JP6736868B2 - 負極活物質材料、負極及び電池、並びに、負極活物質材料の製造方法 - Google Patents

負極活物質材料、負極及び電池、並びに、負極活物質材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、負極活物質材料、負極及び電池、並びに、負極活物質材料の製造方法に関する。
近年、家庭用ビデオカメラ、ノートパソコン、及び、スマートフォン等の小型電子機器、さらには、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、及び、電気自動車の普及が進んでいる。これらの小型電子機器、及び、自動車の普及に伴い、電池の高容量化、高サイクル特性化、及び、コンパクト化が求められている。
リチウムイオン電池に代表される二次電池には、黒鉛系の負極活物質材料が利用されている。しかしながら、黒鉛系の負極活物質材料では、高容量化及び高サイクル特性化に限界がある。
そこで、黒鉛系負極活物質材料よりも高容量な合金系負極活物質材料が注目されている。合金系負極活物質材料としては、シリコン(Si)系負極活物質材料、スズ(Sn)系負極活物質材料が知られている。よりコンパクトで長寿命なリチウムイオン電池の実用化のために、上記合金系負極活物質材料に対して様々な検討がなされている。
しかしながら、合金系負極活物質材料は、充放電時に大きな膨張及び収縮を繰り返す。そのため、合金系負極活物質材料は容量が劣化しやすい。たとえば、充電に伴う黒鉛の体積膨張収縮率は、12%程度である。これに対して、充電に伴うSi単体又はSn単体の体積膨張収縮率は400%前後である。このため、Si単体又はSn単体の負極板が充放電を繰り返すと、顕著な膨張収縮が起こり、集電体に塗布された負極合剤にき裂及び割れが発生する。その結果、負極の容量が顕著に低下する。これは、体積膨張収縮により負極活物質材料の一部が遊離して負極板が電子伝導性を失うことに起因する。
国際公開WO2013/141230号公報(特許文献1)は、高容量と良好なサイクル特性とを実現するリチウムイオン電池用の負極材料に好適な多孔質シリコン粒子及び多孔質シリコン複合体粒子を提案する。特許文献1の多孔質シリコン粒子は、複数のシリコン微粒子が接合して連続的な空隙を有する多孔質シリコン粒子であって、シリコン微粒子の粒径、支柱径又は支柱辺の平均xが2nm〜2μmであり、シリコン微粒子の粒径、支柱径又は支柱辺の標準偏差σが1〜500nmであり、平均xと標準偏差σとの比(σ/x)が0.01〜0.5である。これにより、充放電時にシリコン微粒子が熱膨張収縮するときに、空隙を埋めるように膨張するため、負極にクラックを生じにくい、と特許文献1には記載されている。
特許文献1では、予め存在する空隙により、リチウムイオンの吸蔵及び放出に伴って起こるシリコン粒子の膨張収縮変化を抑制する。これにより、電池のサイクル特性を改善させている。しかしながら、特許文献1には、50サイクル後の容積維持率が示されているのみであり、特許文献1に開示された多孔質シリコン粒子でも、サイクル特性が低い場合があった。
国際公開WO2013/141230号公報
Binary Alloy Phase Diagrams, Second Edition, Ed. T.B. Massalski, ASM International, Materials Park, Ohio(1990)2,1481‐1483 J.K.Brandon,et al., Acta Cryst.(1975).B31,774−779
本発明の目的は、充放電容量及びサイクル特性に優れた負極活物質材料を提供することである。
本実施形態による負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有する。
本実施形態による負極活物質材料は、充放電容量及びサイクル特性に優れる。
図1は、Cu‐Sn系合金の平衡状態図である。 図2は、試験番号3の負極活物質材料の充電前後のX線回折測定の実測プロファイルと、ζ相及びε相の計算プロファイルを示す図である。 図3は、試験番号2の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、ζ相の計算プロファイルとを示す図である。 図4は、試験番号3のコイン電池のサイクル特性を示す図である。 図5は、試験番号18の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、σ相及びD03相の計算プロファイルとを示す図である。 図6は、試験番号19の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、ε相の計算プロファイルとを示す図である。
本実施形態による負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有する。
本実施形態による負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有する。そのため、本実施形態による負極活物質材料は、高い充放電容量を有する。本実施形態による負極活物質材料はζ相を含む。これにより、リチウムイオンの吸蔵及び放出時における体積変化(膨張及び収縮)に伴う歪みが緩和され、二次電池のサイクル特性が高まる。
好ましくは、上記Cu‐Sn系合金は、Sn:21.0〜24.0at%を含有し、残部はCu及び不純物からなる。
上記Cu‐Sn系合金は、Cuの一部に代えてさらに、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
この場合、上記Cu‐Sn系合金は、Sn:21.0〜24.0at%と、Ti:2.0at%以下、V:2.0at%以下、Cr:2.0at%以下、Mn:2.0at%以下、Fe:2.0at%以下、Co:2.0at%以下、Ni:3.0at%以下、Zn:3.0at%以下、Al:3.0at%以下、Si:3.0at%以下、B:2.0at%以下、及び、C:2.0at%以下からなる群から選択される1種又は2種以上とを含有し、残部はCu及び不純物からなることが好ましい。
好ましくは、上記負極活物質材料はζ相に加えてさらに、サイト欠損を含む、F−Cell構造のδ相、ε相、η’相、及びD03構造を有する相からなる群から選択される1種又は2種以上の相を有する。
サイト欠損を含むこれらのδ相、ε相、η’相、及びD03構造を有する相はいずれも、負極活物質材料中に、金属イオン(Liイオン等)の貯蔵サイト及び拡散サイトを形成する。そのため、負極活物質材料の体積放電容量及びサイクル特性がさらに改善される。
本実施形態による負極は、上述の負極活物質材料を含む。本実施形態による電池は、上述の負極を含む。
本実施形態による負極活物質材料の製造方法は、上述の負極活物質材料の製造方法であって、溶製材の製造工程及び溶体化熱処理工程を備える。溶製材の製造工程では、原料の溶製材を製造する。溶体化熱処理工程では、溶製材を、550〜670℃に保持した後、室温以下に急冷する溶体化熱処理を行う。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[負極活物質材料]
本実施形態による負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有する。そのため、本実施形態による負極活物質材料は、高い充放電容量を有する。ここで、Cu‐Sn系合金とは、Cu及びSnを合計で90at%以上含有する合金をいう。
[負極活物質材料の結晶構造]
本実施形態による負極活物質材料は、Cu‐Sn系合金相の一種であるζ相を含む。ζ相とは、図1に示すCu‐Sn系合金の平衡状態図(非特許文献1)中に示される、高温における平衡相の1種である。ζ相は、六方晶の結晶構造を有することが知られている(
J.K.Brandon,et al., Acta Cryst.(1975).B31,774−779(非特許文献2))。ζ相の詳細な結晶構造は、空間群分類がInternational Table AによるNo.173であり、格子定数の測定数値例は、a=7.323Å、c=7.856Åであり、単位胞に含まれる構成元素の原子座標の例は表1に示される構造である。
Figure 0006736868
ζ相は、金属イオンを吸蔵するときに結晶構造が変化し、金属イオンを放出するときに元のζ相の結晶構造に戻る。ζ相の結晶構造が金属イオンを吸蔵すると、Cu‐Kα1線を用いてX線回折の主要な回折線を測定した場合に、38.0〜39.0°、及び、49.0〜51.0°のそれぞれの範囲に、角度2θにおいてピークトップを持つ結晶構造になる。
ζ相は、金属イオンの吸蔵時に結晶構造が変化する。そのため、金属イオンの吸蔵における体積変化に伴う歪みが緩和される。歪みが緩和されると、充放電を繰り返しても、負極合剤の破損による充放電容量の低下が抑制される。これにより、負極活物質材料のサイクル特性が高まる。
本実施形態による負極活物質材料は、ζ相を主相として含むことが好ましい。「主相」とは、50体積%以上を占める合金相を意味する。
本実施形態による負極活物質材料は、金属イオンを吸蔵する、ζ相以外の他の合金相を含有してもよい。金属イオンを吸蔵する他の合金相はたとえば、図1の状態図に示される、ε相、η’相及びδ相である。ε相及びη’相は室温での平行安定相であり、δ相は高温における安定相である。他の合金相はさらに、状態図上の平衡相としては示されない、D03構造を持つ非平衡相等を含む。負極活物質材料は、これらの合金相を1種又は2種以上有してもよい。
上述の他の合金相が、サイト欠損を含む場合、負極活物質材料の充放電容量及びサイクル特性が改善する。したがって、負極活物質材料は、サイト欠損を含む、F−Cell構造のδ相、ε相、η’相、及びD03構造を有する相からなる群から選択される1種又は2種以上の相を有することが好ましい。サイト欠損を含むこれらの合金相は、負極活物質材料中にリチウムイオン等の金属イオンの貯蔵サイト及び拡散サイトを形成する。そのため、負極活物質材料の充放電容量及びサイクル特性をさらに改善できる。ここで、「サイト欠損」とは、結晶構造中の特定の原子サイトにおいて、占有率が1未満の状態であることをいう。
[負極活物質材料の結晶構造の解析方法]
負極活物質材料の結晶構造は、たとえば次の方法で解析できる。負極活物質材料に対してX線回折測定を実施して、X線回折プロファイルの実測データを得る。得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により、負極活物質材料中の相の構成を解析する。リードベルト法による解析には、汎用の解析ソフトである「RIETAN‐2000」(プログラム名)及び「RIETAN‐FP」(プログラム名)のいずれかを使用する。
電池内における、充電前の負極活物質材料の結晶構造については、たとえば次の方法で解析できる。充電前の状態で、電池をアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で分解し、電池から負極を取り出す。取り出された負極をマイラ箔に包む。その後、マイラ箔の周囲を熱圧着機で密封する。マイラ箔で密封された負極をグローブボックス外に取り出す。
続いて、負極を無反射試料板(シリコン単結晶の特定結晶面が測定面に平行になるように切り出した板)にヘアスプレーで貼り付けて測定試料を作製する。測定試料をX線回折装置にセットして、測定試料のX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得る。得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により負極内の負極活物質材料の結晶構造を特定する。
充電後の負極活物質材料の結晶構造については、満充電された電池に対して上述の方法で測定試料を作製し、X線回折測定を行うことにより結晶構造を解析できる。放電後の負極活物質材料の結晶構造については、充電後の電池を完全に放電した後に同様の手順でX線回折測定を行うことにより結晶構造を解析できる。
充放電に伴う結晶構造変化を解析するためのX線回折測定については、次の方法によっても行うことができる。充電前及び充電後のコイン電池を、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で分解する。負極の電極板に塗布されている負極活物質材料をスパチュラー等で集電体箔上から剥がして、X線回折用サンプルホルダに充填し、密閉する。このサンプルホルダ内に負極活物質材料を保持したまま、負極活物質材料に対してX線回折測定を行う。この方法では、集電体の銅箔等に由来する回折線が除去され、結晶構造の解析が行いやすい。
[負極活物質材料の化学組成]
本実施形態による負極活物質材料の化学組成は、負極活物質材料がζ相を含むCu‐Sn系合金を含有すれば、特に限定されないが、好ましくは、以下のとおりである。以下、化学組成について「at%」とは、原子組成百分率を意味する。
好ましくは、負極活物質材料は、Snを含有し、残部はCu及び不純物である。Sn含有量は21.0〜24.0at%であることが好ましい。Sn含有量のより好ましい下限は22.0at%であり、Sn含有量のより好ましい上限は23.0at%である。
負極活物質材料は、Cuの一部に代えて、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
この場合、好ましい負極活物質材料の化学組成は、Sn:21.0〜24.0at%と、Ti:2.0at%以下、V:2.0at%以下、Cr:2.0at%以下、Mn:2.0at%以下、Fe:2.0at%以下、Co:2.0at%以下、Ni:3.0at%以下、Zn:3.0at%以下、Al:3.0at%以下、Si:3.0at%以下、B:2.0at%以下、及び、C:2.0at%以下からなる群から選択される1種又は2種以上とを含有し、残部はCu及び不純物からなる。上記Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCは必要に応じて任意に添加される元素である。これらの元素のより好ましい含有量は以下のとおりである。
Ti含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。Ti含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Tiを含有させる場合、Ti含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
V含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。V含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Vを含有させる場合、V含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Cr含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。Cr含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Crを含有させる場合、Cr含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Mn含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。Mn含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Mnを含有させる場合、Mn含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Fe含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。Fe含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Feを含有させる場合、Fe含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Co含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。Co含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Coを含有させる場合、Co含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Ni含有量の好ましい上限は、上述のとおり3.0at%である。Ni含有量のより好ましい上限は2.0at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。Niを含有させる場合、Ni含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Zn含有量の好ましい上限は、上述のとおり3.0at%である。Zn含有量のより好ましい上限は2.0at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。Znを含有させる場合、Zn含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Al含有量の好ましい上限は、上述のとおり3.0at%である。Al含有量のより好ましい上限は2.0at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。Alを含有させる場合、Al含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
Si含有量の好ましい上限は、上述のとおり3.0at%である。Si含有量のより好ましい上限は2.0at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。Siを含有させる場合、Si含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
B含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。B含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Bを含有させる場合、B含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
C含有量の好ましい上限は、上述のとおり2.0at%である。C含有量のより好ましい上限は1.0at%であり、さらに好ましくは0.5at%である。Cを含有させる場合、C含有量の好ましい下限は0.01at%であり、より好ましくは0.05at%であり、さらに好ましくは0.1at%である。
[負極]
本実施形態の負極活物質材料は、負極合剤として集電体に塗布され、非水電解質二次電池の負極として使用される。この負極は、黒鉛からなる負極よりも高い充放電容量(体積当たりの充放電容量)を有する。
[負極合剤の充電時の膨張率]
負極合剤は、充放電に伴い膨張及び収縮する。充電時における負極合剤の膨張が少ない程、二次電池のサイクル特性が向上する。シリコンを用いた従来の負極活物質材料を用いた場合、負極合剤の膨張率は30%を大幅に超える。しかしながら、本実施形態による負極活物質材料を用いた負極合剤は、充電後の体積膨張が小さい。たとえば、負極合剤を用いてラミネートセルを製造した場合、膨張率は好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。
負極合剤の膨張率はたとえば、次の方法によって求めることができる。負極合剤を製造して集電体に塗布する。得られた集電体をラミネートセルにし、充放電させる。充電後の膨張したラミネートセルの厚さ(A)と、元のラミネートセルの厚さ(B)を、次式に代入し、膨張率(%)を算出する。
膨張率(%)={(A/B)−1}×100
ただし、元のラミネートセルの厚さ(B)は、ラミネートセルを作製後に負極板に電解液が十分染み込んで膨潤した状態における測定値とする。
充放電サイクルの過程で、厚さ変化の挙動が変化する場合は、必要に応じて5〜20回程度の充放電を繰り返してから解析を行う。そして、信頼性の高い複数の膨張率の値から、平均値を求める。
[電池]
本実施形態の電池は、非水電解質二次電池である。非水系電解質二次電池はたとえば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等の金属イオン二次電池である。電池は、上述の負極を含む。電池はたとえば、本実施形態の負極と、正極と、セパレータと、電解液又は電解質とを備える。
電池の形状は、円筒形、角形であってもよいし、コイン型、シート型等でもよい。本実施形態の電池は、ポリマー電池等の固体電解質を利用した電池でもよい。
[正極]
電池の正極は、好ましくは、金属イオンを含有する遷移金属化合物を活物質として含有する。さらに好ましくは、正極は、リチウム(Li)含有遷移金属化合物を活物質として含有する。Li含有遷移金属化合物は例えば、LiM1−xM’xO2、又は、LiM2yM’O4である。ここで、式中、0≦x、y≦1、M及びM’はそれぞれ、バリウム(Ba)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)の少なくとも1種である。
正極はたとえば、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物及びそのリチウム化合物、ニオブ酸化物及びそのリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェプレル相化合物、活性炭及び活性炭素繊維等の他の正極を用いてもよい。
[電解液]
電解液は、一般に、支持電解質としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水系電解液である。リチウム塩は例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiB(C65)、LiCF3SO3、LiCH3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF2SO22、LiCl、LiBr及びLiI等である。これらは、単独で用いられてもよく組み合わせて用いられてもよい。有機溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等の炭酸エステル類が好ましい。カルボン酸エステル、エーテルをはじめとする他の有機溶媒も使用可能である。これらの有機溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
[セパレータ]
セパレータは、正極及び負極の間に設置される。セパレータは絶縁体としての役割を果たす。セパレータはさらに、電解質の保持にも大きく寄与する。本実施形態の電池は周知のセパレータを備えればよい。セパレータはたとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はその両者の混合物、もしくは、ガラスフィルターなどの多孔体である。
[負極活物質材料の製造方法]
本実施形態の負極活物質材料の製造方法について説明する。負極活物質材料の製造方法は、溶製材の製造工程、溶体化熱処理工程及び粉砕工程を含む。
[溶製材の製造工程]
初めに、原料の溶湯を製造する。たとえば、上述の化学組成を有する溶湯を製造する。溶湯は、アーク溶解又は抵抗加熱溶解等の通常の溶解方法で製造される。次に、得られた溶湯を用いて溶製材を製造する。溶製材は、溶湯を造塊法によりインゴット(バルク合金)にすることで得られる。溶製材は、溶湯を急冷凝固させることにより製造してもよい。急冷凝固による方法はたとえば、ストリップキャスティング法、メルトスピン法、ガスアトマイズ法、油アトマイズ法である。
[溶体化熱処理工程]
得られた溶製材に対して、溶体化熱処理を実施する。溶体化熱処理は、ζ相が平衡状態で安定に存在する温度域に、溶製材の温度を保持し、その後、室温以下に急冷することで行う。この溶体化熱処理により、高温相のζ相を室温で準安定相として得ることができる。溶製材の凝固偏析が顕著な場合には、溶体化熱処理に先立って、均一化熱処理を行ってもよい。均一化熱処理の温度域はζ相の温度域よりも高く、液相の温度域よりも低い温度域である。均一化熱処理を行う場合には、不活性ガスを用いて、雰囲気中の酸素濃度を極力低下させることが好ましい。
温度保持時の溶製材の温度は550〜670℃である。温度保持の時間はたとえば、1〜72時間である。室温以下への急冷の方法は、たとえば水冷又は油冷による冷却(焼入れ)である。これらの熱処理により、高温相のζ相を室温で準安定相として得ることができる。急冷後に、液体窒素中に投入することにより、いわゆるサブゼロ処理を施してもよい。この場合、得られたζ相が、室温時効により平衡相に分解することを抑制できる。これにより、負極活物質材料の結晶構造を安定なζ相にする。
ζ相を室温下で準安定相として得るためには、急冷が効果的に行われる必要がある。急冷を効果的に行うためには、十分に速い速度で溶製材を抜熱する必要がある。十分に速い速度で溶製材を抜熱するためには、溶製材をあらかじめ小さくしておくことが有効である。溶製材の大きさはたとえば、直径50mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下の粒状である。他の溶製材の形状はたとえば、厚さ20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下の板状である。
[粉砕工程]
溶体化熱処理工程で得られた熱処理材(インゴット又は鋳片)を粉砕して負極活物質材料を製造する。粉砕方法はたとえば、熱処理材の切断、ハンマーミルによる粗粉砕、ボールミル、アトライタ、ディスクミル、ジェットミル及びピンミル等での機械的粉砕である。粉砕により、負極活物質材料を必要な粒度に調整する。負極活物質材料の粗粉末に対する粉砕は、酸化抑制のため、不活性ガス雰囲気またはドライ雰囲気で行うのが好ましい。粉砕工程において、溶体化熱処理を実施してζ相の比率を調整してもよい。
負極活物質材料の粉末の平均粒径が小さい程、負極活物質材料の反応面積が増大し、レート特性に優れる。しかしながら、負極活物質材料の粉末の平均粒径が小さすぎれば、酸化などで粉末表面の性状が変化してリチウムイオンが負極活物質材料の中に進入しにくくなる。この場合、レート特性や溶量維持率が低下する場合がある。したがって、負極活物質材料の粉末の好ましい平均粒径は0.1〜100μmであり、さらに好ましくは、1〜50μmである。
[負極及び電池の製造方法]
本実施形態による負極活物質材料を用いた負極は、周知の方法で製造することができる。たとえば、負極活物質材料の粉末に対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びスチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダを混合する。負極に十分な導電性を付与するために天然黒鉛、人造黒鉛及びアセチレンブラック等の炭溶製材料粉末を混合してもよい。これにN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)及び水等の溶媒を加えてバインダを溶解する。必要に応じて、ホモジナイザ又はガラスビーズを用いて攪拌し、負極合剤にする。この負極合剤を圧延銅箔及び電析銅箔等の活物質支持体に塗布して乾燥する。得られた乾燥物にプレスを施す。以上の工程により、負極板を製造できる。
混合するバインダは、負極の機械的強度や電池特性の観点から5〜10質量%程度であることが好ましい。支持体は、銅箔に限定されない。支持体は例えば、ステンレス及びニッケル等の他の金属の薄箔や、ネット状のシートパンチングプレート、及び、金属素線ワイヤーで編み込んだメッシュ等でもよい。
負極板上に、セパレータ、金属Li薄板を順次積層した積層物を製造する。積層物をケースに収め、電池を製造する。以上の工程により、本実施形態による負極及び電池を製造できる。
表2に示す化学組成の負極活物質材料を用いて、各試験番号の電池を製造し、その特性を評価した。
Figure 0006736868
[負極活物質材料の製造]
各試験番号において、表2に示す化学組成の原料を高周波溶解して溶湯を製造した。得られた溶湯を鋳造して直径約25mm、高さ約7mmのインゴットを製造した。インゴットを半分に切断し、得られた切断片をアルゴン雰囲気中、700℃で24時間均一化熱処理を実施した。均一化熱処理後、炉内で室温まで冷却した後、大気中に回収した。続いて、均一化熱処理を実施した溶製材に、溶体化熱処理を実施した。溶体化熱処理では、溶製材を、焼入れ用の熱処理炉で真空中、620℃で20時間温度保持し、氷水で急冷した。さらに、室温時効を抑制するために、溶体化熱処理により得られた熱処理材を液体窒素中に投入し、1時間保持した後、室温の大気中に回収した。得られた熱処理材を、粒度が45μm以下となるように、ロッドミルを用いて粉砕し、負極活物質材料の粉末を得た。得られた負極活物質材料は、表2に示す化学組成を有していた。
[結晶構造の特定]
試験番号2、試験番号3、試験番号18及び試験番号19の負極活物質材料の結晶構造を次の方法により特定した。負極活物質材料に対してX線回折測定を実施して、実測プロファイルを得た。得られた実測プロファイルに含まれる主要な回折ピークの位置を特定した。さらに、ζ相の結晶構造を初期構造モデルとして、実測プロファイルからリートベルト法を用いて負極活物質材料に含まれる結晶構造を特定した。
具体的には、以下の測定条件でX線回折測定を実施した。得られた実測プロファイルを図2(c)、図3(b)、図5(c)及び図6(b)に示す。
・装置:リガク製 SmartLab
・X線管球:Cu‐Kα線
・X線出力:45kV、200mA
・入射側モノクロメータ:ヨハンソン素子(Cu‐Kα2線及びCu‐Kβ線をカット)
・光学系:Bragg−Bretano geometry
・入射平行スリット:5.0degree
・入射スリット:1/2degree
・長手制限スリット:10.0mm
・受光スリット1:8.0mm
・受光スリット2:13.0mm
・受光平行スリット:5.0degree
・ゴニオメータ:SmartLabゴニオメータ
・X線源‐ミラー間距離:90.0mm
・X線源‐選択スリット間距離:114.0mm
・X線源‐試料間距離:300.0mm
・試料‐受光スリット1間距離:187.0mm
・試料‐受光スリット2間距離:300.0mm
・受光スリット1‐受光スリット2間距離:113.0mm
・試料‐検出器間距離:331.0mm
・検出器:D/Tex Ultra
・スキャンレンジ:10‐120degree
・スキャンステップ:0.02degree
・スキャンモード:連続スキャン
・スキャン速度:0.1degree/min
Cu‐Snの二元系状態図は公知であり、620℃において、Cu‐22.5at%Sn合金はζ相である。このζ相を十分な冷却速度で急冷した場合、得られる合金はほぼ全量がζ相である。つまり、試験番号3は、ほぼ全量がζ相であることが推測できる。
ζ相の結晶構造は、上述のとおり、既知である。ζ相の結晶構造は六方晶構造であり、空間群の分類上、International Table AのNo.173(P63)となる。ζ相の空間群番号の結晶構造の格子定数及び原子座標は、表1に示すとおりである。このζ相の空間群番号の構造モデルをリートベルト解析の初期構造モデルとして、試験番号3について、実測プロファイルの計算値(以下、計算プロファイルという)を求めた。リートベルト解析にはRietan‐2000(プログラム名)を用いた。得られたε相の計算プロファイルを図2(a)に、ζ相の計算プロファイルを図2(b)に示す。
試験番号3の負極活物質材料に対しては、後述するコイン電池を作製して充放電させた後、同様の方法で結晶構造を特定した。具体的には、コイン電池を満充電(1回)させた後、グローブボックス内で分解した。負極の電極板に塗布されている負極活物質材料をスパチュラ―で集電体箔上から剥がし、サンプルホルダに充填した。上述のX線回折測定の条件でX線回折測定を実施し、実測プロファイルを得た。結果を図2(d)に示す。さらに、このコイン電池を完全放電(1回)させ、同様の方法で実測プロファイルを得た。結果を図2(e)に示す。
[コイン電池用負極の製造]
上述の各試験番号の負極活物質材料を用いて、コイン電池用負極を製造した。負極活物質材料、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)(2倍希釈)、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合した。混合比は、質量比で75(1g):15(0.2g):10(0.134g):5(0.067g)であった。濃度が27.2%となるように混合物に蒸留水を加え、混練機を用いて負極合剤を製造した。
製造された負極合剤を、アプリケータ(150μm)を用いて銅箔上に塗布した。負極合剤が塗布された銅箔を、100℃で20分間乾燥させた。乾燥後の銅箔は、表面に負極活物質材料からなる塗膜を有した。塗膜を有する銅箔に対して打ち抜き加工を実施して、直径13mmの円板状の銅箔を製造した。打ち抜き加工後の銅箔を、プレス圧500kgf/cm2で押圧して、板状の負極を製造した。
[コイン型電池の製造]
対極(正極)にLi金属箔を用いたコイン型電池(2016型)を製造した。具体的には、負極電極上に、直径19mmのセパレータを配置した。さらに、セパレータ上に、直径15mmの金属Li箔を配置して、積層物を形成した。積層物をケース内に納めた。積層物を収納したケースの外周部を、専用のかしめ機でプレス加工して、コイン型電池(2016型)を作製した。支持電解質をLiPF6とし、LiPF6:エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC):ビニレンカーボネート(VC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)=16:48:23:16:1:8(質量比)とした混合溶媒を、電解液として用いた。
[コイン電池の放電容量測定試験]
得られた各試験番号のコイン電池に対して、放電容量の測定を実施した。対極に対して電位差0.005Vになるまで0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)でコイン電池に対して定電流ドープ(電極へのリチウムイオンの挿入、リチウムイオン二次電池の充電に相当)を行った。その後、0.005Vを保持したまま、7.5μA/cm2になるまで定電圧で対極に対してドープを続けた。次に、0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)で、電位差1.2Vになるまで脱ドープ(電極からのリチウムイオンの離脱、リチウムイオン二次電池の放電に相当)を行い、脱ドープ容量を測定した。同一の条件でドープと脱ドープとを100回繰り返した。
脱ドープ容量は、この負極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた時の放電容量に相当する。したがって、測定された脱ドープ容量を放電容量と定義した。測定試験の開始から数サイクル目までに放電容量が低下する場合は、放電容量が安定するまで測定を数回繰り返し、初回の放電容量とした。100回目の脱ドープ時の放電容量を100サイクル時放電容量とした。負極合剤の塗布厚さ、及び、負極合剤の単位面積当たりの塗布質量から、負極合剤の体積密度を算出した。放電容量に負極合剤の体積密度を掛けて、単位体積当たりの放電容量を得た。結果を表2に示す。
[容積維持率の算出]
得られた初回放電容量と、100サイクル時放電容量とを次式に代入して、容積維持率を算出した。結果を表2に示す。
容積維持率(%)=100サイクル時放電容量/初回放電容量×100
[ラミネートセル用負極の製造]
上述の各試験番号の負極活物質材料と、黒鉛粉末とを用いて、ラミネートセル用負極を製造した。黒鉛粉末は以下のとおり準備した。球状化天然黒鉛にピッチ粉末を2質量%混合し、窒素気流中で1000℃で焼成して黒鉛粉末を得た。得られた黒鉛粉末の平均粒径(D50)は20μmであった。
上述の各試験番号の負極活物質材料と、黒鉛粉末とを混合し混合物を得た。混合比率は、質量%で20:80であった。この混合物を活物質材料として、コイン電池用負極と同様に負極合剤を製造した。製造された負極合剤を、アプリケータ(150μm)を用いて銅箔上に塗布した。負極合剤が塗布された銅箔を、100℃で20分間乾燥させた。乾燥後の銅箔は、表面に負極活物質材料からなる塗膜を有した。塗膜を有する銅箔から2.5cm四方の銅箔を切り出した。切り出した銅箔を、プレス圧500kgf/cm2で押圧して、負極を製造した。
[ラミネートセル用正極の製造]
ラミネートセル用正極には、活物質としてコバルト酸リチウムを用いた。コバルト酸リチウム、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、及び、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を混合した。混合比率は、質量比で80(0.8g):10(0.1g):10(0.1g)であった。N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)を用いて混合物の濃度を調整し、混練機を用いて正極合剤を製造した。得られた正極合剤をアプリケータ(150μm)を用いてアルミ箔上に塗布した。正極合剤が塗布されたアルミ箔を、100℃で20分間乾燥させた。乾燥後のアルミ箔は、表面にコバルト酸リチウムからなる塗膜を有した。塗膜を有するアルミ箔から2.3cm四方のアルミ箔を切り出した。切り出したアルミ箔を、プレス圧500kgf/cm2で押圧して、正極を製造した。
[ラミネートセルの製造]
得られた負極と正極とを用いて、ラミネートセルを製造した。具体的には、負極電極上に、ポリオレフィン製のセパレータを配置した。さらに、セパレータ上に、製造した正極を配置して積層物を形成した。積層物をアルミラミネートシート内に納めた。正極側にアルミ製のタブ、負極側にニッケル製のタブを用いて、ラミネートセルを製造した。支持電解質をLiPF6とし、LiPF6:エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC):ビニレンカーボネート(VC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)=16:48:23:16:1:8(質量比)とした混合溶媒を、電解液として用いた。電解液を注入するまでの操作は大気中で行い、電解液を注入して密封する最終組み立てをアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で行った。
[ラミネートセルの放電容量及び容積維持率の測定試験]
得られた各試験番号のラミネートセルに対して、放電容量の測定試験を実施した。試験方法はコイン電池に対する試験方法と同様の方法で実施した。さらに、得られた放電容量から、容積維持率をコイン電池と同様に算出した。結果を表2に示す。
[ラミネートセルの厚さ測定試験]
得られた各試験番号のラミネートセルに対して、厚さ測定試験を実施した。具体的には、ラミネートセルをテフロン(商標)板で挟み、さらにステンレス製の補強板でボルト締めをして固定した。光電子式透過型リニアエンコーダーを搭載したリニアゲージを用いて、充電後のラミネートセルの厚さ(A)と、元のラミネートセルの厚さ(B)とを測定した。得られた数値を上述の式に代入して膨張率(%)を算出した。結果を表2に示す。ここで、元のラミネートセルの厚さ(B)は、ラミネートセルを作製後に負極板に電解液が十分に染み込んで膨潤した状態における測定値を使用した。充電後のラミネートセルの厚さ(A)は、放電容量が安定しているサイクルにおける5回の平均値を使用した。
[評価結果]
図2は試験番号3の負極活物質材料の充電前後のX線回折測定の実測プロファイルと、ζ相及びε相の計算プロファイルとを示す図である。図2中、(a)はε相の計算プロファイル、(b)はζ相の計算プロファイル、(c)は負極活物質材料(充電前)の実測プロファイル、(d)は1回充電させた後の負極活物質材料の実測プロファイル、(e)は1回放電させた後の負極活物質材料の実測プロファイルを示す。
図2を参照して、充電前の負極活物質材料の実測プロファイル(c)は、主にζ相の計算プロファイル(b)と一致した。さらに、実測プロファイル(c)中には、ε相の計算プロファイル(a)にみられる回折ピークと同じ位置に弱い回折ピークがみられた。したがって、試験番号3の負極活物質材料の結晶構造は、充電前において、主にζ相であり、少量のε相を含むことが確認された。
図2の1回充電状態の実測プロファイル(d)と、1回放電状態の実測プロファイル(e)とを比較した結果を説明する。充電状態の実測プロファイル(d)では、38.0〜39.0°、及び、49.0〜51.0°のそれぞれの範囲に、角度2θにおいて回折ピークがみられた。放電状態の実測プロファイル(e)では、これらの回折ピークが消失した。さらに、充電前の実測プロファイル(c)中に確認されるζ相由来の回折ピーク(図2中、●で表示)が、充電状態の実測プロファイル(d)中では、その強度が低下した。放電状態の実測プロファイル(e)では、これらのζ相由来の回折ピークの強度が再び増加した。したがって、試験番号3の負極活物質材料は、充電前の結晶構造は主にζ相であり、充電(すなわち、ζ相がリチウムを吸蔵する)に伴ってその結晶構造が変化することが確認された。さらに、放電により、負極活物質材料のζ相の比率は再び増加することが確認された。充電前の負極活物質材料に少量含まれたε相についても、同様の挙動を示すことが確認された。
図3は、試験番号2の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、ζ相の計算プロファイルとを示す図である。図3中、(a)はζ相の計算プロファイル、及び、(b)は負極活物質材料(充電前)の実測プロファイルを示す。
図3を参照して、試験番号2の負極活物質材料(充電前)の実測プロファイル(b)は、ζ相の計算プロファイル(a)とほぼ一致した。したがって、試験番号2の負極活物質材料の結晶構造は、ほとんどζ相であることが確認された。
表2に示す試験番号1〜試験番号16の負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有した。そのため、これらの負極活物質材料を用いてコイン電池を製造した場合、その初回放電容量は1500mAh/cm3以上となり、優れた放電容量を示した。さらに、これらのコイン電池の容積維持率は80%以上となり、優れたサイクル特性を示した。これらの負極活物質材料を用いてラミネートセルを製造した場合、その初回放電容量は700mAh/cm3以上となり、優れた放電容量を示した。さらに、これらのラミネートセルの容積維持率は80%以上、膨張率は30%以下となり、優れたサイクル特性を示した。
試験番号1〜試験番号4は、Cu‐Sn二元系の負極活物質材料の例である。試験番号2の負極活物質材料は特に、その結晶構造のほとんどがζ相であった。そのため、試験番号2では、試験番号1、試験番号3及び試験番号4と比較して、コイン電池及びラミネートセルの両方において、初回放電容量及び容積維持率が高かった。
図4は、試験番号3のコイン電池のサイクル特性を示す図である。図4を参照して、試験番号3のコイン電池の放電容量は、1サイクル目から7サイクル目まで徐々に低下して1808mAh/cm3となり、その後安定した。この放電容量は、黒鉛の放電容量の理論値の約2.2倍であった。試験番号3のコイン電池の放電容量は、100サイクル目で1758mAh/cm3となり、7サイクル目の放電容量に対して97%という高い容量維持率を示した。さらに、7サイクル目で放電容量が安定した後は、100サイクル目まで放電容量が大きく低下することなく、高い放電容量を維持した。
試験番号5〜試験番号16は、Cu及びSnに加え、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種を含有する負極活物質材料の例である。試験番号5〜試験番号16に示すとおり、負極活物質材料にこれらの元素が含有されても、コイン電池及びラミネートセルは、高い放電容量及び高い容積維持率を示した。
一方、試験番号17は、Siのみを用いた負極活物質材料の例である。試験番号17の負極活物質材料を用いて製造したコイン電池は、初回放電容量は1500mAh/cm3以上となったものの、容積維持率が5.3%となり、著しく低かった。試験番号17の負極活物質材料を用いて製造したラミネートセルは、初回放電容量は700mAh/cm3以上となったものの、容積維持率が7.5%となり、著しく低かった。さらに、このラミネートセルは、膨張率が75.0%と高かった。上述のとおり、Siは充放電に伴う体積変化が大きく、負極が一部破損したため、コイン電池及びラミネートセルの容積維持率が低下したと考えられる。
試験番号18及び試験番号19は、ζ相を含まない負極活物質材料の例である。図5は、試験番号18の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、σ相及びD03相の計算プロファイルとを示す図である。図5中、(a)はσ相の計算プロファイル、(b)はD03相の計算プロファイル、及び、(c)は負極活物質材料(充電前)の実測プロファイルを示す。
図5を参照して、充電前の実測プロファイル(c)は、σ相及びD03相の計算プロファイルと一致した。さらに、ζ相に由来する回折ピークは観察されなかった。したがって、試験番号18の負極活物質材料中には、ζ相が確認されなかった。
図1に示す、Cu‐Sn二元系状態図を参照して、19at%Snを含有し残部はCu及び不純物からなる合金(試験番号18)は、ζ相を形成しない。したがって、二元系において試験番号18の化学組成では、ζ相が形成されなかった。そのため、試験番号18の負極活物質材料を用いたコイン電池の容積維持率は80%以上となったものの、初回放電容量は1500mAh/cm3未満となった。さらに、試験番号18の負極活物質材料を用いたラミネートセルの容積維持率は80%以上となったものの、初回放電容量は700mAh/cm3未満となった。
図6は、試験番号19の負極活物質材料(充電前)のX線回折測定の実測プロファイルと、ε相の計算プロファイルとを示す図である。図6中、(a)はε相の計算プロファイル、及び、(b)は負極活物質材料(充電前)の実測プロファイルを示す。
図6を参照して、充電前の実測プロファイル(b)は、ε相の計算プロファイルと一致した。さらに、ζ相に由来する回折ピークは観察されなかった。したがって、試験番号19の負極活物質材料中には、ζ相が確認されなかった。
図1に示す、Cu‐Sn二元系状態図を参照して、25at%Snを含有し残部はCu及び不純物からなる合金(試験番号19)は、ζ相を形成しない。したがって、二元系において試験番号19の化学組成では、ζ相が形成されなかった。そのため、試験番号19の負極活物質材料を用いたコイン電池の初回放電容量は1500mAh/cm3以上となったものの、容積維持率は80%以下となった。さらに、試験番号19の負極活物質材料を用いたラミネートセルの初回放電容量は700mAh/cm3以上となったものの、容積維持率は80%以下となった。試験番号19の負極活物質材料を用いたラミネートセルの膨張率は30%を超えた。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (8)

  1. 負極活物質材料であって、
    前記負極活物質材料は、
    ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有し、
    前記負極活物質材料における前記ζ相の割合が50体積%以上である、負極活物質材料。
  2. 請求項1に記載の負極活物質材料であって、
    前記Cu‐Sn系合金は、
    Sn:21.0〜24.0at%を含有し、
    残部はCu及び不純物からなる、負極活物質材料。
  3. 請求項2に記載の負極活物質材料であって、
    前記Cu‐Sn系合金は、Cuの一部に代えてさらに、
    Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、負極活物質材料。
  4. 請求項3に記載の負極活物質材料であって、
    前記Cu‐Sn系合金は、
    Sn:21.0〜24.0at%と、
    Ti:2.0at%以下、V:2.0at%以下、Cr:2.0at%以下、Mn:2.0at%以下、Fe:2.0at%以下、Co:2.0at%以下、Ni:3.0at%以下、Zn:3.0at%以下、Al:3.0at%以下、Si:3.0at%以下、B:2.0at%以下、及び、C:2.0at%以下からなる群から選択される1種又は2種以上とを含有し、
    残部はCu及び不純物からなる、負極活物質材料。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の負極活物質材料であって、前記ζ相に加えてさらに、
    サイト欠損を含む、F−Cell構造のδ相、ε相、η’相、及びD0構造を有する相からなる群から選択される1種又は2種以上の相を有する、負極活物質材料。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の負極活物質材料を含む負極。
  7. 請求項6に記載の負極を備える電池。
  8. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の負極活物質材料の製造方法であって、
    原料の溶製材を製造する工程と、
    前記溶製材を、550〜670℃に保持した後、室温以下に急冷する溶体化熱処理を行う工程とを備える、負極活物質材料の製造方法。
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