、ろう付け加熱中に、Alを主成分とする酸化皮膜を還元し、粒子状のX原子を含有する酸化物を形成させる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付け加熱により、ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対する体積変化率が、0.99以下、好ましくは0.70〜0.97、特に好ましくは0.70〜0.95であるX原子を含有する酸化物粒子がろう材の表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートである。フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付け加熱において、ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対する体積変化率が上記範囲内であり、且つ、粒子状であるX原子を含有する酸化物が形成されることにより、ろう付け加熱のときに、ろう材の新生面が効果的に露出されるので、アルミニウム合金ブレージングシートが優れたろう付け性を有する。一方、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付け加熱において、ろう材の表面に形成される酸化物の、ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対する体積変化率が上記範囲内より大きくなると、ろう付け加熱のときに、ろう材の新生面が露出し難くなる。なお、本発明において、ろう付け加熱により形成されるX原子を含有する酸化物粒子の体積変化率とは、ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対する体積変化率であり、「ろう付け加熱により形成されるX原子を含有する酸化物粒子の酸素原子1つ当たりの体積/ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜の酸素原子1つ当たりの体積」の式で求められる値である。式中、酸素原子1つ当たりの体積は、酸化物の分子量を酸化物の密度で除することにより計算される。
X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ce、La、Y及びZrである。)は、酸化物生成自由エネルギーがAlより小さく、酸化皮膜を還元することができるだけでなく、体積変化率が0.99以下の酸化物を形成することができるため、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付け加熱において、ろう付け加熱のときに、ろう材の新生面を露出させるために有効な含有原子である。例えば、MgOの体積変化率は0.994ではあるが、MgAlの体積変化率は0.863と、0.99より小さい。一方、Ba、Th、Ndなどは、酸化物生成自由エネルギーがAlより小さい原子ではあるものの、体積変化率が0.99以下となる酸化物が存在しないため、有効な含有原子ではない。例えば、Baを含有する酸化物であるBaO、BaAlの体積変化率は、それぞれ2.366、1.377であり、Baには体積変化率が0.99以下となる酸化物が存在しない。酸化物生成自由エネルギーがAlより小さく、体積変化率が0.99以下の酸化物を形成する酸化物として、MgAlの他にもLiAl(体積変化率=0.82
2)、BeAl(同0.763)、CaAl1219(同0.967)、CeAlO(同0.957)、LaAlO(同0.965)、ZrO(同0.947)、YAl12(同0.960)等がある。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、(A)心材のみがX原子を含有する形態では、心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%、好ましくは0.1〜1.8質量%であり、(B)ろう材のみがX原子を含有する形態では、ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%、好ましくは0.005〜0.025質量%であり、(C)心材及びろう材の両方がX原子を含有する形態では、心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%、好ましくは0.1〜1.8質量であり、且つ、ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%、好ましくは0.005〜0.025質量%である。ろう材中の各X原子の含有量が、上記範囲未満だと、X原子による酸化皮膜の破壊効果が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、ろう付け加熱中にX原子が酸化されて、体積変化率が0.99を超える酸化物が形成される。また、心材中のX原子の含有量が、上記範囲未満だと、ろう材中へのX原子の拡散が不足するため、酸化皮膜の破壊効果が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、心材の融点が下がり過ぎるため、ろう付け加熱時に心材に局所溶融が生じてしまい、心材が変形し、溶融ろうによる心材への浸食が発生して、ろう付け接合性や耐腐食性が低くなる。なお、心材及びろう材中の各X原子の含有量とは、心材又はろう材が1種のX原子のみを含有する場合は、その1種のX原子の含有量であり、また、心材又はろう材が2種以上のX原子を含有する場合は、それら2種以上のX原子のそれぞれの含有量である。
心材は、アルミニウム(不可避的不純物の含有は許容される。)で形成されていてもよいし、所定の原子を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で形成されていてもよい。
心材に係るアルミニウム合金は、各X原子の含有量が2.0質量%以下のX原子と、1.8質量%以下のMn、1.2質量%以下のSi、1.0質量%以下のFe、1.5質量%以下のCu、3.0質量%以下のZn及び0.2質量%以下のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。なお、(A)又は(C)の形態では、すなわち、心材のみがX原子を含有する形態又は心材とろう材の両方がX原子を含有する形態では、上記の心材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0.01〜2.0質量%、好ましくは0.1〜1.8質量%であり、また、(B)の形態、すなわち、ろう材のみがX原子を含有する形態では、上記の心材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は0質量%である。
心材を形成するアルミニウム合金において、Mnは強度向上と電位の調整に有効に機能する。心材がMnを含有する場合、心材中のMn含有量は1.8質量%以下である。心材中のMn含有量が1.8質量%を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。また、心材中のMn含有量は、強度向上の効果が得易くなる点で、0.3質量%以上が好ましい。
心材を形成するアルミニウム合金において、Siは強度向上に機能する。心材がSiを含有する場合、心材中のSi含有量は1.2質量%以下である。心材中のSi含有量が1.2質量%を超えると、融点が低くなり過ぎてしまい、ろう付け時に局部溶融が生じ、心材に変形を生ぜしめ耐食性が低くなる。また、心材中のSi含有量は、強度向上の効果が得易くなる点で、0.1質量%以上が好ましい。
心材を形成するアルミニウム合金において、Feは強度向上に機能する。心材がFeを含有する場合、心材中のFe含有量は1.0質量%以下である。心材中のFe含有量が1.0質量%を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。また、
心材中のFe含有量は、強度向上の効果が得易くなる点で、0.1質量%以上が好ましい。
心材を形成するアルミニウム合金において、Cuは強度向上と電位調整に機能する。心材がCuを含有する場合、心材中のCu含有量は1.5質量%以下である。心材中のCu含有量が1.5質量%を超えると、粒界腐食が発生し易くなり、融点が低くなり過ぎる。また、心材中のCu含有量は、強度向上の効果が得易くなる点で、0.05質量%以上が好ましい。
心材を形成するアルミニウム合金において、Znは電位調整に機能する。心材がZnを含有する場合、心材中のZn含有量は3.0質量%以下である。心材中のZn含有量が3.0質量%を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい腐食による貫通寿命が短くなる。また、心材中のZn含有量は、電位調整の効果が得易くなる点で、0.1質量%以上が好ましい。
心材を形成するアルミニウム合金において、Tiは腐食を層状に進行させるのに機能する。心材がTiを含有する場合、心材中のTi含有量は0.2質量%以下である。心材中のTi含有量が0.2質量%を超えると、巨大析出物が生成し易くなり、圧延性や耐食性に支障が生じる。また、心材中のTi含有量は、層状腐食効果が得易くなる点で、0.06質量%以上が好ましい。
ろう材に係るアルミニウム合金は、4.0〜13.0質量%のSiと、各X原子の含有量が0.03質量%以下のX原子と、0.2質量%以下のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。なお、(A)の形態、すなわち、心材のみがX原子を含有する形態では、上記のろう材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0質量%であり、また、(B)又は(C)の形態、すなわち、ろう材のみがX原子を含有する形態又は心材とろう材の両方がX原子を含有する形態では、上記のろう材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0.001〜0.03質量%である。
ろう材は、Siを4.0〜13.0質量%含有する。ろう材中のSi含有量が、上記範囲未満だと、接合性が劣り、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
ろう材を形成するアルミニウム合金において、Feはアルミニウム地金中に存在する不可避不純物であり、0.8質量%以下であれば、本発明の効果を阻害するものではない。Feの含有量が少ない地金もあるが、純度の高い地金を使用するとコストが上昇する。また、市中から回収されたアルミニウムスクラップの再利用を考慮すると、Feの含有量は、0.8質量%以下であれば許容される。
ろう材を形成するアルミニウム合金において、Biは、Al−Si溶融ろうの表面張力を低下させるのに有効に機能する。ろう材がBiを含有する場合、ろう材中のBi含有量は0.2質量%以下である。ろう材中のBi含有量が0.2質量%を超えると、ろう付け後のろう材両面が黒変し、ろう付け性が低くなる。また、ろう材中のBi含有量は、表面張力を低下させる効果が得易くなる点で、0.004質量%以上が好ましい。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面には、酸化皮膜が形成されている。そして、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜の、Alに対するX原子それぞれの原子換算のモル比は、0.2以下が好ましい。ろう材の表面に形成されている酸化皮膜のAlに対するX原子それぞれの原
子換算のモル比(X原子/Al)が、上記範囲内にあることにより、ろう付け前のろう材表面に形成されている酸化皮膜に対するろう付け加熱により形成されるX原子を含有する酸化物の体積変化率が0.99以下になり易くなる。なお、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜が、2種以上のX原子を含有する場合、Alに対するX原子それぞれの原子換算のモル比が0.2以下であるとは、いずれのX原子についても、Alに対するX原子の原子換算のモル比が0.2以下であることを指す。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材の表面に形成されている酸化皮膜の厚さは、酸化皮膜が破壊され易い点で、30nm以下が好ましい。ろう材の表面に形成されている酸化皮膜の厚さが30nmを超えると、酸化皮膜の破壊が進み難くなる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の一方の片面にろう材がクラッドされており、他方の片面に犠牲陽極材がクラッドされていているブレージングシートであってもよい。犠牲陽極材は、犠牲陽極材側に防食性を与えるためのものであり、0.9〜6.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。犠牲陽極材に係るアルミニウム合金中のZn含有量が、上記範囲未満だと、防食効果が不十分となり、また、上記範囲を超えると、腐食が促進されて腐食貫通寿命が低くなる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、所定の添加成分を含有する心材とろう材とを重ね合わせ、あるいは、所定の添加成分を含有する心材とろう材と犠牲陽極材とを重ね合わせ、熱間圧延にて合わせ材とし、その後、熱間のまま板厚2〜3mm程度に加工し、その後、冷間圧延にて、厚いもので1〜2mm程度に、薄いもので0.05mm程度に加工することにより得られる。これらの製造工程中に、中間焼鈍又は最終焼鈍を行う。
そして、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造においては、製造工程中における、酸化皮膜の成長及びX原子の酸化皮膜への濃縮を抑制することが好ましい。すなわち、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法の好ましい形態は、心材とろう材とを重ね合わせ、あるいは、心材とろう材と犠牲陽極材とを重ね合わせ、次いで、熱間及び冷間で圧延を行い、ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であり、製造工程中に、中間焼鈍又は最終焼鈍を行うアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であって、
該心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、該ろう材は、4.0〜13.0質量%のSiを含有するアルミニウム合金からなり、
該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
製造工程中に行う中間焼鈍又は最終焼鈍において、酸素濃度が1000ppm以下且つ露点が−20℃以下に管理された雰囲気中で、250〜450℃で加熱して中間焼鈍又は最終焼鈍を行い、次いで、250℃以下で炉出しすること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法において、熱間圧延前に重ね合わせられる心材、ろう材及び犠牲陽極材中の添加成分の種類及びそれらの含有量は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材、ろう材及び犠牲陽極材中の成分及びそれらの含有量と同様である。
つまり、心材は、各X原子の含有量が2.0質量%以下のX原子と、1.8質量%以下、好ましくは0.3〜1.8質量%のMn、1.2質量%以下、好ましくは0.1〜1.2質量%のSi、1.0質量%以下、好ましくは0.1〜1.0質量%のFe、1.5質量%以下、好ましくは0.05〜1.5質量%のCu、3.0質量%以下、好ましくは0.1〜3.0質量%のZn及び0.2質量%以下、好ましくは0.06〜0.2質量%のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。なお、心材のみがX原子を含有する形態又は心材とろう材の両方がX原子を含有する形態では、上記の心材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0.01〜2.0質量%、好ましくは0.1〜1.8質量%であり、また、ろう材のみがX原子を含有する形態では、上記の心材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は0質量%である。
ろう材は、4.0〜13.0質量%のSiと、各X原子の含有量が0.03質量%以下のX原子と、を含有し、必要に応じて0.2質量%以下、好ましくは0.004〜0.2質量%のBi、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。なお、心材のみがX原子を含有する形態では、上記のろう材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0質量%であり、また、ろう材のみがX原子を含有する形態又は心材とろう材の両方がX原子を含有する形態では、上記のろう材に係るアルミニウム合金中の各X原子の含有量は、0.001〜0.03質量%、好ましくは0.005〜0.025質量%である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、心材とろう材を重ね合わせ、あるいは、心材とろう材と犠牲陽極材を重ね合わせ、次いで、熱間圧延及び冷間圧延を行う。熱間圧延では、400〜550℃で、合わせ板とし、次いで、熱間のまま板厚2〜3mmまで加工する。冷間圧延では、冷間で、複数回圧延を行って、所定のアルミニウム合金ブレージングシートの厚さまで加工する。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、冷間圧延と冷間圧延の間、又は最後の冷間圧延の後に、中間焼鈍又は最終焼鈍を行う。
そして、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法では、中間焼鈍又は最終焼鈍において、酸素濃度が1000ppm以下且つ露点が−20℃以下に管理された雰囲気中で、250〜450℃で加熱して中間焼鈍又は最終焼鈍を行い、次いで、250℃以下で炉出しする。中間焼鈍又は最終焼鈍は、高温工程であるため、酸化皮膜の状態に大きな影響を与える。中間焼鈍又は最終焼鈍の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気である。酸素濃度が1000ppm以下且つ露点が−20℃以下に管理された雰囲気中で、中間焼鈍又は最終焼鈍を行い、次いで、250℃以下で炉出しすることにより、ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が、表面に形成されるブレージングシートが得易くなる。中間焼鈍又は最終焼鈍における雰囲気中の酸素濃度が1000ppmを超えると、酸化皮膜の成長が助長されたり、酸化皮膜中のX原子の濃度が高められ易くなる。また、中間焼鈍又は最終焼鈍における雰囲気の露点が−20℃を超えると、水酸化皮膜が形成され易くなり、酸化皮膜が厚くなり易くなる。また、炉出し温度が250℃を超えると、大気中の酸素又は水分と材料表面での反応が起こり易くなる。中間焼鈍又は最終焼鈍にお
ける焼鈍時間は、好ましくは1時間以上である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられる。ろう付けにおけるろう付け温度は、580〜615℃である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱されることにより、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が、表面に形成されるので、ろう材の新生面が露出し易くなり、優れたろう付け性を発揮する。
本発明のアルミニウム合金シート(A)は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中で、580〜615℃でろう付け加熱することにより得られるアルミニウム合金シートであり、アルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前のアルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されているアルミニウム合金シートである。本発明のアルミニウム合金シート(A)の表面に形成されているX原子を含有する酸化物は、粒子状であり、且つ、ろう付け加熱前のアルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるので、表面の一部にアルミニウム合金の新生面が現れている。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等である。雰囲気の酸素濃度は1〜100ppm、好ましくは1〜50ppmであり、露点は、−20℃以下、好ましくは−40℃以下である。
本発明のアルミニウム合金シート(A)は、アルミニウム合金ブレージングシートがろう付けされた後のアルミニウム合金シートである。
本発明の熱交換器は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを用いて、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られる熱交換器であり、
該熱交換器中のろう付け加熱された後のアルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されていること、
を特徴とする熱交換器である。
本発明の熱交換器は、本発明のアルミニウム合金シートを、熱交換器製造用のアルミニウム合金ブレージングシートとして用いて、つまり、本発明のアルミニウム合金シートを、熱交換器中のブレージングシートが用いられる部品の形状に成形し、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートと、ろう付けされる他の部品とを組み付けて、不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られる熱交換器である。ろう付け温度は、580〜615℃であり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等である。雰囲気の酸素濃度は1〜100ppm、好ましくは1〜50ppmであり、露点は、−20℃以下、好ましくは−40℃以下である。本発明のアルミニウム合金ブレージングシートと共にろう付けされる他の部品として、チューブ、ヘッダ、フィン、出入口配管等が挙げられる。
本発明の熱交換器中の、アルミニウム合金ブレージングシートがろう付け加熱された後のアルミニウム合金シート(アルミニウム合金シート(A))の表面には、ろう付け加熱前のアルミニウム合金ブレージングシート(本発明のアルミニウム合金ブレージングシート)の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されている。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、本発明の効果を実証する。なお、これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すもので、本発明はこれらに限定されない。
表1及び表2に示す組成を有するろう材、犠牲陽極材及び心材を、それぞれ連続鋳造により造塊し、心材については、得られた鋳塊を縦163mm、横163mmに面削し、ろう材のみクラッドする心材は厚さ27mmのサイズに、ろう材と犠牲陽極材をクラッドする心材は厚さ25.5mmのサイズに面削した。ろう材については、得られた鋳塊を厚さ3mmまで500℃で熱間圧延し、冷却後、縦163mm、横163mmの寸法に切断した。犠牲陽極材については、得られた鋳塊を厚さ3mmまで500℃で熱間圧延し、その後1.5mmまで冷間圧延し、縦163mm、横163mmの寸法に切断した。
ろう材のみクラッドする材料については準備したろう材と心材を重ね合わせて熱間圧延及び冷間圧延を行い、厚さ0.4mmとした後、表3に示す条件で最終焼鈍を行い、軟質クラッド板材を得た。ろう材と犠牲陽極材とをクラッドする材料については準備したろう材、心材及び犠牲陽極材を重ね合わせて、熱間圧延及び冷間圧延を行い、厚さ0.4mmとした後、表4に示す条件で最終焼鈍を行い、軟質クラッド板材を得た。得られたクラッド板材を試験材とした。
試験材の酸化皮膜の厚さを、GD−OES(グロー放電発光分析法)により測定した。GD−OESによって材料表面から深さ方向に分析を行い、測定した酸素元素のピーク半値幅の位置を酸化皮膜厚さと定義した。また、酸化皮膜中のアルミニウムに対する各X原子のそれぞれの原子換算のモル比(X原子/Al)を、同じくGD−OESによって分析を行った。
試験材をカップ状にプレス加工し、アセトンで脱脂処理のみを行い、図1に示すカップ試験片に組付けた。カップ試験片の内部には、0.1mm厚さの3003合金板材を成形、脱脂したフィンを配置して、フラックスを使用しないで、窒素ガス炉中で、ろう付け加熱して、ろう付け接合した。窒素ガス炉は二室型の実験炉で、昇温中の酸素濃度は100ppm、露点は−20℃であり、ろう付け時の酸素濃度は10〜15ppm、露点は−40℃であった。試験片の到達温度をいずれも600℃とした。
外部についてはフレア継手の外部側に形成されたフィレットを、A:連続して均一なサイズのフィレットを形成、B:フィレットサイズに変動はあるが均一なフィレットが80%以上形成された状態でフィレット切れがない状態、C:フィレットサイズに変動はあるが均一なフィレットが40%以上形成された状態でフィレット切れがない状態、D:フィレットが部分的に途切れて連続していない状態あるいはフィレットサイズが均一な状態が40%未満の状態、E:ほとんどフィレットを形成していないか未接合の状態の5段階で目視評価した。これらの中でA〜Cを合格レベルと判定した。内部についてはろう付された試験片を二分割し、フレア継手の内部側とフィンの接合部を対象として、上記と同様にフィレット形成状態を5段階で目視評価した。
ろう付け加熱前の酸化皮膜に対するろう付け後に形成されているX原子を含有する酸化物粒子の体積変化率は、先ず、薄膜X線回折法にて形成されているX原子を含有する酸化物粒子の結晶構造を特定し、次に、酸化物の分子量を公知文献に記載の密度で除することで酸素原子1つ当たりの体積を求め、これをろう付け加熱前の酸化皮膜の酸素原子一つ当たりの体積で除することで求めた。薄膜X線回折では、入射角1°にて測定した。ろう付け加熱前の酸化皮膜の酸素原子一つ当たりの体積は、皮膜成分はAlであり、その密度は3.0g/cmとして求められる。
(実施例)
表4に示すろう材、心材及び犠牲陽極材の組み合わせのクラッド板材を作製し、得られたクラッド板材の分析及びろう付け性の性能試験を行った。その結果を表4に示す。また、試験No.30の表面のSEM写真(30,000倍)を図2に示す。このSEM写真で白班のように見える粒子がX原子を含有する酸化物粒子であり、黒く見える平坦な面がろう付け加熱の時にろう材の表面に生成した新生面である。
(比較例)
表5に示すろう材、心材及び犠牲陽極材の組み合わせのクラッド板材を作製し、得られたクラッド板材の分析及びろう付け性の性能試験を行った。その結果を表5に示す。
なお、試験材34は、ろう材のSi含有量が多いため、材料の圧延時に割れが発生したので、分析及び性能試験を行えなかった。試験片39及び40では、ろう付後のろう材表面が黒変していた。試験材42では、溶融ろうの侵食が進行し、ろう付後の試験材に変形が認められた


Claims (7)

  1. フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
    X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMn、1.2質量%以下のSi、1.0質量%以下のFe、1.5質量%以下のCu、3.0質量%以下のZn及び0.2質量%以下のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金の心材と、該心材の片面又は両面にクラッドされており、各X原子の含有量が0〜0.03質量%のX原子と、4.0〜13.0質量%のSiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金のろう材と、からなり、
    該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
    該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
    該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
    該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
    ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が表面に形成されるブレージングシートであり、
    ろう付け加熱前の該ブレージングシートの表面に形成されている該酸化皮膜中の、Alに対する各X原子の原子換算のモル比が0.2以下であること、
    を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート(心材が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMnと、0.1〜1.2質量%のSiと、0.1〜1.0質量%のFeと、0.05〜1.5質量%のCuと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものを除く。)
  2. 前記アルミニウム合金ブレージングシートの表面に形成されている酸化皮膜の厚さが30nm以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記ろう材が、更に、0.004〜0.2質量%のBiを含有するアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 一方の片面に前記ろう材がクラッドされており、且つ、他方の片面に、0.9〜6.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金の犠牲陽極材がクラッドされていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 心材とろう材とを重ね、あるいは、心材とろう材と犠牲陽極材とを重ね合わせ、次いで、熱間及び冷間で圧延を行い、ブレージングシートを得るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であり、製造工程中に、中間焼鈍又は最終焼鈍を行うアルミニウム合金ブレージングシートであり、ろう付け加熱により、ろう付け加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が表面に形成されるブレージングシートの製造方法であって、
    該心材は、各X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMn、1.2質量%以下のSi、1.0質量%以下のFe、1.5質量%以下のCu、3.0質量%以下のZn及び0.2質量%以下のTiのうちのいずれか1種又は2種以上と、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、該ろう材は、各X原子の含有量が0〜0.03質量%のX原子と、4.0〜13.0質量%のSiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
    該心材及び該ろう材のうち、いずれか一方又は両方が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZr)のうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、
    該心材のみがX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、
    該ろう材のみがX原子を含有する場合、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
    該心材及び該ろう材の両方がX原子を含有する場合、該心材中の各X原子の含有量は0.01〜2.0質量%であり、且つ、該ろう材中の各X原子の含有量は0.001〜0.03質量%であり、
    製造工程中に行う中間焼鈍又は最終焼鈍において、酸素濃度が1000ppm以下且つ露点が−20℃以下に管理された雰囲気中で、250〜450℃で加熱して中間焼鈍又は最終焼鈍を行い、次いで、250℃以下で炉出しすること、
    を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法(心材が、X原子(Xは、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、Y及びZrである。)の含有量が0〜2.0質量%のX原子と、1.8質量%以下のMnと、0.1〜1.2質量%のSiと、0.1〜1.0質量%のFeと、0.05〜1.5質量%のCuと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものを除く。)
  6. 請求項1〜4いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシートを、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られるアルミニウム合金シートであり、
    該アルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されていること、
    を特徴とするアルミニウム合金シート。
  7. 請求項1〜4いずれか1項記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いて、フラックスを使用しないで、不活性ガス雰囲気中でろう付け加熱することにより得られる熱交換器であり、
    該熱交換器中のろう付け加熱された後のアルミニウム合金シートの表面に、ろう付け加熱前の該アルミニウム合金ブレージングシートの酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が形成されていること、
    を特徴とする熱交換器。
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