発明の詳細な説明
本発明のこれらの及び他の実施形態、利点、及び特徴を以下の節に示す。別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。
定義
用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は量の限定を意味するのではなく、少なくとも1の言及される事項の存在を意味する。用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、「1または複数の」あるいは「少なくとも1の」と同義で用いられる。用語「または」あるいは「及び/または」は、2の単語または表現が共にまたは個別に対象となるべきであることを示す機能語として用いられる。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきものである。同一の構成要素または特性に関する全ての範囲の端点は当該範囲に含まれ、独立して組み合わせることができる。
「約」は、言及する値と実質的に同様の効果を有するか、または実質的に同様の結果を与える全ての値を包含する。したがって、用語「約」に包含される範囲は、該用語が用いられる文脈、例えば言及する値が関連するパラメータに応じて、変化することとなる。したがって、文脈に応じて、「約」は、例えば、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、または±1%未満を意味し得る。重要なことは、用語「約」が前に付された言及する値の全ての記載は、当該の言及する値のみの記載も意図することである。さらに、語句「約・・・未満」または「約・・・よりも大きい」は、本明細書で示される用語「約」の定義に鑑みて理解される必要がある。
「アルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、元のアルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から1の水素原子を除去することによって得られる、飽和または不飽和の、分枝状、直鎖状または環状の1価の炭化水素ラジカルをいう。用語「アルキル」は「置換アルキル」を包含する。用語「アルキル」はまた、3〜10の環原子を含む飽和または不飽和の環状アルキルラジカル(C3〜C10シクロアルキル)を指す「シクロアルキル」も包含する。一般的なアルキル基としては、メチル;エタニル、エテニル、エチニルなどのエチル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロパ−1−エン−1−イル、シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イル等のプロピル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル等のブチルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。用語「アルキル」は、詳細には、任意の程度すなわち水準の飽和度を有する基、すなわち、専ら炭素−炭素単結合を有する基、1または複数の炭素−炭素二重結合を有する基、1または複数の炭素−炭素三重結合を有する基及び炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合が混在する基を包含することを意図する。特定の飽和度の水準が意図される場合には、表現「アルカニル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」が用いられる。いくつかの実施形態において、アルキル基は1〜20の炭素原子を含む(C1〜C20アルキル)。他の実施形態において、アルキル基は1〜12の炭素原子を含む(C1〜C12アルキル)。さらに他の実施形態において、アルキル基は1〜6の炭素原子を含む(C1〜C6アルキル)。なお、アルキル基がさらに別の原子に結合する場合には、該アルキル基は「アルキレン」基となる。換言すると、用語「アルキレン」とは二価のアルキルをいう。例えば、−CH2CH3はエチルであり、一方−CH2CH2−はエチレンである。すなわち、「アルキレン」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、元のアルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子または2の異なる炭素原子から2の水素原子を除去することによって得られる、飽和または不飽和の、分枝状、直鎖状または環状の2価の炭化水素ラジカルをいう。用語「アルキレン」は、詳細には、任意の程度すなわち水準の飽和度を有する基、すなわち、専ら炭素−炭素単結合を有する基、1または複数の炭素−炭素二重結合を有する基、1または複数の炭素−炭素三重結合を有する基及び炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合が混在する基を包含することを意図する。特定の飽和度の水準が意図される場合には、表現「アルカニレン」、「アルケニレン」、及び「アルキニレン」が用いられる。いくつかの実施形態において、アルキレン基は1〜20の炭素原子を含む(C1〜C20アルキレン)。他の実施形態において、アルキレン基は1〜12の炭素原子を含む(C1〜C12アルキレン)。さらに他の実施形態において、アルキレン基は1〜6の炭素原子を含む(C1〜C6アルキレン)。
本明細書では、用語「EC50」とは、最大半量応答を与える化合物の濃度をいう。本明細書では、用語「IC50」とは、応答(または結合)が半減する化合物の濃度をいう。
本明細書では、用語「本化合物(複数可)」または「本発明の化合物(複数可)」とは、本明細書に開示される構造式、例えば式(I)、(II)、及び(III)に包含される化合物をいい、これらの式の範囲内の任意の亜属、及び本明細書に開示される化合物などの特定の化合物を含む。化合物は、それらの化学構造及び/または化学名のいずれかによって識別することができる。化学構造と化学名とが矛盾する場合、化学構造が当該化合物のアイデンティティを決定する。本明細書に記載の化合物は1または複数のキラル中心及び/または二重結合を含んでいてもよく、したがって、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在してもよい。したがって、本明細書に描かれる化学構造は、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋な、鏡像異性的に純粋なまたはジアステレオマー的に純粋な)ならびに鏡像異性体及び立体異性体の混合物を含む、図解される化合物の全ての可能な鏡像異性体及び立体異性体を包含する。鏡像異性体及び立体異性体の混合物は、当業者に周知の分離技法またはキラル合成技法を用いて、該混合物の構成成分である鏡像異性体または立体異性体に分割することができる。本化合物はまた、エノール形態、ケト形態及びそれらの混合物を含むいくつかの互変異性形態で存在してもよい。したがって、本明細書に描かれる化学構造は、図解される化合物の全ての可能な互変異性形態を包含する。本明細書では、用語「互変異性体」とは、極めて容易に互いに変化し、平衡状態で共存することが可能な異性体をいう。一般に、化合物は水和または溶媒和されていてもよい。特定の化合物は、多結晶または非晶形態で存在してもよい。一般に、全ての物理的形態は本明細書で企図される使用に対して等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、本化合物の部分的な構造が示される場合、それらの括弧は、当該の部分的な構造の、当該分子の残余部への結合点を示すことを理解されたい。
用語「ラクトン」または「ラクトン環」とは、2以上の炭素原子及び単一の酸素原子の飽和または不飽和の環であって、当該環中の上記酸素原子に隣接する炭素の一方にケトン基を有する上記環をいう。用語「ラクトン」または「ラクトン環」はまた、置換ラクトンも包含する。一般的なラクトンとしては、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、カプロラクトン等が含まれるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、上記ラクトン基は上記環酸素原子を含む3〜10の環原子を含む。他の実施形態において、上記ラクトン基は上記環酸素原子を含む3〜7の環原子を含む。
本明細書では、用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及びヨード(I)基を含む。
「保護基」とは、分子内の反応性官能基に結合した場合に、該官能基の反応性を遮蔽する、低下させるまたは妨げる原子群をいう。保護基の例は、Green et al., “Protective Groups in Organic Chemistry”, (Wiley, 2nd ed. 1991)及びHarrison et al., “Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1−8 (John Wiley and Sons, 1971−1996)に記載されている。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)等が挙げられるが、これらに限定はされない。代表的なヒドロキシ保護基としては、ベンジル及びトリチルエーテルならびにアルキルエーテルなどの、当該ヒドロキシ基がアシル化されているかまたはアルキル化されているかのいずれかの基、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書では、用語「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴うことなく、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に適し、妥当なベネフィット・リスク比に見合っており、意図するそれらの使用に対して有効であることを意味する。
本明細書では、用語「塩」とは、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を包含する。一実施形態において、上記塩は薬学的に許容される塩をいう。酸付加塩とは、当該遊離塩基の生物学的な有効性及び特性を保持し、生物学的にまたは他の点で望ましからざるものではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の、但しこれらに限定されない無機酸、及び酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、カンファー酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2−オキソ−グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等の、但しこれらに限定されない有機酸によって形成される塩をいう。
塩基付加塩とは、当該遊離酸の生物学的な有効性及び特性を保持し、生物学的にまたは他の点で望ましからざるものではない塩をいう。これらの塩は、当該遊離酸に無機塩基または有機塩基を付加することにより調製される。無機塩基から得られる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩である。有機塩基から得られる塩としては、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の、第1級、第2級、及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンならびに塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられるが、これらに限定はされない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
本明細書では、用語「溶媒和物」とは、溶媒和(溶媒分子の溶質の分子またはイオンとの結合)によって形成される化合物、あるいは1もしくは複数の溶媒分子を伴う溶質イオンまたは分子、すなわち本発明の化合物、からなる凝集体を意味する。水が上記溶媒である場合には、相当する溶媒和物は「水和物」である。水和物の例としては、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、六水和物等が挙げられるが、これらに限定はされない。本化合物及び/または本化合物の薬学的に許容される塩はまた、溶媒和物の形態で存在してもよいことが当業者に理解される必要がある。上記溶媒和物は、一般的には、本化合物の調製の一部であるか、または無水の本発明の化合物による水分の自然吸収によるかのいずれかである水和を介して形成される。
「溶媒和物」とは、溶媒和(溶媒分子の溶質の分子またはイオンとの結合)によって形成される化合物、あるいは1もしくは複数の溶媒分子を伴う溶質イオンまたは分子、すなわち本発明の化合物、からなる凝集体を意味する。上記溶媒が水である場合には、相当する溶媒和物は「水和物」である。
特定された基またはラジカルを修飾するために用いられる場合、「置換された」とは、
上記特定された基またはラジカルの1または複数の水素原子が、それぞれ互いに独立に、同一または異なる置換基(複数可)で置き換えられていることを意味する。特定された基またはラジカル中の飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基としては、−Ra、ハロ、アシル、−O−、=O、−ORb、−SRb、−S−、=S、−NRcRc、=NRb、=N−ORb、トリハロメチル、−CF3、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO2、=N2、−N3、−S(O)2Rb、−S(O)2NRb、−S(O)2O−、−S(O)2ORb、−OS(O)2Rb、−OS(O)2O−、−OS(O)2ORb、−P(O)(O−)2、−P(O)(ORb)(O−)、−P(O)(ORb)(ORb)、−C(O)Rb、−C(S)Rb、−C(NRb)Rb、−C(O)O−、−C(O)ORb、−C(S)ORb、−C(O)NRcRc、−C(NRb)NRcRc、−OC(O)Rb、−OC(S)Rb、−OC(O)O−、−OC(O)ORb、−OC(S)ORb、−NRbC(O)Rb、−NRbC(S)Rb、−NRbC(O)O−、−NRbC(O)ORb、−NRbC(S)ORb、−NRbC(O)NRcRc、−NRbC(NRb)Rb及び−NRbC(NRb)NRcRcが挙げられるが、これらに限定はされない。但し上記において、Raは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、各Rbは独立に水素またはRaであり、各Rcは独立にRbであるか、あるいは、2のRcが、それらが結合する窒素原子と共に、任意選択で、O、N、及びSからなる群より選択される、1〜4の同一もしくは異なる更なるヘテロ原子を含んでいてもよい、4、5、6または7員シクロヘテロアルキルを形成してもよい。特定の例として、−NRcRcは、−NH2、−NH−アルキル、N−ピロリジニル及びN−モルホリニルを含むことが意図される。別の特定の例として、置換アルキルは、−アルキレン−O−アルキル、−アルキレン−ヘテロアリール、−アルキレン−シクロヘテロアルキル、−アルキレン−C(O)ORb、−アルキレン−C(O)NRbRb、及び−CH2−CH2−C(O)−CH3を含むことが意図される。上記の1または複数の置換基は、それらが結合する原子と共に、シクロアルキル及びシクロヘテロアルキルを含む環を形成してもよい。
他の特定された基または原子を置換するのに有用な上記列挙中の置換基は、当業者には明らかとなろう。
特定された基を置換するために用いられる上記置換基は、一般的には、上記で特定された種々の基から選択される1もしくは複数の同一または異なる基でさらに置換されていてもよい。
用語「有効量」及び「治療有効量」は本開示において同義で用いられ、対象に投与された場合、対象の障害の症状を軽減することができる化合物の量をいう。「有効量」または「治療有効量」を含む実際の量は、障害の重篤度、患者の体格及び健康状態、ならびに投与経路を含む、但しこれらに限定されない、多数の条件に応じて変化することとなる。熟練した医師は、医療分野で公知の方法を用いて、適切な量を容易に決定することができる。
用語「薬学的組成物」とは、本開示の化合物及び、生物学的に活性な化合物を哺乳動物、例えばヒトに送達するための、本技術分野で一般的に受け入れられている媒体の製剤をいう。かかる媒体には、そのための、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤の全てが含まれる。上記薬学的組成物は様々な剤形であってよく、または1もしくは複数の単位用量製剤を含んでいてもよい。
「賦形剤」または「担体」とは、健全な医学的判断の範囲内において、本発明の化合物を分散した/希釈した形態で哺乳動物に投与するのに適した、及び/または過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴うことなく、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に適し、妥当なベネフィット・リスク比に見合っており、意図するそれらの使用に対して有効である媒体及び/または組成物を意味する。
用語「対象」はヒトまたは動物を包含するが、これらに限定はされない。例示的な動物としては、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ、またはアカゲザルなどの哺乳動物が挙げられるが、これらに限定はされない。
対象に関して本明細書で用いられる用語「治療」とは、当該対象の疾患または障害の少なくとも1の症状を改善することをいう。治療は、かかる目的のために、指示を与える、または薬物を処方することに加えて、疾患もしくは状態の事例、または疾患もしくは状態の症状を治癒、改善、緩和、及び軽減することであり得る。
化合物
一実施形態において、本発明は、構造式(I):
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはエステルであって、式中、
R
1はアルキル、OR
4、またはNR
5R
6であり、
R
2はHまたはアルキルであるか、あるいは、R
1とOR
2とが、それらが結合する原子と共にラクトン環を形成し、
mは0または1であり、
nは1または2であり、
R
3、R
4、R
5及びR
6は独立に水素またはアルキルである、
上記化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはエステルを提供する。
式(I)の一実施形態において、式(I)の化合物は、構造式(II):
によって表される。
式(I)の一実施形態において、R1はOHであり、R2とR3とは共にHである。
式(I)の一実施形態において、R2はHであり、R3はアルキルである。
式(I)の一実施形態において、R2はアルキルであり、R3はHである。
式(I)の一実施形態において、mは1であり、nは1である。
式(I)の一実施形態において、mは1であり、nは1であり、R1はOHであり、R2はHであり、R3はHである。
式(I)の一実施形態において、R
1とOR
2とは、それらが結合する原子と共にラクトン環を形成する。この実施形態において、式(I)の化合物は構造式(III)または(III’):
を有し、
式中、R
3、m及びnは上記に定義したとおりである。
式(III)または(III’)の一実施形態において、mは1であり、nは1である。
式(III)または(III’)の一実施形態において、mは1であり、nは1であり、R3はHである。
式(III)または(III’)の一実施形態において、R3はアルキルである。
本発明のいくつかの特定の実施形態において、式(I)の化合物は、
からなる群より選択される。
一実施形態において、本発明の化合物は、当該分野で公知の任意の薬学的に許容される塩またはエステルの形態である。例示的な薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタリンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルも包含する。用語「エステル」とは、エステル官能基を含む本化合物の誘導体であって、該エステル形態が対象に投与された場合に本化合物を放出することができる上記誘導体を意味する。本化合物の放出はイン・ビボで起こる。薬学的に許容されるエステルは当業者に公知の技法によって調製することができる。これらの技法は、一般に、所与の化合物中の適宜の官能基を修飾する。但し、これらの修飾された官能基は、イン・ビボにおける当該化合物の代謝によって当初の官能基を再生する。エステルとしては、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、または類似の基が修飾されている化合物が挙げられる。
ヒドロキシル基に対して適した薬学的に許容されるエステルとしては、当該エステルのイン・ビボ加水分解の結果として元のヒドロキシ基を与える、リン酸エステルなどの無機エステル及びα−アシルオキシアルキルエーテルならびに関連する化合物が挙げられる。ヒドロキシに対してイン・ビボ加水分解性エステルを形成する基としては、アルカノイル(例えば、C1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル)、ベンゾイル、フェニルアセチル及び置換ベンゾイル及び置換フェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボナートエステルを与える)、ジアルキルカルバモイル及びN−(N,N−ジアルキルアミノエチル)−N−アルキルカルバモイル(カルバミン酸エステルを与える)、N,N−ジアルキルアミノアセチル及びカルボキシアセチルが挙げられる。
薬学的組成物及び剤形
本発明は、本発明の化合物またはその塩、溶媒和物、もしくはエステル、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物ならびに剤形(単位剤形を含む)を提供する。本発明の組成物及び剤形は、対象、例えばヒト及び動物への投与に適しており、適宜の量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくはエステルを含有する、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、無菌非経口溶液剤または懸濁液剤、及び経口溶液剤または懸濁液剤、ならびに油−水乳化液剤などの単位剤形を包含する。
経口医薬剤形は固体または液体のいずれであってもよい。上記固体剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及び混合散剤であってよい。経口錠剤の種類としては、腸溶性コーティング、糖コーティングまたはフィルムコーティングがなされていてもよい、圧縮成型され、咀嚼可能なロゼンジ剤及び錠剤が挙げられる。カプセル剤は、硬質または軟質ゼラチンカプセル剤であってよく、一方顆粒剤及び散剤は、当業者に公知の他の成分と組み合わせた、非発泡性または発泡性の形態で提供されてもよい。他の実施形態において、上記経口剤形は、浸透圧制御放出経口送達システム(osmotic−controlled release oral delivery system)(OROS)であってもよい。他の実施形態において、上記経口剤形は、マトリクス包埋剤形または関連するデバイスを包含してもよい。いくつかの実施形態において、本経口剤形は口腔内崩壊錠剤を包含してもよい。
錠剤に利用される薬学的に許容される担体としては、結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、香味料、及び湿潤剤が挙げられる。
液体経口剤形としては、水性の溶液剤、乳液剤、懸濁液剤、非発泡性顆粒剤から再構成された溶液剤及び/または懸濁液剤ならびに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性製剤が挙げられる。
水溶液剤としては、例えば、エリキシル剤及びシロップ剤が挙げられる。乳液剤は水中油型または油中水型のいずれであってもよい。エリキシル剤は透明で、甘味付けされた水性アルコール製剤である。エリキシル剤に用いられる薬学的に許容される担体としては溶媒が挙げられる。シロップ剤は、砂糖、例えばスクロース、の濃縮水溶液であってよく、防腐剤を含有していてもよい。乳液剤は、一方の液体が他方の液体全体に小球の形態で分散した二相系である。乳液剤に用いられる薬学的に許容される担体は、非水性液体、乳化剤及び防腐剤である。懸濁液剤は薬学的に許容される懸濁剤及び防腐剤を用いてもよい。液体経口剤形に再構成される非発泡性顆粒剤に用いられる薬学的に許容される物質としては、希釈剤、甘味料及び湿潤剤が挙げられる。液体経口剤形に再構成される発泡性顆粒に用いられる薬学的に許容される物質としては、有機酸及び二酸化炭素源を挙げることができる。着色料及び香味料は上記剤形の全てに用いてもよい。
本発明の製剤の非経口投与としては、即時放出性製剤、徐放性製剤(例えば、デポー)、持続放出性製剤、及び/または放出調節製剤(例えば、本明細書に記載の)の静脈内、皮下及び筋内投与が挙げられる。非経口投与用の製剤としては、そのまま注射できる無菌溶液剤、皮下注射用錠剤を含む、使用の直前にそのまま溶媒と混合できる、無菌の乾燥状態の可溶な製品、そのまま注射できる無菌懸濁液剤、使用の直前にそのままビヒクルと混合できる、無菌の乾燥状態の不溶な製品及び無菌乳液剤が挙げられる。上記溶液剤は水溶液または非水溶液のいずれであってもよい。非経口用製剤に用いられる薬学的に許容される担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート化剤ならびにその他の薬学的に許容される物質が挙げられる。
上記薬学的に活性な化合物の濃度は、所望の薬理学的効果を注射により生起させるための有効量を与えるように調節することができる。正確な用量は、当技術分野で公知のとおり、当該の患者または動物の年齢、体重及び状態に依存する。単位用量の非経口製剤は、アンプルまたは針付きシリンジ中に包装される。非経口投与用の全ての製剤は、本技術分野において公知であり且つ実施されているとおり、無菌である必要がある。例示として、本化合物を含有する無菌水溶液剤の静脈内または動脈内注入は有効な投与様式である。
直腸投与用の医薬剤形は、全身的効果のための直腸坐剤、カプセル剤及び錠剤であってもよい。本明細書では、用語直腸坐剤とは、体温で融解または軟化して、本発明の組成物に含まれる薬理学的に及び/または治療上活性な成分を放出する、直腸への挿入用の固体を意味する。直腸坐剤に利用される薬学的に許容される物質は、基剤またはビヒクル及び融点を上昇させる添加剤である。基剤の例としては、カカオバター(テオブロマ油)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス、ポリオキシエチレングリコール及び脂肪酸のモノ−、ジ−及びトリグリセリドの混合物が挙げられる。種々の基剤の組み合わせを用いてもよい。坐剤の融点を上昇させる添加剤としては鯨蝋及びワックスが挙げられる。直腸坐剤は、圧縮成型法または型成型によって製剤化することができる。直腸坐剤の一般的な重量は約2〜3gである。直腸投与用の錠剤及びカプセル剤は、経口投与用の製剤に対するものと同様の薬学的に許容される物質を用い、それと同様の方法によって製造することができる。
本組成物は、微粉の形態もしくは他の適宜の形態で懸濁させてもよく、または誘導体化してより可溶性の活性生成物を生成させてもよい。得られる組成物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体またはビヒクル中の本化合物の溶解度を含む多くの因子に依存する。有効な濃度はそう痒を治療または緩和するのに十分であり、経験的に決定することができる。この濃度は本化合物の全身投与の濃度よりも一般に高い。
得られる混合物は、溶液剤、懸濁液剤、乳液剤等であってよく、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、乳液剤、溶液剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁液、チンキ剤、ペースト剤、フォーム剤、エアロゾル剤、かん注剤、噴霧剤、坐剤、包帯剤、または局所的(topical)または局所的(local)投与に適した任意の他の製剤であってもよい。投与様式は、皮膚、頭皮、目、及び/または鼻、頬または舌下の粘膜への局所適用を包含していてもよい。
本組成物の投与に適した医薬及び化粧品用担体またはビヒクルとしては、当該の特定の投与様式に適していることが当業者に知られている任意のかかる担体が挙げられる。本化合物は、治療を受ける個体に対する重篤な毒性作用なしに、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で担体中に加えることができる。
これらの組成物を製剤化するために、ある重量分率の本化合物を、そう痒状態が軽減または緩和されるような有効濃度で、選択されたビヒクルに溶解、懸濁、分散させるかまたは他の方法で混合する。一般に、皮膚に水分補給するのに役立つ皮膚軟化剤または潤滑剤が、皮膚を乾燥させる、エタノールなどの揮発性のビヒクルよりも好ましい。ヒトの皮膚に用いるための組成物を製剤化するのに適した基剤またはビヒクルの例は、ペトロラタム、ペトロラタム+揮発性シリコーン、ラノリン、コールドクリーム(USP)、及び親水性軟膏(USP)である。
一実施形態において、本発明は、有効量の式(I)の化合物及び1種または複数種の化粧品としてもしくは薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、そう痒すなわち痒みを治療及び/または軽減するための局所用組成物を提供する。本明細書では、用語「化粧品として許容される」とは、当該担体または賦形剤が組織(例えば、皮膚)と接触する使用に適していることを意味し、「薬学的に許容される」とは、当該担体または賦形剤が、過度の毒性、非適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応等なしに、全身的吸収が起こり得る組織(例えば、粘膜、消化管等)との接触に適することを意味する。特定の実施形態において、局所用組成物は、そう痒すなわち痒みを治療及び/または軽減するために、有効量の化合物1または化合物2、及び1種または複数種の化粧品としてもしくは薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。本発明者らは、化合物1がμ−オピオイド受容体の特異的且つ弱い部分アゴニスト/アンタゴニストであり、約78,000nMすなわち約70μg/mLのEC50を有することを見出した。化合物1は親油性ではなく、酸性側鎖に起因して、生理学的pHでは荷電されることが予想される。如何なる理論にも拘束されることを望むものではないが、化合物1は膜を通過して容易に分配され得ず、皮膚の内部に保持されるであろうことが予想される。
式(I)の化合物、特に化合物1は、比較的高いEC50値を有する弱いμ−アゴニスト/アンタゴニストであるために、これらの化合物は、該化合物のEC50値をはるかに上回る濃度で製剤化して、そう痒状態の治療に有効な局所用組成物を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態において、局所用組成物は、約1mg/mL〜約100mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。他の実施形態において、局所用組成物は、約0.1mg/mL〜約100mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。
さらに他の実施形態において、局所用組成物は、約0.1mg/mL〜約10mg/mL、約0.1mg/mL〜約20mg/mL、約0.1mg/mL〜約50mg/mL、約0.1mg/mL〜約100mg/mL、約0.5mg/mL〜約10mg/mL、約0.5mg/mL〜約20mg/mL、約0.5mg/mL〜約30mg/mL、約0.5mg/mL〜約40mg/mL、約0.5mg/mL〜約50mg/mL、約0.5mg/mL〜約60mg/mL、約0.5mg/mL〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約80mg/mL、約0.5mg/mL〜約90mg/mL、約0.5mg/mL〜約100mg/mL、約0.5mg/mL〜約150mg/mLまたは約0.5mg/mL〜約200mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。いくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約1mg/mL〜約10mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約30mg/mL、約1mg/mL〜約40mg/mL、約1mg/mL〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約60mg/mL、約1mg/mL〜約70mg/mL、約1mg/mL〜約80mg/mL、約1mg/mL〜約90mg/mL、約1mg/mL〜約100mg/mL、約1mg/mL〜約125mg/mL、約1mg/mL〜約150mg/mL、約1mg/mL〜約175mg/mL、または約1mg/mL〜約200mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。
さらにいくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約5mg/mL〜約15mg/mL、約5mg/mL〜約25mg/mL、約5mg/mL〜約40mg/mL、約5mg/mL〜約50mg/mL、約5mg/mL〜約60mg/mL、約5mg/mL〜約70mg/mL、約5mg/mL〜約80mg/mL、約5mg/mL〜約90mg/mL、約5mg/mL〜約100mg/mL、約5mg/mL〜約125mg/mL、約5mg/mL〜約150mg/mL、約5mg/mL〜約175mg/mL、または約5mg/mL〜約200mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。さらにいくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約10mg/mL〜約50mg/mL、約10mg/mL〜約60mg/mL、約10mg/mL〜約70mg/mL、約10mg/mL〜約80mg/mL、約10mg/mL〜約90mg/mL、約10mg/mL〜約100mg/mL、約10mg/mL〜約125mg/mL、約10mg/mL〜約150mg/mL、約10mg/mL〜約175mg/mL、または約10mg/mL〜約200mg/mL(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。
いくつかの実施形態において、局所用組成物は約0.1%w/w〜約10%w/w(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。他の実施形態において、局所用組成物は約0.5%w/w〜約50%w/w(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。
さらにいくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約0.5%w/w〜約10%w/w、約0.5%w/w〜約20%w/w、約0.5%w/w〜約30%w/w、約0.5%w/w〜約40%w/w、約0.5%w/w〜約50%w/w、約0.5%w/w〜約60%w/w、約0.5%w/w〜約70%w/w、約0.5%w/w〜約80%w/w、約0.5%w/w〜約90%w/w(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。さらにいくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約1%w/w〜約10%w/w、約1%w/w〜約20%w/w、約1%w/w〜約30%w/w、約1%w/w〜約40%w/w、約1%w/w〜約50%w/w、約1%w/w〜約60%w/w、約1%w/w〜約70%w/w、約1%w/w〜約80%w/w、約1%w/w〜約90%w/w(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。さらにいくつかの他の実施形態において、局所用組成物は、約5%w/w〜約10%w/w、約5%w/w〜約20%w/w、約5%w/w〜約30%w/w、約5%w/w〜約40%w/w、約5%w/w〜約50%w/w、約5%w/w〜約60%w/w、約5%w/w〜約70%w/w、約5%w/w〜約80%w/w、約5%w/w〜約90%w/w(値及びそれらの範囲を含む)の式(I)の化合物を含む。
上記局所用組成物としては、溶液剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、スティック剤、噴霧剤、軟膏剤、乳液剤(例えば、マイクロ乳液剤及びナノ乳液剤)、分散液剤(例えば、マイクロ分散液剤及びナノ分散液剤)、持続放出性剤形、口腔内崩壊錠剤、液体洗浄剤、固形棒剤、シャンプー剤、ペースト剤、フォーム剤、散剤、ムース剤、髭剃りクリーム剤、ワイプ剤、貼付剤、ネイルラッカー剤、創傷包帯剤、絆創膏剤、ヒドロゲル剤、及びフィルム剤が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの製品の種類は、溶液剤、懸濁液剤、乳液剤(例えば、マイクロ乳液剤及びナノ乳液剤)、分散液剤(例えば、マイクロ分散液剤及びナノ分散液液剤)、ゲル剤、固体剤及びリポソーム剤を含む、但しこれらに限定されない、いくつかの種類の化粧品として許容される局所用担体を含んでいてもよい。
種々の実施形態において、式(I)の化合物を含む上記局所用組成物は、皮膚、頭皮、目、鼻粘膜、頬粘膜、舌下粘膜及び/または消化管を含む、但しこれらに限定されない、様々な組織または器官に局所的に送達してもよい。特定の実施形態において、様々な組織または器官に局所的に送達される上記組成物は、化合物1または化合物2を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、消化(GI)管、例えば、小腸及び大腸を含む、但しこれらに限定されない、上部及び下部消化管への式(I)の化合物の局所投与に適する。これらの実施形態において、式(I)の化合物を含む組成物は、消化管への局所的(topical)または局所的(local)送達のために経口投与してもよい。GI管への式(I)の化合物の局所的(topical)または局所的(local)送達は、下痢、胃腸炎、炎症性腸疾患及び短腸症候群を含む、但しこれらに限定されない胃腸病の治療にとって望ましい。特定の実施形態において、GI管に局所的に送達される上記組成物は、化合物1または化合物2を含む。消化(GI)管への式(I)の化合物の局所的送達が意図される上記組成物としては、持続放出性(ER)剤形及び口腔内崩壊錠剤(ODT)が挙げられるが、これらに限定はされない。
特定の実施形態において、様々な組織または器官に局所的に送達される、式(I)の化合物を含む組成物は、投与後に有意な全身的活性を有さない。本明細書では、用語「有意な全身的活性がない」とは、循環系への吸収により体内に全般的な影響を与えないが、病変組織との局所的接触によって局所的効果を与える組成物をいう。
いくつかの実施形態において、本方法で用いられる組成物は、皮膚に適用された場合にそう痒を軽減することができる。上記組成物は、必要に応じて、1日当たり最大で8回患部に局所的に投与し、痒みを低減及び軽減することができる。軽減は一時的または永続的である場合があり、当該組成物の単回投与後に明確となる場合すらある。該組成物が局所用製剤以外の形態で投与される場合には、FDAにより確立された安全指針の範囲内の、そう痒を軽減するのに十分な量で投与される必要がある。患者に投与する適切な量の決定は、本発明によって提供される教示と併せて、当業者の技量の範囲内である。
いくつかの実施形態において、本発明の局所用組成物は、皮膚変化を伴う痒みまたはそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。例えば、かかるそう痒状態は、皮膚の炎症(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷)に続発するそう痒症、皮膚の病変ではない状態に起因するそう痒症(例えば、尿毒症性そう痒症、胆汁うっ滞性そう痒症、がん、ヒドロキシエチルデンプン誘発性そう痒症)、及び基礎疾患(例えば、結節性痒疹)の結果として生じるものであってもよく、もしくはそうでなくてもよい、慢性的な二次性の掻き傷または他の種類の皮膚病変に伴うそう痒症からなる群より選択し得る。
局所投与を意図する本発明の組成物の溶液剤は、一般的には約0.01%w/wと約5%w/wとの間の濃度の、抗そう痒性の量を送達するのに有効な量の上記組成物を含有する。上記溶液剤の残余部は水、適宜の有機溶媒または他の適宜の溶媒もしくは緩衝液である。これらの組成物を溶液剤もしくは懸濁液剤として製剤化して皮膚に適用してもよく、またはエアロゾルもしくはフォームとして製剤化し、噴霧剤として皮膚に適用してもよい。上記エアロゾル組成物は、一般には、25%w/w〜80%w/w、好ましくは30%w/w〜50%w/wの適宜の噴射剤を含有する。ゲル組成物は、当該の溶液または懸濁液に適宜の増粘剤を単純に混合することによって製剤化することができる。
溶液剤及び懸濁液剤はまた、局所的に目及び粘膜に適用してもよい。溶液剤、特に眼科用途を意図したものは、適宜の塩を用いた、pHが約5〜7の、0.01%〜10%w/wの、好ましくは約0.1%w/wから約5%w/wまたはそれ以上までの濃度で、1種または複数種の本明細書の組成物を含有する、等張溶液剤として製剤化してもよい。好適な眼科用溶液剤は本技術分野で公知である。
局所適用を意図する固体形態の組成物は、口唇または身体の他の部位への適用を意図するスティック型組成物として製剤化してもよい。かかる組成物は、有効量の本化合物または薬学的に許容されるそれらの塩、溶媒和物もしくはエステルを含有する。本化合物の量は、一般的には約0.01%〜約5%w/wである。上記固形形態はまた、約40%〜98%w/w、好ましくは約50%〜90%w/wの皮膚軟化剤も含有する。この組成物は、1%w/w〜20%w/w、好ましくは5%w/w〜15%w/wの適宜の増粘剤、及び、所望または必要である場合には、乳化剤及び水または緩衝剤を更に含有してもよい。
また、上記組成物、及び該組成物を含有する製剤はまた、包帯(bandage)上に塗布しても、生体接着剤と混合しても、または包帯(dressing)に含ませてもよい。したがって、包帯、生体接着剤、包帯及び他のかかる材料と本明細書に記載の製剤化した組成物との組み合わせが提供される。
一実施形態において、本発明に係る薬学的組成物または剤形は、経口徐放性製剤の形態で製剤化される。本発明の徐放性製剤は、治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくはエステルを含む。上記経口徐放性製剤は、ボーラス注射または即時放出性経口製剤に関して認められるものよりもより長期(例えば、少なくとも約8〜12時間)にわたる当該薬物の制御された放出を提供することができる。投薬の頻度を低減することは、本発明の方法を用いる場合に、患者の利便性及び投薬遵守を向上させる可能性がある。投与頻度をより低くすることで、患者が経時的に曝露される薬物のピーク濃度がより低くなり得ることから、副作用が低減される可能性もある。
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはエステル、及び徐放性送達システムを含む組成物も提供する。上記徐放性送達システムは、親水性化合物、架橋剤、及び希釈剤を含有していてもよい。あるいは、上記徐放性送達システムは疎水性化合物を用いてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)、式(II)、式(III)、式(III’)の化合物、または化合物1もしくは化合物2は、本組成物中に約1mg〜約240mg、約1mg〜約150mg、約1mg〜約125mg、または約1mg〜約100mgの量で存在する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、本組成物中に約5mg〜約60mg、約5mg〜約80mg、約10mg〜約70mg、約15mg〜約60mg、約40mg〜約80mg、約50mg〜約70mg、または約45mg〜約60mgの量で存在する。一実施形態において、上記化合物は、本組成物中に約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約240mgの量で存在する。別の実施形態において、上記化合物は、本組成物中に約15mg、約30mg、約45mg、約60mg、約120mg、または約180mgの量で存在する。更に別の実施形態において、上記化合物は、本組成物中に約15mg、30mg、90mg、120mgまたは180mgの量で存在する。
本発明の式(I)、式(II)、式(III)、式(III’)の化合物、または化合物1もしくは化合物2は、少なくとも約75%、例えば、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、または約100%の純度で単離された形態で提供されてもよい。本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかにおいて、本発明の式(I)、式(II)、式(III)、式(III’)の化合物、または化合物1もしくは化合物2は、少なくとも約90%(賦形剤を除いて)、例えば、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、または約100%の純度で上記薬学的組成物中に提供されてもよい。
上記徐放性送達システムは、少なくとも1種の親水性化合物を含んでいてもよい。上記親水性化合物は、好ましくは、液体に曝されると持続的速度で本発明の化合物を放出するゲルマトリクスを形成する。上記ゲルマトリクスからの本化合物の放出速度は、上記ゲルマトリクスの構成要素と消化管内の水相との間の当該薬物の分配係数に依存する。本発明の化合物の上記親水性化合物に対する重量比は、一般に、約10:1〜約1:10、約9:1〜約1:9、約8:1〜約1:8、約7:1〜約1:7、約6:1〜約1:6、約5:1〜約1:5、約4:1〜約1:4、約3:1〜約1:3、及び約2:1〜約1:2の範囲である。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の上記親水性化合物に対する重量比は、約10:1〜約1:1、約10:1〜約2:1、約9:1〜約1:1、約8:1〜約1:1、約7:1〜約1:1、約6:1〜約1:1、約5:1〜約1:1、約4:1〜約1:1、約3:1〜約1:1、及び約2:1〜約1:1の範囲である。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の上記親水性化合物に対する重量比は、約6:1〜約1:1、約5:1〜約2:1、約4:1〜約3:1、約4:1〜約2:1、及び約5:1〜約2:1の範囲である。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の上記親水性化合物に対する重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4.4、約1:4、約1:3.5、約1:3.3、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1、及び約1:1.5である。
上記徐放性送達システムは、一般的に、上記親水性化合物を約5重量%〜約80重量%の量で含む。いくつかの実施形態において、上記徐放性送達システムは、一般的に、上記親水性化合物を約5重量%〜約30重量%、約8重量%〜約31重量%、約10重量%〜約20重量%、約20重量%〜約60重量%、または約40重量%〜約60重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約8重量%〜約31重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約10重量%〜約20重量%の量で含む。いくつかの実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約12重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約8重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは上記親水性化合物を約20重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記親水性化合物を約28重量%の量で含む。
上記親水性化合物は、親水性であることが当技術分野で知られている任意の化合物である。例示的な親水性化合物としては、ガム、セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、タンパク質由来の化合物、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。例示的なガムとしては、キサンタン、トラガカント、ペクチン、アカシア、カラヤ、アルギン酸塩、寒天、グアー、ヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、ローカストビーンガム、及びジェランガムなどのヘテロ多糖ガム及びホモ多糖ガムが挙げられるが、これらに限定はされない。例示的なセルロースエーテルとしては、ヒドロキシアルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、セルロースエーテルとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記親水性化合物はガムである。他の実施形態において、上記親水性化合物はヘテロ多糖ガムである。さらなる実施形態において、上記親水性化合物はキサンタンガムまたはその誘導体である。キサンタンガムの誘導体としては、例えば、脱アシル化キサンタンガム、キサンタンガムのカルボキシメチルエステル、及びキサンタンガムのプロピレングリコールエステルが挙げられるが、これらに限定はされない。
別の態様において、上記徐放性送達システムは、少なくとも1種の架橋剤をさらに含む。一実施形態において、上記架橋剤は、上記親水性化合物を架橋して、液体の存在下でゲルマトリクスを形成することができる化合物である。本明細書では、「液体」とは、例えば、胃・腸液及びイン・ビトロ溶解試験に用いられるものなどの水溶液を包含する。上記徐放性送達システムは、一般的に、上記架橋剤を約0.5重量%〜約80重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、一般に、上記架橋剤を約12重量%〜約47重量%の量で含む。別の実施形態において、上記徐放性送達システムは、一般的に、上記架橋剤を約20重量%〜約30重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、一般に、上記架橋剤を約15重量%〜約25重量%の量で含む。いくつかの実施形態において、上記徐放性送達システム中に、上記少なくとも1種の架橋剤が、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%の量で存在する。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記架橋剤を約18重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記架橋剤を約12重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記架橋剤を約30重量%の量で含む。一実施形態において、上記徐放性送達システムは、上記架橋剤を約42重量%の量で含む。
例示的な架橋剤としてはホモ多糖が挙げられる。例示的なホモ多糖としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、及びローカストビーンガムなどのガラクトマンナンガムが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、上記架橋剤はローカストビーンガムまたはグアーガムである。他の実施形態において、上記架橋剤はアルギン酸誘導体または親水コロイドである。
いくつかの実施形態において、上記徐放性送達システムが少なくとも1種の親水性化合物及び少なくとも1種の架橋剤を含む場合、親水性化合物の架橋剤に対する重量比は、約1:9〜約9:1、約1:8〜約8:1、約1:7〜約7:1、約1:6〜約6:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、または約1:2〜約2:1である。いくつかの実施形態において、親水性化合物の架橋剤に対する重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1.5、及び約1:1である。
上記徐放性送達システムは、当技術分野で公知の1種または複数種の医薬希釈剤を含んでいてもよい。例示的な医薬希釈剤としては、単糖、二糖、多価アルコール及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、医薬希釈剤としては、例えば、デンプン、マンニトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶セルロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、及びそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記医薬希釈剤は水溶性である。水溶性医薬希釈剤の非限定的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、またはそれらの混合物が挙げられる。
いくつかの実施形態において、上記徐放性組成物は、1種または複数種の湿潤剤(例えば、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリエトキシ化硬化ヒマシ油、ヒマシ油由来のポリエトキシ化脂肪酸、硬化ヒマシ油由来のポリエトキシ化脂肪酸)、1種または複数種の潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム等)、1種または複数種の緩衝剤、1種または複数種の着色料、及び/または他の従来の成分とさらに混合される。
そう痒状態及び治療方法
本発明は、有効量、例えば、有効量の本発明の化合物または本発明の化合物を含む有効量の徐放性製剤を、それを必要とする対象、例えばヒトまたは動物の患者に投与することによる、そう痒状態の治療方法を提供する。有効量とは、上記そう痒状態の症状を除去するもしくは有意に低減する、またはこれらの症状を緩和する(例えば、本発明の化合物の投与の前に存在した当該症状と比較して、痒みなどの該症状を低減する)のに十分な量である。「徐放性」または「持続放出性」とは、治療上有益な本化合物の血液濃度(但し、毒性濃度未満)が長期間にわたって維持されるように、本化合物が制御された速度で上記製剤から放出されることを意味する。あるいは、「徐放性」または「持続放出性」とは、所望の薬理学的効果が長時間にわたって維持されることを意味する。
いくつかの実施形態において、本そう痒状態の治療方法は、本発明の化合物を約5mg〜約60mgの用量で、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本そう痒状態の治療方法は、約5mg〜約60mgの本発明の化合物を含む組成物または剤形を、それを必要とする対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び/または組成物は、少なくとも約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間の期間にわたって抗そう痒効果を与える。いくつかの実施形態において、本発明は、約6〜18時間、約8〜16時間、約8〜12時間、約8〜約24時間、約12〜約24時間、約18〜約24時間、または約8〜10時間の期間にわたって抗そう痒効果を与える。いくつかの他の実施形態において、本発明は、約1日、2日、3日、4日またはそれ以上の期間にわたって抗そう痒効果を与える。いくつかの実施形態において、痒み感覚は特定の治療期間の後にぶり返さない。
本発明によれば、そう痒は、任意の痒みまたはそう痒状態、例えば、掻くことに対する欲求または反射を引き起こす感覚を含む。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、アトピー性皮膚炎、神経性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自家感作性皮膚炎、毛虫皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒症、虫刺され、光過敏性皮膚炎、じん麻疹、痒疹、ヘルペス、膿痂疹、湿疹、白癬、苔癬、乾癬、疥癬、及び尋常性ざ瘡、ならびに悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、腎不全、血液透析、腹膜透析、及び妊娠などのそう痒を合併する内臓疾患からなる群より選択されるそう痒状態に罹患した対象の治療に用いられる。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、皮膚変化に伴うそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。例えば、かかるそう痒状態は、皮膚の炎症(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷)に続発するそう痒症、皮膚の病変ではない状態に起因するそう痒症(例えば、尿毒症性そう痒症、胆汁うっ滞性そう痒症、がん、ヒドロキシエチルデンプン誘発性そう痒症)、及び基礎疾患(例えば、結節性痒疹)の結果として生じるものであってもよく、もしくはそうでなくてもよい、慢性的な二次性の掻き傷または他の種類の皮膚病変に伴うそう痒症からなる群より選択することができ、上記基礎疾患は、組織学的、放射線学的またはその他の検討に基づいて、皮膚科学的起源、全身性疾患起源、神経学的起源、心因性起源、混合性起源、または他の起源からなる群より選択される起源の疾患として分類される。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、皮膚の神経性炎症、例えば結節性痒疹、アトピー性皮膚炎、火傷そう痒症、火傷、創傷治癒等に伴うそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。いくつかの他の実施形態において、本発明の方法は、P物質レベルが上昇する神経性炎症に伴うそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。いくつかのさらに他の実施形態において、本発明の方法は、P物質レベルの上昇に伴うそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1もしくは複数の関連するまたは関連しない状態に伴うそう痒状態に罹患している対象の治療に用いられる。例えば、上記そう痒状態は、水原性そう痒症、アトピー性皮膚炎、特発性そう痒症、慢性単純性苔癬、結節性痒疹、乾癬、及び疥癬を含む皮膚科学的状態に伴うものであってよい。別の例において、上記そう痒状態は、がん関連そう痒症、化学療法誘発性そう痒症、HIVプロテアーゼ阻害剤誘発性そう痒症、ホジキンリンパ腫関連そう痒症、真性多血症等を含む、血液学的または腫瘍学的状態に伴うものであってよい。別の例において、上記そう痒状態は、胆汁うっ滞性そう痒症、尿毒症性そう痒症等を含む代謝性疾患に伴うものであってよい。さらに別の例において、上記そう痒状態は、腕橈骨筋そう痒症、火傷誘発性そう痒症、神経因性そう痒症、モルヒネ誘発性そう痒症、多発性硬化症関連そう痒症、帯状疱疹後そう痒症、精神医学的原因に伴うそう痒症等を含む、疼痛の状態または神経学的状態に伴うものであってよい。
一実施形態において、本発明の方法は尿毒症性そう痒症の治療に用いられる。別の実施形態において、本発明の方法は結節性痒疹の治療に用いられる。さらに別の実施形態において、本発明の方法は人間の治療に用いられる。さらに別の実施形態において、本発明の方法は人間以外の動物の治療に用いられる。
調製
本発明の化合物の調製に用いられる出発物質、すなわち、式(I)の本化合物の合成前駆体化合物の種々の構造上の部分集合及び種は、多くの場合公知の化合物であり、または文献に記載された公知の方法によって合成することができ、または米国ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich Corporation及びその子会社であるFluka及びRiedel−de Haen、それらの他の世界中の様々なオフィスなどの当業者に周知の種々の供給源、ならびに、Fisher Scientific、ペンシルベニア州フィラデルフィアのTCI America、カリフォルニア州サンディエゴのChemDiv、カリフォルニア州サンディエゴのChembridge、ロシア国モスクワのAsinex、オランダ国のSPECS/BIOSPECS、英国アクロスのMaybridge、ロシア国のTimTec、カリフォルニア州サウスサンフランシスコのComgenex、及びデラウェア州ニューアークのASDI Biosciencesなどの他の周知の化学品供給会社から市販されている。
有機化学の分野における当業者は、さらなる指示を受けることなく、多くの出発物質の合成及びそれに続く操作を容易に実施することができる、すなわち、多くの所望の操作を実施することは、十分に当業者の領域及び慣行の範囲内であることが認識されるべきものである。これらは、カルボニル化合物のそれらの対応するアルコールへの還元、酸化、アシル化、芳香族置換、求電子的及び求核的の両方のエーテル化、エステル化、ケン化、ニトロ化、水素化、還元的アミノ化等を含む。これらの操作は、March’s Advanced Organic Chemistry (3d Edition, 1985, Wiley−Interscience, New York), Feiser and Feiser’s Reagents for Organic Synthesis,及びMethoden der Organischen Chemie (Houben−Weyl)の種々の巻及び版などの標準的な教科書で議論されている。様々に置換されたヘテロ環式環、ヘテロアリール環、及びアリール環(Ar、hAr1、及び/またはhAr2の前駆体)を含む出発物質の多くの一般的な調製方法がMethoden der Organischen Chemie (Houben−Weyl)に記載され、その種々の巻及び版がシュトゥットガルトのGeorg Thieme Verlagから入手可能である。上記の論文の全開示は、有機化合物及びそれらの前駆体の合成方法に関するそれらの教示に関して、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
当業者はまた、特定の反応は、当該分子中の他の官能基を遮蔽または保護し、そのようにして任意の望ましからざる副反応を回避し、及び/または上記反応の収率を増加させる場合に、最良の状態で実施されることも容易に理解しよう。多くの場合、当業者は、高い収量を得るために、または望ましからざる反応を回避するために保護基を利用する。これらの反応は文献中に記載され、これらも当業者の領域の範囲内である。これらの操作の多くの例が、例えば、T. Greene and P. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, 3r Ed., John Wiley & Sons (1999)に記載されている。
本発明の化合物を調製するための例示的な合成方法を以下のスキーム1に図解する。該スキームにおいては、化合物1を6として識別し、化合物2をラクトン5として識別する。
ノルオキシモルホン塩酸塩(2)の合成:磁気撹拌子を備えた5の別個のCEM製10mLマイクロ波反応容器に、それぞれナロキソン塩酸塩1(500mg、1.4mmol)、続いて2:1v/vの水/1,4−ジオキサン混合物(6.0mL)を入れた。ウィルキンソン触媒(67mg、0.07mmol)を上記容器に添加し、この反応混合物に窒素ガスを室温で10分間バブリングした。次いでこれらの反応容器を密閉し、CEM Discover卓上マイクロ波反応器中で順次、撹拌しながら150℃に1時間加熱した。次いでこれらの容器を室温に冷却し、セライトの短い充填層を通すろ過によって不溶物を除去した。次いで一つにまとめたろ液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮乾固し、生成物であるノルオキシモルホン(2、3.25g、収率99%)を塩酸塩として得て、これをさらに精製することなく使用した。
ブテノライド中間体(3)の合成:磁気撹拌器を備えた250mLの丸底フラスコを窒素雰囲気下に置き、ノルオキシモルホンHCl 2(1.502g、4.65mmol)、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(150mL)を入れた。次いで固体の重炭酸ナトリウム(1.95g、23.2mmol)を上記反応フラスコに一度に添加した。この混合物に、4−ブロモメチル−2,5−ジヒドロフラン−2−オン(0.329g、1.86mmol)をシリンジによる滴下の形態で添加した。この臭化物の添加が完了したところで、この反応混合物を70℃に加熱し、この温度で激しく撹拌した。4時間の間に、この反応混合物に追加の4−ブロモメチル−2,5−ジヒドロフラン−2−オン(0.329g、1.86mmol)を2回添加し、合計5.58mmol(1.2モル当量)の上記臭化物求電子試薬を加えた。70℃での合計4時間の撹拌後、この反応混合物を周囲温度に冷却し、クロロホルム(250mL)で希釈した。得られた溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄した。次いで、有機分を水(250mL)及び飽和塩化リチウム水溶液(2×250mL)で逐次洗浄した。次にこの有機抽出液を硫酸ナトリウム上で脱水し、ロータリーエバポレータを用いて濃縮乾固した。得られた残渣を、120グラムのIscoシリカゲルカラムを用いた順相クロマトグラフィーにより精製した。このカラムをジクロロメタン(A)及びジクロロメタン/メタノールの95:5v/v溶液(B)により、45分間にわたる0〜60%の勾配で溶離させて、多少の残留N,N−ジメチルホルムアミドを伴う粗生成物(3)からなる琥珀色の油状物(1.46g)を得た。この物質をさらに精製することなく次のステップに用いた。
ケト−ラクトン中間体(4)の合成:磁気撹拌器、水素導入口、窒素導入口及び減圧アダプタを備えた250mLの三つ口丸底フラスコを窒素雰囲気下に置き、次いで炭素担持5%パラジウム(500mg)を入れた。次に、この反応器にブテノライド中間体3(約1.5g、3.9mmol)の3:1v/v エタノール/テトラヒドロフラン(100mL)溶液を入れた。この反応容器に対して、減圧パージ及び窒素の再充填を3回行った。次いで、この容器に対して、減圧パージ及び水素(1気圧)の再充填を3回行った。次に、この反応混合物を水素雰囲気下(バルーン圧)で96時間激しく撹拌し、その時点で水素源を取外し、反応容器を窒素雰囲気下に置いた。次いで、反応内容物をセライトの短いパッドを通してろ過し、ろ過ケーキをジクロロメタンで手短に洗浄した。ロータリーエバポレータを用いてろ液を濃縮乾固して、512mg(収率35%)の粗生成物を得た。d4−メタノール中で得た粗生成物の1H NMRスペクトルは、2種のジアステレオマーの混合物として観測された、指定された構造と定性的に一致した。上記ブテノライド出発物質のα−メチンに相当する6.25ppmのブロードなシングレットの消失が、反応の進行を監視するために用いた特徴的なNMR上の特性であった。MS (ESI) m/z 386 [M + H+]。
ラクトン(5)の合成:磁気撹拌器を備えた40mLのシンチレーションバイアルを窒素雰囲気下に置き、次いで酢酸(6.0mL)に溶解したケト−ラクトン4(500mg、1.3mmol)の溶液を入れた。この反応混合物を10℃に冷却し、次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(820mg、3.9mmol)を固体として四等分して添加した。この反応混合物を10℃で90分間激しく撹拌した。次いでアセトン(6.0mL)を加え、冷浴を外した。撹拌をさらに2時間継続し、その間に混合物を室温に平衡化させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を酢酸エチル(30mL)と水(30mL)との間で分配させた。次いで、固体の炭酸ナトリウムを、激しく撹拌中の二相混合物に9〜10のpHが観測されるまで添加した。次に層を分離し、追加の酢酸エチル(3×30mL)で水相を抽出した。一つにまとめた有機抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して粗製残渣を得た。この得られた残渣を120グラムのIsco Gold RediSep R
fシリカゲルカラムを用いた順相クロマトグラフィーにより精製した。このカラムをジクロロメタン(A)及びジクロロメタン/メタノールの95:5v/v溶液(B)により、30分間にわたる0〜60%の勾配、さらに60%のBにおける10分間の保持で溶離させ、アセトニトリル水溶液から凍結乾燥させた後、ラクトン5(182mg、収率35%)を白色粉末として得た。
化合物1の合成:磁気撹拌器を備えた40mLのシンチレーションバイアルに、ラクトン5(150mg、0.39mmol)、続いてテトラヒドロフラン(4.0mL)を入れた。撹拌中の上記混合物に1M水酸化リチウム水溶液(1.16mL、1.2mmol)を添加し、この反応混合物を室温で4時間撹拌した。次いで、揮発性の有機分を減圧下で除去し、得られた水溶液をさらに水(2mL)で希釈した。次に、pHが5〜6になるまで0.2M酢酸/酢酸カリウム緩衝水溶液を加え、得られた水溶液を、セライトを予め充填した装填用カートリッジに移した。次いで、吸着した化合物1の水溶液が入った上記カートリッジを、100グラムのIsco Gold RediSep R
f C18カラムに取り付けた。このカラムを10mM酢酸アンモニウム水溶液(A)及び10mM酢酸アンモニウムのメタノール溶液(B)により、22分間にわたる0〜45%勾配、さらに45%のBにおける5分間の保持で溶離させて、残留酢酸アンモニウムで汚染された暗色の半固体として化合物1(179mg)を得た。次いで、この物質を最少量の水に再溶解し、繰り返し凍結乾燥を行った。凍結乾燥過程を
1H NMRによって定期的に分析し、酢酸塩の共鳴(s,1.90ppm)を積分して、化合物1のプロトンに対して<0.25である値が得られるまで該過程を継続した。この規格を満たすために、凍結乾燥は合計で約7日間を要した。徹底的に凍結乾燥した化合物1は、サラサラしたオフホワイトの外観であり、2種のジアステレオマーの混合物として得られた。個々のジアステレオマーの分析試料を得るために、Isco Gold RediSep R
f C18カラムを用いて、この混合物の少量の試料の分割を行った。最初に溶離する化合物1のジアステレオマー:
2番目に溶離する化合物1のジアステレオマー:
限定するものとして解釈されるべきではない以下のさらなる実施例によって、本発明をさらに例証する。当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を行って、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、なおも同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識する必要がある。
実施例1
乱用傾向受容体結合スクリーニング
ナルブフィン及び本発明の化合物1及び既知のナルブフィン代謝産物であるナルブフィン−3−ベータ−D−グルクロニド(以下の検討において、場合によりM5と称する。)の、乱用の可能性に関連する脳受容体に対する結合を、イン・ビトロ結合親和性スクリーニングにおいて評価した。上記乱用傾向のスクリーニングは、FDA Draft guidance on Assessment of Abuse Potential of Drugs, January 2010で推奨されるドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、アセチルコリン、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)、カンナビノイド及びオピオイド神経伝達物質系に関係する44の標的(依存性チャネルシステム上の受容体、輸送体)を含んでいた。
スクリーニングの検討は、ナルブフィンについては10,000nM、化合物1及びM5については25,000nMで実施し、これらは、血液透析(HD)を必要とする対象において試験した最高臨床用量において観測された平均Cmax濃度の43倍、1.6倍、及び2.4倍に相当する。
化合物の結合は、各標的に特異的な放射性標識リガンドの結合の阻害%として算出した。
ナルブフィンはμ−、κ−及びδ−オピオイド受容体に対して顕著な結合を示した(95〜100%阻害)。化合物1はμ−オピオイド受容体に対する親和性(92%)のみを示した一方、代謝産物M5はμ−及びκ−オピオイド受容体に対する親和性(94及び78%)を有していた。化合物1またはM5はいずれもδ−オピオイド受容体に対して結合しない(<16%)(表1)。
(表1)オピオイド受容体への結合の検討
1 CHO中で発現させたクローン化ヒトオピオイド受容体;
2 HEK細胞中で発現させたラットオピオイド受容体;
3 [
3H]DADLE; μ−もしくはκ−受容体における化合物1またはM5のKi/ナルブフィンのKi
オピオイドアゴニスト放射性リガンド: DAMGO: ([D−Ala2,N−MePhe4,Gly−ol]−エンケファリン)及びDPDPE: D−ペニシラミン(2,5)−エンケファリン
上記オピオイド受容体への結合を除いて、ナルブフィン、その既知の代謝産物M5、及び化合物1は、他の非オピオイド受容体全てに対して、弱い親和性を示した〜親和性を示さなかった(<34%阻害)(表2)。
50%より高い阻害または刺激を示す結果は、被験化合物の有意な効果を表すと考えられる。
IC
50の測定
(表3)δ−オピオイド受容体アゴニストリガンドに対するナルブフィンのIC
50の測定
(表4)κ−オピオイド受容体アゴニストリガンドに対する被験化合物のIC
50の測定
{}:当該の繰り返し測定は計算から除外した。
異常値:データが、当該データ群に関する値の予想範囲外であり、計算から除外した。
(表5)μ−オピオイド受容体アゴニストリガンドに対する被験化合物のIC
50の測定
オピオイド受容体相互作用の検討
さらに、イン・ビトロでの結合及び機能的オピオイド受容体の相互作用の検討を実施して、ヒト胎児腎(HEK)細胞株において発現させたクローン化マウスμ−オピオイド受容体、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において発現させたクローン化ヒトδ−及びκ−オピオイド受容体において、ナルブフィン、その既知の代謝産物M5、及び化合物1を横並びで特徴付けした。
ナルブフィンは、δ−オピオイド受容体亜型と比較して、μ−及びκ−オピオイド受容体亜型に対する選択性を示した(表1)。これらの単離された細胞系におけるオピオイド受容体に対する結合親和性(Ki)は、δ−オピオイド受容体に比較して、μ−及びκ−オピオイドに対してほぼ100〜200倍高い選択性を示した。μ−オピオイド受容体に対する親和性はκ−オピオイドよりも2.6倍高かった。
細胞機能アッセイにおいて、ナルブフィンは、300nM(HDの対象における血漿Cmax近傍)において>90%に達する完全κ−アゴニスト(IC50=8nM)であり、71%の最大阻害を有する部分的μ−アゴニスト/アンタゴニスト(IC50=4nM)であり、且つ弱い部分的δ−アゴニスト(Cmaxよりも約42倍高い10,000nMで28%)であった。ナルブフィンは、30,000nMの濃度までいずれのオピオイド受容体にも拮抗しなかった。
化合物1及び既知のナルブフィン代謝産物M5は、ナルブフィンと比較してオピオイド受容体に対して顕著に低い結合親和性を示した(約5分の1〜13,611分の1の低さ)(表1)。上記細胞機能アッセイでは、化合物1及びM5の両方が弱い部分的μ−及び/またはκ−アゴニストであり(ナルブフィンよりも1,600分の1〜19,000分の1の範囲で低い)、δ−受容体では活性を示さなかった。化合物1は、HD患者におけるCmax(約16,000nM)をほぼ4倍上回る濃度において部分的μ−アゴニスト(EC50=78,000nM、61%)である。M5はまた、HD患者におけるそのCmax値(10,400nM)よりもそれぞれ3倍及び1.3倍高い濃度において、弱い部分的μ−アゴニスト(EC50=33,000nM、60%)且つκ−アゴニスト(EC50=13,000nM、74%)でもある(表6)。
結論として、ナルブフィンは、κ−及びμ−受容体に対して高い結合親和性を有するκ−アゴニスト且つ部分的μ−アゴニスト/アンタゴニストであり、弱い部分的δ−アゴニストである。化合物1及びM5は共に、それらの血漿Cmaxを超える濃度において、低結合性かつ弱い部分的μ−及び/またはκ−アゴニストである。
(表6)実施したオピオイドの細胞機能アッセイ
1 CHO中で発現させたクローン化ヒトオピオイド受容体;
2 HEK細胞中で発現させたラット マウスオピオイド受容体; ND: 測定せず; NC: 最も高い試験濃度において<25%の阻害であったことから、IC50が算出不可であった; NC-AGO(アゴニスト): 分析対象物がアゴニスト様の特性を示し、見掛け上阻害となったことから、IC50が算出不可であった; CTOP: ソマトスタチン類似体; DAMGO: ([D-Ala2, N-MePhe4, Gly-ol]-エンケファリン); DPDPE: D-ペニシラミン(2,5)-エンケファリン; Nor-BNI ノルビナルトルフィミン。
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が具体的且つ個別に参照により援用されると示されているのと同様の程度に、参照により援用される。
上述の詳細な説明は、理解を明確にするために記載されたものに過ぎず、当業者には改変は自明であることから、これに基づく不必要な限定は了解されるべきものではない。本明細書で提供される情報のいずれかが、本出願で権利請求される発明の先行技術であるかもしくはこれに関連していること、または具体的にもしくは暗示的に参照されている刊行物が先行技術であるということは、これを認めるものではない。
本発明者らが理解している本発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の実施形態が本明細書に記載される。当業者には、上述の説明を読んだ際に、これらの好ましい実施形態の変化形が明らかになり得る。本発明者らは、当業者がかかる変化形を必要に応じて用いることを予期し、且つ本発明者らは、本発明を本明細書に具体的に記載されるものとは別の形態で実施することを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び均等物を包含する。さらに、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変化形における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。