本発明を実施するための形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施の形態は例示であり、開示の装置及び方法は、以下の実施の形態の構成には限定されない。また、図に付した参照符号は理解を助けるための一例として便宜上付記したものであり、なんらの限定を意図するものではない。さらに、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
図1は、本発明が適用されるアドホックネットワークの構成を例示するブロック図である。
図1を参照すると、複数の無線通信端末101乃至無線通信端末104が通信グループを構成している。なお、図1に示した通信グループ内の無線通信端末の数や接続形態を示すネットワークトポロジは例示であり、図示した数の無線通信端末や通信リンクの接続形態に限られることはない。
通信グループ内では、各無線通信端末は周波数チャネルなどの無線資源を、時間、周波数、空間、符号などにより分割して共有することができる。例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)やCSMA(Carrier Sense Multiple Access)といった技術を使うことで、同じ周波数チャネルを各無線通信端末が時間的に重複しないように使用することが可能となる。
また、図1に例示されるように、通信グループ内の各無線通信端末は互いに直接的に通信可能である必要はなく、適当な1台以上の無線通信端末を介した通信を行ってもよい。例えば、無線通信端末101と無線通信端末102の通信のように他の端末を介さない直接的な通信をシングルホップ通信と呼ぶ。また、無線通信端末102と無線通信端末104の通信のように、少なくとも他の一台の無線通信端末が介在して信号を中継することで実現する通信をマルチホップ通信と呼ぶ。
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図2および図3を参照して説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の無線通信端末の構成を例示するブロック図である。
第1の実施形態の無線通信端末1は、ネットワーク環境調査手段11、送信電力候補決定手段12、隣接端末情報取得手段13および送信電力決定手段14を含む構成になっている。
ネットワーク環境調査手段11は、アドホックネットワークを構成する複数の無線通信端末で構成する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状況情報の少なくともいずれかをネットワーク環境情報として取得する。
送信電力候補決定手段12は、ネットワーク環境情報に基づいて、少なくとも一つの、所定値より高い値の第1の送信電力候補または所定値より低い値の第2の送信電力候補を決定する。
隣接端末情報取得手段13は、第1の送信電力候補または第2の送信電力候補に対応する送信電力を使用した場合の、少なくとも隣接端末数を含む隣接端末情報を取得する。ここで、第1の送信電力候補または第2の送信電力候補の送信電力が仮設定され、この仮設定された送信電力を用いた時の隣接端末情報が取得される。
送信電力決定手段14は、第1の送信電力候補を決定した場合は、隣接端末情報に基づいて、通信グループの通信性能を向上させる基準である高電力決定基準を満たす最大の第1の送信電力候補を送信電力として決定する。
また、送信電力決定手段14は、第2の送信電力候補を決定した場合は、隣接端末情報に基づいて、通信グループの通信性能を劣化させることなく他の通信グループへの干渉を低減できる基準である低電力決定基準を満たす最小の第2の送信電力候補を送信電力として決定する。
図3は、本発明の第1の実施形態の送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。第1の実施形態の送信電力決定方法は、第1の実施形態の無線通信端末1が図3のように動作することで実現される。
アドホックネットワークを構成する複数の無線通信端末で構成する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状況情報の少なくともいずれかを、ネットワーク環境情報として取得する(S101)。
取得したネットワーク環境情報に基づいて、少なくとも一つの、所定値より高い値の第1の送信電力候補または所定値より低い値の第2の送信電力候補を決定する(S102)。
第1の送信電力候補または第2の送信電力候補に対応する送信電力を使用した場合の、少なくとも隣接端末数を含む隣接端末情報を取得する(S103)。ここで、第1の送信電力候補または第2の送信電力候補の送信電力が仮設定され、この仮設定された送信電力を用いた時の隣接端末情報が取得される。
そして、取得した隣接端末情報に基づいて送信電力を次のようにして決定する(S104)。
第1の送信電力候補を決定した場合は通信グループの通信性能を向上させる基準である高電力決定基準を満たす最大の第1の送信電力候補を送信電力として決定する。また、第2の送信電力候補を決定した場合は通信グループの通信性能を劣化させることなく他の通信グループへの干渉を低減できる基準である低電力決定基準を満たす最小の第2の送信電力候補を送信電力として決定する。
このように、本実施形態では、ネットワーク環境情報を取得して、自端末が送信電力を上げた方が良いのか、それとも送信電力を下げた方が良いのかを判断する。
そして、その判断に基づいて、送信電力を上げた方が良いと判断した場合には所定値より高い値の第1の送信電力候補を決定し、送信電力を下げた方が良いと判断した場合には所定値より低い値の第2の送信電力候補を決定する。なお、第1の送信電力候補、第2の送信電力候補は、一つの候補であっても良いし複数の候補であっても良い。
そして、決定した第1の送信電力候補または第2の送信電力候補の送信電力を使用して、少なくとも隣接端末数を含む隣接端末情報を取得する。
送信電力候補として決定した送信電力を使用して取得した隣接端末情報に基づいて、第1の送信電力候補が高電力決定基準を満たすか、または第2の送信電力候補が低電力決定基準を満たすかを判定する。つまり、第1の送信電力候補の送信電力を使った場合には、隣接端末情報を参照して、通信グループの通信性能を向上させ得るかを主眼に置いた判断のもとに送信電力を決定する。また、第2の送信電力候補の送信電力を使った場合には、隣接端末情報を参照して、通信グループの通信性能を劣化させることなく他の通信グループへの干渉を低減できるかという判断のもとに送信電力を決定する。
このように、本実施形態では、端末が属する通信グループの通信性能向上のために送信電力を高くすべきか、他の通信グループへの干渉低減のために送信電力を低くすべきかを適切に判断してネットワーク全体として最適な条件で送信電力を決定することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を図4乃至図7を参照して説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態の無線通信端末の構成を例示するブロック図である。
第2の実施形態の無線通信端末10は、ネットワーク環境調査部110、送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130および無線通信部140を含む構成になっている。
無線通信部140は他の端末との無線通信を行う。無線通信部140は、ネットワーク環境調査部110や隣接端末情報取得部130が送受信する制御信号の送受信を行う。また、無線通信部140は、無線信号を送信する際は、送信電力制御部120によって設定された送信電力を用いる。
ネットワーク環境調査部110は、自端末が属する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状態/状況に関する情報(通信状況情報)の少なくともいずれかをネットワーク環境情報として取得する。
ネットワーク環境調査部110は、自通信グループのネットワークトポロジ情報を取得するトポロジ情報調査部1101と自端末または自端末周辺の通信状況情報を取得する通信状況情報調査部1102の少なくともいずれかを含む。
取得するネットワークトポロジ情報としては、所定の端末までのホップ数情報や周辺の端末数情報等がある。また、取得する通信状況情報としては、干渉を受けているリンク数、近隣の端末の伝送レートの大きさ、自端末が必要とする帯域の大きさ等がある。
送信電力制御部120は、送信電力候補決定部1201と送信電力決定部1202を含む。送信電力候補決定部1201は第1の実施形態の送信電力候補決定手段12に対応し、送信電力決定部1202は第1の実施形態の送信電力決定手段14に対応する。
送信電力候補決定部1201は、ネットワーク環境調査部110が取得したネットワーク環境情報に基づいて、自端末が使用する送信電力の候補値として、高い送信電力を候補値として選ぶか低い送信電力を候補値として選ぶかを決める。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
この高い送信電力を候補値として選ぶか低い送信電力を候補値として選ぶかは、取得したネットワーク環境情報に応じて判断され、端末毎に高い送信電力を使うことを優先する端末と低い送信電力を使うことを優先する端末に分けることができる。そして、その判断には、通信グループの通信性能を向上させることのみならず、通信グループの通信性能を劣化させることなく隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減することが考慮されている。また、高い送信電力を使うことを優先する端末と低い送信電力を使うことを優先する端末に分けることで、全ての端末が一斉に送信電力を下げてしまうというような状況を回避することができる。
なお、高い送信電力は、使用可能な電力値の中で所定の閾値以上の値から選択してもよいし、グループ内の他の端末の使用する送信電力の平均値や中央値と比較して高い値を選んでもよいし、現在使用している電力と比較して高い値を選んでもよい。
同様に、低い送信電力は、使用可能な電力値の中で所定の閾値以下の値から選択してもよいし、グループ内の他の端末の使用する送信電力の平均値や中央値と比較して低い値を選んでもよいし、現在使用している電力と比較して低い値を選んでもよい。
また、送信電力の候補値は一つに限ることなく複数の候補値を選んでも良い。
送信電力候補決定部1201は、決定した送信電力の候補値を、無線通信部140に仮設定する。そして、決定した送信電力の候補値ごとに、隣接端末情報取得部130に、当該候補値の送信電力を用いた場合の隣接端末を調査させる。
送信電力決定部1202は、隣接端末情報取得部130が調査した隣接端末情報に基づいて、送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
送信電力決定部1202は、高い送信電力を候補としていた場合には、隣接端末情報に基づいて、通信グループの通信性能を向上させる基準である高電力決定基準を満たす最大の送信電力候補を送信電力として決定する。一方、低い送信電力を候補としていた場合には、隣接端末情報に基づいて、通信グループの通信性能を劣化させることなく他の通信グループへの干渉を低減できる基準である低電力決定基準を満たす最小の送信電力候補を送信電力として決定する。
なお、高電力選択基準を満たす候補値と、低電力選択基準を満たす候補値が同時に存在する場合には、予めどちらの基準を優先するかを決めておくことで、候補値を選択できる。また、高電力選択基準を満たす送信電力の候補値、低電力選択基準を満たす送信電力の候補値のいずれも選ばれない場合には、現状の送信電力を維持するようにする。更に、送信電力の候補値が現在の電力より高い場合のみ高電力選択基準を用い、送信電力の候補値が現在の電力より低い場合のみ低電力選択基準を用いるように制御することもできる。
隣接端末情報取得部130は、送信電力決定部1202の処理で用いる隣接端末情報の収集を行う。
隣接端末情報の収集は、例えば、端末間で隣接端末情報収集用のビーコンを発信することで実現することができる。各端末は、送信電力候補決定部1201によって選ばれた送信電力の候補値を一時的に送信電力として設定し、当該送信電力における隣接端末調査用ビーコンを発信する。そのビーコンを受け取った各端末は、受信ビーコンの送信元端末のリストを含む信号を発信する。受信ビーコンのリストに自端末が送信元端末として含まれているかどうかに基づき、当該リストの送信元が隣接端末であるかを調べることができる。
次に、図5乃至図7を参照して、第2の実施形態の送信電力決定方法について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。第2の実施形態の送信電力決定方法は、第2の実施形態の無線通信端末10が図5のように動作することで実現される。
図6は、隣接端末情報を取得する動作を説明するフロー図である。この動作は隣接端末情報取得部130が実行する処理である。
図7は、隣接端末情報に基づいて送信電力を決定する動作を説明するフロー図である。この動作は送信電力決定部1202が実行する処理である。
図5に示すように、本実施形態の送信電力決定方法は、ネットワーク環境情報取得処理(S201)、送信電力候補決定処理(S202)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S203)および送信電力決定処理(S204)で構成される。
ネットワーク環境情報取得処理(S201)では、ネットワーク環境情報を取得する。前述したように、ネットワーク環境情報は自端末が属する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状況情報の少なくともいずれかの情報である。
送信電力候補決定処理(S202)では、ネットワーク環境情報取得処理で取得したネットワーク環境情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S203)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S204)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図5に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(ネットワーク環境情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図5に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
ステップS201のネットワーク環境情報取得処理と、ステップS202の送信電力候補決定処理は、対象とするネットワーク環境情報に応じてその処理が異なる。
送信電力候補決定処理は、取得したネットワーク環境情報に基づいて、自端末が高い送信電力を使うことを優先する端末なのか、それとも低い送信電力を使うことを優先する端末なのかを判定して送信電力の候補値を決める。
例えば、ネットワークの中央付近でトラフィックが集中しやすい傾向にある場合には、ネットワークの中央付近においてスループットを向上させることを考慮する必要がある。また、ネットワークの周辺付近では他の通信グループへの干渉を低減させることを考慮する必要がある。
そのような場合、ネットワークの中央付近の所定の端末とのホップ数をネットワーク環境情報として取得すれば良い。そして、ホップ数が小さい端末ほど高い送信電力を候補値として選び、ホップ数が大きい端末ほど低い送信電力を候補値として選ぶようにすることができる。例えば、ホップ数が決められた閾値未満である場合には現在より一定以上高い送信電力を候補値とし、ホップ数が決められた閾値以上である場合には現在より一定以上低い送信電力を候補値と決定すれば良い。
つまり、ネットワークの中央付近の所定の端末とのホップ数が小さい端末ほどネットワークの中央付近に位置しており、通信グループの通信性能を向上させるために高い送信電力を候補値として選ぶことを優先する。一方、ネットワークの中央付近の所定の端末とのホップ数が大きい端末ほどネットワークの周辺付近に位置しており、隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減するために低い送信電力を候補値として選ぶことを優先する。
対象とするネットワーク環境情報に応じた処理は、後述する適用例1乃至適用例6で個々に説明する。
図6を参照して、ステップS203の候補値電力を用いた隣接端末調査処理を説明する。
まず、図5のステップS203で決定した送信電力の候補値を無線通信部140に一時的に設定する(S2031)。なお、複数の送信電力の候補値が決定されている場合は、適宜、隣接端末を調査したい送信電力の候補値を選んで設定する。
その後、収集すべき隣接端末情報を示す隣接端末リストと自端末の識別子と仮設定した送信電力の情報を含む隣接端末調査用ビーコンを全ての隣接端末に対しブロードキャストする(S2032)。
一旦、隣接端末調査用のビーコンをブロードキャストした後、この隣接端末の調査処理以外の通信を行う必要がある場合には、仮設定していた送信電力を元の値に再設定する(S2033)。
隣接端末調査用ビーコンを受信した端末は、過去の所定時間に受信した隣接端末調査用ビーコンに含まれる端末の識別子とその際の送信電力を対応付けた情報を少なくとも含む隣接端末リストを生成して、全ての隣接端末に対してブロードキャストする。
周辺端末が生成して送信した隣接端末リストを受信した調査元の端末は、隣接端末リストに自端末が含まれている場合、隣接端末リストの送信元の端末を、仮設定した送信電力候補値における隣接端末と認識する。そして、受信収集した隣接端末リストの情報に基づいて、少なくとも隣接端末数を隣接端末情報として収集する(S2034)。
隣接端末リストには収集する隣接端末情報に応じて通知すべき調査項目を含めても良い。例えば各隣接端末の所定の端末との間のホップ数を含めても良い。更に、隣接端末情報として、ネットワーク環境情報取得処理で取得したネットワーク環境情報を併用してもかまわない。
なお、上述の処理で得られる隣接端末情報は一つの送信電力の候補値についてのものである。複数の送信電力の候補値が決定されている場合は、送信電力の候補値ごとに上述した処理を繰り返し行うことで、各送信電力の候補値に対する隣接端末情報を収集する。
上記では隣接端末調査用ビーコンをブロードキャストする例を説明したが、隣接端末の調査処理には多くのバリエーションがある。
例えば、隣接端末調査用ビーコンや隣接端末リストの送信はユニキャストで各隣接端末に対して送信されてもよい。
また、隣接端末調査用ビーコンや隣接端末リストには仮設定した送信電力を含ませないように構成することも可能である。例えば、各端末が時刻同期している場合には隣接端末リストにビーコンを受信した時刻を含ませることで同様の処理を実現できる。すなわち、周辺端末が送信してきた隣接端末リストを受信した調査元の端末が、自端末の識別子に対応付けられているビーコン受信時刻を基に、当該時刻で使用した送信電力を調べることが可能となる。すなわち、その隣接端末リストを送信してきた端末を当該送信電力における隣接端末と認識することができる。
また、隣接端末調査用ビーコンや隣接端末リストを、経路制御などの制御信号と兼ねることも可能である。例えば、アドホックネットワーク向けの経路制御手法であるOLSR(Optimized Link State Routing)では各端末はHelloメッセージを用いて隣接端末を調べることができる。このHello信号を隣接端末調査用ビーコンや隣接端末リストとして用いることもできる。
以上のようにして、図5のステップS203の隣接端末調査処理を行い、送信電力の候補値ごとの隣接端末情報を得ると、ステップS204の送信電力決定処理を行う。
図7を参照して、図5のステップS204の送信電力決定処理を説明する。
送信電力決定処理は、隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて、送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する処理である。
まず、図5のステップS203の隣接端末調査処理で収集した送信電力の候補値ごとの隣接端末情報を取得する(S2041)。
送信電力の各候補値に対する隣接端末情報の内容が高電力選択基準を満たすかを確認する(S2042)。
高電力選択基準は、自グループにおける通信性能が向上するかどうかを判断するための基準である。高電力選択基準の例として、「現在の送信電力における隣接端末数と比較し、隣接端末数が増加すること」とすることができる。隣接端末数が増加することは、それまで直接通信できなかった端末との通信ができるようになったと言い換えることができる。そのため、それまでマルチホップ通信を行う必要があった端末間の通信がシングルホップで繋がるようになり中継端末の負荷が減ることで、通信性能が向上することが期待できる。
そして、高電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在するかどうかを判定する(S2043)。
高電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在する場合(S2043、Yes)、高電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値の中で最大の値に送信電力を決定する(S2044)。
高電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在しない場合(S2043、No)、送信電力の各候補値に対する隣接端末情報の内容が低電力選択基準を満たすかを確認する(S2045)。
低電力選択基準は、自グループの性能が大きく劣化しないかどうかを判断するための基準である。低電力選択基準の例として、「現在の送信電力における隣接端末数と比較し、隣接端末数が変化しないこと」とすることができる。こうすることで、現在のネットワークトポロジを維持することができ、ネットワークの通信性能を劣化させない範囲で他グループへの干渉を低減することが期待できる。
そして、低電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在するかどうかを判定する(S2046)。
低電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在する場合(S2046、Yes)、低電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値の中で最小の値に送信電力を決定する(S2047)。
低電力選択基準を満たす内容の隣接端末情報に対応する送信電力の候補値が存在しない場合は(S2046、No)、現在と同じ値に送信電力を維持すると決定する(S2048)。
なお、構成の説明の中でも触れたように、高電力選択基準と低電力選択基準の優先度を変えても良い。すなわち、ステップS2042の各候補値に対する隣接端末情報の内容が高電力選択基準を満たすかを確認する処理とステップS2045の各候補値に対する隣接端末情報の内容が低電力選択基準を満たすかを確認する処理の順序を逆にしてもよい。また、その順序を、取得した対象とするネットワーク環境情報を基に決めるように構成してもよい。
さらに、高電力選択基準を満たすかを確認する処理は、現在の送信電力より高い送信電力の候補値のみに対して行ってもよい。同様に低電力選択基準を満たすかを確認する処理も現在の送信電力より低い送信電力の候補値のみに対して行ってもよい。
本実施形態のように構成することで、高い送信電力を優先的に使用する端末と低い送信電力を優先的に使用する端末がグループ内に混在する状況となる。そのため、通信グループの通信性能を向上させることのみならず、通信グループの通信性能を劣化させることなく隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減することができる。
このように、本実施形態では、端末が属する通信グループの通信性能向上のために送信電力を高くすべきか、他の通信グループへの干渉低減のために送信電力を低くすべきかを適切に判断してネットワーク全体として最適な条件で送信電力を決定することができる。
上述した第2の実施形態の各種の適用例について以下に説明する。
以下に説明する適用例1乃至適用例6は、ネットワーク環境調査部110が取得するネットワーク環境情報の内容に応じた適用例である。
(適用例1)
図8および図9を参照して適用例1を説明する。
図8は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例1の構成を例示するブロック図である。
適用例1の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110にホップ数調査部1103を含み、ネットワーク環境情報としてホップ数を用いる。つまり、適用例1の無線通信端末10は、図4に示したトポロジ情報調査部1101として、ホップ数調査部1103を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
また、適用例1の無線通信端末10が適用される通信グループでは、通信グループを構成する複数の無線通信端末の中に、他の無線通信端末と区別される特別な端末が含まれるものとする。この特別な端末は、バックホールネットワークに繋がるシンク(sink)端末やネットワークの無線資源(タイムスロット、周波数、拡散符号等)の割り当て管理を行う端末を想定する。シンク端末は、センサネットワークなどで、センシングしたデータが流れ込む端末で、シンク端末を介してバックホールネットワークやサーバにデータが送られる。
ホップ数調査部1103は、後述するように、ホップ数調査用信号を用いてホップ数情報を収集する。適用例1ではこのホップ数情報は、上述したような特別な端末である、予め決められた端末(特定端末)との間のホップ数の情報とする。なお、特定端末が複数存在する場合には、それぞれの特定端末との間のホップ数を比較したときに、最もホップ数が小さくなる特定端末との間のホップ数とすることができる。
図9は、適用例1における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図9に示すように、適用例1の送信電力決定方法は、ホップ数調査処理(S301)、送信電力候補決定処理(S302)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S303)および送信電力決定処理(S304)で構成される。
ホップ数調査処理(S301)では、ネットワーク環境情報として予め決められた特定端末との間のホップ数情報を取得する。
送信電力候補決定処理(S302)では、ホップ数調査処理で取得したホップ数情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S303)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S304)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図9に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(ホップ数情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図9に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
まず、ステップS301のホップ数調査処理について説明する。このホップ数調査処理は、ホップ数調査部1103がホップ数調査用信号を用いて実行する処理である。
特定端末のホップ数調査部1103では、自端末のホップ数を「0」と認識し、その自端末のホップ数の情報を含むホップ数調査用信号を定期的に送信する。一方、特定端末以外の各端末のホップ数調査部1103では、当該端末が過去の一定時間内に受信したホップ数調査用信号に含まれる値の最小値に1を加算した値を自端末のホップ数として認識する。そして、各端末のホップ数調査部1103は、認識した自端末のホップ数の情報を含むホップ数調査用信号を定期的に送信する。このようにすることで、マルチホップで通信が行われている状況でも各端末において、特定端末との間のホップ数を計算することができる。
ステップS302の送信電力候補決定処理は、送信電力の候補値を自端末のホップ数を基に決める。例えば、自端末のホップ数が小さいほど高い送信電力を候補値として選ぶことができる。同様に自端末のホップ数が大きいほど低い送信電力を候補値として選ぶことができる。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
このホップ数に基づく送信電力の候補値の選択は、トラフィックが集中しやすいネットワークの中央付近においてスループット向上に寄与し、ネットワークの周辺付近において他のグループへの干渉を低減することを考慮したものである。
例えば、端末をネットワーク内にランダムに配置した場合、地理的に中央に存在する端末にネットワークのトラフィックが集中しやすくなる傾向がある。そのため、特定端末が中央に存在する場合には、特定端末に至るまでのホップ数が小さい端末ほどトラフィックが集中しやすい傾向となる。すなわち、各端末が自端末のホップ数が小さい場合に高い送信電力をより積極的に使用することで、トラフィックが集中しやすいネットワークの中央付近において、高い送信電力を設定する端末が増え、高いスループットを実現することが可能になる。また、ネットワークの周辺付近の特定端末からのホップ数が大きい端末では、ホップ数を増加させることなく通信性能を維持して他のグループへの干渉を低減することができる。
ステップS303の候補値電力を用いた隣接端末調査処理は、図5のステップS203の処理と同じで、図6を参照して説明したステップS2031乃至ステップS2034と同じである。なお、適用例1では、ホップ数調査処理で取得したホップ数情報も隣接端末調査処理で収集する隣接端末情報として併用することができる。
ステップS304の送信電力決定処理は、図5のステップS204の処理と同じで、図7を参照して説明したステップS2041乃至ステップS2048と同じである。
なお、高電力選択基準を満たす候補値と、低電力選択基準を満たす候補値が同時に存在する場合には、予めどちらの基準を優先するかを決めておくことで、候補値を選択できる。また、ここでもホップ数情報を用い、ホップ数が所定の閾値未満の場合に高電力選択基準を満たす候補値を、所定の閾値以上の場合に低電力選択基準を満たす候補値を選ぶようにしてもよい。
この適用例1のように構成することで、特定端末からのホップ数が小さいほど高い送信電力を使用し、逆に、特定端末からのホップ数が大きいほど低い送信電力を使用することになる。これにより、ネットワークの中央付近の特定端末からのホップ数が小さい範囲にトラフィックが集中する状況において、トラフィックが集中する端末がより高い電力を使えるようになり、ネットワークの性能向上に寄与し得る。また、ネットワークの周辺付近の特定端末からのホップ数が大きい端末では、ホップ数を増加させることなく通信性能を維持して他のグループへの干渉を低減することができる。
(適用例2)
ネットワーク内の特定端末からのホップ数が大きくなるとネットワークの性能が悪化するような場合がある。例えば、前述したシンク端末を介して他の端末がバックホールネットワークとの間で通信するような形態では、シンク端末に対するホップ数が大きくなると、中継端末の負荷増大に伴うスループットの低下や通信遅延の増大といった悪影響が生じる。
適用例2の無線通信端末は、自端末のホップ数に加え、同じ通信グループ内の他の端末のホップ数の調査を行って潜在的最大ホップ数を取得する。そして、適用例2では送信電力の候補値を潜在的最大ホップ数に基づいて決める。なお、ホップ数情報は、適用例1と同じく、特定端末との間のホップ数の情報とする。
図10乃至図13を参照して適用例2を説明する。
図10は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例2の構成を例示するブロック図である。
適用例2の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110に潜在的最大ホップ数調査部1104を含み、ネットワーク環境情報として潜在的最大ホップ数を用いる。つまり、適用例2の無線通信端末10は、図4に示したトポロジ情報調査部1101として、潜在的最大ホップ数調査部1104を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
また、適用例2の無線通信端末10が適用される通信グループは、適用例1で説明した特定端末を含む通信グループと同じである。
潜在的最大ホップ数調査部1104は、自端末のホップ数に加え、同じ通信グループ内の他の端末のホップ数の調査を含む。特に、同じグループ内の端末Xであって、当該端末Xと特定端末とを最小ホップでつないだ経路に自端末が含まれるような端末Xのホップ数の最大値である潜在的最大ホップ数を調査する。
図11は、潜在的最大ホップ数を説明するネットワーク構成図である。
図11に例示した、特定端末と端末A乃至端末Fが通信グループ内でネットワークを形成している状況における、端末Aでの潜在的最大ホップ数について説明する。
端末Aは特定端末からの自端末のホップ数を調査し「1」という値を得る。また端末Aは、端末B、端末C、端末Dのそれぞれが特定端末と最小ホップ数でつなぐ経路上に存在する。そのため端末Aは、端末Bのホップ数(2)、端末Cのホップ数(3)、端末Dのホップ数(2)のうちの最大値「3」を潜在的最大ホップ数として得る。なお、潜在的最大ホップ数の調査の実現方法は後述する。
適用例2では送信電力の候補値を潜在的最大ホップ数に基づいて決める。
例えば、潜在的最大ホップ数が大きいほど高い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に潜在的最大ホップ数が小さいほど低い送信電力の候補値を選ぶことができる。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
これは、通信グループ内の端末の特定端末からのホップ数を減少させることまたは増加させないことを意図した候補値の選定方法である。
通信グループ内の端末の特定端末と他の端末間でトラフィックが大きい場合や特定端末が他の端末に少ない遅延で情報を送ることが求められる場合に、特定端末からのホップ数を少なく保つことで、ネットワークの性能向上に寄与し得る。また、各端末は特定端末を介してマルチホップ通信を行うことが可能である場合を考慮すると、各端末と特定端末との間のホップ数を減少させることで、通信グループ内の端末間のマルチホップ通信におけるホップ数の最大値を抑制し得る。すなわち、マルチホップ通信におけるホップ数が大きくなりすぎる状態を防ぐことができる。
図11の例を用いて潜在的最大ホップ数と通信グループ内のホップ数の関係について説明する。
図11の状態から、端末Bのホップ数が減少すると(例えば、特定端末とシングルホップ通信が可能となった場合など)、端末Cのホップ数も減少する。逆に、端末Aまたは端末Bのホップ数が増加すると(例えば、端末Aと特定端末間のリンクが断絶し、端末Eを介したマルチホップ通信となった場合など)、端末Cのホップ数が増加する。
すなわち、各端末のホップ数が増加、または減少すると、その端末を介して特定端末と通信を行うような端末もホップ数が増加または減少する。そのことから、潜在的最大ホップ数が大きい端末のホップ数を減らすことで通信グループ内のホップ数が大きい端末のホップ数を減らすことが期待できる。逆に潜在的最大ホップ数が大きい端末のホップ数が増加すると、通信グループ内のホップ数が大きい端末のホップ数がより大きくなる可能性が高くなる。
以上のように潜在的最大ホップ数が大きい端末のホップ数を減少させること、または増加させないことで通信グループ内のネットワークの性能向上または性能劣化の抑制に寄与し得る。そのことから、潜在的最大ホップ数に基づいて送信電力の候補値を選ぶことが重要となる。
図12は、適用例2における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図12に示すように、適用例2の送信電力決定方法は、潜在的最大ホップ数調査処理(S401)、送信電力候補決定処理(S402)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S403)および送信電力決定処理(S404)で構成される。
潜在的最大ホップ数調査処理(S401)では、ネットワーク環境情報として、後述するように、潜在的最大ホップ数情報を取得する。
送信電力候補決定処理(S402)では、潜在的最大ホップ数調査処理で取得した潜在的最大ホップ数情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S403)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S404)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図12に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(潜在的最大ホップ数情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図12に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
まず、ステップS401の潜在的最大ホップ数調査処理について、図13を参照して説明する。
図13は、潜在的最大ホップ数調査の動作を説明するフロー図である。
この潜在的最大ホップ数調査では、自端末のホップ数の調査に加え、他の端末のホップ数、特に潜在的最大ホップ数の調査が行われる。そして、潜在的最大ホップ数調査は、各端末の潜在的最大ホップ数調査部1104間で 潜在的最大ホップ数調査用信号を用いて行われる。
各端末は、ホップ数調査処理S4011を行う。このホップ数調査処理は、適用例1において図9のステップS301で説明したように、ホップ数調査用信号を用いて実行される。
このとき、各端末は隣接端末が発信するホップ数調査用信号に含まれる情報を参照して隣接端末のホップ数を知ることができる。そして、自端末よりホップ数が大きい隣接端末の有無を確認する(S4012)。
自端末よりホップ数が大きい隣接端末が存在しない場合(S4012、無)には、自端末のホップ数を潜在的最大ホップ数として決定する(S4015)。
自端末の潜在的最大ホップ数を決定すると、この決定した潜在的最大ホップ数情報を含む潜在的最大ホップ数調査用信号を送信する(S4016)。
自端末よりホップ数が大きい隣接端末が存在する場合(S4012、有)には、各端末から送信される潜在的最大ホップ数調査用信号の受信を待つ(S4013)。
他の端末から潜在的最大ホップ数調査用信号を受信すると(S4013、Yes)、ステップS4014の判定処理を行う。このステップS4014の判定処理では、その信号の送信元が自端末よりホップ数が大きく、かつ潜在的最大ホップ数調査用信号に含まれる潜在的最大ホップ数が、自端末が現在認識している潜在的最大ホップ数より大きいかどうかを判定する。
この判定が肯定であった場合(S4014、Yes)、当該潜在的最大ホップ数を自端末の新たな潜在的最大ホップ数と決定する(S4015)。
自端末の潜在的最大ホップ数を新たに決定すると、この新たに決定した潜在的最大ホップ数情報を含む潜在的最大ホップ数調査用信号を送信する(S4016)。
なお、ステップS4011のホップ数調査処理やステップS4012乃至ステップS4016の潜在的最大ホップ数調査用信号の送信処理は繰り返し行うことで、動的な端末の隣接関係の変化に対応できる。このとき、ホップ数調査用信号に潜在的最大ホップ数の情報を含ませるように構成しても良い。このように構成することで制御信号量を削減することができる。
以上のようにして得た潜在的最大ホップ数情報を基に、ステップS402の送信電力候補決定処理が行われる。
適用例2の送信電力候補決定処理は、通信グループ内の端末の特定端末からのホップ数を減少させることまたは増加させないことを意図して候補値を選定する。前述したように、潜在的最大ホップ数が大きいほど高い送信電力の候補値を選んで決定し、潜在的最大ホップ数が小さいほど低い送信電力の候補値を選んで決定する。
ステップS403の候補値電力を用いた隣接端末調査処理およびステップS404の送信電力決定処理は、それぞれ図6および図7で説明した処理と同様にして行うことができる。
ここで、適用例2における隣接端末調査において隣接端末群の特定端末からのホップ数を調査して、高電力選択基準の例として「自端末のホップ数より2以上少ないホップ数の端末が存在すること」を高電力選択基準としても良い。このようにすることで、当該候補値を送信電力として設定した場合に、自端末のホップ数を減らすことが可能となる。高電力選択基準の別の例として「自端末のホップ数より2以上多いホップ数の端末が存在すること」を高電力選択基準としても良い。こうすることで、当該候補値を送信電力として設定した場合に、自端末より2以上多いホップ数であった端末が自端末を介した経路により少ないホップ数で特定端末と繋がり、ホップ数を減らすことが可能となる。また、低電力選択基準の例として「自端末のホップ数より1以上少ないホップ数の端末が存在すること」を低電力選択基準としても良い。こうすることで、当該候補値を送信電力として設定した場合に、自端末のホップ数が減らないことが期待される。
なお、高電力選択基準を満たす候補値と、低電力選択基準を満たす候補値が同時に存在する場合には、予めどちらの基準を優先するかを決めておくことで、候補値を選択できる。また、ここでもホップ数情報を用い、潜在的最大ホップ数が所定の閾値以上の場合に高電力選択基準を満たす候補値を、所定の閾値未満の場合に低電力選択基準を満たす候補値を選ぶようにしてもよい。
通信グループ内での任意の端末間の通信でも、一般にホップ数が大きくなると中継端末の負荷増大によるスループットの低下や通信遅延は同様に生じる。
適用例2のように構成することで、通信グループ内の特定端末からのホップ数をある上限値を超えないようにすることができ、通信グループ内の任意の端末間の通信のホップ数の上限を保証することが可能となる。言い換えれば、特定端末からのホップ数を減少または増加させないことで、端末の通信性能を向上させること、または劣化を抑制することを実現できる。
(適用例3)
端末が送信電力を決定する際に、自端末の周囲の端末密度を考慮することによって、低い送信電力を使った場合に自グループ内の通信に悪影響を及ぼすかどうかを判断することができる。
すなわち端末密度が高い領域においては、各端末間が密に結合しているため、送信電力を低減することで端末間のリンクが減少しても、多くの迂回路が存在するため、通信の性能に大きな悪影響を及ぼさない可能性がある。一方端末密度が低い領域では、各端末が疎に結合しているため、端末間のわずかなリンクの減少が通信性能に大きく悪影響を及ぼすことが考えられる。
適用例3の無線通信端末は、送信電力を決定する際に自端末の周囲の端末密度を考慮して送信電力を決定する。
図14乃至図16を参照して適用例3を説明する。
図14は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例3の構成を例示するブロック図である。
適用例3の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110に周辺端末調査部1105を含み、ネットワーク環境情報として周辺の端末数を用いる。つまり、適用例3の無線通信端末10は、図4に示したトポロジ情報調査部1101として、周辺端末調査部1105を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
周辺端末調査部1105は、自端末から予め決められたホップ数以内に存在する端末数を調査して周辺の端末数情報を得る。
図15は、適用例3における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図15に示すように、適用例3の送信電力決定方法は、周辺の端末数調査処理(S501)、送信電力候補決定処理(S502)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S503)および送信電力決定処理(S504)で構成される。
周辺の端末数調査処理(S501)では、ネットワーク環境情報として、周辺の端末数情報を取得する。
送信電力候補決定処理(S502)では、周辺の端末数調査処理で取得した周辺の端末数情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S503)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S504)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図15に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(周辺の端末数情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図15に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
ステップS501の周辺の端末数調査処理について説明する。
周辺の端末数の調査処理では、自端末から予め決められたホップ数NH以内の端末数を調べる。
NH=1の場合は、周辺の端末数を単純に隣接端末の数とすることができる。すなわち、図6を参照して説明した、隣接端末情報取得部130での動作と同様にして隣接端末を調査し、その隣接端末数を周辺の端末数とすることができる。
一方、NHが1よりも大きい場合には、周辺端末調査用信号を用いて周辺の端末数調査処理を実現する。例えば、各端末は自端末がそれまでに得た周辺の端末の情報をそのホップ数の情報とともに周辺端末調査用信号に含ませて、定期的に隣接端末にブロードキャストすれば良い。
図16は、周辺の端末数調査処理を説明するネットワーク構成図である。
図16において、端末A乃至端末Eが図示するように接続されている。
上段の図は時刻AAにおいて端末Aと端末Bがそれぞれの周辺端末調査用信号を発信している様子を示す。初期状態で端末A、端末Bは周辺端末の情報を持たないため、自端末の情報のみをホップ数(0)に対応付けて、周辺端末調査用信号として発信する。
中段の図は、その後、時刻BBにおいて端末Cが周辺端末調査用信号を発信している様子を示す。端末Cは、端末Aと端末Bから周辺端末調査用信号を受信しているので、自端末の情報をホップ数(0)に、端末Aと端末Bから得た情報をホップ数(1)に対応付けて、周辺端末調査用信号として発信する。
下段の図は、さらにその後、時刻CCにおいて端末Dが周辺端末調査用信号を発信している様子を示す。端末Dは、自端末の情報をホップ数(0)に、端末Cから得た情報に基づいて、端末Cの情報をホップ数(1)に、端末Aと端末Bの情報をホップ数(2)に対応付けて周辺端末調査用信号として発信する。
このようにすることで、端末Eは自端末から1ホップ乃至3ホップ先にある端末A乃至端末Dの情報を得ることができる。
なお、一連の処理の中で、周辺端末調査用信号に同じ端末に対して異なるホップ数が複数回登場する場合は、最もホップ数が小さいものを除いて削除することができる。
また、周辺端末数の調査は経路制御情報を使うこともできる。例えば、アドホックネットワーク向けの経路制御手法であるOLSR(Optimized Link State Routing)では各端末はHelloメッセージに隣接端末の情報を含ませることができる。すなわち、各端末は隣接端末の送信するHelloメッセージを参照することで、自端末から2ホップ以内の端末の情報を収集することが可能である。
図15のステップS502の送信電力候補決定処理は、周辺の端末数調査処理で取得した周辺の端末数に基づいて候補値を選定することができる。
例えば、周辺の端末数が多いほど、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に周辺の端末数が少ないほど、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
このようにすることで、端末密度が高いほど、低い送信電力を優先的に使用することとなり、より自グループの通信性能に悪影響を及ぼさない端末が低い送信電力を使用して他のグループへの干渉を低減することができる。
また別の例として、自端末から2ホップ以上離れた位置にいる端末が少ないほど低い送信電力の候補値を選び、自端末から2ホップ以上離れた位置にいる端末が多いほど高い送信電力の候補値を選ぶようにすることもできる。
ある端末から見て他の端末が2ホップ以上離れている場合、当該端末とマルチホップでしか通信できないことを意味する。このような端末とシングルホップで通信できるようになると中継端末の負荷が軽減される。すなわち、マルチホップ通信が必要な端末間でシングルホップ通信が可能になるとグループ内の通信性能を向上し得る。そのことから、2ホップ以上離れている端末が多いような端末を、マルチホップ通信からシングルホップ通信に変更し得る通信相手の端末が潜在的に多く存在する端末とみなすことができる。そして、そのような端末に対してより高い送信電力を優先的に使用させることで、グループ内の通信性能を向上することができる。
ステップS503の候補値電力を用いた隣接端末調査処理およびステップS504の送信電力決定処理は、それぞれ図6および図7で説明した処理と同様にして行うことができる。適用例3の場合は、自端末からのホップ数と、そのホップ数に対応する隣接端末数に基づいて高電力選択基準および低電力選択基準を設定して送信電力を決定すれば良い。
適用例3のように構成することで、各端末の周辺の端末数に基づいて送信電力を設定することが可能となる。
上述したように、周辺の端末数が多いほど低い送信電力を優先的に使用することで、自グループの通信性能に悪影響を及ぼさない端末が低い送信電力を使用して他のグループへの干渉を低減することができる。そして、周辺の端末数数が少ないほど高い送信電力を優先的に使用することで、グループ内の通信性能を向上させることができる。
(適用例4)
TDMAなどの多元接続方式は、端末ごとに無線資源(TDMAの場合はタイムスロット)を固定的または半固定的に割り当てることができる。このような構成を考えると、各端末の被干渉、与干渉の状態は端末ごとに大きく異なるといえる。すなわち、異なる通信グループが近接していても、ある端末が使用する無線資源が他のグループ内の端末に重複して割り当てられていない場合には当該端末の被干渉、与干渉は問題とならないだろう。また、ある端末が使用する無線資源が他のグループ内の端末と重複して割り当てられていても、当該端末の自グループ内の隣接端末と比較して地理的に離れている場合は、当該端末の被干渉は問題とならないだろう。
すなわち、通信グループ間で重複して無線資源が割り当てられているかどうかと、端末の配置に依存して、被干渉・与干渉が大きい端末や問題とならないほど小さい端末が存在するなど端末ごとの差異が生まれる。
適用例4の無線通信端末は、送信電力を決定する際に端末の被干渉の大きさに着目して送信電力を決定し、より効果的に通信グループ間の干渉を低減する。
図17および図18を参照して適用例4を説明する。
図17は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例4の構成を例示するブロック図である。
適用例4の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110に片方向リンク調査部1106を含み、ネットワーク環境情報として受信のみ可能な無線リンクである片方向リンク数を用いる。つまり、適用例4の無線通信端末10は、図4に示した通信状況情報調査部1102として、片方向リンク調査部1106を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
片方向リンク調査部1106は、自端末の無線送信が干渉をどの程度被っているかを推定するために受信のみ可能な無線通信リンクの情報(片方向リンク情報)を調査する。
ここで、ある端末が干渉を被っている場合、それは干渉源となっている端末と無線資源が重複しているためである。すなわち当該端末は干渉を被ると同時に他のグループの端末に対して干渉を与えていることに注意されるべきである。そのことから、干渉を被っている端末ほど送信電力を削減することで、他グループへの干渉抑制効果を高めることができるといえる。
片方向リンク調査部1106は、自端末において受信のみ可能な無線通信リンクを調べる。ある端末において、受信のみ可能な無線リンクが存在するとき、当該無線リンクの通信相手端末とアンテナゲイン、送信電力が同一であるならば、干渉によって自端末の送信が阻害されている状況と考えられる。そのことから、受信のみ可能な無線リンクに基づいて、どの程度の干渉を被っているかを推定することが可能となる。
受信のみ可能な無線リンクは、後述するように、隣接端末を調査する処理と同様に各端末に自端末が制御信号を受信可能であった端末のリストを発信させることで、調べることができる。
図18は、適用例4における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図18に示すように、適用例4の送信電力決定方法は、片方向リンク調査処理(S601)、送信電力候補決定処理(S602)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S603)および送信電力決定処理(S604)で構成される。
片方向リンク調査処理(S601)では、ネットワーク環境情報として、片方向リンク情報を取得する。片方向リンク情報とは、双方向で通信可能な無線通信リンクの数と受信のみ可能な無線通信リンクの数の比をいう。
送信電力候補決定処理(S602)では、片方向リンク調査処理で取得した片方向リンク情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S603)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S604)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図18に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(片方向リンク情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図18に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
ステップS601の片方向リンク調査処理について説明する。
片方向リンク調査処理は、片方向リンク調査用信号を用いて行われる。片方向リンク調査用信号は、各端末が予め決められた共通の送信電力を使って、自端末の識別子を含めて定期的に送信するものである。さらに、各端末は、過去の一定時間内に受信した片方向リンク調査用信号の送信元の端末の識別子のリストを、片方向リンク調査用信号に含める。
各端末は、自端末が受信した片方向リンク調査用信号に含まれているリストに自端末の識別子が含まれていない場合、当該片方向リンク調査用信号の送信元端末との間のリンクを、受信のみ可能な無線通信リンクと認識する。一方、各端末は自端末が受信した片方向リンク調査用信号に含まれているリストに自端末の識別子が含まれている場合、当該片方向リンク調査用信号の送信元端末との間のリンクを、双方向で通信可能な無線通信リンクと認識する。
そして、各端末は、双方向で通信可能な無線通信リンク数と受信のみ可能な無線通信リンク数の比を片方向リンク情報とする。
図18のステップS602の送信電力候補決定処理は、片方向リンク調査処理で取得した片方向リンク情報である、双方向で通信可能な無線リンク数と受信のみ可能な無線リンク数の比を基に候補値を選定することができる。
例えば、受信のみ可能な無線リンクの割合が小さいほど、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に受信のみ可能な無線リンクの割合が大きいほど、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
このようにすることで、より多くの干渉を被っている端末が低い送信電力を優先的に使用することとなり、他グループへの干渉量低減の効果が高くなる。
ステップS603の候補値電力を用いた隣接端末調査処理およびステップS604の送信電力決定処理は、それぞれ図6および図7で説明した処理と同様にして行うことができる。適用例4の場合、片方向リンク情報が示す受信のみ可能な無線リンクの割合と、その割合に対応する隣接端末数に基づいて高電力選択基準および低電力選択基準を設定して送信電力を決定すれば良い。
適用例4のように構成することで、より被干渉・与干渉が大きい端末が送信電力を下げるので、他のグループへの干渉量削減を効果的に行うことができる。また、干渉を与えていない端末が送信電力を無意味に下げてしまうというような状況を回避し得る。
(適用例5)
端末の伝送レートを考慮して、送信電力制御を行うことで、より効率的な通信を行わせることができる可能性がある。例えば、ある端末にトラフィックが集中し、当該端末の通信性能(スループット、遅延)が悪化しているような場合、その端末の近隣の端末が送信電力を高く設定することで当該端末を経由しない迂回経路を作ることができ、当該端末の輻輳が緩和され得る。
適用例5の無線通信端末は、送信電力を決定する際に、近隣の端末の伝送レート情報を考慮して送信電力を決定する。伝送レート情報には、端末がユニキャスト送信する場合またはブロードキャスト送信する場合の伝送レートの情報を含む。また、端末に流入するトラフィックが多い場合には、流入する複数のトラフィックが当該端末の送信伝送レートを分割することとなる。そのことを考慮して、伝送レート情報にはエンドエンド間のトラフィックごとの伝送レートの情報も含むものとする。
図19および図20を参照して適用例5を説明する。
図19は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例5の構成を例示するブロック図である。
適用例5の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110に伝送レート調査部1107を含み、ネットワーク環境情報として近隣の端末の伝送レートやトラフィックごとの伝送レートの少なくとも一つの情報を用いる。つまり、適用例5の無線通信端末10は、図4に示した通信状況情報調査部1102として、伝送レート調査部1107を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
伝送レート調査部1107は自端末の近隣端末の伝送レートを調査する。伝送レート調査部1107は、近隣の端末がユニキャスト送信やブロードキャスト送信する伝送レートやトラフィックごとの伝送レートの少なくとも一つの情報を得る。
図20は、適用例5における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図20に示すように、適用例5の送信電力決定方法は、伝送レート調査処理(S701)、送信電力候補決定処理(S702)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S703)および送信電力決定処理(S704)で構成される。
伝送レート調査処理(S701)では、ネットワーク環境情報として、伝送レート情報を取得する。
送信電力候補決定処理(S702)では、伝送レート調査処理で取得した伝送レート情報に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S703)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S704)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図20に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(伝送レート情報、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図20に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
ステップS701の伝送レート調査処理について説明する。
伝送レート調査処理は、伝送レート情報調査用信号を用いて行われる。
各端末は、自端末の伝送レートの計測を行い、その後、自端末の伝送レート情報を含む伝送レート情報調査用信号をフラッディング(一斉配信)することで近隣端末との伝送レート情報を共有する。
このとき伝送レート情報調査用信号に、初期値をNHとして転送されるたびに1ずつ減らされるTTL(Time To Live)値を持たせる。このようにして近隣(NHホップ以内)端末からフラッディングされた伝送レート情報調査用信号を収集することで、近隣端末の伝送レート情報を得ることができる。
図20のステップS702の送信電力候補決定処理は、伝送レート調査処理で取得した伝送レート情報を基に候補値を選定することができる。
例えば、近隣の端末の伝送レートの最大値または平均値が大きいほど、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に近隣の端末の伝送レートの最小値または平均値が小さいほど、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
このようにすることで、伝送レートが低い端末の周囲の端末が高い送信電力を設定するようになり、ボトルネックとなりうる端末を迂回する経路となる無線通信リンクを形成できるようになる。
ステップS703の候補値電力を用いた隣接端末調査処理およびステップS704の送信電力決定処理は、それぞれ図6および図7で説明した処理と同様にして行うことができる。適用例5では、伝送レート情報と、その伝送レート情報に対応する隣接端末数に基づいて高電力選択基準および低電力選択基準を設定して送信電力を決定すれば良い。
適用例5のように構成することで、伝送レートが低いボトルネックとなりうる端末を迂回できるようになり、ネットワークの通信性能を向上させることができる。また、伝送レートが高い端末の周囲の端末が低い送信電力を設定するようになり、隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減することができる。
(適用例6)
各端末がエンドエンド間の通信で必要とする帯域を考慮することで、より効率的な通信を実現できるようになる。例えば、自端末が通信で必要とする帯域が低い場合には、当該端末や周辺の端末が送信電力を低く設定し、当該端末の通信性能が悪化しても、実質的に問題とならないことがありうる。すなわち、自グループの通信に悪影響を及ぼすことなく、隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減することができる。
適用例6の無線通信端末は、送信電力を決定する際に、自端末が必要とする帯域や近隣の端末が必要とする帯域を考慮して送信電力を決定する。
自端末が必要とする帯域には、自端末がエンド端末として通信するために必要な帯域と、マルチホップ通信が行われている場合に、他の端末からの信号の中継に必要とされる帯域がある。自端末がエンド端末として通信するために必要な帯域を目標帯域と称し、この目標帯域に他の端末からの信号の中継に必要とされる帯域を加えた帯域を潜在的な目標帯域と称する。
図21乃至図23を参照して適用例6を説明する。
図21は、第2の実施形態の無線通信端末の適用例6の構成を例示するブロック図である。
適用例6の無線通信端末10はネットワーク環境調査部110に目標帯域調査部1108を含み、ネットワーク環境情報として目標帯域や潜在的な目標帯域の情報を用いる。
つまり、適用例6の無線通信端末10は、図4に示した通信状況情報調査部1102として、目標帯域調査部1108を備える構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
目標帯域調査部1108は各端末が必要とする目標帯域や潜在的な目標帯域を調査する。
また、目標帯域調査部1108は、自端末が中継する信号の宛先または送信元の端末との間の経路上の端末の潜在的な目標帯域またはその潜在的な目標帯域が満たされているかを調べてもよい。
図22は、適用例6における送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。
図22に示すように、適用例6の送信電力決定方法は、目標帯域調査処理(S801)、送信電力候補決定処理(S802)、候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S803)および送信電力決定処理(S804)で構成される。
目標帯域調査処理(S801)では、ネットワーク環境情報として、後述するように、潜在的な目標帯域情報等を取得する。
送信電力候補決定処理(S802)では、目標帯域調査処理で取得した潜在的な目標帯域情報等に基づいて送信電力の候補値を決める。
候補値電力を用いた隣接端末調査処理(S803)では、送信電力候補決定処理で決定した送信電力候補値を用いて隣接端末情報を収集する。
送信電力決定処理(S804)では、候補値電力を用いた隣接端末調査処理で収集した隣接端末情報に基づいて送信電力の候補値の中から使用すべき送信電力を決定する。
なお、図22に示した各処理は独立して行うように構成しても良い。すなわち各処理で受け渡しされる情報(潜在的な目標帯域情報等、送信電力候補値、隣接端末情報)を任意の記憶媒体に格納し、各処理で適宜その情報を参照することで、図22に示したフローに限られることなく、独立に処理できるようになる。
ステップS801の目標帯域調査処理について説明する。
各端末は、自端末がエンド端末としてマルチホップ通信を行っている場合に、自端末が必要とする帯域(目標帯域)を経路上の端末に通知する。その後、経路上の端末は、各端末から通知された目標帯域の和に自端末の目標帯域を加算した値を潜在的な目標帯域として認識する。
図23は、目標帯域の通知を説明するネットワーク構成図である。
図23の上段に示す図(1)は、目標帯域の通知の具体例を示している。この例では、端末Dから端末Aに通信を行っており、端末Dから経路上の端末C、端末B、端末Aに目標帯域を通知している。
各端末は、端末Dから通知された目標帯域に自端末の目標帯域を加算した値を潜在的な目標帯域として認識する。従って、端末D以外の端末からも目標帯域の通知があった場合は、その目標帯域も合算して潜在的な目標帯域と認識する。
目標帯域調査処理では、認識した潜在的な目標帯域と自端末の実際の送信帯域を比較し、潜在的な目標帯域が満たされているかどうかを判定した潜在的目標帯域充足情報を得るように構成してもよい。
また、目標帯域調査処理では、自端末が中継する信号の宛先または送信元の端末との間の経路上の端末の潜在的な目標帯域またはその潜在的な目標帯域が満たされているかを調べてもよい。この場合、経路上の各端末に潜在的目標帯域情報または潜在的目標帯域充足情報を通知させる。
図23の下段に示す図(2)は、潜在的目標帯域情報または潜在的目標帯域充足情報の通知の具体例を示している。この例では、端末Dから端末Aに通信が行われている状況において、端末Cが端末D、端末B、端末Aに潜在的目標帯域情報または潜在的目標帯域充足情報を通知している。他の端末A、端末B、端末Dも同様に自端末における潜在的目標帯域情報または潜在的目標帯域充足情報を通知する。
図22のステップS802の送信電力候補決定処理は、目標帯域調査処理で取得した潜在的な目標帯域情報等に基づいて送信電力の候補値を選定することができる。
まず、自端末の潜在的な目標帯域を基に、送信電力の候補値を選定することができる。例えば、自端末の潜在的な目標帯域が大きいほど、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に自端末の潜在的な目標帯域が小さいほど、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。
また、潜在的な目標帯域と自端末の実際の送信帯域を比較により判定した潜在的目標帯域充足情報を基に、送信電力の候補値を選定しても良い。例えば、自端末の潜在的な目標帯域が満たされていないならば、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に自端末の潜在的な目標帯域が満たされているならば、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。
さらに、自端末が中継する信号の宛先または送信元の端末との間の経路上の端末の潜在的な目標帯域または潜在的目標帯域充足情報を基に、送信電力の候補値を選定しても良い。例えば、自端末が中継する信号の宛先または送信元の端末との間の経路上の端末の潜在的な目標帯域が満たされていないならば、高い送信電力の候補値を選ぶことができる。同様に、潜在的な目標帯域が満たされているならば、低い送信電力の候補値を選ぶことができる。また、近隣の端末の潜在的な目標帯域情報から、周囲に潜在的に大きな帯域を必要とする端末が存在することを識別した場合に、高い電力を設定することで当該端末を迂回するリンクを形成しても良い。
上記において、高い送信電力を候補値として選ぶことは低い送信電力を候補値として選ばないことを含む。また、低い送信電力を候補値として選ぶことは高い送信電力を候補値として選ばないことを含む。
なお、送信電力候補決定処理は、自端末の目標帯域のみに基づいて送信電力の候補値を選定してもかまわない。自端末の目標帯域が小さい場合には、低い送信電力を候補値として選べば良い。この場合には潜在的な目標帯域を調べる負荷が軽減される。
ステップS803の候補値電力を用いた隣接端末調査処理およびステップS804の送信電力決定処理は、それぞれ図6および図7で説明した処理と同様にして行うことができる。適用例6では、潜在的目標帯域に関わる情報と、その潜在的目標帯域に関わる情報に対応する隣接端末数に基づいて高電力選択基準および低電力選択基準を設定して送信電力を決定すれば良い。
適用例6のように構成することで、潜在的に多くの帯域を必要とする端末の周囲の端末が高い送信電力を設定するようになる。そのため、潜在的に多くの帯域を必要とする端末において高い伝送レートを実現することができる。すなわち、当該端末における潜在的な目標帯域が満たされ易くなる。逆に、潜在的な目標帯域が低い端末やその周囲の端末が低い送信電力を使用するようになり、隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を図24および図25を参照して説明する。
他のグループへの干渉を低減するために、送信電力を下げた場合に、自グループ内の他の端末との間の通信リンクが断絶すると、それが原因で自グループ内のネットワークが分断される可能性がある。一方、他の端末との間の通信リンクを断絶させない範囲でのみ送信電力を下げると、送信電力を下げることができる幅が少なくなり、他グループへの干渉低減の効果が小さくなる。すなわち、送信電力を下げた場合に、他の端末との間の通信リンクが断絶してもグループ内のネットワークが分断されないことを判断できるような構成も求められる。
第3の実施形態の無線通信端末は、送信電力を決定する際に、経路制御情報を用いて端末間の通信リンクの断絶によりネットワークが分断されないことを判断する構成を備える。
図24は、本発明の第3の実施形態の無線通信端末の構成を例示するブロック図である。
第3の実施形態の無線通信端末20は、第2の実施形態のネットワーク環境調査部110に替えてネットワーク環境調査部210を備える構成になっている。ネットワーク環境調査部210は、図4を参照して説明したトポロジ情報調査部1101と通信状況情報調査部1102に加えて、経路制御部2101を含む構成になっている。その他の構成は図4に示した送信電力制御部120、隣接端末情報取得部130、および無線通信部140と同じである。
経路制御方式には、各端末にフラッディングを効率的に行うためのMPR(Multipoint Relay)という特別な端末を隣接端末から選ばせる方式がある(例えば、OLSRプロトコル)。
フラッディングを行うに際して、各端末はMPRが信号を中継することで自端末から2ホップ先の全ての端末に情報を伝達することが可能となるようにMPRを選択する。なお、MPRに対し、自端末をMPRとして選択している端末をMPRselectorと呼ぶ。このMPRやMPRselectorの情報を用いることで、通信リンクの断絶によりネットワークが分断されないことを判断することが可能となる。
経路制御部2101はマルチホップ通信を実現するための経路制御を行い、経路制御情報としてMPRおよびMPRselectorの情報を得る。
第2の実施形態での説明と同様に、送信電力制御部120の送信電力候補決定部1201は、ネットワーク環境調査部210で取得したネットワーク環境情報に基づいて送信電力の候補値を選択する。また、送信電力制御部120の送信電力決定部1202は、隣接端末情報取得部130が取得した隣接端末情報に基づいて送信電力を決定する。本実施形態において送信電力決定部1202は、隣接端末情報に基づいて送信電力を決定する際に、MPRやMPRselectorの情報を基にネットワークが分断されないことを確かめたうえで送信電力を決定する。
図25は、本発明の第3の実施形態の送信電力決定方法の動作を例示するフロー図である。第3の実施形態の送信電力決定方法は、第3の実施形態の無線通信端末20が図25のように動作することで実現される。
ステップS901の経路制御情報取得処理は、MPRやMPRselectorを経路制御情報として得る。
ステップS902乃至ステップS904の処理は、図5を参照して説明したステップS201乃至ステップS203の処理とそれぞれ同じである。
ステップS905の経路制御情報を考慮した送信電力決定処理は、経路制御情報として取得したMPRやMPRselectorを用いて低電力選択基準を定めて送信電力の決定を行う。
具体的には、低電力選択基準の一部にMPRやMPRselectorの情報を用いて、「当該送信電力における隣接端末に自端末の現在のMPR、MPRselectorが全て含まれること」という低電力選択基準とすればよい。
つまり、MPRとの通信リンクを維持することは、自端末から2ホップ先の端末との通信を維持することができることを意味する。一方、MPRselectorとの通信リンクを維持することは、自端末の隣接端末で、自端末を経由しないと他の端末と通信できなくなりうる端末との通信を維持することができることを意味する。言い換えれば、送信電力を低くしたときにMPRやMPRselectorと隣接できる状態が保たれるかどうかを判断する。
以上のようにすることで、経路制御情報を用いて、ネットワークが分断されないことの判断ができるようになる。また、経路制御情報を用いることで、ネットワークが分断されないことを追加の通信負荷を必要とせず判断できるようになる。
なお、ネットワーク環境情報として適用例1のようにホップ数情報を用いたような場合には、例えば、次のような低電力選択基準を設けることができる。「当該電力における隣接端末に自端末の現在のMPRでありかつ自端末よりホップ数が小さい端末が含まれ、かつ、自端末の現在のMPRselectorでありかつ自端末よりホップ数が大きい端末が含まれること」。
本実施形態のように構成することで、追加の通信負荷を必要とせず隣接端末との無線リンクが断絶することがネットワークの分断を招かないと判断したうえで、送信電力を低下させることが可能となる。
以上のように、上述した実施形態および適用例では、端末が属する通信グループの通信性能向上のために送信電力を高くすべきか、他の通信グループへの干渉低減のために送信電力を低くすべきかを適切に判断してネットワーク全体として最適な条件で送信電力を決定することができる。
なお、上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1) アドホックネットワークを構成する複数の無線通信端末で構成する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状況情報の少なくともいずれかをネットワーク環境情報として取得するネットワーク環境調査手段と、
前記ネットワーク環境情報に基づいて、少なくとも一つの、所定値より高い値の第1の送信電力候補または所定値より低い値の第2の送信電力候補を決定する送信電力候補決定手段と、
前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補に対応する送信電力を使用した場合の、少なくとも隣接端末数を含む隣接端末情報を取得する隣接端末情報取得手段と、
前記隣接端末情報に基づいて、前記第1の送信電力候補を決定した場合は前記通信グループの通信性能を向上させる基準である高電力決定基準を満たす最大の前記第1の送信電力候補を送信電力として決定し、前記第2の送信電力候補を決定した場合は前記通信グループの通信性能を劣化させることなく他の前記通信グループへの干渉を低減できる基準である低電力決定基準を満たす最小の前記第2の送信電力候補を送信電力として決定する送信電力決定手段
を備えることを特徴とする無線通信端末。
(付記2) 前記送信電力候補決定手段は、
前記ネットワーク環境情報に基づいて、通信グループの通信性能を向上させるために自端末が高い送信電力を使うことを優先する端末なのか、それとも隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減するために低い送信電力を使うことを優先する端末なのかを判定して、前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の無線通信端末。
(付記3) 前記隣接端末情報取得手段は、
前記送信電力候補決定手段が決定して設定した、前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補の送信電力候補値で隣接端末調査用ビーコンを全ての隣接端末に対して送信し、
当該隣接端末調査用ビーコンを受け取った端末がブロードキャスト送信する隣接端末リストを受信して、当該隣接端末リストに自端末が含まれている場合に、当該隣接端末リストの送信元の端末を、設定した前記送信電力候補値における隣接端末と認識して隣接端末情報を収集し、
前記隣接端末リストは、当該隣接端末リストを送信した端末が過去に受信した前記隣接端末調査用ビーコンに含まれる端末の識別子と送信電力または受信した際の受信時刻を対応付けた情報を少なくとも含む
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の無線通信端末。
(付記4) 前記送信電力決定手段は、
前記隣接端末情報取得手段が収集した、前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記高電力決定基準を満たすか否かを判定し、前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報に対応する前記送信電力候補値の中で最大の値に送信電力を決定し、
前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報が存在しない場合、前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記低電力決定基準を満たすか否かを判定し、前記低電力決定基準を満たす前記隣接端末情報に対応する前記送信電力候補値の中で最小の値に送信電力を決定し、
前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報が存在しない場合、現在と同じ値に送信電力を維持する
ことを特徴とする付記3に記載の無線通信端末。
(付記5) 前記送信電力決定手段は、
前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記高電力決定基準を満たすか否かの判定を、現在の送信電力より高い送信電力の候補値のみに対して行い、
前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記低電力決定基準を満たすか否かの判定を、現在の送信電力より低い送信電力の候補値のみに対して行う
ことを特徴とする付記4に記載の無線通信端末。
(付記6) 前記ネットワーク環境調査手段は、予め決められた特定端末との間のホップ数を取得するホップ数調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、自端末の前記ホップ数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、前記隣接端末情報に含まれる隣接端末数と各隣接端末の前記ホップ数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記7) 前記ネットワーク環境調査手段は、前記特定端末と、自端末および他の端末それぞれとの間のホップ数を調査して、他の端末と前記特定端末とを最小ホップでつなぐ経路に自端末が含まれる場合であって、当該他の端末のホップ数の最大値である潜在的最大ホップ数を取得する潜在的最大ホップ数調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、前記潜在最大ホップ数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、前記隣接端末情報に含まれる隣接端末数と前記潜在最大ホップ数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記6に記載の無線通信端末。
(付記8) 前記ネットワーク環境調査手段は、自端末から予め決められたホップ数以内に存在する端末数である周辺端末数を得る周辺端末調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、前記周辺端末数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、自端末からのホップ数と、当該ホップ数に対応する前記周辺端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記9) 前記ネットワーク環境調査手段は、双方向で通信可能な無線通信リンクの数と受信のみ可能な無線通信リンクの数の比である片方向リンク情報を取得する片方向リンク調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、前記片方向リンク情報が示す受信のみ可能な無線リンクの割合の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、前記片方向リンク情報が示す受信のみ可能な無線リンクの割合と、当該割合に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記10) 前記片方向リンク調査部は、
前記通信グループ内で予め定められた共通の送信電力を使って、自端末の識別子を含む片方向リンク調査用信号を送信し、
前記片方向リンク調査用信号を受け取った端末が送信する、前記片方向リンク調査用信号の送信元端末の識別子リストを受信し、当該識別子リストに自端末の識別子が含まれていない場合に、当該識別子リストの送信元端末との間のリンクを受信のみ可能な無線通信リンクと認識し、当該識別子リストに自端末の識別子が含まれている場合に、当該識別子リストの送信元端末との間のリンクを双方向で通信可能な無線通信リンクと認識し、
前記識別子リストは、当該識別子リストを送信した端末が過去の所定時間内に受信した前記片方向リンク調査用信号の送信元端末の識別子を含む
ことを特徴とする付記9に記載の無線通信端末。
(付記11) 前記ネットワーク環境調査手段は、近隣の所定のホップ数以内の端末が相互に通知する伝送レート情報を取得する伝送レート調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、前記伝送レート情報に基づいて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、前記伝送レート情報と、当該伝送レート情報に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記12) 前記ネットワーク環境調査手段は、相互に通知する通信経路上の各端末が必要とする帯域に、自端末が必要とする帯域を加算した潜在的目標帯域に関わる潜在的目標帯域情報を取得する目標帯域調査部を含み、
前記送信電力候補決定手段は、前記潜在的目標帯域情報に基づいて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記送信電力決定手段は、前記潜在的目標帯域情報と、当該潜在的目標帯域情報に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記13) 前記潜在的目標帯域情報は、前記潜在的目標帯域と自端末の実際の送信帯域を比較し、前記潜在的目標帯域が満たされているかどうかを判定した潜在的目標帯域充足情報を含むことを特徴とする付記12に記載の無線通信端末。
(付記14) 前記ネットワーク環境調査手段は、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコルが規定するMPR(Multipoint Relay)およびMPRselectorの情報を取得する経路制御部をさらに含み、
前記送信電力決定手段は、前記MPRおよびMPRselectorの情報を用いて、通信リンクの断絶によりネットワークが分断されないことを判断する条件を加えた前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記1乃至付記13のいずれかの付記に記載の無線通信端末。
(付記15) アドホックネットワークを構成する複数の無線通信端末で構成する通信グループのネットワークトポロジ情報および通信状況情報の少なくともいずれかをネットワーク環境情報として取得し、
前記ネットワーク環境情報に基づいて、少なくとも一つの、所定値より高い値の第1の送信電力候補または所定値より低い値の第2の送信電力候補を決定し、
前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補に対応する送信電力を使用した場合の、少なくとも隣接端末数を含む隣接端末情報を取得し、
前記隣接端末情報に基づいて、前記第1の送信電力候補を決定した場合は前記通信グループの通信性能を向上させる基準である高電力決定基準を満たす最大の前記第1の送信電力候補を送信電力として決定し、前記第2の送信電力候補を決定した場合は前記通信グループの通信性能を劣化させることなく他の前記通信グループへの干渉を低減できる基準である低電力決定基準を満たす最小の前記第2の送信電力候補を送信電力として決定する
ことを特徴とする送信電力決定方法。
(付記16) 前記ネットワーク環境情報に基づいて、通信グループの通信性能を向上させるために自端末が高い送信電力を使うことを優先する端末なのか、それとも隣接して存在する他の通信グループの通信に及ぼす干渉を低減するために低い送信電力を使うことを優先する端末なのかを判定して、前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決定する
ことを特徴とする付記15に記載の送信電力決定方法。
(付記17) 前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補の送信電力候補値に設定して隣接端末調査用ビーコンを全ての隣接端末に対して送信し、
当該隣接端末調査用ビーコンを受け取った端末がブロードキャスト送信する隣接端末リストを受信して、当該隣接端末リストに自端末が含まれている場合に、当該隣接端末リストの送信元の端末を、設定した前記送信電力候補値における隣接端末と認識して隣接端末情報を収集し、
前記隣接端末リストは、当該隣接端末リストを送信した端末が過去に受信した前記隣接端末調査用ビーコンに含まれる端末の識別子と送信電力または受信した際の受信時刻を対応付けた情報を少なくとも含む
ことを特徴とする付記15または付記16に記載の送信電力決定方法。
(付記18) 取得した、前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記高電力決定基準を満たすか否かを判定し、前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報に対応する前記送信電力候補値の中で最大の値に送信電力を決定し、
前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報が存在しない場合、前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記低電力決定基準を満たすか否かを判定し、前記低電力決定基準を満たす前記隣接端末情報に対応する前記送信電力候補値の中で最小の値に送信電力を決定し、
前記高電力決定基準を満たす前記隣接端末情報が存在しない場合、現在と同じ値に送信電力を維持する
ことを特徴とする付記17に記載の送信電力決定方法。
(付記19) 前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記高電力決定基準を満たすか否かの判定を、現在の送信電力より高い送信電力の候補値のみに対して行い、
前記送信電力候補値に対応する前記隣接端末情報が前記低電力決定基準を満たすか否かの判定を、現在の送信電力より低い送信電力の候補値のみに対して行う
ことを特徴とする付記18に記載の送信電力決定方法。
(付記20) 前記ネットワーク環境情報として、予め決められた特定端末との間のホップ数を取得し、
自端末の前記ホップ数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記隣接端末情報に含まれる隣接端末数と各隣接端末の前記ホップ数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記19のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。
(付記21) 前記特定端末と、自端末および他の端末それぞれとの間のホップ数を調査して、他の端末と前記特定端末とを最小ホップでつなぐ経路に自端末が含まれる場合であって、当該他の端末のホップ数の最大値である潜在的最大ホップ数を前記ネットワーク環境情報として取得し、
前記潜在最大ホップ数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記隣接端末情報に含まれる隣接端末数と前記潜在最大ホップ数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記20に記載の送信電力決定方法。
(付記22) 前記ネットワーク環境情報として、自端末から予め決められたホップ数以内に存在する端末数である周辺端末数を取得し、
前記周辺端末数の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
自端末からのホップ数と、当該ホップ数に対応する前記周辺端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記19のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。
(付記23) 前記ネットワーク環境情報として、双方向で通信可能な無線通信リンクの数と受信のみ可能な無線通信リンクの数の比である片方向リンク情報を取得し、
前記片方向リンク情報が示す受信のみ可能な無線リンクの割合の大小に応じて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記片方向リンク情報が示す受信のみ可能な無線リンクの割合と、当該割合に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記19のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。
(付記24) 前記通信グループ内で予め定められた共通の送信電力を使って、自端末の識別子を含む片方向リンク調査用信号を送信し、
前記片方向リンク調査用信号を受け取った端末が送信する、前記片方向リンク調査用信号の送信元端末の識別子リストを受信し、当該識別子リストに自端末の識別子が含まれていない場合に、当該識別子リストの送信元端末との間のリンクを受信のみ可能な無線通信リンクと認識し、当該識別子リストに自端末の識別子が含まれている場合に、当該識別子リストの送信元端末との間のリンクを双方向で通信可能な無線通信リンクと認識し、
前記識別子リストは、当該識別子リストを送信した端末が過去の所定時間内に受信した前記片方向リンク調査用信号の送信元端末の識別子を含む
ことを特徴とする付記23に記載の送信電力決定方法。
(付記25) 前記ネットワーク環境情報として、近隣の所定のホップ数以内の端末が相互に通知する伝送レート情報を取得し、
前記伝送レート情報に基づいて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記伝送レート情報と、当該伝送レート情報に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記19のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。
(付記26) 前記ネットワーク環境情報として、相互に通知する通信経路上の各端末が必要とする帯域に、自端末が必要とする帯域を加算した潜在的目標帯域に関わる潜在的目標帯域情報を取得し、
前記潜在的目標帯域情報に基づいて前記第1の送信電力候補または前記第2の送信電力候補を決め、
前記潜在的目標帯域情報と、当該潜在的目標帯域情報に対応する隣接端末数に基づいて前記高電力選択基準および前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記19のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。
(付記27) 前記潜在的目標帯域情報は、前記潜在的目標帯域と自端末の実際の送信帯域を比較し、前記潜在的目標帯域が満たされているかどうかを判定した潜在的目標帯域充足情報を含むことを特徴とする付記26に記載の送信電力決定方法。
(付記28) 前記ネットワーク環境情報として、OLSR(Optimized Link State Routing)プロトコルが規定するMPR(Multipoint Relay)およびMPRselectorの情報をさらに取得し、
前記MPRおよびMPRselectorの情報を用いて、通信リンクの断絶によりネットワークが分断されないことを判断する条件を加えた前記低電力選択基準を設定して送信電力を決定する
ことを特徴とする付記15乃至付記27のいずれかの付記に記載の送信電力決定方法。