以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1、図2は、実施形態1に係る圧力調整器の概略構成を表す断面図である。図1は、入口が低い圧力である状態を表し、図2は、入口が高い圧力である状態を表している。図3は、実施形態1に係る圧力調整器の性能曲線を表す線図である。
図1、図2に示す圧力調整器1は、ガス容器100の中の高い圧力のガスをガス使用機器102の使用に適した低い圧力に減圧して供給するためのガス供給機器であり、ガスの圧力の変動を抑えて安定したガス供給を実現するためのものである。圧力調整器1は、入口側に高圧のガスを貯留するボンベ等のガス容器100が接続され、出口側にガスを燃焼する燃焼器(コンロ)等のガス使用機器102が接続される。
圧力調整器1は、ハウジング2と、入口部3と、出口部4と、減圧室5と、ノズル部6と、弁体7と、調圧機構8とを備える。本実施形態の圧力調整器1は、一例として、プロパンガス等を主成分としたLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)を調圧する単段式調整器であるものとして説明するがこれに限られない。
ハウジング2は、圧力調整器1を構成する各部が設けられる外殻部材である。ここでは、ハウジング2は、第1ボディー21と、第2ボディー22と、キャップ23とを含んで構成される。ハウジング2は、第1ボディー21とキャップ23との間に第2ボディー22が位置する位置関係で、第1ボディー21、第2ボディー22、及び、キャップ23がボルト等によって相互に締結され一体化される。ハウジング2は、内部が中空状に形成され、当該中空状の内部に各種の機能を有する空間部が区画される。ハウジング2は、第1ボディー21と第2ボディー22とによって略円柱状の第1空間部24が区画され、第2ボディー22とキャップ23とによって略円柱状の第2空間部25が区画される。第1空間部24は、減圧室5、調圧機構8等が設けられる空間部であり、相対的に大径の空間部として形成される。第2空間部25は、後述する入口圧力相殺機構9等が設けられる空間部であり、相対的に小径の空間部として形成される。また、ハウジング2は、第2ボディー22の内部に略円柱形状の連通空間部26が形成される。連通空間部26は、第1空間部24と第2空間部25との間に位置し当該第1空間部24と当該第2空間部25とを連通する空間部である。連通空間部26は、第2空間部25より小径の空間部として形成される。第1空間部24と第2空間部25と連通空間部26とは、ほぼ同軸上に形成され、すなわち、略円柱状の中心軸線Xがほぼ一致するように形成される。
入口部3は、ガスが流入する入口空間部であり、ここでは、第1ボディー21に形成される。入口部3は、中心軸線Xと交差する方向(ここでは直交する方向)に沿って略円柱状の空間部として形成される。入口部3は、一端部が第1ボディー21の外側に開口し、当該開口側に種々の配管、インレットパイプ103等を介してガス容器100が接続され、他端部が後述の減圧室5に接続される。入口部3は、種々の配管、インレットパイプ103等を介してガス容器100に貯留されたガスが流入する。
出口部4は、入口部3から流入したガスが流出する出口空間部であり、ここでは、第1ボディー21に形成される。出口部4は、中心軸線Xと交差する方向(ここでは直交する方向)に沿って略円柱状の空間部として形成される。出口部4は、中心軸線Xと直交する方向に沿って入口部3と対向し、当該入口部3と同軸で形成される。出口部4は、一端部が第1ボディー21の外側に開口し、当該開口側に種々の配管等を介してガス使用機器102が接続され、他端部に後述の減圧室5が接続される。出口部4は、第1ボディー21において入口部3の開口とは反対側に開口する。出口部4は、後述の減圧室5で減圧されたガスを種々の配管等を介してガス使用機器102側に流出させる。
減圧室5は、入口部3と出口部4との間に設けられ、当該入口部3、及び、当該出口部4と連通する調圧空間部である。減圧室5は、入口部3から流入したガスを後述する調圧機構8の作用によって減圧して出口部4から排出可能である。減圧室5は、第1ボディー21の内部に略円柱状の空間部として形成され、上述の第1空間部24の一部を構成する。減圧室5は、中心軸線Xに沿った方向(以下、「軸方向」という場合がある。)の一方側が閉塞し、他方側が開口している。減圧室5は、閉塞側の端部に入口部3と出口部4とが連通される。
ノズル部6は、入口部3と減圧室5との接続部分に設けられる。ノズル部6は、減圧室5内に設けられる。ノズル部6は、略円筒状に形成された部材であり、減圧室5内に入口部3、出口部4と同軸で設けられる。ノズル部6は、入口部3に位置する入口側円筒部61と、出口部4に位置する出口側円筒部62とを含み、これらが一体で形成される。ノズル部6は、入口側円筒部61の内径、外径が相対的に小さく形成され、出口側円筒部62の内径、外径が相対的に大きく形成される。ノズル部6は、入口側円筒部61の外周面にリング状のシール部材63が装着され、シール部材63によって第1ボディー21において入口部3を形成する壁面の内周面と当該入口側円筒部61の外周面との間を密閉し、入口部3側の高圧側空間部と減圧室5側の低圧側空間部とを気密に区画する。入口側円筒部61は、中心の中空部が入口部3と減圧室5とを接続する流入通路64として形成される。出口側円筒部62は、中心の中空部が後述の弁体7等を開閉動作可能に収容する弁空間部65として形成される。当該弁空間部65は、減圧室5に属する空間部である。流入通路64は、弁空間部65側、言い換えれば、減圧室5側が当該減圧室5に開口し流入口66を形成する。つまり、減圧室5は、このノズル部6の流入口66を介して入口部3と連通する。そして、ノズル部6は、入口側円筒部61の弁空間部65側、言い換えれば、減圧室5側の端面において、流入口66の周りに弁座67が形成される。
弁体7は、流入口66の減圧室5側に設けられる。ここでは、弁体7は、減圧室5の一部を構成する弁空間部65内において、弁座67と対向し接触可能な位置に設けられる。弁体7は、閉止位置と開放位置との間で移動可能である。閉止位置とは、当該弁体7が弁座67と当接し流入口66を閉止する位置である。開放位置とは、当該弁体7が弁座67から離れ、流入口66から減圧室5(弁空間部65)側に離間した位置である。弁体7は、後述する調圧機構8に支持され、ノズル部6の中心軸線に沿って、閉止位置と開放位置とに移動可能である。弁体7は、閉止位置と開放位置との間で移動することで、流入口66の開度(以下、「弁開度」という場合がある。)を調整可能である。弁体7は、後述する調圧機構8によって減圧室5内のガスの圧力に応じて弁開度が調整され、これにより、調圧弁として機能する。
調圧機構8は、減圧室5内のガスの圧力に応じて弁体7を閉止位置と開放位置との間で移動させることで流入口66の開度を調整し当該減圧室5内のガスの圧力を調圧する弁駆動機構である。調圧機構8は、第1空間部24内に設けられる。本実施形態の調圧機構8は、大気圧室81と、ダイヤフラム82と、作動桿83と、レバー84と、ピストン85と、調圧弾性体としての調整スプリング86と、支持板87と、保持部材88とを含んで構成される。
大気圧室81は、大気圧が導入される大気開放空間部である。大気圧室81は、第2ボディー22の内部に略円柱状の空間部として形成され、上述の第1空間部24の一部を構成する。大気圧室81は、軸方向の一方側が開口し当該開口がダイヤフラム82を隔てて減圧室5の開口と対向し、他方側が連通空間部26を介して第2空間部25と連通される。大気圧室81は、第2ボディー22に形成され外部に開口する大気開放口81aを介して大気に開放されており、当該大気開放口81aを介して内部に大気圧が導入される。
ダイヤフラム82は、減圧室5に面して設けられ減圧室5内のガスの圧力変化に応じて変位するものである。ダイヤフラム82は、円環板状に形成され、外周側の縁部が第1ボディー21と第2ボディー22との間に挟持され保持される。ダイヤフラム82は、減圧室5と大気圧室81とを区画する隔壁として機能する。これにより、第1ボディー21と第2ボディー22とによって区画された第1空間部24は、ダイヤフラム82を挟んで第1ボディー21側に減圧室5が区画され、第2ボディー22側に大気圧室81が区画される。ダイヤフラム82は、減圧室5内の圧力(ガスの圧力)に応じて変形し、すなわち、減圧室5内の圧力変化に応じて変形し軸方向に変位する。ダイヤフラム82は、作動桿83、レバー84、ピストン85等を介して弁体7と連結される。
作動桿83、レバー84、及び、ピストン85は、ダイヤフラム82と弁体7とを連結しダイヤフラム82の変位に応じて弁体7を開放位置との間で移動させる連結部材として機能する。第1連結部材である作動桿83は、ダイヤフラム82の中央部に軸方向に沿ってダイヤフラム82を貫通して連結される。第2連結部材であるレバー84は、湾曲したアーム状の部材であり、一端側に作動桿83の減圧室5側の端部が相対回転可能に連結され、他端側にピストン85が相対回転可能に連結される。また、レバー84は、作動桿83との連結部分とピストン85との連結部分との間であってピストン85との連結部分と隣接する部位がレバー支持軸84aを回動中心として回動可能に支持される。レバー支持軸84aは、第1ボディー21の壁面に固定されている。ピストン85は、略円柱状に形成され、上述のように一端側にレバー84が連結され、他端側(流入口66側)に上述の弁体7が固定される。ピストン85は、出口側円筒部62の内周側の弁空間部65内に配置され、ノズル部6の中心軸線に沿って、弁体7と共に移動可能である。レバー84は、出口側円筒部62に形成された貫通孔62aを介して出口側円筒部62の壁部を貫通し作動桿83とピストン85とを連結する。作動桿83、レバー84、及び、ピストン85は、ダイヤフラム82の変位に伴った作動桿83の軸方向に沿った直線運動を、レバー84の回動の作用によって、ノズル部6の中心軸線に沿ったピストン85の直線運動に変換する運動方向変換機構(リンク機構)を構成する。
調整スプリング86は、ダイヤフラム82を減圧室5側に付勢する弾性体である。調整スプリング86は、例えば、圧縮コイルバネによって構成され、大気圧室81内に設けられる。ここでは、調整スプリング86は、大気圧室81内に設けられた支持板87と保持部材88との間に保持される。調整スプリング86は、ダイヤフラム82と同軸上に設けられ、すなわち、略円筒状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。
支持板87は、円環板状に形成され、ダイヤフラム82の大気圧室81側の面に固定される。支持板87は、ダイヤフラム82と同軸上に設けられ、すなわち、略円筒状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。支持板87は、ダイヤフラム82とは反対側の面、すなわち、大気圧室81側の面に円環状の支持突起部87aが形成されている。支持板87は、この支持突起部87aの内側に調整スプリング86の軸方向の一方の端部を支持する。
保持部材88は、ダイヤフラム82との間に調整スプリング86を保持する部材である。保持部材88は、円板状に形成され、大気圧室81内に設けられる。保持部材88は、ダイヤフラム82、支持板87と同軸上に設けられ、すなわち、略円筒状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。保持部材88は、大気圧室81内において、調整スプリング86の軸方向の他方の端部に当接して設けられ、ダイヤフラム82に固定された支持板87との間に調整スプリング86を保持する。
なお、上述した作動桿83は、大気圧室81内に設けられた圧縮コイルバネ89と協動して安全弁としても機能する。安全弁としての作動桿83は、減圧室5内のガスの圧力が規定圧力になった場合に、ガスの一部を大気に放出して一定以下の圧力に保つ。
上記のように構成される圧力調整器1は、調圧機構8の作用によって、減圧室5内のガスの圧力に応じて弁体7を閉止位置と開放位置との間で移動させることで流入口66の開度を調整し当該減圧室5内のガスの圧力を調圧する。圧力調整器1は、減圧室5内のガスの圧力が変化することで、大気圧室81内の調整スプリング86による付勢力との関係でダイヤフラム82が軸方向に撓みつつ変位し、この変位に伴って作動桿83、レバー84を介してピストン85が弁体7と共に移動し流入口66を開閉させる。これにより、圧力調整器1は、減圧室5内の圧力が所定の圧力範囲内に保たれる。
より詳細には、圧力調整器1は、まず、ガス容器100のバルブが開かれると、ガス容器100からの高圧ガスが入口部3、流入口66を介して減圧室5に流入する。このとき、圧力調整器1は、ガス使用機器102でのガスの使用が開始されておらず、出口部4の下流側でガスの流通が遮断されていると、減圧室5内のガスの圧力が上昇する。そして、圧力調整器1は、減圧室5内のガスの圧力が上昇すると、ダイヤフラム82を減圧室5側に押圧している調整スプリング86の付勢力に打ち勝って、ダイヤフラム82が軸方向に沿って大気圧室81側に突出する方向に変位する。そして、圧力調整器1は、ダイヤフラム82に連結されている作動桿83、レバー84の作用によって、このダイヤフラム82の大気圧室81側への変位に伴ってピストン85が弁体7と共に流入口66、弁座67に接近する側、すなわち、閉止位置側に移動する。これにより、圧力調整器1は、弁体7の弁開度が減少し、最終的に弁体7が弁座67と当接し流入口66を閉止する。この結果、圧力調整器1は、減圧室5へのガスの流入が停止され、減圧室5の圧力がこれ以上に上昇しない状態となる。このときの減圧室5内のガスの圧力を「閉塞圧力」という場合がある。
圧力調整器1は、ガス使用機器102でのガスの使用が開始され、減圧室5内のガスの出口部4を介した流出が開始されガスの流出量が増加すると、減圧室5内の圧力が相対的に低下する。そして、圧力調整器1は、減圧室5内の圧力に応じて、ダイヤフラム82が軸方向に沿って減圧室5側に突出する方向に変位する。そして、圧力調整器1は、このダイヤフラム82の減圧室5側への変位に伴って作動桿83、レバー84の作用によって、ピストン85が弁体7と共に流入口66、弁座67から離間する側、すなわち、開放位置側に移動し、弁体7の弁開度が増加する。これにより、圧力調整器1は、入口部3から流入口66を介して減圧室5内に流入する高圧のガスの流入量が増加し、減圧室5内の圧力が上昇する。
また、圧力調整器1は、例えば、ガス使用機器102でのガスの使用が減少し、減圧室5内のガスの流出量が減少すると、減圧室5内の圧力が相対的に上昇する。そして、圧力調整器1は、減圧室5内の圧力に応じて、ダイヤフラム82が軸方向に沿って大気圧室81側に突出する方向に変位する。そして、圧力調整器1は、このダイヤフラム82の大気圧室81側への変位に伴って作動桿83、レバー84の作用によって、ピストン85が弁体7と共に流入口66、弁座67に接近する側、すなわち、閉止位置側に移動し、弁体7の弁開度が減少する。これにより、圧力調整器1は、入口部3から流入口66を介して減圧室5内に流入する高圧のガスの流入量が減少し、減圧室5内の圧力が低下する。
このように、圧力調整器1は、減圧室5に対するガスの流出入に応じた減圧室5内のガスの圧力変化に伴ってダイヤフラム82が変位し、このダイヤフラム82の変位に応じて弁体7の弁開度が調整される構造となっている。そして、圧力調整器1は、調整スプリング86の付勢力によってダイヤフラム82を減圧室5側に押圧する力と、減圧室5内のガスの圧力によってダイヤフラム82を大気圧室81側に押圧する力とが同等となる状態で、弁体7の弁開度が定まる。これにより、圧力調整器1は、入口部3のガスの圧力である入口圧力の高低や減圧室5へのガスの流出量の多少によって出口部4のガスの圧力である出口圧力が上下しようとすると、自動的に弁体7の開度が変化し、当該出口圧力がほぼ一定に保たれる。このときの出口圧力を「調整圧力」という場合がある。
そして、本実施形態の圧力調整器1は、さらに、入口圧力相殺機構9を備えることで、出口圧力の更なる安定化を図っている。
ここで、上記のように構成される圧力調整器1は、入口圧力を「P0」、出口圧力を「P1」、流入口66の開口(オリフィス)面積を「S0」、ダイヤフラム82の受圧面積を「S1」、調整スプリング86による荷重(付勢力)を「F」、作動桿83、レバー84、及び、ピストン85によって構成される運動方向変換機構のレバー比(作動桿83の移動量とピストン85の移動量との比)を「R」とした場合、調整スプリング86による荷重Fは、下記の数式(1)によって表すことができる。
F=S1・P1−S0・(P0−P1)/R ・・・ (1)
そして、出口圧力P1は、上記の数式(1)を変形することで、下記の数式(2)によって表すことができる。圧力調整器1は、当該数式(2)に基づいて、圧力バランスが保たれている。
P1=[F+S0・(P0−P1)/R]/S1 ・・・ (2)
圧力調整器1は、仮に入口圧力相殺機構9を備えていなかった場合、数式(2)からも明らかなように、入口圧力P0が所定の変動範囲で変動すると、入口圧力P0の変動に応じて入口圧力P0が低くなると出口圧力P1も低くなり、入口圧力P0が高くなると出口圧力P1も高くなる傾向にある。ここで、入口圧力P0の変動範囲は、一例として、『液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の例示基準 27.最大消費数量を供給しうる調整器及び消費する液化石油ガスに適合した調整器』の記載では、単段式調整器においては、0.07MPa以上1.56MPa以下の範囲に規定されている。圧力調整器1において、ガスを供給できる能力は、基本的には、流入口66の開口(オリフィス)面積S0の大きさで定まるが、所定の変動範囲での入口圧力P0の変動を考慮し、出口圧力P1の変動を所定の許容範囲内に安定化させるためには、ダイヤフラム82の受圧面積S1の大型化、ひいては装置全体の大型化をまねくおそれがある。ここで、出口圧力P1の許容範囲は、一例として、『液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の例示基準 27.最大消費数量を供給しうる調整器及び消費する液化石油ガスに適合した調整器』の記載では、単段式調整器においては、調整圧力が2.3kPa以上3.3kPa以下の範囲で、かつ、閉塞圧力が3.5kPa以下の範囲に規定されている。
これに対して、本実施形態の圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9を備えることで、入口圧力帰還式の圧力調整器を構成し、これにより、装置全体の大型化を抑制しつつ、出口圧力P1の更なる安定化を図っている。以下、入口圧力相殺機構9の各構成について、詳細に説明する。
入口圧力相殺機構9は、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を作用させて当該入口圧力P0の変動に伴った出口圧力P1の変動を抑制するものであり、主要な部分が第2空間部25に設けられる。
具体的には、入口圧力相殺機構9は、押圧部材としての相殺ピストン91と、相殺弾性体としての相殺スプリング92と、保持板93と、相殺気圧室94と、導入通路95とを有する。
相殺ピストン91は、調整スプリング86をダイヤフラム82側に押圧可能な部材である。ここでは、相殺ピストン91は、保持部材88を介して調整スプリング86を押圧する。相殺ピストン91は、保持部材88の調整スプリング86側とは反対側の面に当接し保持部材88と共に調整スプリング86をダイヤフラム82側に押圧可能である。具体的には、相殺ピストン91は、略円柱状に形成され、ダイヤフラム82、調整スプリング86等と同軸上に設けられ、すなわち、略円筒状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。相殺ピストン91は、第2空間部25と連通空間部26と第1空間部24とに渡って設けられる。ここでは、相殺ピストン91は、相対的に大径に形成される大径部96と、相対的に小径に形成される小径部97とを含み、これらが一体で形成される。相殺ピストン91は、小径部97が連通空間部26に挿入され第1空間部24の大気圧室81内に位置し、大径部96が第2空間部25内に位置するような位置関係で第2ボディー22に設けられる。相殺ピストン91は、小径部97の先端部が保持部材88の調整スプリング86側とは反対側の面に当接し嵌合している。
相殺スプリング92は、相殺ピストン91を保持部材88側に付勢する弾性体である。相殺スプリング92は、例えば、圧縮コイルバネによって構成され、第2空間部25内に設けられる。ここでは、相殺スプリング92は、第2空間部25内に設けられた相殺ピストン91の大径部96と保持板93との間に保持される。相殺スプリング92は、軸方向の一方の端部が大径部96と当接する。相殺スプリング92は、ダイヤフラム82と同軸上に設けられ、すなわち、略円筒状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。
保持板93は、円板状に形成され、第2空間部25内に設けられる。保持板93は、相殺ピストン91と同軸上に設けられ、すなわち、円板状の中心軸線Xがほぼ一致するように設けられる。保持板93は、第2空間部25内において、相殺スプリング92の軸方向の他方の端部に当接して設けられ、大径部96との間に相殺スプリング92を保持する。
相殺気圧室94は、入口部3と連通し当該入口部3内のガスが導入され、当該導入されたガスの圧力によって相殺ピストン91を相殺スプリング92による付勢の方向とは反対方向、すなわち、調整スプリング86から離間する側に押圧する空間部である。相殺気圧室94は、第2空間部25内において、大径部96の小径部97側の空間部に区画される。つまり、相殺気圧室94は、第2ボディー22において第2空間部25を形成する壁面と、大径部96の小径部97側の端面とによって区画される。ここでは、相殺ピストン91は、大径部96の外周面にリング状のシール部材98が装着され、小径部97の外周面にリング状のシール部材99が装着される。シール部材98、99は、第2ボディー22において第2空間部25、連通空間部26を形成する壁面の内周面と大径部96、小径部97の外周面との間を密閉し、相殺気圧室94を気密に区画する。
導入通路95は、入口部3と相殺気圧室94とを連通し、入口部3内のガスを相殺気圧室94に導入するガス通路である。導入通路95は、第1ボディー21と第2ボディー22とに渡ってガスが流通可能な空間部として形成される。
上記のように構成される入口圧力相殺機構9は、相殺スプリング92の付勢力によって相殺ピストン91を保持部材88、調整スプリング86側に押圧する力と、相殺気圧室94内のガスの圧力、すなわち、入口圧力P0によって相殺ピストン91を保持部材88、調整スプリング86から離間する側に押圧する力とのバランスに応じて、調整スプリング86による荷重(「セット荷重」とも呼ばれる場合がある。)Fを可変とすることができる。
すなわち、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が変動すると、これに応じて相殺ピストン91の受圧面が受ける力が比例的に変化し、相殺スプリング92の付勢力による押圧力と、相殺気圧室94内のガスの入口圧力P0による押圧力との均衡がとれる位置まで、相殺ピストン91が第2空間部25内を軸方向に沿って変位する。これにより、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0に応じて調整スプリング86による荷重Fを調節することができる。
例えば、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に小さいほど相殺ピストン91が調整スプリング86側に近接した側に移動し当該調整スプリング86を押圧し圧縮することで、調整スプリング86による荷重Fが相対的に大きくなる。そして、入口圧力相殺機構9は、図1に示すように、入口圧力P0が予め規定される変動範囲の下限(例えば、0.07MPa)となると、相殺ピストン91が最も調整スプリング86側に接近した位置となり、調整スプリング86による荷重Fが最大となる。この結果、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に小さくなるほど調整スプリング86による荷重Fを相対的に大きくし調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に大きくすることができる。
一方、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に大きいほど相殺ピストン91が調整スプリング86側から離間した側に移動し当該調整スプリング86を伸長させることで、調整スプリング86による荷重Fが相対的に小さくなる。そして、入口圧力相殺機構9は、図2に示すように、入口圧力P0が予め規定される変動範囲の上限(例えば、1.56MPa)となると、相殺ピストン91が最も調整スプリング86側から離間した位置となり、調整スプリング86による荷重Fが最小となる。この結果、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に大きくなるほど調整スプリング86による荷重Fを相対的に小さくし調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に小さくすることができる。
このようにして、入口圧力相殺機構9は、調整スプリング86による荷重Fを、入口圧力P0の変動分を相殺した荷重とすることができる。これにより、入口圧力相殺機構9は、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺すことができる。言い換えれば、入口圧力相殺機構9は、調整スプリング86による荷重Fを入口圧力P0に応じて可変とすることで、入口圧力P0の変動分を調整スプリング86による荷重Fの変動分によって相殺することができる。
例えば、入口圧力相殺機構9は、減圧室5内のガスの圧力が一定であるものと仮定すると、入口圧力P0が相対的に小さくなるほど調整スプリング86による荷重Fを相対的に大きくすることで、ダイヤフラム82を相対的に減圧室5側に変位させることができる。そして、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に小さくなるほどダイヤフラム82を相対的に減圧室5側に変位させることで、当該入口圧力P0が相対的に小さくなるほどダイヤフラム82から作動桿83、レバー84、ピストン85等を介して弁体7に対して作用させる閉弁方向への力(弁体7が弁座67、流入口66に接近する側への力)を相対的に小さくすることができる。
一方、入口圧力相殺機構9は、減圧室5内のガスの圧力が一定であるものと仮定すると、入口圧力P0が相対的に大きくなるほど調整スプリング86による荷重Fを相対的に小さくすることで、ダイヤフラム82を相対的に大気圧室81側に変位させることができる。そして、入口圧力相殺機構9は、入口圧力P0が相対的に大きくなるほどダイヤフラム82を相対的に大気圧室81側に変位させることで、当該入口圧力P0が相対的に大きくなるほどダイヤフラム82から作動桿83、レバー84、ピストン85等を介して弁体7に対して作用させる閉弁方向への力を相対的に大きくすることができる。
このようにして、入口圧力相殺機構9は、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺することで、当該入口圧力P0の変動に伴った出口圧力P1の変動を抑制することができる。
なお、ダイヤフラム82の受圧面積S1、調整スプリング86のバネ定数、相殺ピストン91の受圧面積、相殺スプリング92のバネ定数等は、許容される装置体格、予め規定される入口圧力P0の変動範囲、及び、出口圧力P1の許容範囲等を考慮して、相互にバランスをとって適宜設定される。
以上で説明した圧力調整器1によれば、ガスが流入する入口部3と流入口66を介して連通すると共に、流入口66から流入したガスが流出する出口部4と連通する減圧室5と、流入口66の減圧室5側に設けられ流入口66を閉止する閉止位置と流入口66から減圧室5側に離間した開放位置との間で移動可能である弁体7と、減圧室5内のガスの圧力に応じて弁体7を閉止位置と開放位置との間で移動させることで流入口66の開度を調整し当該減圧室5内のガスの圧力を調圧する調圧機構8と、弁体7に対して入口部3内のガスの圧力である入口圧力に応じた力を作用させて当該入口圧力の変動に伴った出口部4内のガスの圧力である出口圧力の変動を抑制する入口圧力相殺機構9とを備える。
したがって、圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9によって、入口部3と減圧室5とを連通する流入口66を開閉する弁体7に対して入口圧力に応じた力を作用させて当該入口圧力の変動に伴った出口圧力の変動を抑制することから、出口圧力を安定化することができる。
より詳細には、以上で説明した圧力調整器1によれば、入口圧力相殺機構9は、調整スプリング86をダイヤフラム82側に押圧可能である相殺ピストン91と、相殺ピストン91を調整スプリング86側に付勢する相殺スプリング92と、入口部3と連通し当該入口部3内のガスが導入され、当該導入されたガスの圧力によって相殺ピストン91を相殺スプリング92による付勢の方向とは反対方向に押圧する相殺気圧室94とを有する。したがって、圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9において、相殺ピストン91と、相殺スプリング92と、相殺気圧室94との作用により、入口圧力が相対的に大きくなるほど調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に小さくし、入口圧力が相対的に小さくなるほど調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に大きくすることができる。
さらに、以上で説明した圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9において、入口圧力が相対的に大きくなるほど調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に小さくし、入口圧力が相対的に小さくなるほど調整スプリング86によってダイヤフラム82に付加する荷重を相対的に大きくすることで、入口圧力が相対的に大きくなるほど弁体7に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に大きくなり、当該入口圧力が相対的に小さくなるほど弁体7に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に小さくなるようにすることができる。
さらに、以上で説明した圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9において、入口圧力が相対的に大きくなるほど弁体7に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に大きくなり、当該入口圧力が相対的に小さくなるほど弁体7に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に小さくなることで、弁体7に対して入口圧力に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力の変動を相殺することができる。
そして、以上で説明した圧力調整器1は、入口圧力相殺機構9において、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺することで、図3の性能曲線に示すように、当該入口圧力P0の変動に伴った出口圧力P1の変動を抑制することができる。
ここで、図3は、横軸をガスの流量(kg/h)とし、縦軸を出口圧力(kPa)とし、ガスの流量に対する出口圧力によって性能を表している。また、図3中、線L11は、入口圧力相殺機構9を備えない比較例に係る圧力調整器において入口圧力P0が1.56MPa(予め規定される変動範囲の上限)である場合での流量と出口圧力との関係を表している。線L12は、入口圧力相殺機構9を備えない比較例に係る圧力調整器において入口圧力P0が0.07MPa(予め規定される変動範囲の下限)である場合での流量と出口圧力との関係を表している。線L21は、入口圧力相殺機構9を備える本実施形態に係る圧力調整器1において入口圧力P0が1.56MPa(予め規定される変動範囲の上限)である場合での流量と出口圧力との関係を表している。線L22は、入口圧力相殺機構9を備える本実施形態に係る圧力調整器1において入口圧力P0が0.07MPa(予め規定される変動範囲の下限)である場合での流量と出口圧力との関係を表している。
本実施形態の圧力調整器1は、図3からも明らかなように、入口圧力相殺機構9によって、入口圧力P0に応じて調整スプリング86による荷重Fを調節し、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺することで、出口圧力P1の変動を予め規定される許容範囲(例えば、図3中に点線で示す2.3kPa以上3.3kPa以下の範囲)に対して余裕を持たせた設計とすることができる。これにより、圧力調整器1は、ダイヤフラム82の受圧面積S1の大型化、ひいては装置全体の大型化を抑制した上で、入口圧力P0の変動に対する出口圧力P1の変動幅を抑制し予め規定される許容範囲内で安定化させることができる。例えば、比較例に係る圧力調整器では、入口圧力P0の変動に対する出口圧力P1(線L11、L12等参照)の変動幅が0.8kPa程度であったのに対して、本実施形態の圧力調整器1は、入口圧力P0の変動に対する出口圧力P1(線L21、L22等参照)の変動幅が0.34kPa程度になるように当該出口圧力P1を安定化させることができる。
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る圧力調整器の概略構成を表す断面図である。図5は、変形例に係る圧力調整器の概略構成を表す断面図である。実施形態2に係る圧力調整器は、主に調圧機構、入口圧力相殺機構の構成が実施形態1とは異なる。以下では、上述した実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する。
図4に示す圧力調整器201は、ハウジング202と、入口部203と、出口部204と、減圧室205と、流入口206と、流出口207と、弁体208と、調圧機構209と、入口圧力相殺機構210とを備える。
ハウジング202は、圧力調整器1を構成する各部が設けられる外殻部材である。ここでは、ハウジング202は、略円筒状(パイプ状)に形成され、ガス容器100とガス使用機器102との間の配管に組み込まれる。ハウジング202は、内部が中空状に形成され、当該中空状の内部に各種の機能を有する空間部が区画される。ハウジング202は、内側に形成される隔壁202a、202bによって、入口部203を構成する略円柱状の空間部と、出口部204を構成する略円柱状の空間部と、減圧室205を構成する略円柱状の空間部とが区画される。隔壁202a、202bは、略円柱状に形成されたハウジング202の中心軸線X1と直交する径方向に沿って延在する略円形板状の壁体である。隔壁202a、202bは、中心軸線X1とほぼ同軸上に形成される。隔壁202aは、入口部203を構成する略円柱状の空間部と、減圧室205を構成する略円柱状の空間部とを区画し、隔壁202bは、減圧室205を構成する略円柱状の空間部と、出口部204を構成する略円柱状の空間部とを区画する。本実施形態の調圧機構209、入口圧力相殺機構210は、主たる部分が減圧室205内に設けられる。
入口部203は、ガスが流入する入口空間部であり、ここでは、ハウジング202内の一方側の端部に形成される。入口部203は、中心軸線X1に沿った方向(以下、「軸方向」という場合がある。)の一端部がハウジング202の外側に開口し、当該開口側に種々の配管、インレットパイプ等を介してガス容器100が接続される。入口部203は、軸方向の他端部が隔壁202aによって閉塞されると共に隔壁202aに形成された流入口206を介して減圧室205に接続される。
出口部204は、入口部203から流入したガスが流出する出口空間部であり、ここでは、ハウジング202内の他方側の端部に形成される。出口部204は、中心軸線X1と直交する方向に沿って入口部203と対向し、当該入口部203と同軸で形成される。出口部204は、軸方向の一端部がハウジング202の外側に開口し、当該開口側に種々の配管等を介してガス使用機器102が接続される。出口部204は、軸方向の他端部が隔壁202bによって閉塞されると共に隔壁202bに形成された流出口207を介して減圧室205に接続される。出口部204は、ハウジング202において入口部203の開口とは反対側に開口する。
減圧室205は、入口部203と出口部204との間に設けられ、当該入口部203、及び、当該出口部204と連通する調圧空間部である。減圧室205は、入口部203から流入したガスを後述する調圧機構209の作用によって減圧して出口部204から排出可能である。減圧室205は、ハウジング202内において隔壁202aと隔壁202bとの間に区画される。
流入口206は、入口部203と減圧室205との接続部分、ここでは、上述したように隔壁202aに形成される。流出口207は、減圧室205と出口部204の接続部分、ここでは、上述したように隔壁202bに形成される。減圧室205は、入口部203と流入口206を介して連通すると共に、出口部204と流出口207を介して連通する。入口部203内のガスは、流入口206を介して減圧室205内に流入可能である。減圧室205内のガスは、流出口207を介して出口部204内に流出可能である。
弁体208は、流入口206の減圧室205側に設けられる。ここでは、弁体208、流入口206は、入口部203側に向かって先細りの形状となっており、流入口206は、円錐台形状に形成され、弁体208は、円錐針状に形成される。弁体208は、軸方向に沿って閉止位置と開放位置との間で移動可能である。閉止位置とは、当該弁体208が流入口206側に進出し弁体208の外表面と流入口206の内表面とが当接し流入口206を閉止する位置である。開放位置とは、当該弁体208が流入口206から減圧室205側に離間した位置である。弁体208は、後述する調圧機構209に支持され、流入口206の中心軸線、ここでは中心軸線X1に沿って、閉止位置と開放位置とに移動可能である。弁体208は、閉止位置と開放位置との間で移動することで、流入口206の開度(以下、「弁開度」という場合がある。)を調整可能である。弁体208は、後述する調圧機構209によって減圧室205内のガスの圧力に応じて弁開度が調整され、これにより、調圧弁として機能する。
調圧機構209は、減圧室205内のガスの圧力に応じて弁体208を閉止位置と開放位置との間で移動させることで流入口206の開度を調整し当該減圧室205内のガスの圧力を調圧する弁駆動機構である。調圧機構209は、減圧室205は内に設けられる。本実施形態の調圧機構209は、二重円筒状ベローズ291と、基端板状部292と、大気開放通路293とを含んで構成される。
二重円筒状ベローズ291は、円筒蛇腹状に形成された外筒291aと、円筒蛇腹状に形成され外筒291aの内側に位置する内筒291bとによって構成されるバウムクッヘン型のダブルベローズである。二重円筒状ベローズ291は、減圧室205内において、中心軸線X1とほぼ同軸上に設けられる。上述の弁体208は、二重円筒状ベローズ291の内側、すなわち、内筒291bの内側に位置する。二重円筒状ベローズ291は、軸方向の流入口206側の端部が隔壁202aに密着するようにして設けられる一方、軸方向の流出口207側の端部に基端板状部292が密着して設けられる。つまり、二重円筒状ベローズ291は、軸方向に対して隔壁202aと基端板状部292との間に位置する。基端板状部292は、略円形板状の壁体であり、中心軸線X1とほぼ同軸上に形成される。基端板状部292は、弁体208の軸方向の流出口207側の端部が結合され一体に形成される。二重円筒状ベローズ291は、基端板状部292、及び、弁体208と共に当該基端板状部292側の端部が軸方向に沿って隔壁202a側に接近、離間するように伸縮可能であり、これにより、弁体208を軸方向に沿って閉止位置と開放位置とに移動させることができる。また、基端板状部292は、当該基端板状部292を境界として流入口206、弁体208側の空間部と、流出口207側の空間部とを連通する連通孔292aが形成されている。大気開放通路293は、二重円筒状ベローズ291の外筒291a、内筒291b、及び、基端板状部292によって区画される空間部である大気圧室291cと連通し、当該大気圧室291c内に大気圧を導入する大気通路である。ここでは、大気開放通路293は、隔壁202a内を通って、大気側の空間部と大気圧室291cとを連通し、当該大気圧室291cに大気圧を導入する。二重円筒状ベローズ291の外筒291a、及び、内筒291bは、減圧室205と大気圧室291cとを区画する隔壁として機能する。
入口圧力相殺機構210は、弁体208に対して入口圧力P0に応じた力を作用させて当該入口圧力P0の変動に伴った出口圧力P1の変動を抑制するものであり、主要な部分が減圧室205内に設けられる。本実施形態の入口圧力相殺機構210は、弁体208に対して入口圧力P0によって作用する入口部203側からの力を、入口部203側の高圧ガスを利用して弁体208に対して減圧室205側から入口圧力P0に応じて作用させる力によって相殺しバランスさせるものである。
本実施形態の入口圧力相殺機構210は、弁体内部シリンダ211と、導入通路212とを有する。弁体内部シリンダ211は、弁体208の内部に設けられた略円柱状の空間部である。導入通路212は、入口部203と弁体内部シリンダ211とを連通し、入口部203内のガスを弁体内部シリンダ211に導入するガス通路である。導入通路212は、ハウジング202の円筒状の部分内の通路、隔壁202b内の通路、減圧室205内に露出する配管等によってガスが流通可能な空間部として形成される。弁体内部シリンダ211が形成された弁体208と導入通路212とは、例えば、気密性の高いスライディング機構を介して軸方向に沿って相対移動可能に連結される。弁体内部シリンダ211の内径(言い換えれば、入口圧力P0の受圧面積)は、弁体208に対して入口部203側から入口圧力P0によって作用する力と、弁体208に対して弁体内部シリンダ211側から入口圧力P0によって作用する力とが同等になるように設定される。
上記のように構成される圧力調整器201は、調圧機構209の作用によって、減圧室205内のガスの圧力に応じて弁体208を閉止位置と開放位置との間で移動させることで流入口206の開度を調整し当該減圧室205内のガスの圧力を調圧する。圧力調整器201は、減圧室205内のガスの圧力が変化することで、大気圧室291c内の大気圧との関係で二重円筒状ベローズ291が軸方向に伸縮し、この伸縮に伴って弁体208が軸方向に移動し流入口206を開閉させる。圧力調整器201は、例えば、出口圧力P1が増加すると二重円筒状ベローズ291が縮み、弁体208が流入口206側に接近することで流量抵抗が増大し、出口圧力P1が低下する。一方、圧力調整器201は、例えば、出口圧力P1が低下すると二重円筒状ベローズ291が伸び、弁体208が流入口206側から離間することで流量抵抗が低下し、出口圧力P1が増加する。また、圧力調整器201は、例えば、大気圧が増加すると二重円筒状ベローズ291内の大気圧室291cの内圧もこれに連動して増加し、弁体208が流入口206側から離間することで流量抵抗が低下し、出口圧力P1が増加する。これにより、圧力調整器201は、減圧室205内の圧力が所定の圧力範囲内に保たれる。
このとき、圧力調整器201は、入口圧力相殺機構210の作用によって、弁体208に対して、入口部203側から入口圧力P0によって作用する力と、弁体内部シリンダ211側から入口圧力P0によって作用する力とが相殺され、弁体208に作用する静的な力がほぼつり合う。つまりこの場合、入口圧力相殺機構210は、入口圧力P0が相対的に小さくなるほど弁体内部シリンダ211内の入口圧力P0によって弁体208に対して作用させる閉弁方向への力(弁体208が流入口206に接近する側への力)を相対的に小さくすることができる。一方、入口圧力相殺機構210は、入口圧力P0が相対的に大きくなるほど弁体内部シリンダ211内の入口圧力P0によって弁体208に対して作用させる閉弁方向への力を相対的に大きくすることができる。この結果、入口圧力相殺機構210は、弁体208に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室205側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺すことができる。
以上で説明した圧力調整器201は、入口圧力相殺機構210によって、入口部203と減圧室205とを連通する流入口206を開閉する弁体208に対して入口圧力に応じた力を作用させて当該入口圧力の変動に伴った出口圧力の変動を抑制することから、出口圧力を安定化することができる。すなわち、圧力調整器201は、入口圧力相殺機構210において、入口圧力が相対的に大きくなるほど弁体208に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に大きくなり、当該入口圧力が相対的に小さくなるほど弁体208に対して作用させる閉弁方向への力が相対的に小さくなることで、弁体208に対して入口圧力に応じた力を減圧室205側から作用させて入口圧力の変動を相殺することができる。そして、圧力調整器201は、入口圧力相殺機構210において、弁体208に対して入口圧力に応じた力を減圧室205側から作用させて入口圧力の変動を相殺することで、上述の圧力調整器1と同様に、当該入口圧力の変動に伴った出口圧力の変動を抑制することができ、出口圧力を安定化させることができる。
なお、図5に示す変形例に係る圧力調整器201Aのように、当該圧力調整器201Aは、入口圧力相殺機構210にかえて入口圧力相殺機構210Aを備えてもよい。入口圧力相殺機構210Aは、弁体内部シリンダ211にかえて背圧ベローズ211Aを有している。背圧ベローズ211Aは、円筒蛇腹状に形成され、減圧室205内において、中心軸線X1とほぼ同軸上に設けられる。背圧ベローズ211Aは、軸方向の流入口206側の端部が基端板状部292に密着するようにして設けられる一方、軸方向の流出口207側の端部が隔壁202bに密着するようにして設けられる。つまり、背圧ベローズ211Aは、軸方向に対して基端板状部292と隔壁202bとの間に位置する。この場合、導入通路212は、入口部203と背圧ベローズ211Aの内側の空間部とを連通し、入口部203内のガスを背圧ベローズ211Aの内側に導入する。背圧ベローズ211Aの内径(言い換えれば、入口圧力P0の受圧面積)は、弁体208に対して入口部203側から入口圧力P0によって作用する力と、弁体208に対して背圧ベローズ211A側から入口圧力P0によって作用する力とが同等になるように設定される。
この場合であっても、圧力調整器201Aは、圧力調整器201と同様に、入口圧力相殺機構210Aによって、入口部203と減圧室205とを連通する流入口206を開閉する弁体208に対して入口圧力に応じた力を作用させて当該入口圧力の変動に伴った出口圧力の変動を抑制することから、出口圧力を安定化することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る圧力調整器は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
調圧機構8、入口圧力相殺機構9は、以上で説明した構成に限られない。調圧機構8は、ダイヤフラム82、調整スプリング86等にかえて、他の構成であってもよい。入口圧力相殺機構9は、相殺ピストン91、相殺スプリング92、相殺気圧室94等を備えていなくてもよく、弁体7に対して入口圧力P0に応じた力を減圧室5側から作用させて入口圧力P0の変動を相殺し、入口圧力P0の変動に伴った出口圧力P1の変動を抑制する構成であればよい。