以下に図面を参照して、開示の電力需要予測プログラム、電力需要予測装置、および電力需要予測方法の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1の説明)
図1は、実施の形態1における電力需要予測装置101の動作例を示す説明図である。電力需要予測装置101は、電力需要を予測するコンピュータである。電力需要予測装置101は、例えば、サーバである。例えば、電力需要予測装置101の利用者は、電力需要予測装置101が予測した1日の最大電力が発生する時刻と、最大電力に基づいて契約電力を設定することにより、電気料金の削減を行うことができる。近年、東日本大震災前と比べて電気料金が上昇しており、特に製造業に深刻な影響を与えている。
ここで、電気料金は、契約電力に応じた基本料金と、電力量料金とを含む。そして、基本料金は、電力量料金に比べ、数時間の節電対策により、コスト削減が可能である。しかしながら、節電対策によっては、対策前後の電力に影響がでるものがあり、予測精度が悪いと、契約電力が上がってしまうことがある。具体的には、下記に示す参考文献1には、節電対策として、エアコンをこまめにON/OFFすると、エアコンの再始動後に消費電力が急増することが示されている。そして、このような急増した消費電力によって予測が外れると、契約電力が上がってしまうことになる。
(参考文献1:夏に活躍するエアコン、つけっ放しとマメに切る場合とではどっちがお得? − | Technity、[平成28年5月20日検索]、ggsoku.com/tech/efficient−use−of−aircon/)
このように、基本料金を削減することはハイリスク・ハイリターンであり、精度良く最大電力となる時刻を予測できないと契約電力が上がってしまい、損をする恐れがある。ここで、例えば、3年間から5年間の学習データを用いることにより、最大電力の誤差率で予測精度を評価する技術がある。
しかしながら、前述の技術では、学習データが少なくなるほど、予測対象期間における需要電力の予測精度が劣化する。例えば、電力の使い方の傾向が、東日本大震災による電力使用抑制により変化したため、東日本大震災前のデータを学習データとすることは不適切な場合がある。このような場合、東日本大震災以降のデータを学習データとして用いることとなり、学習データが少なくなるために、予測精度が劣化する。
そこで、本実施の形態では、所定の期間ごとの最大電力となる時間帯と気象情報とから生成した判別モデルに、予測対象期間の気象予測を入力して予測対象期間の最大電力となる時間帯を特定し、その時間帯で最大電力となる実績から予測対象期間の電力を予測する。
図1を用いて、電力需要予測装置101の動作例について説明する。本実施の形態では、予測対象期間は、どのような長さでもよく、1日間でもよいし1週間でもよい。予測対象期間の長さは、例えば、電力需要予測装置101の利用者によって設定される。本実施の形態では、予測対象期間の長さは、1日間とする。そして、予測を行う日を、予測日とする。例えば、予測日は、当日である。また、予測対象期間は、いつであってもよいが、以下の説明では、翌日とする。また、電力需要予測装置101は、判別モデルを生成する際に、所定の期間ごとのデータに基づいて判別モデルを生成する。所定の期間の長さは、予測対象期間の長さと同一であることが好ましい。従って、本実施の形態では、所定の期間の長さは、1日間とする。また、所定の期間の始期と終期は、所定の期間の長さ以下であればどのようなものでもよい。例えば、所定の期間が1日間である場合、0:00〜24:00としてもよいし、1日の営業時間の開始時刻から終了時刻までとしてもよいし、9:00〜次の日の9:00というように、日を跨ってもよい。
電力需要予測装置101は、単位時間当たりの消費電力を示す消費電力情報102、および消費電力が最大となる時間帯を目的変数とする説明変数の値が時刻に対応付けて蓄積した時刻別情報にアクセス可能である。時刻別情報は、例えば、電力需要予測装置101の記憶部に格納されている。単位時間当たりの消費電力は、どのような時間の長さでもよいが、例えば、30分ごとの消費電力である。また、目的変数や説明変数は、回帰分析に関する用語である。そして、回帰分析は、1つまたは複数の説明変数と、1つの目的変数の関係を求め、説明変数から目的変数を推定する分析方法である。従って、説明変数には、目的変数を説明する変数が設定される。また、目的変数は、回帰分析によって予測したい変数が設定される。
そして、判別モデルを生成する際における説明変数は、目的変数を説明する変数であればどのようなものでもよい。例えば、説明変数は、気象情報として、最高気温、代表湿度、代表天気等がある。ここで、気象情報は、消費電力を消費した消費者の位置に応じた気象情報であることが好ましい。そして、代表湿度は、所定の期間を代表する湿度である。また、代表天気は、所定の期間を代表する天気の種別である。例えば、最高気温は、最高気温が高い程、エアコンによる消費電力が増えることが予想されるため、消費電力が最大となる時間帯を説明するものと言える。電力需要予測装置101の利用者は、1以上の任意の説明変数を設定することができる。
以下の説明では、説明変数は、最高気温、代表湿度、代表天気を含む気象情報であるとする。例えば、電力需要予測装置101は、消費電力情報102と気象情報とを時刻に対応付けて蓄積した記憶部を有する。より詳細には、消費電力情報102は、時刻に対応付けられた30分ごとの消費電力を示す。例えば、消費電力情報102は、8:00〜8:30の消費電力、8:30〜9:00の消費電力、…を示す。
また、気象情報は、時刻に対応付けられた最高気温、代表湿度、代表天気を示す。例えば、気象情報は、所定の期間が1日であれば、1月1日における最高気温、代表気温、代表天気、1月2日における最高気温、代表湿度、代表天気、…を示す。または、気象情報は、所定の期間より細かい粒度の時刻、例えば、1時間ごとの気温、湿度、天気を示してもよい。そして、電力需要予測装置101の利用者が、所定の期間を1日と設定した際に、電力需要予測装置101は、気象情報に基づいて、所定の期間ごとの最高気温、代表湿度、代表天気を求めてもよい。
電力需要予測装置101は、図1の(1)で示すように、時刻別情報に含まれる消費電力情報102を参照して、所定の期間ごとに、所定の期間を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯を特定する。図1で示すグラフ111は、日ごとに、1日を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯の頻度を示す。そして、グラフ111の例では、複数の時間帯として、時間帯z1〜z3を示す。例えば、電力需要予測装置101は、ある日において最大の消費電力となった時間帯がz1であり、別の日において最大の消費電力となった時間帯がz2である、というように特定する。
次に、電力需要予測装置101は、図1の(2)で示すように、所定の期間ごとに特定した時間帯と所定の期間ごとの説明変数の値とに基づいて、判別モデルを生成する。ここで、生成する判別モデルは、入力される説明変数により消費電力が最大となる時間帯が複数の時間帯のいずれであるかを判別するモデルである。また、判別モデルは、例えば、SVM(Support Vector Machine)を用いて生成することができる。
図1の例では、電力需要予測装置101は、判別モデルを生成するために、時刻別情報に含まれる、所定の期間ごとに特定した時間帯を、所定の期間ごとの気象情報に対応付けたデータセット103を作成する。図1では、データセット103を、図1のグラフ111の右側の図として示す。例えば、データセット103は、ある日について特定した時間帯がz1であることと、ある日の気象情報とを対応付けたデータを含む。さらに、データセット103は、別の日について特定した時間帯がz3であることと、別の日の気象情報とを対応付けたデータを含む。
図1で示すグラフ121は、図面上での表示のし易さのため、説明変数を最高気温と代表湿度とし、目的変数を時間帯とした際に、生成した判別モデルによって示される時間帯z1、z2、z3の境界となる直線122〜124とデータセット103との関係を示す。グラフ121内にプロットした三角形、ひし形、四角形は、データセット103の各データを示す。
そして、電力需要予測装置101は、図1の(3)で示すように、生成した判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を特定する。具体的には、電力需要予測装置101は、予測対象期間における説明変数の値を、生成した判別モデルに入力することにより、予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を得る。予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を、以下、「予測時間帯」と称する。図1の例では、電力需要予測装置101は、予測対象期間における説明変数の値として、翌日の気象情報を生成した判別モデルに入力することにより、予測時間帯がz1であると特定する。
次に、電力需要予測装置101は、図1の(4)で示すように、消費電力情報102のうち、予測時間帯で最大の消費電力となる所定の期間の消費電力情報に基づいて、予測対象期間における需要電力の傾向を特定する。ここで、予測対象期間における需要電力の傾向は、予測対象期間の各時刻における需要電力として、予測対象期間の電力波形を示してもよいし、単に、予測対象期間のうちの最大需要となる時刻と、その時刻における需要電力を示してもよい。
図1では、消費電力情報102のうち、時間帯z1に最大電力となる日の消費電力情報の電力波形を示すグラフ131と、時間帯z2に最大電力となる日の消費電力情報の電力波形を示すグラフ132とを示す。電力需要予測装置101は、消費電力情報102のうち、グラフ131が示す消費電力情報のように、時間帯z1に最大電力となる日の消費電力情報に基づいて、翌日の需要電力の傾向を特定する。ここで、時間帯z1に最大電力となる日の消費電力情報から、翌日の需要電力の傾向を特定する方法は、例えば、時間帯z1に最大電力となる日の消費電力情報を学習データとして、回帰分析を行う。
以上により、電力需要予測装置101は、時間方向に関して予測に利用するデータを絞り込んでいるため、学習データが少なくとも、1日の中で最大電力となる時間帯の予測精度が正確になり、翌日の需要電力の予測精度の劣化を抑えることができる。また、電力需要予測装置101は、最大電力の予測を行い、予測した最大電力を用いて補正することにより、電力方向に関して、さらに予測精度を向上させることができる。予測した最大電力を用いて補正することについては、図3で説明する。
また、図1の説明において、消費電力を消費する消費者は、どのような者でもよい。例えば、消費者は、企業、自治体等の事業所や、個人でもよい。事業所は、例えば、事務を行う事務所や、工場である。
また、図1の説明では、説明変数は、消費電力を消費した消費者の位置に応じた気象情報であることを説明したが、これに限らない。例えば、説明変数は、消費電力を消費した消費者が生産する物の数でもよい。ここで、消費者が生産する物は、電力を用いて生産するものであればどのようなものでもよく、例えば、コンピュータ、半導体部品等である。
また、所定の期間および予測対象期間の長さは、1日間としたが、1週間としてもよい。所定の期間および予測対象期間の長さを1週間とする場合、所定の期間の始期と終期について、日曜日から土曜日までとしてもよいし、月曜日から日曜日までとしてもよいし、平日となる月曜日から金曜日までとしてもよい。また、所定の期間および予測対象期間の長さを1週間とする場合、電力需要予測装置101は、複数の時間帯の各時間帯を、1日間としてもよいし、1日の営業時間としてもよいし、1日の午前、午後1、午後2というようにしてもよい。次に、電力需要予測装置101のハードウェア構成について、図2を用いて説明する。
(電力需要予測装置101のハードウェア構成例)
図2は、電力需要予測装置101のハードウェア構成例を示す説明図である。図2において、電力需要予測装置101は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read−Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、を含む。また、電力需要予測装置101は、ディスクドライブ204およびディスク205と、通信インターフェース206と、を含む。また、CPU201〜ディスクドライブ204、通信インターフェース206はバス207によってそれぞれ接続される。
CPU201は、電力需要予測装置101の全体の制御を司る演算処理装置である。また、CPU201は、複数のプロセッサコアを有してもよい。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶する不揮発性メモリである。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される揮発性メモリである。
ディスクドライブ204は、CPU201の制御に従ってディスク205に対するデータのリードおよびライトを制御する制御装置である。ディスクドライブ204には、例えば、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどを採用することができる。ディスク205は、ディスクドライブ204の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発性メモリである。例えばディスクドライブ204が磁気ディスクドライブである場合、ディスク205には、磁気ディスクを採用することができる。また、ディスクドライブ204が光ディスクドライブである場合、ディスク205には、光ディスクを採用することができる。また、ディスクドライブ204がソリッドステートドライブである場合、ディスク205には、半導体素子によって形成された半導体メモリ、いわゆる半導体ディスクを採用することができる。
通信インターフェース206は、ネットワークと内部のインターフェースを司り、他の装置からのデータの入出力を制御する制御装置である。具体的に、通信インターフェース206は、通信回線を通じてネットワークを介して他の装置に接続される。通信インターフェース206には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
また、電力需要予測装置101の管理者が、電力需要予測装置101を直接操作する場合、電力需要予測装置101は、ディスプレイ、キーボード、マウスといったハードウェアを有してもよい。
次に、電力需要予測装置101が行う電力需要予測処理を、フローチャートとして図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1における電力需要予測処理例を示す説明図である。電力需要予測処理は、図3で示すように、需要予測を行う処理と、最大電力を予測する処理という2つの処理に分かれる。電力需要予測装置101は、需要予測を行う処理と、最大電力を予測する処理とをそれぞれ独立に実行する。従って、電力需要予測装置101は、需要予測を行う処理を行った後に最大電力を予測する処理を行ってもよいし、また、逆の順序で行ってもよいし、それぞれ並列に行ってもよい。
需要予測を行う処理では、電力需要予測装置101は、事業所ごとの統計情報から、推定すべき時間帯を設定する(ステップS301)。次に、電力需要予測装置101は、判別分析によって、日の最大電力が発生する時間帯を特定し、特定した時間帯に発生する実績情報を学習情報として回帰分析を行うことにより、需要予測する(ステップS302)。
一方、最大電力を予測する処理では、電力需要予測装置101は、回帰分析により、最大電力を予測する(ステップS303)。そして、電力需要予測装置101は、需要予測の結果と、予測した最大電力とを合成する(ステップS304)。これにより、電力需要予測装置101は、日の最大電力と最大電力発生時刻の誤差率が低い需要予測を作成することができる。
(電力需要予測装置101の機能構成例)
図4は、実施の形態1における電力需要予測装置101の機能構成例を示す説明図である。電力需要予測装置101は、制御部400を有する。制御部400は、外気温取得部401と、消費電力取得部402と、時間帯推定部403と、最大時間帯予測部404と、電力波形作成部405と、最大電力予測部406と、需要予測部407とを含む。制御部400は、記憶装置に記憶されたプログラムをCPU201が実行することにより、各部の機能を実現する。記憶装置とは、具体的には、例えば、図2に示したROM202、RAM203、ディスク205などである。また、各部の処理結果は、RAM203、CPU201のレジスタや、CPU201のキャッシュメモリ等に格納される。
また、電力需要予測装置101は、第1記憶部410と、第2記憶部412とにアクセス可能である。第1記憶部410は、RAM203、ディスク205といった記憶装置である。第1記憶部410は、実績DB411を有する。第2記憶部412は、実施の形態1にかかるプログラムを記憶する。実績DB411は、図1で説明した時刻別情報に相当する。第2記憶部412は、ROM202やディスク205といった記憶装置である。
外気温取得部401は、気象情報を取得する。取得する気象情報は、消費者の位置に応じた気象情報であることが好ましい。例えば、外気温取得部401は、気象庁のWebページにアクセスして、気象情報として、消費者の所在地における気温、湿度、天気を示す値を取得する。
消費電力取得部402は、消費者が消費した消費電力情報102を取得する。消費電力取得部402は、例えば、消費者が消費した消費電力を測定するスマートメータから、消費電力情報102を取得する。消費電力取得部402は、取得した消費電力情報102を、第1記憶部410内の実績DB411に格納する。
時間帯推定部403は、実績DB411を参照して、所定の期間ごとに、所定の期間を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯を特定する。時間帯推定部403の具体的な処理内容については、図7〜図9を用いて詳細に説明する。
最大時間帯予測部404は、実績DB411を参照して、所定の期間ごとに特定した時間帯と所定の期間ごとの説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により消費電力が最大となる時間帯が複数の時間帯のいずれであるかを判別する判別モデルを生成する。そして、最大時間帯予測部404は、予測対象期間における説明変数の値を、生成した判別モデルに入力することにより、予測時間帯を特定する。最大時間帯予測部404の具体的な処理内容については、図10、図11を用いて説明する。
電力波形作成部405は、実績DB411に記憶された消費電力情報のうち、最大時間帯予測部404で予測した予測時間帯で最大の消費電力となる所定の期間の消費電力情報に基づいて、予測対象期間における電力波形を作成する。電力波形作成部405の具体的な処理内容については、図12、図13を用いて説明する。なお、図1において、予測対象期間における需要電力の傾向として、予測対象期間における電力波形を示してもよいし、単に、予測対象期間のうちの最大需要となる時刻と、その時刻における需要電力を示してもよいことを説明した。従って、電力波形作成部405は、予測対象期間のうちの最大需要となる時刻と、その時刻における需要電力を出力してもよい。
最大電力予測部406は、実績DB411を参照して、所定の期間ごとの最大の消費電力と、所定の期間ごとの説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により最大の消費電力を出力するモデルを生成する。そして、最大電力予測部406は、生成したモデルを用いて、予測対象期間における最大の消費電力を特定する。具体的には、最大電力予測部406は、予測対象期間における説明変数の値を、生成したモデルに入力することにより出力される値を、予測対象期間における最大の消費電力として特定する。最大電力予測部406の具体的な処理内容については、図14、図15を用いて説明する。
需要予測部407は、電力波形作成部405が作成した電力波形を、最大電力予測部406が予測した予測対象期間における最大の消費電力で補正する。需要予測部407の具体的な処理内容については、図16を用いて説明する。また、電力波形作成部405が、予測対象期間のうちの最大需要となる時刻と、その時刻における需要電力を出力してもよいことを説明した。この場合、需要予測部407は、電力波形作成部405が出力する需要電力の代わりに、最大電力予測部406が予測した最大の消費電力を、その時刻における需要電力とする。
以下、図4に示した各機能の詳細を、図5〜図16を用いて説明する。図5〜図16の説明では、予測対象期間を翌日とする。
図5は、実績DB作成処理手順の一例を示すフローチャートである。実績DB作成処理は、最大時間帯予測部404や最大電力予測部406で作成するモデルに用いるデータセットを作成するためのデータを実績DB411に蓄積する処理である。実績DB作成処理は、定期的に実行される。
電力需要予測装置101は、消費電力情報102と気象情報とを、実績DB411に格納する(ステップS501)。ステップS501の処理終了後、電力需要予測装置101は、実績DB作成処理を終了する。
図6は、実施の形態1における電力需要予測処理手順の一例を示すフローチャートである。電力需要予測処理は、翌日の電力需要を予測する処理である。電力需要予測装置101は、図6に示すステップS601〜S603の処理と、ステップS604の処理とを、独立に実行することができる。
電力需要予測装置101は、時間帯推定部403が有する機能により、時間帯推定処理を実行する(ステップS601)。時間帯推定処理については、図7〜図9で説明する。次に、電力需要予測装置101は、最大時間帯予測部404が有する機能により、最大時間帯予測処理を実行する(ステップS602)。最大時間帯予測処理については、図10、図11で説明する。そして、電力需要予測装置101は、電力波形作成部405が有する機能により、電力波形作成処理を実行する(ステップS603)。電力波形作成処理については、図12、図13で説明する。
また、電力需要予測装置101は、最大電力予測部406が有する機能により、最大電力予測処理を実行する(ステップS604)。最大電力予測処理については、図14、図15で説明する。
ステップS603、および、ステップS604の処理終了後、電力需要予測装置101は、需要予測部407が有する機能により、需要予測処理を実行する(ステップS605)。需要予測処理については、図16で説明する。ステップS605の処理終了後、電力需要予測装置101は、電力需要予測処理を終了する。
(時間帯推定部403の処理)
次に、時間帯推定部403による時間帯推定処理について、図7〜図9を用いて説明する。まず、図7、図8を用いて、時間帯推定処理を説明し、図9で、時間帯推定処理の補足説明を行う。
図7は、時間帯推定処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図8は、時間帯推定処理の動作例を示す説明図である。図7で示す各ステップについて、図8を用いて説明を行う。時間帯推定処理は、予測する時間帯を推定する処理である。
電力需要予測装置101は、実績DB411に蓄積された過去の消費電力情報から、日ごとに、1日の中で最大電力が発生する時刻を特定する(ステップS701)。そして、電力需要予測装置101は、日ごとに特定した時刻を集計する(ステップS702)。ステップS701、S702について、図8の(1)を用いて説明する。図8の(1)で示すグラフ801は、事業所Aにおける時刻と最大電力との関係を示すグラフである。グラフ801の横軸は、1日の中の30分ごとの時刻を示す。グラフ801の縦軸は、1日の30分ごとの各時刻で最大電力となった頻度を示す。例えば、グラフ801は、9時に最大電力となった日が18日あったことを示す。従って、電力需要予測装置101は、実績DB411に蓄積された過去の消費電力情報から、日ごとに、1日の中の最大電力が発生する時刻を特定し、日ごとに特定した時刻を集計する。
図7の説明に戻り、ステップS702の処理後、電力需要予測装置101は、集計した時刻群から、任意の閾値以下の時刻を除去する(ステップS703)。ステップS703について、図8の(2)を用いて説明する。図8の(2)では、電力需要予測装置101は、任意の閾値を頻度1として、集計した時刻群から、頻度1以下となる頻度の時刻を除去する。図8の例では、電力需要予測装置101は、集計した時刻群から、頻度1以下となる8:30、14:30、15:00を除去する。すると、電力需要予測装置101は、9:00−11:30の6ポイントを残すことになる。
図7の説明に戻り、ステップS703の処理後、電力需要予測装置101は、残った時刻をN等分し、予測する時間帯を設定する(ステップS704)。ここで、Nは、2以上の自然数である。また、N等分内では、時刻が連続するようにする。ステップS704の処理修了後、電力需要予測装置101は、時間帯推定処理を終了する。ステップS704について、図8の(3)を用いて説明する。図8の(3)では、Nを3とした場合の例を示す。電力需要予測装置101は、3つの時間帯として、9:00−9:30の2ポイントをゾーン1に設定し、10:00−10:30の2ポイントをゾーン2に設定し、11:00−11:30の2ポイントをゾーン3に設定する。
図9は、時間帯推定処理の補足説明図である。図9では、次回帯推定処理の補足説明として、静的に等分すると、ピーク発生時刻が偏った事業所に対して判別精度が低下する例を示す。
図9に示すグラフ901、902、903は、それぞれ、事業所として、事務所A、B、工場Cにおける時刻と最大電力との関係を示すグラフである。例えば、10:00−11:00、13:00−14:00、15:00−16:00というように静的に3等分するとする。すると、事務所Aでは、グラフ901が示すように、均等にピークが発生しており、3クラスの判別問題となるが、事務所Bでは、グラフ902が示すように、午後だけにピークが発生しており、2クラスの判別問題となってしまう。さらに、工場Cでは、グラフ903が示すように、午前だけにピークが発生しており、1クラスの判別問題となってしまう。従って、ステップS703、S704の処理で説明したように、任意の閾値を除いて残った時刻を等分するという、動的に等分することが好ましい。
(最大時間帯予測部404の処理)
次に、最大時間帯予測部404による最大時間帯予測処理について、図10、11を用いて説明する。
図10は、最大時間帯予測処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図11は、最大時間帯予測処理の動作例を示す説明図である。最大時間帯予測処理は、判別モデルを生成し、生成した判別モデルから、予測対象期間の最大の消費電力となる時間帯を予測する処理である。図10で示す各ステップについて、図11を用いて説明を行う。
電力需要予測装置101は、判別モデルを生成するため、1日の代表の気象情報を説明変数とし、N等分した時間帯のうち、1日の中で最大の消費電力となる時刻が含まれる時間帯を目的変数とするデータセットを作成する(ステップS1001)。ステップS1001について、図11の(1)を用いて説明する。図11の(1)では、目的変数が時間帯であり、説明変数が、最高気温、代表湿度、代表天気である場合のデータセット1101を示す。図11の(1)では、3つのレコード1101−1〜3を示す。そして、1つのレコードが1日分のデータを示す。具体的には、電力需要予測装置101は、実績DB411に記憶されている気温、湿度、天気から、1日の中の最高気温と、代表湿度、代表天気とを取得する。最高気温は、1日の中での最高気温である。代表気温は、例えば、1日の気温の平均値や中央値である。代表天気は、例えば、1日の天気で最も多かった天気の種別である。そして、電力需要予測装置101は、N個の時間帯のうちの前述の時刻が含まれると判定した時間帯と、取得した気温、湿度、天気とを、判別モデルのデータセットとして作成する。
図10の説明に戻り、ステップS1001の処理終了後、電力需要予測装置101は、作成したデータセットに基づいて、判別モデルを生成する(ステップS1002)。ステップS1002について、図11の(2)を用いて説明する。図11の(2)で示すグラフ1102は、図面上での表示のし易さのため説明変数を最高気温と代表湿度とし、目的変数を時間帯とした際に、生成した判別モデルと、データセット1101との関係を示す。ここで、グラフ1102で示すように、生成した判別モデルは、ゾーン1、2、3の境界となる直線1103〜1105で示される。グラフ1102内にプロットした三角形、ひし形、四角形は、データセット1101の各データを示す。
図10の説明に戻り、ステップS1002の処理終了後、電力需要予測装置101は、翌日の気象情報を取得する(ステップS1003)。ステップS1003について、図11の(3)を用いて説明する。電力需要予測装置101は、例えば気象庁のWebページにアクセスし、表1111に示すように、最高気温24度、代表湿度85%、代表天気「曇り」という翌日の気象情報を取得する。
図10の説明に戻り、ステップS1003の処理終了後、電力需要予測装置101は、生成した判別モデルに、取得した翌日の気象情報を入力することにより、翌日の最大電力になる予測時間帯を特定する(ステップS1004)。ステップS1004の処理終了後、電力需要予測装置101は、最大時間帯予測処理を終了する。ステップS1004について、図11の(4)を用いて説明する。電力需要予測装置101は、ステップS1002の処理によって生成した判別モデルに、表1111で示す翌日の気象情報を入力することにより、翌日の最大電力になる予測時間帯を特定する。図11の例では、電力需要予測装置101は、表1112で示すように、翌日の最大電力になる予測時間帯がゾーン1であると特定する。
より具体的には、生成した判別モデルの一例として、図11の(2)の例を用いて説明する。電力需要予測装置101は、生成した判別モデルとして、直線1103を示す式、直線1104を示す式、直線1105を示す式を生成する。図11の(2)の例では、xを最高気温とし、yを代表湿度とし、a1〜a3を最高気温の係数、b1〜b3を代表湿度の係数とし、c1〜c3を切片とする、a1x+b1y+c1=0、a2x+b2y+c2=0、a3x+b3y+c3=0という式を得る。そして、電力需要予測装置101は、直線を示す式のそれぞれの左辺に、翌日の気象情報をそれぞれ入力して得られる値の正負の組み合わせにより、予測時間帯がゾーン1〜3のうちのどのゾーンとなるかを特定することができる。例えば、翌日の気象情報を入力した結果、直線1103を示す式の左辺が負となり、かつ、直線1104を示す式の左辺が正となる場合、電力需要予測装置101は、翌日の最大電力になる予測時間帯がゾーン1であると特定する。
(電力波形作成部405の処理)
次に、電力波形作成部405による電力波形作成処理について、図12、図13を用いて説明する。
図12は、実施の形態1における電力波形作成処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図13は、電力波形作成処理の動作例を示す説明図である。電力波形作成処理は、特定した予測時間帯で最大電力となる過去データから、予測対象日となる翌日の電力波形を作成する処理である。図12で示すステップS1202について、図13を用いて説明を行う。
電力需要予測装置101は、実績DB411を参照して、予測日から過去M日分の過去データを取得する(ステップS1201)。Mは、自然数である。例えば、Mは30である。
次に、電力需要予測装置101は、取得した過去データのうち、予測時間帯に最大電力となる過去データのみ収集する(ステップS1202)。ステップS1202について、図13を用いて説明する。図13では、ステップS1201で取得したデータとして、それぞれ、グラフ1301、1302、1303で示す過去データがあるとする。そして、グラフ1301で示す過去データは、ゾーン1で最大電力が発生しており、グラフ1302で示す過去データは、ゾーン2で最大電力が発生しており、グラフ1303で示す過去データは、ゾーン3で最大電力が発生しているとする。そして、翌日の最大電力が発生する時間帯は、図11の(4)で示したように、ゾーン1とする。この場合、電力需要予測装置101は、取得した過去データのうち、グラフ1301で示す過去データのみ収集する。
図12の説明に戻り、電力需要予測装置101は、収集した過去データに基づいて、需要予測を示す電力波形を作成する(ステップS1203)。ステップS1203の処理終了後、電力波形作成処理を終了する。
(最大電力予測部406の処理)
次に、最大電力予測部406による最大電力予測処理について、図14、図15を用いて説明する。
図14は、最大電力予測処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図15は、最大電力予測処理の動作例を示す説明図である。図14で示すステップS1402〜S1405について、図15を用いて説明を行う。最大電力予測処理は、過去データから、予測対象日となる翌日における最大電力を予測する処理である。
電力需要予測装置101は、実績DB411を参照して、予測日から過去M日分の過去データを取得する(ステップS1401)。
次に、電力需要予測装置101は、取得した過去データから、最大電力を目的変数、最大電力以外の項目を説明変数としたデータセットを作成する(ステップS1402)。最大電力以外の項目は、実績DB411に蓄えられた情報のうちの消費電力を除く情報であり、例えば気象情報である。ステップS1402について、図15を用いて説明する。図15の(1)では、目的変数が最大電力であり、説明変数が、最高気温、代表湿度、代表天気である場合のデータセット1501を示す。図15の(1)では、3つのデータ1501−1〜3を示す。ステップS1401において、M日分の過去データを取得するため、データセット1501に含まれるデータの個数は、Mとなる。
図14の説明に戻り、電力需要予測装置101は、作成したデータセットに基づいて、重回帰分析による回帰分析モデルを生成(ステップS1403)。例えば、電力需要予測装置101は、回帰分析モデルとして、下記(1)式のようなモデルを生成する。
y=β0+β1最大気温+β2代表湿度+…+βnx …(1)
ここで、yは、最大電力である。β0は、切片である。β1は、説明変数となる最大気温の係数である。β2は、説明変数となる代表湿度の係数である。βnは、説明変数xの係数である。
図14の説明に戻り、電力需要予測装置101は、翌日の気象情報を取得する(ステップS1404)。ステップS1404について、図15の(2)を用いて説明する。電力需要予測装置101は、例えば気象庁のWebページにアクセスし、表1511に示すように、最高気温24度、代表湿度85%、代表天気「曇り」という翌日の気象情報を取得する。
図14の説明に戻り、電力需要予測装置101は、生成した回帰分析モデルに、取得した翌日の気象情報を入力することにより、翌日の予測最大電力を特定する(ステップS1405)。ステップS1405の処理終了後、電力需要予測装置101は、最大電力予測処理を終了する。ステップS1405について、図15の(3)を用いて説明する。電力需要予測装置101は、β0〜βnの値が決まった(1)式に、取得した翌日の気象情報を入力することにより、表1512で示すように、翌日の予測最大電力を1480[W]と特定する。
(需要予測部407の処理)
次に、需要予測部407による需要予測処理について、図16を用いて説明する。
図16は、需要予測処理手順の一例を示すフローチャートである。需要予測処理は、翌日の需要電力を予測する処理である。
電力需要予測装置101は、ステップS1405の処理で得られた、予測最大電力を取得する(ステップS1601)。例えば、電力需要予測装置101は、図15で示した1480[W]を取得する。また、電力需要予測装置101は、ステップS1203の処理で得られた、需要予測を示す電力波形から最大電力を取得する(ステップS1602)。例えば、電力需要予測装置101は、需要予測を示す電力波形から、1350[W]を取得する。ここで、需要予測を示す電力波形について、ステップS1203の処理では、予測時間帯に最大電力となる過去データを用いて予測を行うが、予測時間帯という幅があるため平均化されるので、最大電力が低下することになる。従って、一般的に、ステップS1602で得られる値は、ステップS1601で得られる値より小さいものとなる。
そして、電力需要予測装置101は、ステップS1601の処理で得られた予測最大電力と、ステップS1602の処理で得られた最大電力とから、補正係数を算出する(ステップS1603)。例えば、電力需要予測装置101は、予測最大電力を最大電力で除することにより、補正係数を算出する。具体的には、電力需要予測装置101は、補正係数を、予測最大電力=1480÷1350≒1.1と算出する。
次に、電力需要予測装置101は、作成した電力波形と、予測した最大電力との合成として、需要予測を示す電力波形に、補正係数を乗算する(ステップS1604)。ステップS1603の例を用いると、需要予測を示す電力波形を示す各電力に、補正係数として、1.1を乗算する。ステップS1604の処理終了後、電力需要予測装置101は、需要予測処理を終了する。
図17は、予測値の精度評価方法の一例を示す説明図である。図17で示すグラフ1701は、予測値の評価方法を説明するために、実測値と予測値とを比較したグラフである。グラフ1701の横軸は、30分刻みの時刻を示す。グラフ1701の縦軸は、消費電力[W]を示す。そして、グラフ1701の実線が実測値を示し、グラフ1701の破線が予測値を示す。
予測値の精度評価方法として、実施の形態1では、ピーク時刻誤差、ピーク電力誤差率を用いる。ピーク時刻誤差は、実測値のピーク時刻と予測値のピーク時刻との差分である。ピーク電力誤差率は、実測値のピーク消費電力に対する、実測値のピーク消費電力と予測値のピーク消費電力との差分である。
例えば、図17で示す予測値を評価すると、ピーク時刻誤差は、実測値のピーク時刻=11:00であり、予測値のピーク時刻=13:00であるから、13−11=2[h]となる。また、ピーク電力誤差率は、実測値のピーク消費電力=1000であり、予測値のピーク消費電力=950であるから、(1000−950)/1000*100=5[%]となる。
次に、図17で示した精度評価方法を用いて、最大電力予測部により得られた最大電力で補正を行わない場合の予測値の精度評価を図18で示し、補正を行う場合の予測値の精度評価を図19で示す。また、図18と図19とで共通する説明として、SVMおよびステップワイズ法による重回帰分析を行う実施の形態1にかかる方法に対する一般的な方法を、ステップワイズ法による重回帰分析だけを行ったものとする。そして、実施の形態1にかかる方法と、一般的な方法とにおいて、学習データを1年分とし、上位3日について、精度評価を行う。従って、ピーク時刻誤差を、下記(2)式のように算出し、ピーク電力誤差率を、下記(3)式のように算出する。
ピーク時刻誤差=Σ|実測値のピーク時刻−予測値のピーク時刻|÷3 …(2)
ピーク電力誤差率=Σ|実測値のピーク消費電力−予測値のピーク消費電力|÷実測値のピーク消費電力×100÷3 …(3)
ここで、(2)式、(3)式における「÷3」は、データの数から由来した値である。
図18は、実施の形態1における予測値の精度評価例を示す説明図(その1)である。図18に示す表1801は、事務所A、B、工場Cについて、一般的な方法と、最大電力予測部による最大電力で補正を行わない場合の実施の形態1にかかる方法とについて、(2)式で求めたピーク時刻誤差と(3)式で求めたピーク電力誤差率とを示す。表1801が有するレコード1801−1は、事務所Aに関するレコードであり、レコード1801−2は、事務所Bに関するレコードであり、レコード1801−3は、工場Cに関するレコードである。
表1801のピーク時刻誤差フィールド内の改善効果フィールドには、一般的な方法におけるピーク時刻誤差から、実施の形態1にかかる方法におけるピーク時刻誤差を引いた値が格納されている。同様に、表1801のピーク電力誤差率フィールド内の改善効果フィールドには、一般的な方法におけるピーク電力誤差率から、実施の形態1にかかる方法におけるピーク電力誤差率を引いた値が格納されている。
レコード1801−1〜3のピーク時刻誤差フィールド内の改善効果フィールドが示すように、全てのレコードで0以上であり、実施の形態1にかかる方法は、一般的な方法と比較して、ピークが発生する時刻の予測精度が向上していることがわかる。同様に、レコード1801−1〜3のピーク電力誤差率フィールド内の改善効果フィールドが示すように、全てのレコードで0以上であり、実施の形態1にかかる方法は、一般的な方法と比較して、ピーク電力の予測精度が向上していることがわかる。
図19は、実施の形態1における予測値の精度評価例を示す説明図(その2)である。図19に示す表1901は、事務所A、B、工場Cについて、一般的な方法と、最大電力予測部による最大電力で補正を行う場合の実施の形態1にかかる方法とについて、(2)式で求めたピーク時刻誤差と(3)式で求めたピーク電力誤差率とを示す。表1901が有するレコード1901−1は、事務所Aに関するレコードであり、レコード1901−2は、事務所Bに関するレコードであり、レコード1901−3は、工場Cに関するレコードである。
レコード1901−1〜3の2つの改善効果フィールドが示すように、実施の形態1にかかる方法は、一般的な方法と比較して、ピークが発生する時刻の予測精度、ピーク電力の予測精度ともに向上していることがわかる。
さらに、レコード1901−1〜3のピーク電力誤差率フィールド内の改善効果フィールドと、レコード1801−1〜3のピーク電力誤差率フィールド内の改善効果フィールドとを比較すると、レコード1901−1〜3の方が、数値が小さくなっている。このように、電力需要予測装置101は、最大電力予測部による最大電力で補正を行うことにより、ピーク電力の予測精度をさらに向上させることができる。
実施の形態1では、説明変数は気象情報であることを説明したが、これに限られない。図20を用いて、説明変数の他の例について説明する。
図20は、説明変数の他の例を示す説明図である。データセット2001は、図11で示したデータセット1101の代わりとなるものである。図20で示すデータセット2001は、3つのレコード2001−1〜3を示す。そして、1つのレコードが1日分のデータを示す。データセット2001では、説明変数として、図11で説明した最高気温、代表湿度、代表天気に加え、生産予定数午前、生産予定数午後1、生産予定数午後2を示す。ここで、生産予定数午前、生産予定数午後1、生産予定数午後2とは、それぞれの時間帯におけるコンピュータの生産予定台数である。ここで、データセット2001には、最高気温、代表湿度、代表天気が含まれるが、最高気温、代表湿度、代表天気がなくてもよい。
また、電力需要予測装置101は、データセット2001を使用する際には、図15で示した最大電力を予測する際にも、生産予定数午前、生産予定数午後1、生産予定数午後2を説明変数に加えたデータセットを作成する。
以上説明したように、電力需要予測装置101は、日ごとの最大電力となる時間帯と気象情報とから生成した判別モデルに、翌日の気象予測を入力して翌日の最大電力となる時間帯を特定し、その時間帯で最大電力となる実績から翌日の電力を予測する。これにより、電力需要予測装置101は、時間方向に関して予測に利用するデータを絞り込んでいるため、学習データが少なくとも、1日の中で最大電力となる時刻の予測精度の劣化を抑制することができる。また、電力需要予測装置101は、電力の方向、および時間方向の双方の予測精度を向上させることができる。
また、電力需要予測装置101は、翌日の電力の予測とは別に、最大電力を予測し、翌日の電力の予測を、予測した最大電力で補正してもよい。図16で説明したように、翌日の電力の予測では、予測時間帯という幅があるために平均化されるので、最大電力が低下することになる。従って、電力需要予測装置101は、予測した最大電力で補正することにより、最大電力について、予測精度をより向上させることができる。
また、説明変数は、消費電力を消費した消費者の位置に応じた気象情報としてもよい。これにより、電力需要予測装置101は、消費電力が気象情報により影響されるものである際に、予測精度を向上させることができる。
また、説明変数は、消費電力を消費した消費者が生産する物の数でもよい。これにより、電力需要予測装置101は、消費電力が、消費者が生産する物の数により影響されるものである際に、予測精度を向上させることができる。
また、所定の期間および予測対象期間の長さが、1日間であるとしてもよい。これにより、電力需要予測装置101は、1日の中で最大電力となる時刻や、その時刻における最大電力を予測することができる。また、所定の期間および予測対象期間の長さが、1週間であるとしてもよい。これにより、電力需要予測装置101は、1週間の中で最大電力となる日の需要電力を予測することができる。電力需要予測装置101は、例えば、1週間の中で、週の先頭である月曜日や週末である金曜日等に最大電力となることを予測することができる。さらに、電力需要予測装置101は、最大電力となる曜日の最大電力を予測することができる。
(実施の形態2の説明)
実施の形態2では、実施の形態1よりさらに予測精度を向上させる方法について説明する。なお、実施の形態1において説明した箇所と同様の箇所については、同一符号を付して図示および説明を省略する。
図21は、実施の形態2における電力需要予測装置2101の機能構成例を示す説明図である。電力需要予測装置2101は、制御部2102を有する。制御部2102は、外気温取得部401〜時間帯推定部403と、最大時間帯予測部2103と、電力波形作成部2104と、最大電力予測部406と、需要予測部407とを含む。制御部2102は、記憶装置に記憶されたプログラムをCPU201が実行することにより、各部の機能を実現する。記憶装置とは、具体的には、例えば、図2に示したROM202、RAM203、ディスク205などである。また、各部の処理結果は、RAM203、CPU201のレジスタや、CPU201のキャッシュメモリ等に格納される。
また、電力需要予測装置2101は、第1記憶部410と、第2記憶部412とにアクセス可能である。第1記憶部410は、RAM203、ディスク205といった記憶装置である。第1記憶部410は、実績DB411を有する。第2記憶部412は、実施の形態2にかかるプログラムを記憶する。実績DB411は、図1で説明した時刻別情報に相当する。第2記憶部412は、ROM202やディスク205といった記憶装置である。
最大時間帯予測部2103は、実績DB411に含まれる、特定した時間帯で最大の消費電力となる時刻と、該当の時刻に対応付けられた説明変数の値とに対してブートストラップ法を実施する。ブートストラップ法の実施により、最大時間帯予測部2103は、時刻と説明変数の値とを含む第1の複数の組み合わせを生成する。この複数の組み合わせを、「第1の学習データ」と称する。また、ブートストラップ法は、ある標本集団から母集団の性質を推定するための方法である。具体的には、ブートストラップ法は、手元のデータのランダムサンプリングを行う。また、ブートストラップ法として、標本となるデータに対して、ランダムノイズを加えた平滑化ブートストラップ法を採用してもよい。ブートストラップ法の利点の1つとしては、母集団が正規分布に従うと仮定する、といった母集団が従う分布の仮定をしなくてよい点がある。
次に、最大時間帯予測部2103は、生成した第1の学習データに基づき、特定した時間帯を分割した複数の分割時間帯のうち消費電力が最大となる分割時間帯がいずれであるかを入力される説明変数により判別する判別モデルを生成する。以下、実施の形態1で説明した判別モデルと区別するため、複数の分割時間帯のうち消費電力が最大となる分割時間帯がいずれであるかを入力される説明変数により判別する判別モデルを、「分割時間帯判別モデル」と称する。ここで、特定した時間帯の分割数をLとする。Lは、2以上の整数である。具体的には、最大時間帯予測部2103は、生成した第1の学習データから、1日の代表の気象情報を説明変数とし、1日の中で最大電力となる時刻が含まれる分割時間帯を目的変数とするデータセットを作成する。そして、最大時間帯予測部2103は、作成したデータセットに基づいて、分割時間帯判別モデルを生成する。そして、最大時間帯予測部2103は、生成した分割時間帯判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる分割時間帯を特定する。
また、最大時間帯予測部2103は、実績DB411に含まれる、特定した時間帯で最大の消費電力となる時刻と、該当の時刻に対応付けられた説明変数の値とに基づき、特定した時間帯における時刻の信頼区間を算出してもよい。ここで、信頼区間は、ある確率で母平均が含まれる範囲である。ある確率としては、例えば、95[%]や99[%]が使用される。特定した時間帯における時刻の信頼区間を、「基準信頼区間」と呼称する。
次に、最大時間帯予測部2103は、実績DB411に基づき、特定した時間帯のうちのいずれかの分割時間帯で最大の消費電力となる時刻と、該当の時刻に対応付けられた説明変数の値に対してブートストラップ法を実施する。ブートストラップ法を実施することにより、最大時間帯予測部2103は、時刻と説明変数の値とを含む第2の学習データを生成する。例えば、特定した時間帯がゾーン1であり、L=3として、ゾーン1を、ゾーン1−1、1−2、1−3と分割したとする。この場合、例えば、最大時間帯予測部2103は、ゾーン1−1、1−2のいずれかで最大の消費電力となる時刻と、該当の時刻に対応付けられた説明変数の値に対してブートストラップ法を実施する。また、最大時間帯予測部2103は、分割時間帯が取り得る全ての組み合わせのそれぞれに対して、ブートストラップ法を実施してもよい。
そして、最大時間帯予測部2103は、第1の学習データに基づき第1の学習データにおける時刻の信頼区間を算出するとともに、第2の学習データに基づき第2の学習データにおける時刻の信頼区間を算出する。以下、第1の学習データにおける時刻の信頼区間を、「第1信頼区間」と称し、第2の学習データにおける時刻の信頼区間を、「第2信頼区間」と称する。
次に、最大時間帯予測部2103は、算出した第1信頼区間および基準信頼区間の差と、算出した第2信頼区間および基準信頼区間の差との比較結果に基づいて、第1の学習データまたは第2の学習データからいずれかの学習データを特定する。2つの信頼区間の差を、「信頼区間差」と称する。具体的には、最大時間帯予測部2103は、信頼区間差を、下記(4)式に基づいて算出する。
信頼区間差=|基準信頼区間の下限値−第1信頼区間または第2信頼区間の下限値|+|基準信頼区間の上限値−第1信頼区間または第2信頼区間の上限値|…(4)
ただし、|x|は、xの絶対値を示す。信頼区間差が小さいほど、比較対象の信頼区間が基準信頼区間と類似することになる。従って、最大時間帯予測部2103は、信頼区間差が小さい組み合わせを特定する。
そして、最大時間帯予測部2103は、特定したいずれかの学習データに基づき、分割時間帯判別モデルを生成する。そして、最大時間帯予測部2103は、生成した分割時間帯判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる分割時間帯を特定する。
電力波形作成部2104は、実績DB411に記憶された消費電力情報のうち、最大時間帯予測部2103で予測した予測分割時間帯で最大の消費電力となる所定の期間の消費電力情報に基づいて、予測対象期間における電力波形を作成する。
図22は、実施の形態2における電力需要予測処理例を示す説明図である。実施の形態2における電力需要予測処理は、実施の形態1における電力需要予測処理と比較して、ステップS2202で示す処理だけが異なるため、ステップS2202で示す処理だけを説明する。
最大時間帯予測部2103は、判別分析によって、日の最大電力が発生する時間帯を特定する。さらに、最大時間帯予測部2103は、ブートストラップ法によって、特定した時間帯から、時間帯を分割した分割時間帯へ絞り込み、絞り込んだ分割時間帯に発生する実績情報を学習情報として回帰分析を行うことにより、需要予測する(ステップS2202)。
図23は、実施の形態2における電力需要予測処理手順の一例を示すフローチャートである。電力需要予測装置101は、図23に示すステップS2301〜S2304の処理と、ステップS2305の処理とを、独立に実行することができる。ここで、ステップS301、S2302、S2305、S2306の処理は、それぞれ、図6に示したステップS601、S602、S604、S605の処理と一致するため、説明を省略する。
ステップS2302の処理終了後、電力需要予測装置2101は、最大時間帯予測部2103が有する機能により、最大分割時間帯予測処理を実行する(ステップS2303)。最大分割時間帯予測処理については、図24〜図26で説明する。そして、電力需要予測装置2101は、電力波形作成部405が有する機能により、実施の形態2における電力波形作成処理を実行する(ステップS2304)。実施の形態2における電力波形作成処理については、図27で説明する。
(最大分割時間帯予測処理)
次に、最大分割時間帯予測処理について、図24〜図26を用いて説明する。
図24は、最大分割時間帯予測処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図25は、最大分割時間帯予測処理の動作例を示す説明図(その1)である。また、図26は、最大分割時間帯予測処理の動作例を示す説明図(その2)である。最大分割時間帯予測処理は、ブートストップ法を用いて、特定した予測時間帯から、最大の消費電力となる分割時間帯を絞り込む処理である。
図24で示すステップS2401〜S2403については、図25を用いて説明し、図24で示すステップS2405、S2412については、図26を用いて説明する。また、電力需要予測装置2101は、ステップS2401〜S2404の処理と、ステップS2405〜S2411の処理とを独立に実行することができる。ここで、図24で示すステップS2401〜S2404の処理は、図21で説明した第1信頼区間に関する処理である。一方で、図24で示すステップS2405〜S2411の処理は、図21で説明した第2信頼区間に関する処理である。
電力需要予測装置2101は、ステップS1004で特定した予測時間帯に対して、ブートストラップ法を実施し、第1の学習データを作成する(ステップS2401)。ステップS2401について、図25の(1)を用いて説明する。図25の(1)で示すグラフ2501は、ステップS1004で特定した予測時間帯がゾーン1の際に、ブートストラップ法を実施する前の状態を示し、グラフ2501’は、ブートストラップ法を実施した後の状態を示す。電力需要予測装置2101は、実績DB411を参照して、予測日から過去M日分の過去データのうち、ゾーン1が最大電力となった日のゾーン1のデータを抽出する。そして、電力需要予測装置2101は、抽出したデータに対して、ブートストラップ法を実施する。
図24の説明に戻り、ステップS2401の処理終了後、電力需要予測装置2101は、1日の代表の気象情報を説明変数とし、L個の分割時間帯のうち、1日の中で最大の消費電力となる時刻が含まれる分割時間帯を目的変数とするデータセットを作成する(ステップS2402)。ステップS2402について、図25の(2)を用いて説明する。図25の(2)では、目的変数が分割時間帯であり、説明変数が、最高気温、代表湿度、代表天気である場合のデータセット2502を示す。図25の(2)では、3つのレコード2502−1〜3を示す。具体的には、電力需要予測装置101は、ステップS2401の処理によって作成した第1の学習データから、最大の消費電力となる時刻が含まれる最大分割時間帯と、最高気温と、代表湿度、代表天気とを、分割時間帯判別モデルのデータセットとして作成する。
図24の説明に戻り、ステップS2402の処理終了後、電力需要予測装置2101は、作成したデータセットに基づいて、分割時間帯判別モデルを生成する(ステップS2403)。ステップS2403について、図25の(3)を用いて説明する。図25の(3)で示すグラフ2503は、図面上での表示のし易さのため説明変数を最高気温と代表湿度とし、目的変数を分割時間帯とした際に、生成した判別モデルと、データセット2502との関係を示す。また、L=3であるとする。ここで、グラフ2503で示すように、生成した分割時間帯判別モデルは、ゾーン1−1、1−2、1−3の境界となる直線2504〜2506で示される。グラフ2503内にプロットした三角形、ひし形、四角形は、データセット2502の各データを示す。
図24の説明に戻り、ステップS2403の処理終了後、電力需要予測装置2101は、生成した分割時間帯判別モデルを用いて、翌日の最大電力になる予測分割時間帯を特定する(ステップS2404)。具体的には、電力需要予測装置2101は、図10で求めた翌日の最大電力になる予測時間帯を特定する方法と同様に、生成した分割時間帯判別モデルに、取得した翌日の気象情報を入力することにより、翌日の最大電力になる予測分割時間帯を特定する。
一方、電力需要予測装置2101は、ステップS1004で特定した予測時間帯をL分割したL個の分割時間帯から、学習データのフィルタリングの組み合わせとして、いずれかの分割時間帯を抽出する組み合わせを作成する(ステップS2405)。ステップS2405について、図26を用いて説明する。図26で示す表2601は、電力需要予測装置2101が、L=3とした場合における、3個の分割時間帯から、いずれかの分割時間帯を抽出する全ての組み合わせを作成した場合の例を示す。図26に示す表2601は、レコード2601−1〜7を有する。なお、レコード2601−1は、3個の分割時間帯から、全ての分割時間帯を抽出した組み合わせを示し、実質、ステップS2401が示す学習データとなるため、ステップS2405で作成される組み合わせに含まなくてよい。
また、レコード2601−2〜4は、3個の分割時間帯から、2つの分割時間帯を抽出する組み合わせを示し、レコード2601−5〜7は、3個の分割時間帯から、1つの分割時間帯を抽出する組み合わせを示す。電力需要予測装置2101は、学習データのフィルタリングの組み合わせとして、ゾーン1−1、1−2と、ゾーン1−2、1−3と、ゾーン1−1、1−3と、ゾーン1−1と、ゾーン1−2と、ゾーン1−3という6つの組み合わせを作成する。
図26の例では、電力需要予測装置2101は、L個の分割時間帯から、いずれかの分割時間帯を抽出する全ての組み合わせを作成したが、これに限らない。例えば、電力需要予測装置2101は、L個の分割時間帯から、所定数以上の分割時間帯を抽出する組み合わせを作成してもよい。
図24の説明に戻り、ステップS2405の処理終了後、電力需要予測装置2101は、作成した組み合わせの数分、ステップS2406〜S2411の処理を繰り返す。電力需要予測装置2101は、組み合わせに含まれる分割時間帯に対して、ブートストラップ法を実施し、第2の学習データを作成する(ステップS2407)。
そして、電力需要予測装置2101は、作成した第2の学習データから、1日の代表の気象情報を説明変数とし、L個の分割時間帯のうち、1日の中で最大の消費電力となる時刻が含まれる分割時間帯を目的変数とするデータセットを作成する(ステップS2408)。次に、電力需要予測装置2101は、作成したデータセットに基づいて、分割時間帯判別モデルを生成する(ステップS2409)。そして、電力需要予測装置2101は、生成した分割時間帯判別モデルを用いて、翌日の最大電力になる予測分割時間帯を特定する(ステップS2410)。予測分割時間帯を特定する方法は、ステップS2404の処理と同一であるため、説明を省略する。
ステップS2408の処理、かつ、作成した組み合わせの数分、ステップS2406〜S2411の処理を繰り返したとする。この後、電力需要予測装置2101は、第1信頼区間における信頼区間差と、第2信頼区間における各組み合わせの信頼区間差とから、学習データをフィルタリングする組み合わせを特定する(ステップS2412)。ステップS2411について、図26を用いて説明する。電力需要予測装置2101は、第1信頼区間における信頼区間差と、第2信頼区間における各組み合わせの信頼区間差とを(4)式に基づいて算出し、算出した信頼区間差の値が最も小さい組み合わせを、学習データをフィルタリングする組み合わせとして特定する。図26の例では、信頼区間差が最も小さいゾーン1−1、1−3を、学習データをフィルタリングする組み合わせとして特定する。
ここで、(4)式について、図26を用いて説明する。図26の右上で示すグラフ2602は、実施の形態1に相当し、ゾーン1が最大電力となった日のゾーン1のデータの分布を示す。グラフ2602内の網掛けを付与した95%信頼区間が、基準信頼区間となる。また、図26の右下で示すグラフ2603は、レコード2601−1〜7のいずれかが示す分割時間帯でブートストラップ法を実施した後のデータの分布を示す。グラフ2603内の網掛けを付与した95%信頼区間が、第1信頼区間または第2信頼区間となる。(1)式で求められる信頼区間差は、グラフ2602の95%信頼区間の下限値とグラフ2603の95%信頼区間の下限値との差の絶対値と、グラフ2602の95%信頼区間の上限値とグラフ2603の95%信頼区間の上限値との差の絶対値との合計となる。
なお、図24で示したフローチャートでは、ステップS2404、S2410で、予測分割時間帯を特定したが、これに限らない。例えば、電力需要予測装置2101は、ステップS2403、S2404、S2409、S2410の処理を行わず、ステップS2412で特定した組み合わせに対して、分割時間帯判別モデルを生成し、予測分割時間帯を特定してもよい。
また、図24で示したフローチャートでは、第1信頼区間と第2信頼区間とを独立に求めたが、これに限らない。例えば、電力需要予測装置2101は、ステップS2401〜S2404の処理を実行し、第1信頼区間の信頼区間差が所定値以下であれば、学習データをフィルタリングする組み合わせを、全ての分割時間帯としてもよい。
一方、第1信頼区間の信頼区間差が所定値より大きい場合、電力需要予測装置2101は、ステップS2405〜S2411の処理を実行し、第1信頼区間および第2信頼区間の信頼区間差を比較し、最も小さい信頼区間差となる組み合わせを特定してもよい。このとき、ステップS2405の処理について、電力需要予測装置2101は、L個の分割時間帯から、L−1個の分割時間帯を抽出する組み合わせだけを作成してもよい。さらに、L−1個の分割時間帯を抽出する組み合わせだけを作成したとする。このとき、第1信頼区間の信頼区間差と第2信頼区間の信頼区間差との全てが所定値以上であれば、電力需要予測装置2101は、L個の分割時間帯から、L−2個の分割時間帯を抽出する組み合わせを作成し、作成した組み合わせに対応する信頼区間差を算出する。このように、電力需要予測装置2101は、抽出する分割時間帯の数を1つずつ減らしていってもよい。
図27は、実施の形態2における電力波形作成処理手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図27に示すステップS2701、S2703の処理は、図12で示したステップS1201、S1203の処理と同一であるため、説明を省略する。
ステップS2701の処理終了後、電力需要予測装置2101は、ステップS2412の処理で特定した組み合わせについて、ステップS2410の処理で特定した予測分割時間帯に最大電力となる過去データのみ収集する(ステップS2702)。そして、電力需要予測装置2101は、ステップS2703の処理を実行する。
図28は、実施の形態2における予測結果の精度評価例を示す説明図である。図28に示す表2801は、実施の形態1にかかる方法と、実施の形態2にかかる方法と、一般的な方法とについて、予測結果として、最大電力となる時刻を比較した例を示す。さらに、実施の形態2にかかる方法については、信頼区間差をさらに示す。表2801は、レコード2801−1〜7を有する。ここで、レコード2801−1は、実施の形態1にかかる方法に関するレコードである。また、レコード2801−2〜6は、実施の形態2にかかる方法に関するレコードである。また、レコード2801−7は、一般的な方法に関するレコードである。また、図28において、正解となる時刻が、ゾーン2に含まれる14:00であるとする。
電力需要予測装置2101は、レコード2801−2〜6のうち、信頼区間差が最小であるレコード2801−4がゾーン2−1、2−3、2−4を学習データに決定する。ゾーン2−1、2−3、2−4を学習データに決定した場合、電力需要予測装置2101は、最大電力となる時刻が14:00であると決定する。
図28で示すように、レコード2801−1が示す予測結果や、レコード2801−4が示す予測結果は、一般的な方法による予測結果と比較すると、正解の時刻により近い。従って、実施の形態1、2にかかる方法は、一般的な方法と比較して、予測精度がより向上していることがわかる。さらに、レコード2801−4が示す予測結果は、レコード2801−1が示す予測結果と比較すると、正解の時刻により近い。従って、実施の形態2にかかる方法は、実施の形態1にかかる方法と比較して、予測精度がより向上していることがわかる。
以上説明したように、電力需要予測装置2101は、翌日の最大電力となると特定した時間帯で最大の消費電力となる時刻と、該当の時刻に対応付けられた説明変数の値とに対してブートストラップ法を実施し、最大の消費電力となる時間をさらに絞り込んでもよい。これにより、電力需要予測装置2101は、実施の形態1と比較して、予測精度をさらに向上させることができる。
また、電力需要予測装置2101は、第1の学習データの信頼区間差と、第2の学習データの信頼区間差との比較結果から特定した学習データに基づき、分割時間帯判別モデルを生成してもよい。これにより、電力需要予測装置2101は、信頼区間が元データに最も類似するデータを学習データとするため、より予測精度を向上することができる。
そして、電力需要予測装置2101は、実施の形態1と比較して、予測精度がさらに向上することにより、節電対策によって年間最大電力を上げるリスクをさらに減らすことができる。
なお、実施の形態1、2で説明した電力需要予測方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本電力需要予測プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本電力需要予測プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態1、2に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)コンピュータに、
単位時間当たりの消費電力を示す消費電力情報、および、前記消費電力が最大となる時間帯を目的変数とする説明変数の値が時刻に対応付けられて蓄積された時刻別情報に基づき、所定の期間ごとに、前記所定の期間を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯を特定し、
前記所定の期間ごとに特定した時間帯と前記所定の期間ごとの前記説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により消費電力が最大となる時間帯が前記複数の時間帯のいずれであるかを判別する判別モデルを生成し、
前記判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を特定し、
前記消費電力情報のうち、特定した前記時間帯で最大の消費電力となる前記所定の期間の消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間における需要電力の傾向を特定する、
処理を実行させる電力需要予測プログラム。
(付記2)前記コンピュータに、
前記所定の期間ごとの最大の消費電力と、前記所定の期間ごとの前記説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により最大の消費電力を出力するモデルを生成し、
生成した前記モデルを用いて、前記予測対象期間における最大の消費電力を特定し、
特定した前記予測対象期間における需要電力の傾向を、特定した前記予測対象期間における最大の消費電力で補正する、
処理を実行させる付記1に記載の電力需要予測プログラム。
(付記3)前記コンピュータに、
前記時刻別情報に含まれる、特定した前記時間帯で最大の消費電力となる時刻と、当該時刻に対応付けられた説明変数の値とに対してブートストラップ法を実施することにより、時刻と説明変数の値とを含む第1の複数の組み合わせを生成し、
生成した前記第1の複数の組み合わせに基づき、特定した前記時間帯を分割した複数の分割時間帯のうち消費電力が最大となる分割時間帯がいずれであるかを入力される説明変数により判別する判別モデルを生成し、
当該判別モデルを用いて、前記予測対象期間において最大の消費電力となる分割時間帯を特定し、
前記消費電力情報のうち、特定した前記分割時間帯で最大の消費電力となる前記所定の期間の消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間における需要電力の傾向を特定する、
処理を実行させる付記1または2に記載の電力需要予測プログラム。
(付記4)前記コンピュータに、
前記時刻別情報に含まれる、特定した前記時間帯で最大の消費電力となる時刻と、当該時刻に対応付けられた説明変数の値とに基づき、前記時間帯における時刻の信頼区間を算出し、
前記時刻別情報に基づき、特定した前記時間帯のうちのいずれかの分割時間帯で最大の消費電力となる時刻と、当該時刻に対応付けられた説明変数の値に対してブートストラップ法を実施することにより、時刻と説明変数の値とを含む第2の複数の組み合わせを生成し、
前記第1の複数の組み合わせに基づき前記第1の複数の組み合わせにおける時刻の信頼区間を算出するとともに、前記第2の複数の組み合わせに基づき前記第2の複数の組み合わせにおける時刻の信頼区間を算出し、
算出した前記第1の複数の組み合わせにおける時刻の信頼区間および前記時間帯における時刻の信頼区間の差と、算出した前記第2の複数の組み合わせにおける時刻の信頼区間および前記時間帯における時刻の信頼区間の差との比較結果に基づいて、前記第1の複数の組み合わせまたは前記第2の複数の組み合わせから、いずれかの複数の組み合わせを特定し、
特定した前記いずれかの複数の組み合わせに基づき、前記複数の分割時間帯のうち消費電力が最大となる分割時間帯がいずれであるかを入力される説明変数により判別する判別モデルを生成する、
処理を実行させる付記3に記載の電力需要予測プログラム。
(付記5)前記説明変数は、前記消費電力を消費した消費者の位置に応じた気象情報であることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の電力需要予測プログラム。
(付記6)前記気象情報は、前記所定の期間または前記予測対象期間における最大電力、代表湿度、代表天気であることを特徴とする付記5に記載の電力需要予測プログラム。
(付記7)前記説明変数は、前記消費電力を消費した消費者が生産する物の数であることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の電力需要予測プログラム。
(付記8)前記所定の期間および前記予測対象期間の長さは、1日間であることを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の電力需要予測プログラム。
(付記9)前記所定の期間および前記予測対象期間の長さは、1週間であることを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の電力需要予測プログラム。
(付記10)単位時間当たりの消費電力を示す消費電力情報、および、前記消費電力が最大となる時間帯を目的変数とする説明変数の値が時刻に対応付けられて蓄積された記憶部を参照して、所定の期間ごとに、前記所定の期間を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯を特定し、
前記記憶部を参照して、前記所定の期間ごとに特定した時間帯と前記所定の期間ごとの前記説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により消費電力が最大となる時間帯が前記複数の時間帯のいずれであるかを判別する判別モデルを生成し、
前記判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を特定し、
前記記憶部に記憶された前記消費電力情報のうち、特定した前記時間帯で最大の消費電力となる前記所定の期間の消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間における需要電力の傾向を特定する、
制御部を有する電力需要予測装置。
(付記11)コンピュータが、
単位時間当たりの消費電力を示す消費電力情報、および、前記消費電力が最大となる時間帯を目的変数とする説明変数の値が時刻に対応付けられて蓄積された記憶部を参照して、所定の期間ごとに、前記所定の期間を区切った複数の時間帯のうちの最大の消費電力となった時間帯を特定し、
前記記憶部を参照して、前記所定の期間ごとに特定した時間帯と前記所定の期間ごとの前記説明変数の値とに基づいて、入力される説明変数により消費電力が最大となる時間帯が前記複数の時間帯のいずれであるかを判別する判別モデルを生成し、
前記判別モデルを用いて、予測対象期間において最大の消費電力となる時間帯を特定し、
前記記憶部に記憶された前記消費電力情報のうち、特定した前記時間帯で最大の消費電力となる前記所定の期間の消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間における需要電力の傾向を特定する、
処理を実行する電力需要予測方法。