[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る撮像装置100について説明する。
図1(A)は、撮像装置100の斜視図である。撮像装置100の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、光軸方向をZ軸方向と定義する。X軸を中心とする回転をピッチ振れpとし、Y軸を中心とする回転をヨー振れyとし、Z軸を中心とする回転をロール振れrとする。外部から振れが加わることによって撮像装置100が各方向に回転すると、撮像面上で像ブレが発生する場合があるため、像ブレ補正が行われる。
ファインダ109は、後述する撮像素子101で取得された被写体像などを表示する液晶モニタにより構成され、使用者が覗きこむことで被写体像を確認できる。レリーズボタン110は、使用者が撮影操作に用いる操作部材である。使用者がレリーズボタン110を押し込むことで、第1スイッチがONしてレリーズ前段信号S1が発生する。さらにレリーズボタン110を押し込むことで第2スイッチがONしてレリーズ信号S2が発生する。
図1(B)は、撮像素子101およびレンズ鏡筒102を例示する斜視図である。撮像素子101は、撮像光学系により被写体からの光が結像される予定結像面に配置される撮像面を備える。撮像素子101は撮像面上の光像を電気信号に光電変換する撮像動作を行う。レンズ鏡筒102は撮像装置100に固定され、撮像光学系を構成する光学部材を備える。
角速度センサ103p、103yは、撮像装置100の振れの角速度を検出する。符号中の「p」、「y」は検出方向に対応し、ピッチ振れpの方向、ヨー振れyの方向をそれぞれ表わす。補正レンズ104は、撮像光学系の一部を成す可動光学部材であり、所定の補正範囲内において光軸と直交する面内を移動する。これにより撮像面上の像を移動させ、像ブレを補正することが可能である。
振れ補正回路105p、105yは、角速度センサ103p、103yからそれぞれ出力された角速度信号を積分して、撮像装置100の振れ量(角変位)を演算する。これらの振れ補正回路はさらに、演算した振れ量から、振れを補正するための補正レンズ104の目標位置信号に変換する。駆動部106p、106yは、補正レンズ104を駆動する。駆動部106p、106yは、ピッチ振れp、ヨー振れyをそれぞれ補正する方向に補正レンズ104を移動させる。変位センサ107p、107yは、補正レンズ104の現在位置を検出する。変位センサ107pは駆動部106pによる補正レンズ104の変位を検出する。変位センサ107yは駆動部106yによる補正レンズ104の変位を検出する。
レンズ鏡筒102では、補正レンズ104の現在位置信号と補正レンズ104の目標位置信号との差が小さくなるように、駆動部106p、106yの駆動制御が行われる。いわゆる閉ループ制御が行われる結果、振れ補正動作が行われる。つまり、撮像装置100の振れに応じて撮像面上の像が補正されるので、ピッチ振れpおよびヨー振れyに起因する像ブレを抑制することができる。
フォーカスレンズ108は撮像光学系の一部を構成する可動光学部材であり、駆動回路115(図1(C)参照)により光軸方向に移動して、焦点調節動作が行われる。この他にもレンズ鏡筒102は各種レンズや絞りなどを備えるが、説明を省略する。
図1(C)のブロック図を参照して、撮像装置100における要部の構成を説明する。操作検出回路111は、角速度センサ103p、103yからそれぞれ出力された角速度信号を取得し、角速度信号に応じて操作信号を出力する。自動選択回路112は、撮像素子101により取得された被写体像の情報から、測距点を自動的に選択して自動選択信号を出力する。例えば、検出された被写体(人物)の顔領域に対応する測距点が選択される。測距点は撮像光学系の焦点状態の検出領域に相当し、所定の大きさをもつ。測距点設定回路113は、操作信号と自動選択信号を取得して測距点設定動作を行う。測距点設定動作では、操作信号または自動選択信号に応じて、撮像面上の任意の位置に測距点が設定され、各位置での測距点信号が出力される。
ファインダ109は、測距点設定回路113からの測距点信号に応じて、被写体に対応する測距点の位置を表示する。図2を参照して表示の具体例を説明する。図2(A)は、ファインダ109の表示範囲109aと、複数の測距点(点線の枠で示す)の配置を例示する。撮像面上の位置に対応した35個の測距点が配置されている。各測距点には、上下方向にA〜E、左右方向に1〜7の座標が割り当てられている。例えば中央の測距点をC4で示し、C4から右方向に1単位、上方向に2単位だけ移動させた測距点をA5で示す。図2(B)は、ファインダ109の画面上にて、被写体像および点線枠の各測距点の配置を示す。被写体像と、測距点設定回路113により設定された測距点(実線の太枠A5で示す)とが重ねて表示されるので、使用者は被写体に対応する測距点の位置を容易に把握できる。
フォーカス検出回路114は、焦点検出を行って駆動量信号を出力する。フォーカス検出回路114は測距点信号に応じて、測距点の位置における焦点状態を検出する。撮像素子101により取得された被写体像の情報に基づいて、撮像面上の任意の位置での焦点状態を示すフォーカスのずれ量が検出され、合焦動作に必要なフォーカスレンズ108の駆動量信号が駆動回路115に出力される。駆動回路115は駆動量信号にしたがって、フォーカスレンズ108を駆動する。フォーカス検出回路114、駆動回路115、フォーカスレンズ108によって、被写体に焦点を合わせる焦点調節動作が行われる。なお、図1(C)にて点線枠で囲んで示す部分(回路111から114)は、撮像装置100の制御部120によって処理を実行可能である。
図3は、撮像装置100の撮影動作例を示すフローチャートである。以下の各ステップに示す処理は、撮像装置100の制御部120が備えるCPU(中央演算処理装置)により、所定のプログラムを実行することで実現される。
S101で撮影動作が開始されると、S102でCPUは初期化動作を行う。初期化動作では、例えば、以下の処理が実行される。
・撮像装置100の振れ量を初期値のゼロに設定する処理
・補正レンズ104の現在位置を補正範囲の中央(基準位置)であるゼロに設定する処理
・所定のフラグ(以下、操作検出待ちフラグという)をOFFに設定する処理。
本実施形態では、補正範囲の基準位置を中央位置に設定して原点と定義しているが、撮影状態などに応じて基準位置を任意に設定可能である。
S103で自動選択回路112は、測距点の自動選択動作を行う。S104で振れ補正動作が行われた後、S105では後述する操作検出動作が行われる。S106でCPUはレリーズ前段信号S1がON信号であるか否かを判定する。レリーズ前段信号S1がON信号でないと判定された場合、S104に戻る。レリーズ前段信号S1がON信号であると判定された場合、S107に処理を進め、所定の被写体に対する合焦動作が行われる。S108でCPUはレリーズ信号S2がON信号であるか否かを判定する。S108でレリーズ信号S2がON信号でないと判定された場合、S104に戻る。S108でレリーズ信号S2がON信号であると判定された場合、S109に処理を進め、振れ補正動作と撮像動作が同時に行われる。その後、S110で撮影動作を終了する。
図4は、操作検出回路111による操作検出処理を示すフローチャートであり、図3のS105の処理に対応する。S1051で処理が開始し、S1052では操作検出待ちフラグがONであるか否かについて判定される。操作検出待ちフラグがOFFであると判定された場合、S1053に進み、操作検出待ちフラグがONであると判定された場合、S1055に進む。S1053では、角速度センサ103p,103yによって検出された振れ量(θと記す)の絶対値|θ|が所定の閾値(THと記す)と比較される。|θ|が閾値THより大きいと判定された場合、S1054に進み、|θ|が閾値TH以下であると判定された場合、S1058に進む。S1054では、操作検出待ちフラグがONに設定された後にS1058に進む。
S1055では、振れ量の絶対値|θ|が閾値THより小さいかどうかについて判定される。振れ量の絶対値|θ|が閾値THより小さい場合、S1056に進み、振れ量の絶対値|θ|が閾値TH以上である場合にはS1058に進む。S1056で操作信号が取得される。つまり操作検出回路111は測距点設定回路113に対して操作信号を出力する。そしてS1057で操作検出待ちフラグがOFFに設定された後にS1058に進む。S1058で操作検出処理を終了する。
図5を参照して、測距点設定動作を説明する。図5(A)は、撮像装置100の振れ量を示すグラフである。縦軸はピッチ方向の振れ量θpを表わし、横軸はヨー方向の振れ量θyを表わしている。ピッチ方向の最大振れ量をθp_maxと表記し、ヨー方向の最大振れ量θy_maxと表記する。ある時刻における振れ量を示す位置を点P(θy,θp)と表現する。実線の矢印Tは振れ量の軌跡、つまり点Pの時間変化を示している。操作検出動作において閾値THと比較される振れ量の絶対値|θ|は、下記式(1)で表される。
|θ|=√(θp2+θy2) 式(1)
図中の一点鎖線で示す円Cは、初期値ゼロを中心とした半径THの円を示す。点Pが半径THの円Cよりも外側にあるとき、振れ量の絶対値|θ|が閾値THより大きいことになる。また点Pが円Cよりも内側にあるとき、振れ量の絶対値|θ|が閾値THより小さいことになる。軌跡T上において、点Pが円Cの内側から外側に出る点を点P1とする。すなわち振れ量の絶対値|θ|が大きくなる方向に変化し、点P1で閾値THを通過する。このとき、初期化動作でOFFに設定されていた操作検出待ちフラグがONに設定される。その後、点Pは振れ量の絶対値|θ|が小さくなる方向に変化し、円Cの外側から内側に入る点P2に到達し、閾値THを通過する。このとき、操作信号が出力され、測距点設定回路113は、操作信号に応じて像面上の任意の位置に測距点を設定する。ここで出力される操作信号は、操作検出待ちフラグがONからOFFに変化するまでの間における、ピッチ方向の最大振れ量θp_maxと、ヨー方向の最大振れ量θy_maxに相当する信号である。
前述のように初期化動作により、振れ量の絶対値|θ|はゼロと設定されるとともに、補正レンズ104の現在位置は補正範囲の中央に相当するゼロに設定される。その後の振れ補正動作により、振れ量の大小に応じて補正レンズ104は振れを補正する方向に移動する。したがって、振れ量の絶対値|θ|が小さくなる方向は補正レンズ104が補正範囲の中央に向かう方向に対応し、振れ量の絶対値|θ|が大きくなる方向は補正レンズ104が補正範囲の端に向かう方向に対応する。ここで補正レンズ104が補正範囲の端に向かう方向の振れを、第1方向の振れと定義し、補正レンズ104が補正範囲の基準位置(中央位置)に向かう方向の振れを、第2方向の振れと定義する。操作検出回路111と測距点設定回路113は、第1方向の振れにより振れ量が閾値THを通過した後、第2方向の振れにより振れ量が閾値THを通過したことに応じて、撮影条件であるところの測距点の位置を変更する。
本実施形態では、第1方向の振れに対する第1の閾値と第2方向の振れに対する第2の閾値とを、同一の閾値THとする例を説明したが、第1の閾値と第2の閾値とを異なる閾値に設定してもよい。この場合、使用者の操作の挙動や、撮像装置100の構成などに応じて、操作の検出感度や検出タイミングを詳細に調整することが可能になり、操作性が向上する。また閾値THは、手振れによって発生する振れ量よりも大きい値に設定される。手振れによって撮影条件の変更が行われることがないため、振れによる操作を誤検出することが無く、操作性が向上する。
図5(B)は、測距点設定動作を示す説明図である。測距点設定回路113は測距点移動量Dp、Dyを算出する。測距点移動量Dp、Dyは、操作信号に相当する最大振れ量θp_max、θy_maxに、所定の係数をそれぞれ乗算することにより算出される。現在の測距点をB5で示し、この位置から測距点移動量Dp、Dyだけ移動した位置に測距点D2が設定される。このとき、算出された測距点移動量Dp、Dyだけ移動した位置に測距点が存在しない場合には、当該位置に最も近い測距点が設定される。本実施形態では、撮像装置100の回転方向と測距点の移動方向を一致させるため、ファインダ109の画面上の測距点は、θpが正値のときに下方向に移動し、θyが正値のときに左方向に移動するように係数が設定されている。また、ファインダ109の画面上の測距点の移動量に関しては、撮像装置100を回転させたときに被写体像が移動する量と一致するように係数が設定されている。
図5(C)は、比較例として、図5(B)の場合とは異なる操作手段による測距点設定動作を示す説明図である。測距点の横方向の移動と縦方向の移動を2つのダイヤルにそれぞれ対応させた例を説明する。使用者は各々のダイヤルを操作することで、測距点を任意の位置へ移動させることができる。例えば、使用者は第1のダイヤルを操作して、測距点をB5→B4→B3→B2へと横方向に移動させる。その後、使用者は第2のダイヤルを操作して、測距点をB2→C2→D2へと縦方向に移動させる。使用者は多数の操作を行う必要があるため、操作が煩雑となり、操作性が低下する可能性がある。また、使用者がファインダ109を覗きこんでいる状態にて、ダイヤルを手探りで操作する必要があるため、操作性が低下する可能性がある。また、撮像装置100の背面にタッチパネル式液晶表示部を設けて、使用者のタッチ操作によって測距点を選択することもできる。しかし、使用者がファインダ109を覗きこんでいる状態で手探りでの操作を行うか、一時的にファインダ109から目を離して操作する必要があり、操作性が低下する可能性がある。これに対し、本実施形態では、撮像装置の本体部を、使用者が所定の方向に振るという直感的で、かつ1回の操作で像面上の任意の位置に測距点を設定できるので、操作性が向上する。
次に図6から図9を用いて、本実施形態による効果について説明する。図6(A)から(H)は、本実施形態の撮影動作の説明するためのグラフを示す。図7(A)から(E)は、本実施形態におけるファインダ109の表示と撮影画像を例示する図である。図8(A)から(H)は、本発明を実施しない場合の撮影動作を説明するためのグラフを示す。図9は、本発明を実施しない場合のファインダ109の表示と撮影画像を例示する図である。
まず、使用者の操作による振れ量が比較的小さい場合(第1例)について説明する。説明の簡単化のため、ヨー振れyの正方向の振れのみが入力された場合を想定する。図6(A)から(D)は、第1例にて本実施形態を実施した場合の動作を示している。各グラフの横軸は時間軸tであり、時刻t0を起点(原点)とする。時刻t1から時刻t4までの時間は、振れによる操作が行われる時間を示している。つまり、使用者により撮像装置100に対して意図的な振れが入力されるものとする。時刻t1から時刻t4までの時間以外では、振れによる操作が行われないものとし、撮像装置100に対して手振れが入力される。時刻t2および時刻t3は、振れ量が閾値THを通過する時刻を示す。時刻t2は振れ量が増加して閾値THに到達した時刻を示し、時刻t3は振れ量が減少して閾値THに到達した時刻を示す。また時刻t5から時刻t6までの時間は撮像動作が行われる時間である。
各グラフの縦軸は、以下のとおりである。
・図6(A)の縦軸:撮像装置100のヨー方向の振れ量θyを示す軸。
・図6(B)の縦軸:操作検出待ちフラグFの状態を2値(ON、OFF)で示す軸。
・図6(C)の縦軸:ヨー方向の振れyを補正する方向の、補正レンズ104の位置(Lyと記す)を示す軸
・図6(D)の縦軸:ヨー方向の振れyによって移動する撮像面上の被写体像の位置(Iyと記す)を示す軸。
図6(C)のLy_limitは補正レンズ104の補正範囲の端(限界位置)を示し、補正レンズ104はこれ以上の移動ができないものとする。図示していないが、ヨー方向の振れyの負方向にも補正範囲の端を示す「−Ly_limit」がある。像ブレ補正装置では振れ補正量や補正レンズの位置をゆっくりと初期値に近づける動作が行われることがあり、一般にスローセンタリング動作と呼ばれる。時刻t1から時刻t6までの時間は、スローセンタリング動作に対して十分短い時間を想定しており、スローセンタリング動作による影響は無いとして説明する。
時刻t0で撮影動作が開始されると、自動選択動作が行われて測距点が設定される。図7(A)は、自動選択動作が行われて測距点C5が設定された状態を示す。使用者は、測距点を他の測距点に変更するために、図6(A)の時刻t1で撮像装置100をヨー方向に振り始める。振れ量が大きくなって時刻t2で閾値THを通過すると、図6(B)の操作検出待ちフラグがOFFからONに変わる。振れ量はθy_max1に到達してから反転して減少し始める。振れ量が小さくなって時刻t3で閾値THを通過する。時刻t3で操作が確定し、測距点が変更される。このとき、図6(B)の操作検出待ちフラグがOFFとなる。そして使用者は図6(A)の時刻t4で操作を完了して振れを止める。図7(B)は、θy_max1に応じて測距点がC5から左側へ移動し、変更後の測距点C4がファインダ109の画面上に表示された状態を示す。
図6(A)に示す時刻t1から時刻t4までの時間にて、使用者は撮像装置100を振る操作を行うと、ヨー振れyが発生する。その際、図6(C)で示すように振れ補正動作により補正レンズ104がヨー振れyを補正する方向に移動するため、図6(D)において撮像面上の被写体像の位置Iyは変化しない。よって、使用者が振る操作を行っている時刻t1から時刻t4までの時間にて構図ずれが抑制される(図7(B)参照)。
図6(D)の時刻t5において、使用者がレリーズボタン110を操作してレリーズ前段信号S1がON信号になることで合焦動作が行われる。すなわち撮像装置100は、図7(B)の測距点C4の位置に対応する被写体A(図7(C)参照)に焦点を合わせる動作を行う。さらに、使用者の操作によりレリーズ信号S2がON信号となることで撮像装置100は振れ補正動作と撮像動作を開始し、図6(D)の時刻t6で撮像動作が完了し、画像データが記録される。操作が完了した時刻t4では、図6(C)に示すように、補正レンズ104の位置LyとLy_limitの差はdL1である。すなわち補正レンズ104の補正余裕はdL1であり、手振れ量に対して十分大きい。この状態で撮像動作中に像ブレ補正が行われた場合、手振れが発生しても補正レンズ104の位置が補正範囲の端(図6(C):Ly_limit)まで達することは無い。このため、図6(D)にて撮像面上の被写体像の位置Iyが変化せず、像ブレが抑制される。記録された画像データは、使用者が選択した測距点C4の位置に対応する被写体A(図7(C)参照)に合焦している状態の画像データであり、補正動作によって構図ずれや像ブレが抑制されている。
次に図8(A)から(D)、図9(A)および(B)を参照して、第1例にて本発明を実施しない場合を説明する。図8(A)から(D)は図6(A)から(D)と対応し、図9(A)および(B)は図7(B)および(C)と対応している。図6(A)から(D)を用いて説明した内容と異なる部分のみ説明する。
使用者は、撮像装置100をθy_max1だけ振った後、図8(A)の時刻t4で操作を完了して振れを止める。本発明を実施しない場合、時刻t4で操作が確定し、測距点が変更される。図9(A)に示すように、θy_max1に応じて測距点はC5からC4に移動し、変更後の測距点C4がファインダ109の画面上に表示される。操作が完了した時刻t4において、図8(C)に示す補正レンズ104の位置LyとLy_limitとの差、すなわち補正レンズ104の補正余裕はdL2である。図6(C)のdL1と比較すると、「dL1>dL2」であり、dL2は手振れ量に対して小さい。この状態で撮像動作中に振れ補正が行われると、図8(C)に示すように、手振れにより補正レンズ104の位置が補正範囲の端まで達する。このため、補正レンズ104の移動が部分的にできなくなり、図8(D)に示すように撮像面上の被写体像の位置Iyが変化する。像ブレが抑制されないので、図9(B)に示すように、記録された画像は像ブレにより画像が劣化し、全体がぼけた画像となる。以上のように、本実施形態では、使用者が測距点を変更するために撮像装置100を振る操作を行った場合でも、手振れによる画像劣化を抑制することができる。
次に、使用者の操作による振れ量が比較的大きい場合(第2例)について説明する。図6(E)から(H)、図7(D)および(E)は、第2例にて本実施形態を実施した場合の動作を示す。図6(E)から(H)は図6(A)から(D)と対応し、図7(D)および(E)は図7(B)および(C)と対応している。図6(A)から(D)を用いて説明した内容と異なる部分のみ説明する。
使用者は、図6(E)の時刻t1で撮像装置100をヨー方向に振り始め、図6(A)のθy_max1より大きいθy_max2だけ振った後、反転して逆方向に振り、時刻t4で操作を完了して振れを止める。その際、図6(G)の時刻t2*で、振れにより補正レンズ104の位置が補正範囲の端まで到達する。このときから補正範囲外となり、時刻t3*では逆方向の振れにより補正レンズ104の位置が再び補正範囲内に戻る。図7(D)に示すように、時刻t3でθy_max2に応じて測距点はC5からC2に移動し、変更後の測距点C2がファインダ109の画面上に表示される。
図6(E)の時刻t1〜t4の期間では、使用者の操作によりヨー振れyが発生するが、図6(G)に示す時刻t2*〜t3*の期間を除き、振れ補正動作により補正レンズ104がヨー振れyを補正する方向に移動する。図6(H)において時刻t2*〜t3*の期間を除いて、撮像面上の被写体像の位置Iyは変化しない。そのため、使用者が操作を完了した時刻t4で、構図ずれが抑制される(図7(D)参照)。
時刻t5で使用者がレリーズボタン110を操作してレリーズ前段信号S1がON信号となることで合焦動作が行われ、測距点C2の位置に対応する被写体B(図7(E)参照)に対して焦点が合う。図7(E)に示すように、記録された画像データは、使用者が選択した測距点C2の位置に対応する被写体Bに焦点が合った画像のデータであり、振れ補正動作によって構図ずれや像ブレが抑制されている。
図8(E)から(H)、図9(C)および(D)は、第2例にて本発明を実施しない場合を示す。図8(E)から(H)は図6(A)から(D)と対応し、図9(C)および(D)は図7(B)および(C)と対応している。図6(A)から(D)を用いて説明した内容と異なる部分のみ説明する。
使用者は、図8(E)に示すように撮像装置100を、図8(A)のθy_max1より大きいθy_max2だけ振った後、時刻t4で操作を完了して振れを止める。この場合、時刻t4で操作が確定し、測距点が変更される。その際、図8(G)の時刻t2*で振れにより補正レンズ104の位置が補正範囲の端(Ly_limit)まで達する。補正範囲外の状態が続き、θy_max2に応じて測距点はC5からC2に移動し、変更後の測距点C2がファインダ109の画面上に表示される(図9(C)参照)。
図8(E)にて時刻t1〜t4の期間で、使用者の操作によりヨー振れyが発生するが、図8(G)の時刻t2*以降では、補正レンズ104はヨー振れyを補正する方向に移動できない。つまり、図8(H)に示すように撮像面上の被写体像の位置IyはdI2だけ変化する。そのため、使用者が振る操作を開始した時刻t1での表示(図7(A)参照)に対して、操作が完了した時刻t4の表示では被写体の画像が右に移動し、図9(C)に示すように構図ずれが発生する。
また図8(H)の時刻t5〜t6の期間で、撮像動作中に振れ補正を行う場合、補正レンズ104はヨー振れyを補正する方向に移動できない。そのため、撮像面上の被写体像の位置Iyが変化し、像ブレが抑制されない。図9(D)に示すように、構図ずれと像ブレにより画像が劣化し、被写体の画像が右に移動し、全体がぼけた画像となってしまう。
本実施形態では、使用者が操作の目的で行う振れによる構図ずれや手振れによる画像劣化を抑制できる。本実施形態によれば、構図ずれや画像劣化を抑制しつつ、操作性を向上させた撮像装置を提供することができる。
[変形例]
以下、第1実施形態の変形例を説明する。図10は、本変形例に係る撮影動作を示すフローチャートである。図3との相違点であるS121およびS122の処理のみ説明する。本変形例では、S104で振れ補正動作が行われた後、S121でレリーズ前段信号S1がON信号であるか否かが判定される。レリーズ前段信号S1がON信号である場合、S122に処理を進め、OFF信号である場合にはS104に戻る。S122で操作検出動作が行われた後、S107に進む。レリーズ前段信号S1がON信号であるときには、使用者が手指でレリーズボタン110を操作しているので、他の手指でダイヤルなどを同時に操作しようとした時、操作性が低下する可能性がある。本変形例では、撮像装置本体部を特定の方向に振る操作で像面上の任意の位置に測距点を設定できるため、操作性を向上させることができる。
図11は、本変形例に係るファインダ109の表示例を示す図である。本変形例では、自動選択動作の後に変更可能な測距点が限定される。図11(A)は、図10のS103での自動選択動作の後におけるファインダ109の表示を示す。表示画面には測距点C4が太枠で表示されるとともに、被写体像の情報から自動的に選択された変更可能な測距点A5、B2、D2、E5(候補位置を点線枠で示す)で表示される。図11(B)は、図10のS122での操作検出動作の後におけるファインダ109の表示を示す。変更可能な測距点から、操作検出動作によって選択された測距点(図中ではB2)に変更され、変更後の測距点がファインダ109の画面上に表示される。本変形例によれば、変更可能な測距点(候補位置)が限定されるため、誤操作の可能性を低減でき、操作性を向上させることができる。
図12(A)は、本変形例に係る撮像装置の振れ量を示すグラフである。縦軸および横軸の設定については図5(A)と同じである。本変形例では、振れ角速度の絶対値|ω|に応じて操作信号が出力される。ある時刻における振れ角速度の絶対値|ω|は、ピッチ方向の角速度ωpと、ヨー方向の角速度ωyを用いて下記式(2)で表される。
|ω|=√(ωp2+ωy2) 式(2)
図12(A)にて、点Ppeakは、|ω|が最小値|ω|_minとなるときの点である。点Ppeakにて、ピッチ方向の最大振れ量をθp_maxと表記し、ヨー方向の最大振れ量をθy_maxと表記する。出力される操作信号は、操作検出待ちフラグがONからOFFに変わるまでの間における、点Ppeakでのピッチ方向の最大振れ量θp_maxおよびヨー方向の最大振れ量θy_maxに相当する信号である。本変形例では、操作信号の出力に際し、角速度センサ103p、103yから出力された角速度信号を直接利用できるので、簡易な構成となる。
図12(B)の振れ量を示すグラフを参照して、第1実施形態の変形例における操作を説明する。この変形例では、ある時刻における振れ量P(θy,θp)を中心とした半径THの円C2が設定され、一定時間ごとに振れ量Pを検知して円C2の中心を更新する処理が実行される。振れ量の軌跡T上において、円C2の内側から外側に出る点P1と、円C2の外側から内側に入る点P2において、振れ量が閾値THを通過することになる。ある時刻における振れ量が、初期値ゼロに近い場合でも、逆に離れている場合でも、振れ量Pから円C2上の点(閾値THの点)までの距離がほぼ一定となる。したがって操作時に検知される振れ量が常にほぼ一定となるので、操作性が向上する。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態の撮像装置200を説明する。第1実施形態と同様の個所については説明を省略し、第1実施形態との相違点について説明する。このような説明の省略の仕方は後述の変形例や実施形態でも同じである。
図13は、本実施形態に係る操作検出回路111の操作検出動作を示すフローチャートである。図4と相違するステップは、S2051からS2053である。本実施形態では、S1054の後にS2051へ進み、振れ角速度の絶対値|ω|をω1に設定してメモリに記憶する処理が実行される。そしてS1058へ移行して処理を終了する。また、S1055で振れ量の絶対値|θ|が閾値THより小さいと判定された場合(yesの判定時)、S2052に進み、振れ角速度の絶対値|ω|をω2に設定してメモリに記憶する処理が行われる。
さらに、S2052の後にS2053へ処理を進め、ω1とω2がどちらも閾値TH2より大きいかどうかについて判定処理が行われる。ω1またはω2が閾値TH2以下である場合(noの判定時)、S1058に進む。ω1とω2がともに閾値TH2より大きい場合(yesの判定時)、S1056に進み、操作信号が出力される。すなわち、操作検出回路111と測距点設定回路113は、振れ量が閾値を通過したときの振れ状態であるところの振れ角速度の絶対値に応じて撮影条件を変更する。
図14に示すグラフを参照して、本実施形態の撮影動作を説明する。図14(A)および(B)は、ヨー振れyの正方向への操作による振れが入力された場合の、振れ量θy、振れ角速度ωyの時間変化をそれぞれ示す。横軸は時間軸tである。時刻t1から時刻t3までの時間、および時刻t4から時刻t6までの時間は、振れによる操作が行われる時間であり、撮像装置200に対して操作による振れが入力される。振れによる操作中には使用者が構図を確認する必要がないため、振れ角速度が比較的大きい。そのため、時刻t2および時刻t5で振れ量が閾値THをそれぞれ通過する際の振れ角速度ωy1は図14(B)の閾値TH2より大きく、操作検出回路111は操作信号を出力し、測距点が変更される。
図14(C)および(D)は、ヨー振れyの正方向へパンニングによる振れが入力された場合の、振れ量θy、振れ角速度ωyの時間変化をそれぞれ示す。横軸は時間軸tである。時刻t1から時刻t3までの時間、および時刻t4から時刻t6までの時間は、使用者によりパンニング操作が行われる時間であり、撮像装置200に対して操作による振れが入力される(図14(C)参照)。パンニング操作中には使用者が構図を確認しながら画角を変更する必要があるため、振れ角速度が比較的小さい。そのため、時刻t2および時刻t5で振れ量が閾値THをそれぞれ通過する際の振れ角速度ωy2、ωy3は図14(D)の閾値TH2より小さく、操作検出回路111は操作信号を出力せず、測距点が変更されない。ここではパンニング操作の例を説明したが、チルティング操作の場合についても同様である。
本実施形態では、パンニング(またはチルティング)時の振れによる操作を誤検出することが無いので、操作性が向上する。その他の点においては、第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。
[変形例]
図15および図16を参照して、第2実施形態の変形例を説明する。
図15は、本変形例に係る撮像装置の振れ量を示すグラフである。縦軸および横軸の設定については図5(A)と同じである。本変形例では、振れ量が閾値を通過したときの振れ状態であるところの、振れ方向の角度差に応じて撮影条件が変更される。θy軸と、初期値ゼロから点Pを結ぶ直線とがなす角を振れ方向φと定義する。軌跡T上において、点Pが円Cの内側から外側に向かって閾値THを通過したとき(点P1)の振れ方向の角度をφ1と表記する。また円Cの外側から内側に向かって閾値THを通過したとき(点P2)の振れ方向の角度をφ2と表記する。
図16は、本変形例に係る操作検出動作を示すフローチャートである。図4と相違するステップは、S2054からS2056である。本変形例では、S1054の後にS2054に進み、振れ方向φをφ1に設定してメモリに記憶する処理が実行される。そしてS1058に進み、処理を終了する。また、S1055でyesの判定が行われた場合、S2055に進み、振れ方向φをφ2に設定してメモリに記憶する処理が実行される。さらに、S2055の後にS2056に進み、φ1とφ2との差の絶対値|φ2−φ1|が所定の閾値TH3と比較される。|φ2−φ1|が閾値TH3より小さいか否かの判定処理が行われる。|φ2−φ1|≧TH3の場合(noの判定時)、S1058に進む。また|φ2−φ1|<TH3の場合(yesの判定時)、S1056に処理を進め、操作信号が取得される。
振れによる操作については、使用者の意図する操作方向が予め決まっているため、振れ方向の角度差が比較的小さい。本変形例では、振れ方向の角度差が比較的小さいときにのみ撮影条件が変更されるため、振れによる操作を誤検出することが無く、操作性が向上する。
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態の撮像装置300を説明する。
図17は、本実施形態に係る操作検出回路111の操作検出動作を示すフローチャートである。図4と相違するステップは、S3051からS3055である。本実施形態では、S1054の後のS3051でタイマが計時を開始し、開始時刻からの時間を計測して経過時間(Tと記す)を更新し続ける。また、S1057で操作検出待ちフラグがOFFに設定された後、S3053でタイマが計時を終了し、経過時間Tがゼロにリセットされる。
さらに、S1052の後(yesの判定時)にS3052へ処理を進め、経過時間Tが所定の閾値時間(T1と記す)より大きいか否かについて判定処理が行われる。T≦T1の場合(noの判定時)、S1055に進み、T>T1の場合(yesの判定時)、S3054に進む。S3054では操作検出待ちフラグがOFFに設定される。次のS3055でタイマが計時を終了し、経過時間Tがゼロにリセットされる。S3051、S3053、S3055の後、S1058に進む。
本実施形態の操作検出回路111と測距点設定回路113は、第1方向の振れにより振れ量が閾値を通過した後、所定時間内に、第2方向の振れにより振れ量が閾値を通過したことに応じて撮影条件が変更される。
図18は、本実施形態に係る撮影動作を示すグラフである。図18(A)から(C)は、ヨー振れyの正方向への操作による振れが入力された場合の、振れ量θy、操作検出待ちフラグFの各時間変化と、経過時間Tの変化を示す。時間軸t上での時刻t1〜t6、および入力される振れについては図14(A)と同様である。
振れ量が大きくなって、図18(A)の時刻t2で振れ量θyが閾値THを通過すると、操作検出待ちフラグがONとなり(図18(B))、タイマが計時を開始する(図18(C))。図18(A)の時刻t3で振れ量θyが最大振れ量θy_max1に到達し、時刻t4から振れ量θyが減少に転じて時刻t5で閾値THを通過する。時刻t6で振れ量θyがゼロとなる。使用者が行う振れによる操作中には構図を確認する必要がないため、振れ角速度は比較的大きい。そのため、経過時間TがT1に達する予定時刻t7よりも前に、時刻t5で振れ量が閾値THを通過した場合、操作検出回路111は操作信号を出力し、測距点が変更される。
図18(D)から(F)は、ヨー振れyの正方向へパンニングによる振れが入力された場合の、振れ量θy、操作検出待ちフラグFの各時間変化と、経過時間Tの変化を示す。時間軸t上での時刻t1〜t6、および入力される振れは図14(C)と同様である。パンニングでは、使用者が構図を確認しながら画角を変更する必要があるため、振れ角速度が比較的小さい。そのため、時刻t5で振れ量θyが閾値THを通過する前に、時刻t7で経過時間Tが閾値時間T1に達する(図18(F))。よって、操作検出回路111は操作信号を出力せず、測距点が変更されない。ここではパンニング操作の例を説明したが、チルティング操作の場合についても同様である。
本実施形態では、パンニング(またはチルティング)時の振れによる操作を誤検出することが無く、操作性が向上する。その他の点においては、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の構成を複数の実施形態として説明したが、上記の各実施形態に示した例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、以下の形態がある。
・ファインダ109の実施形態
撮像素子で取得された被写体像などを液晶モニタに表示する実施形態以外に、撮像光学系を通過して撮像面に入射する光束をミラーなどで分岐して光学的に表示する光学ファインダがある。
・AF(オートフォーカス)方式の実施形態
撮像素子で取得された被写体像の情報から焦点ずれ量を算出する実施形態以外に、AFセンサを設けてずれ量を算出する位相差AF方式がある。また、フォーカスレンズを移動させながらコントラスト値が高い位置を探索するコントラストAF方式がある。
・像ブレ補正の実施形態
像ブレ補正手段として補正レンズを移動させる実施形態以外に、撮像素子やプリズムを移動させる形態がある。また光学式像ブレ補正(または光学防振)に限定されず、電子式像ブレ補正(または電子防振)を採用してもよい。電子式像ブレ補正の場合、撮像面で得られる像の一部を切り出し、その切り出し位置を振れに合わせて移動させる処理が行われる。あるいは光学式像ブレ補正と電子式像ブレ補正との併用も可能である。また、振れ検出に角速度センサを用いる実施形態以外に、撮像面で得られる像に基づいて振れベクトル(動きベクトル)を算出することで、画像処理により振れを検出する形態がある。
・撮影条件についての実施形態
前記実施形態では撮像装置を振る操作に応じて変更される撮影条件として、焦点状態の検出位置を例示したが、測光ポイントの位置や階層メニューの選択、各種撮影条件のリセットなどを行う実施形態でもよい。