以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る機械式自動マニュアル変速機を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施形態に係る機械式自動マニュアル変速機のギヤ配列の一例を示す図である。機械式自動マニュアル変速機は、インプットシャフト10と、インプットシャフト10と同軸に配置されたアウトプットシャフト11と、これらインプットシャフト10及び、アウトプットシャフト11と平行に配置されたカウンタシャフト12とを備えている。なお、図1中において、符号91はインプットシャフト10の回転数を検出する入力回転数センサ、符号92はアウトプットシャフト11の回転数を検出する出力回転数センサをそれぞれ示している。
インプットシャフト10には、インプットメインギヤ13が一体回転可能に設けられている。アウトプットシャフト11には、入力側から順に、4速メインギヤM4、3速メインギヤM3、2速メインギヤM2、1速メインギヤM1、リバースメインギヤRM、6速メインギヤM6が設けられている。4速メインギヤM4、3速メインギヤM3、2速メインギヤM2、1速メインギヤM1及び、リバースメインギヤMRは、アウトプットシャフト11に相対回転可能に設けられ、6速メインギヤM6はアウトプットシャフト11に一体回転可能に設けられている。
カウンタシャフト12には、入力側から順に、インプットメインギヤ13と噛合するインプットカウンタギヤ14、4速メインギヤM4と噛合する4速カウンタギヤC4、3速メインギヤM3と噛合する3速カウンタギヤC3、2速メインギヤM2と噛合する2速カウンタギヤC2、1速メインギヤM1と噛合する1速カウンタギヤC1、アイドラギヤ15を介してリバースメインギヤMRと噛合するリバースカウンタギヤCR、6速メインギヤM6と噛合する6速カウンタギヤC6が設けられている。インプットカウンタギヤ14、4速カウンタギヤC4、3速カウンタギヤC3、2速カウンタギヤC2、1速カウンタギヤC1及び、リバースカウンタギヤCRは、カウンタシャフト12に一体回転可能に設けられ、6速カウンタギヤC6はカウンタシャフト12に相対回転可能に設けられている。
第1シンクロ機構20は、アウトプットシャフト11に固定された第1ハブ21と、インプットメインギヤ13に固定されたインプットドグギヤ22と、4速メインギヤM4に固定された4速ドグギヤ23と、第1ハブ21に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第1スリーブ24と、第1スリーブ24と各ドグギヤ22,23との間にそれぞれ介装された一対のシンクロリング(ブロックリング)SRとを備えている。第1スリーブ24の外周凹溝には、第1スリーブ24を軸方向に移動させる第1シフトフォークF1が係合されている。
第1スリーブ24が図中矢印A方向に移動してインプットドグギヤ22とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットシャフト10からアウトプットシャフト11に直結となり、アウトプットシャフト11は5速相当で回転する。第1スリーブ24が図中矢印B方向に移動して4速ドグギヤ24とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、4速カウンタギヤC4、4速メインギヤM4となり、アウトプットシャフト11は4速相当で回転する。
第2シンクロ機構30は、アウトプットシャフト11に固定された第2ハブ31と、3速メインギヤM3に固定された3速ドグギヤ32と、2速メインギヤM2に固定された2速ドグギヤ33と、第2ハブ31に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第2スリーブ34と、第2スリーブ34と各ドグギヤ32,33との間にそれぞれ介装された一対のシンクロリングSRとを備えている。第2スリーブ34の外周凹溝には、第2スリーブ34を軸方向に移動させる第2シフトフォークF2が係合されている。
第2スリーブ34が図中矢印A方向に移動して3速ドグギヤ32とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、3速カウンタギヤC3、3速メインギヤM3となり、アウトプットシャフト11は3速相当で回転する。第2スリーブ34が図中矢印B方向に移動して2速ドグギヤ34とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、2速カウンタギヤC2、2速メインギヤM2となり、アウトプットシャフト11は2速相当で回転する。
第3シンクロ機構40は、アウトプットシャフト11に固定された第3ハブ41と、1速メインギヤM1に固定された1速ドグギヤ42と、リバースメインギヤMRに固定されたリバースドグギヤ43と、第3ハブ41に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第3スリーブ44と、第3スリーブ44と各ドグギヤ42,43との間にそれぞれ介装された一対のシンクロリングSRとを備えている。第3スリーブ44の外周凹溝には、第3スリーブ44を軸方向に移動させる第3シフトフォークF3が係合されている。
第3スリーブ44が図中矢印A方向に移動して1速ドグギヤ42とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、1速カウンタギヤC1、1速メインギヤM1となり、アウトプットシャフト11は1速相当で回転する。第3スリーブ44が図中矢印B方向に移動してリバースドグギヤ44とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、リバースカウンタギヤCR、アイドラギヤ15、リバースメインギヤMRとなり、アウトプットシャフト11は逆回転する。
第4シンクロ機構50は、カウンタシャフト12に固定された第4ハブ51と、6速カウンタギヤC6に固定された6速ドグギヤ52と、第4ハブ51に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第4スリーブ54と、第4スリーブ54と6速ドグギヤ52との間に介装されたシンクロリングSRとを備えている。第4スリーブ54の外周凹溝には、第4スリーブ54を軸方向に移動させる第4シフトフォークF4が係合されている。
第4スリーブ54が図中矢印A方向に移動して6速ドグギヤ52とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、6速カウンタギヤC6、6速メインギヤM6となり、アウトプットシャフト11は6速相当で回転する。
次に、図2〜4に基づいて、本実施形態のシフト装置60の詳細構成を説明する。
図2に示すように、シフト装置60は、互いに平行に延びる第1シフトシャフト61Aと、第2シフトシャフト61Bとを備えている。
第1シフトシャフト61Aの一端側には、変速段を1速又はリバースに選択的に切り替えるための第1シフトブロック62が連結されている。また、第1シフトシャフト61Aの他端側には、第3シフトフォークF3が固定されている。第1シフトシャフト61Aの第1シフトブロック62と第3シフトフォークF3との間には、第2シフトフォークF2が軸方向に移動可能に設けられている。この第2シフトフォークF2には、変速段を3速又は2速に選択的に切り替えるための第3シフトブロック64が連結されている。
第2シフトシャフト61Bの一端側には、第1シフトフォークF1が軸方向に移動可能に設けられている。この第1シフトフォークF1には、変速段を5速又は4速に選択的に切り替えるための第2シフトブロック63が連結されている。また、第2シフトシャフト61Bの後端側には、第4シフトフォークF4が固定されている。第2シフトシャフト61Bの第1シフトフォークF1と第4シフトフォークF4との間には、変速段を6速に切り替えるための第4シフトブロック65が連結されている。
図3に示すように、第1シフトレバー66及び、第2シフトレバー67は、略L字状に屈曲して形成されており、支持シャフト70に回転自在に軸支されている。第1シフトレバー66の一端部は、第1シフトブロック62の凹部に係合され、第2シフトレバー67の一端部は、第2シフトブロック63の凹部に係合されている。
第3シフトレバー68及び、第4シフトレバー69は、略L字状に屈曲して形成されており、支持シャフト71に回転自在に軸支されている。第3シフトレバー68の一端部は、第3シフトブロック64の凹部に係合され、第4シフトレバー69の一端部は、第4シフトブロック65の凹部に係合されている。
これら第1〜4シフトレバー66〜69は、運転室に設けられた操作レバー90の操作に応じて、各アクチュエータ72〜75により支持シャフト70,71を中心に回動されることで、各シフトブロック62〜65をシフト移動させる。
第1及び第2シフトレバー66,67は、第1セレクトアクチュエータ72によりセレクトされると共に、第1シフトアクチュエータ73によりシフト回動される。第3及び第4シフトレバー68,69は、第2セレクトアクチュエータ74によりセレクトされると共に、第2シフトアクチュエータ75により回動される。
第1、第2セレクトアクチュエータ72,74は、セレクト用モータ72A,74Aと、セレクト用モータ72A,74Aのモータギヤ72B,74Bと噛合するセレクトギヤ72C,74Cが設けられた筒体72D,74Dとを備えている。筒体72D,74Dの外周面には、セレクト用モータ72A,74Aの駆動により筒体72D,74Dが回動されると、各シフトレバー66〜69の他端部と選択的に係合される一対の突起部74E(筒体72Dの突起部は図示を省略)が設けられている。
第1、第2シフトアクチュエータ73,75は、シフト用モータ73A,75Aと、シフト用モータ73A,75Aの回転軸に連結されたボールネジ73B,75Bとを備えている。第1、第2シフトアクチュエータ73,75には、筒体72D,74Dのボールネジ73B,75Bに対する相対移動量(以下、シフトストローク量という)を検出するシフトストロークセンサ93(図4にのみ示す)が設けられている。なお、ストローク量を検出する手段としては、シフト用モータ73A,75Aに内蔵された図示しない回転角センサ等を用いてもよい。
各ボールネジ73B,75Bは、筒体72D,74Dに嵌挿されたナット部73C(図4にのみ示す)と螺合すると共に、その両端部をインターロックプレート73D,75Dによって支持されている。インターロックプレート73D,75Dには、筒体72D,74Dの突起部74Eをシフト方向にスライド移動可能に収容するガイド溝75E(インターロックプレート73Dのガイド溝は図示を省略)が設けられている。
シフト用モータ73A,75Aの駆動によりボールネジ73B,75Bが回転すると、シフトレバー66〜69が回動される。これにより、シフトブロック62〜65がシフト方向に移動され、ニュートラル位置から所定段へのギヤイン動作又は、所定段からニュートラル位置へのギヤ抜き動作が行われるように構成されている。
次に、ニュートラル位置から4速への同期結合及びギヤイン動作の一例を説明する。他の変速段やリバースへの同期結合及びギヤイン動作も同様のため、詳細な説明は省略する。
操作レバー90がニュートラル位置から4速のセレクト位置まで操作されると、セレクト用モータ72Aが駆動して、第2シフトレバー67がセレクトされる。さらに、操作レバー90が4速のシフト位置まで操作されると、シフト用モータ73Aが駆動して、ボールネジ73Bの回転に伴い、第2シフトブロック63が第1シフトフォークF1と一体にシフト方向に移動を開始する。すなわち、図5に示すように、第1シフトフォークF1と係合する第1スリーブ24が、ニュートラル位置から4速ドグギヤ23に向けて移動を開始する。なお、図5中において、符号24Gは第1スリーブ24のスプライン歯、符号SGはシンクロリングSRのシンクロ歯、符号23Gは4速ドグギヤ23のドグ歯をそれぞれ示している。
図6(A)に示すように、第1スリーブ24のシフト移動によりスプライン歯24GがシンクロリングSRのシンクロ歯SGと接触すると、シンクロリングSRに同期荷重が生じる(以下、各スリーブ24,34,44,54とシンクロリングSRとが接触する時を同期開始と称する)。このように、シンクロリングSRに同期荷重が生じた状態が維持されると、結果として第1スリーブ24と4速ドグギヤ23との回転が同期される(以下、各スリーブ24,34,44,54と変速ギヤ(変速ギヤのドグギヤ)との回転が同期される時点を同期終了と称する)。
第1スリーブ24と4速ドグギヤ23との回転が同期されると、図6(B)に示すように、スプライン歯24Gがシンクロ歯SGを掻き分けることで、第1スリーブ24はシフト方向に向けて移動を再開する。
その後、図6(C)に示すようにスプライン歯24Gとドグ歯23Gとが噛合を開始し、さらに、図6(D)に示すように、スプライン歯24Gとドグ歯23Gとが完全に噛合されることで、4速のギヤイン動作が終了するようになっている。
変速機ECU100は、いわゆる電子制御ユニットであって、CPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。
図7は、本発明の一実施形態に係る変速機ECU100及び関連する構成を示す機能ブロック図である。
変速機ECU100は、セレクト用モータ制御部101と、シフト用モータ制御部(変速制御手段)102と、シンクロリング位置学習部(学習手段)103とを一部の機能要素として備えている。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである変速機ECU100に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
セレクト用モータ制御部101は、シフトポジションセンサ95から逐次操作レバー90の位置を取得しており、セレクト操作が行われた場合には、操作レバー90の位置に応じて、セレクト用モータ72A,74Aを駆動させて、その位置でシフト操作可能な変速段への変速に使用するシフトレバー(シフトレバー67〜69のいずれか)を回動可能な状態とする。
シフト用モータ制御部102は、シフトポジションセンサ95から逐次操作レバー90の位置を取得しており、操作レバー90により、シフト操作が行われた場合には、シフト用モータ73A,75Aを駆動させて、シフト操作の対象の変速段に対応するシフトレバー(シフトレバー67〜69のいずれか)を回動させる以下に示す変速制御を行う。
より詳しくは、シフト用モータ制御部102は、シフト操作が行われた直後には、各スリーブ(24,34,44,54)を比較的速い速度でシフト移動させる所定量の電流をシフト用モータ73A,75Aに供給する。
また、シフト用モータ制御部102は、スリーブ(24,34,44,54)とシンクロリングSRとの距離が所定値以下まで接近すると、同期開始直前位置と判定して供給電流量を減少させる。これにより、スリーブ(24,34,44,54)の移動速度がシンクロリングSRの直前で低下され、スリーブ(24,34,44,54)とシンクロリングSRとの接触時における異音の発生やシンクロリングSRに与える衝撃を効果的に抑制することができる。スリーブ(24,34,44,54)が同期開始直前位置にあるか否かは、シフトストロークセンサ93で検出される現在のシフトストロークと、後述するシンクロリング位置学習部103によって取得されるシンクロリング位置との差に基づいて判定される。
また、シフト用モータ制御部102は、シフトストロークセンサ93のセンサ値がシンクロリング位置に達した後の同期開始時には、シフト用モータ73A,75Aへの供給電流量を再び増加させる。これにより、差回転を生じていたシンクロリングSRとスリーブ(24,34,44,54)とが同期荷重によって同期される。その後、スリーブ(24,34,44,54)がシフト移動を再開し、シンクロリングSRを掻き分けてドグギヤと完全に噛合することで、変速制御は終了する。
シンクロリング位置学習部103は、各スリーブ(24,34,44,54)がシフト移動してシンクロリングSRと接触する同期開始位置(シンクロリング位置)を学習する。
具体的には、シンクロリング位置学習部103は、車両停車時に学習に必要な動力が図示しないエンジンからインプットシャフト10に伝達されるように、図示しないクラッチ装置を半クラッチ状態に制御する。
また、シンクロリング位置学習部103は、シフト用モータ(73A,75A)に、スリーブ(24,34,44,54)をニュートラル位置からシフト方向に低速移動させる所定量の低電流を供給する。この場合の電流量は、通常の変速制御時にスリーブ(24,34,44,54)をニュートラル位置から同期開始直前位置まで高速移動させる際に供給する電流量よりも低い値で設定される。
さらに、シンクロリング位置学習部103は、スリーブ(24,34,44,54)がシンクロリングSRに当接し、シフトストロークセンサ93で検出されるシフトストロークの単位時間当たりの変化量が所定の閾値以下になると、この時のセンサ値(シフトストローク)をシンクロリング位置として学習する。学習されたシンクロリング位置は、変速機ECU100の図示しないメモリに記憶される。
次に、本実施形態に係る学習処理の制御フローを図8に基づいて説明する。
ステップS100では、何れも図示しないエンジン回転数センサやアクセル開度センサ、車速センサ等の各種センサ値に基づいて、車両が停車中(例えば、アイドリング状態で停車中)か否かが判定される。停車中の場合(Yes)は、ステップS110に進む。
ステップS110では、エンジンからインプットシャフト10への動力伝達によって学習に必要な差回転が生じるように、図示しないクラッチ装置が半クラッチ状態に制御される。
ステップS120では、スリーブ(24,34,44,54)がニュートラル位置からシンクロリングSRに向けてシフト方向に低速移動される。
ステップS130では、シフトストロークセンサ93によって検出されるシフトストロークの単位時間当たりの変化量が所定の閾値以下であるか否かが判定される。変化量が閾値以下(Yes)であれば、この時のシフトストローク(センサ値)がシンクロリング位置として学習される。すなわち、ステップS140にて、変速機ECU100のメモリ(不図示)に記憶されている前回の学習値が今回学習された新たなシンクロリング位置に書き換えられる学習補正が実行される。
その後、ステップS150では、シフト用モータ(73A,75A)への供給電流を逆転させ、スリーブ(24,34,44,54)をニュートラル位置に戻して、本学習処理は終了される。
以上詳述したように、本実施形態では、車両停車中にスリーブ(24,34,44,54)をニュートラル位置から同期開始位置まで低速移動させると共に、シフトストロークセンサ93のセンサ値変化量が所定の閾値以下になると、この時のセンサ値をシンクロリング位置として学習するようになっている。すなわち、スリーブ(24,34,44,54)を低速移動させてシンクロリングSRに緩やかに当接させることにより、学習を行える時間を長く確保しつつ、接触による衝撃や外乱等の影響を効果的に排除することが可能となり、シンクロリング位置の学習精度を確実に向上することができる。
また、学習されたシンクロリング位置に基づいて、同期開始直前位置や同期開始位置を正確に把握することで、変速制御性が確実に向上され、変速動作時間を効果的に短縮することができる。
次に、本発明の変形例について説明する。
図9は、本発明の変形例に係る機械式自動マニュアル変速機を搭載した車両の模式図である。
変形例に係る車両1において、駆動源の一例としてのエンジン(内燃機関)2の出力軸は、トルクコンバータ3の図示しない入力軸に接続されている。また、トルクコンバータ3の出力軸は、クラッチ装置4の入力側に接続されている。クラッチ装置4の出力側は、変速機5の入力軸に接続されている。変速機5の図示しない出力軸は、駆動輪に動力を伝達するプロペラシャフト6に接続されている。
トルクコンバータ3は、エンジン2から入力軸に伝達された駆動力を、流体(作動油)を介してクラッチ装置4の入力側に伝達する。トルクコンバータ3は、流体を介することなくエンジン2の動力を機械的にクラッチ装置4の入力側に伝達するためのロックアップクラッチ3Aを有する。ロックアップクラッチ3Aは、例えば、油圧式摩擦クラッチであり、入力軸に接続されたロックアップクラッチ3A内の部材(入力側部材)と、出力軸に接続された部材(出力側部材)とが係合されることにより、トルクコンバータ3の入力軸と出力軸とを機械的に接続して、エンジン2の駆動力をクラッチ装置4側に伝達する。ロックアップクラッチ3Aの断接は、油圧調整部110から供給される作動油の圧力に応じて制御される。具体的には、ロックアップクラッチ3Aの入力側部材と出力側部材との状態は、ロックアップクラッチ3Aの入力側部材と出力側部材とが完全に一体した状態で係合している状態(ロックアップクラッチ接状態)と、入力側部材と出力側部材とが完全に離隔している状態(ロックアップクラッチ断状態)とに制御される。
クラッチ装置4は、トルクコンバータ3の出力軸と、変速機5の入力軸との間の動力伝達経路を断接する。クラッチ装置4の断接は、油圧調整部110から供給される作動油の圧力に応じて制御される。具体的には、クラッチ装置4は、入力側と出力側とが完全に一体した状態で係合している状態(クラッチ接状態)と、入力側と出力側とが完全に離隔している状態(クラッチ断状態)とに制御される。
変速機5は、上記実施形態で説明した機械式自動マニュアル変速機である。
油圧調整部110は、変速機ECU200からの制御指示に従って、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3Aの断接を制御するための作動油の圧力、及びクラッチ装置4の断接を制御するための作動油の圧力を調整する。
変形例の変速機ECU200は、上記した実施形態の変速機ECU100とは、シンクロリング位置学習部103の一部の機能が異なっているのみであり、その他の構成は同様である。なお、変速機ECU200の各機能部については、便宜的に、図7に示す変速機ECU100と同様な符号を用いて説明する。次に、変形例に係る変速機ECU200のシンクロリング位置学習部103についての上記実施形態のシンクロリング位置学習部103と異なる機能について説明する。
変速機ECU200のシンクロリング位置学習部103は、各スリーブ(24,34,44,54)がシフト移動してシンクロリングSRと接触する同期開始位置(シンクロリング位置)を学習する際には、車両停車時に学習に必要な動力がエンジン2からインプットシャフト10に伝達されるように、油圧調整部110により、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3Aを断状態に制御するとともに、クラッチ装置4を接状態に制御する。本変形例によると、クラッチ装置4を接状態とした状態で学習することができるので、クラッチ装置4の摩耗を低減することができる。
次に、変形例に係る学習処理の制御フローを図10に基づいて説明する。なお、図10においては、図8と同様なステップには同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
変形例に係る学習処理の制御においては、ステップS111では、エンジン2からインプットシャフト10への動力伝達によって学習に必要な差回転が生じるように、シンクロリング位置学習部103は、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3Aを断状態に制御し、ステップS112では、クラッチ装置4を接状態に制御する。なお、既に、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3Aが断状態に制御され、クラッチ装置4が接状態に制御されている場合には、新たに制御をする必要はない。
このように制御されている状態においては、トルクコンバータ3及びクラッチ装置4を介してエンジン2からインプットシャフト10への動力伝達が行われることとなり、学習に必要な差回転を生じさせることができる。したがって、ステップS120以降の処理を行うことにより、シンクロリング位置を学習することができる。
以上説明したように、変形例においては、トルクコンバータ3のロックアップクラッチ3Aを断状態に制御し、クラッチ装置4を接状態に制御するようにしたので、クラッチ装置4を半クラッチ状態に制御する必要がなく、クラッチ装置4の摩耗を適切に防止することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、シンクロリング位置の学習は車両の停車中に限定されず、通常の変速制御時に並行して実行してもよい。この場合は、スリーブ(24,34,44,54)のシフト移動速度を、ニュートラル位置から同期開始直前位置までは高速に制御すると共に、同期開始直前位置から同期開始位置までは低速に制御して学習を行えばよい。このように、通常の変速制御時に学習を行えば、学習の実行頻度を効果的に確保することができる。
また、上記実施形態では、スリーブを移動させるアクチュエータとして電動モータを用いていたが、本発明はこれに限られず、油圧を用いたアクチュエータとしてもよい。
また、上記実施形態又は上記変形例において、学習処理を実行する条件として、車両1の図示しないサイドブレーキがオンとなっていること、又は、フットブレーキがオンになっていることを含めてもよい。