図9は、この発明において選択の対象となるトレーの一例であるトレー80を示す斜視図である。トレー80は、既製の上顎用のトレーであって、本体81と取っ手82とを備えている。
トレー80の材質はとくに限定されるものではないが、金属製のトレーの場合、たとえば、本体81が、金網83で構成されたものが例示される。この場合、金網83の周囲は、金属製の縁取り部材84により被覆されている。本体81は、図5Bに示すように、その平面視は、略椀形に形成されている。取っ手82は、たとえば略長方形の金属板により形成され、その一端が本体81に結合されている。
本体81の横幅(左右幅、図中X方向の寸法)および奥行き(図中Y方向の寸法)の異なる複数のトレーからなるトレーキットが用意され、トレーキットの中から、患者の顎に適合するひとつのトレー80が選択される。
図6Bに示すように、既製の下顎用のトレー90については、その形状は上顎用のトレー80と異なるが、基本的な構成はトレー80と同様である。すなわち、トレー90は、本体91と取っ手92とを備えている。本体91は金網93で構成され、金網93の周囲は縁取り部材94により被覆されている。本体91は、平面視にて、内側のアーチ部97と外側のアーチ部100とに挟まれた略馬蹄形に形成されている。
つぎに、この発明の一の実施形態による歯科用測定具1について説明する。歯科用測定具1は、歯科用印象トレーを選択する際に用いることができる
図1は、歯科用測定具1の構成を示す斜視図である。図2は、歯科用測定具1の平面図である。図3は、歯科用測定具1の右側面図である。図4Aは図2に示すIVA−IVA線に沿う切断部の端面図、図4Bは図2に示すIVB−IVB線に沿う切断部の断面図、図4Cはストッパ5の拡大斜視図である。
図1から図3に示すように、歯科用測定具1は、右脚部2および左脚部3からなる一対の脚部2、3を備えている。一対の脚部2、3は、右脚部2の一方の端に設けられた基端部21、および左脚部3の一方の端に設けられた基端部31において、軸部4まわりに相対回動可能に結合されている。
図4Bに示すように、軸部4は、軸本体40と固定蓋44とを備えている。軸本体40は、それぞれ直径の異なるフランジ41と、軸42と、ネジ部43とが、この順に形成され、それぞれの直径も、この順で小さくなるよう構成されている。
図4Cに示すように、ストッパ5は、側面視で略L字形状に構成され、図中S1方向に行くほど肉厚が薄くなるくさび形状の押圧体51と、押圧体51の一端(最厚端)に立設された操作部53とを備えている。押圧体51の一部に、図中S方向に長軸をもつ長孔52が穿孔されている。操作部53の上端には、S方向に直交する方向の複数の溝が、滑り止めとして刻まれている。
図4Bに示すように、軸本体40の軸42に、左脚部3の基端部31に設けられた貫通穴(図示せず)、右脚部2の基端部21に設けられた貫通穴(図示せず)、ストッパ5の押圧体51に設けられた長孔52を、この順に通す。次いで、軸本体40のネジ部43に固定蓋44に設けられたネジ(図示せず)を螺合させて締めきることで、固定蓋44を軸本体40に固定する。
右脚部2の基端部21の上部(図4Bにおける図中左側の部分)には、ストッパ5の押圧体51を案内するための案内溝21aが設けられている。案内溝21aの底部の肉厚は、図中S1方向に行くほど厚くなるよう構成されている。案内溝21aの底部の勾配は、押圧体51の勾配と逆方向で、その絶対値が等しくなるよう構成されている。
図4Bは、ストッパ5が制限解除位置にある状態を示す。この状態においては、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に垂直抗力は作用しておらず、したがって、相互間の摩擦力も発生していない。このため、一対の脚部2、3の相対回動は自由である。
この状態からストッパ5を図中S1方向にスライドさせると、押圧体51と案内溝21aの底部との間のくさびの作用により、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に垂直抗力が作用し、相互間の摩擦力が発生する。このため。一対の脚部2、3の相対回動は制限される。このときのストッパ5の位置を、回動制限位置という。ストッパ5を図中S1方向に大きくスライドさせるほど、大きい摩擦力を得ることができ、一対の脚部2、3を、相互に固定状態とすることができる。
なお、この例では、ストッパとして、制限解除位置と回動制限位置とをスライドさせて切り替える構成を例に説明したが、ストッパの構成はこれに限定されるものではない。たとえば、ストッパとして、制限解除位置と回動制限位置とを軸42まわりに回転させて切り替えるよう構成することもできる。この場合、たとえば、固定蓋44を締め付けると、ねじの作用により、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に垂直抗力が発生するよう構成することができる。
また、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に所定の制動力(一対の脚部の相対回動を制限する力)を生じさせる構成についても、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に垂直抗力を作用させ、もって、相互間の摩擦力を発生させる構成に限定されるものではない。たとえば、左脚部3の基端部31の上面や側面に、軸42を中心とした円弧上に細かい凹凸条を帯状に配した係合部を形成し、該係合部に係合するよう付勢された係止体を、右脚部2の基端部21に保持するよう構成することもできる。
このように構成したうえで、係合部の凹条に入り込んだ係止体を係合部の凹部から離脱させるための回転力が、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に生ずる所定の制動力に等しくなるよう構成しておく。この場合、ストッパは、たとえば、係止体に付与されている付勢力を解除するか否かの切り替えを行うよう構成することができる。
また、この例では、歯科用測定具がストッパを備えている場合について説明しているが、歯科用測定具がストッパを備えていない場合にも、この発明を適用することができる。この場合、右脚部2の基端部21と、左脚部3の基端部31との間に、常時適度の制動力が作用するよう構成することが好ましい。
図1に戻って、右脚部2の他方の端に右先端部22が設けられ、左脚部3の他方の端に左先端部32が、設けられている。
右先端部22は、上下方向(図3における左右方向)略中央に段差部26を有する略板状に形成され、側面視において、滑らかな曲線で囲まれた輪郭を有する略長円形状を呈するよう構成されている。
図1に示すように、右先端部22の上部(段差部26より上の部分)27の内側(左先端部32と対向する側)が、略平面状の右外法測定部23を構成している。図3に示すように、右先端部22の下部(段差部26より下の部分)28の外側(右外法測定部23の裏面側)が、略平面状の右外法表示部24を構成している。
すなわち、右先端部22は、右外法測定部23を有する板状の上部27と右外法表示部24を有する板状の下部28とが、段差部26を介して連続的に形成され、側面視において略長円形状を呈するよう構成されている。
また、この例においては、右外法測定部23および右外法表示部24は、いずれも、一対の脚部2、3の回動中心軸と平行な平面として構成されている。
左先端部32は、右先端部22と鏡面対象となるよう構成されているので説明を省略する。右外法測定部23および左外法測定部33により、一対の外法測定部23、33が構成され、右外法表示部24および左外法表示部34により、一対の外法表示部24、34が構成されている。
図2に示すように、この例では、右脚部2および左脚部3を、右先端部22の手前および左先端部32の手前において、それぞれ内側に曲げることで、標準的な患者の上顎臼歯部における顎堤の外法を測定する際に、一対の外法測定部23、33が略平行となるよう、右先端部22と左先端部32との位置関係が設定されている。
なお、右先端部22と左先端部32との位置関係は、これに限定されるものではない。たとえば、右脚部2および左脚部3を、標準的な患者の下顎臼歯部における顎堤の内法を測定する際に、後述する一対の内法測定部24、34が略平行となるよう、構成してもよいし、標準的な患者の上顎臼歯部における顎堤の外法を測定する場合と、内法を測定する場合の中間の位置において、一対の外法測定部23、33(または一対の内法測定部24、34)が略平行となるよう、構成してもよい。
さらに、右脚部2と左脚部3とを閉じた状態で、一対の外法測定部23、33(または一対の内法測定部24、34)が略平行となるよう、構成してもよい。
図4Aに示すように、この例では、一対の外法表示部24、34間の距離(外法)d2が、一対の外法測定部23、33間の距離(内法)d1と同一(または略同一。以下同様)となるよう構成されている。
つまり、外法測定部23、33を、患者の顎における略馬蹄形の顎堤または歯列の両外側に当接させて当該略馬蹄形の顎堤または歯列の外法を測定すると、外法表示部24、34の外法が、外法測定部23、33により測定された顎堤または歯列の外法と同一になるよう構成されている。
さて、一対の外法表示部24、34は、一対の内法測定部24、34として機能させることもできる。この場合、一対の外法測定部23、33は、一対の内法表示部23、33として機能する。
つまり、内法測定部24、34を、患者の顎における略馬蹄形の顎堤または歯列の両内側に当接させて当該略馬蹄形の顎堤または歯列の内法を測定すると、内法表示部23、33の内法が、内法測定部24、34により測定された顎堤または歯列の内法と同一になる。
このように、歯科用測定具1は、顎堤または歯列の外法の測定と内法の測定とを、一つの測定具で行うことができる。
歯科用測定具1において、顎堤または歯列の外法の測定に用いられる部分と、内法の測定に用いられる部分、あるいは、測定部と表示部と、を区別する目印を付与することができる。
たとえば、外法測定部(内法表示部でもある。以下同様)23、33と、内法測定部(外法表示部でもある。以下同様)24、34とを区別する目印を、外法測定部23、33および/または内法測定部24、34自体に、またはその近傍に設けることができる。
目印として、たとえば、主に上顎の測定に用いられる外法測定部23、33に「U」の文字を付し、主に下顎の測定に用いられる内法測定部24、34に「L」の文字を付すよう構成することができる。また、目印として、外法測定部23、33と内法測定部24、34とで色を変えるよう構成することもできる。
つぎに、図2に示すように、右脚部2の上面(図2における紙面手前側の面)には、右脚部2の長手方向に沿って目盛29が設けられている。目盛29の態様はとくに限定されるものではないが、この例では、右脚部2の先端25からの距離を示すよう構成されている。目盛29を構成する数字(この例では「4」「5」「6」「7」)が1cmごとに配置され、各数字が先端からの距離を示す。数字を補間する目盛線が、数字と数字の中間(5mmの位置)に配置されている。つまり、数字と目盛線が目盛29を構成している。
この例では、左脚部3の下面(図2における紙面向こう側の面)にも、目盛29と略同一の構成の目盛39(図示せず)が設けられている。
なお、目盛を設ける部分はとくに限定されるものではなく、たとえば、右脚部2の上面および下面、ならびに左脚部の上面および下面のうち、一つ以上の面に設けるよう構成することもできる。
もちろん、右脚部2および左脚部3のいずれにも目盛を設けないよう構成することもできる。
つぎに、歯科用測定具1の使用方法について説明する。
図5Aは、歯科用測定具1を用いて、無歯顎患者の上顎6の顎堤60の臼歯部における外法を測定する際の、上顎6の臼歯部における横断面を示す図面である。
図5Bは、歯科用測定具1を用いて、上記患者の顎堤60の外法に適合した上顎用のトレー80を選択する様子を説明するための図面である。
図6Aは、歯科用測定具1を用いて、無歯顎患者の下顎7の顎堤70の臼歯部における内法を測定する際の、下顎7の臼歯部における横断面を示す図面である。
図6Bは、歯科用測定具1を用いて、上記患者の顎堤70の内法に適合した下顎用のトレー90を選択する様子を説明するための図面である。
図7Aは、歯科用測定具1を用いて、無歯顎患者の上顎6の顎堤60の奥行を測定する様子を説明するために、顎堤60を上から見た模式図である。
図7Bは、歯科用測定具1を用いて、上記患者の顎堤60の奥行に適合した上顎用のトレー80を選択する様子を説明するための図面である。
まず、無歯顎患者の上顎6の顎堤60の臼歯部における外法を測定し、これに適合した最大内幅を有する上顎用のトレーを選択する方法について説明する。
測定に先立ち、図4Bに示す歯科用測定具1のストッパ5をS2方向にスライドさせて制限解除位置にすることで、歯科用測定具1の一対の脚部2、3を相互に回動可能な状態にしておく。この状態で、脚部2、3の開き角度を調整して、患者の口腔内に先端部22、23を挿入する。
つぎに、患者の口腔内で、脚部2、3の開き角度を調整しながら、図5Aに示すように、患者の上顎6の顎堤60の臼歯部における頬側面61、62に、一対の先端部22、32の外法測定部23、33を、それぞれ当接させる。
この状態で、図4Bに示す歯科用測定具1のストッパ5をS1方向にスライドさせて回動制限位置にすることで、脚部2、3を相互に回動不能な状態にし、その状態で、歯科用測定具1を患者の口腔から取り出す。
つぎに、図5Bに示すように、予め用意した上顎用のトレー80のトレー本体81の略最奥端(図中Y1方向端)に、患者の口腔から取り出した歯科用測定具1の先端部22、32の外法表示部24、34を近づける。
なお、図5Bにおいては、説明の便宜上、歯科用測定具1の先端部22、32のIVA−IVA断面(図2、図4A参照)が紙面に略平行になるよう歯科用測定具1を配置した場合を表しているが、歯科用測定具1の配置はこれに限定されるものではなく、たとえば、歯科用測定具1の先端部22、32のIVA−IVA断面が紙面に略直交するよう歯科用測定具1を配置することもできる。後述する図6Bについても同様である。
トレー本体81の略最奥端であって、左右方向(図中X1およびX2方向)の内側端にある一対の臼歯部頬側対応部85、86間に、外法表示部24、34が過不足なく収まるか否かを、(すなわち、印象採得に際し、患者の上顎6の顎堤60の臼歯部における頬側面61、62と、これに対応するトレー本体81の臼歯部頬側対応部85、86との間隙が、印象材の入る適度な間隙として確保されているか否かを、)目視にて確認する。
臼歯部頬側対応部85、86間に、外法表示部24、34が過不足なく収まらない場合は、別の上顎用のトレーについて、同様の作業を行う。
この例では、歯科用測定具1の外法表示部24、34の外法が、患者の上顎6の顎堤60の臼歯部における外法と同一になるよう構成されている。このため、トレー本体81の略最奥端を、実際に患者の上顎6の顎堤60の臼歯部に近づけるのと同様の状況を、患者の口腔外において再現することができる。このため、歯科医の経験に基づいて、印象材の種類等を勘案しながら、患者の上顎6の顎堤60に適合した最大内幅を有する上顎用のトレー80を、容易に選択することができる。
つぎに、患者の上顎6の顎堤70の奥行に関する寸法を測定し、これに適合した奥行を有する上顎用のトレーを選択する方法について説明する。
測定に先立ち、図4Bに示す歯科用測定具1のストッパ5をS2方向にスライドさせて制限解除位置にすることで、歯科用測定具1の一対の脚部2、3を相互に回動可能な状態にしておく。この状態で、脚部2、3の開き角度を調整して、患者の口腔内に先端部22、23の一方、または、双方をそろえて挿入できる状態とする。この状態で、図4Bに示す歯科用測定具1のストッパ5をS1方向にスライドさせて回動制限位置にしたのち、患者の口腔内に挿入することが好ましい。
この例では、右脚部2の先端部22のみを挿入する場合について説明する。
図7Aに示すように、患者の口腔内において、たとえば、歯科用測定具1の右脚部2の先端25を、患者の上顎6の顎堤60および下顎7の顎堤70の最奥部近傍にある両顎堤60、70の左右一対の接続部(翼突下顎ヒダの近傍)のうち図面左方の接続部である上下顎接続部63に当接させ、この状態で、上顎6の顎堤60の中央最前部64(たとえば、上唇小帯の歯肉の起始部近傍)の位置を、脚部2に設けた目盛29で読み取る。この例では、脚部2の目盛29の数字「6」で示された個所が、患者の顎堤60の中央最前部64の位置として読み取られる。
つぎに、図7Bに示すように、予め用意した上顎用のトレー80のトレー本体81の左の最奥部88(患者の上下顎接続部63に対応する部分)と中央最前部89(患者の顎堤60の中央最前部64に対応する部分)との間に、患者の口腔から取り出した歯科用測定具1の脚部2を近づける。
歯科用測定具1の脚部2の先端25と読み取った目盛(目盛29の数字「6」で示された個所)との間の部分が、トレー本体81の左の最奥部88(患者の上下顎接続部63に対応する部分)と、トレー本体81の内側の中央最前部89(患者の顎堤60の中央最前部64に対応する部分)との間に、過不足なく収まるか否かを、(すなわち、印象採得に際し、患者の上顎6の顎堤60の中央最前部64と、これに対応するトレー本体81の中央最前部89との間隙が、印象材の入る適度な間隙として確保され、かつ、患者の上顎6の顎堤60の最奥部である上下顎接続部63近傍部分と、これに対応するトレー本体81の左の最奥部88との距離が、印象材の入る適度な距離として確保されているか否かを、)目視にて確認する。
トレー本体81の左の最奥部88と内側の中央最前部89との間に、歯科用測定具1の脚部2の先端25と上記の読み取った目盛との間の部分が過不足なく収まらない場合は、別の上顎用のトレーについて、同様の作業を行う。
このようにして、患者の上顎6に適合した最大内幅および奥行きを有する上顎用のトレー80を選択することができる。
つぎに、歯科用測定具1を用いて無歯顎患者の下顎の顎堤の臼歯部における内法を測定し、これに適合した下顎用のトレー90を選択する方法について説明する。
上顎用のトレー80を選択する場合と同様に、測定に先立ち、歯科用測定具1のストッパ5をS2方向にスライドさせることで、一対の脚部2、3を相互に回動可能な状態にして、脚部2、3の開き角度を調整して、患者の口腔内に先端部22、23を挿入する。
つぎに、患者の口腔内で、脚部2、3の開き角度を調整しながら、図6Aに示すように、患者の下顎7の顎堤70の臼歯部における舌側面71、72に、一対の先端部22、32の内法測定部24、34(すなわち、上述の一対の外法表示部24、34)を、それぞれ当接させる。
この状態で、ストッパ5をS1方向にスライドさせることで、脚部2、3を相互に回動不能な状態にし、歯科用測定具1を患者の口腔から取り出す。
つぎに、図6Bに示すように、予め用意した下顎用のトレー90のトレー本体91の略最奥端(図中Y1方向端)に、患者の口腔から取り出した歯科用測定具1の先端部22、32の一対の内法表示部23、33(すなわち、上述の一対の外法測定部23、33)を近づける。
トレー本体91の略最奥端であって、内側のアーチ部97の左右方向(図中X1およびX2方向)の外側に相当する一対の臼歯部舌側対応部95、96をまたぐように内法表示部23、33を配置し、内法表示部23、33が、臼歯部舌側対応部95、96近傍のトレー本体91内に過不足なく収まるか否かを、(すなわち、印象採得に際し、患者の下顎7の顎堤70の臼歯部における舌側面71、72と、これに対応するトレー本体91の臼歯部舌側対応部95、96との間隙が、印象材の入る適度な間隙として確保されているか否かを、)目視にて確認する。
臼歯部舌側対応部95、96をまたぐように、内法表示部23、33が過不足なくトレー本体91内に収まらない場合は、別の下顎用のトレーについて、同様の作業を行う。
この例では、歯科用測定具1の内法表示部23、33の内法が、患者の下顎7の顎堤70の臼歯部における内法と同一になるよう構成されている。このため、トレー本体91の略最奥端を、実際に患者の下顎7の顎堤70の臼歯部に近づけるのと同様の状況を、患者の口腔外において再現することができる。このため、歯科医の経験に基づいて、印象材の種類等を勘案しながら、内側のアーチ部97の最大外幅が患者の下顎7の顎堤70に適合した下顎用のトレー90を、容易に選択することができる。
つぎに、患者の下顎7の顎堤70の奥行に関する寸法を測定し、これに適合した奥行を有する下顎用のトレーを選択する方法について説明する。
この方法においては、患者の口腔内において、歯科用測定具1の右脚部2の先端25を、上下顎接続部63に当接させ、この状態で、下顎7の顎堤70の中央最前部(たとえば、下唇小帯の歯肉の起始部近傍。図示せず。)の位置を目盛29で読み取る。
その後、患者の口腔外において、歯科用測定具1の脚部2の先端25と読み取った目盛との間の部分が、トレー本体91の左の奥部98(患者の上下顎接続部63に対応する部分)と、トレー本体91の内側の中央最前部99(患者の顎堤70の中央最前部に対応する部分)との間に、過不足なく収まるか否かを、目視にて確認する。
その余の手順は、図7Aおよび図7Bに示す、患者の上顎6の顎堤60の奥行に関する寸法を測定し、これに適合した奥行を有する上顎用のトレーを選択する方法と、略同一であるため、詳しい説明は省略する。
このようにして、患者の下顎7に適合した内側のアーチ部97の最大外幅および奥行きを有する下顎用のトレー90を選択することができる。
なお、上記のトレーの選択作業は、トレーに歯科用測定具1を近づけて寸法の確認を行う場合を例に説明したが、トレーに歯科用測定具1を接触させて寸法の確認を行うこともできる。ただし、このようにする場合は、衛生上の観点から、患者の口腔から取り出したあと歯科用測定具1を消毒しておくか、確認作業を行ったが選択されなかったトレーを消毒するか、いずれかの作業が行うことが好ましい。
なお、上述の実施形態による歯科用測定具1の右先端部22においては、図4Aに示すように、右外法測定部23および右外法表示部24は、いずれも、一対の脚部2、3の回動中心軸と平行な平面として構成されるとともに、右先端部22のうち右外法測定部23を有する板状の上部27と右外法表示部24を有する板状の下部28とが、段差部26を介して連続的に形成されているが、右先端部の形状は、これに限定されるものではない。なお、この例および以下の例では、左先端部の形状は右先端部の形状と鏡面対象であるものとして、左先端部の説明は省略する。
図8Aは、この発明の他の例による右先端部122を備えた歯科用測定具1のIVA−IVA線(図2参照)に沿う切断部の端面図である。図8Bは、さらに他の例による右先端部222を備えた歯科用測定具1のIVA−IVA線に沿う切断部の端面図である。図8Cは、さらに他の例による右先端部322を備えた歯科用測定具1のIVA−IVA線に沿う切断部の端面図である。図8Dは、さらに他の例による右先端部422を備えた歯科用測定具1のIVA−IVA線に沿う切断部の端面図である。
図8Aに示す右先端部122においては、右外法測定部23は内側に凹である曲面として構成され、右外法表示部24は外側に凹である曲面として構成されるとともに、右外法測定部23を有する板状の上部27と右外法表示部24を有する板状の下部28とが、曲面状の板部分を介して、滑らかに接続されている。
図8Bに示す右先端部222においては、上方から下方に向かって内側に傾斜する平面として構成され、右外法表示部24は下方から上方に向かって外側に傾斜する平面として構成されるとともに、右外法測定部23を有する板状の上部27と右外法表示部24を有する板状の下部28とが、平面状の板部分を介して、ひとつの平板を構成している。
右先端部を、図8Aまたは図8Bに示すよう構成することで、測定の際、右先端部で患者の顎堤を傷つけるおそれを低減することができるうえ、右先端部の洗浄がより容易となる。
図8Aおよび図8Bに示す例においては、図4Aに示す例と同様に、一対の外法表示部24、34間の距離(外法)d2が、一対の外法測定部23、33間の距離(内法)d1と同一となるよう構成しているが、この発明は、これに限定されるものではない。
たとえば、図8Cに示す右先端部322または図8Dに示す右先端部422のように、一対の外法表示部24、34間の距離(外法)d2が、一対の外法測定部23、33間の距離(内法)d1より、所定量dxだけ大きくなるよう構成することもできる。
咬合採得に際し、患者の顎堤の一側面とこれに対向するトレーの内側面との間に充填すべき印象材の適度の厚さをdaとした場合、たとえば、上記所定量dxがdaの略2倍になるよう構成することができる。
このように構成しておけば、たとえば、上顎用のトレー80の選択に際し(図5B参照)、トレー本体81の左右方向の内側端にある一対の臼歯部頬側対応部85、86間に、外法表示部24、34が過不足なく収まるか否かを確認する場合に、臼歯部頬側対応部85、86と外法表示部24、34とが、略一致するか否かを確認すればよく、印象材のための間隙を考慮する必要がない。
このため、上顎用のトレー80の選択をさらに迅速かつ正確に行うことが可能となる。下顎用のトレー90の選択に際しても、同様である。
なお、上述の実施形態においては、無歯顎患者の顎に適合したトレーを選択する場合を例示して説明したが、有歯顎患者の顎に適合したトレーを選択する際にも、この発明を同様に適用することができる。
この場合、患者の顎における略馬蹄形の顎堤の臼歯部における両外側または歯列の臼歯部における両外側のうち、幅の広い方を、外法測定部で測定すればよい。また、患者の顎における略馬蹄形の顎堤の臼歯部における両内側または歯列の臼歯部における両内側のうち、幅の狭い方を、内法測定部で測定すればよい。
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、各用語は、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。また、上記においては、本発明のいくつかの典型的な実施形態についてのみ詳細に記述したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点を逸脱することなしに上記典型的な実施形態において多くの変更が可能であることを、容易に認識するであろう。したがって、そのような変更はすべて、本発明の範囲に含まれるものである。