以下、一実施形態について、図1〜図15(B)を用いて説明する。
図1には、一実施形態に係る液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
液晶露光装置10は、照明系12、回路パターン等のパターンが形成されたマスクMを保持するマスクステージ14、投影光学系16、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
照明系12は、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。照明系12は、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
マスクステージ14は、光透過型のマスクMを保持している。マスクステージ14は、例えばリニアモータ(不図示)を介してマスクMを照明系12(照明光IL)に対してX軸方向(スキャン方向)に所定の長ストロークで駆動するとともに、Y軸方向、及びθz方向に微少駆動する。マスクMの水平面内の位置情報は、例えばレーザ干渉計を含むマスクステージ位置計測系(不図示)により求められる。
投影光学系16は、マスクステージ14の下方に配置されている。投影光学系16は、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ型の投影光学系であり、例えば正立正像を形成する両側テレセントリックな複数の光学系を備えている。
液晶露光装置10では、照明系12からの照明光ILによって所定の照明領域内に位置するマスクMが照明されると、マスクMを通過した照明光により、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMのパターンの投影像(部分的なパターンの像)が、基板P上の露光領域に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターン(マスクMの走査範囲に対応するパターン全体)が転写される。ここで、マスクM上の照明領域と基板P上の露光領域(照明光の照射領域)とは、投影光学系16によって互いに光学的に共役な関係になっている。
基板ステージ装置20は、Yステップガイド22、キャリッジ24、基板テーブル26、基板ホルダ30、及び複数のリフトビーム34を備えている。
Yステップガイド22は、X軸方向に延びるYZ断面矩形の部材から成る。Yステップガイド22は、不図示のベースフレーム等を介してクリーンルームの床11上に配置されている。基板ステージ装置20は、不図示であるが、Yステップガイド22をY軸方向に所定のストロークで駆動するための駆動系(例えばリニアモータ、送りネジ装置などを含む)、Yステップガイド22のY軸方向の位置情報を求めるための計測系(例えばリニアエンコーダ、光干渉計などを含む)を備えている。
キャリッジ24は、YZ断面逆U字状の部材から成り、一対の対向面間に上記Yステップガイド22が挿入されている。キャリッジ24は、例えば機械的なリニアガイド装置を介してYステップガイド22に沿ってX軸方向に直進案内される。また、不図示であるが、基板ステージ装置20は、Yステップガイド22に沿ってキャリッジ24をX軸方向に所定のストロークで駆動するための駆動系(例えばリニアモータ、送りネジ装置などを含む)、キャリッジ24のX軸方向の位置情報を求めるための計測系(例えばリニアエンコーダ、光干渉計などを含む)を備えている。
基板テーブル26は、平面視でX軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り(図2参照)、キャリッジ24に下方から支持されている。キャリッジ24と基板テーブル26とは、XY平面に平行な方向に関して、一体的に移動可能とされている。キャリッジ24と基板テーブル26との間には、不図示であるが、キャリッジ24に対して基板テーブル26をZ軸、θx方向、及びθy方向(以下、まとめてZ・チルト方向と称する)に微小駆動するためのZ・チルト駆動装置が挿入されている。なお、基板PのZ・チルト位置制御を行う必要がない場合、キャリッジ24と基板テーブル26とは、X軸、及びY軸方向にのみ一体的に移動可能となるように互いに固定されていても良い。
図2に示されるように、基板テーブル26の幅(Y軸)方向の寸法は、基板Pの幅方向寸法と同程度に設定されている。基板テーブル26の長手(X軸)方向の寸法は、基板Pの長手方向寸法よりも幾分長く設定されている。基板テーブル26の上面には、X軸方向に延びるXリニアガイド28aが、Y軸方向に所定間隔で、複数(例えば4本)固定されている。また、基板テーブル26の上面における−X側の端部近傍には、Xミラーベース37x(図2では不図示。図1参照)を介してXバーミラー38xが固定されている。Xバーミラー38xは、Y軸に平行に延びる棒状の部材から成り、−X側の面に反射面が形成されている。また、基板テーブル26の−Y側の端部近傍には、Yミラーベース37yを介してYバーミラー38y(それぞれ図1では不図示)が固定されている。Yバーミラー38yは、X軸に平行に延びる棒状の部材から成り、−Y側の面に反射面が形成されている。
基板テーブル26のX軸方向の位置情報は、不図示のXレーザ干渉計により、上記Xバーミラー38xを用いて求められる。また、基板テーブル26のY軸方向の位置情報は、不図示のYレーザ干渉計により、上記Yバーミラー38yを用いて求められる。Xレーザ干渉計、及び/又はYレーザ干渉計は、XY平面内で複数の測長ビームを対応するバーミラーに照射するようになっており、該Xレーザ干渉計、及び/又はYレーザ干渉計により、基板テーブル26のθz方向の回転量情報が求められる。Xレーザ干渉計、及び/又はYレーザ干渉計の出力は、不図示の主制御装置に供給され、該主制御装置は、上記Xレーザ干渉計、及び/又はYレーザ干渉計の出力に基づいて、基板テーブル26のXY平面内の位置を制御する。
第1の支持部材としての基板ホルダ30は、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り、基板テーブル26の上方に配置されてる。基板ホルダ30の長手(Y軸)方向の寸法は、基板テーブル26(すなわち基板P)の幅(Y軸)方向寸法と同程度に設定されている。基板ホルダ30の幅(X軸)方向の寸法は、基板Pの長手(X軸)方向寸法の半分程度に設定されている。
基板ホルダ30の上面は、基板Pを支持するための支持面として、平面度が非常に高く仕上げられており、具体的には、平面度が数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度に設定されている。基板ホルダ30の下面には、上記複数のXリニアガイド28aに低摩擦でスライド自在に係合するXスライド部材28bが複数(1本のXリニアガイド28aに対して、X軸方向に所定間隔で、例えば3つ)固定されている。上記Xリニアガイド28aと、対応する複数のXスライド部材28bとは、例えば米国特許第6,761,482号明細書に開示されるような機械的なXリニアガイド装置28を構成しており、基板ホルダ30は、複数のXリニアガイド装置28の作用により基板テーブル26上でX軸方向に直進案内されるとともに、基板テーブル26に対するY軸方向の相対移動が制限される。
基板ホルダ30は、不図示のXアクチュエータにより、基板テーブル26に対してX軸方向に駆動される。Xアクチュエータの種類は、特に限定されず、例えば送りネジ駆動装置、ベルト駆動装置、リニアモータなどを用いることができる。基板ホルダ30のX位置情報は、例えば基板テーブル26に固定されたスケールと基板ホルダ30に固定された読み取りセンサ(ヘッド)とにより構成されるXリニアエンコーダにより求められる。
ここで、基板ホルダ30は、基板テーブル26上において、基板テーブル26の中心よりも−X側の位置である第1の位置(例えば、図2参照)と、基板テーブル26の中心よりも+X側の位置である第2の位置(例えば、図11(A)及び図11(B)参照)との2つの位置の間で駆動される。基板ホルダ30は、第1の位置に配置された状態では、基板Pの中央よりも−X側の半分の領域(以下、第1の領域と称する)を下方から支持し、第2の位置に配置された状態では、基板Pの中央よりも+X側の半分の領域(以下、第2の領域と称する)を下方から支持することができる。
基板ホルダ30の上面には、微小な孔部(不図示)が複数形成されている。また、基板ホルダ30には、不図示のバキューム装置が接続されている。基板ホルダ30は、上記微小な孔部を介して、バキューム装置から供給される真空吸引力により、基板Pの第1及び第2の領域の一方を選択的に吸着保持することができるようになっている。これにより、基板ホルダ30は、基板Pの撓みを強制的に除去(平面矯正)して平面度良く保持する。
また、基板ホルダ30の上面には、X軸方向に延びるX溝32がY軸方向に所定間隔で複数(例えば4本)形成されている。X溝32は、基板ホルダ30の+X側、及び−X側の端部(側面)に開口して形成されている。X溝32の溝幅は、基板ホルダ30による基板Pの平面矯正機能を損なうことのない程度に設定されており、本実施形態では、例えば、約20ミリメートル程度に設定されている。また、X溝32の深さは、該X溝32により基板ホルダ30の剛性が低下しないような(剛性の低下に起因して基板ホルダ30の表面の平面度が低下しないような)深さに設定されており、例えば約20ミリメートル程度に設定されている。
第2の支持部材としてのリフトビーム34は、X軸方向に延びるYZ断面矩形の中空の棒状部材から成る。本実施形態では、リフトビーム34は、例えば4本のX溝32に対応して、Y軸方向に所定間隔で、例えば4本設けられている。リフトビーム34の長手(X軸)方向の寸法は、基板Pの長手(X軸)方向寸法よりも幾分長く設定されている。基板ホルダ30が第1の位置に配置された状態では、X溝32内には、リフトビーム34の中央よりも−X側の領域(ただし−X側の端部近傍を除く)が収容され(図2参照)、基板ホルダ30が第2の位置に配置された状態では、X溝32内には、リフトビーム34の中央よりも+X側の領域(ただし+X側の端部近傍を除く)が収容される(図11(A)及び図11(B)参照)。
複数のリフトビーム34それぞれの上面は、基板Pを支持するための支持面として、微小な孔部(不図示)が複数形成されている。また、複数のリフトビーム34それぞれには、不図示のバキューム装置が接続されている。複数のリフトビーム34それぞれは、上記微小な孔部を介して、バキューム装置から供給される真空吸引力により、基板Pを下方から吸着保持することができるようになっている。
リフトビーム34は、一対のZアクチュエータ36よりZ軸方向に所定のストロークで駆動される。一対のZアクチュエータ36は、基板テーブル26に固定されており、一方がリフトビーム34の+X側の端部近傍を、他方がリフトビーム34の−X側の端部近傍を、それぞれ下方から支持している(リフトビーム34が一対のZアクチュエータ36間に架設されている)。Zアクチュエータ36の種類は、特に限定されないが、少なくとも互いに異なる4箇所でリフトビーム34のZ位置を位置決めできることが好ましく、例えばカム装置、リンク装置、エアアクチュエータなどを用いることができる。
不図示の主制御装置は、一対のZアクチュエータ36を同期制御することにより、リフトビーム34を、リフトビーム34の上面のZ位置と基板ホルダ30の上面のZ位置とがほぼ一致した位置(以下、面一位置と称する)、リフトビーム34の上面が基板ホルダ30の上面よりも幾分(微少量)−Z側となる(低くなる)位置(リフトビーム34の全体がX溝32内に収容された状態。以下、収容位置と称する。図3(B)参照)、リフトビーム34の上半部が基板ホルダ30の上面よりも+Z側に突き出した位置(以下、突出位置と称する。図10(B)及び図11(B)参照)、及びリフトビーム34の下面と基板ホルダ30の上面との間に所定の(後述する基板ローダ90のフォークハンド92が挿入可能となる程度)のクリアランスが形成された位置(以下、交換位置と称する。図4(B)参照)の間で適宜駆動する。
上記収容位置において、リフトビーム34と基板ホルダ30のX溝32を規定する壁面との間に所定のクリアランスが形成される(リフトビーム34と基板ホルダ30とが接触しない)ように、リフトビーム34の太さ、X溝32の幅、及び深さがそれぞれ設定されている。なお、本実施形態では、複数のリフトビーム34それぞれが一対のZアクチュエータ36により個別にZ軸方向に駆動される構成となっているが、複数のリフトビーム34は、同期してZ軸方向に駆動されることから、例えば複数のリフトビーム34それぞれを所定のベース部材上に搭載し、該ベース部材をZアクチュエータにより上下動させても良い。
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージ14上へのマスクMのロードが行われるとともに、基板ローダ90によって、基板ステージ装置20(基板ホルダ30)上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。
次に、基板ステージ装置20に対する基板Pの搬入動作、及び露光動作時における基板ステージ装置20の動作の一例を、図3(A)〜図15(B)を用いて説明する。なお、以下の説明では、1枚の基板P上に4つのショット領域が設定された場合(いわゆる4面取りの場合)を説明するが、1枚の基板P上に設定されるショット領域の数、及び配置は、適宜変更可能である。以下説明する基板搬入動作、及び基板露光動作は、不図示の主制御装置による管理の下に行われる。
基板ステージ装置20への基板の搬入(及び搬出)は、基板ローダ90により行われる。基板ローダ90の構成は、特に限定されないが、図2に示されるように、例えば米国特許第7,905,699号明細書の開示されるようなフォーク状の部材(以下、フォークハンド92と称する)を有している。基板ローダ90は、基板ステージ装置20などを収容するチャンバ(不図示)の外部に配置され、チャンバに形成された開口部を介して基板ステージ装置20に対する基板Pの受け渡し動作を行う。したがって、本実施形態において、基板ローダ90は、液晶露光装置10を構成する装置ではないが、これに限られず、基板ローダ90を含めて液晶露光装置10が構成されても良い。なお、基板ステージ装置20に対する基板Pの搬入、及び搬出を行うための装置の構成は、特に限定されない。
図3(A)及び図3(B)には、基板ローダ90が露光予定の基板Pを液晶露光装置10の外部から基板ステージ装置20の上方に搬送している途中の状態が示されている。基板ステージ装置20において、基板テーブル26は、所定の基板交換位置に位置決めされている。基板交換位置において、フォークハンド92のY位置と複数のリフトビーム34のY位置とが重ならないように、フォークハンド92が位置決めされている。また、基板ステージ装置20において、基板ホルダ30は、基板テーブル26の中央よりも−X側の第1の位置に位置しており、複数のリフトビーム34は、基板ホルダ30のX溝32内に収容された収容位置に配置されている。なお、図3(B)では、照明光ILの光路を説明するために照明光ILが便宜的に図示されているが、実際には基板搬入時に照明光ILは照射されない(特に説明する場合を除き、他の図面も同様)。
基板ローダ90のフォークハンド92は、図4(A)及び図4(B)に示される、所定の基板受け渡し位置に位置決めされる。基板受け渡し位置とは、基板Pの第1の領域(第1及び第2ショット領域S1、S2(それぞれ図4(A)及び図4(B)では不図示。図9(A)参照)が設定された領域)に対して基板ホルダ30が上下方向に重なる(X位置及びY位置がほぼ一致する)位置である。そして、基板Pが基板受け渡し位置に位置決めされると、基板ステージ装置20では、図4(B)に示されるように、複数のリフトビーム34が対応する一対のZアクチュエータ36により、収容位置から交換位置に向けて+Z方向に駆動される。複数のリフトビーム34は、収容位置から交換位置に移動する際、基板Pの下面を押圧する。基板ローダ90では、フォークハンド92による基板Pの吸着保持が解除されており、これにより、基板Pとフォークハンド92とが離間する。
基板Pとフォークハンド92とが離間すると、図5(A)及び図5(B)に示されるように、フォークハンド92が+X方向に駆動され、液晶露光装置10のチャンバ(不図示)内から退出する。基板Pは、複数のリフトビーム34により下方から支持されている。なお、図5(A)では、投影光学系16(図5(B)参照)のXY平面内での位置を説明するために露光領域IAが便宜的に図示されているが、実際には露光動作時を除き露光領域IAは形成されない(特に説明する場合を除き、他の図面も同様)。次いで、図6(A)及び図6(B)に示されるように、複数のリフトビーム34が対応する一対のZアクチュエータ36により−Z方向に駆動される。この際、不図示であるが、複数のリフトビーム34は、最初に面一位置で停止される。これにより、基板Pの下面と基板ホルダ30の上面とが当接し、基板Pが基板ホルダ30及び複数のリフトビーム34に下方から支持される。基板ホルダ30は、基板Pの第1の領域を吸着保持し、これにより、基板Pの第1の領域が基板ホルダ30の上面に沿って平面矯正される。
次に、複数のリフトビーム34は、基板Pの吸着保持を解除した後、図6(B)に示されるように、面一位置からさらに下降駆動され、収容位置に位置される。収容位置において、複数のリフトビーム34の上面は、基板ホルダ30の上面よりも下方(−Z側)に位置するので、複数のリフトビーム34と基板Pとが離間する。このとき、複数のリフトビーム34の一部は、真空吸引によって基板Pを弱い力で吸着していても良い(ただし、基板Pの平面度を損なうおそれがある場合には、リフトビーム34による基板Pの吸着は行わないほうが良い)。
基板ホルダ30が基板Pを吸着保持すると、不図示の主制御装置は、基板Pの正規の位置へのおおまかな位置決め(位置修正)動作であるプリアライメント動作を行なう。プリアライメント動作は、複数の接触式あるいは非接触式センサ(不図示)を用いて基板ステージ装置20(基板テーブル26)に対する基板Pの位置(姿勢)を検出し、該検出結果に基づいて、基板テーブル26を移動(θz回転を含む)させることにより行われる。また、プリアライメント動作が終了すると、不図示の主制御装置は、基板P上に形成された基準マークの位置検出動作であるファインアライメント動作を行う。ファインアライメント動作は、基板テーブル26を図6(A)及び図6(B)よりも−X側の位置に位置させて行われる。
上記プリアライメント動作、及びファインアライメント動作が完了すると、基板ステージ装置20では、図7(A)及び図7(B)に示されるように、キャリッジ24及び基板テーブル26(基板ホルダ30及び基板P)が一体的に投影光学系16に対して−X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)される。基板Pが投影光学系16に対して等速駆動される際、投影光学系16からは基板Pに対して照明光ILが照射され、これにより、基板P上の−X側且つ−Y側に設定された第1ショット領域S1にマスクパターンが転写される。この際、上記ファインアライメント動作の結果に基づいて、基板P(基板テーブル26)が、最大で6自由度方向に適宜微小駆動される。なお、基板ステージ装置20では、ファインアライメント動作が完了した後、基板Pに対して照明光ILが照射され始めるまでに、キャリッジ24及び基板テーブル26をファインアライメント動作が完了した位置に対応して適宜Y方向に駆動させるようにしてもよい。
第1ショット領域S1への露光動作が終了すると、図8(A)及び図8(B)に示されるように、第1ショット領域S1の+Y側に設定された第2ショット領域への露光動作のために、Yステップガイド22が投影光学系16に対して基板Pの幅方向寸法の半分程度のストロークで−Y方向に駆動される。これにより、キャリッジ24、基板テーブル26(基板ホルダ30及び基板P)が一体的に−Y方向に駆動(Yステップ駆動)される。この際、基板ホルダ30は、基板Pを吸着保持した状態が維持され、また、X位置も変化しない。
次いで、図9(A)及び図9(B)に示されるように、キャリッジ24及び基板テーブル26(基板ホルダ30及び基板P)が一体的に投影光学系16(照明光IL)に対して+X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)され、これにより、第2ショット領域S2にマスクパターンが転写される。
第2ショット領域S2に対する露光動作が終了すると、図10(A)及び図10(B)に示されるように、複数のリフトビーム34が対応する一対のZアクチュエータ36により+Z方向に駆動され、収容位置から突出位置に位置される。リフトビーム34が突出位置に移動する際、基板ホルダ30による基板Pの吸着保持が解除され、基板Pが複数のリフトビーム34により下方から押圧されることにより、基板Pの下面と基板ホルダ30の上面とが離間する。複数のリフトビーム34は、基板Pが複数のリフトビーム34上でX、Y、θz方向に移動しないように、基板ホルダ30による基板Pの吸着保持が解除される前に(基板ホルダ30に代わって)基板Pを吸着保持する。
基板Pの下面と基板ホルダ30の上面とが離間すると、図11(A)及び図11(B)に示されるように、基板ホルダ30が基板テーブル26に対して+X方向に駆動され(図中の白矢印参照)、第1の位置から第2の位置に位置される。基板ホルダ30は、第2の位置に位置決めされた状態で、基板Pの中央から+X側の領域である第2の領域の下方に配置される。また、上記基板ホルダ30の第2位置への移動動作と並行(基板ホルダ30の移動前、又は移動後でも良い)して、第2ショット領域S2の+X側に設定された第3ショット領域の露光動作準備のために、基板テーブル26が−X方向に駆動(Xステップ駆動(図中の黒矢印参照))される。
基板ホルダ30が第2の位置に位置決めされると、図12(A)及び図12(B)に示されるように、複数のリフトビーム34が対応する一対のZアクチュエータ36により−Z方向に駆動され、突出位置から収容位置に位置される。この際、上述した基板Pの搬入動作時(図6(B)参照)と同様に、複数のリフトビーム34が面一位置で停止した状態で、基板ホルダ30による基板Pの吸着保持が行われ、その後に複数のリフトビーム34は収容位置に駆動される。これにより、基板Pが複数のリフトビーム34から基板ホルダ30に受け渡される。基板ホルダ30は、基板Pの第2の領域を吸着保持する。以上説明した、複数のリフトビーム34の上下動動作、基板ホルダ30のX軸方向への移動動作、及び基板ホルダ30及び複数のリフトビーム34による基板Pの吸着保持及び解除動作を含み、基板Pの基板ホルダ30に吸着保持される領域を変更する動作を、基板ホルダ30による基板Pの持ち替え動作と称する。
基板Pの第2の領域が基板ホルダ30に吸着保持されると、不図示であるが、上述した基板Pの第1の領域が基板ホルダ30に吸着保持されたときと同様に、ファインアライメント動作が行われ、この後に、図13(A)及び図13(B)に示されるように、キャリッジ24及び基板テーブル26(基板ホルダ30及び基板P)が一体的に投影光学系16(照明光IL)に対して−X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)され、これにより、第3ショット領域S3にマスクパターンが転写される。すなわち、基板ホルダ30による基板Pの持ち替え動作が行われた後、ファインアライメント動作が行われるのに対し、プリアライメント動作は、行われない。
この後、図14(A)及び図14(B)に示されるように、Yステップガイド22が投影光学系16に対して基板Pの幅方向寸法の半分程度のストロークで+Y方向に駆動(Yステップ駆動)されるとともに、図15(A)及び図15(B)に示されるように、キャリッジ24及び基板テーブル26(基板ホルダ30及び基板P)が一体的に投影光学系16(照明光IL)に対して+X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)され、これにより、第1ショット領域S1の+X側に設定された第4ショット領域S4にマスクパターンが転写される。
第4ショット領域S4の露光動作が終了すると、不図示であるが、基板テーブル26が基板交換位置まで駆動され、該基板交換位置において露光済みの基板Pの搬出動作、及び別の基板(不図示)の搬入動作が行われる(図3(A)及び図3(B)の状態に戻る)。
以上説明した液晶露光装置10によれば、基板ステージ装置20は、基板Pの面積よりも狭い基板保持面を有する基板ホルダ30を用いて基板Pを平面矯正するので、基板Pと同程度の面積の基板保持面を有する基板ホルダを用いて基板を平面矯正する従来の基板ステージ装置に比べて、基板ホルダ30を小型化、軽量化することができる。これにより、基板Pの位置制御性が向上する。また、基板ホルダ30の加工も容易となり、コストダウンが可能となる。
また、基板ホルダ30による基板Pの持ち替え動作時において、複数のリフトビーム34により下方から支持された基板Pの下方で基板ホルダ30を移動させるので、基板Pの基板テーブル26に対する水平面内の相対位置(X、Y、θz方向の相対位置)が変化しない。したがって、上記基板Pの持ち替え動作を行っても、再度プリアライメント動作を行う必要がなく、効率が良い。
なお、上記実施形態に係る液晶露光装置10の構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、基板Pの搬入動作、並びに基板ホルダ30が基板Pの持ち替え動作を行う際、複数のリフトビーム34は、基板Pを基板ホルダ30に受け渡した後(図6(B)及び図12(B)参照)、基板Pを吸着保持したままでも良いことを説明した。これは、複数のリフトビーム34が基板Pの吸着動作、及び吸着解除動作を繰り返すことに起因して基板処理の時間が長くなる、あるいは基板Pの位置ずれが生ずることを避けるためであるが、収容位置に位置した複数のリフトビーム34に基板Pを吸着保持させたままであると、基板Pの平面度が損なわれる可能性がある。
これに対し、図16(A)に一部が示される第1の変形例に係る基板ステージ装置20aは、上記実施形態と比べて構成が異なるZアクチュエータ40を用いて、上記問題を回避している。具体的に説明すると、図16(A)に示されるように、Zアクチュエータ40は、基板テーブル26(図16(A)では不図示。図1など参照)に固定された駆動部42、駆動部42によりZ軸方向に駆動されるZ軸方向に延びるシャフト44、下方に開口した有底の筒状に形成され、内径側にシャフト44の先端が挿入されたスライド部46、及び、内径側にシャフト44が挿通された圧縮コイルばね48を有している。スライド部46は、リフトビーム34の下面に固定されており、リフトビーム34と一体的にシャフト44に対してZ軸方向に移動自在となっている。圧縮コイルばね48は、シャフト44の長手方向中間部に設けられたフランジ44a上に載置され、スライド部46を下方から支持している。圧縮コイルばね48は、リフトビーム34に該リフトビーム34の重量とほぼ同じ鉛直方向上向きの力を付与し、リフトビーム34の自重をキャンセルしている。
Zアクチュエータ40では、リフトビーム34を用いて基板Pを基板ホルダ30の上面から離間させる(基板Pを持ち上げる)際、リフトビーム34及び基板Pの荷重が圧縮コイルばね48に作用する。これにより、圧縮コイルばね48が縮んで、図16(B)に示されるように、シャフト44の先端とスライド部46とが接触し、駆動部42がシャフト44を介してリフトビーム34及び基板Pを直接上下動させることができる。これに対し、図16(A)に示されるように、基板Pが基板ホルダ30上に載置された場合には、圧縮コイルばね48に作用する負荷が減るため、シャフト44の先端とスライド部46の天井面とが離間する。従って、リフトビーム34が基板Pを吸着したままの状態で、該リフトビーム34を面一位置に位置させることができ、基板ホルダ30によって平面矯正された基板Pの平面度を損なわない。このため、基板ホルダ30が基板Pを吸着保持した後もリフトビーム34による基板Pの基板吸着を解除する必要がなく、基板処理タクトを悪化させない。また、シャフト44とスライド部46とは、Z軸方向にのみ分離する構造なので、基板Pが基板ホルダ30の上面から離間させる際、あるいは接触させる際に該基板Pの水平方向位置が大きくずれるおそれがない。また、リフトビーム34の高さ位置決めもラフで良い。なお、上記第1の変形例に係るZアクチュエータ40は、圧縮コイルばね48を用いてリフトビーム34の自重を支持する構成であったが、基板Pの撓み剛性に比べてリフトビーム34が十分に軽ければ(基板Pにリフトビーム34が吸着された状態で基板Pの平面度悪化が起こらなければ)圧縮コイルばね48は、設けなくても良い。
また、上記実施形態(図2参照)における基板ホルダ30は、基板Pを真空吸着することにより、基板ホルダ30の表面に沿って基板Pの平面矯正を行う構成であったが、これに限られず、例えば図17に示される第2の変形例に係る基板ステージ装置20bのように、基板ホルダ30bの上面に形成された複数の微小な孔部(不図示)の一部から加圧気体(例えば、空気)を基板Pの下面に対して噴出するとともに、上記複数の孔部の他部から真空吸引を行なうことにより、基板Pと基板ホルダ30bの上面との間に気体膜を形成し、該気体膜を介して非接触で基板Pを平面矯正しても良い。この場合、リフトビーム34の一部に基板Pを常時真空吸着させることにより、基板Pが不用意に移動することを防止すると良い。
本第2の変形例に係る基板ステージ装置20bでは、基板ホルダ30bが基板Pを常時非接触支持するので、基板ホルダ30bによる基板Pの持ち替え動作時に基板Pを複数のリフトビーム34を用いて上下動させる必要がない(リフトビーム34は、基板Pの搬出、搬入時にのみ使用)。これにより、露光処理動作時のタクトタイムの短縮が可能となる。また、基板Pと基板ホルダ30との摺動に起因する発塵も防止できる。なお、基板ホルダ30bと同様に、リフトビーム34の一部から基板Pの下面に対して加圧気体を噴出して基板Pに浮上力を付与しても良い。この場合、基板ホルダ30bによる基板Pの持ち替え動作時に基板ホルダ30bがX方向にスライドするとき、基板Pの自重に起因する撓みが抑制されるとともに、基板Pの下面と基板ホルダ30bの上面との接触(摺動)を防止することができる。
また、基板ステージ装置20の構成としては、基板PをX軸、及びY軸方向に長ストロークで移動させることができれば、適宜変更が可能であり、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、X粗動ステージとY粗動ステージとが上下に重なった構造のガントリー型XY2次元ステージ装置を用いても良いし、例えば米国特許第6,452,292号明細書に開示されるような平面モータにより駆動されるサーフェス型XY2次元ステージ装置を用いても良い。また、基板ステージ装置20の構成としては、上記米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、粗動ステージ上に微動ステージが配置される粗微動型ステージ装置でも良いし、単一のテーブル部材がX軸、及びY軸方向に長ストロークで駆動され、且つ6自由度方向に微小駆動される一体型粗微動ステージ装置でも良い。
また、リフトビーム34の数、及び間隔は、基板Pを下方から支持した状態で該基板Pの自重による撓みを抑制できれば、例えば基板Pの大きさに応じて適宜変更が可能である。また、複数のリフトビーム34が上下動することにより、基板ホルダ30に対する基板Pの受け渡し動作が行われたが、これに限られず、例えば基板ホルダ30(あるいは複数のリフトビーム34、基板ホルダ30の両方)を上下動させても良い。また、基板テーブル26と基板ホルダ30とが一体的にZ・チルト動作を行うことにより、基板PのZ・チルト位置が制御される構成であったが、これに限られず、例えば基板ホルダ30のみを基板テーブル26に対してZ・チルト方向に移動可能に構成し、該基板ホルダ30のみを用いて基板PのZ・チルト位置を制御しても良い。
また、上記実施形態において、基板ホルダ30の上面の面積は、基板P上に設定された複数のショット領域のうちの2つのショット領域をカバーする広さ(基板Pの半分程度)に設定されたが、これに限られず、設定されたショット領域の数及び配置によっては、例えば1つのショット領域のみをカバーする広さであっても良いし、3つ以上のショット領域をカバーする広さであっても良い。すなわち、基板ホルダ30の面積は、基板Pの面積の半分以下(例えば1/3(あるいはそれ以下))であっても良いし、半分以上(例えば基板Pの面積の2/3(あるいはそれ以上))の広さであっても良い。また、基板ホルダ30による基板Pの持ち替え動作の回数は、上記実施形態では1回であったが、これに限られず、2回以上であっても良い。また、基板Pの持ち替え動作は、基板ホルダ30のX軸方向への移動のみでなく、Y軸方向への移動を伴っても良い(Y軸方向にのみ移動させても良い)。
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。