JP6761984B2 - 小便器 - Google Patents

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本発明は小便器に関する。
従来、小便器を老齢者や体の不自由な人が安全に使いやすいものとするために、小便器の側壁部の近接位置に手すりを付加したものが種々提案、実施されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許第3635015号公報
しかしながら、上記のものは別体の手すりを小便器に付加する構成であるため、小便器とは別に手すりの施工が必要となり、製造コストおよび施工コストが余分にかかることとなる。また、手すりを取りつけるためのスペースを必要とするから、側壁部の外面側の空間が小さい場合には取りつけがしにくい。また、手すりが金属製であれば便器本体の色と合わず、美観が損なわれるおそれもある。
さらに、このような手すりは老齢者や体の不自由な人のために設けられたものであるため、清掃者がしゃがんで小便器のボウル凹所などを清掃する際に片手で掴んで体を支えようとした場合には、ボウル凹所から手すりまでの距離があるため使いづらい。また、その手すり自体が清掃の邪魔にもなる。
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、老齢者や体の不自由な人、清掃者など様々な利用者にとって使いやすく、製造コスト、施工コストも増大化せず、かつ美観が損なわれることのない小便器を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の小便器は、前方に向けて開口したボウル凹所を有した小便器であって、前記ボウル凹所の側方に配された側壁部の外面に凹溝とされる手掛け用凹部が形成されており、該手掛け用凹部の前端側の溝壁面と、前記側壁部の前端側の外面とのなす角が鋭角となっていることを特徴とする。
本発明の小便器によれば、上述した構成となっているため、手掛け用凹部が手すり代わりになり得る。また、この小便器は老齢者や体の不自由な人、清掃者などの様々な利用者にとって使いやすく、製造コスト、施工コストも増大化せず、かつ美観が損なわれることもない。
(a)は本発明の一実施形態に係る小便器の斜視図、(b)は小便器の側壁部の部分拡大横断面図である。 (a)(b)は小便器の2使用態様を示す概略側面図である。 (a)は本発明の他の実施形態に係る小便器の斜視図、(b)(c)は小便器の側壁部の2例を示す部分拡大横断面図である。 本発明のさらに他の実施形態に係る小便器の概略側面図である。 本発明のさらに他の実施形態に係る小便器の概略側面図である。
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面をもとに説明する。まず、小便器の基本構成について説明する。
以下に説明する小便器10は、図1〜図5に示すように、前方に向けて開口したボウル凹所11を有した便器である。これらの小便器10は、ボウル凹所11の側方に配された側壁部12の外面12bに手掛け用凹部13が形成されている。
これらの小便器10によれば、側壁部12に手掛け用凹部13が設けてあるので、手掛け用凹部13が手すり代わりとなり得、別体の手すりを設けなくても、老齢者や体の不自由な人、清掃者などの利用者5(図2参照)にとっての利便性を高められる。また、手掛け用凹部13は側壁部12の外面12bに設けられた凹みで構成されているため、美観が損なわれるおそれもほとんどない。また、別体の手すりを設けなくてもよいため、製造、施工コストもあまりかからない。
また、これらの小便器10は素材を樹脂材料とされている。なお、小便器10は樹脂製とすることが望ましいが、これには限られず、小便器10は種々の材料で製されたものとしてもよい。
ついで、図1に示した小便器10の詳細な構成について説明する。なお、図1、図2および他の小便器10の説明図である図3〜図5については、小便器10の便器本体に連設される給水管および排出管の図示は省略した。
この小便器10は、一般住宅や公共トイレなどで利用される、壁面2と床面1とに接するように入隅空間に固定される小便器10である。
この小便器10の便器本体は樹脂で一体成形されてなる。樹脂材料としては、高強度であり撥水性にすぐれた有機ガラス系素材や、加工性や耐衝撃性に優れたABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、高強度であり耐酸性に優れたPBT(ポリブチレン・テレフタート)樹脂等を用いることが好適である。
小便器10は、前面に向けて開口し、椀形状にくぼんでなるボウル凹所11を有している。ボウル凹所11には、その内面として小便や洗浄水、排水が伝って流れる内壁面11aおよび内底面11bが形成されており、内底面11bには外部へと通じる排水口(不図示)が形成されている。便器本体は、このボウル凹所11を取り囲むように、上面部14と、両側壁部12と、種々の管を配設するための空間を有した背部15と、底部16と、内底面11bから前方への小便等の飛散を防止するための前壁部17とを有している。
側壁部12は、便器本体の側面部を構成する、外郭用の側部である。本実施形態の側壁部12は、図1(a)に示すように、小便等の側方への飛散および側方からのぞき見を防止できるように、上面部14の前端よりも前方に突出した囲い壁12aを有している。この囲い壁12aの対向する両内壁面12aaは、ボウル凹所11の左右の内壁面11aよりも狭まるように形成されている。つまり、ボウル凹所11内の小便や排水が囲い壁12aの内壁面12aaに回り込みにくいようになっている。
側壁部12の外面12bは床面1に対してほぼ垂直な平面とされ、その前方部の囲い壁12a側の側壁部12の外面12bには高さ方向に長い、上部から下方に延びてなる直線状の凹溝が形成されている。他方の側壁部12の外面12bにも同様の凹溝が形成してある。本小便器10では、この凹溝が手掛け用凹部13を構成している。つまり、後述するように、この手掛け用凹部13が種々の用途の手すりとしての機能を有している。
手掛け用凹部13の溝深さは、図1(b)に示すように、囲い壁12bの厚みの約半分とされ、すくなくとも指5aの第1関節まで挿入できる程度の深さとされることが望ましい。また、手掛け用凹部13の幅寸法は、1本の指5aが十分に挿入できる寸法であればよい。なお、図1(b)は、図1(a)に示した小便器10において向かって右側の側壁部12(囲い壁12a)の部分拡大横断面図である。
手掛け用凹部13は縦長の凹溝であるため、図1(b)に示すように、利用者5は手のひらを側壁部12に向けて親指以外の3、4本の指5aを曲げ、その曲げた指5aを凹溝に上下方向に並べて挿入して引っ掛けるように手掛けすればよい。
図1(b)の部分横断面図に示すように、手掛け用凹部13の前端側の溝壁面13aと、側壁部12の前端側の外面12bとのなす角度θが鋭角となっている。つまり、手掛け用凹部13は、利用者5が小便器10の正面より手掛けする場合に、指5aが引っ掛かりすいように、かつ指5aが抜けにくいように形成されている。なお、手掛け用凹部13は手すり代わりに使用するものであるが、手掛け用凹部13に対する親指以外の指5aによる手掛けだけで不十分な場合は、側壁部12の前端面12cを介して親指を囲い壁12aの内壁面12aaに回して、囲い壁12aを把持すればよい。
手掛け用凹部13の上端位置は便器本体の上端よりもやや低い位置とされ、下端位置は前壁部17の上端よりもやや高い位置とされる。換言すれば、図2(a)に示すように、上端位置はおおむね人(利用者5)が小便器10の前に立った場合の腹部の位置Aとなっており、下端位置はおおむね人の膝の位置Bとなっている。
このような手掛け用凹部13は、図2(a)に示すように、男子小用立ち位置での老齢者や体の不自由な人などの利用者5のための手すりとして利用できる。特に、この手掛け用凹部13は上部から下方に延びた凹溝よりなるため、ボウル凹所11の正面に立った利用者5は指5aを引っ掛けるだけで体を支えることができる。このような立ち位置での使用であれば、手掛け用凹部13の縦長凹溝のおもに上部が利用される。このように手掛け用凹部13は老齢者等のための手すりとして作用する。
また、手掛け用凹部13は、図2(b)に示すように、小便器10を清掃する際に清掃者がしゃがんだ位置でも利用され得る。清掃者(利用者5)がボウル凹所11を清掃する場合には、手掛け用凹部13の下部に手を掛けて体のバランスをとればよい。また、利用者5は清掃する部位などに応じて、左右いずれかの手掛け用凹部13を用いればよい。
このように、この小便器10の手掛け用凹部13は縦長凹溝に形成されているので、老齢者や体の不自由な人の手すりとしてのみならず、小便器を清掃する人にとっての手すりとしても利用され得る。また、従来の小便器で用いられている別体の手すりとは異なり、手掛け用凹部13は利用者5の利用位置に近い便器本体の側面に形成されているので、いずれの用途で利用する場合であっても使い勝手がよい。
なお、手掛け用凹部13としては、図1(a)のもののように膝の位置B(図2(a)参照)まで下方に延びたものでなくてもよい。手掛け用凹部13としては、たとえば、図2(a)のような立ち位置で利用できる程度の上部位置に設けられた、指5aが2本以上入る程度の長さの凹溝や丸穴、四角穴であってもよい。そのような手掛け用凹部13であっても、便器本体に設けられているかぎりは、ボウル凹所11の正面から手を伸ばせば十分に手掛けでき、よって清掃者にとってほとんど問題なく利用することができる。
もちろん、手掛け用凹部13は、下端位置が図1(a)に示したものよりもさらに低い位置(たとえばボウル凹所11の内底面11bの高さ位置)に及ぶような縦長凹溝であってもよい。このような縦長凹溝よりなる手掛け用凹部13を左右の側壁部12に設ければ、その縦長凹溝が、施工前の小便器10を作業者が二人で運搬する際の持ち手にもなり得る。
また、本小便器10は樹脂を素材として一体に形成されているため、便器本体に手掛け用凹部13を有していないものと比較して、便器本体の生産効率が格段に低下したり、製造コストが大幅に上がったりすることもない。さらに、この小便器10によれば、別体の手すりを付加する必要がないため、施工の手間やコストが増大するおそれもない。なお、少なくとも側壁部12を樹脂で成形して、手掛け用凹部13を形成しやすくしてもよい。
また、本小便器10によれば別体の手すりを必要としないから、手すりを設置するために小便器10の側方に手すりのためのスペースを準備する必要がない。そのため、トイレ空間を効率的に利用でき、公共トイレなどにおいて小便器10の設置台数を増やせられる。
さらにまた、本小便器10によれば、別体の手すりを必要としないから美観が損なわれるおそれはない。手掛け用凹部13が凹みで構成されているため、それ自体はいずれの方向からも目立たず、邪魔にもならず、便器本体をすっきりとした外観とすることができる。また、清掃の邪魔になる別体の手すりが設けられていないことと、手掛け用凹部13を設けたこととの相乗効果により、清掃は格段にしやすくなる。
図1に示した小便器10は側壁部12の厚みが薄く、側壁部12の厚さ両方向から側壁部12を把持することができるが、図3に示したような厚みが厚い小便器10については、手掛け用補助凹部18(以下、補助凹部18という)をさらに設けてもよい。
補助凹部18は、具体的には図3(a)に示すように、側壁部12(囲い壁12a)の前端面12cに設けられている。補助凹部18は、手掛け用凹部13と略同高さ位置に縦長凹溝として形成されている。図3(b)に示すように、利用者5は親指5a以外の指5aを手掛け用凹部13に入れ、親指5aを補助凹部18に入れて、囲い壁12aの外側角部を手指で掴むようにして利用することができる。
また、図3(c)に示すように、手掛け用凹部13と補助凹部18とが連通したものであってもよい。この場合、囲い壁12aの外側角部が手すり部19となり得、利用者5は、その手すり部19に両方の凹部より指5aを回して、手すり部19をしっかりと把持して体を支えることができる。
なお、側壁部12の外側角部に角部が切り欠きされてなる凹所を設け、その凹所に、たとえば金属製などの別体の棒材を取りつけて手すり部19を構成してもよい。このように別体棒材で手すり部19を構成するようにすれば、利用者5は手すり部19をさらに掴みやすくなり得る。また、手掛け用凹部13と補助凹部18との連通形成がしやすくなるので、小便器10の製造における利点もある。
また、このように側壁部12の前端面12cに補助凹部18が形成してあれば、小便等の飛散により汚れが付着している可能性のある囲い壁12aの内壁面12aaに親指5aを回す必要がなく、清潔な手掛けができる。囲い壁12aを有しない小便器10において、このように前端面12cに補助凹部18が形成してあれば、手掛けの際、ボウル凹所11の内壁面11aに触れる必要がないため、特に有効である。
ついで、図4に示した小便器10について説明する。この小便器10は、壁面2と床面1との入隅部よりも高い位置において壁面2に取りつけられる。つまり、便器本体は底部16が床面1より浮いた位置にある。便器本体の上端の高さ位置が図1のものとおおむね同一とすれば、便器本体の高さ寸法は図1のものより十分に小さい。このような高さ寸法の小さい小便器10の側壁部12の外面12bにも、縦長凹溝よりなる手掛け用凹部13が設けてある。
清掃者が小便器10の外底面や便器本体の下側の床面1などを清掃しやすくするために、図4に示したように、利用者5のおおむね膝の位置Bまで延びた長め手掛け用凹部13はものとすることが望ましい。もちろん、図4の手掛け用凹部13よりも長さを短くしたものでもよいし、さらに長くしたものでもよい。また、手掛け用凹部13に対応させて、側壁部12の前端面12に、図3に示したような補助凹部18を設けてもよい。
以上には2種の典型的な形状の小便器10に関する実施の形態について説明したが、手掛け用凹部13が設けられるような側壁部12を有したものであれば、どのような形状のものであってもよい。側壁部12の外面12bが湾曲面となっているものでもよいし、側壁部12が囲い壁12a(図1参照)を有しないものでもあってもよい。
また、小便器10は、壁面2に固定されるものではなく、便器本体の全側面が空間に接するように孤立状態に床面1に設置されるものでもよい。その場合、背面を含む全側面を清掃しやすくするために、手掛け用凹部13を側壁部12の前端側と後端側の各2か所に設けるようにしてもよい。
以上には手掛け用凹部13として、底を有した凹み(穴)を例示したが、底なしの貫通開口(孔)であってもよい。本実施形態の小便器10は、手掛け用凹部13が内壁面12aaに排水や小便が付きにくい囲い壁12aに設けた構成であるため、手掛け用凹部13が貫通開口であっても、小便等が貫通開口内に及んだり、その開口より小便等が飛び出たりするおそれはあまりない。また、手掛け用凹部13の上部を底なし凹部(孔)とし、ボウル凹所11の内底面11bからの飛沫を受けないように、下部を底あり凹部(穴)としてもよい。
また、以上には手掛け用凹部13として、上下方向に連続形成された縦長凹溝を示したが、図5に例示するように、手掛け用凹部13が複数の凹部13c、13d、13eを有してなるものであってもよい。
図5に示した小便器10は、ボウル凹所11を有し、樹脂で成形されている。便器本体の側壁部12の外面12bには、3種の凹部13c、13d、13eが形成されている。側壁部12の上部には壁面2(便器本体の後部)に向けて上昇傾斜した凹溝(長楕円形状)よりなる凹部13cが複数(3つ)設けてあり、下部には壁面2に向けて下降傾斜した凹溝(長楕円形状)よりなる凹部13dが複数(2つ)設けてある。さらに、それらの間には円形の凹部13eが設けてある。
上部に設けた凹部13cは男子小用(老齢者や体の不自由な人向け)のものであり、下部に設けた凹部13dは清掃者用であり、それぞれの利用位置におうじて指5aを挿入しやすいように傾斜形状となっている。すなわち、上の凹部13cは上方に向けて引っ張り気味に使用され、下の凹部13dはしゃがみ位置でぶら下がり気味に使用されるようになっている。また、上の凹部13cは利用者5の身長におうじて複数のものが上下方向に断続的に設けられ、下の凹部13dは清掃部位に応じて複数のものが上下方向に断続的に設けられている。また、中ほどに設けられた凹部13eは、いずれの利用者5にでも使用できるように円形となっている。
また、この小便器10についても図3に示したものと同様に、手掛け用凹部13に対応させて、側壁部12の前端面12cに補助凹部18(図3参照)を設けてもよい。その場合、補助凹部としては、複数の凹部よりなるものでもよいし、図3に示したような縦長凹溝であってもよい。
以上のように、手掛け用凹部13は複数の凹部13c、13d、13eより構成され、さらに男子小用、清掃者用の利用目的ごとに段階的に用いられるようになっているので、手掛け用凹部13の使い勝手がいっそうよくなる。
なお、複数の凹部13c、13d、13eを有した手掛け用凹部13としては、図5に示したものには限られない。たとえば、男子小用の凹部13c、清掃者用の凹部13dをそれぞれ1つずつ有したものであってもよいし、断続的に設けられた複数の同形状の凹部が、上部から下方へ直線的に並んだものであってもよく、種々の態様が許容され得る。
10 小便器
11 ボウル凹所
12 側壁部
12b 外面
12c 前端面
13 手掛け用凹部
13c、13d、13e 凹部
18 手掛け用補助凹部

Claims (5)

  1. 前方に向けて開口したボウル凹所を有した小便器であって、
    前記ボウル凹所の側方に配された側壁部の外面に凹溝とされる手掛け用凹部が形成されており、
    該手掛け用凹部の前端側の溝壁面と、前記側壁部の前端側の外面とのなす角が鋭角となっていることを特徴とする小便器。
  2. 請求項1において、
    前記手掛け用凹部は、前記側壁部の上部から下方に延びてなる凹溝とされることを特徴とする小便器。
  3. 請求項1または2において、
    前記手掛け用凹部は、複数の凹部を有してなることを特徴とする小便器。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、
    前記側壁部の前端面に手掛け用補助凹部が形成されていることを特徴とする小便器。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、
    素材を樹脂材料としたことを特徴とする小便器。
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