下記に本発明をより詳細に説明する。
(定義)
本発明をより詳細に議論するに先立って、下記の用語及び慣例を定義するものとする。
抗体:本文において、抗体とは、対応する抗原に特異的に結合する蛋白質を指す。抗体は特に、例えば哺乳類の免疫系に由来し、更に、異物に関する抗原に向けられ得る。抗体は、軽鎖2つと重鎖2つを有するそのままの免疫グロブリンである。従って、単一の単離抗体又は抗体フラグメントは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヘテロキメラ抗体、及びヒト化抗体から由来し得るが、これらに限定される訳ではない。抗体という用語は更に、均質な分子混合物、或いは複数の異なる分子からなる血清産生物のような混合物の両方を指す。
本文において、C1不活性化物質(C1IA)は、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼ阻害物質である。この主な機能は、自発的活性化を阻害して補体系を抑制することである。C1阻害物質は、血液中を循環する急性期蛋白質である。本文において、用語「C1不活性化物質」、「C1阻害物質」、「C1−inh」又は「C1エステラーゼ阻害物質」は互換的に使用される。C1不活性化物質を、C1IA又はC1−IAと略記してもよい。この蛋白質はヒト蛋白質であるため、用語「ヒト」をC1IAの前に挿入してもよい。C1IAは、分子量110〜130kDaのα1ノイラミノグリコプロテインアミノ酸蛋白質である。分子量は、蛋白質のグリコシル化の潜在的な相違によって変動する。C1IA蛋白質は、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼ阻害物質に当たるC1阻害物質(C1−inh、C1エステラーゼ阻害物質)である。この主な機能は、自発的活性化を阻害して補体系を抑制することであり、また、約0.25g/Lのレベルで血液中を循環する急性期蛋白質である。このレベルは、炎症中には約2倍に上昇する。C1阻害物質は、補体の古典経路におけるC1複合体中のC1r及びC1sプロテアーゼに不可逆的に結合し、当該プロテアーゼを不活性化する。当該蛋白質の別の名として、SERPING1、C1IN、C1INH、C1NH、HAE1、HAE2、セルピンファミリーGメンバー1などが挙げられる。ヒトにおいて、C1IA蛋白質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列によりコードされる。Genebank受入番号はX54486、NCBIのGeneIDは710である。
本文において、C反応性蛋白質(CRP)とは、血漿に存在する環状(輪の形状)の五量体蛋白質を指し、該蛋白質のレベルは炎症に応じて上昇する。これは、マクロファージ及びT細胞によるインターロイキン−6分泌後に増加する肝臓由来の急性期蛋白質である。この蛋白質の生理学的役割は、C1Q複合体を介して補体系を活性化するために死細胞及び瀕死細胞(並びになんらかの細菌)の表面上に発現したリゾホスファチジルコリンに結合することである。CRPは、マクロファージや脂肪細胞により放出された因子に応じて肝臓で合成される。C反応性蛋白質をCRPと略記してもよい。この蛋白質はヒト蛋白質であるため、用語「ヒト」をCRPの前に挿入してもよい。CRP蛋白質はペンタキシンファミリーに属する。この蛋白質は、宿主の外来病原体と損傷細胞を認識し、血液中の体液性/細胞性エフェクター系との相互作用により排除を開始する能力に基づいて、様々な宿主防御関連機能に関与する。結果として、血漿中の該蛋白質のレベルは、組織損傷、感染、その他の炎症性刺激に応じて、急性期の間に急激に増加する。図37によると、C反応性蛋白質はC1qrs複合体を増強し、H因子との結合を介して、CRPは補体成分因子C3bを固定化する。ヒトにおいて、CRP蛋白質は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列によりコードされる。Genbank受入番号はX56692、NCBIのGeneIDは1401である。
ヒトにおける補体成分C4(C4)は、ヒト白血球抗原(HLA)系に由来する複雑な補体系に関与する蛋白質である。この蛋白質は、様々な成分と共に免疫、耐性、自己免疫における数々の重要な機能を果たす。更に、抗体−抗原(Ab−Ag)複合体が引き起こす全系の認識経路と、先天性免疫における他のエフェクター蛋白質との連結における決定的な因子でもある。補体成分C4をC4と略記してもよい。該蛋白質はヒト蛋白質であるため、用語「ヒト」をC4の前に挿入してもよい。C4は、CH、C4F、CO4、C4B1、C4B2、C4B3、C4B5、C4BD、C4B12、C4B_2、CPAMD3とも呼ばれる。補体因子4は、古典的活性化経路の一部である。この蛋白質は、蛋白質の加水分解で、分泌前にα鎖、β鎖、γ鎖の三量体に切断される単鎖前駆体として発現する。この三量体は、抗原−抗体複合体と他の補体成分との相互作用が生じるための表層を提供する。α鎖は、局所炎症の媒体であるC4アナフィラトキシンを放出するために切断され得る。この蛋白質の欠損は、全身性エリテマトーデスに関連する。この遺伝子は、第6染色体上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIII領域に局在する。この遺伝子クラスタには多様なハプロタイプが存在するが、例えば、該遺伝子のコピーを1つ、2つ、又は3つ有する個体が挙げられる。更に、この遺伝子は、イントロン9に6.4kbの内因性HERV−Kレトロウイルスが存在しているか否かによって、長形、或いは短形として存在する。
ヒトにおいて、C4蛋白質はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列によりコードされる。NCBIのGeneIDは721、Genebank受入番号はU24578である。
本明細書における「ヒトC1不活性化物質(C1IA)と結合する抗体」(抗C1IA)とは、C1IAの細胞外部分上のエピトープに結合する任意の抗体を指す。
本明細書における「ヒトC反応性蛋白質(CRP)と結合する抗体」(抗CRP)とは、CRPの細胞外部分上のエピトープに結合する任意の抗体を指す。
本明細書における「補体成分C4と結合する抗体」(抗C4)とは、C4の細胞外部分上のエピトープに結合する任意の抗体を指す。
用語「エピトープ」とは、抗体と特異的に結合できる蛋白質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸、糖側鎖、又はそれらの組み合わせのような分子の表面群から構成され、また、特異的な三次元構造特性や電荷特性を有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープの差は、変性溶媒の存在下で、前者との結合はそのまま維持されるが、後者との結合は消失するということである。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特定抗原結合ペプチドにより効果的に阻害されるか、又は覆われるアミノ酸残基(言い換えれば、アミノ酸残基が特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)を含んでいてもよい。
補体系は、生物から病原菌や損傷細胞を除去するために抗体及び食細胞の能力を増強(補完)し、炎症を促進し、病原体の細胞膜を攻撃する免疫系の一部である。これは、先天性免疫系のうち、適応性を持たず、個体の一生のうちに変化しない部分である。補体系は、適応性免疫系により補充され、活動に入ることができる。
本文において用語「抗C1IA」は、ヒトC1不活性化物質(C1IA)と結合する抗体分子として理解すべきである。
本文において用語「抗CRP」は、ヒトC反応性蛋白質と結合する抗体分子として理解すべきである。
本文において用語「抗C4」は、ヒト補体成分C4(C4)と結合する抗体分子として理解すべきである。
本明細書における「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」等は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性と親和性を示す。従って、「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有し、単一の結合特性を示す抗体を意味する。ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入又は染色体導入非ヒト動物、例えば遺伝子導入マウスから得たB細胞を含むハイブリドーマを不死化細胞に融合して産生してもよい。
(診断/スクリーニング/モニタリング)
本発明の一態様は、個体の癌を検出、及び/又はスクリーニング、及び/又はモニタリングする方法であって、癌の早期診断を容易にする方法を提供することである。
本発明の別の態様は、個体における癌の再発、癌の状態、又は癌治療の効果をモニタリングする方法を提供することである。
一実施形態において、本発明は、個体の癌を検出、及び/又はスクリーニング、及び/又はモニタリングする方法であって、前記方法は、
a)個体からの少なくとも1つの試料におけるヒトC1エステラーゼ不活性化物質(C1IA)のレベルによって表される第1パラメータ、及び
b)個体からの少なくとも1つの試料におけるヒトC反応性蛋白質(CRP)のレベルによって表される第2パラメータを測定し、
第1パラメータが第1基準レベルを超え、更に第2パラメータが第2基準レベルを超える場合、個体が癌を有する可能性が高いと判定する方法に関する。
癌のモニタリングはまた、癌の再発を意味する。
該方法は、
c)個体からの少なくとも1つの試料におけるヒト補体成分C4(C4)の濃度によって表される第3パラメータを測定することを更に含んでいてもよく、
第1パラメータが第1基準レベルを超え、第2パラメータが第2基準レベルを超え、更に第3パラメータが第3基準レベルを超える場合、個体が癌を有する可能性が高いと判定する。
別の態様において、本発明は、個体の癌を検出、及び/又はスクリーニング、及び/又はモニタリングする方法であって、前記方法は、
a)個体からの少なくとも1つの排泄物におけるC1エステラーゼ不活性化物質(C1IA)の濃度によって表される第1パラメータ、及び
b)個体からの少なくとも1つの排泄物におけるヒト補体成分C4(C4)の濃度によって表される第2パラメータをを測定し、
第1パラメータが所定の第1区別値以上であり、更に第2パラメータが所定の第2区別値を超える場合、個体が癌を有する可能性が高いと判定する方法に関する。
本明細書において、「排泄物」と「試料」は、入れ替え可能である。
ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4のレベルは、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の濃度であってもよい。
発明者らは、驚くべきことに、ヒト排泄物における高レベルのC1エステラーゼ不活性化物質(C1IA)と高レベルのC反応性蛋白質の組み合わせが、癌を示す可能性があることを見出した。
従って、本発明によれば、本発明の方法を用いることによって、個体又は集団における癌を早期検出、及びモニタリングする、容易且つ安価な方法を提供することが可能である。
偽陽性の結果を得ることを防止するためには、被験者を癌の可能性の高い群と可能性の低い群とに分ける基準レベルを定めことが重要である。
健常対照群と、既知癌群との両方におけるC1エステラーゼ不活性化物質(C1IA)の濃度を測定し、それによって判定値を定め、第1基準レベルを定める。この判定値は、所定の特異度又は所定の感度、或いは両方により癌患者の母集団を同定するものであり、健常対象群と癌患者の母集団の既知の臨床データと濃度値との関係の分析結果に基づく。
健常対照群と、既知癌群との両方におけるヒトC反応性蛋白質(CRP)の濃度を測定し、それによって判定値を定め、第2基準レベルを定める。この判定値は、所定の特異度又は所定の感度、或いは両方により癌患者の母集団を同定するものであり、健常対象群と癌患者の母集団の既知の臨床データと濃度値との関係の分析結果に基づく。
健常対照群と、既知癌群との両方におけるヒト補体成分C4(C4)の濃度を測定し、それによって判定値を定め、第3基準レベルを定める。この判定値は、所定の特異度又は所定の感度、或いは両方により癌患者の母集団を同定するものであり、健常対象群と癌患者の母集団の既知の臨床データと濃度値との関係の分析結果に基づく。
このように定められた判定値は、将来の個々の検査における同じ実験設定に対して有効である。
他の一実施形態において、健常対象群と既知癌群との両方における少なくとも1つの試料のヒトC1IAの濃度を測定して第1基準レベルを定め、それにより、所定の特異度又は所定の感度により癌患者の母集団を特定する第1基準レベルを定める。同様に、健常対象群と既知癌群との両方における少なくとも1つの試料のヒトCRPの全濃度を判定して第2基準レベルを定め、それにより、所定の特異度又は所定の感度により癌患者の母集団を特定する第1基準レベルを定めてもよい。更に、健常対象群と既知癌群との両方における少なくとも1つの試料のヒトC4の全濃度を判定して第3基準レベルを定め、それにより、所定の特異度又は所定の感度により癌患者の母集団を同定する第1基準レベルを定める。
一実施形態において、第1パラメータはヒトC1IAの濃度、第2パラメータはヒトCRPの濃度、第3パラメータはヒトC4の濃度であってもよい。
別の実施形態において、ヒトC1IAの濃度、及び/又はヒトCRPの濃度、及び/又はヒトC4の濃度を、外科手術、及び/又は治療、及び/又は照射の前の任意の時期に取得してもよい。
別の実施形態において、ヒトC1IAの濃度、及び/又はヒトCRPの濃度、及び/又は天然ヒトC4の濃度を外科手術、及び/又は治療、及び/又は照射の後から任意の時期、例えば2週間、1ヶ月、1.5ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月が経過した後に取得してもよい。
ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4のレベルは、従来の分析方法、例えば当該分野で公知の免疫学的方法により測定することができる。
ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4などの生物学的マーカーの測定は、本明細書の教示に従って、遺伝子、RNA、蛋白質における他の分子の測定と組み合わせてもよい。
前述の通り、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4などの生物学的マーカーの濃度は、蛋白質又は核酸のレベルによって判定してもよい。ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はC4に対するリガンドは、これらの分子の検出及び/又は定量に特に有用である。
ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4と結合する抗体は特に有用である。本明細書において考慮できる検定法は、当技術分野で公知のものであり、例えば、サンドイッチ検定、xMAP多重化、Luminex、ELISA、ELISpotを含む。抗体としては、抗体の部分、「哺乳類化」(例えば、ヒト化)抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体又は合成抗体、ハイブリッド抗体、単鎖抗体が挙げられる。
従って、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の濃度を免疫測定法により測定することが好ましい場合がある。免疫測定法はELISAであってもよく、高感度CRP(HSCRP)検査を利用してELISAの結果を得てもよい。
一実施形態において、ELISAはヒトC1IAと結合する1種以上の抗体、ヒトCPRと結合する1種以上の抗体、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体を適用する。
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体との両方は、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4、又はその抗原性フラグメントによる免疫化から取得してもよく、どちらも免疫測定法に使用することができる。これらの種類の血清を得る方法は、当技術分野において周知である。
ポリクローナル血清は、あまり好ましくないが、例えばヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4、又はその抗原性部分の有効量を適切な実験動物へ注射し、該動物から血清又は血漿を採取して、既知の免疫吸着技術により特異的血清を単離することで、比較的容易に調製することができる。このような方法により産生した抗体は、事実上あらゆる種類の免疫測定法において使用可能であるが、産生物の潜在的な異質性のため、一般的にあまり好まれない。
免疫測定法においてモノクローナル抗体は、産生物の大量産生性と均質性のため、特に好ましく用いられる。免疫原性調製物に対して感作された不死化細胞株とリンパ球の融合に由来するモノクローナル抗体産生用のハイブリドーマ細胞株は、当業者に周知の技術により調製することができる。
競合的蛍光偏光免疫測定法(CFIPA)における特異的抗体を用いたヒトC1IA、ヒトCRP又はヒトC4の直接測定により、或いは二量体化誘導蛍光偏光(DIFP)によるインターフェロン−γのホモ二量体の検出により、検出結果を得ることもできる。
一実施形態において、ヒトC1IAは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトCRPは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトC4は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
抗体(つまり、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体、ヒトCPRと結合する1種以上の抗体及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体)は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヘテロキメラ抗体、ヒト化抗体及びオリゴクローナル抗体からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、抗体は、組換え法、又はハイブリドーマ法により産生されてもよい。これらの方法は当業者に公知であろう。
一実施形態において、癌は、悪性癌、扁平上皮癌(食道癌、喉頭癌、気管支癌、直腸癌、膵臓癌)、種々のタイプやサブタイプの結腸癌などの腺癌、膵臓癌、膵管癌、膵腺房癌、全腺上皮組織における乳癌などの悪性腺癌、気管支原性癌、肺胞腺癌、例えば乳管癌、乳腺癌などの乳癌、肝細胞癌、腎癌、膀胱癌、膠芽腫及び乏突起膠腫を含む悪性脳腫瘍、特定のグレードの星状細胞腫(グレードIII)からなる群から選ばれてもよい。
別の態様において、本発明は、個体の癌をモニタリングする方法であって、前記方法は、
a)任意の時期に亘って癌を有する個体から試料を連続的に採取するステップと、
b)ステップa)から得た試料を、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)と共に培養し、試料のヒトC1IAレベルを判定するステップと、
c)ステップa)から得た試料を、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)と共に培養し、試料のヒトCRPレベルを判定するステップと、
d)ステップb)の各試料から判定したC1IAを比較するステップと、
e)ステップc)の各試料から判定したCRPを比較するステップとを含み、
ここで、
a.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるヒトC1IAレベル及びCRPレベルより高い場合は、癌が進行していると判定し、
b.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるC1IAレベル及びCRPレベルとほぼ同じである場合は、癌が定常状態であると判定し、
c.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるC1IAレベル及びCRPレベルより低い場合は、癌が寛解していると判定する、方法に関する。
別の態様において、本発明は、個体の癌をモニタリングする方法であって、前記方法は、
a)任意の時期に亘って癌を有する個体から試料を連続的に採取するステップと、
b)ステップa)から得た試料を、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)と共に培養し、試料のヒトC1IAレベルを判定するステップと、
c)ステップa)から得た試料を、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)と共に培養し、試料のヒトCRPレベルを判定するステップと、
d)ステップa)から得た試料を、ヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)と共に培養し、試料のヒトC4レベルを判定するステップと、
e)ステップb)の各試料から判定したC1IAを比較するステップと、
f)ステップc)の各試料から判定したCRPを比較するステップと
g)ステップd)の各試料から判定したC4を比較するステップとを含み、
ここで、
a.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるC1IAレベル及びCRPレベルより高く、C4レベルが直前の混合物におけるC4レベルより低い場合は、癌が進行していると判定し、
b.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるC1IAレベル及びCRPレベルとほぼ同じで、C4レベルが直前の混合物におけるC4レベルとほぼ同じである場合は、癌が定常状態であると判定し、
c.C1IAレベル及びCRPレベルが直前の混合物におけるC1IAレベル及びCRPレベルより低く、C4レベルが直前の混合物におけるC4レベルより高い場合は、癌が寛解していると判定する、方法に関する。
(特異度及び感度)
診断検査における感度は、検査により正確に同定又は診断が行われた結果、陽性反応を見せた個体の割合であると定義する。例えば、所与の健康状態の全ての個体が陽性反応を見せた場合、感度は100%となる。スクリーニング検査における特異度は、検査により正確に同定又は診断を行われた結果、所与の健康状態を有さない個体の割合である。例えば、所与の症状を有さない個体が全員、陰性反応を見せた場合、特異度は100%となる。
感度は、本発明に記載の方法により正確に同定された者で、所与の健康状態(例えば、癌)を有する(例えば、陽性反応を示す)個体の割合として定義される。
特異度は、本発明に記載の方法により正確に同定された者で、所与の症状(例えば、癌)を持たない(例えば、陰性反応を示す)個体の割合として定義される。
(基準レベル)
当業者によって一般に理解されるように、癌をスクリーニング/モニタリング/判定する方法は、比較に基づく意思決定プロセスである。意思決定プロセスのためには、疾患を有する被験体、及び/又は、疾患、感染、関心症状を有しない被験体に基づく基準値が必要となる。
各蛋白質(C1IA、CRP及び/又はC4)の基準レベルは、更なる侵襲的診断検査の対象となる被験体の数と、更なる侵襲的診断検査の対象となる被験体全員に対する例えば癌に罹患及び/又は発病する平均リスクと、一定のリスクレベルより高い患者特異的リスクを有する患者が更なる侵襲的診断検査を受けるべきか、或いは当業者に周知の他の基準に従うべきかに関する決定とを含む複数の基準に基づくことができる。
基準レベルは、検査対象の特定の個体群に限定されないが、何らかの基準に基づいて調整することができる。例えば、基準レベルは、既知の癌を有する個体に対してはより低く設定してもよい。癌を発症するリスクの低い他の健常個体の群において、基準レベルがより高くても良い。
一実施形態において、本発明は、被験体が癌を有する可能性が高いかどうかを判定する方法を開示し、該方法は、
(a)被験体から試料を得るステップと、
(b)試料中に存在するヒトC1IAの濃度と、試料中に存在するヒトCRPの濃度を定量的に測定し、試料中に存在するヒトC1IAポリペプチドの濃度が選択された基準レベルよりも高く、試料中に存在するヒトCRPの濃度が選択された基準レベルよりも高い場合、被験体が癌を有する可能性が高いと判定するステップとを含む。
本明細書の実施例の詳細な考察から明らかなように、健常対照群及び既知癌群の両方において単独又は複数のパラメータを測定することによって第1基準レベル、第2基準レベル、第3基準レベルを定め、それにより、パラメータ値と、健常対照群及び癌患者の母集団の既知の臨床データとの関係の分析結果に基づいて、所定の特異度又は所定の感度により癌患者の母集団を特定する基準レベルを決定する。このように定められた基準レベルは、将来の個々の検査における同じ実験設定に対して有効である。
本明細書に記載の特定の実験設定では、第1基準レベルとして有用なヒトC1IAのレベル閾値は、35mg/試料100mlであることが判明した。ヒトC1IAの正常血清濃度は15〜35mg/試料mlの範囲内であり、CRPの正常血清濃度は00mg/試料100mlである。
一実施形態において、第1基準レベルは、35mgヒトC1IA/試料100mlであってもよい。別の実施形態において、第2基準レベルは、00mgヒトCRP/試料100mlであってもよい。更なる実施形態において、第3基準レベルは、45mgヒトC4/試料100mlであってもよい。
当業者には明確かつ周知であるように、第1基準レベル、第2基準レベル、第3基準レベルは、特定の集団について個別に定めなければならない。
従って、前述の通り、第1基準レベルを上回るヒトC1IAの濃度、及び第2基準レベルを上回るCRPの濃度を有する患者は、癌を有する可能性が高い。
多変量判別分析、及びその他のリスク評価は、市販のコンピュータプログラム統計パッケージのStatistical Analysis System(SAS InstituteInc.製)、或いはその他、当業者の周知の多変量統計分析方法、統計ソフトウェアパッケージ、スクリーニングソフトウェアを用いて行ってもよい。
本発明による方法は、上昇するヒトCRPC4値と上昇するヒトC1IA濃度の組み合わせが、患者の癌が否定的な方向に発症している可能性を示唆し得るので、治療反応と癌の進行状態のモニタリングにも十分に使用することができる。この場合、区別値を各個体に対して個別に設定する。
本発明による方法は、個体と母集団全体の両方に適用することができるが、癌を発症するリスクが高いと既に同定された母集団、例えば、遺伝的素因を有する個体、発癌性物質に暴露された個体、癌素因非悪性疾患を有する個体などに、より適切である。
個体の排泄物が高濃度のCRPと高濃度のヒトC1IAを有すると特定された場合、当該個体は更なる検査を受けるべきである。
(受信者操作特性)
診断検査の精度は、受信者操作特性(ROC)により最適に判定することができる(特に、Zweig他、1993を参照されたい)。ROCグラフは、観測データの全範囲に亘って決定閾値を連続的に変化させることによって生じる全ての感度/特異度対のプロットである。
臨床検査の臨床的性能は、該検査の診断精度、又は、臨床的に関連するサブグループに被験者を正確に分類する能力に依存する。診断精度は、検査対象の被験者の2つの異なる健康状態を正確に区別する検査の能力を測定したものである。当該健康状態は、例えば、健康及び疾患、潜伏感染又は急性感染/感染無し、或いは良性疾患/悪性疾患である。
それぞれの場合において、ROCプロットは、決定閾値の全範囲に対する「感度/1−特異度」の対をプロットし、2つの分布間の重なりを示す。y軸は、感度、又は真陽性率([真陽性検査結果の数]/[真陽性+偽陰性検査結果の数]と定義される)である。これを、疾患、又は健康状態の存在下において陽性といい、疾患サブグループのみから算出する。x軸は、偽陽性率、或いは1−特異度([偽陽性結果の数]/[真陰性+偽陽性結果の数]と定義される)である。これは特異度の指標であり、無疾患サブグループ全体から算出する。
真陽性率と偽陽性率とはそれぞれ個別に算出されるため、2つの異なるサブグループの検査結果を用いるROCプロットは、試料における疾患の有病率とは無関係である。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に対応する感度/1−特異度の対を表す。完全差別化検査(結果の2つの分布に重なりがない)において、ROCプロットは、真陽性率が1.0又は100%(完全感度)、偽陽性率が0(完全特異度)である左上隅を通過する。無差別化検査(2つの群が同一分布の結果を示す)の理論上のプロットは、左下隅から右上隅まで至る45°の対角線をなす。ほとんどのプロットは、これらの2つの極端点の間に位置する(ROCプロットが全て45°対角線より下にある場合は、「陽性」の基準を「より大きい」から「より小さい」に、或いは「より小さい」から「より大きい」に逆転して、簡単に補正することができる)。定性的には、プロットが左上隅に近ければ近いほど、検査の全体精度が高くなる。
臨床検査の診断精度を簡単に定量化する方法は、該検査の性能を単一の数字で表すことである。最も一般的な全体尺度は、ROCプロットの下の面積である。慣例により、該面積は常に≧0.5である(そうでない場合は、決定規則を逆転すればよい)。値は、1.0(2つのの試験値が完全に分離されている)と0.5(2つの群の試験値に明白な分布差がない)の間の範囲である。該面積は、対角線の最近点、又は特異度90%の感度などのプロットの特定部分のみによるものではなく、プロット全体による。これは、ROCプロットが完全なプロット(面積=1.0)にどれほど近いかを定量的に示す表現である。
従って、本発明の好ましい実施形態の目的は、個体の癌を診断する方法を提供することであり、当該方法は、
a)前記個体の試料におけるヒトC1IAの濃度及びヒトCRPの濃度を決定するステップと、
b)健常群から得たヒトCPR濃度とヒトC1IAのパーセンタイルプロットを構築するステップと、
c)健常群において定められたヒトC1IA濃度とヒトCRP濃度と、既知癌群において定められたヒトC1IA濃度とヒト濃度とに基づくROC(受信者操作特性)曲線を構築するステップと、
d)所望の特異度を選択するステップと、
e)所望の特異度に対応する感度をROC曲線から決定するステップと、
f)定められた感度に対応するヒトC1IA濃度及びヒトCRP濃度を、パーセンタイルプロットから決定するステップと、
g)試料のヒトC1IA濃度が定められた特異度に対応するヒトC1IA濃度以上であり、且つ試料のヒトCRP濃度が定められた特異度に対応するヒトCRP濃度より高い場合、該個体が癌を有していると予測するステップと、
h)試料のヒトC1IA濃度が定められた特異度に対応するヒトC1IA濃度より低く、且つ試料のヒトCRP濃度が定められた特異度に対応するヒトCRP濃度以上である場合、該個体が癌を有している可能性が低い、或いは該個体は癌を有していないと予測するステップとを含む。
本発明による方法の特異度は、70%〜100%、より好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%であってよい。従って、本発明の一実施形態において、本発明の特異度は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
本発明による方法の感度は、70%〜100%、より好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%であってよい。従って、本発明の一実施形態において、本発明の感度は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
ヒトC1IA濃度及びヒトCRPの濃度は、基準データセット、或いは、被験体において、例えば癌のリスク又はその可能性が上昇しているか否かを判定するための基準レベルなどの基準値と比較してもよい。
或いは、陰性対照群の平均値、中央値、又は幾何平均値を基準レベルとして定めることもできる(例えば、(健常群、健常個体、既知癌群、又は既知の癌を有する個体)±1つ以上の標準偏差、又は標準偏差に由来する値)。
(予後)
一実施形態において、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4を癌と診断された被験体の予後の予測に用いてもよい。患者の予後に用いられる場合、本発明による方法は、癌の経過及び予想される結果を予測しやすくし、適切な治療方法を選択する際に当業者を補助し、更に健康状態に対する特定の治療の効果を予測することができる。
(試料)
少なくとも1つの試料は、血液、血清、唾液、脊髄液、脳脊髄液、胸膜液、腹水、尿、組織試料、組織細胞、これらの組み合わせからなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、試料は血液由来である。
一般的に、血液は、抗凝血剤(好ましくはヘパリン、或いは、クエン酸塩又はEDTAなど)の存在下で維持される。抗凝血剤は、該剤を採血管に入れておいて、該採血管に血液を添加する。採血管は、必須ではないが、標準的な自動化検査システムと互換性があることが好ましく、該システムは大規模なランダムアクセスサンプリングの分析に適している。採血管は更に、取り扱いコストを最小限に抑え、検査での全血及び血漿の暴露を減少させ、それにより、検査技師がヒト免疫不全ウイルス(但し、これに限定されない)のような病原体と接触するリスクを低減する。
全血の分量は、10μL〜4000μlの範囲の容量であってもよく、例えば、これらに限定されないが、50μL、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μl、1100μl、1200μl、1300μl、1400μl、1500μl、1600μl、1700μl、1800μl、1900μl、2000μl、2100μl、2200μl、2300μl、2400μl、2500μl、2600μl、2700μl、2800μl、2900μl、又は3000μlであってよい。
(抗体)
一態様において、本発明は、ヒトC1−IAと結合する1種以上の抗体に関する。別の態様において、本発明は、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体に関する。一態様において、本発明は、ヒトC4と結合する1種以上の抗体に関する。
ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)、ヒトCPRと結合する1種以上の抗体(抗CRP)、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)は、本発明の全態様において明らかに適用され得る。つまり、本発明の、個体における癌を診断、スクリーニング及び/又はモニタリングする方法、キット、組成物及び医薬組成物に適用することができる。
一実施形態において、ヒトC1IAは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトCRPは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトC4は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、C1IAはヒトC1IAである。一実施形態において、CRPはヒトCRPである。一実施形態において、C4はヒトC4である。
抗体(つまり、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体、ヒトCPRと結合する1種以上の抗体及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体)は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヘテロキメラ抗体、ヒト化抗体及びオリゴクローナル抗体からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、抗体は、組換え法、又はハイブリドーマ法により産生されうる。該方法は当業者に公知である。
好ましい実施形態において、1種以上の抗C1IAは、IgG抗C1IA及び/又はIgM抗C1IAであり、1種以上のIgG抗C1IAは、IgG1抗C1IA、IgG2抗C1IA、IgG3抗C1IA、及びIgG4抗C1IA、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、1種以上の抗CRPは、IgG抗CRP又はIgM抗CRPであり、1種以上のIgG抗CRPは、IgG1抗CRP、IgG2抗CRP、IgG3抗CRP、及びIgG4抗CRP、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、1種以上の抗C4は、IgG抗C4及び/又はIgM抗C4であり、1種以上のIgG抗C4は、IgG1抗C4、IgG2抗C4、IgG3抗C4、及びIgG4抗C4、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
本発明の抗体は、様々な方法により産生することができる。
当該抗体を産生する1つの方法として、哺乳類宿主細胞に、産生されるべき抗体の関連配列を含む1つ以上のベクターをトランスフェクションし、宿主細胞を培養し、抗体分子を回収、精製する方法が挙げられる。
当該抗体を産生する別の方法として、キメラ、又はヒト化モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞の構築が挙げられる。
ヒト組換え抗体は、ヒト胎児腎臓細胞(Human Embryonic Kidney cells)、或いはヒト由来の胎盤由来細胞又は羊膜由来細胞で産生されたヒトIgGを用いて産生することができる。C1阻害物質の場合、C1阻害物質の欠損の原因となる抗C1阻害物質を発現した、クインケ(I型)を有するクインケ浮腫患者に由来するファックスBリンパ球から抗原決定基を得ることができる。C1阻害物質に対する抗原性決定基を産生する患者のBリンパ球(クインケ浮腫患者の入院する大学病院、例えば、スウェーデンのルンド大学、ミズーリ州セントルイス市のワシントン大学医学部から得てもよい)から抗原決定基を単離する。CRPに対する他の種類の抗原決定基は、ミズーリ州セントルイス市のワシントン大学医学部と共同して同定してもよい。
一実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選ばれる重鎖を含む。
一実施形態において、抗体は単鎖抗体である。
別の態様において、抗体は、本明細書に記載の任意の態様又は実施形態による抗体の、少なくとも第1結合領域と、第1結合領域とは異なる標的又はエピトープと結合する第2結合領域とを含む多重特異性抗体であってもよい。本明細書における「多重特異性抗体」とは、2つの結合領域が、同じ抗原上の少なくとも2つ、例えば少なくとも3つの異なる抗原、或いは少なくとも2つ、例えば少なくとも3つの異なるエピトープと結合する抗体を指す。
一実施形態において、抗体は、本明細書に記載の任意の態様又は実施形態による抗体の第1結合領域と、第1結合領域とは異なる標的又はエピトープと結合する第2結合領域とを含む二重特異性抗体であってもよい。本明細書における「二重特異性」とは、結合分子の結合領域が、同じ抗原上の2つの異なる抗原、或いは2つの異なるエピトープと結合する抗体のような結合分子を指す。「二重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる、通常は重なり合わないエピトープに対する特異性を有する抗体を指す。このようなエピトープは、同一又は異なる標的上にあっても良い。エピトープが異なる標的上にある場合、そのような標的は、同一又は異なる細胞、細胞型、又は構造(細胞外組織など)上にあってもよい。本明細書における「異なる標的」とは、C1IA、CRP及び/又はC4、或いはC1IA、CRP及び/又はC4フラグメントではない、別の蛋白質や分子などを指す。
抗体(つまり、抗C1IA、抗CRP及び/又は抗C4)は、細胞傷害剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、抗生物質、又は放射性同位体のような、治療性部分又は診断性部分に結合されていてもよい。そのような「結合体」を、本明細書では「免疫結合体」と呼ぶこととする。1つ以上の細胞毒素を含む免疫結合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞傷害剤、薬物などに結合された抗体は、抗体−薬物結合体(ADC)としても知られている。一実施形態において、治療性部分は、細胞傷害剤に当たる。細胞毒又は細胞傷害剤には、細胞に有害な(例えば、死滅させる)製剤が含まれる。本発明の免疫結合体の形成に適合な細胞傷害剤としては、タキソール、チューブリシン、デュオスタチン、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、メイタンシン、或いはその類似体又は誘導体、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン;カリケアマイシン、或いはその類似体又は誘導体;代謝拮抗剤(メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビンなど)、アルキル化剤(メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチン、その他の白金誘導体(カルボプラチンなど)、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、CC−1065(ラケルマイシン)、或いはCC−1065の類似体又は誘導体)、ドラスタチン、アウリスタチン、ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン(PDB類)、インドリノベンゾジアゼピン(IGN類)或いはその類似体、抗生物質(ダクチノマイシン(かつてはアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(かつてはダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)など)、ジフテリア毒素及び関連分子(例えば、ジフテリアA鎖、その活性フラグメント、及びハイブリッド分子)などの抗細胞分裂剤(例えば、チューブリン標的剤);リシン毒素(リシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素など)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT−I、SLT−II、SLT−IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、大豆ボウマン−バークプロテアーゼ阻害物質、シュードモナス外毒素、アロリン、サポリン、モデケン、ゲラニン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、アブラギリ蛋白質、ジアンチン蛋白質、ヨウシュヤマゴボウ蛋白質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ツルレイシ阻害物質、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン毒素が挙げられる。その他の適合な結合分子には、抗菌/分解ペプチド、例えばCLIP、マガイニン2、メリチン、セクロピン、P18;リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、黄色ブドウ球菌毒素A、ヤマゴボウ抗ウイルス蛋白質、ジフテリン毒素、シュードモナス内毒素が含まれる。本発明による抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、或いは抗体−薬物結合体と組み合わせて投与できる本明細書に記載の治療剤、例えば抗癌サイトカイン又はケモカインは、本発明に開示される抗体との結合に有用な治療性成分の候補化合物でもある。本明細書における「細胞傷害剤」とは、細胞に有害な任意の薬剤を指す。
別の代替実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、結合された核酸又は核酸関連分子を含んでいてもよい。そのような一実施形態において、結合された核酸は、細胞傷害性リボヌクレアーゼ、アンチセンス核酸、抑制性RNA分子(例えば、siRNA分子)、或いは免疫刺激性核酸(例えば、免疫刺激性CpGモチーフ含有DNA分子)である。別の代替実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、アプタマー、リボザイム、機能性ペプチドアナログ又はその誘導体に結合されてもよい。別の代替実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体と薬物の結合体は、1つ以上の放射性標識アミノ酸を含む。放射性標識抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、診断及び治療の両方に用いられてもよい(放射性標識分子との結合は別の可能な特徴である)。ポリペプチド用の標識の例としては、3H、14C、15N、355、90Y、99Tc、125I、131I、186Reが挙げられるが、これに限定される訳ではない。一実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、放射性同位体又は放射性同位元素含有キレートに結合されてもよい。例えば、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、キレートリンカー、例えば、抗体と放射性同位体との複合体を形成可能なDOTA、DTPA又はチウセタンと結合していてもよい。抗体は、1つ以上の放射性標識アミノ酸、或いはその他の放射性標識分子を、これに加えて、又はこれに代えてに含んでいてもよく、或いはそれらに結合されてもよい。放射性標識抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、診断及び治療の両方に用いられてもよい。放射性同位元素の例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、111In、131I、186Re、213Bs、225Ac、227Thが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
(キット)
本発明の一態様は、簡単且つ安価な設計で、使用の迅速性と容易性を備え、専門家のサポートや特殊な設備を必要としない、本発明による方法を実施するキット又は装置を提供することである。
別の態様において、本発明は、(i)ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)、及び(ii)使用説明書を含むキットに関する。
別の態様において、本発明は、本明細書に開示の方法を実施するキットであって、(i)ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)、及び(ii)使用説明書を含むキットに関する。
好ましい実施形態において、1種以上の抗C1IAは、IgG抗C1IA抗体及び/又はIgM抗C1IA抗体であり、1種以上のIgG抗C1IA抗体は、IgG1抗C1IA抗体、IgG2抗C1IA抗体、IgG3抗C1IA抗体、IgG4抗C1IA抗体、及びそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、1種以上の抗CRPは、IgG抗CRP抗体又はIgM抗CRP抗体であり、1種以上のIgG抗CRP抗体は、IgG1抗CRP抗体、IgG2抗CRP抗体、IgG3抗CRP抗体、IgG4抗CRP抗体、及びそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、1種以上の抗C4は、IgG抗C4抗体及び/又はIgM抗C4抗体であり、1種以上のIgG抗C4抗体は、IgG1抗C4抗体、IgG2抗C4抗体、IgG3抗C4抗体、IgG4抗C4抗体、及びそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
各蛋白質(つまり、C1IA、CPR及び/又はC4)の濃度はそれぞれ独立して定められてよい。
該キットは、ELISA、免疫比濁法、比濁法、免疫拡散法、凝集キット、ウエスタンブロット、及びSDS pageからなる群から選ばれてもよい。免疫拡散法の原理はMancini他、1964に開示されている。
1種以上の抗C1IA、抗CPR及び/又は抗C4は、膜、プラスチック、ガラス、金属、陶磁器、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる固体支持体上に固定化されてもよい。凝集キットは、EldonCardTMであってもよい。
免疫拡散法において、前記キットは、少なくとも2つのゲル層を含み、第1ゲル層が1種以上の抗C1IAを含み、第2ゲル層が1種以上の抗CPRを含んでいてもよい。別の実施形態において、キットは、少なくとも3つのゲル層を含み、第1ゲル層は1種以上の抗C1IAを含み、第2ゲル層は1種以上の抗CPRを含み、第3層は、1種以上の抗C4を含んでいてもよい。これらのゲルの順序は逆であってもよい。
別の実施形態において、1種以上の抗C1IA、抗CPR及び/又は抗C4を、検出マーカーに結合させてもよい。検出マーカーとしては、蛍光マーカーやフルオレセイン誘導体であってもよく、色素、酵素などの触媒、二次抗体、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性標識、金属、磁性粒子、色素粒子、有機高分子ラテックス粒子、リポソーム、或いは、信号産生物質などを含有するその他の小胞からなる群から選ばれてもよい。
検出可能な信号は、当業者に周知の視覚的又は器械的手段により観察することができるが、当該手段は、磁気計、分光光度計、ELISAリーダー及び/又はCCDカメラからなる群から選ばれてもよい。
本発明は更に、少なくとも1つの試料におけるヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の濃度を測定するキットに関する。当該キットは、少なくとも1つの試料におけるヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の濃度を測定するディップスティックで構成されてもよいが、他のオプションとして、活性アッセイ(ザイモグラフィーなど)、免疫アッセイ、又は呈色反応キットを含んでいてもよく、該オプションはこれらに限定される訳ではない。
本発明は更に、本発明の方法を実施するキットを開示する。当該キットは便宜上、全血、血清、精製細胞、生検、又はその他の適用可能な試料物質などを含む、被験体からの試料を受けることができる1つ以上の区画を有する仕切り型に構成される。各区画は、試料が全血である場合は、ヘパリンを含んでいてもよい。
一般的に、キットは、使用説明書と共に包装されて販売する。使用説明書は、一般に、本発明の方法、つまり被験者の癌を診断する方法を解説する。
一実施形態において、キットは、診断試薬として用いられる、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4と結合する抗体と、該抗体の免疫測定又は特異的結合フラグメントとを含む。
本発明に記載のキットは、多数の採血管を含む第1構成要素、ヒトC1IA用の抗体系検出手段を含む第2構成要素、ヒトCRP用の抗体系検出手段を含む第3構成要素、使用説明書を含む第4構成要素、及び必要に応じてヒトC4用の抗体系検出手段を備える第5構成要素を含む、複数要素型キットであってもよい。
免疫検定法は、自動化又は半自動化されてもよく、自動化の場合、コンピュータソフトウェアによって制御されてもよい。
本発明の検定法は、ハイスループットスクリーニングを行うように、又は1人の被験体から複数の免疫エフェクターをスクリーニングするように、自動化又は半自動化されてもよい。自動化の場合、コンピュータソフトウェアにより好適に制御される。従って、本発明は、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の有無、或いはこれらのレベルを評価するコンピュータプログラム製品であって、
(1)標識抗体又は標識mRNAに関連するレポーター分子の同一性を入力値として受け取るコードと、
(2)該入力値を基準値と比較し、レポーター分子のレベル、及び/又はレポーター分子が結合している分子の同一性を判定するコードと、
(3)コードを記録するコンピュータ可読型媒体と、を含むコンピュータプログラム製品に関する。
本発明の更に別の態様は、ヒトC1IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4の有無、或いはレベルを評価するコンピュータであって、
(1)機械可読型データで符号化されたデータ記憶材を含む機械可読型データ記憶媒体であって、該機械可読型データIは、標識抗体又は標識mRNAに関連するレポータ分子を識別する入力値を含み、
(2)該機械可読型データを処理する命令を記録する作業メモリと、
(3)作業メモリと機械可読型データ記憶媒体とに接続され、該機械可読型データを処理して当該値を比較し、レポータ分子、或いはレポータ分子が結合している分子の同一性、又はレベルを評価する、中央処理装置と、
(4)該中央処理装置に接続され、比較結果を受け取る出力ハードウェアとを含むコンピュータに関する。
(組成物、医薬組成物、及びその用途)
更なる態様において、本発明は、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)を有効成分として含む組成物に関する。
更なる態様において、本発明は、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体(抗C1IA)、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体(抗CRP)、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体(抗C4)を有効成分として含み、且つ薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
一実施形態において、1種以上の抗C1IA抗体は、IgG抗C1IA抗体及び/又はIgM抗C1IA抗体であってもよい。1種以上のIgG抗C1IA抗体は、IgG1抗C1IA抗体、IgG2抗C1IA抗体、IgG3抗C1IA抗体、及びIgG4抗C1IA抗体からなる群から選ばれてもよい。好ましい実施形態において、抗C1IA抗体はIgG1及び/又はIgG3抗C1IA抗体である。なぜなら、これらの抗体は補体系を活性化するからである。組成物及び医薬組成物は、C1IAと結合する異なる抗体の混合物を含んでいてもよく、当該混合物は、C1IA蛋白質のわずかに異なる部分を標的とするため、効果の改善を図ることができる。
更なる実施形態において、1種以上の抗CRP抗体は、IgG抗CRP抗体及び/又はIgM抗CRP抗体であってもよい。1種以上のIgG抗CRP抗体は、IgG1抗CRP抗体、IgG2抗CRP抗体、IgG3抗CRP抗体、IgG4抗CRP抗体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。好ましい実施形態において、抗CRP抗体は、IgG1又はIgG3、或いは、例えばIgM抗CRP抗体である。なぜなら、これらの抗体は補体系を活性化するからである。組成物及び医薬組成物は、CRPと結合する異なる抗体の混合物を含んでいてもよく、当該混合物は、CRP蛋白質のわずかに異なる部分を標的としているため、効果の改善を図ることができる。
一実施形態において、ヒトC1IAは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトCRPは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
一実施形態において、ヒトC4は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含むか、或いは該アミノ酸配列により構成されてもよい。
抗体(つまり、ヒトC1IAと結合する1種以上の抗体、ヒトCPRと結合する1種以上の抗体及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体)は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヘテロキメラ抗体、ヒト化抗体、及びオリゴクローナル抗体からなる群から選ばれてもよい。
好ましい実施形態において、抗体は、組換え法、又はハイブリドーマ法により産生されてもよい。該方法は当業者に公知である。
該組成物は、生理的忍容性や保存期間などのパラメータに対して最適化されている。
本発明の実施形態は、1種以上の追加の治療剤を更に含む、上述の医薬組成物に関する。
本発明の別の実施形態において、1種以上の追加治療剤は、アポトーシスを誘導する薬剤から選ばれる。薬学的に許容可能な担体は、1種以上の抗体の化学的完全性をある程度まで維持し、患者に注入しても生理的に許容される緩衝液であってもよい。
従って、本発明の一態様は、本発明の放射性免疫結合体、並びに薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
薬学的に許容可能な担体としては、非毒性緩衝液、充填剤、等張溶液などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。より具体的には、薬学的担体は、生理食塩水(0.9%)、半生理食塩水、乳酸リンゲル液、5%デキストロース、3.3%デキストロース/0.3%生理食塩水であるが、これらに限定される訳ではない。薬学的に許容可能な担体は、放射性分解安定剤、例えば、保存・輸送中に放射性医薬品の完全性を保護するヒト血清アルブミン、アスコルビン酸を含有することができる。
別の態様において、本発明は、上述の医薬組成物であって、薬剤として用いられる医薬組成物に関する。
更なる態様において、本発明は、上述の医薬組成物であって、個体における癌の治療、癌の成長の抑制、及び/又は癌の増殖の抑制に用いられる医薬組成物に関する。
当該組成物は、腫瘍内投与してもよく、例えば、オンマヤカテーテル、脳内投与、脊髄内投与、くも膜下腔内投与、及び/又は静脈内投与により注入してもよい。
組成物は、個体に対して、例えば、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、3週に1回、毎月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、又は6ヶ月に1回ずつ投与してもよい。
抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、或いはADCの有効投与量及び投与計画は、治療対象の疾患又は健康状態に応じて、当業者により定められてもよい。
当該技術分野における通常の技術を有する医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に定め、処方することができる。これに関して、医薬組成物に言及する場合、当該組成物を含むものであることが理解されるべきであり、逆もまた然りである。例えば、医師は、所望の治療効果を得るために必要なレベルよりも低いレベルで医薬組成物に用いられる抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体の投与を開始し、所望の効果が得られるまで、用量を徐々に増やしていく可能性がある。一般的に、本発明の医薬組成物の適切な用量は、特定の投与計画に従って治療効果を生じるのに有効な最小用量に当たる、化合物の量となる。該有効用量は、一般に上述の因子に左右される。
例えば、治療用途の「有効量」は、疾患の進行を安定化する能力に基づいて測ってもよい。癌を抑制する化合物の能力は、例えば、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。或いは、組成物の当該特性は、当業者に周知の体外検定法により、細胞増殖を抑制する、又は細胞傷害性を誘導する化合物の性能を調べることによって評価してもよい。治療有効量の治療化合物は、腫瘍の大きさを減少させ、これの他に、被験体の症状を改善することができる。当業者であれば、被験体の大きさ、被験体の症状の重症度、及び特定の組成物又は投与経路などの因子に基づいて、有効量を定めることができる。
例示として、本発明による抗C1IA抗体又は抗CRP抗体の治療有効量の範囲(但し、これに限定される訳ではない)は、70kgのヒトに対して、抗体量100〜200mgを含む、推定容量10〜20mlとなる。
投与は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与などが可能であり、例えば標的部位の近位に投与することもできる。上述の治療法や用途における投与計画は、所望の目的とする反応(例えば、治療反応)をもたらすように調整される。例えば、単回急速投与(bolus)を適用してもよく、用量を数回に分け、経時的に投与してもよく、治療状況の危急性に応じて用量を減少又は増加させてもよい。
一実施形態において、例えば、薬物−抗体比(DAR)の低下、及び/又は抗C1IA抗体ADC、抗CRP抗体ADC及び/又は抗C4抗体ADCと未標識抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体との混合により、特異的な毒性を低下させることで、薬効安全性ウィンドウを最適化する。
一実施形態において、治療中に、例えば予め定められた時点での治療有効性をモニタリングする。一実施形態において、腫瘍細胞を含む試料におけるC1IA、CRP及び/又はC4レベルの測定、疾患領域の視覚化、本明細書に更に記載されるその他の診断方法、例えば、本発明の標識抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、或いは抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体に由来するフラグメントやミニ抗体を用いる1回以上のPET−CTスキャンの実施などの方法により、有効性をモニタリングしてもよい。
必要に応じて、医薬組成物の1日有効用量を、1日中適切に間隔を置いて、2回、3回、4回、5回、6回以上の副用量に分けて別々に投与してもよく、場合により単位剤形で投与してもよい。別の実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、望ましくない副作用を最小限に抑えるために、長期間、例えば24時間以上をかけて長期持続投与により投与してもよい。
本発明の化合物を、単独で投与することも可能であるが、上記の医薬組成物として投与することが好ましい。
本発明の抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、二重特異性抗体、或いはADCの有効用量は、週1回、週2回、又は週3回の投与頻度で投与してもよい。当該投与頻度の適用は、例えば8週間、12週間、或いは、臨床経過が確立されるまでに制限されうる。
例えば、一実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、二重特異性抗体、或いはADCを、70kgのヒトに対して、抗体量100〜200mgを含む推定容量10〜20mlで、週1回注射により投与してもよい。このような投与を、例えば1〜8回、又は3〜5回ほど繰り返してもよい。当該投与は、1〜24時間、又は1〜12時間に亘って持続投与により行われてもよい。
別の実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、二重特異性抗体、或いはADCを、70kgのヒトに対して、抗体量100〜200mgを含む推定容量10〜20mlで、3週ごとの注射により投与してもよい。このような投与を、例えば1〜8回、又は3〜5回ほど繰り返してもよい。当該投与は、1〜24時間、又は1〜12時間に亘って持続投与により行われてもよい。
一実施形態において、抗C1IA抗体ADC、抗CRP抗体ADC及び/又は抗C4抗体ADC、或いは二重特異性抗体を、平均体重70kgに対する免疫グロブリン量200〜400mgを含む推定用量約10〜20mlに対応する単回用量として、例えば毎週、或いは3週に1回、最大12回まで、8回まで、或いは臨床経過が出るまで投与してもよい。当該投与は、1〜24時間、又は1〜12時間に亘って連続注入により行われてもよい。当該計画を、必要に応じて、例えば6ヶ月又は12ヶ月後に1回以上繰り返してもよい。
例えば生体試料を採取して、更に本発明の抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を用いることによって、投与時に血液中の本発明の化合物の量を測定し、投与量を決定又は調整してもよい。
一実施形態において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体は、例えば6ヶ月間以上の期間をかけて、週に1回、維持療法として投与されてもよい。
例示として、本発明による治療は、本発明の化合物の約0.1〜100mg/kgの量で行われ、例えば、1日に約0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgの量で行われ、治療開始から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目のうちの少なくとも1日に、或いは、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目のうちのいずれか1週間に、単回で、或いは数回に分けて24時間ごと、12時間ごと、8時間ごと、6時間ごと、4時間ごと、又は2時間ごとに行ってもよいが、当該例示に限定される訳ではない。用量や投与時間などの条件は、必要に応じて組み合わせることができる。
非経口組成物は、投与の容易性や投与量の均一性のために、単位剤形で製剤化してもよい。本明細書で用いられる単位剤形とは、治療対象の被検体に対する単位投与量として適する物理的に別個の単位をいう。各単位は、必要とされる薬学的担体に関連付けられ、所望の治療効果を生じるように意図された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の特有の特徴と達成すべき特定の治療効果、及び(b)個体における活性化合物の治療感度などの当該技術分野に固有の制限事項、により規定され、また直接左右される。
癌に罹患している個体に対して抗C1IAを投与(注射又は点滴であるが、これらに限られる訳ではない)すると、C1qrs複合体に対するC1IAの抑制効果が中和され、その結果、該複合体がC1r及びC1sを活性化し、C4〜C4bを再度活性化しうる。C4bはC2〜C2bを活性化させ、該抗体が補体系を活性化させることができれば、古典経路が開始する。従って、抗C1IAは、補体系を活性化させるIgG1及び/又はIgG3であるのが好ましい(図37を参照のこと)。
癌に罹患している個体に対して抗CRPを投与(注射又は点滴であるが、これらに限られる訳ではない)すると、H因子の抑制効果が中和され、C3bが放出される可能性が高い。続いてC3bは、c5転換酵素をによってC5bを介して活性化し、その結果、C6、C7、C8及びC9の活性化をもたらす。C9は、C9の複数の成分を構成する。これは、細胞の表面で生じる出来事である(図37を参照のこと)。
癌に罹患している個体に対して抗CRPを投与(注射又は点滴であるが、これらに限られる訳ではない)すると、補体カスケード反応を加速させる可能性が高い(図37を参照のこと)。
1種以上の抗C1IA、1種以上の抗CPR及び/又は1種以上の抗C4は、化学療法薬物、同位体及び/又はモノクローナル抗体に結合されてもよい。化学療法剤は、化学療法薬、アルキル化薬、及び白金製剤からなる群から選ばれてもよい。アルキル化剤は、メクロレタミン(窒素マスタード)、クロラムブシル、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、イホスファミド、メルファランなどの窒素マスタード;ストレプトゾシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチンなどのニトロソウレア;ブスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ダカルバジン(DTIC)、テモゾロミド(Temodar(登録商標))などのトリアジン;チオテパ、アルテレタミン(ヘキサメチルメラミン)などのエチレンイミンからなる群から選ばれてもよい。白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサラプラチンからなる群から選ばれてもよい。
一実施形態において、癌は、悪性癌、扁平上皮癌(食道癌、喉頭癌、気管支癌、直腸癌、膵臓癌)、種々のタイプやサブタイプの結腸癌などの腺癌、膵臓癌、膵管癌、膵腺房癌、全腺上皮組織における乳癌などの悪性腺癌、気管支原性癌、肺胞腺癌、例えば乳管癌、乳腺癌などの乳癌、肝細胞癌、腎癌、膀胱癌、悪性脳腫瘍(例えば、膠芽腫又は星状細胞腫)、星状細胞腫、膠芽腫グレードIII〜IV、神経膠腫、多形型膠芽腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫からなる群から選ばれてもよい。好ましい実施形態において、癌は悪性脳腫瘍である。
本発明の更なる実施形態は、ヒトC1−IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4を発現する癌型を治療する本発明の医薬組成物に関する。好ましい実施形態において、癌型は、その表面にヒトC1−IA及びヒトCRPを発現する。
本発明の一態様は、ヒトC1−IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4を細胞表面に発現する細胞を激減させる本発明の医薬組成物に関する。
別の態様において、本発明は、C1−IA、CPR及び/又はC4を発現する腫瘍細胞の成長及び/又は増殖を抑制する方法であって、必要とする個体に上述の組成物又は医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法に関する。
別の態様は、癌治療薬剤の製造に用いられる、抗C1IA、抗CPR及び/又は抗C4を含む医薬組成物の用途に関する。更なる態様は、癌に罹患している患者の治療方法であって、抗C1IA、抗CPR及び/又は抗C4を含む医薬組成物の有効量を該患者に投与するステップを含む方法に関する。更に一態様は、癌治療における抗C1IA、抗CPR及び/又は抗C4の使用に関する。
更なる態様は、1種以上の抗C1IA、1種以上の抗CPR及び/又は1種以上の抗C4を含む診断用組成物に関する。
本発明による薬学的溶液の治療的用途は、ヒトC1−IA、ヒトCRP及び/又はヒトC4を発現する悪性細胞に対する治療であり、当該悪性細胞は、骨肉腫、軟部肉腫、乳癌、肺癌、頭頸部癌、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、白血病、脳腫瘍からなる群から選ばれた癌型を含むが、これらに限定される訳ではない。
治療法は、免疫療法、抗体−薬物結合体、免疫毒素、又は、これらに限定される訳ではないが、β粒子線照射、α粒子線照射、これらの組み合わせを含む放射線免疫療法に基づいたものであってもよい。
当該治療法は、単独療法として、或いは他の治療法、好ましくは標準治療との組み合わせとして適用されることができる。他の治療法には、前治療、外科手術、化学療法(ドキソルビシン、ビンブラスチン、ゲムシタビンを含む)、免疫療法、光力学療法、プロテアソーム抑制剤(ボルテゾミブを含む)、ヒストンデアセチラーゼ抑制剤(ボリノスタット、スベロイルアニリドヒドロキサム酸を含む)、ビタミンD3及びビタミンD3誘導体、細胞周期チェックポイント抑制剤(UCN−01、2−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ベンズイミダゾール−5−カルボキサミドを含む)、低酸素細胞放射線増感剤(メトロニダゾール、ミソニダゾールを含む)、アポトーシス誘発剤(トバフェリンAを含む)、放射線増感剤、放射線免疫療法、或いはこれらの2種以上の組み合わせが含まれる。
「投与」とは、静脈内点滴又は静脈内注射を意味する。より具体的には、本発明の医薬組成物は、空気塞栓症を予防し、且つ患者への投与流速を推定できる注入チャンバに接続された末梢カニューレによって静脈内に直接投与することができる。
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、繰り返して投与することができる。
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、異なる様式で、繰り返して投与することができる。例えば、β−放射線免疫療法の後にα−放射線免疫療法を行ってもよく、その逆でもよく、或いは、細胞傷害性薬物結合体の後に免疫結合体を用いてもよい。
本発明の一実施形態は、他の治療法と組み合わせて、或いは他の治療法に加えて投与される本発明の医薬組成物の使用に関する。本発明の一実施形態において、他の療法は、前治療、化学療法、モノクローナル抗体療法、外科手術、放射線療法、及び/又は光線力学療法から選ばれる。本発明の別の実施形態において、他の療法は、骨髄移植、或いは幹細胞移植及び/又はこれらの治療法である。
特定の態様において、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体、或いはADCは、癌を発症するリスクを低減し、癌進行における事象の発症を遅延させ、或いは、癌が寛解期であるとき及び/又は原発腫瘍を外科手術により摘出したときの再発のリスクを低減するために、予防的に投与することができる。後者の場合、抗C1IA抗体、抗CRP抗体及び/又は抗C4抗体を、例えば、外科手術と関連して(つまり手術前、手術中、又は手術後に)投与することができる。予防的投与は、他の生物学的要因により、存在すると考えられる腫瘍の位置を特定しづらい患者にとっても有用である。
本発明の一実施形態は、体外、又は生体外で実施される本発明の使用、及び治療方法に関する。
本発明の更なる実施形態は、本発明のヒトC1−IAと結合する1種以上の抗体、ヒトCRPと結合する1種以上の抗体、及び/又はヒトC4と結合する1種以上の抗体、結合体、或いは組成物の腔内投与に関する。
当該投与の例としては、腹腔内投与、胸腔内投与、頭蓋内投与が挙げられる。
本発明の更なる態様は、癌細胞の成長を抑制する方法であって、癌細胞を本発明の抗体の有効量と接触させ、それにより癌細胞の成長を抑制するステップを含む方法に関する。
本発明の一実施形態は、体外で行われる方法に関する。
本発明の抗体及び医薬組成物の投与は、局所、経口、胃腸管、皮内、皮下、鼻内、静脈内、筋肉内、経腸、又は非経口を含む、様々な投与経路を通じて行うことができる。
医薬組成物は、従来の技術により、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤、並びに既知の補助剤や賦形剤と共に製剤化してもよい。本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween−20又はTween−80などの非イオン性界面活性剤)、安定剤(例えば、糖類、蛋白質無含有アミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、及び/又は医薬組成物に適合な他の物質を更に含んでいてもよい。本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルを変化させて、特定の患者、組成物、及び投与方式に対して、患者に対して有害ではない所望の治療反応を達成するのに必要な有効成分量を得てもよい。選択した投与量レベルは、採用された本発明の特定の組成物の活性、又はそのアミド活性、投与経路、投与時間、採用された特定の組成物の排泄速度、治療の持続時間、他の薬物、化合物、及び/又は採用された特定の組成物と組み合わせて用いられる物質、年齢、性別、体重、症状、全般的な健康状態、従来の医療技術、患者の治療歴、医療分野で周知の類似因子など、様々な薬物動態学的因子により定められる。医薬組成物は、任意の適切な経路や方式により投与することができる。本発明の化合物の投与に適する体内及び体外の投与経路は、当該技術分野では周知であり、当業者により選ばれてもよい。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書における「非経口投与」及び「非経口的に投与する」は、通常は注射による、経腸や局所投与以外の投与方式を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、髄内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、胸骨内の注射及び点滴が挙げられる。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、静脈内又は皮下の注射又は点滴により投与される。薬学的に許容可能な担体としては、本発明の化合物に生理学的に適合する適切な溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤、吸収遅延剤などが挙げられる。本発明の医薬組成物に採用できる適切な水性担体及び非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物;オリーブ油、コーン油、落花生油、綿実油、ゴマ油などの植物油;カルボキシメチルセルロースコロイド溶液;トラガカントガム;オレイン酸エチルなどの注射型有機エステル、及び/又は様々な緩衝液が挙げられる。製薬分野において周知である他の担体でもよい。薬学的に許容可能な担体には、滅菌水性溶液又は分散液、並びに滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用滅菌粉末が含まれる。薬学的活性物質のためのこのような溶媒や薬品の使用は、当技術分野において公知である。従来の溶媒や薬品は、活性化合物と不適合である場合を除いて、本発明の医薬組成物に使用することができる。例えば、レシチンなどの被覆材の使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を確保してもよい。本発明の医薬組成物は更に、薬学的に許容可能な酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は更に、組成物中に糖類や、マンニトール、ソルビトール、グリセロール又は塩化ナトリウムなどのポリアルコール類どの等張剤を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は更に、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、緩衝剤のように、医薬組成物の保存期間や有効性を増強させ、選択された投与経路に適した1種以上の補助剤を含有してもよい。本発明の化合物は、移植片、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤など、化合物の急激な放出を防ぐ担体と共に調製することができる。当該担体としては、ゼラチン;モノステアリン酸グリセリル;ジステアリン酸グリセリル;エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、ポリ乳酸(単独又はワックス添加)、その他の当該分野で周知の物質を含む生分解性・生体適合性高分子が挙げられる。当該製剤の調製方法は、一般的に、当業者に周知のものである。一実施形態において、本発明の化合物は、体内において適切に分布できるように製剤化してもよい。非経口投与用の薬学的に許容可能な担体には、滅菌水性溶液又は分散液、並びに滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用滅菌粉末が含まれる。薬学的活性物質のためのこのような溶媒や薬品の使用は、当技術分野において公知である。従来の溶媒や薬品は、活性化合物と不適合である場合を除いて、本発明の医薬組成物に使用することができる。その他の活性化合物や治療化合物を当該組成物に含んでもよい。注射用医薬組成物は、通常、製造/貯蔵の条件下で無菌且つ安定でなければならない。当該組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に適する他の規則構造として調製してもよい。当該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注入型有機エステルを含有する水性溶媒、非水性溶媒、又は分散媒であってもよい。例えば、レシチンなどの被覆材の使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を確保してもよい。多くの場合、当該組成物に等張剤として、例えば糖類、並びにグリセロール、マンニトール、ソルビトール又は塩化ナトリウムなどのポリアルコール類が含まれるのが好ましい。吸収遅延剤として、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に混合して、注射用組成物の持続的吸収を行ってもよい。滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、1つ又は組合せの成分として例えば上記に列挙したものと共に混合し、必要に応じて滅菌濾過を行って調製してもよい。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体、並びに必要な他の成分、例えば、上に列挙したものを含有する滅菌媒(vehicle)に混合して調製される。滅菌注射溶液の調製に用いられる滅菌粉末の場合、調製方法の一例は、真空乾燥及び凍結乾燥を行って、上記滅菌濾過溶液から活性成分及び所望の追加成分を持つ粉末を製造することである。滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、1つ又は組合せの成分、例えば上記に列挙したものと共に混合し、必要に応じて滅菌精密濾過を行って調製してもよい。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体、並びに必要な他の成分、例えば、上に列挙したものを含有する無菌媒質(vehicle)に投入して調製される。滅菌注射溶液の調製に用いられる滅菌粉末の場合、調製方法の一例は、真空乾燥及び凍結乾燥を行って、上記滅菌濾過溶液から活性成分及び所望の追加成分を持つ粉末を製造することである。本発明の医薬組成物は、本発明の1種以上の抗体、二重特異性抗体又はADC、或いは本発明の抗体、二重特異性抗体又はADCと別の治療化合物と組み合わせたもの、或いは本発明の化合物の組み合わせを含有してもよい。
本発明の態様に関して記載される実施形態及び特徴は、他の態様にも適用されることに留意されたい。
本出願に引用される全ての特許及び非特許文献は、本明細書に援用されている。
(項目)
C1IA、並びに癌診断、モニタリング及び癌治療に用いられるその他の癌細胞関連ブロッキング免疫原
(概要)
癌に影響を及ぼす新しい組み合わせとして近年同定された2種の蛋白質、つまりC1不活性化物質(C1IA)及びC反応性蛋白質(CRP)の組み合わせは、CRPの存在の明示や、C1IA抗体及びCRP抗体に対する特異性を持つ抗体及び抗血清に基づく診断検査系と、ヒト抗血清又はヒト抗体、好ましくはモノクローナル又は組換えヒト抗血清を、C1IA及びCRPに対する特異性を持つ抗ヒトC1IA及び抗ヒトCRPを組み合わせたものを用いた癌腫及び悪性脳腫瘍などの特定の癌型のヒト癌治療の両方に用いることができる。CRPは、Grabar免疫電気泳動法において異なる位置を有する蛋白質としても同定されうるため、CRPは、Grabar免疫電気泳動法における位置を変化させうる溶媒及び他の要素を考慮して、α蛋白質領域内又はその周辺、或いはγ蛋白質領域内に位置させることができ、該検査方法においてこの位置が異なっても、新規CRPと見なされることなく、蛋白質の等電点による可能性が高い変化と見なされる。
本発明によれば、驚くことに、CRPは、乳癌及び卵巣癌の転移症状のために、癌腫培養物、胸水、腹水からC1IAと共に回収することができる。しかしながら、例えば癌腫などの固形腫瘍における腫瘍壊死として現れる死滅細胞又は瀕死癌細胞を持つ領域を癌腫が含むことがしばしばあるため、CRPが癌腫培養物にも現れ、C1IAの存在を示す癌腫細胞と共に死滅又は瀕死癌腫細胞から抽出できる理由、更に、採取した癌腫細胞がCRPを生み出す死滅又は瀕死細胞を含有する理由が分かる。従って、抗ヒトC1IA、抗ヒトCRP及び抗ヒトC4を癌疾患のモニタリングを目的として併用することは、抗体、或いはモノクローナル及び/又は組換えヒト抗ヒト抗体を用いてヒトの癌腫を検出、モニタリング及び治療する妥当なアプローチといえる。
(発明の簡単な説明)
本発明は、診断用キットと癌腫、脳腫瘍、その他、C1IA及びCRPを検出できる悪性固形癌などのヒト癌を治療するキットとの組み合わせ;C1IA及びCRPの単離や特性評価のプロセス;CRPの存在を明示する原理に基づく診断検査方法及びその物質;C1IA及びCRPに対する特異性を持つ抗体及び抗血清;当該抗体、及び該抗体を含む組成物の調製;マトリックス固定化抗体;例えばC1IA及びCRPに対する特異性を持つモノクローナル及び/又は組換え抗血清又は抗体を用いるヒト癌の治療法に関する。
本発明の重要な態様は、ヒト癌疾患に関連し、癌細胞の膜上に存在する蛋白質、特にC1IA−CRPの阻害やマスキングに対して特異的に指向する抗体の使用の原理に基づく。本発明によれば、当該原理は、癌の体内治療、及び癌患者血清の体外治療に用いられる。
C1IA−CRPは、癌患者の体液(血清など)やヒト悪性癌細胞、細胞培養物から単離したヒト癌関連蛋白質である。細胞培養物の培養、継代サイクルを繰り返して行い、C1IA及びCRPを培養培地から単離することで、癌細胞自体がC1IA及びCRPを産生できることが明らかとなった。
C1IA−CRPは、ヒトを含む様々な種の体液から探し出せるα2ノイラミノ糖蛋白質であるヒト補体成分C1不活性化物質(「C1エステラーゼ阻害物質」ともいう)(Pensky他、J.Biol.Chem.、236、1674、1961、Ratnoff他、J.Exp.Med.129.315、Pensky他、Science163、698、1969、Nagaki他、Int.Arch.Allergy46、935、1974)の性質と類似する生物学的性質を有するが、ヒト補体成分C1不活性化物質とは蛋白質化学的に同一ではないことが判明している。
下記では、ヒト補体成分C1不活性化物質(C1エステラーゼ阻害物質)を「C1IA」と呼ぶものとする。様々な文脈において使用される「C1不活性化物質」は、C1IA及びCRPからなる群を指定する用語である。
C1IA−CRPは、C4及びC2の初期ヒト補体成分C1活性化に対する抑制効果(つまり、C1エステラーゼ加水分解効果の抑制)、プラスミンの不活性化、血漿の凝固時間への影響の欠損(つまり、当該欠損はC1IAに共通するものであり、排除できない。CRPにも共通する可能性がある)を含む、C1IAの性質と類似する生物学的性質を有することが判明している。本発明が基づく原理によると、上述したC1IA−CRPの抑制作用は、ヒト免疫系による破壊に対する癌細胞の防御において重要な役割を果たすと考えられている。
文献によると、C1IA様蛋白質はヒト癌細胞の膜上に存在する(例えば、Osther他、1973、1974)。
本発明によれば、C1IAはヒト癌に存在し、上記のように、C1IA−CRPと呼ばれる新規のC1IAであると判明している。重要且つ新たな開発は、これらの知見に基づく。
C1IA−CRPをC1IAや既知の蛋白質と区別するCRPの特性に関する暫定的な評価は、下記の「C1IA−CRP特性評価」の項で行うものとする。LKB Multiphorにおける等電点電気泳動法によって、精製C1IA、及びC1IA−CRPのアンホリンに焦点を当てることにより、別々のバンド2つを見つけ出した。電気泳動法は、薄層ポリアクリルアミドゲル等電点焦点法に用いられるPAG(登録商標)プレートを用い、pH勾配が4.0〜8.6の範囲とし、500V、50mampで、0℃に冷却しながら2時間行った。
電気泳動の後、ポリアクリルアミドゲルを切り出し、続いて90°の角度にて、diemal緩衝液中の2%アガロースゲルに、イオン強度0.02、pH8.6、18℃で12時間移動させた。該アガロースゲルはウサギ抗ヒトC1IAを含有する。これにより、交差しない沈降線2本が得られたが、C1IA及びC1IA−CRPの両方に対するオリゴ特異性抗血清を用いた場合、交差している沈降線2本が形成されるモノクローナル抗体又は組換え抗体として得ることができる。C1IAで免疫感作したウサギではC1IAとCRPとを区別できないが、他の動物であれば、既知のクロマトグラフィー法を用いたC1IAの精製にC1IA法を用いた場合に生じる2つの蛋白質を同定することができる。
C1IA−CRPは、例えば癌腫(乳癌型や卵巣癌型)の転移性癌に罹患している患者由来の胸水又は腹水から単離される。ウサギ抗血清がC1IA−CRPとC1IAを区別できないという事実は、現在の状況で重要な意味を有し、従って強調されるべきものである。本明細書を読む際に、免疫検査において、ウサギ抗ヒトC1IA(市販の試薬)との反応に基づく反応は「C1不活性化因子」に対する反応、つまり、C1IA−CRP及びC1IAの合計に対する反応であることを必ず記憶されたい。
採集培養培地から産生した動物抗体は、抗体、特にC1IA−CRPが産生されているので、C1IA及び恐らくはCRPは、由来に拘わらず、癌腫を含む複数種類のヒト癌細胞の培養によってその培地から単離される。
C反応性蛋白質(CRP)とは、血漿から得られる環状(輪の形状)の五量体蛋白質を指し、該蛋白質のレベルは炎症に応じて上昇する。これは、マクロファージ及びT細胞によるインターロイキン−6分泌後に増加する肝臓由来の急性期蛋白質である。この蛋白質の生理学的役割は、C1Q複合体を介して補体系を活性化するために、死滅又は瀕死細胞(並びになんらかの細菌)の表面上に発現したリゾホスファチジルコリンに結合することである。実際に死滅又は瀕死細胞で発現したリゾホスファチジルコリンとの結合は、特定の癌細胞、或いは癌腫又は悪性脳腫瘍の癌細胞の一定の割合においても存在し得る。CRPは、分子量21500の同じサブユニット5つで構成され、正常末梢血リンパ球の約4%の表面上で検出可能である。急性期反応物質CRPは肝臓で産生される。;リンパ球で検出可能なCRPは、上述の細胞により産生される(Kuta及びBaum、1986)。Kilpatrick及びVolanakis(1991)は、CRPの分子遺伝学、構造及び機能を検討した。細胞遺伝学的位置:1q23.2、ゲノム座標(GRCh38):1:159,712,288−159,714,608(NCBI)。
体外実験及び体内実験に基づいて、CRPの機能は、宿主の外来性病原体と損傷細胞を特異的に認識し、血液中の体液/細胞エフェクター系と相互作用を行って病原体及び損傷細胞の除去を開始する機能に関連することが提案されている。従って、CRP分子は、認識機能及びエフェクター機能の両方を有する(Kilpatrick及びVolanakis、1991)。
Robey他(1984)は、CRPがクロマチンに高親和性で結合することを示した。CRPの主な生理的機能の1つは、急性炎症反応中に死滅細胞により放出されるクロマチンの捕集物質として作用することであると考えられている。
インターロイキン−6(IL6;147620)と、腫瘍壊死因子α(TNFA;191160)は、炎症性サイトカインであり、肝臓におけるC反応性蛋白質の分泌の主要誘導因子である。CRPは、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化病変の病因に役割を果たす低悪性度炎症のマーカーである(Blake及びRidker、2002)。TNF−αの作用は、2つの受容体(I型(TNFR1;191190)及びII型(TNFR2;191191))によって媒介される。看護師健康調査(NHS)及び医療従事者追跡調査(HPFS)は、それぞれ、多数の米国の女性登録看護師と米国の男性医療従事者を対象とした前向きコホート研究である。Pai他(2004)は、これらの2つの研究において、参加者の女性と男性のそれぞれにおける冠動脈心疾患リスクのマーカーとして、可溶性TNFR1、可溶性TNFR2、インターロイキン−6、C反応性蛋白質の血漿レベルを調べた。
8年間と6年間の追跡調査中、血液試料を提供し、且つベースライン時には心血管疾患に罹患していなかった参加者のうち、239人の女性及び265人の男性が、非致死性心筋梗塞と致死性冠動脈性心疾患を発症した(607339参照)。Pai他(2004)は、炎症マーカー、特にC反応性蛋白質のレベルの上昇を発見している。これは、冠状動脈性心疾患リスクの増加を示す。血漿脂質レベルの方が炎症マーカーよりもリスク増加により強く関連していたが、C反応性蛋白質のレベルは、冠動脈心疾患の予測に重要な役割を果たした。
C1IA−CRPの単離及び精製には、様々な方法を適用することができる。有用な方法に共通している点は、C1IA−CRPが確認された培地から、「C1IA−CRPの特性評価」の項に記載されている性質を有するグロブリン様物質の単離及び精製を目的とする分離技術を含むことである。より好適な方法は、当業者に周知の吸着技術やゲル濾過技術を含む。C1IA−CRPをヒト癌細胞培養物からの培地から調製することができ、またC1IAは当該ヒト癌細胞培養物からの培地から単離することができないため、C1IA−CRPを濃縮、単離、精製する明確な方法の1つは、吸着及びゲル濾過法を、ウサギ抗ヒトC1IAを用いる免疫検定と共に適用し、上述した癌細胞型の培地から、ウサギ抗ヒトC1IAと免疫学的に反応する蛋白質を取得することである。当該手順では、「C1IA−CRPの特性評価」の項に記載されているように、5.5未満及び10.5超えのpH値、並びに56℃を超える加熱温度を避けるため、注意を払う必要がある。上記の条件は、C1IA−CRPの生物学的性質の変化を引き起こす恐れがあるからである。C1IA−CRPの濃縮や精製に適する方法を設計する場合、当業者は、「C1IA−CRPの特性評価」の項に記載されている他の特徴、例えば110000〜130000に推定されるC1IA−CRPの分子量を用いることも考慮できよう。ある物質中にC1IA−CRPが存在するという証拠は、C1IA−CRPとの反応を示す抗体や抗血清に対する免疫検査から得ることができ、該反応は、C1IAを含む他の蛋白質との反応とは、容易に区別可能である。当該抗体又は抗血清の調製は、本明細書に記載されている。C1IA−CRPの濃縮、単離、精製に適する方法では、カラムクロマトグラフィー吸着とゲル濾過法を採用する。
C1IA−CRPは、他の公知の抗原に対する特異性を有する抗体、特に既知の癌胎児抗原に対する抗体とは反応しないこと、具体的には、α2−フェトプロテイン又はCEA蛋白質に対する抗体とは反応しないことが判明している。
C1IA−CRP含有培地からC1IA−CRPを調製する好ましい方法は、「C1IA−CRPの調整」の項に記載されてる通りであり、カラムクロマトグラフィー吸着とそれに続くゲル濾過法を含む。カラムクロマトグラフィー吸着に用いられる好ましいカラムは、Dowex2×8、メッシュ200〜400の陰イオン交換樹脂カラムであり、ゲル濾過に用いられる好ましいゲル材料は、Sephadex(登録商標)G75 Superfineなどのデキストランゲルである。通常の単位操作、例えば適切な段階での透析や凍結乾燥が当該手順に含まれる。
C1IA−CRPを濃縮、単離、精製する培地は、C1IA−CRP産生性ヒト癌細胞、或いはC1IA−CRP産生性癌型に罹患している患者から採取した血清又は胸膜滲出液/腹水滲出液等の体液を培養する培地であってもよい。前述の通り、癌細胞培地はC1IAを含有しないが、ヒト癌患者の体液においてC1IA−CRPと共にC1IAを検出することができる。C1IA−CRPの実用性については、C1IA−CRPに加えてC1IAを含有する単離物はそれ自体で有益であるため、使用する出発培地におけるC1IAの存在は特に問題にはならない。詳細は後述する。
癌細胞をC1IA−CRPの産生のために培養する場合、適切な培養培地は、Eagle最小必須培地、及びRPMI合成アミノ酸培地(FlowLaboratories、IrvineAyrshire、K.A.128NB、Scotland のPublication73/74を参照)である。しかしながら、癌細胞の成長を手助けする任意の培地を使用してもよい。培地が約285mg/リットル、好ましくは290mg/リットルを超える量のグルタミンを含有する場合、C1IA−CRPの最高収率を得られることが知られている。現在、グルタミンの最適添加量は約294mg/リットルであることが判明しており、それ以上の多量添加からは一切の利点を期待できない。癌細胞を培養する通常の手順では、成長期ではグルタミンを添加したEagle最小必須培地を、産生期ではグルタミンを添加したRPMI培地を利用する。各期間は数日、例えば3〜7日程度であり、現在のところ、3日が好ましい。
前述の通り、C1IA−CRPは、ヒト免疫系による破壊に対する癌細胞の防御において重要な役割を果たすと考えられている。C1IA−CRPは、一方がシアロ蛋白質(ノイラミノ糖蛋白質)であり、抗原性が低く、またC1IA−CRPは、癌細胞培地や癌患者の体液から発見される他の蛋白質、特にオロソムコイド、α2−糖蛋白質、Znα2−糖蛋白質((退化)指定Znα2−糖蛋白質とも呼ばれる)と共に、ヒト免疫系による「非自己」としての同定に対して癌細胞を「マスキング」すると考えられている。更に、前述の通り、C1IA−CRPは、C1によりC4の活性化を抑制するが、これは免疫系が癌細胞を効率的に攻撃できない主な理由の1つと考えられている。これは、固形悪性腫瘍はよく死滅又は瀕死癌細胞で構成されるという事実と、あまり知られていない細胞ターンオーバー効果によるが、CRPがC1IAと同時に存在できる理由も説明できる。実際、病理学レポートの経験によれば、この現象は、腫瘍壊死の存在を示し、つまり、死滅乳癌細胞が組織試料内に見られることを意味する。腫瘍壊死は、しばしば試料内の小さな領域に限定される。腫瘍壊死の存在は、より侵襲性の強い乳癌を示唆する。
例えば、乳癌又は乳癌腫における壊死と低酸素症の関係を究明するため、Tomes他(Tomes L、Emberley E、Niu Y、Troup S、Pastorek J、Strange K、Harris A、Watson PH.Necrosis and hypoxia in invasive breast carcinoma.Breast Cancer Res Treat.2003年9月;81(1):61−9)は、97個の浸潤性乳管癌における免疫組織染色法による低酸素関連マーカーHIF1、CAIX、GLUT1の発現を調べた。選ばれた当該シリーズは、広範な壊死を伴う48個の腫瘍と、壊死のない49個の対照腫瘍を含んでいた。壊死性腫瘍の90%以上、並びに非壊死性腫瘍の30%以上が、少なくとも1つの低酸素症マーカーを発現した。更には、腫瘍間質における低酸素関連マーカーの発現が観察された。初代ヒト乳房線維芽細胞の体外検査により、CAIXmRNA及び蛋白質が低酸素症により誘導され得ることが確認された。53件の生存分析で、間質性低酸素症を伴う腫瘍のサブセットは、より良好な予後を示すことが判明した(p=0.027)。Tomes他の研究結果は、壊死は低酸素を伴うことが多いが、壊死のない低酸素症も頻繁に起こることを示している。低酸素症マーカーの使用は、様々な同時発現パターンにより亜分類される腫瘍の連続低酸素症を同定することができる。Tomesは、間質低酸素症と上皮低酸素症は、恐らく異なる生物学的背景を有し、間質性低酸素症は生存に影響を及ぼす可能性があるとの結論を下している。
このような症例や、癌腫に関する多くの記述では、壊死がよく生じることが既に知られている。故に、癌転移が生じた患者から単離した癌腫、或いは腹水又は胸膜液が、明らかに死滅又は瀕死細胞を含む壊死組織を有するというのはかなり妥当な推論であり、細胞は、癌腫細胞の特定の部分に被覆されたC1IAに加え、死滅又は瀕死細胞に由来するCRPを含み得る。
言い換えれば、膜蛋白質としてC1IAを産生する癌細胞の能力は、癌細胞が、免疫応答に対する求心性応答及び遠心性応答の両方を阻害してしまう機能を持つ主な理由の1つとなり得る。同時に、CRPは死滅又は瀕死癌細胞の一部に存在する可能性があり、恐らくは固形癌で生じる。
求心脚は、主にC1IA−CRP(相乗効果)のマスキング効果により阻害され、遠心脚は、体液性免疫防御レベル及び細胞性免疫応答レベルの両方に応じて阻害されるようである。前者は、前述した段階での補体系の阻害であり、後者は、負電荷C1IA−CRP、並びに負電荷リンパ球に反発する強負電荷シアロ化合物による癌細胞膜の強い負電荷に起因するものである。
ヒト補体系、及びヒト補体系上のC1不活性化物質の阻害及び抑制作用の模式図を図1に示す。補体反応が免疫グロブリンのFcフラグメントにより開始される場合、補体反応、又はカスケードの通常過程中に、活性化C1は補体成分のC2及びC4を活性化し、その後、補体反応は終点に向かって進み、「非自己」物質又は免疫グロブリンが反応した抗原の分解が生じるが、C1不活性化物質は、C1のC4活性化を抑制するため、C4は抗原に結合せず、更なる補体反応は進行しないことになる。
健常状態のヒトの体液には、補体系に必要な制御因子としてC1IAが含まれている。
健常生体におけるC1IAの制御効果(該制御効果は、C1r及びC1sの抑制を介して現れ、C4のC1活性化の低減をもたらすことがわかっている)は、C1IAの濃度に関連することがよく知られており、通常、C1分子に対するC1IAの不活性化効果は、血清相における補体カスケードへ繋がり、クインケ浮腫を引き起こす可能性があるC1の過剰な活性化の不活性化に限定される。血清相におけるCI1Aの正常値は、最大15〜35mg%である。本発明によれば、確定診断済みの癌疾患に罹患している患者は、C1不活性化物質の異常に高い血清レベルを示し、この増加は、恐らく患者の血清中に存在するC1IA−CRPは勿論、患者の血清中の補体成分C4の上昇にも起因する。
確定診断済みの癌に罹患している患者においてC1不活性化物質(C1IA)のレベルがどの範囲まで上昇するかを評価するに当たり、多様な起源の癌、つまり癌腫、細網肉腫、稀な症例のリンパ腫などの癌に罹患している100人の患者に対してウサギ抗ヒトC1IAを用いるローレルロケット法を適用し、C1不活性化物質の血清濃度を測定した。対照検査には、健常被験者、確定診断済みの非悪性疾患に罹患している患者から採取した血清に対する同等の検査が含まれた。結果を図2に示す。健常被験者から得たC1IAの平均値は、癌に罹患している患者より遥かに低いことが分かる。更に、非悪性疾患に罹患している患者のC1不活性化物質レベルは、平均値が癌患者の平均値より低く、健常被験者における正常範囲にほぼ位置している。
癌に罹患している患者由来の血清におけるC1不活性化物質の濃度は、主に癌細胞クローンから遊離したC1IAの存在に起因して上昇するものと考えられている。オクタロニー法により、C1不活性化物質の値が上昇している癌患者は、C1IAとCRP両方の沈降線を持つことが確認され、非悪性疾患に罹患している患者や健常被験者は、CRPが有意に存在しておらず、或いは、CRPのレベルが非常に低かった(両方ともオリゴ特異的ブタ抗ヒトC1IA/C1IA−CRPに対して測定された)。このようなオクタロニー血清検査の典型的な例を図3に示す。
前述の通り、補体C4は、C1IA(癌細胞の存在により癌患者で上昇する)の阻害/抑制効果による該複合体の解離の欠如のため、C1qrsでは活性化できない活性化C4の阻害に恐らく起因して、同じく上昇する。
同じ群の患者に対して補体成分C4レベルの推定を行った結果、健常被験者と非悪性疾患に罹患している患者はほぼ同じ平均値を示したが、癌に罹患している患者はC4レベルが有意に上昇した(図2を参照)。
約50mg%(50mg/100ml)(ウサギ抗ヒトC1IAを用いたロケット電気泳動法で推算)を超える濃度の「C1不活性化物質」(C1IA)の値は、C4段階、つまりC4のC1活性化が生じてその結果としてC4が消費される段階(活性化したC4は補体系により溶解される細胞の膜に付着する)での補体系の阻害を示すC4の上昇と一致することがよくあることが判明している。漸進的に成長する癌を調べると、「C1不活性化物質」とC4は、患者が死亡するまで継続的に上昇することが分かる。更に、C4の近末端(subterminal)値及び末端値は最大160mg%に達し、C1不活性化物質の値は最大約120mg%まで上昇することも判明している。原発性小細胞性癌細胞クローンを有することが確認された癌を有する患者由来の血清において、C1不活性化物質(C1IA)の値が約40〜50mg%であれば、異常に上昇したC4レベルの徴候はないことが見出された。しかしながら、これらの患者が手術を受けると、C1不活性化物質レベルは、約3週間後に低下して、やはり正常範囲まで落ちたC4と共に正常範囲にそのまま留まる(根治手術の成功を示唆する)か、或いは、C4の上昇を伴って上昇する。後者の現象は、根治手術が、損傷癌細胞及び血流中に入った癌細胞からCRPが遊離したために生じた、血清相における高CRP及びC1不活性化物質の濃度上昇を誘発し、C1不活性化物質の濃度増加が補体系の阻害を引き起こしたためであると推測できる。これらの場合もC4は上昇する。血清試料においてCRPが上昇し、恐らく同時にC1IAも上昇するが、C4は有意に上昇していない場合、このパターンにおけるもう一つの理由としては、ウイルス性肝炎、急性又は慢性B型肝炎、心臓関連疾患、又は、例えば癌以外の疾患による細胞死や壊死に起因する他の炎症性疾患などといった、炎症性疾患又は疾病に患者が罹患していることになる。
上記の説明の背景として、癌の場合に生じる免疫応答の抑制を中和できれば、つまり、免疫防御の阻害を未然に防ぎ、癌細胞を「脱マスキング」してヒト免疫系の免疫監視により容易に認識されるようにすることができれば、効果的な癌治療の機会が急激に増加することが理解されよう。本発明は、そのような脱阻害と脱マスキングを提供する。
例えば、転移の進む癌患者から採取した胸水又は腹水を、C1IA精製法を用いて精製した場合、重要な点は、このようなC1IA精製はCRPをC1IAと同じ割合で同時に含有するということである。従って、本発明に記載の方法を用いて癌患者から精製したC1IAを使用し、ブタなど動物のワクチン接種に用いられる免疫原を結果として得る場合、本発明の重要な態様は、C1IAとCRPの両方に対して特異性を有する抗血清又は抗体に関する。
当該抗血清は、選択的に免疫化できる動物、例えばブタを抗原成分としてC1IA−CRPを含むワクチンで免疫化し、免疫動物から血清を回収して製造してもよい。オロソムコイド、α2−HS糖蛋白質、Znα2−糖蛋白質は癌細胞培地から、特に培養の初期段階(トリプシン処理及び継代培養の前)で単離され得る蛋白質であり、当該3種の蛋白質は、抗原性が非常に低く、オロソムコイドは癌患者から採取した胸膜滲出液に高濃度で存在するという知見に基づいて、これらの追加蛋白質3種は、癌細胞の「マスキング」に関与するものと考えられるので、癌治療を目的とする抗血清の調製の際に、当該蛋白質3種を宿主動物に接種すべきワクチンに投入し、抗血清がこれらの動物蛋白質に対する抗体を持つようにすることが好ましい。更に、C1IA−CRPが癌細胞に存在するC1不活性化物質である一方、C1IAが液相における主要なC1不活性化物質となる可能性を排除できないので、最も有効な抗血清は、C1IAとCRPの両方を攻撃するものであると推定できる。
下記では、本発明の抗血清又は抗体の効果をより詳細に説明する。簡潔且つ正確な調査のために、「INA」(免疫中和脱阻害抗血清)を用いるものとする。ブタ抗ヒト抗体(C1IA及びCRPで免疫化されている)と共にいわゆるINA抗体で癌患者を治療していたが、本発明によれば、いわゆるINA抗体の注射又は点滴により、癌腫(進行癌腫転移)の収縮が生じ、それと同時に抗C1IA及び抗CRPの注射や点滴によっても治療を受けていたので、ブタ抗ヒト抗体で治療を受ける患者の一部から見出されるC1IAとC4の減少も共に引き起こされる。モノクローナル抗体、或いは組換え抗C1IA抗体を適用する場合、組成物が抗C1IA及び抗CRP抗体の混合物である場合、若しくはこの2つの抗C1IAと抗CRPを別々に注射する場合に、治療の効率が更に上がる。これは、組換え抗C1IA及びCRP抗体組成物で構成された混合物を含んでいる治療検査キットであるか、別に投与された組換え抗C1IAで構成されたキット1つと別に投与された抗CRPで構成された別のキットとの2つのキットであるということを意味する。
抗ヒトC1IA−CRP抗体は、抗原−抗体反応により、癌細胞膜上のC1IA−CRPと反応する。例えば、INAをマーキング(例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を用いたマーキング)し、ヒト癌細胞を標識INAと共に培養することで、INAと癌細胞との相互作用を示すことができる。癌細胞は陽性の標識を示す。ノイラミニダーゼと予培養した同じ培養物からの細胞は、標識INA抗血清と培養した後に標識を示さず、つまり、C1IA−CRPの抗原決定基がノイラミニダーゼにより分解していることになる。INAが癌細胞膜上のC1IA−CRPの決定基を阻害すると、ヒト体液性免疫防御系が癌細胞を攻撃できるようになる。これは、ヒト癌細胞をINAと培養し、続いて同一の患者、或いは同型の癌に罹患している患者から採取した血清と共に培養することで実証できる。例えば6時間の培養後、癌細胞は培養フラスコから剥がれ、例えば18時間後には、全て死滅する。同様の方法で治療した中皮細胞や線維芽細胞は、培養に影響を受けずに培養フラスコで成長し続け、INAと培養していない対照群の培養物と同様に、血清との培養は癌細胞に影響を与えなかった。これは、抗C1IAが、癌細胞上のC1IAに関する抑制因子や阻害因子を中和、或いは除去するように作用して、一定量の癌細胞を破壊し、また、抗CRPは、CRPに被覆された死滅細胞又は瀕死癌細胞と結合し、更に、固形癌腫瘤の一部として現れる癌細胞の別の群を除去し、それによってC1qrsはC1IAに対する抗体が癌細胞のある群と結合して癌腫における癌細胞群の両方に対する補体反応を活性化することを示している。従って、上記のようにブタで産生されたINAは、C1IA被覆癌細胞上のC1qrsの活性化に対する阻害効果を中和することができ、また、癌細胞の他の部位に抗CRPが結合することで生じるC1qrsの活性化によって、残存癌腫が収縮する。体外実験では、C1IA−CRPがINAにより中和されると、C4のC1活性化への抑制効果の中和、すなわち免疫系の作用が阻害されることを意味するものであり、C4が癌細胞膜に付着し、補体系の更なる作用によって癌細胞が溶解する。C4活性化の後は、C1IA−CRPの影響により補体反応を止めることはできなくなる。図1を参照されたい。
(本発明の簡単な説明:追加)
(免疫阻害癌の診断・モニタリング、及び免疫脱阻害癌治療に関する新規の生物学的方法)
Dana Geneticの研究者たちは数年間、補体を含む自然免疫系で生じる癌患者の免疫反応の阻害を解除することに重点を置いて研究を進めてきた。
脊椎動物の先天性免疫系について、一般的に知られている機能は、以下の機能を含む:
・サイトカインと呼ばれる特殊な化学メディエーターを含む化学因子の産生により、免疫細胞を感染部位に送り込む。
・細菌を同定し、細胞を活性化し、抗体複合体や死滅細胞のクリアランスを促進する補体カスケードを活性化する。
・特殊な白血球により器官、組織、血液、リンパ中に存在する異物を同定及び除去する。
・抗原提示として知られるプロセスを介して適応免疫系を活性化する。
・感染症に対する物理的及び化学的バリアとして作用する。
研究者らは、癌細胞、特にヒトの癌腫細胞は実際に先天性免疫系を阻害してしまうことを見出すとともに、阻害の理由を同定し、癌細胞を脱阻害できる方法を探した。これは、進行した転移癌腫に罹患している少数の患者(末期癌の患者)の治療を含む初期の予備実験でも示唆されていたことである。
癌腫に対する独自の脱阻害免疫治療のアプローチは、活性化して先天性免疫系を作動し、微生物を破壊して外来細胞の拒絶/溶解(例えば、同種異系移植後に現れる拒絶反応)を引き起こす補体成分C1qrsの活性化を抑制する阻害蛋白質として機能するC1不活性化物質(C1IA)とも呼ばれるC1阻害物質、並びに一定の条件下で補体成分C5転換酵素を妨害してC5bを阻害するC反応性蛋白質(CRP)からなる癌腫細胞の保護外被を除去、或いは中和する新しい方法を提供する。癌腫細胞上に存在するC1不活性化物質は、血清C1不活性化物質と、癌の可能予測因子として知られているC4の測定を可能とする。また、CRPを活用し、独自の診断・癌治療モニタリングシステムを開発するに至った。
補体C1qrsに対するC1IAの阻害は、C1rsによるC4のC4bへの転換活性化を抑制し、更に補体カスケードを抑制して、細胞の溶解や死滅を阻止している。このようにして癌腫は認識されずに生存し、免疫監視系から遮断される。癌腫は、ヒト癌において最も多い癌型である(全癌患者の約80%)。
更に、別の阻害蛋白質も存在することが判明した。ヒト癌細胞培養物からC1不活性化物質を採取することにより、別の阻害因子がC反応性蛋白質である可能性が確認された。上述した癌腫や悪性脳腫瘍に対する阻害は、治療目的は勿論、将来の診断及びモニタリング検査キットの作成にも活用されよう。
癌腫や特定の肉腫に対するこのような知見の他にも、研究者らは、星状細胞腫や膠芽腫など、悪性脳腫瘍における阻害C1不活性化物質を同定している(Osther K他、ヒト悪性脳腫瘍の培養細胞に対する補体不活性化物質の実証、Acta Neurol.Scandinav.(1974)、50:681−689)。
臨床予備研究において脱阻害抗体を用いた最初の試みは、C1不活性化物質に対する精製ブタ免疫グロブリンG抗体と、抗C反応性蛋白質とを用いた癌腫患者の治療であった。当該物質を、転移により癌腫が末期まで進行している6名の患者に静脈内注射により投与したのである。前述の通り、この予備研究は、「補体阻害因子」として知られるC1不活性化物質によって被覆された培養ヒト癌腫細胞に関する知見に基づくものであった。しかしながら、ブタIgG蛋白質を用いた治療は、数回で中止しなければならなかった。ブタIgGで治療を受けた患者は、ブタIgGの投与後に血清IgMが有意に増加し、ブタ蛋白質に対する抗体を早くも産生していることを示唆したのである。
我々研究者の現在の目標は、まず、モノクローナル抗体を、臨床検査室ではELISA、免疫比濁法、比濁法などに基づいて行われる、診断・モニタリング検査に用いることであり、また、迅速免疫拡散法や視覚的凝集法のキットが医師の診療所で使用できるようになることである。
上述の阻害効果に基づいて、我々の更なる目標は、組換え技術を開発し、癌治療に用いられるヒト脱阻害抗体を製造することである。
C1IA免疫原の力価は、ローレルロケット免疫電気泳動法(Walker JM、ローレルロケット免疫電気泳動法、Mol.Biol.1984;1:317−23)により免疫原を検査ることによって推定され、相応の数の健常ドナーから採取した血清C1不活性化物質からなるバッチ対照群を用いて得た血清C1IA対象群と比較して、定量する。検査は、ローレルロケット免疫電気泳動法により行われた(図1を参照すること)。
(癌診断・モニタリング検査キットに使用されるDana Geneticのモノクローナル抗体)
(Dana Geneticの免疫診断/モニタリング/阻害検査キットの開発背景)
使用抗体は、ドイツ、マールブルクのBehring Instituteが調製したウサギ抗ヒトC1不活性化物質及びウサギ抗C4血清である。C1不活性化物質とC4の検査は、肺癌、乳癌、他の婦人科癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、黒色腫、他の癌腫に至る、様々なヒト癌腫型から採取した血清を用いて行った。これらの血清試料を、非悪性疾患に罹患している患者及び健常ドナーから採取した血清と比較した。血清試料は、コペンハーゲン内の病院の腫瘍学科、婦人科、外科、並びにコペンハーゲン市立血液銀行から得たものである(図2を参照)。
血清C1不活性化物質(血清C1阻害物質)と血清補体成分C4のレベルを比較する当初の診断検査は、ウサギ抗ヒトポリクローナル抗C1阻害物質抗体、及びC4に対するウサギ抗ヒトポリクローナル抗体を用いたものであり、測定にはローレルロケット免疫電気泳動法(Walker JM、ローレルロケット免疫電気泳動法、Mol.Biol.1984;1:317−23)を用いた。結果は図2を参照すること。
(癌腫細胞培養物及び継代培養物におけるC1不活性化物質外被の測定)
これらの結果は、多様な種類の癌腫や転移状況を有する患者由来の癌腫生検、並びに上記の癌腫患者の転移領域に隣接する体液から癌腫細胞を培養して得た、我々研究室の知見に基づくものである。
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したウサギ抗ヒトC1不活性化物質(C1IA)、ウサギ抗ヒトC1阻害物質−FITCとも呼ばれる物質との共培養を目的として、マイクロスライド及び細胞培養フラスコに癌腫生検を移植した。マイクロスライド上で培養され且つ抗C1IA−FITCが接着した細胞試料を、培養及び継代培養した癌腫細胞培養物からのマイクロスライド上の単細胞に対する免疫蛍光測定を備えた位相差顕微鏡に取り付けられたLeitzMPV2細胞光度計により測定した。
図3に示されているように、当該方法を用いて、37名の癌患者から採取した37個の癌細胞培養物を測定した。C1不活性化物質(C1阻害物質)の相対濃度を示す細胞数は、特定の有意な信号(カットオフ境界値を確立し、特定の励起から差し引いたときに同定した制御信号)を与えるFITC励起により測定されており、各細胞培養物についての百分率で表している。
24個の外植片からの継代培養物(細胞光度計が示した有意に高い信号により特定のC1不活性化物質外被が確認されたもの)に対して、トリプシン処理、洗浄、Leightonチューブ中の培地への外植から、3日以上が経過した後、再度検査を行った。同じ患者から得たマイクロスライド2つであって、一方は、ウサギ抗C1不活性化物質−FITCとの培養から1〜2時間後には励起信号を示さず、同一の細胞を有する他方は、3日以上培養した後に検査を行ったところ、第2列で示す測定により示されたように、細胞表面にC1不活性化物質が存在することを示した。C1不活性化物質は、健常個体の特定の細胞、例えば単球などにも存在する。しかしながら、これらの細胞は接着性がなく、緩衝液洗浄中に除去されるが、癌細胞はマイクロスライドに付着する。また、肝組織中のクッパー細胞もC1IAを産生することが知られている。
これらの結果は、健常ドナーの血清、及び非悪性腫瘍患者の血清と比較して、癌腫細胞から採取した血清試料におけるC1阻害物質(C1不活性化物質)とC4のレベルに関して得た知見と一致している。これは、癌腫細胞からのC1不活性化物質の産生が、血清中のC1不活性化物質(C1IA)の高いレベルに関する知見に対応していることを示すものであり、我々は、この結果が患者の癌腫細胞の存在によるものであると仮定している。補体C4の測定値は、図3に示されているC4の阻害を反映しており、これは恐らく、バランスがとれていない補体系により肝臓から過剰産生されるであろう。
陽性C1不活性化物質信号を示す細胞の相対数を、最初の検査から得た陽性細胞の百分率として表すと、C1不活性化物質外被がトリプシン処理(C1不活性化物質外被を除去することが判明した)の3日後に再構成されたことを示し、更に、該癌腫細胞が、3日の培養中に細胞膜でC1不活性化物質を再度産生できるようになったことを示す。以前にC1不活性化物質について陽性と判定されたもののうち、12個の癌細胞培養物について予飽和試験を行った。
マイクロスライド上の試料対を、未標識ウサギ抗ヒトC1不活性化物質と共に予培養した後、洗浄し、FITC標識抗C1不活性化物質で培養した。これらの細胞試料は、ウサギ抗C1不活性化物質の細胞膜に対する特異的結合を示す特定の励起信号を示さなかった。非悪性腺腫や線維腫から採取した12個の生検をC1不活性化物質外被について検査したが、細胞膜上に特異的なC1不活性化物質外被を見つけ出すことはできなかった(図3を参照)。
(Dana Geneticの免疫診断/モニタリング/阻害検査TRIADEキット)
この「TRIADEキット」には、ヒト血液中の、
1. C1不活性化物質
2. C反応性蛋白質(CRP)
3. 補体成分C4
の定量的測定に用いられるモノクローナル抗体が含まれている。
理論的には、癌患者、特に癌腫患者はTRIADEキットにおいて下記のパターンを示す可能性が極めて高い:
C1IA、CRP、補体C4=癌腫、或いは他の癌型に陽性反応を示す
最初の癌関連製品として、Dana Geneticが発表する予定の阻害検査キット(TRIADEキット)は、下記の作用を目的とする。
1. 癌(例えば癌腫)の早期診断
2. 外科手術、化学療法、放射線治療、モノクローナル抗体の癌免疫効果、及び、阻害剤(チロシンキナーゼ阻害剤など)、例えばスニチニブ(TKI)などの他の治療態様に及ぶ癌治療の開始、及び以降の状況に関するモニタリング
3. 癌の脱阻害免疫治療のモニタリング
(癌、特定の肉腫、白血病、悪性脳腫瘍の患者を対象とする脱阻害免疫療法としての、 Dana Geneticのヒト組換え抗体の開発)
C1不活性化物質とC反応性蛋白質に対するヒト組換え抗体の開発は、工業現場で製造可能なヒト遺伝子導入細胞の培養で行われる。これらの抗体は、星状細胞腫や膠芽腫などの、培養悪性脳腫瘍細胞、及び培養癌細胞を含む体外実験による研究において、試験するものとする。
Dana Geneticは、ヒト組換え抗C1不活性化物質IgG、及びヒト組換え抗C反応性蛋白質(抗CRP)IgGを開発し、CRO検証用として設計された適切なCROサービスを用いて、脱阻害抗体製品の安全性、毒性、薬理を試験する予定である。検査には、以下のものが含まれる。
1. 有害作用の特性評価
2. 潜在的標的臓器毒性の同定
3. 用量レベルの判定
4. 作用機序の定義
5. 人間、動物、環境に対するリスクの評価
少数の癌患者を含む以前の予備研究に基づき、個々の活性及び安定性の検査を用いて、組換えヒト抗C1阻害物質及び組換え抗C反応性蛋白質の検証を行う。
Dana Geneticは、癌患者をブタ抗C1IA/CRPIgGで治療した以前の予備研究をモデルとして、ブタ抗ヒトC1IA/CRPIgGに代えて「ヒト組換え抗C1IA/CRPIgG」を用いて、下記の治療研究を開始する予定である。
・承認された臨床研究病院における進行性転移癌腫患者に対する安全性試験(CRO)
・第I相及び第II相:用量及び投与頻度の増加を含む、継続的かつ拡張的な臨床安全性と有効性の検討(CRO)
・3ヵ所以上のセンターにおける進行性転移癌腫(例えば、転移性の乳癌、胃腸癌、膵臓癌、腎癌(RCC)など)患者を対象とする、腫瘍科及び神経外科の第III相臨床試験
、C1不活性化物質を持つ癌腫細胞の保護外被、並びに、最近発見された、ヒト癌腫細胞培養物から採取したC反応性蛋白質に対する脱阻害抗体としての「組換えヒト抗体」の開発及び製造は、「脱阻害免疫治療」と称する。この新規方法は、臓器中の癌の場所と種類にかかわらず、上記の癌型リストにおいて同定された標的に基づいて構築したものである。当該治療モデルは、肺癌、乳癌、他の婦人科癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、黒色腫、他の癌腫にわたる様々なヒト癌腫型に対する「脱阻害免疫治療」として使用されることになる。
図4aに示されているように、WT(野生型) rC1qは、C1s−C1r−C1r−C1sの活性化を引き起こす血清C1qの能力を基本的に有しており、1時間の培養で95%の活性化をもたらした。WT rC1q及びその変異体をそれぞれ酵素前駆体C1s−C1r−C1r−C1s四量体と混合し、結果として得られた複合体を、C1阻害物質の非存在下に37℃の温度で培養して、当該複合体の自己活性化能力を検査した。
予想どおり、C1qにC1阻害物質を添加した結果、全ての場合において活性化プロセスが中止され、1時間の培養後では、0.5〜5%の活性化値となった。
癌腫細胞上には、免疫系に対する3つの阻害領域が存在する。外来細胞の表面上で抗原−抗体反応により通常活性化されるC1qrs複合体は、C1不活性化物質によって、癌細胞の細胞膜上でC1qrs複合体がC1rsに変換されるのを阻害する。これにより、先天性免疫系においてC4がC4bへ転換できず、図4aに示されているように、癌細胞上で補体カスケードが生じるのが抑制される。
癌に対するC反応性蛋白質(CRP)による抑制反応に関して、当該反応は、C5転換酵素を抑制してC5からC5bへの活性化を妨害する、冠状動脈血管に心筋損傷が生じた際にCRPによって観察される反応に類似すると予想される。C5bの抑制は、C5b〜C9からの補体カスケードの発生を防止し、細胞の溶解又は死滅を防止する(図4aを参照)。
この抑制により、好中球Fc受容体との相互作用を介する他のCRP開始シグナルが全体的な抗炎症効果を有するようにする。従って、癌腫細胞に関連するCRPの主な生物学的機能は、心筋梗塞後の心筋損傷のアテローム発生や病因に関与するなど、心血管系におけるCRPの機能と同じ理由によると思われる(Volanakis JE、Mol Immunol.2001 Aug;38(2−3):189−97)。
(Dana Geneticの免疫阻害TRIADEキット)
Dana GeneticのTRIADEキットは、患者における癌疾患の顕著な兆候の前に、様々な癌型(例えば、癌腫)の早期発見を可能とする、費用対効果の高い方法として有益なアプローチであり得る。
従って、Dana Geneticは、独自のDana Geneticキットを、医師には将来の診断/モニタリングツールとして提供し、専門医には、癌の、特にヒト癌型の約80%を構成する癌腫の初期段階の予測因子として提供することを予定している。
(DanaGenetic診断/モニタリングキットにおける阻害蛋白質の選択の背景)
検査キットは、ELISA、免疫比濁法、比濁法などの実験室試験に用いられるものとして、「医師の診察」に用いられる迅速な免疫拡散法、視覚的凝集法のキットとして開発される予定である。
DanaGenetic診断/モニタリングキットは、先天性免疫系において同定された3種の免疫阻害成分に基づく「免疫阻害診断検査」へのアプローチとして主に考えられている(図4a参照)。成分は下記のようになる。
・C1不活性化物質
・C反応性蛋白質
・補体成分C4
下記の予想異常値は、図1に示されているように、癌患者に対する我々の以前の所見に基づく予備推定値である。
(正常値:C1IA 15〜40mg%、CRP 0〜10mg%、C4 12〜60mg%)
・癌腫、他の形態の癌、特定の肉腫、特定の芽球性白血病;C1IA増加、CRP増加、C4増加
・B細胞リンパ増殖性疾患、B細胞悪性疾患(B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、他のモノクローナルグロブリン血症、後天性血管浮腫(上記疾患のために生じることが多い);C1IA減少(<15mg%)、CRP増加(>10mg%)、C4減少(<12mg%)(Gompels MM、J Clin Pathol 2002;55:145−147)
・自己免疫障害、SLE、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病など;C1IA減少(<15mg%)、CRP増加(>10mg%)、C4減少(<12mg%)(Gompels MM、J Clin Pathol 2002;55:145−147)
・循環器浮腫I型・II型;C1IA減少(<15mg%)、CRP正常(0〜10mg)、C4減少(<12mg%)(Gompels MM、J Clin Pathol 2002;55:145−147)
(C1不活性化物質)
C1不活性化物質(C1阻害物質とも呼ばれる)は、血液や組織における古典的補体経路として唯一知られている生理学的抑制物質である。しかしながら、C1阻害物質は、活性化FXII(FXIIa)や血漿カリクレインの阻害による接触キニン系の主要な調節因子でもある。
血清C1不活性化物質のレベル:正常範囲は15〜40mg%
C1不活性化物質は、遺伝性血管浮腫HANE又はHAEに罹患している患者の治療に日常的に用いられている。HANE(HAE)症状を示す患者に投与されるC1不活性化物質の量は、体重1kg当たり約20単位の用量ならば発作の治療に有効であり、Berinert(血漿C1阻害物質)を使用すると、用量範囲をあまり変化させずに反復発作にも有効である。
モノクローナルC1阻害物質又は不活性化物質も、当該症状の治療に用いられる。
上記のように、リンパ増殖性疾患又は悪性リンパ性疾患と関連して二次血管浮腫が現れる場合、C1IAが欠損していることが判明した患者は、C1不活性化物質で適切且つ迅速に治療を受けなければならない。
(C反応性蛋白質)
C反応性蛋白質(CRP)は常にヒトに少量存在するが、特定の癌型を含む様々な疾患に罹患している患者において、特に最近の発見によると癌腫や転移性癌腫を有する患者において、血清中に急激に上昇する。
CRPは最近、補体系を含む「免疫阻害蛋白質」の一部であることが判明し、別の検査法により検出されたヒト癌腫細胞から最初に単離した2種の蛋白質のうちの1つであることが判明した。該検査法は、放射マンシーニ免疫拡散法の類型である(「二重マンシーニ免疫拡散検査法」と名付けられたRID法)(図5を参照)。
図5に示されているように、マンシーニ法を用いて開発された沈降環の寸法を測定することにより、他の「阻害」蛋白質(現在、CRPであることが知られている)の存在について検査を行った。
癌腫組織におけるCRPの存在は、最近、癌腫などの特定の癌に関する研究者にとって新たな注目の的となり、悪性癌の進行の程度に対応して増加することが判明している。
腎臓の治療に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤のスニチニブで患者を治療した研究で明らかであるように、転移性の淡明細胞型腎細胞癌(mCCRCC)に罹患している西側諸国の患者において、生存予測因子が同定されており、これは腎臓癌の寛解期に入った患者のCRP低下により示されている。これらの結果は、「西側諸国」で見出されるスニチニブによる治療への応答と、腫瘍症状との関連性を示唆している。
しかしながら、当該CRP予測は、日本での治療評価の際に、一次治療としてスニチニブを投与したmCCRCC患者における生存研究の予後評価手段としては使用できなかった(Kawai Y、Osawa T、Kobayashi K、Inoue R、Yamamoto Y、Matsumoto H、Nagao K、Hara T、Sakano S、Nagamori S、Matsuyama H、転移性の淡明細胞腎細胞癌に対する一次治療としてスニチニブを投与された日本人患者における生存予後因子、AsianPac J Cancer Prev.2015;16(14):5687−90)。
元来、CRPは、例えば、1930年にTillett他により発見された肺炎球菌のC多糖類と反応する感染症のように、急性炎症患者の血漿から観察される物質として定義された(Tillett WS及びFrancis T.J Exp Med.1930 Sep30;52(4):561−71)。これは、組織損傷又は炎症後の濃度の顕著な上昇のため「急性期反応物質」と呼ばれていた血漿蛋白質の1つである。CRPの場合、1000倍以上まで上昇する。CRPは、分子量21500の同一の5つサブユニットで構成される。CRPは肝臓で産生され、リンパ球で検出可能である。CRPは、サイトカインに反応する全身性マーカーとしてよく知られており、慢性B型肝炎(Shima M1、Nakao K、Kato Y、Nakata K、Ishii N、Nagataki S、慢性B型肝炎及び慢性C型肝炎におけるC反応性蛋白質の比較研究、Tohoku J ExpMed.1996年3月;178(3):287−97)や、HIV感染(NoursadeghiM1、MillerRF、HIV陽性患者におけるC反応性蛋白質測定値の臨床的価値、Int J STDAIDS.2005年6月;16(6):438−41)などのウイルス性疾患においても増加することが確認されている。
(C4)
補体成分C4は、補体系に関与する蛋白質である。C1qrs複合体が抗体−抗原反応と結合し、C1qrs複合体がC1rsに変換すると、変換したC1rsは、次にC4を活性化し、C4bはC3転換酵素を介して補体成分C2aと共にC3を活性化する。そして、補体カスケードはC9までの一連の経路を活性化する。図4bに参照されるように、脱阻害効果が除去されている。
成分C4bが補体カスケード過程中に細胞膜と結合すると同時に、成分C5はC5bに転換する。次いで、これらの成分は、C9を介して細胞膜上に順次結合し、細胞膜を貫通して細胞の溶解(細胞死)を引き起こす。C1不活性化物質により抑制され得るC1qrsによってC4が活性化されない場合、C1rsによるC4の活性化も妨害される。これは、C4bに活性化され得ないC4の増加をもたらす。C4は循環C4の増加によって間接的に同定される阻害成分となり、つまり血液中のC4が増加する。従って、自然免疫を阻害するC1不活性化物質に関して、C4は間接的に阻害される(図4aを参照)。
自己免疫障害では、補体因子C4は正常値よりも低いレベルの血清C4を示すことがよくある。全身性エリテマトーデス(SLE)では、補体C4が完全に欠損している可能性が高く、SLEにおける強力な遺伝的危険因子を示唆している。C4は、かなりの遺伝子コピー数(GCN)変異を示す2つの異なる遺伝子であるC4a及びC4bによりコードされる。本研究では、C4、C4a、C4bの「GCN」とSLEとの関連性を調査した(PereiraKM他、「低C4、C4A、C4B遺伝子のコピー数は成人発症性全身性エリテマトーデスより若年発症性全身性エリテマトーデスに対して強いリスク因子として機能する」、Rheumatology(Oxford)、2016年1月22日)。
(Dana Geneticの免疫阻害モニタリングの用途)
ブタ抗C1IA/CRPIgG抗体で治療した患者6名に関する初期の研究において、我々は、血清C1不活性化物質(C1IA)及び補体成分C4を測定し、ブタIgG「脱阻害」治療の効果をモニタリングした。
ブタINAをヒト癌患者に投与した後、下記のような効果が観察された:
(1)ウサギ抗ヒトC1IAで測定した「C1不活性化物質」(C1IA)の血清濃度の減少
(2)C4の血清濃度の減少
更に、腫瘍量の減少など、寛解期の症状が注目されている。しかしながら、C1IAとC4は、INAの投与前、投与中、及び投与後の疾患経過の重要且つ容易に決定可能な指標であり、更に、前述の通り、任意の癌型の治療の指標でもある。しかしながら、ブタINAの投与から数日後にIgMの有意な増加が現れたのは、投与したブタ蛋白質に対する患者の免疫化による可能性が最も高いため、INA注入治療を1回以上、或いは最高2回行うことはできなくなり、勿論ブタINAによる更なる治療も、抗ブタ抗体の存在により不可能となった。寛解期の更なる兆候として、癌に罹患している患者、特に細胞増殖抑制治療や放射線治療を受けている患者からしばしば見られる低量(低パーセンテージ)のTリンパ球は、INA治療の開始から数週間以内に正常値に上昇する。
本発明によるC1IA−CRPに対する特異的抗体の調製は、明確な癌の診断法を確立する可能性も有している。本発明によれば、当該診断法は、C4レベル検査は勿論のこと、特にヒト血清に対する実用的な目的のため、ヒト体液中にC1IA−CRPが存在しているか否かの確認に基づく。本発明によれば、免疫反応の結果が試料中のC1IAに対する応答と容易に区別できるという条件下で、該試料に抗ヒトC1IA−CRPとの免疫反応を起こして、試料におけるC1IA−C1Pの有無を確認する。これは、INA抗血清、並びに抗体や、抗体の免疫活性修飾体又はその誘導体を含有する他の物質が、非常に有用な診断物質であることを意味する。本発明の診断態様に関する更なる考察を以下に記載する。
(組換え抗C1IA、及び組換え抗CRP)
抗ヒトC1IAの力価、及び抗ヒトCRPの力価に応じて、ヒトC1IA及び/又はCRPに対するモノクローナル抗体又は組換え抗体を製造する場合、本発明によるヒト癌治療用のC1IAに対する混合モノクローナル、CRPに対する混合モノクローナルのモノクローナル精製組成物からなり、好ましくは、約2mlの等張食塩水液(或いは同等物、例えば等張グルコース)に100〜1000mgのIgGを溶解したIgG溶液が、癌細胞の標的を探し出して補体系を活性化する。当該組成物は実質的に、例えば、通常量の等張生理食塩水又はその等価物で希釈した静脈内注射用の注射剤として、凍結乾燥した、或いは溶液に入れた、2ml薬ビン中の抗C1IA及び抗CRPの混合物を持つキットとして供給してもよい。悪性脳腫瘍、例えば星状細胞腫グレードII、III、又は膠芽腫グレードIVの場合、髄腔内投与、くも膜下腔内投与、或いはオマヤカテーテルを介して抗体を脳腫瘍に投与しても良い。別の好ましい組成物は、再構成型の凍結乾燥ヒトIgG免疫グロブリンである。好ましい投与範囲は、1日〜1週間ごとの間隔で、患者の体重1kg当たり1日に約2〜15mgの免疫グロブリンを投与し、その後は、1日〜1週間ごとの間隔、或いはモニタリングした血清C1不活性化物質レベルの力価が15mg%未満とならないように1ヶ月間ごとの間隔で、体重1kg当たり約2〜10mg/kgを投与することである。血清におけるC1IAが15mg%未満、或いは最小量である場合は、血管新生浮腫の可能性を相殺するためにC1IAの静脈内注射によって調整することができる。C1IA(及びC4)は、例えば、組換え抗C1IA及びCRPの注射後に毎日など、頻繁にモニタリングしてもよい。
C1IA及びCRP抗血清又は抗体を用いた治療中、「本発明による免疫血清を用いた癌治療」の項に記載されているように、患者を慎重にモニタリングする。特に重要な測定パラメータはC1IA−CRP及びC4の血清レベルである。治療の成功により、C1IA−CRPは激減するが、C1IA血清レベルは、好ましくは15mg%未満であってはならない。血清中のC4レベルは、患者に生じる補体反応でC4を消費するため、通常の低値の範囲よりも低くすることができる。
抗C1IA及び抗CRP治療が施される間、細胞増殖抑制剤による免疫抑制効果のため、本発明によれば、細胞増殖抑制剤との同時治療は好ましくない。一方、細胞増殖抑制治療を適用する場合、患者は、好ましくは、例えば細胞増殖抑制治療の最後の2週間、細胞増殖抑制治療を中止した場合には1〜2ヶ月間継続してINAを用いて治療を受け、Tリンパ球及びBリンパ球の正常値の再確立を含み、消耗した免疫系を正常化しなければならない。しかしながら、選択的担体として抗ヒトC1IA−CRPと結合した細胞増殖抑制剤は、従来の細胞増殖抑制剤より遥かに少ない量で投与できるので、有用であると言える。
患者の免疫グロブリンレベルをモニタリングして調整するためには、IgG濃度が血清中のヒトIgG含有量やブタIgG含有量の両方を反映する以上、特にIgGを連続的に評価しなければならない。上述したモニタリング及び調整の目的は、体液及び癌細胞膜の両方における免疫防御阻害及びマスキング蛋白質、特にC1IA−CRPを制御及び中和するのに十分な量のINA抗血清を確実に投与することである。従って、抗C1IA及び抗CRP抗血清の必要量は、従来の方法、X線、CTスキャン、MRスキャン、超音波などで測定された腫瘍の総質量と、癌細胞の活性(C1IA−CRP産生能)の両方に依存する。
ブタ抗C1IA抗体及び抗CRP抗体のみをINAの形態で使用していた70年代から今まで得た初期の治療経験は、ヒト又はヒト化モノクローナル、或いは組換え抗ヒトC1IA及び抗CRPが腫瘍の更なる進行を防止でき、数週間から数ヵ月に亘って投与用量を数回に分けて投与すると、腫瘍に対する軽度の応答、部分的な応答、或いは主な反応さえも誘導し得ることを示唆している。しかしながら、ある程度の期間、例えば数週間以内や数ヶ月以内に応答が得られない場合は、本発明で同定された抗体でなく、既に検証済みのモノクローナル抗体など、患者に適する他の治療モジュールを探す必要があり、若しくは化学療法の通常治療が必要となるかも知れない。
INA血清中の抗C1IA−CRPが体内で癌細胞と結合できるという事実を実証する証拠が得られている。:
静脈内投与された99テクノチウムなどのトレーサと結合した抗C1IA(及び/又は抗CRP)を用いた観察は、患者に注射された同位体標識抗体が癌転移が追跡できることも示し得る。
例えば、好ましくは非常に短い半減期(4時間)を有するテクネチウムを用いた同位元素のマーキングの後、体内診断用の抗血清又は免疫グロブリン産生物を調製するために好ましくはC1IAを含まないワクチンを使用する。
本発明による診断キットの好ましい実施形態を、下記の「診断キット」に記載する。本発明による診断キットは、抗ヒトC1IA−CRP物質を含み、免疫検査法におけるヒトC1IA−CRPとの反応は、ヒトC1IAとの反応と容易に区別される。
(信頼性)
血清C1IA及び血清CRPの両方の存在を検査し、血清C4レベルを、組換えヒト抗ヒトC1IAを用いる静脈内治療中に1週間に1〜2回モニタリングし、患者血清のCRP及びC4を毎月追跡して、癌(癌腫)又はC1IAの存在を確認する初期検査用のTRIADEキットと呼ばれるモニタリングキットとして使用することが好ましい。血清C1IA、血清CRP、及び血清C4は、公知の方法では確認や検証が不可能な癌の初期の段階で、本発明による検査で検出され得る。これにより、一見で「偽陽性」と見なされる試験結果を説明することができる。経験によると、約200名の献血者から採取した血清試料のうち、2%の試料が「偽陽性」を示す。血清C1IA、及び血清CRPは上昇しているが血清C4が正常範囲内であれば、偽陽性率は2%から1%未満に低下することとなる。より具体的には、これまで免疫拡散診断キットを用いて行った血清検査から培った経験は、以下の通りである。:
下記の癌型は、一貫してC1−IAC陽性を示すことが判明している。:乳癌、子宮癌、肺癌(気管支原性癌)、膵臓癌、胃癌、肝癌(原発性肝癌)、大腸癌(結腸直腸癌)、腎癌、骨盤癌(腎盂癌)、膀胱癌、肉腫(少数の骨肉腫を調査したが、陰性反応を示した)である。精巣奇形腫は強いC1IA−CRP陽性を示す。黒色腫の場合、全ての黒色腫がC1IA−CRP陽性であるとは限らない。
Hodgkinsリンパ腫の症例の一部を調査した結果、C1IA−CRP陽性であった。乳児における新生物の場合、腎芽細胞腫はC1IA−CRP陽性であった。神経芽細胞腫はC1IA−CRP陽性であった。悪性脳腫瘍由来の細胞培養物がC1IA陽性であることが判明しているので、中枢神経系内の腫瘍、例えば星状細胞腫や膠芽腫を検査すべきである(Osther K、Hojgaard K、Dybkjaer E、「ヒト悪性脳腫瘍から採取した培養細胞上の補体不活性化物質の実証」、Acta Neurol.Scandinav、1974、50:681−689)。血液やリンパ系における悪性疾患の場合、急性骨髄芽球性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)は、寛解期以外はC1IA−CRP陽性であることが判明している。骨髄腫症もC1IA−CRP陽性である。急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び慢性リンパ芽球性白血病の場合、確定診断済み全症例の5〜20%は、C1IA−CRP陽性であった。今まで調査してきたALL症例のほとんどは寛解期の症例であるが、調査したALLのうち、一部の活動期の症例は明らかにC1IA−CRP陽性であったことに留意されたい。急性リンパ性白血病の場合、症例1件がC1IA−CRP陰性であることが判明した。リンパ腫はC1IAの有意な増加を示さなかった。
本発明による診断検査の重要な特徴の1つは、治療を試みながら患者を有意にモニタリングできることである。腫瘍が治療により腫瘍細胞量の退縮を見せていない場合、一部の疾患に対する細胞増殖抑制治療は、患者におけるC1IA−CRP力価を減少させることができないことが経験によって示されている。
言い換えれば、本発明による検査が、治療中に血清C1IA−CRPが減少しないことを示す場合、これは治療が有効でないことの指標となる。上記の本発明に関する説明に基づいて、C1−IAC陽性である癌型や段階は、本発明による抗C1IA−CRP抗血清を用いた成功的治療に感受性の強いものであると推定すべきであると言うこともできる。
(血清C1IA上昇、CRP上昇、C4、炎症性自己免疫疾患及び肝炎の減少)
興味深いことに、LED(播種性紅斑性狼瘡)のような「自己免疫」疾患、及びB型肝炎などの肝炎はC1IA−CRP陽性反応を示すが、血清補体C4レベルが有意に低下する。低レベルのC4は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、様々な自己免疫障害、B型肝炎、血管コラーゲン疾患において実際に現れる。脳血栓症、脳梗塞から多発性硬化症などの疾患に至るまで、多種多様の疾患を有する神経学科の患者約200名から採取した血清を調査したところ、献血者群の結果と同じように、約2%の陽性が得られた。献血者群は、200名の献血者で構成され、前述の通り、2%が陽性反応を見せた。C1IA−CRP陽性血清試料と、陽性であるか否か疑わしい血清試料10個を探し出した。これらのC1IA−CRP陽性献血者の血清を数週間後に再検査したところ、前は陽性を示した献血者の血清の一部が、C1IA−CRP陰性であることが判明した。喘息、湿疹から蕁麻疹様皮疹(クインケ型を除く)に至る様々な種類のアレルギー性疾患を有する約50人の患者から採取した血清は、C1IA−CRP陰性であった。
(760’特許より引用)
(C1IA、及びCRP被覆癌細胞)
(技術的背景)
2016年2月5日を優先日とする米国仮特許出願第62/388720号、更に2016年9月7日を優先日とする米国仮特許出願第62/495203号に記載されているように、最近のデータと組み合わせると、例えば癌細胞に存在する抗ヒト抗C1阻害物質(抗C1IA)で癌、例えば癌腫細胞、悪性脳腫瘍(ラットなどの哺乳類における悪性神経膠腫細胞やヒト悪性神経膠腫、膠芽腫又は多形性膠芽腫とも呼ばれる)を治療し、補体カスケードを誘発して先天性免疫系を活性化させる、C1IAに対してノイラミニダーゼ効果を有する化合物のように、C1阻害物質(C1IA)の抑制効果の中和や、該蛋白質の抑制効果を妨害又は中和する他の因子、例えばアプロチニンなどにより、先天性免疫系の脱阻害治療を行った場合に生じることの概念を明確に図示している。
また、本発明は、別の「阻害」マスキング蛋白質、或いは補体干渉蛋白質でありながら、時には補体と共局在する、C反応性蛋白質(CRP)と呼ばれるものに関しても記載している。例えばラットNS−1神経膠腫やヒト神経膠腫/膠芽腫などの両細胞に対する我々の知見によると、癌細胞上のCRP中和は、脱阻害治療において重要な要素である。これらの癌細胞は、本仮特許出願の本明細書に記載されている実施例が実証しているように、有意なCRP外被を持つ。CRP外被を有する癌細胞の治療は、CRPに対する抗ヒト抗体や、癌細胞上のCRPを除去できるペプチド、ナノペプチド又は化学物質を用いている本発明によると、まず、抗CRP抗体サンドイッチ法を用いて有意な外被を示すことにより、同定され記録となったC反応性蛋白質又はCRPと呼ばれる追加蛋白質(五量体蛋白質)が、C1IA外被が発見されたように、同じ悪性癌細胞、例えばラット神経膠腫細胞やヒト膠芽腫細胞に外被を持つことを明らかにする。
当該治療では、悪性ラット神経膠腫NS1及びPG2のような蛋白質の免疫染色、並びに本発明の実施例に記載されているヒト悪性神経膠腫/膠芽腫又は膠芽腫のような癌細胞におけるこれら蛋白質の免疫染色により同定された特定の癌細胞から外被を除去する。つまり、これらの蛋白質は明らかにラット神経膠腫細胞及びヒト膠芽腫の両方を被覆するものであり、特定の癌腫細胞に存在するものとして既に記載されている。
(発明の簡単な説明)
本発明は、診断用キットと、癌腫、脳腫瘍及びC1IAとCRPを検出可能な他の悪性固形癌などのヒト癌を治療するキットとの組み合わせ、C1IA及びCRPの単離や特性評価のプロセス、CRPの存在を実証する原理に基づく診断検査法及び物質、C1IA及びCRPに対する特異性を持つ抗体及び抗血清、当該抗体及び該抗体を含む組成物の調製、マトリックス固定化抗体、例えばC1IA及びCRPに対する特異性を持つモノクローナル及び/又は組換え抗血清又は抗体を用いるヒト癌の治療法に関する。
本発明の重要な態様は、ヒト癌疾患に関連し、癌細胞の膜上に存在する蛋白質、特にC1IA−CRPの阻害やマスキングに対して特異的に指向する抗体の使用の原理に基づく。本発明によれば、当該原理は、癌の体内治療、及び癌患者血清の体外治療に用いられる。
C1IA−CRPは、癌患者の体液(血清など)やヒト悪性癌細胞、細胞培養物から単離したヒト癌関連蛋白質である。細胞培養物の培養及び継代サイクルを繰り返して行い、C1IA及びCRPを培養培地から単離し、癌細胞自体がC1IA及びCRPを産生できることが明らかとなった。
C1IA−CRPは、ヒトを含む様々な種の体液から探し出せるα2ノイラミノ糖蛋白質であるヒト補体成分C1不活性化物質(「C1エステラーゼ抑制物質」ともいう)(Pensky他、J.Biol.Chem.、236、1674、1961、Ratnoff他、J.Exp.Med.129.315、Pensky他、Science 163、698、1969、Nagaki他、Int.Arch.Allergy46、935、1974)の性質と類似する生物学的性質を有するが、ヒト補体成分C1の不活性化物質とは蛋白質化学的に同一ではないことが判明している。
下記では、ヒト補体成分C1不活性化物質(C1エステラーゼ抑制物質)を「C1IA」と呼ぶものとする。「C1不活性化物質」は、様々な文脈においてC1IA及びCRPからなる群を指定する用語となる。
C1IA−CRPは、C4及びC2の初期ヒト補体成分C1活性化に対する抑制効果(つまり、C1エステラーゼ加水分解効果の抑制)、プラスミンの不活性化、血漿の凝固時間に対する影響の欠損(つまり、当該欠損はC1IAに共通するものであり、排除できないことが判明している。CRPにも共通する可能性がある)を含む、C1IAの性質と類似する生物学的性質を有する。本発明が基づく原理によると、上述したC1IA−CRPの抑制作用は、ヒト免疫系による破壊に対する癌細胞の防御において重要な役割を果たすと考えられている。
文献によると、C1IA様蛋白質はヒト癌細胞の膜上に存在する(例えば、Osther,K.,Hojgaard,K.,及びDybkjaer,E.,Acta neurol.Scand,1974 50,681,Osther,K.,the Lancet,Mar.2,1974,p.359,Osther,K.,Linnemann,R.,Acta path.microbiol.scand.1973,81,p.365)。
本発明によれば、C1IAはヒト癌に存在し、上記のように、C1IA−CRPと呼ばれる新規のC1IAである判明している。重要な新開発は、これらの知見に基づく。
(特定の癌型に対する抗C1IA及び抗CRP治療)
哺乳類(ヒトを含む)における癌細胞の治療について、研究用及び治療用の生体高分子工学は、本発明の不可欠な部分の1つである。ファージディスプレイ技術、広範囲な抗体遺伝子工学、抗体親和性成熟/ヒト化サービスを用いたヒト抗体又はヒト化抗体の産生に関しては、CreativeBiolabsを参照されたい(Creative Biolabs、USA、45−1 RamseyRoad、Shirley、NY11967、Europe、Ringstrasse4、64401Gross−Bieberau、Germany)。当該会社は、scFv/Fab、並びにIgG抗体の調製分野でよく知られている。更に同社は、scFv、二重特異性抗体、タンデムscFv、ミニ抗体、Fabの細菌生産、並びに小型、キメラIgG及びIgGの哺乳類細胞発現を含む大規模抗体製造に関するOEMサービスを提供するが、ハイブリドーマ技術を応用したマウスやラットのモノクローナル抗体の産生を含む、抗体生産業では珍しいことではない。
下記の実施例において、本発明を更に詳しく説明する。但し本発明が下記の実施例に限定される訳ではない。
(実施例)
(実施例1:C1IA−CRPの調整)
(培養に用いられるヒト癌細胞の取得)
ヒト癌細胞は、胸膜及び/又は腹水に転移した癌に罹患している患者由来の胸水又は腹水から得ることができる。胸水/腹水を滅菌条件下で取り扱い、感染性の胸水/腹水は除外する。室温、1000rpmで10分間遠心分離にかけ、流体から細胞を分離した。沈殿物は細胞を含む。上清を捨て、後に免疫原的に有用な蛋白質を後述するように単離するために、−20℃で保存する。
或いは、手術により癌患者から除去した固形ヒト腫瘍、例えば、原発悪性脳腫瘍に罹患している患者の悪性脳腫瘍を別の供給源としてもよい。癌細胞は、トリプシン処理により、当該腫瘍から得ることができる。例えば、脳試料をEagle最小必須培地(MEM)で数回洗浄し、組織を1〜2mm立方体に切断し、更なる洗浄や遠心分離(例えば、900rpmで10分間)にかけた後、培地に再懸濁し、トリプシン溶液を添加してもよく、その後、例えば25℃で30分間培養を行い、15%ウシ血清を添加した最低限のEagleMEMを加えた細胞懸濁液を滅菌ガーゼを用いて濾過し、上記のように遠心分離にかけてよい。沈殿物は細胞を含み、上清は捨てられる。
上記の沈殿物をそれぞれ、下記の手順で個別に使用してもよいし、沈殿物をプールしてもよい。更に、別の供給源から得られたヒト癌細胞を同様に処理し、それ自体を用いてもよく、上記のようにして得られた癌細胞とともにプールしてもよい。
(癌細胞の培養)
上記のようにして得られた癌細胞を、グルタミン(約294mg/L)富栄養化且つ15%不活性化ウシ胎児血清を含有するEagleMEMを含む1000mlのRouxフラスコに外植し、CO2を添加していないインキュベーター中で培養する。並列検査培養物を得るために、約0.5mlの細胞懸濁液をLeighton管のスライド上に直接外植して、免疫蛍光細胞光度計により細胞膜上のC1IA−CRPの存在を検査する(Ostherら、Acta.path.microbiol.scand.B81、365、1973)。
検査培養物がC1IA−CRPの存在を示す場合、主培養物を産生培養物として使用する。培地を除去し、細胞構造物をPBS緩衝液(pH7.3)で洗浄し、グルタミン(約294mg/L)富栄養化だが他の混合物を含まないRPMI合成アミノ酸培地(Flow、スコットランド)を導入し、37℃で3日間培養する。その後、培地を滅菌条件下で採取し、室温で15分間1000rpmで遠心分離にかけた後、C1IA−CRPの単離が行われるまで上清を−20℃の密閉ビンに保存する。癌細胞培養物を上記のEagleMEM改変培地で更に培養し、3日間培養した後、培地を再びグルタミン富栄養化RPMI培地と交換し、これを再び3日間培養した後に採取し、後日の単離のため、上述したように処理して冷凍した。このようなEagleMEM改変培地及びRPMIグルタミン富栄養化培地による交互培養、並びに後者の採取は、癌細胞培養物がC1IA−CRPを産生できる限り行うものとする。成長が特に良好である(Rouxフラスコ1つ当たり、約2×105細胞を遥かに超える)場合、更なるRoux培養フラスコへの外植を行い、得られた新しい細胞培養物を上記と同様の方法で産生に使用する。当該手順を通して、培養細胞のC1IA−CRP生産性をLeighton管中の検査培養物によりモニタリングし、培地にペニシリン及びストレプトマイシンを使用前に適切な濃度で添加する。
(C1IA−CRPの単離)
上記のように癌細胞培養物から採取したRPMIグルタミン富栄養化培地を塩析して、、好ましくは飽和(NH4)2SO4を用いて40%飽和するまで0℃で撹拌しながら、夾雑蛋白質を沈降させる。そのように処理した培地を室温で15分間、4000rpmで遠心分離にかける。また、他の遠心分離法を用いてもよいが、上記の方が優れた結果が得られることが確認されている。沈殿物を捨て、得られた上清を4℃で約48時間蒸留水を数回変えながら透析し、その後、3500rpm、室温で15分間遠心分離にかける。また、冷却された遠心分離機を使用するなど、他の遠心分離手順を適用してもよい。特に、冷却された分取超遠心分離機を使用すれば、良好な精製が得られる。
(クロマトグラフィー法による精製)
透明な上清から得たC1IA−CRPの更なる後処理の第1段階は、カラムクロマトグラフィーによる吸着である。好ましい陰イオン交換樹脂は、Dowex2×8、メッシュ200〜400であるが、他のイオン交換物質を使用してもよい。イオン交換樹脂の前処理は、水浴中で2時間煮沸し、0.1M HClで5×2時間シフトさせ、その後pHが約7.3と安定するまでトリス緩衝液0.06M、pH7.3で撹拌しながら数回のシフトにより平衡化することである。また、異なるpH及びイオン強度を有する他のトリス緩衝液やリン酸緩衝液を使用してもよいが、上記の緩衝液が最適であることが判明している。
上記の透明な上清を、Dowex2×8陰イオン交換樹脂カラム(トリス緩衝液、pH7.3のフローを有するアダプタを備えたK50/100、流速100ml/時、室温)に導入する。C1IA−CRPの最良の収率は、カラム材料1500ml当たり160mlのRPMI培地を使用して得られる。カラムからの流出液は、580nmで流出液の光学濃度を記録する分光光度計(Isco分光光度計を使用)のフロースルーマイクロキュベットを通過し、フラクションコレクターの10ml画分として集められる。以降の画分では、ウサギ抗ヒトC1IA、ブタ抗ヒトC1IA及びCRP抗ヒト(吸着)C1IA−CRPを用いたロケット免疫電気泳動法により、分光光度計により光学密度ピークとして検出された溶出蛋白質をC1IA−CRPとして確認し、抗ヒト全血蛋白質血清をゲルに入れて用いたFreeman交差免疫電気泳動法、並びに上記の抗血清2種を用いたGrabar免疫電気泳動法により夾雑蛋白質を確認した。他の蛋白質の夾雑した形跡として、例えば、オロソムコイド、トランスフェリン、α2−HS糖蛋白質、インターα−トリプシン抑制剤、プレアルブミン、アルブミンの存在を適切に確認する。
C1IA−CRPの主要部分はイオン交換体に吸収される。流出液は、トリス緩衝液中のイオン交換体に繰り返し通過させ、残存部分を吸収させることができる。
夾雑蛋白質の大部分は、トリス緩衝液での溶出における最初の主要溶出ピークに現れる。この溶出の典型的な分光光度計グラフを図5に示す。ピーク出現後に適切な数の画分が続いた後、0.09M NaClまで直線的に濃度が上昇するようにNaClをカラムに添加する。上記の「適切な」画分数とは、第1ピーク以降に溶出された蛋白質と、分離物との双方を適切に確保できる画分の数である。塩濃度の段階的な増加を含む追加の他のモデルも使用することができるが、更なる利点は特にない。
C1IA−CRPは、約0.09M NaClの終点でイオン交換体から遊離され(図5の分光光度計グラフのマイナーピークにより示される)、C1IA−CRPを含有する画分をプールし、蒸留水に対して4℃で約24時間透析する。その後、透析した産生物を凍結乾燥する(真空を用いた凍結乾燥、並びに40℃での穏やかな外部加熱が適切な手順であることが判明した)。
凍結乾燥物を0.06Mトリス緩衝液(pH8.6)に再懸濁し、溶出液緩衝液としてトリス緩衝液(pH8.6)を用いてPharmacia K15/50カラムなどのSephadex(登録商標)G75 Superfineゲル濾過デキストランカラムに導入する。流速は、約10ml/時間が適合である。流出液を分光光度計でモニタリングし、上記のような免疫電気泳法により調べた。流出液の光学濃度に関する一般的な分光光度的記録を図6に示した。第1ピークはC1IA−CRPを表す。C1IA−CRPに富む画分を回収し、蒸留水(48時間)に対して徹底的に透析し、上記のように凍結乾燥する。下記では、該産生物を「C1IA−CRP(Sephadex(登録商標)G75 Superf)」又は「C1IA−CRP半精製物」と呼ぶものとする。免疫電気推定法によれば、当該産生物は純粋で、凝集していない。
別の精製手順では、Dowex2×8イオン交換体から得たC1IA−CRP含有画分の透析後凍結乾燥物を0.06Mトリス緩衝液、pH8.6中に再懸濁し、アダプタを装備したWhatman DE−52セルロース陰イオン交換体のカラム(例えばK25/60)に導入した。陰イオン交換体を、0Mから0.15M NaClまでの塩化ナトリウムの直線的濃度勾配で溶出する。上記の方法により確認されているように、最適な精製物が得られるまで、Whatmanイオン交換体を繰り返して通過させた。このようにして精製したC1IA−CRPは、免疫電気泳動法によって確認されるように、ある程度凝集している。図7を参照すること。
適切な宿主動物の初回ワクチン接種に適したワクチン中の免疫原性物質として使用するために、Whatmanイオン交換体からのC1IA−CRPに富む画分をSephadex(登録商標)G75 Superfineカラムからの画分とともにプールし、プールした画分を透析し、その後、上記のように凍結乾燥させた。下記では、この組み合わせ産生物を「C1IA−CRP凝集蛋白質+C1IA−CRPSephadex(登録商標)G75 Superf」と称する。当該産生物は、下記に記載されているように他の蛋白質との混合、及び/又は、最適な機能を有する特異的抗血清を与えるC1IAのみとの混合のために、再懸濁される用意ができている。
(実施例2:C1IA−CRPの特性評価)
(抗血清)
ウサギ抗ヒトC1IA(抗体含有量0.7mg/ml)、ウサギ抗ヒトC4(抗体含有量1.0mg/ml)、ウサギ抗ヒトC3(抗体含有量1.2mg/ml)、ウサギ抗ヒトC3活性化剤(抗体含有量0.5mg/ml)、ウサギ抗ヒトα2HS糖蛋白質(抗体含有量0.35mg/ml)、ウサギ抗ヒトインターαトリプトシン抑制剤(抗体含有量1.0mg/ml)、ウサギ抗ヒトオロソムコイド(抗体含有量0.9mg/ml)、ウサギ抗ヒトトランスフェリン(抗体含有量2.5mg/ml)、ウサギ抗ヒトアルブミン(抗体含有量1.1mg/ml)、ウサギ抗ヒト前アルブミン(抗体含有量0.25mg/ml)、ウサギ抗ヒトα1フェトプロテイン(0.2mg/ml)、ウサギ抗ヒトプラスミノゲン(抗体含有量0.25mg/ml)はBehringwerkeから入手した。ウサギ抗ヒトIgG(抗体含有量0.4mg/ml)、ウサギ抗ヒトIgM(抗体含有量0.4mg/ml)及びウサギ抗ヒト血清全体は、Dakopattsから入手した。
(実験手順)
(免疫電気泳動法)
抗体含有1%アガロース(1.5mm厚)中の定量電気泳動法を、20℃で18〜20時間、2.5V/cmで行った(Laurell CB、「抗体含有アガロースゲル中での電気泳動法による蛋白質の定量的推定」Ann.Biochem.15:45−52,1966)。Grabar&Scheidegger法に従って定性免疫電気泳動法を行った。抗原−抗体交差電気泳動法は、Freemanに従って行った(Clarke、HC&Freeman、「定量電気泳動法(ローレル免疫電気泳動法)」、pp.503−509、「生物学的流体のプロチド」Vol.14 Elsevier、Amsterdam、1966、Laurell、CB、「抗原−抗体間交差電気泳動法」Ann.Biochem.10:358−361,1965)。20℃で1.5時間、10V/cmのアガロース電気泳動法による初期分離を行った。電場を90度回転した後、20℃で18〜20時間、2.5V/cmの抗体含有アガロースゲルで電気泳動法を行った。
(免疫拡散法)
1%アガロースのオクタロニーゲル拡散法(Ouchterlony、O.Progr.Allergy、6:30、1962)を採用した。拡散は室温で3日間行った。
(タンデム交差免疫電気泳動法)
Kroll(Kroll、J.タンデム交差免疫電気泳動法、定量的免疫電気泳動マニュアル(Eds.Axelsen、NH、Kroll、J.、Weeke、B.)Universitetsforlaget、Oslo、1973、pp.57−59)の方法を適用した。原理は、10V/cmで1.5時間、アガロースゲルにおいて同一の分離で2つの抗原試料の初期電気泳動を行うものである。電場を90度回転した後、20℃で18〜20時間、2.5V/cmの抗体含有ゲルで電気泳動法を行った。
(C1IA−CRPの免疫学的性質)
(Grabar−Scheidegger免疫電気泳動法)
ウサギ抗ヒトC1IAに対するGrabar−Scheidegger免疫電気泳動では、C1IAからガルウィング沈殿物が生じるが、C1IA−CRPはガルウィング沈殿を示さない(米国特許第4,132,769号の図9参照)(「ガルウィング」については、Hirschfeld(1960)によって説明されている)。C1IA−CRP沈殿物は、米国特許第4132769号の図10に示されているように、乳酸カルシウムの存在下で免疫電気泳動を行うと、Grabar免疫電気泳動法でβ領域に広がる。
(ローレルロケット免疫電気泳動法)
ウサギ抗ヒトC1IAに対するローレルロケット免疫電気泳動法では、C1IAとC1IA−CRPの僅かな差異は、図7に示されているように、C1IA−CRPに対するロケットの形態が、C1IAより幾分鈍い形態で現れる。
(Krollのタンデム交差免疫電気泳動法)
ウサギ抗ヒトC1IAを使用し、タンデム交差免疫電気泳動法においてC1IAとC1IA−CRPの間に完全な同一性を見出した。米国特許第4132769号の図14を参照されたい。
(交差Freeman免疫電気泳動法)
ウサギ抗ヒト全血蛋白質血清を用いると、精製C1IAと精製C1IA−CRPとは、交差Freeman免疫電気泳動法において同じ沈殿物を与える(米国特許第4132769号の図11、12、14を参照されたい)。
ウサギ抗ヒトC1IA(米国特許第4132769号の図10を参照)に対するGrabar−Scheidegger免疫電気泳動法では、上記のようにノイラミニダーゼで処理したC1IA−CRPからは沈殿物が生じないことが分かった。
(オリゴ特異性抗血清に対するオクタロニー免疫拡散法)
オクタロニー免疫拡散法では、宿主動物がC1IA−CRPを含むワクチン、例えば「宿主動物のワクチン接種」の項に記載されたI型又はII型ワクチンを接種された、「Dansk Landrace」のブタから産生された抗血清に対する免疫拡散を行うか、或いは、有効な免疫原性量のC1IA−CRP及びC1IAを含有するワクチンを接種され、C1IA−CRPとC1IAとを区別できる他の動物から採取した抗血清に対する免疫拡散を行った場合、C1IA−CRPは、C1IAと区別可能な沈殿物を与える。例えば、癌患者からの血清は、互いに区別可能な2種の沈殿物を与えるが、健常ドナー(又は非悪性疾患に罹患している患者)からの血清は、C1IA沈殿物のみを与える。癌患者血清由来の沈殿物の1つは、癌患者血清由来のC1IA沈殿物に対応する。この種類の免疫拡散を図3に示す。2つの中心孔にオリゴ特異性抗血清を、円周孔に健常ドナー(DONOR)及び患者からの血清を導入した。各試料からの血清を2つの対向孔の各々に導入した。この場合、使用された抗血清は、I型ワクチンで接種されたブタから得られたものである(「宿主動物のワクチン接種」の項を参照)。
図3から、強い内部沈殿物が形成され、これはドナーや全患者にとって同一であることが分かる。これはC1IAの沈殿物である。しかしながら、患者3(癌と確定診断済み)の血清は、C1IA沈殿物と容易に区別できる他の沈殿物を与えた。これはC1IA−CRP沈殿物である。また、全ての血清試料は、同じく弱い外部沈殿物を生じさせた。これは、オロソムコイド沈殿物である。
C1IA−CRPによって形成された沈殿物がC1IA沈殿物と容易に区別できることは明らかである。図3に示す免疫拡散は、診断目的のために行われた実験であり、純粋なC1IAとC1IA−CRPとの混合物で類似の沈降パターンを示しているのは勿論、オクタロニー法は、オリゴ特異性抗血清が使用される場合、C1IAとC1IA−CRPとを区別する免疫学的同定や検定法の一例に過ぎないことを理解されたい(Laurell、Manciniなど)。
(C1IA−CRPの他の特性)
(ゲル濾過法によるC1IA−CRPの分子量の推定)
Sephadex(登録商標)G200ゲル濾過カラム(Pharmacia K25/50)を、トリス緩衝液、pH8.6で平衡化した。C1IA−CRP Sephadex G75Superf、ヘモグロビン(赤血球の溶血により調製・精製し、純度を確認した)、精製IgG(分子量130000〜150000)の溶液(クロマトグラフィーにより処理、免疫電気泳動により純度確認済み)をカラムに導入し、流出液を分光光度的にモニタリングし、ピークの同一性を免疫電気泳動法によって確認した。最初のピークはIgGからなり、完全に減少する前に、第2ピーク(C1IA−CRP)が現れ始めた。C1IA−CRPピークが過ぎた後、実質的に空の画分が多く認められ、その後にアルブミンである次のピークが現れた。アルブミンピークのほぼ直後に、ヘモグロビンピークが現れた。
分光光度計グラフに基づいて、C1IA−CRPの分子量は、アルブミンの分子量60000より高く、IgGの分子量より僅かに低くなければならない。IgGの分子量を130000〜150000より正確に表すことはできないので、同様の不確実性をC1IA−CRP分子量の推定にも適用し、C1IA−CRPピークの位置に基づいて110000〜130000と見なす。
(実施例3:C1IA−CRPの癌関係の実証)
非常に進行した癌腫に罹患した患者からの胸膜滲出液又は腹水滲出液を、癌細胞培養のための供給源として使用した。汚染された検体は除外した。Rouxフラスコ及びFalconプラストフラスコで成長させた細胞培養物を、クローン成長や拡散成長のために分配した。クローンの形態は、細胞及び核の多型、1つの大きい核小体又は複数の核小体、複数の核を有するより多くの細胞などである。多くの有糸分裂が見られた。有糸分裂のうちの一部は、非典型的であった。プラスチド及びガラスへの付着性は十分であった。
37個のヒト癌腫培養物のうち、27個に対して1〜4回の継代培養を行った。27個の培養物の継代培養の平均回数は、1.8回であった。これに基づいて細胞株を培養し、C1IA−CRPの産生のために2〜5ヶ月間使用した。10個の癌細胞培養物は継代培養されず、結果的に約2ヶ月間、C1IA−CRPの産生のために使用された。
無細胞C1IA−CRPを約1週間に1回採取し、15%不活性化ウシ胎仔血清を含むMEM培地及びRPMIアミノ酸培地に交互に放出させた。その結果、同じ細胞培養物から1ヶ月に4回採取できるようになった。総じて、235個のC1IA−CRPの単離が実施された。これらのうち、37件は無細胞胸水及び腹水から直接単離した。
101回の単離は、15%の不活性化ウシ胎仔血清を含むMEM培地から行い、97回の単離は、RPMI培地から行った。各癌腫細胞培養上でC1IA−CRPを2〜14回単離した。細胞培養当たり単離の平均回数は5.4回である。RPMI培地における成長期間中、細胞成長が抑制され、一方、不活性化ウシ胎仔血清を含むMEM培地では、細胞は体外で正常な成長サイクルを回復した。数回の細胞培養において、RPMI培地に再変更する前に細胞培養物をより十分に発達させることが必要であった。培養物中の細胞量は、Rouxフラスコあたり約2×105個の細胞で最適に保持した。細胞培養物について、個々の細胞型の発生を常に確認した。胸膜及び腹水由来の細胞型は、癌腫細胞、線維芽細胞、及び中皮細胞からなる。癌細胞がクローン成長していたフラスコでは、細胞のおおよその量を確立することは困難ではなかった。しかし、拡散成長細胞培養では、癌腫細胞のおおよその量を確立することはより困難であった。C1IA−CRPを産生する細胞の量は、idem細胞培養株から得られたC1IA−CRP被覆細胞の量と、細胞光度法によって検出された量とに関連していた。
合計37名の患者をドナーとして採用した。患者の年齢は33〜80歳の範囲であった。患者群は、女性34名と男性3名であった。37名の患者は、胸水及び腹水の除去のために病院に通っていた。全ての患者は、様々な原発部位の進行癌腫を有していた。全ての患者はは以前に1〜3回の放射線治療を受けていた。全ての患者はは、細胞増殖抑制剤及びコルチゾン又はプレドニゾンで治療を受けていた。患者のうちの25名が、コルチゾン又はプレドニゾンで治療を受けた期間中であった。
癌腫の初代細胞株のうち、平均51.3%の細胞が、細胞診で測定した抗C1IA−FITCによる特異的免疫蛍光を示した。癌腫細胞培養物の免疫蛍光測定の平均分布を図3に示す。40w.u.を下回る値は非特異的信号として定義する。
継代培養細胞株から得た細胞のうち平均58.4%が特異的免疫蛍光を示している。主に培養された癌腫細胞と、それに対応する継代培養細胞株とを比較すると、C1IA−CRP外被を有する細胞量が著しく変化している。
継代培養細胞株の一部において、C1IA−CRP被覆細胞の量は、それらの由来培養物に比べてより高い。
非標識抗C1IAで細胞培養物を予飽和させた後、抗C1IA−FITC及び中和抗C1IA−FITC(精製C1IA)との培養を行って対照群の特異的免疫蛍光を実施したところ、境界値を超える値はなかった。したがって、特異的な免疫蛍光を示す細胞は1つも見出されなかった。細胞光度法によって測定した対照細胞培養物(非悪性細胞)は、C1不活性化物質の外被が全く生じていなかった。細胞の測定値は全て40w.u.未満であった。対照細胞培養物の値は、免疫蛍光特異性対照値として大まかに分布している。対照細胞培養物は少なくとも63%の信頼性を示し、悪性細胞培養物は少なくとも90%の信頼性を示した。有意差は0.002未満である(フィッシャーの正確確率検定)。
15%不活性化ウシ胎児血清を含有する対照MEM培地及び対照RPMI培地(細胞培養には使用しない)をそれぞれ、Dowex溶出前後の免疫電気泳動にかけた。試験した培地はウサギからの抗ヒトC1IA抗血清に対する沈降線を示さなかった。検出された唯一の沈降線は、ウサギからの抗ヒトアルブミン抗血清に対して見出された。これらの対照実験は、細胞培養に使用される培地が、細胞培養に使用される前に抗C1IAと反応する蛋白質を含まないという事実を示す。
免疫電気泳動法に供された、非悪性細胞株から採取したMEM培地及びRPMI培地は、ウサギからの抗ヒトC1IA抗血清に対する沈降線を示さなかった。オクタロニー免疫拡散法を用いても、ウサギからの抗ヒトC1IA抗血清に対する沈降線は検出されなかった。
従って、免疫電気泳動法及び免疫拡散法を用いて検出する場合には、対照の非悪性細胞培養物からの培地中へのC1IAへの放出は検出されない。
(実施例4:癌患者の胸水/腹水からのC1IA、及びCRP/C1IAの精製)
胸膜及び/又は腹水への転移を伴う癌に罹患している患者からの胸水/腹水を上記の「C1IA−CRPの調製」の項に記載したように遠心分離にかけ、沈殿物を上記のように癌細胞培養物に外植する。−20℃で保存した上清(上記を参照)を室温で2時間自然に凝固させた後、冷蔵庫で一晩放置して自然凝固させた。上清を再び遠心分離にかけフィブリンを除去し、更なる精製が行われるまで−20℃で凍結させる。
このように処理した胸水/腹水2mlを、100℃に30分間予熱したDEAE Sephadex(登録商標)A50陰イオン交換体2.5gと混合し、その後室温に冷却する。この混合物を8℃で1時間撹拌する。その後、混合物をカラムに入れ、カラム底部から吸引しながら40mlの0.15M NaClで5回洗浄する。C1IA−CRP/C1IA蛋白質は、イオン交換体に吸着される。カラム中のイオン交換体物質を200mlの2M NaCl、0.01Mクエン酸三ナトリウム、pH7.0で洗浄する。
C1IA−CRP/C1IAを含有する後者の溶出液と、飽和(NH4)2SO4(pHをNaOHで7.0に調整)とを、1時間かけて8℃で50%飽和になるまで混合した。その後、遠心分離(室温、3000rpmで10分間)を行い、上清に(NH4)2SO4(上記と同様、pH7.0)を1時間かけて8℃で65%飽和になるまで添加した。再度、遠心分離(室温、3000rpmで10分間)を行い、C1IA−CRP/C1IAを含有する沈殿物を4〜6℃の蒸留水に対して一晩透析し、その後0.15M NaClに再溶解した。
当該溶液を、シェル凍結乾燥によって、又は「C1IA−CRPの調製」の項に記載されているように外部加熱により真空中で凍結乾燥することによって、凍結乾燥した。
(本明細書に記載の蛋白質、及び他の目的のために調製された組換え蛋白質におけるモノクローナル抗体及び組換え抗体の安定化)
モノクローナル抗体、並びに、C1不活性化物質、C反応性蛋白質(CRP)、及びC4に対する組換え抗体を安定化する目的で、非還元性二糖類のような非還元性糖成分を添加することができる。例えば、トレハロースのような非還元性二糖類、或いは、イソマルトのような糖−アルコールの組み合わせからなる二糖類である。更に、デキストランのような大型分子も、非還元性糖の組み合わせであるため、使用することができる。
(IgMとしてのモノクローナル抗C1IA、抗CRP、抗C4等のモノクローナル抗体)
IgG型モノクローナル抗体(例えば、IgG1、IgG3)の代わりに、C1IA、CRP及びC4に対するモノクローナル抗IgM抗体も、本発明の範囲に属する。例えば、IgM抗C1IA及びIgM抗CRP、必要に応じてIgM抗C4を混合するなどの混合物として使用することもできる。
これらのIgMの組み合わせならば、いずれも、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)又は別の標識方法で標識する凝集検査方法において使用することができる。Eldonカード(Eldon Biologicals A/S、Sandtoften10、DK−2820 Gentofte、Denmark)のような血液型判定に使用されるシステムを使用する場合、本発明の範囲内で、「Eldon」カードを被覆するのは、とりわけIgM抗C1IA、及び/又はIgM抗CRP、及び/又はIgM抗C4ポリクローナル又はモノクローナル抗体である。これらのIgM型モノクローナル抗体は、抗原とのポリ結合によって1種以上の抗原を架橋することが可能であり、従って、全血または血清中の凝集を検出するために、恐らくEldonカード(必要に応じてFITC励起光源も用いる)でも同定可能である。有意な凝集と有意でない凝集との間の境界値(評価によって)を評価できる可視の凝集境界値を見出すことは、小さな凝集を探し出すために顕微鏡を用いるものと同様であり、例えばFITC励起光を使用することになる。悪性癌の疑いがある、若しくはより同定し易い、例えば白血病の疑いがある患者から採取した血液試料ならば、既に細胞がC1IAなどで被覆されている可能性が高く、凝集を肉眼で容易に観察できるはずである。
(抗体産生に用いられる免疫原)
(I型)
C1IA−CRP凝集タンパク質+C1IA−CRPSephadex(登録商標)G75Superfの総量20mgを0.15M NaCl 1mlに溶解し、等量の完全フロイントアジュバントを含む油中水型エマルジョンにして、初期ワクチン接種として投与する。
ブースター用量として、20mgのC1IA−CRP凝集タンパク質+C1IA−CRP Sephadex(登録商標)G75 Superfを、20mgのC1IA−CRP/C1IA DEAE Sephadex(登録商標)A50+20mgのC1IA−CRP/C1IA、α2HS、Znα2、orosomと混合する。混合物を1mlの0.15MNaClに再懸濁させ、等量の完全フロイントアジュバントを含む油中水型エマルジョンにする。当該ブースターは、ブタ用の第1及び第2ブースター用量として適している。
(II型)
C1IA−CRP蛋白質+C1IA−CRP Sephadex(登録商標)G75 Superfを、診断を目的とするモノクローナル抗血清、並びに治療を目的とする組換え抗C1IA、組換え抗C反応性蛋白質(抗rec.CRP)を産生する形質細胞との融合のための調製に使用する産生動物のマウスに対して、初期ワクチン接種として投与する。
(抗C1IA及びCRPによる今後の治療)
C1IAに対するヒト化モノクローナル抗体、CRPに対するモノクローナル抗体、及び補体成分C4に対するモノクローナル抗体のみが使用される。
抗C1IA及び抗CRPを有する癌患者の治療には、混合ヒト又はヒト化モノクローナル抗体、並びに、好ましくは組換えヒト抗ヒトC1IA及び/又はCRPのみが使用される。
(実施例5:本発明による免疫血清を用いる癌治療)
下記に、ヒト癌の短期的な治療における、本発明による脱阻害血清を利用するアプローチを3つ概説する。下記に報告する治療に加えて、他の癌患者も治療を受け、寛解期、つまり腫瘍量の減少が確認されている。但し、本明細書で報告する治療は、治療効果の仕様をより完全に整えることができる最初のものである。
(ブタ免疫血清で治療を受けた患者に使用される免疫血清の脱阻害)
INA(免疫中和抗血清)脱阻害血清を、上記のようにブタから産生した。ブタ血清は、「宿主動物のワクチン接種」の項に記載されているように、全血清中のC1IA−CRPに対して2mg/mlの力価を有する抗体を含んでいた。これは、抗ヒト1gGとして推定する場合、ブタ全血清中の1gGの平均濃度は1200mg/100mlであるという意味になる。C1IA−CRPブタ血清に対する抗体力価は約3mg/mlであった。生理学的pHのリン酸ナトリウム緩衝液を用いて滅菌Sephadex(登録商標)G200カラムで血清を分画して、免疫グロブリンを含む画分に対して単離、透析、及び凍結乾燥を行った。治療開始の際に、凍結乾燥した蛋白質を等張食塩水に再懸濁した。精製ブタ抗C1IA/CRP脱阻害血清は、(抗ヒトIgGを用いたロケット免疫電気泳動法により)100〜1000mgIgG/mlを含むと推定された。
(INAによる免疫療法を受けている患者の定期検査)
(ECG、脈拍数、外部・内部温度制御による患者のモニタリング)
免疫グロブリン、補体成分C4及びC1不活性化物質(C1IA+C1IA−CRP)の血清濃度を、治療前、治療中、及び治療後に連続して評価した。両方ともBehringwerkeから入手した検査用血清であるウサギ抗ヒトC1IA(抗体含有量0.7mg/ml)及びウサギ抗ヒトC4(抗体含有量1.0mg/ml)を用いて、ロケット免疫電気泳動法(Laurell、CB、Analyt.Biochem、15,45(1966))により血清検査を行った。Dakopatts、Copenhagenから入手したウサギ抗ヒトIgG(抗体含有量0.4mg/ml)及びウサギ抗ヒトIgM(抗体含有量0.4mg/ml)も本検査に使用した。免疫グロブリン外被及び患者のリンパ球の分泌量を下記の方法に従って連続的に調べた。
患者から採取したクエン酸含有血液試料をIsopague−Ficoll勾配遠心分離し、続いてハンクス平衡塩溶液による洗浄にかけて、次いで洗浄の後に遠心分離にかける方法を繰り返して、リンパ球を単離する。得られたリンパ球プールを2つに分けた。一方は、Osther、K.and Dybkjaer、E.、Scand.J.Haemat、13、24(1974)に記載されているように、免疫グロブリン外被の存在について試験する。他方は、Trypure−PBS緩衝液を用いて、37℃で2分間トリプシン処理を施した。トリプシン作用は、15%の不活性化ウシ胎仔血清を含有するEagle MEM中で繰り返し洗浄することにより停止する。その後、免疫グロブリンの存在についてリンパ球を試験する。陰性であると判明した場合、リンパ球をハンクス平衡塩溶液に入れ、4℃で一晩培養する。その後、リンパ球を分離し、次いでFITC標識抗ヒト免疫グロブリンとともに培養する。FITC(フルオロセインイソチオシアネート)は、米国マサチューセッツ州コッキーズビルのBBL社製である。Fothergill、JE(「結合血清蛋白質の性質」、Nairn、R.C.(編)、Fluorescent Protein Tracing、pp.5、3rd ed.E.&S.Livingstone Ltd.、Edinburghand London(1969))の方法により、抗血清をFITCに結合させた。その直後、Osther、K.and Dybkjaer、E.(Scand.J.Haemat、13,24(1974))に記載されているように、リンパ球の免疫蛍光を細胞光度法により測定する。
Sandahl Christiansen、J他、及び、Osther K.Acta Pathol.Microbial.Scand.Sect.C84:313−318、1978、並びに、米国特許第4132769号に記載の患者に関する図面も参照のこと。
(治療の手順)
1:10に希釈したブタ抗C1IA/CRP脱阻害血清を用いた皮内試験を行い、反応があれば、それを記録した。患者には、患者の医原性ヒスタミン放出を避けるために抗ヒスタミン剤で前治療を施した。
生理食塩水で希釈したブタ抗C1IA/CRP脱阻害血清を静脈内投与した。滴下量及び総用量は、患者の状態に合わせた。
(結果)
血清C1IA及びC4レベルのモニタリングの使用の説明は、基本的に、化学療法、手術、及び「ブタ抗C1IA/CRP脱阻害IgGの単回投与」を施した、転移性細網肉腫を有する2.5歳の子供(男性)を例示する。
(患者6)(下記に記載の他の患者歴を参照)
脱阻害治療中のC1IA及びC4のモニタリングに関する初期の治療例は、睾丸及び骨髄の浸潤を伴う転移性且つ進行性の細網肉腫を有する2.5歳の小児を対象とする。
ブタIgGによる「単回投与」脱阻害治療を受ける4ヶ月前に、患者には1週に3.0mgのビンクリスチンを投与し、癌を部分的に寛解させた。
前記ビンクリスチン治療は、運動失調及び脳浮腫の発症のため、中止しなければならなかった。当該化学療法を中止した後、精巣及び骨髄の細網肉腫が再び急速に成長した。
次の4週間、右の精巣にある大きなオレンジ色の腫瘍は、手術を必要とするほどになった。外科医は、触知可能な腫瘍量を含む他の睾丸を除去しなかった。切除帯における細網肉腫、他の精巣における触知可能な腫瘍、及び骨転移を伴う患者の症状が生じたため、脱阻害の試みとして、500mgのブタ抗C1IA/CRPIgGを静脈内投与することが決定された。
患者には、ブタ抗C1IA/CRP精製IgG約500mgを1回のみ静脈注射した。有害反応は認められなかった。C1IAの血清濃度は、血清C1IAレベルが即時に90mg%のピークに達した後、85mg%から50mg%に減少した。C4レベルは60mg%から約20mg%に低下することが判明した(血液提供者に見られる正常標準範囲は15〜50mg%である)。我々は、これら2種の阻害蛋白質の当該減少を応答の指標として解釈した。
ブタ蛋白質に対する抗体により引き起こされる患者の血清IgMレベルの有意な増加のため、更なるブタIgG治療は試みることが出来なかった。
その後、患者に、用量を減らしたビンクリスチン(1.75mg)を毎週ごと4週間投与した。この間、患者は神経毒性症状、運動失調、及び麻痺を再発させた。ビンクリスチンを2週目と3週目に注射した後、C4レベルは、手術から約2.5〜3ヶ月後に100mg%近くまで次第に増加していき、化学療法による免疫反応の抑制として解釈される連続的な阻害を示した。
これらの症状のためビンクリスチン投与は中止となった。化学療法の中止から2〜3ヶ月後、神経学的症状は消失した。1回の手術及び脱阻害治療を経て、約3ヶ月後にC1不活性化物質の血清レベルは50mg%にとどまった。
骨髄の所見によると、その後の2〜3ヶ月間、肉腫浸潤の再発の徴候はなかった。
治療中止から3ヶ月後、患者を数回検査した。リンパ腫は再発しておらず、左睾丸にも腫瘍の徴候はなく、正常な大きさを保っていた。骨髄は、検査の結果、腫瘍細胞の徴候無しと判定された。スキャンからも再発の徴候は見られなかった。
(ブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRPIgGで治療を受けた患者5名に関する要約)
リンパ球IgG及びIgM蛍光を、米国特許第4132769号に記載されているように、これらの患者に対して測定した。
(患者1)
肺、肝臓及び骨の転移、並びに切除部癌腫の嚢胞性転移を伴う進行性且つ転移性の末期乳癌である55歳の女性患者に、ブタ蛋白質に対する皮膚検査が陰性であることを確認した後に、2gのブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRPIgGを静脈内注射によって投与した。2gのブタIgG(抗C1IA及び抗CRP)の静脈内注射の後、患者は、ブタIgGの投与の1時間〜1時間半後に、平均2〜3cmの腫瘍10〜12個を構成する尿細管に近い切除領域の周りの全領域において疼痛を感じ始めた。同時に、比較的大きな腫瘍転移の全領域が突然青色に変わり、周囲の皮膚の反応や赤みがないまま、より蒼白になっていく中、腫瘍はますます青みがかり、ついには暗い赤色に変わった。このような症状を見たことがなく、患者の肝臓転移を考慮し、コルチコステロイド注射により反応を止めることに決め、その後、即時に免疫反応を止めた。疼痛はなくなったが、腫瘍は青いままで数時間持続し、拒絶反応の証拠を示した。翌朝、覆っている癌は徐々に乾燥していき、実際に剥離して明確な境界区域を残した。約2日後、すべての腫瘍が乾燥し、病変の底部が瘢痕のような正常な色の繊維質で治癒した。色変化の時に各腫瘍への血液供給が中止されたと思われる。当該腫瘍の拒絶は、補体カスケードの結果として現れる即時反応として解釈された。この患者に対しては、血清C1不活性化物質又はC4について検査を行わなかった。
(患者2号)
乳癌由来の播種性転移に罹患している53歳の女性患者で、椎骨内の溶骨性転移、骨髄への癌腫転移と、切除部の嚢胞性転移が確認されている。手術後、患者は、両側の上・内・腋窩リンパ節への放射線治療、腰椎に対する緩和照射治療を受けていた。
転移性癌の急速な進行のため、ブタ抗C1不活性化物質/CRPIgGで最初に皮膚検査での陰性を確認した後、1gの総用量で患者に静脈内投与で注入した。直後の副作用は体温の上昇のみであり、数時間後には消失した。ブタIgG投与から1週間後、患者に対して、ビンクリスチン(総用量1.15mg)、5−フルオロウラシル(総用量600mg)、メトトレキセート(総用量45mg)、シクロホスファミド(総用量150mg)、プレドニゾン(総用量550mg)を含む細胞増殖抑制治療を2サイクル(1週間おき)行った。最初のブタIgG投与から27日後、皮膚検査の陰性確認を行って、2回目と3回目の静脈内投与を7日の間隔で行った(2サイクルの総用量はブタIgG 2g)。
患者は、ブタIgGを3回目に投与した後、40.4℃の高熱を出したが、アスピリンの投与後、数時間後に正常範囲となった。最後のブタIgG投与から1ヶ月後、患者に2ヶ月間、総計5.0mgのビンクリスチン、5−フルオロウラシル(1355mg)、メトトレキサート(100mg)を投与し、シクロホスファミド70mg毎日経口投与した。
患者の癌腫症状に関して、患者の尿酸は非常に高いレベルまで増加し、15日後(最初の細胞増殖抑制治療サイクルから8日後)に、皮膚の嚢胞性転移が平坦となり、角質の瘢痕に変わった。3.5ヵ月後、椎骨内の溶骨性転移が、骨硬化性変化に置き換わった。1種の骨髄試料は、現在、正常芽球髄を示し、3.5ヶ月後に採取された別の骨髄は、リンパ球及び結合組織に囲まれた腫瘍細胞の小さな島、及び正常芽球髄を示した。
ブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRPを用いた最初の投与後、最初の細胞増殖抑制治療の時点(ブタIgG投与から1週間後)で血清C1IA及びC4が60〜40mg%に減少した。細胞増殖抑制治療の後、C4は増加し、C1不活性化物質は約65mg%で変化しなかった。2回目及び3回目のブタIgG治療の間、ブタIgGの2回目及び3回目の投与の際に、C1IAレベルは即時に85%のピークレベルを記録した後、約40〜45mg%まで減少し、C4は、2回目の投与と3回目の投与との間に、5mg%まで減少した。C1不活性化物質の濃度は、その後徐々に低下し、最初のブタIgG治療から3.5ヶ月後は、30mg%まで落ちた。次の化学療法サイクルの後、C4は約70mg%まで次第に増加した。併用化学療法とブタIgG治療を行う間、患者の血清IgMは有意に増加しなかった。
(患者3)
黒色腫に罹患している41歳の男性で、高度に進行した播種性の皮下及び多臓器転移を有する。患者は、DTIC(総用量660mg)、CCNU(総用量20mg)、Hydrea(総用量5000mg)で治療を受けていたが、癌には効果はなく、心臓毒性、造血毒性、肝臓毒性の徴候が現れたため、中止せざるを得なかった。1gのブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRPを、1週ごとのサイクルにて投与した。このサイクルは、1週間の間隔を置いて行った(総用量は2g)。体温は41.6℃まで上昇した。2回目のブタIgG投与の際に、患者が脳転移を発症し始めたので、それ以上のブタIgG治療は行われなかった。
臨床的に、細胞増殖抑制治療の期間中、転移は急速に進行した。転移の進行停止の徴候がブタIgG治療の2週間後に認められたが、下記に記載するように、患者が脳転移を発症したので、それ以上の治療はできなかった。患者は最後のブタIgG治療の6週間後、寛解の徴候なく死亡した。
1週目及び2週目のブタ抗ヒトC1IA/CRPIgG投与の間、血清C1不活性化物質は約60mg%から90mg%まで有意な増加ピークを見せ、数日後、50mg%まで減少した。脳腫瘍転移の検出時に、血清C1IAは減少し、4週間後に患者が死亡する前には、45mg%で留まった。C4は、ブタIgG治療の間にすぐに減少し、その後、C4がわずかに増加し、最終段階で約50mg%に変動した。最初のブタIgG投与の後、恐らくはブタIgG投与によって、患者の血清IgMレベルはわずかな増加を示した。重度の化学療法のため、ブタIgGの効果を明確に検出することができなかった。
(患者4)
肺転移を伴う腎癌に罹患している51歳の男性患者である。ブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRP治療の開始時に、患者は徐々に腫瘍を増殖させていた。ブタIgGによる皮膚検査は陰性であった。ブタ抗ヒトC1IA/CRP静脈内投与については、最初の5日間、1日当たり200mlの生理食塩水中に1gのブタIgGを入れて投与し、その後0.5gのブタIgG静脈内投与を4週間毎日行って肺転移の進行を抑制した。治療から4ヶ月間、腫瘍転移に軽度の退行が認められたが、肺転移の測定は困難であった。患者は、2週間の断続的休止(休日)を置いたにも拘らず、ブタIgG蛋白質に対して免疫化されなかった。最後のブタ抗ヒトC1IA/CRP治療から1ヶ月半の後、腫瘍増殖は観察されなかった。ローレル免疫電気泳動装置を使用することができなかったので、代わりに二重マンシーニ免疫拡散検査を行った。ブタIgG治療の開始時、患者の血清は有意な寸法のCRP環を示していたが、ブタ抗ヒトC1IA/CRP治療の終了から1.5ヶ月後の血清試料について同じ検査を行ったところ、最初の検査と比べて、境界値として陽性のCRP環となっていた。その後、患者を化学療法治療に移した。
(患者5)
転移性精巣奇形腫に罹患している19歳の男性であり、数週間アドリアマイシン治療を受けていたが、この治療は、肝臓及び心臓に影響を及ぼす副作用のため、中止せざるを得なかった。患者に対して、1日目には1gのブタIgGを静脈内注入し、翌日からは1日当たり0.5gのブタIgGで治療する5日サイクルのブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRP治療を、約2週間続けた。患者の血清IgMは、最後のブタIgG注入から約2週間後に増加し始めた。その後、患者は新規化学療法のスケジュールを変更する予定であり、且つブタ蛋白質に対する抗体が発現したため、ブタIgGによる治療は、停止しなければならなかった。
治療の開始前に、患者は、肺及び縦隔に大きな転移を発症し、末期癌に近いと思われた。ブタ抗C1IA/CRP治療の期間中、肺転移は2.5ヶ月間は安定しているようであったが、患者が治療を受けなかった2.5ヶ月後は、肺転移が再び進行し始めた。その後、患者はアドリアマイシンによる化学療法を開始したが、転移は進行し続け、癌は肝臓に広がった。患者は、一ヶ月後には、アドリアマイシンに反応を示さなくなった。患者は悪液質に変わり、その後、末期癌との診断を受けた。
前述の通り、当時、我々はローレル免疫電気泳動装置を使用できなかったため、C1不活性化物質及びC4の測定は行わなかった。その代わり、二重マンシーニ免疫拡散(図5の二重マンシーニを参照)を用いて患者を検査した。
二重マンシーニ免疫拡散法によれば、ブタ抗ヒトC1IA/CRPによる治療前の患者の血清は、非常に有意な寸法のCRP環を示していた。しかしながら、治療の後、CRP環の寸法は減少した。沈降環の測定は行われなかった。患者が化学療法(アドリアマイシン)を再開した数日後、化学療法期間中に新たな血清試料を採取したところ、1回目のブタ抗C1IA/CRP治療の前よりも大きなCRP環を示したが、測定は行われなかった。
(結論)
化学療法、外科療法、及び癌免疫脱阻害療法を組み合わせた癌治療を受けている癌患者に対する血清C1IA及び血清C4のモニタリング結果は、患者の追跡調査を行っていた数ヶ月間の癌の進行や変化に検査結果を結び付けると、非常に有用な指標になる。
癌腫細胞外植片から単離された免疫原はC1IAの変異体2種(初期は、患者由来の癌腫からのクローン化外植片から採取された2種の蛋白質をそのように解釈していた)を実際には含まないことが判明したが、その後、2種の蛋白質は、別途のものであり、C1IAとC反応性蛋白質(CRP)との組み合わせであることが分かった。
上述した患者6名(子供を含む。患者6を参照)の治療に用いられたブタIgG抗体は、図5の二重マンシーニ検査に示されているように、抗C1IA/CRPであった。
従って、C1IA及びCRPは、本発明者らの考えでは、ブタ用精製免疫原の開発に使用される癌腫外植片と密接に関連していなければならない。
ヒト組換えIgG抗ヒトC1IA/CRPは、トランスフェクトされたヒト細胞(例えば、HEK293サブタイプ細胞株)中のIgG1及びIgG3に基づいて開発され、癌患者の治療において臨床使用のために製剤化されているものである。我々の目的は、他の治療が効かない進行性癌及び/又は転移を有する患者において、予備研究、及び/又は、第I相又は第I相/第II相臨床試験を開始することである。
ヒト組換え抗ヒトC1不活性化物質/CRPIgG(IgG1及びIgG3のいずれか)は、閉鎖系の「Waveバイオリアクターシステム」で細胞を培養し、IgG抗体でトランスフェクトされたヒト細胞において、組換えIgG1及び/又はIgG3を用いて特許取得済みの方法論により産生され、続いて、認可を受けたクラス3のクリーンルーム研究室で精製され、厳格な品質管理及び検証の下、凍結乾燥IgG製剤として包装されたものである。
当該製品は、前述の通り、安全性検査及び毒性検査を受けており、C1不活性化物質/CRPに対する特異性を有する精製組換えヒトIgGを構成するため、この類のヒトIgGに対する抗体を製造せずとも、当該製品は許容されると思われる。更に、精製ブタ抗ヒトC1不活性化物質/CRPIgGの1〜3回の静脈内投与を含む前回の予備研究は、副作用及び有害反応を引き起こさなかった。しかしながら、ブタIgG治療の後、IgMレベルが上昇し、それ以上の治療ができなくなった。
ヒト組換え抗C1IA/CRP「脱阻害」抗体は、当該治療から患者が利益を得られる限り、投与することができる。Dana Geneticの「免疫阻害診断検査キット」は、腫瘍応答に関するC1IA、C4、及びCRPレベルのモニタリングに非常に有用である。
脳腫瘍の脱阻害治療アプローチは、悪性の原発性及び続発性脳腫瘍に対するC1不活性化物質の検出に基づく。
脳腫瘍患者の変化の診断が、血清で使用するDana Geneticの検査キットに反映されているかは、まだ知られていない。
脳腫瘍の悪性度の診断に関する研究は、Kurt Osther他によって行われた。デンマークの神経外科から得られた生検から外植したC1不活性化物質で被覆された悪性細胞培養物、及び特定の継代培養物が、良性腫瘍、並びに悪性の原発性及び続発性脳腫瘍を含む様々な腫瘍を検査できることが判明した。細胞培養物及び継代培養物の検査は、ウサギポリクローナル抗ヒトC1不活性化因子−FITC(フルオレセイン結合抗体)の使用に基づく。培養、或いは継代培養した脳生検標本からのマイクロスライド上に播種された細胞層の単一の細胞に対して、免疫蛍光測定用に装備されたLeitz MPV2を用いて測定を行った。検査はまた、細胞上のC1IA外被の特異性の適切な制御を含む(Osther K、Hoejgaard K、Dybkjaer E、Acta Neurol.Scand.(1974)50:681−689)。当該細胞のC1IA外被を表す免疫蛍光には、明らかに再現性がある。
Kernohan(Zulch K、Atlas of Gross Neurosurgical Pathology、1949年からのKernohan分類、1952年、pp32‐33(著者及び編集者Klaus Zulch)Springer Verlag Berlin Heidelberg GmbH 1975)後の不明確な分類による原発性悪性脳腫瘍、続発性悪性脳腫瘍転移、及び良性原発性脳腫瘍由来の細胞培養物を研究した。
8つの星状細胞腫グレードII〜IVのうち7つ、そして1つの髄膜腫は、組織学的診断によりC1IA被覆脳細胞の存在を示した。2つの星状細胞腫(Kernohanグレードは不確実)は、C1IA被覆細胞を示さなかった。
7つの続発性悪性脳腫瘍や様々な転移性癌腫のうちの6つは、C1IA被覆細胞を示した。
8つの原発性良性腫瘍は、C1IA被覆細胞を示さなかった。明確な腫瘍塊のない壊死組織を有する患者1名は、C1IA被覆細胞を示した。
(癌腫に起因する続発性脳腫瘍と原発性悪性脳腫瘍との重要な差異)
この脳腫瘍研究によると、興味深いことに、原発性悪性星状細胞腫は継代培養物においてC1IA外被を失っているが、継代培養された続発性脳転移性癌腫は、C1IA被覆細胞を保持している徴候を示した。
C1IA外被の喪失に加え、継代培養された原発性悪性脳腫瘍は、線維芽細胞に似た外観となる。培地は、中枢神経系に存在する条件と比較してみると、同じ生物学的条件を反映していなかった。
通常、神経膠腫は中枢神経系に限定されていると考えられている(Jimsheleishvili S、Alshareef AT、Papadimitriou K、Bregy A、Shah AH、Graham RM、Ferraro N、Komotar RJ.J Cancer Res Clin Oncol.2014 May;140(5):801−7)。多形性膠芽腫などの重度の悪性脳腫瘍でさえ、中枢神経系以外の器官には滅多に転移することがない。これは、中枢神経系外の原発性脳腫瘍細胞の生物学的環境が中枢神経系内とは異なるため、中枢神経系外の環境が転移を妨げ、原発性脳腫瘍の拡大に役立たないという事実に起因する可能性がある。
原発性悪性脳腫瘍は、通常、血管が十分に形成されている。特に腫瘍の縁に血管が多く形成しているが、最も悪性の膠芽腫は、腫瘍の一部が壊死することがよくある。これは、血液脳関門が極めて複雑であるからだ。中枢神経系外に放出された脳腫瘍細胞は、C1IA阻害外被を欠如しているので、中枢神経系外の細胞が行動を変化させると、免疫系により認識され、続いて溶解や拒絶により破壊されるのである。
(実施例6:ラットRG−2及びラットNS−1神経膠腫)
近年の研究は、悪性癌細胞、中でも神経膠腫又は膠芽腫とも呼ばれる星状細胞腫などの悪性脳腫瘍におけるC反応性蛋白質の存在、並びにC1エステラーゼ阻害物質又はC1不活性化物質(C1IA)とも呼ばれるC1阻害物質の存在に関する明確な証拠を提示している。この新しい知見は、(ラット)神経膠腫RG−2や、CNS−1とも呼ばれる(ラット)神経膠腫NS−1などのラット神経膠腫においても同定されている。
(ラットRG−2及びラットNS−1神経膠腫)
これらの悪性癌細胞は、多形性膠芽腫のような、ヒト神経膠腫及び膠芽腫と同様に、使い捨てのLeighton様チャンバで培養される。スウェーデン南部のルンド大学のRausing実験室では、星状細胞腫とも呼ばれていた。
これらの悪性神経膠腫細胞株を、ラットC反応性蛋白質と交差反応することが判明しているウサギ抗ヒトC反応性蛋白質と培養した。ウサギ抗体に対する二次TRITS標識抗体を用いて、(ラット)C反応性蛋白質に対する結合ヒト抗体と反応させた。ラットRG−2を示す図6a、図6bを参照のこと。神経膠腫細胞をポリクローナルウサギ抗ヒトC反応性蛋白質(抗HUCRP)と共に数時間培養し、PBS緩衝液又は培地で洗浄した後、TRITS結合抗ウサギ抗血清を二次抗体としてともに培養して、これらの結合を示した(図6a〜図6bの赤色RG−2細胞を参照)。
(RG−2ラット神経膠腫細胞におけるGFPの組み込み)
図8に示すように、RG−2神経膠腫細胞は、GFPの組み込みにより、緑色蛍光で可視化される。
ラットRG−2神経膠腫細胞の可視化は、両方のRG−2ラットGFP遺伝子陽性(生存)神経膠腫細胞を共存させることにより達成される。同時に、図9は、ウサギ抗ヒト(抗ヒト抗体、抗ラットCRP及び二次TRITS Abと交差反応することが知られている)で染色されたRG−2神経膠腫細胞上のC反応性蛋白質外被の存在を示す(赤い外被)。
図8は、神経膠腫細胞の核や細胞質において特に観察される緑色蛍光を示す。TRITS標識赤色抗体は、RG−2神経膠腫細胞の周囲を覆い、細胞膜に位置するC−反応性蛋白質がウサギ抗ヒトと反応する証拠となる(ラット抗C反応性蛋白質と交差反応することが知られている)。
CRP、及びC1阻害物質又はC1不活性化物質(C1IA)に関する知見の重要性は、ラット神経膠腫はヒト悪性神経膠腫と非常に類似し、膠芽腫や多形性膠芽腫とも呼ばれるヒト神経膠腫のラットモデルとして使用されているので、近年の神経膠腫の細胞実験はラット神経膠腫を用いているという背景から見るべきである。
C1阻害物質又はC1不活性化物質(C1IA)とも呼ばれるC1エステラーゼ阻害物質が、RG−2神経膠腫細胞等の神経膠腫細胞を被覆することは本発明の重要な知見であり、神経膠腫細胞に対するC反応性蛋白質の所見もまた本発明の非常に重要な部分である。
(実施例7:ラットRG−2及びラットNS−1神経膠腫細胞)
これらの悪性癌細胞は、多形性膠芽腫のような、ヒト神経膠腫及び膠芽腫と同様に、使い捨てのLeighton様チャンバで培養される。スウェーデン南部のルンド大学のRausing実験室では、星状細胞腫とも呼ばれていた。
これらの悪性神経膠腫細胞系を、ラットC反応性蛋白質と交差反応することが判明しているウサギ抗ヒトC反応性蛋白質と培養した。ウサギ抗体に対する二次TRITS標識抗体を用いて、(ラット)C反応性蛋白質に対する結合ヒト抗体と反応させた。ラットRG−2を示す図10を参照のこと。神経膠腫細胞をポリクローナルウサギ抗ヒトC反応性蛋白質(抗HUCRP)と共に数時間培養し、PBS緩衝液又は培地で洗浄した後、TRITS結合抗ウサギ抗血清を二次抗体としてともに培養して、これらの結合を示した(図10の赤色RG−2細胞を参照)。
図11a及び図11b。NS−1(CNS−1)ラット神経膠腫細胞は、使い捨てのLeighton様チャンバで増殖し、ウサギ抗ヒトCRP(ラットCRPと交差反応することが知られている)と培養した。余剰の抗体を緩衝液(培地)で洗浄して除去し、TRITS標識抗ウサギ二次抗血清を添加した。次いで、細胞を洗浄し、TRITSが検出されるように励起フィルタを用いて暗視野顕微鏡検査を行った。細胞は、ウサギ抗体に対する二次TRITS標識抗体で視覚化した(ラット)CRPの存在の証拠として抗CRP外被を示す。細胞核は、通常、細胞内の核が見える、暗い円である。
(実施例8:RG−2ラット神経膠腫細胞におけるGFPの組み込み)
図12に示すように、RG−2神経膠腫細胞は、GFPの組み込みにより、緑色蛍光で可視化される。
(実施例9)
ラットRG−2神経膠腫細胞の可視化は、両方のRG−2ラットGFP遺伝子陽性の(生存)神経膠腫細胞を共存させることにより達成される。図13は、細胞の細胞膜上に位置するウサギ抗ヒトと細胞を培養することにより明らかとなった、RG−2神経膠腫細胞上のC反応性蛋白質外被の存在を示す(用いられる抗ヒト抗体は、抗ラットCRPと交差反応することが知られている)。免疫染色サンドイッチ法を使用して、二次TRITS抗体は、細胞の細胞膜の「赤色」結合で示される。
図13は、これらの細胞におけるGFPの組み込みにより生じる緑色蛍光を示し、神経膠腫細胞の核や細胞質において特に優れる可視性を有する。TRITS標識赤色抗体は、RG−2神経膠腫細胞の周囲を覆い、ウサギ抗ヒト(ラット抗C反応性蛋白質と交差反応することが知られている)と反応するC反応性蛋白質で被覆された原形質膜の0証拠となる。当該方法では、非常に顕著な緑色蛍光を持つGFP染色により、細胞核に非常に高い可視性を与えている。
図13からも分かるように、RG−2神経膠腫細胞上にC反応性蛋白質が存在するということは、本発明の非常に重要な部分である。これは、NS−1ラット細胞のような他のラット神経膠腫細胞においても見られる。従って、ラット神経膠腫細胞(研究のためにRG−2及びNS−1神経膠腫細胞を例示として用いる)がC反応性蛋白質を持っていることは、明らかである。つまり、ヒト神経膠腫/膠芽腫細胞の外被で何が見出されるのか、予測することができる。これらの知見は、特定の癌細胞に対するこれらの蛋白質、C1不活性化物質、及びC反応性蛋白質(CRP)の存在の重要性を示しており、実際に腫瘍を促進する補体反応自体ではないという確実な証拠を示している。更に、神経膠腫や膠芽腫などの癌細胞では、古典経路を構成するC1qrs複合体に対してC1r及びC1sへの解離を阻害することで、活性可能な抗体に対応して補体活性化の開始時に補体反応を既に阻害し、補体系が癌細胞を破壊又は溶解できないように抑制する方法をとっていることを、初めて実証している。
(実施例10)
C1阻害物質又はC1不活性化物質(C1IA)とも呼ばれるC1エステラーゼ抑制物質は、RG−2神経膠腫細胞のような神経膠腫細胞を被覆することが確認された。図14に示されているように、C1不活性化物質はラットRG−2神経膠腫細胞を被覆している。Dapi染色は核を示すために用いられた。Dapiブルーを抗C1IAと一緒に染色する(TRITS標識二次サンドイッチ抗体を用いたサンドイッチ免疫染色を用いる)。これらのラット神経膠腫細胞の核は抗C1不活性化物質で染色されてはいないが、ラット神経膠腫細胞の細胞膜は、TRITS(赤色)着色により明らかであるように、C1不活性化物質を発現している。
(実施例11)
C1阻害物質又はC1不活性化物質(C1IA)に関する知見の重要性は、図16a、図16b、及び図16cに示されているように、ラット神経膠腫細胞による神経膠腫細胞実験はヒト悪性神経膠腫と非常に類似しており、ヒト神経膠腫/膠芽腫と同じ型の外被を神経膠腫細胞膜上に有するという背景から見るべきである。従って、本発明によれば、膠芽腫や多形性膠芽腫とも呼ばれるヒト神経膠腫に生じることを予測し、比較するために、本発明におけるヒト神経膠腫/膠芽腫治療の標的の1つであるプロテアーゼ阻害物質の外被を有するラットの神経膠腫モデル(実際には2つのラット神経膠腫細胞モデルであり、一方はRG−2と、他方はNS−1と呼ばれる)として用いている。よって、3つの異なるヒト神経膠腫/膠芽腫細胞を、ラット神経膠腫又はヒト神経膠腫/膠芽腫の細胞の透過化を伴わない免疫染色を用いて検討した。
抗C1不活性化物質と二次FITC標識抗体と共に培養したヒト良性皮膚(真皮)線維芽細胞は、癌細胞(例えば、ラット神経膠腫、ヒト神経膠腫/膠芽腫)とは明確な差異を示す。細胞の所見では、線維芽細胞の核内にC1−IAの弱い発現があるが、細胞質又は細胞の表面にはC1−IAが発現していない。この画像を、ヒト膠芽腫細胞及びGFPラット細胞における以前の画像と比較すると、細胞質又は細胞膜においてC1−IAの強い発現があるが、癌細胞の核ではC1−IAが発現していないことが分かる。弱いC1IAの発現は、細胞膜上ではなく核内に明確に位置する。当該検査では、細胞に対する透過化処理を施さなかった(図17を参照)。
ヒト良性皮膚線維芽細胞を抗CRP及び標識二次サンドイッチと共に培養すると、良性細胞の表面上にCRPの特異的結合が存在しないことを示す非常に弱い信号しか見出せない。透過化処理は行っていない(図18を参照)。
(C1阻害物質(C1IA)に関するヒトの皮膚線維芽細胞の知見)
Gulati他によって記載されているように、C1阻害物質(C1IA)の他に、補体成分C1r、C1sも多くの非悪性細胞の全ての細胞型によって合成される。本発明において、癌細胞中のC1IAの量が多いと、C1qrs複合体のC1q、C1r、及びC1sへの解離を抑制する可能性がある。良性細胞では、C1r及びC1sの分泌速度は、線維芽細胞、解離ヒト間葉細胞、及び軟骨細胞においてほぼ等濃度であったが、C1sの分泌速度は他の細胞型においてC1rの分泌速度を超えていた(Gulati P、Lemercier C、Guc D、Lappin D、Whaley K.「C1サブ成分及びC1阻害物質の合成の調整」BehringInst Mitt.1993 Dec;(93):196−203)。
上記の著者らは、HepG2細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、線維芽細胞(皮膚及び滑膜)、軟骨細胞、単球におけるC1q、C1r、C1s、及びC1阻害物質の合成を検討し、C1q(単球からのみ合成される)、C1r、C1s、及びC1阻害物質は、全ての細胞型により合成されることを見出した。C1s対C1rのモル比は、HepG2細胞について約2:1であり、単球については5:1であり、HUVECについては10:1であった。インターフェロン−γによる刺激は、前記蛋白質4種の発現を増加させた。C1s:C1r比は、軟骨細胞又は線維芽細胞においては変化しなかったが、C1r遺伝子発現の比較的大きな刺激によって、HepG2、単球、及びHUVECではClrの単一性に近づいている。
2002年に、本発明者は、患者4名(2名は軟骨欠損グレードIII(非変形性関節症)、2名はグレードIV(変形性関節症を発症))の膝の軟骨組織の細胞外植片から採取した4つのヒト軟骨芽細胞培養物から全RNAを単離した。
4名の患者の大腿顆から採取した軟骨芽細胞から全RNAを単離し、コペンハーゲン、Rigshospitaletの炎症研究室のクラウス・ベンドセン教授によって、約12000の遺伝子を検査可能なAffymetrix遺伝子チップ分析を施した。
Affymetrix遺伝子チップアレイを用いる検査方法を、図19及び図20に概略的に記載した。
このライブラリで、これらのヒト軟骨芽細胞(軟骨細胞と類似)を検査し、活性化及び非活性化遺伝子の値を読み取った。本発明者は非遺伝子活性化蛋白質、即ちX型コラーゲンを使用した。このコラーゲン型は、100(≦90)の任意の限界値以下の低い読取値を有する。多くの遺伝子の中で、本発明者は補体成分C1qを同定し、4名の患者の読取値を調べたところ、下記のことが示された。
(実施例12: Affymetrix遺伝子チップアレイ)
(非悪性ヒト間葉細胞における補体系の遺伝子チップアレイライブラリ)
当該ライブラリでは、ヒト軟骨芽細胞を25ccファルコンフラスコで70%コンフルエンスに達するまで培養し、その後、tRNAを無血清培地で採取し、Rigshospital(デンマーク大学病院)、コペンハーゲン、クラウス・ベンドセン教授の炎症研究室に12600のcDNAを送った。これらのヒト間葉細胞(軟骨細胞に似ている)を、活性化及び非活性化遺伝子に対する読取値を含むチップで検査した。
本発明者は非遺伝子活性化蛋白質、つまりX型コラーゲンを使用した。このコラーゲン型は、100(≦90)の任意の限界値以下の低い読取値を有する。
12600個の遺伝子チップアレイにより同定された遺伝子は、補体成分であった。1つは補体成分のC1qであり、この読取値を参照した。これらの読取値は患者4名の遺伝子情報を含み、該間葉細胞は非軸受領域の患者の膝関節丘から得た軟骨生検由来である。細胞はウシ胎児血清を含まない培地で培養され、70%コンフルエンスに達するまで培養しその後全mRNAを採取し、Affymetrix遺伝子チップ分析のために調製した。これはコペンハーゲンPanum研究所の炎症研究室のクラウス・ベンドセン教授が、コードID:KM、HL、MT、IB、を付与して下記のように調製したものである。
(実施例12a:C1阻害物質(C1不活性化物質(C1IA)))
ヒト間葉系細胞で検出した最初の遺伝子は、C1阻害物質(C1不活性化物質(C1IA))(線維芽細胞、その他軟骨芽細胞(軟骨細胞)などの細胞内に存在すると知られている蛋白質)である。これは遺伝子チップアレイで、12600個の遺伝子の中から検索し、同定したものである。4名の患者におけるC1阻害物質C1IAの読取値は、図21に示されている。
(実施例12b:補体成分C1q)
本発明者は、多くの遺伝子の中から補体成分C1qを同定した。図22に示されているように4名の患者の読取値を調べた。C1q遺伝子の信号が非常に低く、赤色の境界をずっと下回ることを示し、境界値の下方にある信号は不活性遺伝子と考えられる。良性ヒト間葉細胞におけるC1qに関しては、以下のように示した。
(実施例12c:補体成分C1r)
リスト記載(コード)の患者4名から採取した間葉細胞を遺伝子チップアレイを用いて調べた次の対象遺伝子は、C1r(C1qrs複合体から解離する)である。本発明者は、患者4名におけるClrを同定した読取値が、境界値から≧ログ1を超えることを示した。つまり、これはC1r遺伝子が活性化されたことを示唆する(図23参照)。
実施例12bの軟骨芽細胞などのヒト間葉細胞に見られる遺伝子活性は、C1qが解離しておらず且つC1rが活性であり、この現象は恐らく定常状態であり、C1複合体の阻害物質、つまりC1阻害物質(C1不活性化物質(C1IA)とも呼ばれる)と細胞における遺伝子活性のバランスが取れていると解釈できる。これらの細胞において抗原―抗体反応が生じていないのは明らかであり、また、C1rがC4を活性化していないというのも明らかな事実である(実施例12dを参照)。
Affymetrix遺伝子チップ分析によって、本発明者はC1qが軟骨芽細胞において活性化されていないことを見出した。ヒト軟骨外植片から軟骨芽細胞を採取する方法は、2006年に公開されたKurt Osther他により記載された技術である(Osther K、Storgaard P、Clausen Cl、「ACIのためのExplant Culturesを用いる根拠」(「関節軟骨欠損の基礎科学と臨床修復及び再建:現状と展望」、Zanasi S、Brittberg M、Nehrer S、Marcacci M、編集者)pp313−319、Timeo Bologna 2006)。
更に、これらのヒト軟骨芽細胞においてC1rが有意に上昇したことが判った。これは、Gulati P他により1993年に発表された、当該グループによって記載された方法による結果と一致する(Gulati P、Lemercier C、Guc D、Lappin D、Whaley K.「C1サブ成分及びC1阻害物質の合成の調整」Behring Inst Mitt.1993 Dec;93:196−203)。当該結果は、これらの良性細胞を神経膠腫/膠芽腫と比較した場合、この点に関する差異を中心とする本発明者の理論と完全に合致している。
4つのヒト軟骨芽細胞(軟骨細胞)の検査結果に基づくヒトの軟骨芽細胞における遺伝子活性の知見について、軟骨芽細胞(軟骨細胞)などの良性間葉細胞における補体成分C4、C5、C6、C7、C8、及びC9の遺伝子チップ分析を続け、4名の患者の大腿顆から採取した軟骨から軟骨芽細胞を単離した。患者の2名は軟骨欠損グレードIII(非変形性関節症)であり、2名は軟骨欠損グレードIV(変形性関節症を発症)であった。間葉細胞の場合、C反応性蛋白質(CRP)が間葉細胞を被覆しているとは示されず、この結果はヒト癌腫細胞の所見や、NSラット膠芽腫細胞及びヒト膠芽腫がC反応性蛋白質(CRP)で被覆されていることが明らかとなっているものとは異なっている。
2002年に、本発明者は、患者4名(2名は軟骨欠損グレードIII(非変形性関節症)、2名はグレードIV(変形性関節症を発症))の膝の軟骨組織の細胞外植片から採取した4つのヒト軟骨芽細胞培養物より全RNAを単離した。
4名の患者の大腿顆から採取した軟骨芽細胞から全RNAを単離し、コペンハーゲンRigshospitaletの炎症研究室のクラウス・ベンドセン教授による、約12000の遺伝子を検査したAffymetrix遺伝子チップ分析を施した。
(実施例12d:補体成分C4b U24578:ヒトRP1及び補体C4B前駆体(C4B)遺伝子)
(C4b遺伝子)
当該遺伝子は、古典的活性化経路の一部である補体因子4の基本形態をコードする。この蛋白質は、これらの良性間葉細胞が由来する組織で抗原抗体反応が起こった一本鎖前駆体として発現する可能性が高い。さもなければ、分泌の前にα、β、γ鎖の三量体を蛋白質分解的に切断し、C4の解離が生じて補体成分C2を更に活性化するであろう。この三量体は、抗原−抗体複合体と他の補体成分との間の相互作用が生じる界面を提供し、例えば、C4分子のある部分の細胞表面への結合を示す。
α鎖は、局所炎症のメディエーターとなるC4アナフィラトキシンを放出するために切断されない。当該遺伝子は、第6染色体上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIII領域に局在する。当該遺伝子クラスタの多様な単倍型が存在し、個体は当該遺伝子のコピーを1つ、2つ、或いは3つ有する。更に当該遺伝子は、イントロン9に6.4kbの内因性HERV−Kレトロウイルスの有無により、長形又は短形として存在する。
多くの遺伝子の中で、本発明者は補体成分C4bを同定し、そして該成分の4名の患者の読取値を調べ、図24に図示した。
(実施例12e:C5はC5の下記のサブユニットもカバーする)
(要約)
C5遺伝子は、炎症、宿主ホメオスタシス、及び病原体に対する宿主防御において重要な役割を果たす自然免疫系の一部である補体系の成分をコードする。C5b巨大分子切断産生物は、細胞表面上にC5bからC9までの膜侵襲複合体(MAC)を生成し、細胞を破壊する。当該遺伝子の変異は、補体成分5の欠損、つまり再発性細菌感染を特徴とする疾患を引き起こす。図25を参照すること。
(実施例12f:補体成分C6)
当該遺伝子は、補体カスケードの成分をコードする。蛋白質である補体成分C6は、活性化すると細胞表面に結合する蛋白質であり、細胞膜に結合して細胞溶解を引き起こす膜侵襲複合体の一部である。当該遺伝子の変異は、補体成分6欠損と関連している。同じ蛋白質をコードする転写産物変異体が記載されている。図26を参照すること。
(実施例12g:補体成分C7)
(要約)
C7は補体系の成分であり、膜侵襲複合体(MAC)の形成に関与している。C7欠損症の者は細菌に感染しやすい。図27を参照すること。
(実施例12h:補体成分C8(β))
当該遺伝子は、補体成分8(C8)蛋白質の3つサブユニットのうち1つをコードする。これらの間葉系細胞は、C8遺伝子活性を持たない。C8は、等モル量のα、β及びγサブユニットからなり、該サブユニットは、別個の3つの遺伝子によりコードされる。C8は細胞溶解を媒介する膜侵襲複合体の一成分であり、複合体の膜貫通を起こす。当該蛋白質は、C8とC5b−7膜侵襲複合体前駆体との相互作用を媒介する。ヒトでは、当該蛋白質の欠乏は、髄膜炎菌感染のリスクの増加と関連している。スプライシング変化の結果、複数の転写産物変異体が生じる。図28を参照すること。
(実施例12i:補体成分C8(α))
C8(α)は、補体系の成分であり、α、β、γの3つのポリペプチドを含む。当該遺伝子は、C8のαサブユニットをコードするものであり、これらの間葉細胞において活性化されていない。C8は、活性化されると、膜侵襲複合体(MAC)の形成に関与する。MACは細菌膜上に集まって細孔を形成し、細胞膜又は細菌膜を破壊できるようになる。当該遺伝子の変異は、補体C8α−γ欠損を引き起こす。図29を参照すること。
(実施例12j:補体成分C9)
当該遺伝子は、活性化されると、補体系の最終成分をコードする。これは、膜侵襲複合体(MAC)の形成に関与する。MACは細菌膜上に集まって細孔を形成し、細胞膜又は細菌膜を破壊できるようになる。当該遺伝子の変異は、成分C9欠損を引き起こす。図30を参照すること。
(実施例12k:C反応性蛋白質(CRP))
CRPは、場合によっては、補体系の活性化及びその活性化に関連して存在することが判明している。本発明者は、図面に示すように、悪性ラット神経膠腫NS1及びRG2、並びにヒト神経膠腫/膠芽腫細胞の培養において、C1阻害物質(C1不活性化物質)及びCRPの両方がこれらの細胞を被覆していることを免疫染色法を用いて見出した。図31を参照すること。
(要約)
図31に示されているように、間葉細胞におけるC反応性蛋白質(CRP)反応の証拠を見出すことはできなかった。
当該遺伝子は、活性化されると、補体系の古典経路の活性化中に補体系のC反応性蛋白質をコードするが、これは、CRPの周知の直接生物学的機能である(Pepys MB、Hirschfield GM.「C反応性蛋白質:重要更新」、J Clin Invest 2003;111:1805−12)。これに対して、CRPによる補体活性化及びアポトーシス細胞のオプソニン化の間において、食作用が活性化しているマクロファージはIL−12の発現を低下させ、それによってTリンパ球を抑制する(Kim SJ、Gershov D、Ma X、Brot N、Elkon KB「アポトーシス細胞のオプソニン化、並びにマクロファージ及びT細胞免疫応答に対する効果」Ann NY Acad Sci 2003;987:68−78)。当該結果は、表面に結合したCRPがHに対する二次結合部位を提供し、代替経路の増幅を大いに調節することを示唆する。
この作用を介して、CRPは、炎症、様々な炎症症状、心血管疾患、癌の進行と関連している先天性免疫を直接増幅し、促進する。C反応性蛋白質(CRP)は、炎症に応じて甘草から産生される物質である。CRPは、高感度C反応性蛋白質(hs−CRP)や超高感度C反応性蛋白質(us−CRP)とも呼ばれる。
C反応性蛋白質(CRP)は、急性期の血清蛋白質であり、先天性免疫のメディエーターである。CRPは、損傷細胞に曝露されたリガンドや微生物多糖と結合する。これらの基質にCRPが結合すると、食細胞による取り込みをつながる古典的補体経路を活性化する。CRPによる補体活性化はC1、C4、C2、及びC3に限定され、C5〜C9の消費はほとんどない。
血液におけるCRPの高いレベルは、上気道感染から癌に至るまで、炎症を引き起こす症状のマーカーである。高CRPレベルは、心臓の動脈に炎症が生じたことを示唆することができ、これは、心臓発作のリスクが高いことを意味する。しかしながら、CRPは非常に非特異的な要素なので、炎症状態ならば種類を問わず上昇してしまうことに留意されたい。本発明の一部として、上記の免疫染色の例示から観察されるように、CRPは培養中のラット神経膠腫細胞、ヒト膠芽腫細胞培養物など、癌細胞を実際に被覆する。
CRPは、C5b〜C9(MAC)を介する膜侵襲複合体の形成を防止することもできる。C5b〜C9が、細菌膜上に集合して細孔を形成し、細菌膜組織の破壊を可能にする一方で、MAC反応がラット悪性神経膠腫やヒト神経膠腫/膠芽腫では生じないのは明らかである。当該遺伝子の変異は成分C9欠損を引き起こす。
膠芽腫患者の補体因子の予備的スキャン(Henrietta_2_Oscar mRNAマイクロアレイ)
膠芽腫患者AMN
膠芽腫患者DZ
mRNA NCBIアクセスNo.AA144838。セリン(又はシステイン)プロテイナーゼ阻害剤、クレードG(C1阻害物質)、メンバー1
(実施例13)
mRNA試験を膠芽腫の患者2名に対して行った。一人から採取した細胞はAMN、もう一人の細胞はDZとコードし、図11の抗ヒトC1IA及び二次FITC標識サンドイッチ抗体で染色して、C1阻害物質(C1IA)外被の存在を調べた。当該実施例の結果は、マイクロアレイ試験により検出したmRNAを示す(Henrietta_2_Oscar AMN及びDZ。図32を参照すること)。
(実施例14)
膠芽腫を有するAMN及びDZとコードされた患者2名について、mRNA補体成分C1r前駆体、C4a、C2、及びC5を含む補体成分のmRNAマイクロアレイ試験を行い、対数尺度で表示した。図33〜36を参照すること。
(結論)
Affymetrix 遺伝子チップアレイ分析を用いてヒト間葉細胞の補体系の遺伝子活性を調べると、C1r以外の補体成分の活性化の証拠はなく、恐らく補体の古典経路が活性化されず、またIgG型の抗原−抗体反応がないためと思われるが、本発明者は特に、軟骨芽細胞(軟骨細胞)中のIgG1、IgG3、IgM、及び他の抗体成分でC4が活性化されないことを見出した。ヒト軟骨外植片から軟骨芽細胞を採取する方法は、2006年に公開されたKurt Osther他により記載された技術である(Osther K、Storgaard P、Clausen Cl、「ACIのためのExplant Culturesを用いる根拠」(「関節軟骨欠損の基礎科学と臨床修復及び再建:現状と展望」、Zanasi S、Brittberg M、Nehrer S、Marcacci M、編集者)pp313−319、Timeo Bologna、2006)。
更に、これらのヒト軟骨芽細胞におけるC5、C6、C7、C8、及びC9は、良性ヒト間葉細胞(軟骨芽細胞)で活性化されないことを見出した。これは、4種の異なるAffymetrix遺伝子分析においても一致する。当該結果は、これらの良性細胞を神経膠腫/膠芽腫と比較した場合、例えば間葉細胞などの良性細胞におけるこの点の差異に関する本発明者の理論に完全に合致している。
(実施例15)
ラットGFP神経膠腫細胞、RG2又はGM1ラット神経膠腫細胞を、約5000細胞の濃度で、ウサギ抗ヒト(ラットC1IA、又はラットCRP、又はラットC1IA/ラットCRPと交差反応する抗ヒト抗体)で37℃、2時間培養した後、この細胞を脳の右頭頂葉に注射した(各群のラット3〜4匹)。注射前にPBS緩衝液(pH7.4)で細胞を洗浄したが、非常に繊細な作業であった(ルンド大学のRausing実験室。試験はスウェーデンの倫理委員会から事前に承認を受けた)。
次いで、ラットをケージに入れ、熟練した従事者が24時間観察した。ラットが神経学的症状を含む、脳腫瘍が臨床的に悪化したと時の一般的症状を発症した場合、ラットを安楽死させ、発症までの生存日数を記録した。以後の研究のために脳を取り除いた。当該研究の目的は、主として、処理済みの神経膠腫細胞をラットの脳へ注射した後に存在する抗体が保持されるか否かを同定することであった。しかしながら、処理済みの細胞を注入されたラットでは、5000個の未処理ラット神経膠腫細胞を注入されたラットとを比較して、生存期間の延長の徴候があるようであった。
抗体はウサギ、つまり異種から得たものなので、異種ウサギ免疫グロブリンは最終的に限定された免疫反応を誘発し、それによって、ラットの異種反応により自然免疫反応を誘導することができる可能性がある。従って、予培養した細胞が抗C1IA及び抗CRPで被覆されているので、抗体処理ラットの生存期間が未処理ラットよりも僅かながら伸びたのは、補体反応を誘導する可能性があり、それによって、補体系を活性化できる可能性がある。従って、ラットに注射された被覆細胞の一部は、ラットの補体系を誘導することができる。故に、ラットに注入されたグリア細胞の予培養は、C1阻害物質(C1IA)の細胞外被を脱阻害し、C3b阻害に続くH因子との結合を通じて、CRPによりみられる自然阻害を介し、C3bに対するCRPの阻害を脱阻害する可能性を示唆することになる。
従って、未処理グリア細胞を注入されたラットと比較して(p値=0.3)、僅かながら有意に寿命が延長したように、抗C1IA及びCRPで前処理したグリア細胞を注入された動物には、生存の可能性が伸びる訳である。
(参考文献)
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Osther、K.、Hojgaard、K.、及びDybkjrE.、Acta neurol.Scand、1974、50,681、Osther、K.、Lancet、1974年3月2日、p.359
Osther、K.、Linnemann、R.、Acta path.microbiol.scand.1973、81、p.365
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