以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る温度調整装置1の構造について説明する。図1(a)は、温度調整装置1の一例を示した正面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A線断面図である。これらの図に示されるように、温度調整装置1は、回転する回転体10と、回転体10に対向して配置される対向体20と、対向体20に設けられた加熱冷却装置30と、回転体10を回転駆動する駆動装置40と、回転体10と駆動装置40を接続する駆動軸50と、を備えている。
温度調整装置1では、回転体10は駆動軸50の先端部に接続されており、この回転体10の先に対向体20が配置されている。対向体20は、回転体10の外側において駆動軸50と略平行に配置された2つの棒状の固定部材60の先端部に接続されており、これら2つの固定部材60の基端部は、駆動装置40のケーシングに固定されたブラケット62に固定されている。すなわち、本実施形態では、回転体10は駆動装置40に駆動されて回転するが、対向体20は回転しないように固定されている。
図2(a)は、回転体10を示した平面図であり、同図(b)は、回転体10を示した正面図(側面図も同一)であり、同図(c)は、回転体10を示した底面図である。これらの図に示されるように、回転体10は、略砲弾形状、詳細には円柱の上面10aを球面状に構成した形状、換言すれば円柱と半球を組み合わせた形状に構成されている。回転体10を構成する材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミックス、樹脂、ゴム、木材等、使用条件に応じた適宜の材質を採用することができる。
回転体10の球面状の上面10aの中心には、駆動軸50が接続される接続部11が設けられている。従って、回転体10は、駆動装置40に駆動されて中心軸Cを回転軸として回転するように構成されている。なお、駆動軸50と接続部11の接続方法は、例えばネジや係合等、既知のいずれの方法であってもよい。
また、回転体10は、表面に設けられた複数の吸入口12と、吸入口12と同様に表面に設けられた複数の吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐように回転体10の内部に形成された流通路16と、を備えている。回転体10の底面10bは、中心軸Cと略直交する略円形の平面状に形成されており、対向体20に対向する第1の対向面18を構成している。そして、流通路16の途中には、この第1の対向面18において開口する開口部19が形成されている。
吸入口12は、上面10aにおける接続部11の周囲(すなわち、回転体10の駆動軸50側)に設けられている。本実施形態では、4つの円形状の吸入口12を、中心軸Cを中心とする円周上に等間隔で並べて配置すると共に、中心軸Cと同一方向に吸入口12を形成している。吐出口14は、略砲弾形状に構成されており、回転体10の側面10cにおいて第1の対向面18の周縁に接するように設けられている。本実施形態では、4つの吐出口14を、各吸入口12に対して回転体10の半径方向(遠心方向)外側となる位置(中心軸Cから中心軸Cに垂直な方向に離れた位置)にそれぞれ配置している。また、中心軸Cに対して直交する方向に吐出口14を形成している。
流通路16は、1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐ通路として形成されている。従って、回転体10の内部には、4つの流通路16が形成されている。各流通路16は、吸入口12から中心軸C方向に沿って直進した後に直角に曲がり、回転体10の遠心方向に向けて第1の対向面18と平行に直進して吐出口14に到達するように形成されている。すなわち、本実施形態の流通路16は、中心軸C方向に形成された軸方向部分16aおよび遠心方向に形成された遠心方向部分16bから構成されている。
開口部19は、流通路16の遠心方向部分16bに設けられている。本実施形態では、流通路16の遠心方向部分16bの略全範囲にわたって開口部19を設けている。従って、流通路16の遠心方向部分16bは、第1の対向面18において開口した略砲弾形状断面の溝状に構成されている。すなわち、本実施形態の流通路16は、吸入口12から第1の対向面18にかけて回転体10の内部に形成されたトンネル状の軸方向部分16aと、軸方向部分16aから吐出口14にかけて第1の対向面18に形成された溝状の遠心方向部分16bと、から構成されており、溝状の遠心方向部分16bの開放された部分が開口部19となっている。また、この結果、吐出口14も第1の対向面18側が開放された断面形状となっている。
なお、吸入口12および吐出口14の形状は、特に限定されるものではなく、例えば楕円形状や多角形状等、その他の形状であってもよい。また、流通路16の断面形状は、特に限定されるものではなく、吸入口12および吐出口14の形状や位置、または加工方法等に応じて適宜の形状に構成することができる。また、本実施形態では、加工のしやすさから流通路16を略直角に曲折するL字状に構成しているが、滑らかに湾曲した曲線状の通路として流通路16を構成してもよい。また、本実施形態では、回転体10の流通路16以外の部分を中実に構成することで、回転体10の強度を高めるようにしているが、回転体10の流通路16以外の部分を中空状に構成するようにしてもよい。
図3(a)は、対向体20を示した平面図であり、同図(b)は、対向体20を示した正面図であり、同図(c)は、対向体20の配置を示した正面図である。同図(a)および(b)に示されるように、対向体20は、中心軸Cを中心とする略円盤状に構成されており、一方の面が回転体10の第1の対向面18に対向する第2の対向面22となっている。この第2の対向面22は、中心軸Cと略直交する平面であり、回転体10の第1の対向面18よりも大きい円形状に構成されている。第2の対向面22の回転体10の外側となる周縁近傍の2箇所には、2つの固定部材60が接続される接続部24が形成されている。
対向体20の内部には、加熱冷却装置30が配置されている。加熱冷却装置30は、主に第2の対向面22を介して対向体20の周囲に熱を供給(すなわち、加熱)する、または対向体20の周囲の熱を吸収(すなわち、冷却)するものである。本実施形態の加熱冷却装置30は、図3(a)〜(c)において二点鎖線で示されるように、第2の対向面22に沿って蛇行配置された熱媒体流通路32を備えて構成され、この熱媒体流通路32は、固定部材60内部の給排通路34を介して外部の熱媒体循環装置(図示省略)と接続されている。すなわち、加熱冷却装置30は、熱媒体流通路32に例えば温水を流通させることで、対向体20の周囲を加熱し、熱媒体流通路32に例えば冷水を流通させることで、対向体20の周囲を冷却するように構成されている。
なお、加熱冷却装置30は、加熱のみまたは冷却のみを行うように構成されるものであってもよい。また、加熱冷却装置30の構成は、特に限定されるものではなく、例えばペルチェ素子や電熱線を備えるもの等、既知の各種構成を採用することができる。また、加熱冷却装置30は、第2の対向面22のみを介して加熱または冷却を行うように構成されるものであってもよいし、第2の対向面22と共に、第2の対向面22以外の面(例えば、第2の対向面22の反対側の非対向面26等)を介して加熱または冷却を行うように構成されるものであってもよい。また、加熱冷却装置30は、対向体20の外部に露出して設けられるものであってもよい。
図3(c)に示されるように、対向体20は、回転体10の第1の対向面18と自身の第2の対向面22の間に所定の隙間Gを設けた状態で、回転体10と同軸的に配置される。また、第1の対向面18と第2の対向面22は、互いに略平行となるように配置され、回転体10が回転している場合にも、所定の隙間Gが維持され、回転体10と対向体20は接触しないようになっている。
詳細は後述するが、この第1の対向面18と第2の対向面22の間の隙間G内には温度調整の対象物である流体(対象流体)が進入し、この隙間G内の流体と加熱冷却装置30との間で第2の対向面22を介した熱交換が行われるようになっている。隙間Gの大きさは特に限定されるものではなく、流体の粘性等の性状や混合物の有無等の各種条件に基づいて適宜に設定される。図示は省略するが、本実施形態では、固定部材60の長さを調節して対向体20の位置を調整する既知の構造の調整機構を固定部材60に設けるようにしており、隙間Gの設定を容易に変更することが可能となっている。
なお、対向体20を構成する材質は、特に限定されるものではなく、回転体10と同様に適宜の材質を採用することができるが、周囲との伝熱を効率的に行うためには、熱伝導率の高い材質であることが好ましい。また、回転体10と対向体20を同じ材質から構成するようにしてもよいし、異なる材質から構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、対向体20を駆動装置40に固定するようにしているが、例えば、流体を収容する容器や駆動装置40が設置される架台等のその他の部材に対向体20を固定するようにしてもよい。また、対向体20を固定する固定部材60の個数が2つに限定されないことは言うまでもなく、給排通路34は固定部材60とは別に設けられるものであってもよい。
図1(a)および(b)に戻って、駆動装置40は、本実施形態ではモータから構成されており、駆動軸50を介して回転体10を回転駆動し、中心軸Cを中心に回転させる。なお、本実施形態では、駆動装置40が駆動軸50を直接駆動するように構成しているが、駆動装置40が歯車やチェーンおよびスプロケット等の伝達機構を介して駆動軸50を回転駆動するように構成してもよい。また、駆動装置40は、例えば電動モータやエアモータ等、既存のいずれの形式のものであってもよい。
次に、温度調整装置1における回転体10および対向体20の作動について説明する。図4(a)は、回転体10および対向体20の作動を示した平面図であり、同図(b)は、回転体10および対向体20の作動を示した正面図であり、同図(c)は、同図(a)のB−B線断面を拡大して示した断面図である。
回転体10は、流体内において、駆動装置40に駆動されて中心軸Cを中心に回転することにより、流体を攪拌する。流体中に回転体10を浸漬して回転させると、流通路16内に進入した流体も回転体10と共に回転することとなる。すると、流通路16内の流体に遠心力が作用し、図4(a)および(b)に示されるように、流通路16内の流体は回転体10の半径方向外側に向けて流動する。吐出口14は、吸入口12よりも回転体10の半径方向外側に設けられているため、吐出口14では吸入口12よりも強い遠心力が働くこととなる。従って、流体は、回転体10が回転している限り吸入口12から吐出口14に向けて流動する。すなわち、流通路16内の流体が吐出口14から噴出すると共に、外部の流体が吸入口12から流通路16内に吸引される。これにより、回転体10の周囲の流体には、吐出口14のある回転体10の側面10cから放射状に広がる流動と、吸入口12に向かう流動が発生することとなる。なお、吸入口12に向かう流動は、吸入口12の回転により旋回流となる。
また、流体中に回転体10を浸漬して回転させると、回転体10の表面(上面10aおよび側面10c)近傍の流体が粘性の影響により回転体10と共に回転することとなる。従って、回転体10の表面近傍の流体にも遠心力が働き、図4(a)および(b)に示されるように、上面10a近傍の流体は表面に沿って側面10cまで流動し、吐出口14からの噴流の随伴流となる。
本実施形態では、上面10aを球面状に構成することにより、回転体10の形状を中心軸C方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状としているため、上面10a近傍の流動を、側面10cから放射状に広がる流動にスムーズに合流させることを可能としている。また、上面10aをこのような形状にすることで、吸入口12に向かう流動の一部を、上面10aに沿って側面10cまでスムーズに流動させて、側面10cから放射状に広がる流動に合流させることを可能としている。この結果、回転体10は、周囲の流体に強力な流動を発生させ、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。
一方、第1の対向面18と第2の対向面22の間に進入した流体は、回転する第1の対向面18および静止した第2の対向面22によって剪断力SFを受けるため、図4(c)に示されるように、複雑な渦等を発生させながら第1の対向面18と共に回転し、この遠心力によって、同図(a)に示されるように、徐々に遠心方向に(半径方向外側に向けて)移動することとなる。さらに、第1の対向面18と第2の対向面22の間では、回転体10の回転に伴い、同図(c)に示されるように、開口部19の進行方向逆側縁部19aにおける流通路16からの流体の流入、および開口部19の進行方向側縁部19bにおける流通路16への流体の流出が発生する。
従って、第1の対向面18と第2の対向面22の間では、第1の対向面18の回転による剪断力SF、ならびに開口部19の進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bにおける流出入に伴う圧力変動(楔効果等)の発生により、流体はきわめて複雑に流動しながら第2の対向面22と接触することとなる。これにより、第2の対向面22と流体の間の熱伝達率が高められるため、第2の対向面22を介した加熱冷却装置30と流体の間の熱の移動が促進されることとなる。すなわち、温度調整装置1によれば、少ないエネルギーコストで流体を効率的に加熱または冷却することが可能となっている。
さらに、このようにして第1の対向面18と第2の対向面22の間で加熱または冷却された流体は、遠心力の作用によって最終的に回転体10から放射状に広がる流動に合流し、回転体10および対向体20から十分に離れた遠方へと運ばれることとなる。すなわち、温度調整装置1によれば、加熱または冷却した流体を、回転体10の攪拌作用によって広い範囲で略均一に行き渡らせることが可能であり、比較的大きな容器内に収容された流体についても、流体全体を効率的に加熱または冷却すると共に、流体内の温度分布をより均一化することが可能となっている。また、上述のように、第2の対向面22と流体の間の熱伝達率が高いことから、対象流体80と加熱冷却装置30(熱媒体)の温度差を小さく設定することが可能であり、これによっても流体内の温度分布が均一化されるようになっている。
また、本実施形態では、流通路16に遠心方向部分16bを設け、この遠心方向部分16bに開口部19を設けることで、遠心方向部分16bにおける流通路16の内壁面の一部が第2の対向面22から構成されるようにしている。これにより、第1の対向面18と第2の対向面22の間に流入することなく遠心方向部分16bを通過する流体に対しても、第2の対向面22を介した加熱または冷却を行うことが可能となる。なお、第2の対向面22は吸入口12の反対側の内壁面を構成することから、吸入口12から流通路16内に進入した流体は、その流動方向から第2の対向面22と衝突または接触しやすくなっている。すなわち、本実施形態では、流通路16を通過する流体と第2の対向面22の間においても熱伝達率が高められるようになっている。
さらに、本実施形態では、遠心方向部分16bの略全範囲にわたって開口部19を設けることで、流通路16を通過する流体に対する伝熱面積を大きくすると共に、軸方向部分16aを通過した流体が第2の対向面22に衝突することによって流動方向を変化させるようにしている。これにより、本実施形態では、流通路16を通過するのみの流体に対しても、きわめて効率的に加熱または冷却が行われるようになっている。
図5(a)および(b)は、温度調整装置1の使用例を示した概略図である。これらの図に示されるように、温度調整装置1は、回転体10および対向体20を、容器70内に収容された温度調整の対象である対象流体80内に浸漬された状態で使用される。なお、温度調整装置1は、容器70や図示を省略した架台等に固定されるものであってもよいし、適宜のハンドル等を備え、使用者が保持して操作するものであってもよい。
駆動装置40によって回転体10を回転させることにより、上述のように回転体10から放射状に広がる流動、および回転体10の吸入口12に向かう旋回流(渦)が発生する。これにより、図5(a)および(b)に示されるように、対象流体80内に複雑な循環流が発生する。そして、第1の対向面18と第2の対向面22の間または流通路16内で加熱または冷却された対象流体80は、この循環流によって容器70内の隅々にまで運ばれ、略均一な状態に拡散される。また、対向体20の非対向面26等を介して加熱または冷却された対象流体80も、この循環流によって容器70内に拡散される。このようにして、対象流体80は、短時間且つ低コスト、すなわちきわめて効率的に所望の温度に調整されることとなる。
次に、温度調整装置1のその他の形態について説明する。
図6(a)は、開口部19を部分的に設けた場合の一例を示した断面図である。同図に示されるように、開口部19は、流通路16の遠心方向部分16bの全範囲にわたって設けられるものではなく、部分的に設けられるものであってもよい。また、図示は省略するが、1つの流通路16に対して複数の開口部19を設けるようにしてもよいし、流通路16を途中で分岐させて吐出口14と開口部19に向かうように構成してもよい。
また、開口部19の形状は、特に限定されるものではなく、矩形状、円形状または楕円形状等、種々の形状に構成することができる。また、流通路16の遠心方向部分16bを第1の対向面18に沿って曲折または蛇行するように構成すると共に、これに合わせて開口部19を曲折または蛇行した形状に構成するようにしてもよい。さらに、開口部19にメッシュ状の板を配置するようにしてもよい。
このように、開口部19の大きさ、配置、個数および形状等を適宜に設定することで、第1の対向面18と第2の対向面22の間における流動状態を対象流体80の性状等に応じて調整することが可能となる。また、流通路16を通過する対象流体80と第2の対向面22の接触状態を調整することが可能となる。これにより、加熱冷却能力を適宜に調整することができる。
図6(b)および(c)は、第1の対向面18および第2の対向面22をそれぞれ略円錐状に構成した場合の例を示した断面図である。第1の対向面18および第2の対向面22は、それぞれ平面状に構成されるものに限定されず、このように、例えば円錐状に構成されるものであってもよい。また、円錐状以外にも、例えば円錐台状や階段状に構成されるものであってもよく、さらに部分球面状や放物面状等、適宜の曲面を含んで構成されるものであってもよい。また、この場合、同図(b)および(c)に示されるように、第1の対向面18および第2の対向面22のいずれを凸状に構成してもよい。このように、第1の対向面18および第2の対向面22の形状を適宜に設定することで、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍における流動状態を調整し、加熱冷却能力を適宜に調整することができる。
図7(a)および(b)は、第1の対向面18および第2の対向面22の間の隙間Gの大きさが変化するように構成した場合の例を示した図である。ここで、同図(a)は、第1の対向面18を略円錐状に窪ませることにより、隙間Gの大きさが中心軸Cの遠心方向において変化するように構成した例を示した断面図であり、同図(b)は、第1の対向面18を開口部19の間で山形に膨出させることにより、中心軸Cに対する周方向および遠心方向において変化するように構成した例を示した正面図である。
このように、隙間Gの大きさを変化させることで、例えば図7(a)に示す例では、第1の対向面18と第2の対向面22の間の流体が遠心方向に流動する際に楔効果を発生させることが可能となり、同図(b)に示す例では、回転体10の回転によっても楔効果を発生させることが可能となる。これにより、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍における流動状態を調整し、加熱冷却能力を適宜に調整することができる。
なお、図7(a)および(b)では、いずれも中心軸Cから遠心方向に離れるに従って隙間Gの大きさが漸次縮小するようにした例を示しているが、中心軸Cから遠心方向に離れるに従って隙間Gの大きさが漸次拡大するようにしてもよいし、縮小させた後に拡大させたり、拡大させた後に縮小させたりするようにしてもよい。さらに、縮小率または拡大率を変化させるようにしてもよい。
また、図7(a)および(b)に示す例では、第1の対向面18の形状を平面以外の形状とすることで隙間Gの大きさを変化させているが、第2の対向面22を平面以外の形状として隙間Gの大きさを変化させるようにしてもよいし、第1の対向面18および第2の対向面22の両方の形状を平面以外の形状として隙間Gの大きさを変化させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1の対向面18の面積よりも第2の対向面22の面積を広く構成した例を示しているが、第1の対向面18よりも第2の対向面22を狭く構成してもよいし、第1の対向面18および第2の対向面22を同一の広さに構成してもよい。また、第1の対向面18は、第2の対向面22の一部と対向するものであってもよい。同様に、第2の対向面22は、第1の対向面18の一部と対向するものであってもよい。
図7(c)は、対象流体80の外部の各種物体を流通路16に導入する導入路17を設けた場合の一例を示した断面図である。このように、対象流体80の外部と流通路16を繋ぐ導入路17を設けることで、各種気体や液体、固体等を対象流体80中に効率的に導入すると共に、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍で熱交換を行いながら混合、攪拌することが可能となる。これにより、導入した各種物体の対象流体80への溶解や、導入した各種物体と対象流体80の反応を促進することが可能となる。また、溶解や反応に伴う発熱や吸熱による温度変化を加熱冷却装置30によって打ち消すことが可能となるため、各種物体を投入しながらも対象流体80全体の温度を略一定に維持するといったことが可能となる。
なお、図7(c)に示す例では、導入路17を駆動軸50および回転体10に形成した例を示したが、回転体10を対象流体80から一部が露出するような形状に構成すると共に、この回転体10の露出部分に導入口を設け、この導入口と流通路16を繋ぐように導入路17を形成するようにしてもよい。また、流通路16を介さずに、導入路17を直接第1の対向面18と第2の対向面22の間に繋ぐように形成してもよい。また、各種物体の導入では、流通路16内または第1の対向面18と第2の対向面22の間に生じる負圧を利用して各種物体を吸引するようにしてもよいし、ポンプ等によって各種物体を圧送するようにしてもよい。
図8(a)〜(d)は、第1の対向面18または第2の対向面22に凹凸形状18a、22aを形成した場合の例を示した図であり、図4(a)のB−B線断面を拡大して示した断面図である。ここで、図8(a)は、第1の対向面18に凹部18a1および凸部18a2からなる凹凸形状18aを形成した場合の一例を示しており、同図(b)は、第2の対向面22に凹部22a1および凸部22a2からなる凹凸形状22aを形成した場合の一例を示しており、同図(c)は、第1の対向面18に凹部18a1および凸部18a2からなる凹凸形状18aを形成すると共に、第2の対向面22にも凹部22a1および凸部22a2からなる凹凸形状22aを形成した場合の一例を示している。
このように、第1の対向面18または第2の対向面22に凹凸形状18a、22aを設けることにより、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍において、より複雑な流動や渦を広範囲に発生させることが可能となるため、加熱冷却能力を適宜に調整することができる。さらに、第2の対向面22に凹凸形状22aを設けることで、伝熱面積を拡大することができるため、加熱または冷却をより効率的に行うことができる。
なお、凹部18a1、22a1および凸部18a2、22a2の形状は、特に限定されるものではなく、対象流体80の性状や使用条件等に応じて適宜の形状を採用することができる。例えば、図8(d)に示す例では、凹部18a1、22a1を、それぞれ半円形状の断面形状となるように構成しているが、これ以外にも例えば三角形状等、任意の断面形状に凹部18a1、22a1を構成することができる。また、凸部18a2、22a2についても、任意の断面形状に構成可能であることは言うまでもない。
また、凹凸形状18a、22aに加えて(または、凹凸形状18a、22aに代えて)、第1の対向面18および第2の対向面22の表面粗さを調節することで、加熱冷却能力を調整するようにしてもよい。
図9(a)〜(c)は、凹部18a1、22a1および凸部18a2、22a2の遠心方向における配置の例を示した図であり、図4(a)のD−D線断面を拡大して示した断面図である。ここで、図9(a)は、第1の対向面18の凹部18a1と第2の対向面22の凹部22a1の中心軸Cに対する遠心方向の位置を略等しくして互いに対向するように形成すると共に、第1の対向面18の凸部18a2と第2の対向面22の凸部22a2の中心軸Cに対する遠心方向の位置を略等しくして互いに対向するように形成した例を示している。また、同図(b)は、第1の対向面18の凹部18a1と第2の対向面22の凹部22a1の中心軸Cに対する遠心方向の位置をずらすと共に、第1の対向面18の凸部18a2と第2の対向面22の凸部22a2の中心軸Cに対する遠心方向の位置をずらすようにした例を示している。
このように、凹部18a1、22a1および凸部18a2、22a2の遠心方向における配置を適宜に設定することにより、第1の対向面18と第2の対向面22の間で対象流体80が遠心方向に流動する際の径路を調節することが可能となるため、加熱冷却能力を適宜に調整することができる。
また、図9(c)に示されるように、第1の対向面18の凹部18a1と第2の対向面22の凸部22a2を互いに対向するように配置すると共に、凸部22a2の一部が凹部18a1の内部に収容されるようにする、または第1の対向面18の凸部18a2と第2の対向面22の凹部22a1を互いに対向するように配置すると共に、凸部18a2の一部が凹部22a1の内部に収容されるようにすることで、対象流体80が遠心方向に流動する際の径路をラビリンス状にすることが可能となる。
このようにした場合、より一層複雑な流動や渦を広範囲に発生させると共に、流動抵抗を高めて対象流体80が遠心方向に流動し難くすることが可能となる。これにより、第1の対向面18と第2の対向面22の間に対象流体80が滞留する時間、すなわち第1の対向面18と第2の対向面22の間における加熱時間または冷却時間を調整することができるため、加熱冷却能力をよりきめ細かく調整することが可能となる。
なお、温度調整装置1では、流通路16内の流動により、開口部19を通じて第1の対向面18と第2の対向面22の間から適宜に対象流体80を排出することができるため、第1の対向面18と第2の対向面22の間における遠心方向の流動抵抗を高めた場合においても、温度調整能力が低下しないようになっている。
図9(d)は、第1の対向面18および第2の対向面22の外周部に外周壁22bを設けた場合の一例を示した図であり、図4(a)のD−D線断面を拡大して示した断面図である。このように、外周壁22bを設けることによっても、第1の対向面18と第2の対向面22の間における遠心方向の流動を調節することができる。
なお、外周壁22bは、図9(d)に示されるように第2の対向面22の外周部から突設されるものであってもよいし、第1の対向面18の外周部から突設されるものであってもよい。また、同図(d)に示す例では、凹凸形状18a、22aを設けない場合の例を示したが、凹凸形状18a、22aを設けるようにしてもよい。また、外周壁22bは、第1の対向面18および第2の対向面22の外周部の全周にわたって設けるようにしてもよいし、部分的に設けるようにしてもよい。さらに、外周壁22bの高さおよび形状は、対象流体80の性状等に応じて任意の高さおよび任意の形状を採用可能であることは言うまでもない。
図9(e)は、第1の対向面18と第2の対向面22の間と外部を繋ぐ貫通孔28を対向体20に形成するようにした場合の一例を示した図であり、図4(a)のD−D線断面を拡大して示した断面図である。このように、貫通孔28を対向体20に形成することで、貫通孔28を形成する位置により、貫通孔を通じて第1の対向面18と第2の対向面22の間に対象流体80を流入させたり、第1の対向面18と第2の対向面22の間から対象流体80を流出させたりすることが可能となる。なお、貫通孔28の形状、貫通孔28を形成する位置、貫通孔28の向きおよび貫通孔28の個数等は特に限定されるものではなく、適宜に設定することができる。
図10(a)〜(c)は、開口部19の進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bを第2の対向面22側に向けて間隔が漸次拡大するように形成した場合の例を示した図であり、図4(a)のB−B線断面を拡大して示した断面図である。ここで、図10(a)は、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bに丸みを付けた場合の一例を示しており、同図(b)は、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bを平面状に面取りした場合の一例を示しており、同図(c)は、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bを窪ませた場合の一例を示している。
このように、開口部19の進行方向逆側縁部19aと進行方向側縁部19bの間隔を第2の対向面22側に向けて漸次拡大することにより、進行方向逆側縁部19aにおける流通路16から第1の対向面18と第2の対向面22の間への流入、および進行方向側縁部19bにおける第1の対向面18と第2の対向面22の間から流通路16への流入を促進することができる。また、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bの形状を適宜に工夫することで、流動状態を調整することができる。
なお、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bの形状は、図10(a)〜(c)に示す例に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができる。また、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bの両方を拡大させるのではなく、いずれか一方のみを拡大させるようにしてもよい。また、開口部19の縁部全体のうち進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19b以外の部分を拡大させるようにしてもよい。
また、図示は省略するが、開口部19の進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bを第2の対向面22側に向けて間隔が漸次縮小するように形成してもよい。この場合においても、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bの両方を縮小させるようにしてもよいし、いずれか一方のみを縮小させるようにしてもよく、一方を縮小させ、他方を拡大させるようにしてもよい。また、開口部19の縁部全体のうち進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19b以外の部分を縮小させるようにしてもよい。また、第1の対向面18または開口部19の縁部に着脱可能な部材を設けることで、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bを含む開口部19の縁部の形状を変更するようにしてもよい。
図10(d)は、開口部19の進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bに突出部19cを設けた場合の一例を示した図であり、図4(a)のB−B線断面を拡大して示した断面図である。このように、開口部19の内側に向けて突出する突出部19cを設けることにより、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19b近傍における流動状態をさらに細かく調整することが可能となる。
なお、突出部19cの形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができる。また、突出部19cの先端部は、図10(d)に示す例のように、尖らせてもよいし、丸めてもよい。また、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bの両方に突出部19cを設けるようにしてもよいし、いずれか一方のみに突出部19cを設けるようにしてもよく、さらに、進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19bにおいて突出部19cの形状を異ならせるようにしてもよい。また、開口部19の縁部の進行方向逆側縁部19aおよび進行方向側縁部19b以外の部分に突出部19cを設けるようにしてもよい。また、突出部19cをネジや係合等によって着脱可能に回転体10に固定するようにし、80の性状等に応じて突出部19cを交換するようにしてもよい。
図11(a)〜(c)は、回転体10および対向体20のその他の配置構成の例を示した正面図である。まず、同図(a)は、回転体10に対して対向体20を駆動装置40側に配置するようにした例を示している。この場合、対向体20には貫通孔28が形成され、駆動軸50はこの貫通孔28に挿通される。回転体10および対向体20をこのように配置した場合、容器70の下部の対象流体80を吸入口12によって吸い上げて加熱または冷却することが可能となる。
図11(b)は、対向体20の両側に回転体10を配置するようにした例を示している。この場合、2つの回転体10が1つの対向体20を兼用することとなり、対向体20の2つの面を第2の対向面22として効率的な加熱または冷却を行うことができる。また、2つの回転体10によって対象流体80を攪拌することができるため、温度調整能力を高めることが可能となる。
なお、図11(b)示す例では、対向体20に貫通孔28を形成し、この貫通孔28を介して2つの回転体10を接続することにより、1つの駆動装置40で2つの回転体10を回転駆動するようにしているが、2つの回転体10をそれぞれ専用の駆動装置40で駆動するようにしてもよい。また、2つの回転体10を同一方向に回転させるようにしてもよいし、互いに逆方向に回転させるようにしてもよい。また、2つの回転体10のいずれか一方にのみ開口部19を設けるようにしてもよい。
図11(c)は、回転体10だけではなく、対向体20も回転させるようにした例を示している。この例では、駆動軸50および回転体10を中空構造に構成し、その内部に対向体20を駆動するための対向体駆動軸52を挿通して対向体20に接続するようにしている。そして、駆動装置40は、回転体10に接続された駆動軸50、および対向体20に接続された対向体駆動軸52をそれぞれ回転駆動可能に構成されている。
この場合、回転体10を回転させると共に、対向体20を回転体10の回転方向とは逆方向に回転させる、すなわち回転体10と対向体20を二重反転させることによって、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍により複雑な流動を発生させることができるため、加熱または冷却をより効率化することが可能となる。なお、回転体10および対向体20の回転速度(回転数)は、同一であってもよいし、異ならせてもよい。回転体10および対向体20の回転速度を適宜に調節することで、加熱冷却能力を調整することができる。
また、図11(c)に示す例において、回転体10および対向体20を同一方向に回転させるようにしてもよい。この場合においても、回転体10の回転速度と対向体20の回転速度を異ならせれば、第1の対向面18と第2の対向面22の間に複雑な流動を発生させることができる。また、対向体駆動軸52を駆動軸50および回転体10の内部に挿通するのではなく、回転体10の反対側から対向体20に接続するようにし、回転体10とは別の駆動装置40によって対向体20を回転駆動するようにしてもよい。
また、対向体20は、図11(a)および(b)に示す例のように固定配置されるもの、および同図(c)に示す例のように回転駆動されるもの以外に、中心軸Cを中心に回転自在に支持された状態で配置されるものであってもよい。すなわち、対向体20は、第1の対向面18と第2の対向面22の間の流体の粘性により、回転する回転体10と共に連れ回りするように配置されるものであってもよい。この場合においても、第1の対向面18と第2の対向面22の間および開口部19の近傍に複雑な流動を発生させることができる。なお、対向体20を回転駆動する、または回転自在に支持する場合、加熱冷却装置30への熱媒体や電力等の供給は、適宜のロータリージョイント等を介して行えばよい。
図12(a)は、対向体20の両側に吸入口12を兼用する回転体10を配置するようにした場合の一例を示した正面図であり、同図(b)は、同例の断面図である。この例では、対向体20に設けた貫通孔28を介して2つの回転体10を連結部13で接続している。そして、駆動軸50側(図の上側)の回転体10に設けた吐出口14と、反対側(図の下側)の回転体10に設けた吸入口12を繋ぐように流通路16を形成している。具体的には、駆動軸50側の回転体10に設けた流通路16の遠心方向部分16bを、連結部13に形成した接続部分16cを介して反対側の回転体10の流通路16に繋げている。また、開口部19は、駆動軸50側の流通路16の遠心方向部分16b、および反対側の流通路16の遠心方向部分16bの両方に設けている。
この場合にも、図11(b)に示した例と同様に、対向体20の2つの面を第2の対向面22として効率的な加熱または冷却を行うことができる。また、2つの回転体10による攪拌で、温度調整能力を高めることが可能となるが、駆動軸10の反対側にのみ吸入口12を設けることで、駆動軸側10から回転体10に向かう流動が強くなりすぎないようにすることができる。対象流体80の状態によっては、このようにすることで温度調整能力をより高めることが可能となる。
なお、駆動軸50側の回転体10にのみ吸入口12を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。また、2つの回転体10のいずれか一方にのみ開口部19を設けるようにしてもよい。また、2つの回転体10の両方に吸入口12を設け、いずれか一方にのみ吐出口14を設けるようにしてもよい。
図13(a)および(b)は、対象流体80を収容した容器70の一部を対向体20とした場合の例を示した概略図である。同図(a)に示す例では、回転体10を容器70の底壁部72に近接させて配置し、第1の対向面18が所定の隙間Gを空けて底壁部72の内壁面72aと対向するようにしている。このようにすることで、容器70の底壁部72を対向体20とし、底壁部72の内壁面72aを第2の対向面22とすることができる。
図13(b)に示す例では、回転体10を容器70の底壁部72に近接させて配置し、第1の対向面18が所定の隙間Gを空けて底壁部72の内壁面72aと対向するようにして、容器70の底壁部72を対向体20とし、底壁部72の内壁面72aを第2の対向面22とすると共に、磁気継手90によって回転体10を底壁部72の外側から回転駆動するようにしている。この例では、回転体10に磁石92を取り付けることにより、底壁部72を挟んだ容器70の外側から磁気継手90で回転体10を回転駆動することを可能としている。なお、磁気継手90の代りに、円筒状リニアモータを使用するようにしてもよい。
このように、容器70の一部を対向体20とすることにより、温度調整装置1を簡素に構成すると共に、清掃や詰りの除去等のメンテナンスを容易にすることができる。特に、加熱冷却装置30を容器70の外側に設けることが可能となるため、加熱冷却装置30および熱媒体や電力等の供給系統の構成の自由度が増し、効率的な温度調整を低コストで実現することができる。また、加熱冷却装置30を備える既存の容器70を活用して温度調整装置1を実現することが可能となる。
なお、この場合、温度調整中に回転体10を底壁部72の内壁面72aに沿って移動させるようにしてもよい。また、例えば側壁部74等、容器70の底壁部72以外の部分を対向体20とするようにしてもよい。また、加熱冷却装置30を設ける範囲は、特に限定されるものではなく、例えば側壁部74等、容器70において対向体20とならない部分にも加熱冷却装置30を設けるようにしてもよい。
図14(a)は、加熱冷却装置30を回転体10にも設けるようにした場合の一例を示した正面図である。同図に示す例では、回転体10に設けた加熱冷却装置30は、4つの流通路16の間における第1の対向面18の近傍に配置され、主に第1の対向面18を介して周囲に熱を供給(すなわち、加熱)する、または周囲の熱を吸収(すなわち、冷却)するように構成されている。このように、回転体10にも加熱冷却装置30を設けることで、第1の対向面18と第2の対向面22の間において対象流体80を両側から加熱または冷却することができるため、加熱または冷却をより効率的に行うことが可能となる。
なお、回転体10に設けられる加熱冷却装置30は、第1の対向面18のみを介して加熱または冷却を行うものであってもよいし、第1の対向面18と共に、第1の対向面18以外の面(例えば、上面10a、側面10cおよび流通路16の内壁面等)を介して加熱または冷却を行うように構成されるものであってもよいし、第1の対向面18以外の面を介してのみ加熱または冷却を行うように構成されるものであってもよい。対向体20と共に回転体10にも加熱冷却装置30を設け、回転体10の周囲や流通路16内の適宜の部位を加熱または冷却することで、温度調整をより効率化することが可能となる。
また、対向体20に設けられる加熱冷却装置30を省略し、回転体10にのみ加熱冷却装置30を設けるようにしてもよい。この場合においても、回転体10に設けられる加熱冷却装置30が少なくとも第1の対向面18を介して対象流体80を加熱または冷却するものであれば、対向体20にのみ加熱冷却装置30を設けた場合と同様の効果を奏することが可能である。なお、回転体10に設けた加熱冷却装置30への熱媒体や電力等の供給は、適宜のロータリージョイント等を介して行えばよいことは言うまでもない。
図14(b)は、加熱冷却装置30を設けた2つの回転体10の一方を対向体20とした場合の一例を示した正面図である。この例では、加熱冷却装置30を備える2つの回転体10を第1の対向面18同士が対向するように配置し、駆動軸50を介してそれぞれ専用の駆動装置40で回転駆動するようにしている。この場合、例えば図の下側の回転体10は対向体20として機能し、下側の回転体10の第1の対向面18が第2の対向面22として機能することとなる。また、対向体20に吸入口12、吐出口14、流通路16および開口部19を設けたこととなる。
この場合にも、図14(a)に示した例と同様に、2つの第1の対向面18の間において対象流体80を両側から加熱または冷却することができるため、加熱または冷却をより効率的に行うことが可能となる。また、図11(b)に示した例と同様に、2つの回転体10によって対象流体80を攪拌することができるため、温度調整能力を高めることが可能となる。
なお、図14(b)に示す例では、2つの回転体10を互いに逆方向に回転させるようにしてもよいし、異なる回転速度で同一方向に回転させるようにしてもよい。また、2つの回転体10は、互いに同一形状に構成されるものであってもよいし、互いに異なる形状に構成されるものであってもよい。また、対向体20とする回転体10においては、開口部19を設けないようにしてもよい。また、一方の駆動軸50および回転体10を中空構造に構成し、2つの回転体10を同一側から駆動するようにしてもよい。また、いずれか一方の回転体10にのみ、加熱冷却装置30を設けるようにしてもよいことは言うまでもない。
図15(a)は、対向体20に加熱冷却能力を調整する調整部材21を設けるようにした場合の一例を示した正面図であり、同図(b)は、同図(a)のE−E線断面図である。この例では、調整部材21は、対向体20の対向面22から回転体10側に向けて突設された複数の略棒状の部材であり、回転体10を遠心方向外側から囲むようにして配置されている。そして、複数の調整部材21の内部には、それぞれ加熱冷却装置30が配置されている。
このように、対向体20に加熱冷却装置30を備える調整部材21を設けることで、吐出口14から吐出される対象流体80や、粘性によるつれ回り等によって回転体10の周囲を流動する対象流体80に対しても加熱または冷却を行うことができるため、加熱冷却能力を高めることが可能となる。また、複数の調整部材21を、適宜に間隔を空けた櫛歯状に配置することで、回転体10の生成する流動を阻害することなく加熱冷却能力を高めることができる。また、調整部材21によって回転体10の周囲の流動を適宜に乱すことで、熱伝達率を高めると共に攪拌能力を高めることができるため、温度調整能力を高めることが可能となる。
なお、調整部材21の形状、突出方向および配置構成は特に限定されるものではなく、任意の形状、突出方向および配置構成を採用することができる。例えば、調整部材21は、メッシュ状や格子状等に構成されるものであってもよい。また、調整部材21を非対向面26から回転体10の反対側に向けて突設するようにしてもよい。回転体10および対向体20の周囲を流動する対象流体80に対して加熱または冷却を行うように適宜に調整部材21を設けることで、より効率的に加熱または冷却を行うことが可能となる。さらに調整部材21は、例えば吐出口14からの流動等、回転体10の周囲の流動を所定の方向に誘導するように構成されるものであってもよい。
図16(a)は、吐出口14が設けられた回転体10の側面10cを第1の対向面18とした場合の一例を示した正面図であり、同図(b)は、同例の底面図であり、同図(c)は、同図(b)のF−F線断面図である。この例では、回転体10は、上面10aが略平面状に構成され、底面10bが球面状に構成されている。また、吸入口12は、球面状の底面10bに設けられ、駆動軸50は、上面10a側に接続されている。そして、流通路16の途中に開口部19は形成されておらず、略棒状の複数の対向体20が回転体10の側面10cと対向するように配置されている。
複数の対向体20の内部には、それぞれ加熱冷却装置30が配置されている。また、複数の対向体20は、固定部材60の先端部に接続された略リング状の保持部材23に保持されており、加熱冷却装置30への熱媒体や電力等の供給は固定部材60および保持部材23を介して行われる。
このように、吐出口14が設けられた側面10cを第1の対向面18とし、これに対向するように対向体20を配置した場合にも、吐出口14から吐出される対象流体80や粘性によるつれ回り等によって回転体10の周囲を流動する対象流体80に対して加熱または冷却を行うことが可能であり、また、加熱または冷却された対象流体80は、回転体10の生成する循環流によって遠方まで運ばれるため、図1等に示した例と同様に高い温度調整能力を得ることができる。
なお、この場合における対向体20の形状は、例えば棒状や格子状、メッシュ状等、対象流体80を適宜に通過させて、回転体10の周囲の流動を阻害しない形状であることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、対向体20は、回転体10の周囲の流動を所定の方向に誘導するように構成されるものであってもよい。また、保持部材23によってまとめて保持するのではなく、複数の対向体20を個別に保持するようにしてもよい。また、対向体20は、側面10cと共に底面10bの一部に対向するように配置されてもよい。
図17(a)は、対向体20を吸入口12が設けられた底面10bに対向するように配置した場合の一例を示した正面図であり、同図(b)は、対向体20を吸入口12と吐出口14の間の面(底面10bの一部および側面10cの一部)に対向するように配置した場合の一例を示した正面図である。また、同図(c)は、対向体20を回転体10の上面10a、底面10bおよび側面10cの全てに対向するように配置した場合の一例を示した正面図である。なお、同図(b)では、対向体20の一部を断面で示している。
対向体20をこのように配置した場合にも回転体10の周囲を流動する対象流体80を加熱または冷却し、循環流によって遠方まで運ぶことが可能であるため、高い温度調整能力を得ることができる。特に、吸入口12または吐出口14が設けられた面、または吸入口12と吐出口14の間の面に対向体20を対向させるようにすることで、対象流体80をより積極的に対向体20に衝突させ、熱伝達率を高めることができる。すなわち、対向体20は、回転体10の表面におけるいずれの面を第1の対向面18として配置されるものであってもよく、また、第1の対向面18と第2の対向面22の間における流動状態によっては、開口部19を省略するようにしてもよい。
なお、図17(a)では、複数の貫通孔28を有するメッシュ状の部材から対向体20を構成した場合の一例を、同図(b)では、回転体10外周側から覆う略部分球殻状の部材から対向体20を構成した場合の一例を、同図(c)では、リング状の保持部材23に保持される略籠状の部材から対向体20を構成した場合の一例を示しているが、対向体20の形状がこれらに限定されないことはいうまでもない。また、対向体20は、回転体10の周囲の流動を所定の方向に誘導するように構成されるものであってもよく、対象流体80を収容した容器70の一部から構成されるものであってもよいことはいうまでもない。
また、図17(b)に示す例において、第1の対向面18に開口部19を設けるようにしてもよい。また、開口部19が設けられた第1の対向面18に対向する対向体20と、開口部19が設けられていない第1の対向面18に対向する対向体20を組み合わせるようにしてもよい。すなわち、図15(a)および(b)に示した例の調整部材21は、回転体10の側面10cに対向する対向体20ということができる。
以上説明したように、本実施形態に係る温度調整装置1は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する回転体10と、回転体10における所定の対向面(第1の対向面18)に対向して配置される対向体20と、回転体10の表面に設けられる吸入口12と、回転体10の表面において吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に設けられる吐出口14と、回転体10に設けられ、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、対向体20に設けられ、周囲を加熱または冷却する加熱冷却装置30と、を備えている。
このような構成とすることで、簡素な構成でありながらも、加熱冷却装置30と対象流体80の間の熱伝達率を高め、少ないエネルギーコストで対象流体80を効率的に加熱または冷却することができる。具体的には、対向体20は、回転体10と比較して構成の自由度が大きいため、加熱冷却装置30を対向体20に設けるようにすることで、加熱冷却装置30の配置および構成の自由度が増し、効率的な加熱または冷却を、より簡素且つ安価な構成で実現することができる。また、回転体10の攪拌作用により、十分に加熱または冷却した対象流体80を広い範囲で略均一に行き渡らせることができる。
また、流通路16の途中には、対向面(第1の対向面18)において開口する開口部19が形成されてもよい。このようにすることで、第1の対向面18とこれに対向する対向体20の第2の対向面22の間で複雑な流動を発生させ、対象流体80を効率的に加熱または冷却することができる。
また、流通路16は、回転軸(中心軸C)の遠心方向外側に向かうように形成された遠心方向部分16bを有し、開口部19は、遠心方向部分16bに設けられてもよい。このようにすることで、流通路16内壁面において対象流体80と接触しやすい部分を第2の対向面22から構成し、流通路16を通過するのみの対象流体80に対しても第2の対向面22を介した加熱または冷却を行うことが可能となるため、加熱または冷却をより効率的に行うことができる。
また、対向体20は、回転軸(中心軸C)を中心に回転しないように固定配置されるものであってもよい。このようにすることで、加熱冷却装置30への熱媒体や電力等の供給が容易となるため、効率的な加熱または冷却を、より簡素且つ安価な構成で実現することができる。
また、対向体20は、温度調整の対象物(対象流体80)を収容する容器70の一部から構成されるものであってもよい。このようにすることで、加熱冷却装置30を容器70の外側に設けることが可能となるため、効率的な加熱または冷却を、より簡素且つ安価な構成で実現することができる。
また、対向体20において対向面(第1の対向面18)に対向する面(第2の対向面22)および対向面(第1の対向面18)の少なくとも一方には、凹凸形状18a、22aが形成されるようにしてもよい。このようにすることで、第1の対向面18および第2の対向面22の間の流動状態を適宜に調整し、加熱または冷却をより効率的に行うことができる。
なお、本実施形態では、回転体10を略砲弾形状に構成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転体10の形状は、例えば円柱状、多角柱状、円錐状、多角錐状、円錐台状、多角錐台状および部分球状等、任意の形状を採用することができる。同様に、対向体20の形状についても、任意の形状を採用することができる。また、回転体10および対向体20の第1の対向面18および第2の対向面22以外の部分に、凹凸形状を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、主に一組の回転体10および対向体20を備える例を示したが、温度調整装置1は、複数組の回転体10および対向体20を備えるものであってもよい。さらに、複数組の回転体10および対向体20を備えるようにした場合、図11(b)に示したように、一部の回転体10または対向体20が兼用されるようにしてもよい。
また、本実施形態では、主に流通路16を1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐように構成した例を示したが、流通路16は、1つの吸入口12と複数の吐出口14を繋ぐように構成されるものであってもよいし、複数の吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐように構成されるものであってもよいし、複数の吸入口12と複数の吐出口14を繋ぐように構成されるものであってもよい。
また、流通路16の内部、または吸入口12もしくは吐出口14の内部に対象流体80に衝突させる衝突部材を設けるようにしてもよい。この場合、衝突部材は、対象流体80を所定の方向に誘導するような形状に構成されるものであってもよい。また、流通路16の内部にゴミ等の異物を捕獲するフィルタを設けるようにしてもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の温度調整装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。