JP6733156B2 - 有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタ - Google Patents

有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタ Download PDF

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本発明は、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタに関するものであり、特に印刷プロセスに適用可能な低分子有機半導体材料を含む有機半導体層形成用溶液、これを用いて形成した有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタに関するものである。
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。
有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成されている。
有機半導体デバイス性能は、有機半導体材料のキャリア移動度により左右されており、キャリア移動度は、有機半導体層中の有機半導体材料の結晶形態に大きく影響される。このため、結晶性の高い有機半導体材料が求められている。
たとえば、高キャリア移動度(高結晶性)の有機半導体材料として、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を有する有機半導体材料が提案されており、該有機半導体材料を用いた塗布型有機半導体層から構成される有機トランジスタ(ウェットプロセスで作製)について開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、特許文献1に記載の有機半導体材料は結晶性に優れる反面、溶媒に対する溶解性に課題を有し、溶媒選択の自由度が低いことが知られている。
一方、有機半導体層の作製方法として、近年、低コストで大量生産可能であること等のメリットから、印刷プロセスが注目されている。そして、印刷プロセスの中でも、フレキソ印刷やグラビア印刷等の有版印刷は、特に生産性が高いことが知られている。
しかしながら、印刷プロセスに適用できるインク(溶液)には各種物性値に適する範囲があり、溶媒選択の自由度の低い特許文献1に記載の有機半導体材料を用い、かつ、フレキソ印刷やグラビア印刷等の有版印刷に適したインクは知られていないのが現状である。
特開2012−209329号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレキソ印刷やグラビア印刷等の有版印刷に適し、かつ、高いキャリア移動度を与える有機半導体層を形成できる有機半導体層形成用溶液を提供することにある。さらには、該有機半導体層形成用溶液を用いて形成される有機半導体層を利用した、有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、有機半導体層形成用溶液における有機溶媒の物性値が特定の範囲内であることで、フレキソ印刷やグラビア印刷等の有版印刷に適し、かつ、高いキャリア移動度を与える有機半導体層が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、有機溶媒、および下記一般式(1)
(ここで、置換基RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜10のアルキル基を示し、T〜Tは、各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を示す。)
で示されるヘテロアセン誘導体を含む有機半導体層形成用溶液であり、該有機溶媒の粘度が、25℃において、2.5mPa・s以上、10mPa・s以下である有機半導体層形成用溶液に関するものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の有機半導体層形成用溶液は、特定の粘度を有する有機溶媒、及び特定の有機半導体材料を含むものである。
本発明の有機溶媒は、粘度が、25℃において、2.5mPa・s以上、10mPa・s以下である。ここで、粘度が、25℃において、2.5mPa・sより小さい場合、本発明に係る有機半導体層形成用溶液を用いてフレキソ印刷やグラビア印刷等の有版印刷に適用しようとする場合、印刷形状が維持できない等のプロセス上の問題が生じる。また、粘度が、25℃において、10mPa・sよりも大きい場合、本発明に係る有機半導体材料が十分に溶解せず、塗布型有機半導体層に適した有機半導体層形成用溶液が得られない。この点に関し、一般に、極性溶媒の方が高粘度であることが知られており、本発明に係る有機半導体材料はその構造上無極性に近い性質を有すると考えられるものであるため(ジチエノベンゾジチオフェン骨格が点対称構造であるため、双極子モーメントが小さいことが考えられる。)、高粘度溶媒には溶解し難いことが考えられる。
本発明は、溶媒選択の自由度の低い本発明に係る有機半導体材料を用いる場合において、用いられる有機溶媒が特定の粘度範囲であることで、印刷プロセス上の問題が生じず、かつ、塗布型有機半導体層に適した有機半導体形成用溶液が得られることを見出したことに特徴を有するものである。
本発明の有機溶媒は、2つの用途の溶媒に分類できる。すなわち、有機半導体材料を溶解するための溶媒(溶媒A)、および粘度を調整するための溶媒(溶媒B)、である。これら2つの用途に用いられる溶媒A,Bは同一であっても異なっていてもよく、溶媒A、Bはさらにそれぞれ複数の溶媒から構成されていてもよい。溶媒A及びBはそれぞれ単体で使用しても良いが、溶媒AとBの混合物として使用した方が粘度を調整できる点で好ましい。該有機半導体層形成用溶液を調製する場合、有機半導体材料を溶媒Aに予め溶解させてから溶媒Bを添加してもよく、溶媒AとBを混合させた後に有機半導体材料を添加してもよい。
溶媒Aとしては、使用する有機半導体材料を溶解できれば特に制限はなく、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、インダン、テトラリン、1−メチルナフタレン、2−エチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、ジメチルナフタレン異性体混合物、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、1−ベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフェナントレン等の炭素数7〜14の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、デカリン等の炭素数6〜14の脂肪族炭化水素溶媒;o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等の炭素数1〜7のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノールアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられ、中でも高沸点かつ高溶解性であることから、炭素数7〜14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
溶媒Bとしては、特に制限はなく、テトラデカヒドロフェナントレン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフェナントレン、1−ベンゾチオフェン等の炭化水素系溶媒、デカヒドロ−2−ナフトール、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトール、α−テルピネオール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール系溶媒、イソホロン等のケトン系溶媒、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン等のアセテート系溶媒等が挙げられ、中でも有機半導体層形成用溶液の粘度を適度に調整できること及び有機半導体材料の溶解性を保持するのに好適であることから、デカヒドロ−2−ナフトール、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールが好ましい。
本発明の有機溶媒が溶媒Aと溶媒Bのみから選択され、かつ、溶媒Aと溶媒Bが異なる溶媒である場合、溶媒Aと溶媒Bの容積比率は、10:90〜90:10の範囲であり、溶媒混合物の粘度及び有機半導体材料であるヘテロアセン誘導体の溶解度を調節できることから30:70〜70:30の範囲とすることが好ましい。
これら1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物の粘度が25℃において、2.5mPa・s以上、10mPa・s以下である有機半導体層形成用溶液を調製する場合、印刷用インクへの適用が容易であることから、これら1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物の粘度が25℃において、5.0mPa・s以上、10mPa・s以下であることが好ましい。
また、これら1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物の沸点が150℃以上であることが好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液を構成するヘテロアセン誘導体は、一般式(1)で示される縮合環骨格を有する構造であることを特徴とする。
一般式(1)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜10のアルキル基を示し、高溶解性のため、炭素数4〜8のアルキル基であることが好ましい。RおよびRが、炭素数3以上であることで、ヘテロアセン誘導体の有機溶媒に対する溶解性を向上させ安定的な有機半導体層形成用溶液とすることができ、かつ、炭素数10以下であることで、得られる有機薄膜トランジスタの半導体・電気特性を優れたものとすることができる。
およびRの具体例としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基などを挙げることができ、高溶解性のため、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基であることが好ましい。
一般式(1)中、T〜Tは各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子又は硫黄原子を示す。T〜Tは、高移動度のため、すべて硫黄原子が好ましく、その場合一般式(1)は、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を有する構造を示す。
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の具体例として、特に限定はなく、以下の化合物を挙げることができる。
なお、一般式(1)で示される有機ヘテロアセン誘導体としては、高溶解性及び高移動度のため、2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ヘプチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−オクチル)ジチエノベンゾジチオフェンが好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液において、一般式(1)で示される有機ヘテロアセン誘導体の濃度は、目的の半導体膜厚を得られるように調製すればよいが、1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物に対して0.01〜10重量%であることが好ましい。
さらに、本発明の有機半導体層形成用溶液には有機半導体材料と溶媒のほかに高分子化合物を添加してもよく、該高分子化合物として例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(1−ビニルナフタレン)、ポリ(2−ビニルナフタレン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−コ−2,4−ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン−コ−α−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−ノルボルネン)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジメチルトリアリールアミン)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−プロピル等を挙げることができ、好ましくはポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
なお、本発明で用いる高分子化合物は、1種類を単独で使用、または2種類以上の混合物として使用することが可能である。
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の混合組成比は、 良好な薄膜形成のため、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物との合計100質量部に対して、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の含有割合が、50質量部以上の範囲であることが好ましく、70質量部以上の範囲であることが更に好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液は、有機溶媒、上記一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体、および必要な場合は高分子化合物を混合、溶解することで調製する。
有機半導体層形成用溶液を調製する方法については特に制限はなく、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と必要な場合は高分子化合物とを有機溶媒に溶解することが可能な方法であれば、如何なる方法を用いてもよい。
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体を有機溶媒に混合溶解する際の温度としては、溶解を促進させる目的のため、0〜100℃の温度範囲で行うことが好ましく、10〜80℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液は、粘度が25℃において、2.0mPa・s以上、10mPa・s以下である1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物を用いて一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の濃度を0.01〜10重量%の範囲になるように調製することで、良好な有機半導体層を形成できることを特徴とする。
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて、有機半導体層を形成する方法については、有機半導体層を形成可能な方法であれば特に制限はないが、例えば、スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、キャストコート等の簡易塗工法;ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法を挙げることができる。中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェットであることがさらに好ましい。また本発明の有機半導体層形成用溶液は適度な粘度を保有することからフレキソ印刷、グラビア印刷等の有版印刷にも適用することができる。
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、有機溶媒を乾燥除去することにより有機半導体層を形成することが可能である。
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に制限はないが、例えば、常圧下、または減圧下で有機溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に制限はないが、例えば、10〜150℃の温度範囲で行うと、塗布した有機半導体層から効率よく有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能である。
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の蒸発速度を調節することで、一般式(1)で表されるヘテロアセン誘導体の結晶成長を制御することが可能である。
本発明の有機半導体層形成用溶液により形成される有機半導体層の膜厚に制限はないが、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、10nm〜300nmの範囲であることが更に好ましい。
また、得られる有機半導体層は、有機半導体層を形成後、40〜150℃でアニール処理を行ってもよい。
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、有機半導体デバイス、特に有機薄膜トランジスタの有機半導体層として使用することが可能である。
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極およびドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート−トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート−トップコンタクト型、(D)は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
基板の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板、等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
ゲート電極の具体例としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化モリブデン、クロム、チタン、タンタル、クロム、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT−PSS)等の有機材料を挙げることができる。
ゲート絶縁層の具体例としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料基板;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、BCB樹脂( 塗工前の物質: ビスビニルシロキサンベンゾシクロブテン(BCB))等のプラスチック材料を挙げることができる。また、これらのゲート絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β−フェネチルトリクロロシラン、β−フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のシラン類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。
一般的にゲート絶縁層の表面処理を行うことにより、有機半導体層を構成する材料の結晶粒径の増大および分子配向の向上が起こるため、キャリア移動度および電流オン・オフ比の向上、並びに閾値電圧の低下という好ましい結果が得られる。
ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオールを挙げることができる。
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて得られる有機薄膜トランジスタは、速い動作性のため、キャリア移動度が、0.1cm/V・s以上であることが好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液およびそれよりなる有機半導体層は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、センサー用等のトランジスタの有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができ、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体が結晶性の薄膜となるため、有機薄膜トランジスタの有機半導体層用途として用いられることが好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液は、有機半導体材料を溶解させ、一定の範囲内の粘度に調製することで、塗布法で高いキャリア移動度を与える有機半導体層を製膜することが可能となることから、その効果は極めて高いものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
テトラリン(シグマアルドリッチ製、ReagentPlus、沸点207℃)9gに2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン0.05g(テトラリンに対して0.55wt%)を添加し、50℃に加熱溶解後、さらにデカヒドロ−2−ナフトール(TCI製、沸点211℃)1gを添加した。室温(25℃)に放冷し、有機半導体層形成用溶液を調製した(無色溶液、有機半導体材料濃度0.5wt%)。溶媒混合物の粘度は2.83mPa・sであった。
空気下、直径2インチのヒ素でn型にハイドープしたシリコン基板(抵抗値;0.001〜0.004Ω、表面に200nmのシリコン酸化膜付き)上に、得られた有機半導体層形成用溶液を室温下(25℃)でフレキソ印刷した。フレキソ印刷装置はエムティーテック社製FC11Bであり、使用したアニロックスローラーは45L/インチ、容量95cm/m、印刷速度10である。同温度で自然乾燥し、膜厚102nmの有機半導体層を作製した。
該有機半導体層にチャネル長20μm、チャネル幅500μmのシャドウマスクを置き、金を真空蒸着することでソース/ドレイン電極対を形成し、ボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。
作製した有機薄膜トランジスタの電気物性を半導体パラメーターアナライザー(ケースレー製、4200SCS)を用いて、ドレイン電圧(Vd=−50V)で、ゲート電圧(Vg)を+10〜−70Vまで1V刻みで走査し、伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.51cm/V・sと高移動度を示した。
<実施例2>
テトラリン(シグマアルドリッチ製、ReagentPlus)5gに1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトール(TCI製、沸点255℃)5gを添加した。2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン0.03gを添加し、50℃に加熱溶解後、さらに室温(25℃)に放冷し、有機半導体層形成用溶液を調製した(無色溶液、有機半導体材料濃度0.3wt%)。溶媒混合物の粘度は7.78mPa・sであった。
ポリエチレンナフタレート上に、アルミニウムを蒸着しゲート電極を形成した。この上にビスビニルシロキサンベンゾシクロブテン(BCB)( 商品名:サイクロテン3022 −35、ダウ・ケミカル社製)(メシチレン2倍希釈溶液、スピンコート:500rpm・5秒、2000rpm・60秒、slope・5秒、焼成:80℃・3分、150℃・3分、210℃・40分、250℃・60分)からなる有機絶縁膜を塗布した。
チャネル長20μm、チャネル幅1000μmのシャドウマスクを置き、金を真空蒸着することでソース/ドレイン電極対を形成した。ソース/ドレイン電極をペンタフルオロベンゼンチオールで修飾し、この上に得られた有機半導体層形成用溶液を室温下(25℃)で実施例1と同一の条件でフレキソ印刷した。70℃で乾燥し、膜厚62nmの有機半導体層を作製して、ボトムゲート−ボトムコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。
実施例1と同じ操作を繰り返し、伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.44cm/V・sと高移動度を示した。
<実施例3>
実施例2で作製した有機半導体層形成用溶液の製膜方法をドロップキャストに変更し、実施例2と同じ操作を繰り返して膜厚121nmの有機半導体層を作製した。p型有機薄膜トランジスタを作製して伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.40cm/V・sと高移動度を示した。
<実施例4>
実施例2で作製した有機半導体層形成用溶液に、ポリ(α−メチルスチレン)を0.01g添加した有機半導体層形成用溶液を再度調整し、実施例2と同じ操作を繰り返して膜厚70nmの有機半導体層を作製した。p型有機薄膜トランジスタを作製して伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.33cm/V・sと高移動度を示した。
<比較例1>
テトラリン(シグマアルドリッチ製、ReagentPlus)4gに2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン0.01g(テトラリンに対して0.2wt%)を添加し、50℃に加熱溶解後、さらに1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトール(TCI製)6gを添加した。室温(25℃)に放冷し、有機半導体層形成用溶液を調製した(無色溶液、有機半導体材料濃度0.1wt%)。溶媒混合物の粘度は10.5mPa・sであった。有機半導体材料濃度を0.2wt%より大きくすると室温に放冷した段階で結晶が析出し、溶液を得ることはできなかった。
有機半導体材料濃度0.1wt%の有機半導体層形成用溶液を用いて実施例1と同じ操作を繰り返したが、印刷開始直後にアニロックスロール上で結晶が析出し、印刷を継続することはできなかった。
<比較例2>
テトラリン(シグマアルドリッチ製、ReagentPlus)4gに2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン0.01g(テトラリンに対して0.2wt%)を添加し、50℃に加熱溶解後、さらにデカヒドロ−2−ナフトール(TCI製)6gを添加した。溶媒混合物の粘度は12.83mPa・s、有機半導体材料濃度0.1wt%であった。
室温(25℃)に放冷したところ結晶が析出し、有機半導体層形成用溶液を得ることはできなかった。
;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
(A):ボトムゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極

Claims (5)

  1. 有機溶媒、および下記一般式(1)
    (ここで、置換基RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜10のアルキル基を示し、T〜Tは、各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を示す。)
    で示されるヘテロアセン誘導体を含む有機半導体層形成用溶液であり、該有機溶媒の粘度が、25℃において、5.0mPa・s以上、10mPa・s以下であるフレキソ印刷用有機半導体層形成用溶液。
  2. 〜Tが硫黄原子であることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷用有機半導体層形成用溶液。
  3. 高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフレキソ印刷用有機半導体層形成用溶液。
  4. 有機溶媒が、有機半導体材料を溶解するための溶媒Aとして炭素数7〜14の芳香族炭化水素、および粘度を調整するための溶媒Bとしてデカヒドロ−2−ナフトール、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールからなる群の少なくとも1種を含む混合物である請求項1乃至3いずれか一項に記載のフレキソ印刷用有機半導体層形成用溶液。
  5. 有機溶媒の沸点が常圧において150℃以上である請求項1乃至4いずれか一項に記載のフレキソ印刷用有機半導体形成用溶液。
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