JP6730384B2 - 電気音響変換器 - Google Patents
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Description
特許文献1には、電気音響変換器としてイヤホン又はヘッドホンが開示されている。又、特許文献2には、電気音響変換器としてヘッドホンが開示されている。
この音響等価回路では、音源1から送られてくる音声信号が、ドライバユニット2で音波に変換され、耳孔3へ放出される構成になっている。ドライバユニット2は、インダクタLo、容量Co、及び抵抗Roの直列回路からなる単振動系で表される。このドライバユニット2には、入力電圧Eoutが印加される。耳孔3は、音響容量Ceとして表される。
図24の実線の波形は、図23の音響等価回路に、回路定数(例えば、Lo=1mH、Co=10μF、Ro=15Ω、Ce=0.7μF)を代入したときの波形図である。一点鎖線の波形は、図23の音響等価回路に回路定数(例えば、Lo=0.6mH、Co=10μF、Ro=15Ω、Ce=0.7μF)を代入したときの波形図である。
これに対して、ドライバユニット2の共振周波数以上の高周波領域において、このドライバユニット2の等価回路が、図24(B)に示すように、インダクタLoからなる慣性制御となり、周波数特性はオクターブ当たり12dB減衰し、高周波領域の特性が劣化する。実際には、ドライバユニット2を収容しているハウジングの形状等による気柱共鳴等の影響で、実線の波形には、破線で示すようなピークが発生する。
図24(B)に示すような高周波領域の特性の劣化を改善するには、ドライバユニット2の質量を小さくする必要があるが、実際には難しい。
音声信号伝送用の配線コード5と図示しないドライバユニットとの間には、高域増強回路10が接続されている。配線コード5は、左チャンネル(以下「Lch」という。)音声信号線5a、右チャンネル(以下「Rch」という。)音声信号線5b、及び接地線5cにより構成されている。高域増強回路10は、Lch音声信号線5aと接地線5cとの間に接続されたインダクタLl、容量切り替え用のスイッチSWl、及び容量値の異なる2つの容量C1l,C2lからなるLC直列共振回路と、Rch音声信号線5bと接地線5cとの間に接続されたインダクタLr、容量切り替え用のスイッチSWr、及び容量値の異なる2つの容量C1r,C2rからなるLC直列共振回路と、により構成されている。
図26の回路条件1の実線の波形は、スイッチSWl,SWrを容量C1l,C1r側に切り替えたときの波形図、更に、図26の回路条件2の破線の波形は、スイッチSWl,SWrを容量C2l,C2r側に切り替えたときの波形図である。
図26から明らかなように、高域増強回路10を設けることにより、高周波領域におけるドライバユニットの入力電圧Eoutの音圧が向上している。
図25の高域増強回路10を効果的に働かせるためには、インダクタLl,Lrの直流抵抗が小さい方が良い。配線コード5の抵抗の影響を避けるため、高域増強回路10は、なるべく音源側に近く設置する必要がある。しかし、直流抵抗が小さく、必要なインダクタンス値を有するインダクタLl,Lrは、寸法(サイズ)が大きくなるので、電気音響変換器の小型化が難しい。そのため、小型で、広音場及び高音質の電気音響変換器を実現することが困難であった。
前記第2電気音響変換器は、抵抗及び容量の並列回路により構成され、入力された前記第2音声信号の周波数特性を変更して第2変更音声信号を生成する第3イコライザと、抵抗及び容量の直列回路により構成され、入力された前記第1音声信号の位相を逆位相に変換して前記第2変更音声信号に加える第4イコライザと、前記第2変更音声信号と前記逆位相の第1音声信号とが合成された第2合成信号を前記音波に変換して前記右耳へ出力する第2ドライバユニットと、を備えている。
電気音響変換器は、例えば、イヤホン又はヘッドホンである。
図3は、特許文献2等に記載されたスピーカによるステレオ聴取を示す図である。
図3では、使用者15の左右前方に置かれたLchスピーカ20LとRchスピーカ20Rとからステレオ信号を聴取する状態が示されている。
ここで、空間クロストークとは、スピーカ再生で音を聴く場合、Lchスピーカ20Lの再生音である音波S20Lは、左耳15lと共に遅れて右耳15rにも到達し、又、Rchスピーカ20Rの再生音である音波S20Rは、右耳15rと共に遅れて左耳15lにも到達するので、これが両耳間のクロストークと言われる。又、音像空間とは、方向や距離を持った音の空間を言う。
ここで、音像定位とは、音の聞こえた方向や距離を知覚する能力を音像定位能と言い、この音像(方向や距離を持った音)の位置を定めることである。この音像定位では、左右の耳15l,15rに聞こえる音の時間差を利用している。
図3のステレオ信号再生では、左右前方のスピーカ20L,20Rの位置だけでなく、図4に示すように、スピーカ20L,20Rの中央(Fc)や左側面(Ls)及び右側面(Rs)にも音像Fc,Ls、Rsを感じることができる。
LchとRchのスピーカ20L,20Rから同レベル及び同位相の音波S20L,S20Rを出せば、それは正中面の音像Fcからの音波と同じなので、正中面の音像Fcを感じる。Lchスピーカ20Lからだけの音波S20Lは、当然Lchスピーカ20Lの位置に音像を感じる。又、Lchスピーカ20Lから右耳15rに入る音波S20L1に対し、Rchスピーカ20Rから、音波S20Lに適切な遅延をかけ位相を反転した音波−20L1を再生すれば、右耳15r付近では音波S20L1が打ち消され、左耳15lの音波S20Lだけが知覚される。これはあたかも左側の音像Lsからの音波(S20L)と同じなので、左側の音像Lsを感じる。
Rchスピーカ20Rや右側の音像Rsについても同様である。
図3及び図4の説明から、図5に示すように、Lchスピーカ20L及びRchスピーカ20Rに反対側のチャンネルの音波S20R,S20Lを適切なレベル且つ同位相で加えたときは(S20L+α1・S20R,S20R+α2・S20L)、Lchスピーカ20LとRchスピーカ20Rとの間に音像Fcを定位できる。同じく、Lchスピーカ20L及びRchスピーカ20Rに、反対側のチャンネルの音波を適切なレベルで遅延させて逆位相で加えたときは(S20L−β1・S20R,S20R−β2・S20L)、Lchスピーカ20LとRchスピーカ20Rとの外側に音像Ls,Rsを定位できる。
以上から、Lchの音波S20Lには、Rchの同相成分や遅延された逆相成分も含んでいると考えられる。録音技術者は、これらの比率、遅延時間、及び位相、更には周波数特性等を調整して、所望の再生音場を作っている。
図6に示すようなステレオ信号をイヤホンで聴いた時の音像の定位を考える。
イヤホンでの聴取では、図3のような空間クロストークは起こらず、耳たぶや身体からの反射の影響(周波数特性の変化)もない。又、直接、左右の耳15l,15rに音波が届くので、身体を動かしたときの音質及び位相等の変化もない。従って、音圧差、位相差、及び遅延時間等の情報から、音源の位置を判断しようとするが、脳が混乱し、図5の再生音場は、図6のようになる。この音像Fcのような頭内定位は、日常経験しない現象で、イヤホン聴取時の欠点の一つである。
ここで、頭内定位とは、イヤホンやヘッドホンを使って音楽を再生した時、左右の耳15l,15rの横で音が鳴っているはずなのに、使用者15の頭の中で再生されているように感じることを言う。この反対の概念は、頭外定位である。使用者15は、左右の耳15l,15rへの到達時間差によって音源までの距離や方向を判断している。
ここで、先行音効果とは、数ミリから数十ミリ秒の時間差で到来した2つの音源の音像が、最初に到来した音の音源方向にまとめて知覚される現象(precedence effert)を言う。この先行音効果は、ハース効果(Haas effect)や第1波面の法則(the law of the first wave front)と言われることもある。
実際のイヤホンでの聴取では、図6のように小さくまとまって聞こえるわけではない。図5のような信号処理や残響の付加によって、概ね図6のような配列ではあるが、図7に示すように、水平面や上下方向にも広がって聞こえる。
それぞれの音像領域は分離しているわけではなく、お互いに重なり合って再生音場を形成している。脳が日常の聴取状態に近づけるためか、全体はやや前方の音像Fcに定位することが多い(但し、これはモデルにより異なる)。正面中央の音像Fcは、モデルによっては、後頭部に音像Fc1が定位するものもある。
ここで、図8は、耳孔入口までの伝達周波数特性の正中面内音源方向による変化を示す図であり、横軸は音源角度θ(°)、及び縦軸は周波数(kHz)である。この図8は、各周波数(kHz)の振幅の変化で表示されている。図8の右下には、1つのスピーカ(音源)20と使用者15が図示されている。
周波数領域3.5kHz−5kHzでは、音源角度0°の音圧が一番高く、音源角度180°の音圧は低い。この周波数領域は、前面(0°)からの音と認識されやすい。そのため、前面に定位しやすい。
又、周波数領域7kHz−10kHzでは、音源角度60°から90°の音圧が一番高く、0°や180°の音圧は低い。この周波数領域は、前方上方(60°)から頭上(90°)の音と認識されやすい。そのため、上方に定位しやすい。
従って、周波数領域1k−1.4kHzを低めにし、周波数領域3.5k−5kHzを高めに設定すると、音源20は面前に定位しやすくなると思われる。又、周波数領域7kHz−10kHzを高めることで、高周波領域が上方に広がるサラウンド感が得られると思われる。
ここで、図9は、方向定位において前方の定位を示す図であり、横軸は中心周波数(Hz)、縦軸は相対頻度(%)である。図10は、方向定位において後方と上方の定位を示す図であり、上段は後方の定位を示す図、及び、下段は上方の定位を示す図である。図10の上段と下段の図において、横軸は中心周波数(Hz)、及び縦軸は相対頻度(%)である。
図10の上段の図に示すように、後方に定位を感じる周波数の割合について考察すると、周波数1kHz付近の音源は、後方からの音と判定されやすい。音源を前方に定位させたいならば、周波数1kHz付近は弱めた方がいいということになる。
図10の下段の図に示すように、上方に定位を感じる周波数の割合について考察すると、周波数8kHz付近の音源は、上方からの音と判定されやすい。又、周波数12kHz付近の音源音は、後方に定位を感じやすい。従って、周波数8kHz以上の音を強調すると、サラウンド感向上に寄与すると思われる。
図1は、本発明の参考例2の電気音響変換器(例えば、カナル型イヤホン)を示す概略の構成図である。
このカナル型イヤホン30は、図示しない配線コードを介して音源31に接続される。音源31は、左右一対の同位相の第1音声信号(例えば、Lch音声信号)及び第2音声信号(例えば、Rch音声信号)を有するステレオ信号のうちのいずれか一方の音声信号Sinを出力する音響機器等で構成されている。カナル型イヤホン30は、図示しない配線コードから送られてくる音声信号Sinを入力する入力端子32と、接地端子33と、を有し、これらの入力端子32及び接地端子33に、ハウジング34が接続されている。ハウジング34内には、イコライザ35及びドライバユニット36が収容され、このハウジング34の前面側に、音導部材を構成する筒状の音導管37が突設されている。音導管37の外周には、音導部材を構成する耳孔挿入用のイヤーピース38が着脱自在に装着されている。
音導管37は、ドライバユニット36から出力された音波をイヤーピース38へ放出するものである。イヤーピース38は、音導管37から放出された音波を耳孔へ導くものであり、例えば、シリコーンゴム等の弾性部材により形成された略傘形をしている。
音源31から図示しない配線コードを介して送られてくる音声信号Sinが、イヤホン30の入力端子32に入力されると、イコライザ35により、その音声信号Sinの周波数特性が変更されて変更音声信号が出力され、その変更音声信号がドライバユニット36によって音波に変換される。
イコライザ35は、入力される音声信号Sinの低周波領域では、次式(1)から求められる信号電圧降下Voにより音波の低域再生音圧を下げ、入力される音声信号Sinの高周波領域では、容量Cにより、その信号電圧降下Voをなくして、相対的に音波の高域再生音圧を上げる。
Vo=R/(R+Zd) (1)
Eout=[Zd/(Zd+Z)]*Ein (2)
但し、
Z=[R×(1/(jωC)]/[R+(1/(jωC))]
=R/(1+jωCR)
j;虚数単位(=√‐1)
f;周波数
ω;角周波数(=2πf)
ドライバユニット36により変換された音波は、音導管37を経由してイヤーピース38から耳孔へ放出される。
この図2では、例えば、
ドライバユニット36のインピーダンスZd=32Ω
イコライザ35の抵抗R=22Ω
イコライザ35の容量C=4.7μF
としたときの、ドライバユニット36に掛かる入力電圧Eoutにおける周波数特性の計算例の波形図が示されている(音源31の内部抵抗及び導線抵抗の値は0とする)。
参考例2によれば、次の(A)、(B)のような効果がある。
(A) 相対的な高周波領域の特性の改善
例えば、特許文献1に記載された従来の電気音響変換器では、ハウジング、ドライバユニット、及び音響調整等により音質の改善を図っているが、イヤホンは、原理的に高周波領域の特性が低下する。これをドライバユニットで改善するのは、非常に難しい。これに対して、参考例2によれば、イコライザ35の抵抗R及び容量Cの値により、相対的ではあるが、高周波領域の特性を簡単に改善できる。
つまり、イコライザ35を構成している抵抗R及び容量Cの並列回路で、低周波領域の感度を落とし、相対的に高周波領域の感度を上げる。抵抗Rの値を大きくすると、全体の音圧が下がる。容量Cは抵抗Rとの関係で、高周波領域の感度低下を弱めている。容量Cの値が大きいほど、低周波領域から感度低下の影響が弱められる。イコライザ35は、受動部品なので電源等を必要とせず、従来のイヤホンの性能(特性)改善が容易である。特に、抵抗R及び容量Cの並列回路により構成されるイコライザ35を設けるだけで、相対的ではあるが、高周波領域の特性を簡単に改善できる。
図2に示すように、矢印41で示す低周波領域の感度に対し、矢印42で示す高周波領域の感度は、相対的に4.5dB高くなっている。これは、ドライバユニット36の振動系の質量が約60%になった状態に相当し、従来のようなドライバユニット側の改善では、現在のところ略実現不可能な性能と言える。最近は大容量の積層セラミックコンデンサ等が開発され、本実施例1のRCのイコライザ35は、従来の図25のインダクタLl,Lr及び容量C1l,C2l,C1r,C2rの直列回路により構成されるイコライザに比べ、小型及び安価である。
図11は、本発明の実施例1の電気音響変換器(例えば、第1、第2電気音響変換器としての左右一対のカナル型イヤホン)を示す概略の構成図である。
左右一対のカナル型イヤホン40は、同一構成の第1電気音響変換器としての左耳用イヤホン40Lと第2電気音響変換器としての右耳用イヤホン40Rとを有している。
左右一対のカナル型イヤホン40は、左右一対の同位相の第1音声信号(例えば、Lch音声信号)SinL及び第2音声信号(例えば、Rch音声信号)SinRを有するステレオ信号のうちのLch音声信号SinLを入力する第1入力端子41Lと、Lch側の第1接地端子42LGと、Rch音声信号SinRを入力する第2入力端子41Rと、Rch側の第2接地端子42GRと、を有している。
音導管47Lは、ドライバユニット46Lから出力された音波をイヤーピース48Lへ放出するものである。イヤーピース48Lは、音導管47Lから放出された音波を左耳孔へ導くものであり、例えば、シリコーンゴム等の弾性部材により形成された略傘形をしている。
音導管47Rは、ドライバユニット46Rから出力された音波をイヤーピース48Rへ放出するものである。イヤーピース48Rは、音導管47Rから放出された音波を右耳孔へ導くものであり、弾性部材により形成された略傘形をしている。
一般のイヤホンの配線コードは、プラグ部分から左(L)線/右(R)線/接地(G)線の3本の信号線が延びて、分岐部から先はLch用にはL線とG線、Rch用にはR線とG線の各2本の信号線になっている。
これに対して、本実施例1の3線式の配線コード50では、プラグ部51から、L線/R線/G線の3本の信号線からなるコード本体52が延びて、分岐部53から先が、L線/R線/G線の3本の信号線からなるLch側分岐コード54Lと、L線/R線/G線の3本の信号線からなるRch側分岐コード54Rと、になっている。Lch側分岐コード54Lが、図11中の左耳用カナル型イヤホン40Lの入力側に接続され、Rch側分岐コード54Rが、図11中の右耳用カナル型イヤホン40Rの入力側に接続されている。
図12の配線コード50から送られてくるLch音声信号SinL及びRch音声信号SinRのうち、Lch音声信号SinLは、左耳用イヤホン40L側の入力端子41Lに入力され、Rch音声信号SinRは、右耳用イヤホン40R側の入力端子41Rに入力される。
生成された合成信号は、左耳用イヤホン40L側のドライバユニット46Lによって音波に変換され、音導管47Lを経由してイヤーピース48Lから左耳孔へ放出される。
生成された合成信号は、右耳用イヤホン40R側のドライバユニット46Rによって音波に変換され、音導管47Rを経由してイヤーピース48Rから右耳孔へ放出される。
図13は、図11の左耳用イヤホン40LにおいてLch音声信号SinLによるドライバユニット46Lの入力電圧Eoutを計算するための回路図である。
図13において、Zdはドライバユニット46Lのインピーダンス(抵抗で近似したもの)、インピーダンスZ1はイコライザ44Lのインピーダンス、Z2はイコライザ45Lのインピーダンスである。Lch音声信号SinL側の音源の内部抵抗及び導線抵抗の値は0とする。接地端子42LGと入力端子41Rとの間の破線は、Rch音源インピーダンス値=0による仮想ショートを示す。
回路定数は、例えば、以下の通りである。
Zd=32Ω
C1=4.7μF
R1=22Ω
C2=10μF
R2=33Ω
Lch音声信号SinLは、イコライザ44LのインピーダンスZ1により、参考例2と同様に高周波領域が増強の特性となる。Rch音声信号源のインピーダンスを0と仮定すれば、図13に示すように、入力端子41Rと接地端子42LGは、破線のように短絡される。そのため、イコライザ45LのインピーダンスZ2は、イコライザ44Lに対して並列接続となる。従って、Lch音声信号SinLの電圧をElin、イコライザ44LのインピーダンスZ1とイコライザ45LのインピーダンスZ2との並列接続をZ1//Z2と表せば、ドライバユニット46Lの入力電圧Eoutは、次式(3)のようになる。
Eout=[Zd/(Zd+(Z1//Z2))]*Elin (3)
図14において、Rch音声信号SinRによる左耳用イヤホン40Lにおけるドライバユニット46Lの入力電圧Eoutについて説明する。
Rch音声信号SinRは、イコライザ45Lを介して接続点NL2に至る。Lch音声信号源のインピーダンスを0と仮定すれば、図14に示すように、入力端子41Lと接地端子42LGは、破線のように短絡される。そのため、イコライザ44LのインピーダンスZ1は、ドライバユニット46LのインピーダンスZdに対して並列接続となる。従って、Rch音声信号SinRの電圧をErin、イコライザ44LのインピーダンスZ1とドライバユニット46LのインピーダンスZdの並列接続をZ1//Zdと表せば、ドライバユニット46Lの入力電圧Eoutは、次式(4)のようになる。
Eout=[Z1//Zd)/(Z2+(Z1//Zd))]*Erin (4)
ここで、Rch音声信号SinRの電圧Erinが、Lch音声信号SinLの電圧Elinに対して同相であっても、ドライバユニット46Lの入力電圧Eoutとしては逆相で加わる。
図15において、矢印43の波形では、図13中の入力端子41LにLch音声信号SinLを加えたときの、ドライバユニット46Lに掛かる入力電圧Eoutの周波数特性が示されている。ここで、入力端子41Lに加わるLch音声信号SinLに対して、入力端子41Rと接地端子42LGとの間のインピーダンスは0Ωと仮定する。
つまり、図15の周波数特性では、矢印43に示すように、高周波領域が増強特性になっている。これは、図4のLchスピーカ20L(又はRchスピーカ20R)付近に定位する音波へのイコライザ特性となる。
図16において、矢印44で示すように、主に、中周波領域が増強特性になっている。
図17において、矢印43の実線の波形は、図15と同一の波形である。矢印45の破線の波形は、図14中の第1、第2入力端子41L,41Rに同位相同レベルの音声信号SinL,SinRを加えたときの、ドライバユニット46Lに掛かる入力電圧Eoutの周波数特性を示す図である。ここで、入力端子41Rに加わる音声信号SinRに対して、入力端子41Lと接地端子42LGとの間のインピーダンスは0Ωと仮定する。
低周波領域及び高周波領域への影響は少ないが、中周波領域が弱められる特性となっている。これにより、正面中央に定位する成分のうち、中周波領域(例えば、ボーカル域)が弱められる。
つまり、矢印45の波形は、正面中央に定位する音像Fcの低音(主にベース等)や高音(主にシンバル等)への影響は少なく、1kHz付近を弱めている。これは、正面中央の音像Fcの前方定位を狙っている。
図18において、矢印43の実線の波形は、図15と同一の波形である。矢印46の破線の波形では、図14中の入力端子41L,41Rに、逆位相同レベルの音声信号SinL,SinRを加えたときの、ドライバユニット46Lに掛かる入力電圧Eoutの周波数特性が示されている。ここで、入力端子41Rに加わる音声信号SinRに対して、入力端子41Lと接地端子42LGとの間のインピーダンスは0Ωと仮定する。
低周波領域及び高周波領域への影響は少ないが、中周波領域が強められる特性となっている。Rch側ドライバユニット46Rも同様である。これにより、広がり感が増す。
図11のカナル型イヤホン40において、高周波領域の増強は4.5dB、正面ボーカルは−3dBのレベル低下を期待して、下記の回路定数により実験を行った。
回路定数は、例えば、Zd=32Ω、R1=22Ω、C1=4.7uF、R2=33Ω、C2=10uFである。
図19及び図20には、高周波領域の増強の効果が示されている。
図19の実線波形#1Lは、図11においてイコライザ44L,44Rなしの特性、破線波形#2Lは、イコライザ44L,44Rありの特性である。
図20では、図19の破線波形#2Lと実線波形#1Lとの差の波形#2L−#1Lが示されている。高周波領域において測定誤差による乱れが見えるが、図15の高周波領域の増強の効果が認められる。
図21の実線波形#7Lは、図11においてLch側ドライバユニット46Lだけに音声信号を供給したときのLch側ドライバユニット46Lの出力特性である。破線波形#7Rは、図11においてLch側ドライバユニット46LとRch側ドライバユニット46Rとに同時に音声信号を供給したときのLch側ドライバユニット46Lの出力特性である。
図22では、図21の破線波形#7Rと実線波形#7Lとの差の波形#7R−#7Lが示されている。計算値よりは小さいが、図17の同相成分による中周波領域の感度の低下が認められる。
本実施例1によれば、次の(a)〜(c)のような効果がある。
(a) 従来の図25の電気音響変換器では、ハウジング、ドライバユニット及び高域増強回路10等により音質を改善しているが、イヤホンは原理的に高周波領域の特性が低下する。これを従来のように、ドライバユニットで改善するのは、非常に難しい。これに対して本実施例1によれば、抵抗R1及び容量C1の並列回路により構成されたイコライザ44L,44Rを設けているので、相対的ではあるが、高周波領域の特性を簡単に改善できる。改善量や改善特性も、容量C1及び抵抗R1の値で容易に変更及び調整ができる。
(c) 音場の調整量や周波数特性も、イコライザ44L,44R,45L,45Rの容量C1,C2と抵抗R1,R2の値で、容易に変更及び調整ができる。このように、容量C1,C2と抵抗R1,R2の値で変更及び調整できるので、従来のインダクタLと容量Cの値による変更及び調整に比べ、小型及び安価である。抵抗R1,R2及び容量C1,C2は、受動部品なので電源等を必要とせず、現在のモデルの性能(特性)改善が容易である。この場合、3線式の配線コード50が必要になるが、この製造も容易である。
本発明は、上記参考例2及び実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1)〜(4)のようなものがある。
(1) 参考例2では、カナル型イヤホン30のハウジング34内にイコライザ35を設けているが、このイコライザ35を、ハウジング34の外部に設けても良い。これにより、参考例2の(A)、(B)と略同様の効果が得られる。
(2) 実施例1では、カナル型イヤホン40のハウジング43L,43R内にイコライザ44L,44R,45L,45Rを設けているが、このイコライザ44L,44R,45L,45Rを、ハウジング43L,43Rの外部に設けても良い。これにより、実施例1の(a)〜(c)と略同様の効果が得られる。
(4) 本発明は、参考例2及び実施例1のカナル型イヤホン30,40,40L,40Rの他に、インナイヤー型イヤホン等の他の形状のイヤホンや、ヘッドホン等の電気音響変換器にも適用でき、参考例2及び実施例1と略同様の作用効果を奏することができる。
31 音源
32 入力端子
33,42LG,42RG 接地端子
34,43L,43R ハウジング
35 イコライザ
36,46L,46R ドライバユニット
37,47L,47R 音導管
38,48L,48R イヤーピース
41L,41R 入力端子
44L,44R イコライザ
45L,45R イコライザ
50 配線コード
C,C1,C2 容量
R,R1,R2 抵抗
Claims (4)
- 左右一対の同位相の第1音声信号及び第2音声信号を有するステレオ信号を入力し、前記ステレオ信号を音波に変換して使用者の左耳及び右耳へそれぞれ出力する左右一対の第1電気音響変換器及び第2電気音響変換器を有する電気音響変換器において、
前記第1電気音響変換器は、
抵抗及び容量の並列回路により構成され、入力された前記第1音声信号の周波数特性を変更して第1変更音声信号を生成する第1イコライザと、
抵抗及び容量の直列回路により構成され、入力された前記第2音声信号の位相を逆位相に変換して前記第1変更音声信号に加える第2イコライザと、
前記第1変更音声信号と前記逆位相の第2音声信号とが合成された第1合成信号を前記音波に変換して前記左耳へ出力する第1ドライバユニットと、
を備え、
前記第2電気音響変換器は、
抵抗及び容量の並列回路により構成され、入力された前記第2音声信号の周波数特性を変更して第2変更音声信号を生成する第3イコライザと、
抵抗及び容量の直列回路により構成され、入力された前記第1音声信号の位相を逆位相に変換して前記第2変更音声信号に加える第4イコライザと、
前記第2変更音声信号と前記逆位相の第1音声信号とが合成された第2合成信号を前記音波に変換して前記右耳へ出力する第2ドライバユニットと、
を備える、
ことを特徴とする電気音響変換器。 - 前記第1電気音響変換器は、
前記第1音声信号を入力する第1入力端子と、
前記第1音声信号側の第1接地端子と、
前記第1接地端子と第1接続点との間に接続された前記第1イコライザと、
前記第1接続点と前記第2音声信号を入力する第2入力端子との間に接続された前記第2イコライザと、
前記第1入力端子に接続された第1正極入力端子、及び前記第1接続点に接続された第1負極入力端子を有し、前記第1正極入力端子及び前記第1負極入力端子から入力される前記第1合成信号を前記音波に変換する前記第1ドライバユニットと、
を備え、
前記第2電気音響変換器は、
前記第2音声信号を入力する前記第2入力端子と、
前記第2音声信号側の第2接地端子と、
前記第2接地端子と第2接続点との間に接続された前記第3イコライザと、
前記第2接続点と前記第1音声信号を入力する前記第1入力端子との間に接続された前記第3イコライザと、
前記第2入力端子に接続された第2正極入力端子、及び前記第2接続点に接続された第2負極入力端子を有し、前記第2正極入力端子及び前記第2負極入力端子から入力される前記第2合成信号を前記音波に変換する前記第2ドライバユニットと、
を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。 - 前記第1入力端子、前記第1接地端子、前記第2入力端子、及び前記第2接地端子には、
前記ステレオ信号を入力する配線コードが接続されている、
ことを特徴とする請求項2記載の電気音響変換器。 - 請求項1〜3のいずれか1項記載の電気音響変換器は、
イヤホン又はヘッドホンである、
ことを特徴とする電気音響変換器。
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