以下、本発明を直噴エンジンに適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4に基づいて本実施形態に係る燃料噴射装置を説明する。図1においては、燃料噴射装置100の他に、シリンダヘッド200も図示している。以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。そしてx方向とy方向によって規定される平面をx−y平面と示す。
図1に示すように、燃料噴射装置100はエンジンの燃焼室の一部を構成するシリンダヘッド200に設けられる。シリンダヘッド200は燃焼室の一部を構成する内壁面200aと燃焼室の外に位置する外壁面200bとを有する。シリンダヘッド200には内壁面200aと外壁面200bを連通する挿入孔201が形成されている。挿入孔201の形状は、燃料噴射装置100の外形形状に合わせて形成されている。この挿入孔201に燃料噴射装置100が設けられる。
燃料噴射装置100には円環状のシール材202が設けられている。シール材202の中空に燃料噴射装置100が挿入されている。シール材202は燃料噴射装置100と挿入孔201を構成する側壁面201aとの間で挟持される。このシール材202により、挿入孔201と燃料噴射装置100との間の隙間が塞がれる。これにより、燃焼室内で発生した排気ガスなどが挿入孔201を介して燃焼室の外に漏れることが抑制されている。
シリンダヘッド200の外壁面200bには円環状の座金203が設けられている。この座金203の中空に燃料噴射装置100が挿入されている。また、燃料噴射装置100は図示しないクリップによって座金203に押し付けられている。このクリップの弾性力によって、燃料噴射装置100はシリンダヘッド200に機械的に固定されている。
図1に示すように燃料噴射装置100は、ボディ10、弁部30、スプリング40、電磁部50、および、昇温部60を有する。ボディ10は燃料の流通する燃料流路11を内部に形成している。この燃料流路に弁部30とスプリング40が設けられる。スプリング40は弁部30に付勢力を付与する。これにより燃料流路11が閉塞される。この結果、燃料噴射装置100は閉弁される。
電磁部50はボディ10に設けられる。電磁部50は磁気回路を形成する。これにより弁部30がスプリング40の付勢力に抗してボディ10の軸方向に動かされ、燃料流路11が開放される。この結果、燃料噴射装置100が開弁される。この開弁により、燃料噴射装置100から燃焼室へと燃料が噴射される。
昇温部60はボディ10に固定されている。昇温部60は発熱することで燃料流路11の燃料を昇温する。これにより燃料噴射装置100から燃焼室に噴射される燃料の微粒化が促進される。以下、燃料噴射装置100の各構成要素を詳説する。
ボディ10は、ノズルボディ12、固定コア13、および、非磁性部材14、および、噴孔プレート15を有する。ノズルボディ12、固定コア13、および、非磁性部材14それぞれは筒形状を成している。ノズルボディ12、固定コア13、および、非磁性部材14それぞれの軸方向はz方向に沿い、x−y平面で一致している。
ノズルボディ12と固定コア13とは非磁性部材14を介して機械的に連結されている。これらノズルボディ12、固定コア13、および、非磁性部材14の中空部によって燃料流路11が構成されている。図1では、燃料流路11の中心軸CAを一点鎖線で示している。
ノズルボディ12、固定コア13、および、非磁性部材14によって、第1開口部10aと第2開口部10bを有する筒が形成されている。第1開口部10aはノズルボディ12の先端で構成されている。第2開口部10bは固定コア13の先端で構成されている。ノズルボディ12の先端に噴孔プレート15が固定されている。噴孔プレート15には微小な噴射孔15aが形成されている。固定コア13の先端には図示しない燃料配管が固定されている。この燃料配管はデリバリーパイプ、高圧ポンプ、フィードポンプ、および、燃料タンクと連結されている。フィードポンプ、高圧ポンプ、および、デリバリーパイプなどによって供給された燃料タンクの燃料は燃料流路11に流入される。燃料流路11に流入した燃料は、弁部30の電磁部50による軸方向の運動により、噴孔プレート15の噴射孔15aから燃焼室に噴射される。
ノズルボディ12は磁性材料からなる。ノズルボディ12は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。ノズルボディ12は挿入孔201に挿入される。
ノズルボディ12は、先端部16、シール部17、ボディ部18、および、取り付け部19を有する。先端部16、シール部17、ボディ部18、および、取り付け部19それぞれは筒形状を成し、その軸方向はz方向に沿っている。先端部16、シール部17、ボディ部18、および、取り付け部19はz方向において順に一体的に連結されている。
先端部16は、上記の第1開口部10aを構成する。この先端部16の開口部が閉塞されるように、先端部16に噴孔プレート15が固定されている。
シール部17は、その外側面17aにシール材202が取り付けられている。シール部17の内径は一定である。シール部17の先端部16側の外径は一定である。しかしながらシール部17のボディ部18側の外径は、先端部16側からボディ部18側へと向かうにしたがって、徐々に広がっている。換言すれば、シール部17のボディ部18側の外径は、燃焼室からその外側へと向かうにしたがって、徐々に広がっている。
このようにシール部17の外側面17aの一部がテーパ形状を成しているのは、以下の理由のためである。シール材202は燃焼室とその外部とを連通する挿入孔201に設けられている。燃焼室内で燃料が爆発すると、それによって爆風が生じる。この爆風によって、シール材202は燃焼室の外へと移動しようとする。これによりシール材202によるシール性が損なわれる虞がある。
そのため、上記したようにシール部17のボディ部18側の外径を、燃焼室からその外側へと向かうにしたがって、徐々に広がらせている。爆風によってシール材202が燃焼室の外側へと移動しようとした場合、シール材202は、シール部17における徐々に外径の広がる部位にて広がるように変形する。その変形によってシール部17の外側面17aへと向かうシール材202の圧縮力が増大する。この圧縮力の増大にともない、シール材202とシール部17との間に生じる摩擦力が増大する。これにより、シール材202の移動が抑制される。
ボディ部18は、その外側面18aに昇温部60のヒータ61が取り付け固定される。ボディ部18の内径は一定である。ボディ部18のシール部17側の外径は一定である。しかしながらボディ部18の取り付け部19側の外径は、剛性強度を確保するために、シール部17側から取り付け部19側へと向かうにしたがって徐々に広がった後、一定となっている。
取り付け部19は、その外側面19aに電磁部50のハウジング54が固定される。また取り付け部19の内側面19bにはスプリング40のサブスプリング42と、電磁部50の可動コア55が設けられる。取り付け部19のボディ部18側の内径は一定である。しかしながら取り付け部19の固定コア13側の内径は、サブスプリング42と可動コア55を設けるために一定ではなくなっている。
取り付け部19の内側面19bの一部は、サブスプリング42を設けるための環状の設置面を構成している。この設置面はx−y平面に沿っている。図1に示すように、サブスプリング42に可動コア55が搭載されている。取り付け部19の内径は、この設置面から固定コア13側へと向かうにしたがって、2段階に広がっている。1段階目の内径は、サブスプリング42の周囲を囲むように設定されている。これによりサブスプリング42のx−y平面に沿う方向での位置ずれが防止されている。2段階目の内径は、可動コア55と接触するように設定されている。これにより可動コア55のx−y平面に沿う方向での位置ずれが防止されている。
固定コア13は、磁性材料から成る。固定コア13は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。固定コア13の内径は一定である。しかしながら固定コア13の外径は、z方向においてノズルボディ12から離れるにしたがって狭くなっている。
固定コア13のノズルボディ12側の開口部を構成する端部に非磁性部材14が固定される。この非磁性部材14の内側に可動コア55が設けられている。この可動コア55の固定コア13側の上端面55aは、固定コア13のノズルボディ12側の開口部を構成する端部の端面13aと対向している。この端面13aと上端面55aそれぞれはx−y平面に沿っている。
固定コア13の端面13aと可動コア55の上端面55aとは、電磁部50によって磁気回路が形成されない場合、スプリング40の付勢力により、z方向において離間している。そのため端面13aと上端面55aとの間に隙間が形成され、この隙間と固定コア13の中空とが連通されている。しかしながら電磁部50によって磁気回路が形成されると、その磁気回路によって可動コア55がスプリング40の付勢力に抗して固定コア13側に移動し、上端面55aと端面13aとが接触する。これにより端面13aと上端面55aとの間の隙間がなくなる。
固定コア13の上記の燃料配管の接続される開口部を構成する端部の外側面13bには、バックアップリング20、Oリング21、ストッパ22が設けられている。図1に示すように、z方向においてノズルボディ12から固定コア13に向かう方向に、バックアップリング20、Oリング21、ストッパ22が順に並んでいる。このようにOリング21はバックアップリング20とストッパ22とによって挟まれている。これによりOリング21が固定コア13から外れることが抑制されている。なお、固定コア13の燃料配管の接続される開口部を構成する端部の外側面13bには、ストッパ22を設けるための環状の溝部13cが形成されている。
固定コア13の中空には、弁部30の一部、スプリング40のメインスプリング41、および、メインスプリング41に付勢力を発生させるための圧入部材23が設けられている。圧入部材23は筒形状を成す。圧入部材23は固定コア13の燃料配管の接続される開口部からその内部へと圧入される。これにより圧入部材23の外側面23aと固定コア13の内側面13dとの間に圧入部材23の復元力が発生し、圧入部材23は固定コア13内に固定されている。圧入部材23の圧入により、メインスプリング41は弁部30と圧入部材23との間でz方向に圧縮される。
固定コア13の中空には、フィルタ24も設けられている。フィルタ24は金属から成り、網目構造を有している。フィルタ24は固定コア13の燃料配管の接続される開口部側の中空に設けられる。燃料配管を介して固定コア13の構成する燃料流路11に流入した燃料はフィルタ24を通過する。これにより燃料に含まれるゴミがフィルタ24によって除去される。このフィルタ24によってゴミの除去された燃料がノズルボディ12の構成する燃料流路11へと流れる。
非磁性部材14は、その名の示す通り、非磁性材料から成る。非磁性部材14は、電磁部50によって形成される磁気回路の可動コア55への通過が妨げられることを抑制する機能を果たす。非磁性材料としては、例えばセラミックを採用することができる。
非磁性部材14の内径と外径は一定である。非磁性部材14は取り付け部19と固定コア13とを機械的に連結する機能も果たす。非磁性部材14は取り付け部19と固定コア13それぞれと接合されている。
噴孔プレート15は先端部16の開口部に設けられる。噴孔プレート15は、先端部16に固定される固定部25と、噴射孔15aの形成された噴孔部26と、を有する。固定部25は筒形状を成す。固定部25は外径と内径とが一定である。固定部25は先端部16の中に設けられる。固定部25の外面が先端部16の内面に溶接接合される。
噴孔部26は固定部25の燃焼室側の開口部を塞ぐ円盤形状を成している。噴孔部26の中央部は燃焼室側に突起している。これにより噴孔部26の外面と内面それぞれは円錐の側面と同様の形状を成している。この噴孔部26の内面に、弁部30の先端が着座したり離座したりする。噴孔部26の中央には、燃料を霧状に噴射するための噴射孔15aが複数形成されている。弁部30の離座により、噴射孔15aから燃焼室への燃料の噴射がなされる。弁部30の着座により、噴射孔15aから燃焼室への噴射が止められる。
弁部30はz方向に延びる円柱形状を成す。弁部30とボディ10の軸方向はx−y平面において一致している。弁部30は先端部16から取り付け部19へと向かうにしたがって、段々と径が太くなる形状を有している。
弁部30は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。弁部30は、第1柱部31、第2柱部32、および、第3柱部33を有する。第1柱部31、第2柱部32、および、第3柱部33はz方向において順に一体的に連結されている。
第1柱部31は円柱状を成し、先端部16とシール部17の中に位置している。第1柱部31の径は、噴孔部26の内面に先端が着座することで、噴射孔15aから燃料の噴射が止められるように設計されている。第1柱部31の先端の縁部には、噴孔部26の内面と同一の傾斜角度のテーパが形成されている。この第1柱部31のテーパ状の縁部が噴孔部26の内面と全面的に接触することで、噴射孔15aからの燃料の噴射が止められる。
第2柱部32は円柱状を成し、ボディ部18と取り付け部19の中に位置している。また、第2柱部32の第3柱部33側の部位は、可動コア55の中空にも位置している。第2柱部32の径は、第1柱部31から第3柱部33へと向かう方向において、徐々に広くなった後、一定となっている。第2柱部32の径は、弁部30の剛性強度を保ちつつ、燃料流路11内に貯留される燃料の量が少なくならないように設計されている。
第3柱部33は円盤状を成し、固定コア13の中に位置している。第3柱部33の下面33aの中央に第2柱部32が一体的に連結されている。第3柱部33の径は、下面33aの縁部が可動コア55の上端面55aと円環状に接触するように設定されている。第3柱部33の上面33bにはメインスプリング41が設けられている。
スプリング40は可動コア55と弁部30に付勢力を付与するものである。スプリング40はメインスプリング41とサブスプリング42を有する。メインスプリング41は固定コア13の中に設けられている。メインスプリング41は弁部30と圧入部材23とによってz方向に圧縮されている。これによりメインスプリング41は、z方向においてメインスプリング41から離れる方向に付勢力を発生させている。
サブスプリング42は取り付け部19の中に設けられている。サブスプリング42は可動コア55の下端面55bと取り付け部19の設置面との間に位置している。上記したように弁部30の第3柱部33の上面33bにメインスプリング41が設けられている。第3柱部33の下面33aは可動コア55の上端面55aと接触している。そして弁部30にはメインスプリング41の付勢力が付与されている。このため、可動コア55にもメインスプリング41の付勢力が付与されている。サブスプリング42はこの付勢力によって可動コア55と取り付け部19との間でz方向に圧縮されている。これによりサブスプリング42は、z方向においてサブスプリング42から離れる方向に付勢力を発生させている。
以上に示したように、可動コア55には、メインスプリング41とサブスプリング42それぞれの付勢力が付与されている。メインスプリング41から可動コア55に付与する付勢力と、サブスプリング42から可動コア55に付与する付勢力は逆向きである。したがって可動コア55に付与されている2つの付勢力は打ち消し合う。しかしながらメインスプリング41のほうがサブスプリング42よりも可動コア55に付与する付勢力が高く設定されている。そのため、スプリング40の付勢力により、可動コア55の上端面55aは固定コア13の端面13aと隙間を介して離間している。これにより、この隙間と固定コア13の中空とが連通されている。
電磁部50は、ソレノイドコイル51、コネクタ52、樹脂部53、ハウジング54、および、可動コア55を有する。ソレノイドコイル51はコネクタ52とともに樹脂部53によって一体的に連結されている。ソレノイドコイル51はメインスプリング41の周囲を囲むように、固定コア13の外側面13bに樹脂部53によって固定されている。
ハウジング54は筒形状を成している。ハウジング54はソレノイドコイル51と樹脂部53それぞれの周囲を囲むように取り付け部19に固定されている。またハウジング54は座金203と円環状に接触し、座金203を介してシリンダヘッド200に固定されている。
可動コア55も筒形状を成し、取り付け部19内に設けられている。可動コア55の中空に弁部30が挿入されている。また可動コア55には、上端面55aと下端面55bとを連通する連通孔55cが形成されている。上記したようにスプリング40の付勢力によって上端面55aと固定コア13の端面13aとが離間している場合、固定コア13の中空とノズルボディ12の中空は、連通孔55cを介して連通される。なお可動コア55もハウジング54によって周囲を囲まれている。
ハウジング54と可動コア55は磁性材料によって形成されている。上記したように取り付け部19と固定コア13も磁性材料によって形成されている。そして非磁性部材14は非磁性材料から成る。そのため、コネクタ52を介してソレノイドコイル51に電流を流すと、それによって発生する磁束は、固定コア13、可動コア55、取り付け部19、および、ハウジング54を通る磁気回路を形成する。この磁気回路が形成されると、可動コア55はスプリング40の付勢力に抗して固定コア13側へと移動しようとする。上記したように可動コア55の上端面55aに弁部30の下面33aが円環状に接触している。したがって磁気回路の形成による可動コア55の固定コア13側への移動により、弁部30も固定コア13側へと移動する。これにより弁部30の先端が噴孔部26の内面から離座し、噴射孔15aから燃焼室への燃料の噴射がなされる。またこの際に、連通孔55cを介した固定コア13の中空とノズルボディ12の中空との連通が遮断される。
昇温部60は、ヒータ61と、ヒータカバー62と、を有する。ヒータ61は被覆配線63がらせん形状に巻き回されて成る。図2に示すように被覆配線63は、金属配線64と、金属配線64を被覆する被覆部65と、を有する。金属配線64は、例えば銅などの導電性、展延性、および、弾性を備える金属材料から成る。被覆部65は絶縁性と耐熱性を兼ね備えた樹脂材料から成る。被覆部65の具体的な形成材料としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、テフロン(登録商標)などを採用することができる。
金属配線64の延長方向に対して垂直な断面形状は、矩形となっている。被覆部65は金属配線64の断面形状に応じて形状が変化している。これにより被覆配線63の断面形状も矩形となっている。
被覆配線63がノズルボディ12のボディ部18の外側面18aにらせん状に巻きついて設けられている。この巻つきにより、金属配線64と被覆部65それぞれは弾性変形している。この弾性変形によって、ボディ部18側へ押圧する弾性力(圧縮応力)が被覆配線63に発生している。この圧縮応力によって、ヒータ61はボディ部18に密着して固定されている。
上記したように被覆配線63の断面形状は矩形を成している。したがって被覆配線63の断面形状は、4つの面と4つの縁部によって規定されている。図2に示すように、被覆配線63の有する4面の内の1つがボディ部18と面接触している。
ヒータカバー62は筒形状を成す。図2に示すようにヒータカバー62はヒータ61の周囲を囲んでいる。ヒータカバー62とヒータ61との間には空間が形成され、ヒータカバー62とヒータ61とは非接触になっている。
ヒータカバー62の2つの開口端のうちの一方の第1開口端62aはハウジング54の中に設けられている。そしてヒータカバー62の外側面62cがハウジング54の内面と全周にわたって接触している。ヒータカバー62の第1開口端62aの外側面62cには環状のガイド部66が形成されている。このガイド部66の上端面がハウジング54の端部の端面と全周にわたって接触している。これによりヒータカバー62の第1開口端62aは閉塞されている。これに反してヒータカバー62の2つの開口端のうちの他方の第2開口端62bは解放されている。
ヒータカバー62は金属製である。ヒータカバー62はハウジング54との接触部位にて溶接接合されている。ヒータカバー62の形成材料は、ハウジング54と同一材料を採用することができる。これにより、ヒータカバー62とハウジング54との溶接部位に線膨張係数差に起因する熱応力が発生することが抑制される。なおもちろんではあるが、ヒータカバー62とハウジング54との機械的な接続は、溶接接合に限定されない。例えばろう接や接着などを採用することもできる。
以上に示したようにヒータ61とヒータカバー62とは非接触となっている。そのため、通電によってヒータ61が発熱しても、ヒータカバー62にその熱が伝達され難くなっている。図3に、実際に発明者が行った実験結果を示す。ヒータ61への通電を開始すると、実線で示すように、時間経過にともなってヒータ61の温度は上昇する。しかしながら破線で示すように、ヒータカバー62の温度は時間が経過してもほとんど上昇しない。このようにヒータ61にて生じた熱はヒータカバー62に伝達され難くなっている。
ヒータ61には電流を流すための接続配線67が接続されている。この接続配線67は、図1に示すように、コネクタ52の一部と電気的に接続されている。接続配線67は樹脂部53の中を通り、ハウジング54の外側面に沿わせて設けられている。座金203、および、ハウジング54における座金203との接触部位の少なくとも一方には、接続配線67を通すための溝が形成されている。また、ヒータカバー62には接続配線67を通すための窪みが形成されている。この窪みを介することで、ヒータカバー62によって囲まれた空間内に接続配線67が通されている。
車両を駐停車してエンジンの駆動を止めている場合、エンジンは冷えている。そのために燃料噴射装置100内の燃料も冷えている。したがって燃焼室に噴射する燃料の微粒化を実現するためには、ヒータ61による燃料の昇温を、エンジンの始動前に行う必要がある。このようなヒータ61による燃料の昇温開始タイミングとしては、例えば、以下に示すタイミングを採用することができる。駐停車状態の車両へユーザが乗車する際にドアが開かれたタイミング、ユーザによってイグニッションスイッチがオンになったタイミング、ユーザによってエンジンのクランキングが開始され始めたタイミング、などを採用することができる。
また、ヒータ61の通電制御としては、通電電流の間欠駆動を採用することができる。通電と非通電の間隔は、例えばヒータ61の温度に基づいて決定することができる。ヒータ61の温度が低い場合、ヒータ61をより昇温するべく、ヒータ61への通電時間を長くし、非通電時間を短くする。これとは反対に、ヒータ61の温度が高い場合、ヒータ61の昇温を抑えるべく、ヒータ61への通電時間を短くし、非通電時間を長くする。
ヒータ61の温度は、例えば以下に示す方法によって検出することができる。ヒータ61の抵抗は、発熱に応じて変動する。その振る舞いはヒータ61の金属配線64の形成材料の特性によって定まる。そのため、ヒータ61への印加電圧を一定として、ヒータ61に流れる電流を検出する。この電圧と電流からヒータ61の抵抗を検出し、その検出した抵抗と金属配線64の形成材料の特性とに基づいてヒータ61の温度を検出してもよい。若しくは、単に、燃料噴射装置100に温度センサを搭載し、その温度センサよりヒータ61の温度を検出してもよい。温度センサは、ノズルボディ12などに搭載することができる。
次に、ヒータ61の製造方法を図4に基づいて説明する。
先ず、図4の(a)欄に示すように、金属配線64を被覆部65の中空に挿入する。これによって金属配線64を被覆部65で被覆保護し、被覆配線63を形成する。
次に、図4の(b)欄に示すように、被覆配線63をヒータ形状固定用の規定円柱300に巻きつける。これにより被覆配線63に含まれる金属配線64を塑性変形させ、ヒータ61の形状を概略的に決定する。
最後に、図4の(c)欄に示すように、規定円柱300によって概略的に形状の固定されたヒータ61の中空に、ノズルボディ12のボディ部18を入れ込む。規定円柱300の直径d1は、ノズルボディ12のボディ部18の直径d2よりも短く設定されている。したがって概略的に形状の固定されたヒータ61は、ボディ部18への入れ込みにより全体的に伸びて弾性変形する。この弾性変形によってヒータ61に圧縮応力が生じる。この圧縮応力によって、ヒータ61はボディ部18に密着して固定される。またヒータ61の形状がボディ部18の外部形状に則して決定される。以上の製造工程を経ることで、ヒータ61が製造される。
このようにヒータ61を製造した後は、ヒータカバー62をハウジング54に溶接固定する。図4の(d)欄に示すように、ヒータカバー62をノズルボディ12の先端部16側から取り付け部19側へと入れ込む。そしてヒータカバー62の第1開口端62aをハウジング54に溶接固定する。これにより、ヒータカバー62によってヒータ61の周囲が囲まれる。
次に、本実施形態に係る燃料噴射装置100の作用効果を説明する。上記したようにヒータ61とボディ部18とは密着し、ヒータ61とヒータカバー62とは非接触となっている。そのため、ヒータ61とボディ部18との接触面積が、ヒータ61とヒータカバー62との接触面積よりも大きくなっている。
これによれば、ヒータとボディ部との接触面積、および、ヒータとヒータカバーとの接触面積が同等の構成とは異なり、ヒータ61にて生じた熱がヒータカバー62に伝熱することが抑制される。これにより、ヒータ61にて生じた熱を効率良くボディ部18の中の燃料に伝達することができる。この結果、燃料が効率良く昇温され、燃料噴射装置100から噴射される燃料の微粒化を促進することができる。
また、本実施形態では、上記したようにヒータ61とヒータカバー62とは非接触となっている。そのため、図3に基づいて説明したように、ヒータ61からヒータカバー62への伝熱が効果的に抑制される。これにより、ヒータ61にて生じた熱を効率良くボディ部18内の燃料に伝達することができる。
ヒータ61は、被覆配線63がボディ部18の外側面18aにらせん状に巻きついて設けられている。これによって被覆配線63が弾性変形し、その弾性力(圧縮応力)によってヒータ61がボディ部18に密着して固定されている。そのため、ヒータ61をボディ部18に固定するための部材を燃料噴射装置100に新たに設けなくとも良くなる。
被覆配線63の延長方向に対して直交する断面の形状は矩形である。そして被覆配線63の断面形状を規定する4面の内の1つがボディ部18と面接触している。これによれば、金属配線の断面形状が円形である構成と比べて、ヒータ61とボディ部18との接触面積が大きくなる。そのため、ヒータ61からボディ部18へと効率よく伝熱することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図5および図6に基づいて説明する。第2実施形態に係る燃料噴射装置は上記した実施形態によるものと共通点が多い。そのため以下においては共通部分の説明を省略し、異なる部分を重点的に説明する。また以下においては上記した実施形態で示した要素と同一の要素には同一の符号を付与する。
図5においては、図1に示す第1実施形態と共通であり、なおかつ異なる部分を説明する上において不要とみなせる部分については、その記載を簡略化するとともに、その一部の記載を省略している。この表記は、他の図7〜図11に示す燃料噴射装置100においても同様である。
第1実施形態では、ヒータ61とヒータカバー62とが非接触である例を示した。これに対し本実施形態では、ヒータ61とヒータカバー62とが線接触している。
図5および図6に示すように、ボディ部18の外側面18aには溝部70が形成されている。この溝部70にヒータ61が設けられる。溝部70の形状は、被覆配線63のボディ部18への巻き付けに合わせて、らせん形状になっている。
溝部70は、底部71と、底部71から屹立する側部72とから構成されている。底部71の深さは、被覆配線63の太さ(厚さ)よりも浅く(短く)なっている。そのため、被覆配線63の一部が溝部70の外にはみ出している。この底部71の深さは、被覆配線63とヒータカバー62とがらせん状に線接触するように調整されている。具体的に言えば、溝部70の深さは、取り付け部19からシール部17へと向かうにしたがって徐々に連続的に深くなっている。
また、上記した被覆配線63とヒータカバー62とのらせん状の線接触を実現するべく、ヒータカバー62の内径は、シール部17から取り付け部19へと向かうにしたがって徐々に連続的に広がっている。これにより、図6において実線矢印で示すように、先端部16から取り付け部19へと向かってヒータカバー62を挿入することで、被覆配線63の有する4つの縁部の内の1つがヒータカバー62の内側面62dと接触する。より詳しく言えば、溝部70の外にはみ出し、なおかつ、シール部17側に位置する被覆配線63の下縁部が、ヒータカバー62の内側面62dと接触する。この被覆配線63とヒータカバー62との接触、および、ヒータカバー62の挿入により、図6において破線矢印で示すように、被覆配線63はボディ部18側へと押圧される。また被覆配線63は底部71とだけではなく、取り付け部19側の側部72とも接触する。これによりヒータ61は底部71と側部72それぞれと面接触する。
次に、本実施形態に係る燃料噴射装置100の作用効果を説明する。上記したようにヒータ61はボディ部18と面接触し、ヒータ61はヒータカバー62と線接触している。そのため、ヒータ61とボディ部18との接触面積が、ヒータ61とヒータカバー62との接触面積よりも大きくなっている。したがって、本実施形態に係る燃料噴射装置100においても、第1実施形態の燃料噴射装置100と同様にして、ヒータ61にて生じた熱がヒータカバー62に伝熱することが抑制される。これにより、ヒータ61にて生じた熱を効率良くボディ部18の中の燃料に伝達することができる。この結果、燃料が効率良く昇温され、燃料噴射装置100から噴射される燃料の微粒化を促進することができる。
ボディ部18の外側面18aにらせん形状の溝部70が形成され、その溝部70にヒータ61が設けられている。これによれば、ヒータ61とボディ部18との機械的な接続信頼性が向上される。
ヒータ61はボディ部18に形成された溝部70の底部71と側部72それぞれと面接触している。これによれば、ヒータが溝部の底部だけと接触する構成と比べて、ヒータ61とボディ部18との接触面積が増大する。これにより、ヒータ61にて生じた熱を効率良くボディ部18内の燃料に伝達することができる。
ヒータ61はヒータカバー62によってボディ部18に押圧されている。これによれば、ヒータ61とボディ部18との機械的な接続信頼性が向上される。また、ヒータ61とボディ部18との接触面積が増大し、それによってヒータ61にて生じた熱を効率良くボディ部18内の燃料に伝達することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
(第1の変形例)
第2実施形態では、溝部70の深さは、取り付け部19からシール部17へと向かうにしたがって徐々に連続的に深くなっている。また、ヒータカバー62の内径は、シール部17から取り付け部19へと向かうにしたがって徐々に連続的に広がっている。これにより、被覆配線63とヒータカバー62とのらせん状の線接触を実現している。
しかしながら被覆配線63とヒータカバー62とをらせん状に線接触する構成としては、上記例に限定されてない。例えば図7や図8に示す構成を採用することができる。
図7に示す変形例では、溝部70の深さが一定であり、溝部70の底部71がボディ10の軸方向に対して傾斜した構成となっている。これによれば、例えヒータカバー62の内径が一定であったとしても、被覆配線63とヒータカバー62とをらせん状に線接触させることができる。
図8に示す変形例では、被覆配線63の断面積が、被覆配線63の延長方向において、取り付け部19からシール部17へと向かうにしたがって、徐々に小さくなっている。そしてヒータカバー62の内径は、シール部17から取り付け部19へと向かうにしたがって徐々に連続的に広がっている。これによれば、例えボディ部18に溝部70が形成されていなくとも、被覆配線63とヒータカバー62とをらせん状に線接触させることができる。
また図示しないが、ヒータカバー62の内側面62dにらせん状の溝を形成してもよい。この溝を構成する壁面と、被覆配線63の下縁部とを接触させて、回転しながらヒータカバー62を取り付け部19側へと挿入する。これによっても、被覆配線63とヒータカバー62とをらせん状に線接触させることができる。
(第2の変形例)
各実施形態では、ヒータカバー62の第2開口端62bが解放されている例を示した。しかしながら例えば図9に示すように、ノズルボディ12に環状の閉塞部材80を設けることで、ヒータカバー62の第2開口端62bを閉塞してもよい。これによれば、ノズルボディ12、ハウジング54、ヒータカバー62、および、閉塞部材80によって構成された閉塞空間にヒータ61が設けられる。そのため、ヒータ61によって生じた熱が外部雰囲気に逃げることが抑制される。これにより、ヒータ61にて生じた熱を効率よくノズルボディ12に伝達することができる。なお、閉塞部材80の形成材料としては、ノズルボディ12からヒータカバー62への伝熱を抑制するために、断熱材が好適である。
(その他の変形例)
第1実施形態では、ヒータ61とヒータカバー62とが非接触であり、なおかつ、ヒータカバー62の内径が一定である例を示した。しかしながら、ヒータ61とヒータカバー62とが非接触の構成の場合、ヒータカバー62の内径としては、上記例に限定されない。例えば図10に示すように、ヒータカバー62の内径は、シール部17から取り付け部19へと向かうにしたがって徐々に連続的に広がってもよい。
各実施形態では、ヒータカバー62の第1開口端62aの外側面62cに環状のガイド部66が形成され、このガイド部66の上端面がハウジング54の端部の端面と全周にわたって接触し、ヒータカバー62がハウジング54に溶接固定されている例を示した。しかしながらヒータカバー62の固定形態としては上記例に限定されない。
例えば図11の(a)欄に示すように、ヒータカバー62にガイド部66が形成されていない構成を採用することもできる。
図11の(b)欄に示すように、ヒータカバー62の第1開口端62aの端面と、ハウジング54の端面とが全周にわたって接触し、互いに連結された構成を採用することもできる。
図11の(c)欄に示すように、ヒータカバー62の第1開口端62a内にハウジング54が設けられ、ヒータカバー62の内側面62dとハウジング54の外側面とが全周にわたって接触する構成を採用することもできる。この変形例では、ヒータカバー62の第1開口端62a側の内側面62dの一部がx−y平面に沿う環状の平面形状を成している。この環状の平面形状の部位とハウジング54の端面とが全周にわたって接触している。この接触形態において、ヒータカバー62とハウジング54とを固定してもよい。
図11の(d)欄に示すように、ヒータカバー62はハウジング54ではなくノズルボディ12に固定されてもよい。
各実施形態では、被覆配線63の断面形状が矩形である例を示した。その断面形状としては、例えば図12の(a)欄と(b)欄とに示すように、長方形や正方形を採用することができる。そして被覆配線63の矩形を規定する縁部にRが形成されてもよい。また、図示しないが、被覆配線63の断面形状としては、ボディ部18との面接触が適う形状であれば、適宜採用することができる。
各実施形態では、被覆配線63がらせん形状に巻き回れることでヒータ61が形作られる例を示した。その巻き回しとしては、例えば図13の(a)欄、(b)欄、および、(c)欄に示す形態を採用することができる。被覆配線63を隙間なく巻き回してもよいし、一部に隙間を介して巻き回してもよい。また被覆配線63を、全体的に隙間を空けて巻き回してもよい。被覆配線63をらせん形状に巻き回すピッチは、ノズルボディ12の形状に応じて決定することができる。また、被覆配線63を巻き回すピッチは、ノズルボディ12内の燃料の温度分布が均等となるように決定してもよい。更に言えば、被覆配線63の直径についても、一律に一定でなくともよく、上記したように、ノズルボディ12の形状や、ノズルボディ12内の燃料の温度分布が均等となるように決定してもよい。
各実施形態では、燃料噴射装置100を直噴エンジンに適用した例を示した。しかしながら燃料噴射装置100をポート噴射式エンジンに適用してもよい。