JP6728511B1 - 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法 - Google Patents

潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6728511B1
JP6728511B1 JP2020513938A JP2020513938A JP6728511B1 JP 6728511 B1 JP6728511 B1 JP 6728511B1 JP 2020513938 A JP2020513938 A JP 2020513938A JP 2020513938 A JP2020513938 A JP 2020513938A JP 6728511 B1 JP6728511 B1 JP 6728511B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lubricating oil
oil composition
surface tension
dynamic surface
inspecting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020513938A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020110900A1 (ja
Inventor
真澄 栗谷
真澄 栗谷
宇 高
宇 高
門田 隆二
隆二 門田
近藤 邦夫
邦夫 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Showa Denko KK
Original Assignee
Showa Denko KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK filed Critical Showa Denko KK
Application granted granted Critical
Publication of JP6728511B1 publication Critical patent/JP6728511B1/ja
Publication of JPWO2020110900A1 publication Critical patent/JPWO2020110900A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C10PETROLEUM, GAS OR COKE INDUSTRIES; TECHNICAL GASES CONTAINING CARBON MONOXIDE; FUELS; LUBRICANTS; PEAT
    • C10MLUBRICATING COMPOSITIONS; USE OF CHEMICAL SUBSTANCES EITHER ALONE OR AS LUBRICATING INGREDIENTS IN A LUBRICATING COMPOSITION
    • C10M113/00Lubricating compositions characterised by the thickening agent being an inorganic material
    • C10M113/02Carbon; Graphite
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C10PETROLEUM, GAS OR COKE INDUSTRIES; TECHNICAL GASES CONTAINING CARBON MONOXIDE; FUELS; LUBRICANTS; PEAT
    • C10MLUBRICATING COMPOSITIONS; USE OF CHEMICAL SUBSTANCES EITHER ALONE OR AS LUBRICATING INGREDIENTS IN A LUBRICATING COMPOSITION
    • C10M177/00Special methods of preparation of lubricating compositions; Chemical modification by after-treatment of components or of the whole of a lubricating composition, not covered by other classes
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N13/00Investigating surface or boundary effects, e.g. wetting power; Investigating diffusion effects; Analysing materials by determining surface, boundary, or diffusion effects
    • G01N13/02Investigating surface tension of liquids
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/26Oils; Viscous liquids; Paints; Inks
    • G01N33/28Oils, i.e. hydrocarbon liquids
    • G01N33/30Oils, i.e. hydrocarbon liquids for lubricating properties

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Lubricants (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)

Abstract

フラーレンを含む潤滑油組成物であっても、比較的測定が容易な方法を用いて、耐摩耗特性を安定して再現することができる潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法を提供する。潤滑油組成物の検査方法において、基油とフラーレンとを含む潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、前記動的表面張力(Σ)の測定値と前記潤滑油組成物の摩耗係数の測定値との相関によって設定された所定範囲に基づいて潤滑油組成物を選別する。

Description

本発明は、潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法に関する。
本願は、2018年11月26日に、日本に出願された特願2018−220721号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、高速化、高効率化、省エネルギーに伴い、自動車、家電、工業機械等に使用される潤滑油の性能向上が強く求められている。その用途に適するように特性を改善するために、潤滑油組成物には、酸化防止剤、極圧添加剤、錆び止め添加剤、腐食防止剤等様々な添加剤が配合されている。
これらの要求に応えるため、低フリクション、トルクアップ、省燃費化といった複数の性能を同時に改善するため、鉱油やエステル油等の潤滑基油に、ナノカーボン粒子であるフラーレン、有機溶媒、粘度指数向上剤、摩耗調整剤、清浄分散剤を配合したエンジン潤滑油用添加剤組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、冷媒圧縮機に用いられる潤滑油組成物にもフラーレンが添加されることがある(例えば、特許文献2参照)。
一般に、潤滑油組成物の重要な特性として、摩耗係数等が挙げられるが、測定に手間がかかる。そのため、潤滑油組成物の製造工程においては、測定が容易な、密度、動粘度、粘度指数、流動点、全酸化等を指標として、潤滑油組成物の性状を特定している(例えば、非特許文献1参照)。
特開2008−266501号公報 国際公開第2017/141825号
インターネット<URL:https://www.noe.jxtg-group.co.jp/english/products/lubricants/industrial.html>
しかしながら、非特許文献1等に記載されている潤滑油組成物にフラーレンを添加した系では、上記の指標で製品管理を行っても、摩耗係数等の潤滑特性を安定して再現した製品が得られなかった。つまり、上記の指標で製品の特性を数値化し、一定範囲内に入る製品を合格とした場合であっても、潤滑特性については、許容範囲を超えてばらつくことがあった。
また、潤滑油組成物の製品の潤滑特性を測定することで、潤滑特性が許容範囲にある製品を選別することができるが、そのためには、製品ロット毎にボールオンディスク等の摩耗試験を行う必要がある。この場合、手間と時間がかかり、また試験基板等の費用が嵩むため、摩耗試験は製造ロット毎に実施するには適さない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、フラーレンを含む潤滑油組成物であっても、比較的測定が容易な方法を用いて、耐摩耗特性を安定して再現することができる潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[1]基油とフラーレンとを含む潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、前記動的表面張力(Σ)の測定値と前記潤滑油組成物の摩耗係数の測定値との相関によって設定された所定範囲に基づいて潤滑油組成物を選別する、潤滑油組成物の検査方法。
[2]ウィルヘルミ・プレート法によって前記動的表面張力(Σ)を測定する、上記[1]に記載の潤滑油組成物の検査方法。
[3]前記動的表面張力(Σ)を、以下の算出方法(A),(B)のいずれかで算出する、上記[2]に記載の潤滑油組成物の検査方法。
(A)前記潤滑油組成物の液中から基板を引き上げる際に必要な力の大きさ(|LA|)および前記潤滑油組成物の液中に基板を沈める際に必要な力の大きさ(|LB|)のいずれか一方を、動的表面張力(Σ)とする。
(B)上記力の大きさの差(|LA|−|LB|)を、動的表面張力(Σ)とする。
[4]最大泡圧法によって前記動的表面張力(Σ)を測定する、上記[1]に記載の潤滑油組成物の検査方法。
[5]前記動的表面張力(Σ)を、以下の算出方法(C),(D),(E),(F)のいずれかで算出する、上記[4]に記載の潤滑油組成物の検査方法。
(C)前記潤滑油組成物の液中に配された中空管内に気体を導入し、
前記中空管の下端部に気泡が発生してから、気体を導入する圧力が最大になるまでの時間を示すバブルライフタイム(Tw)と、表面張力(σ)(σ=ΔP×γ/2、ΔPは周期的な圧力変動における前記気体の圧力の最大値Pmaxと最小値Pminとの差、γは前記中空管の中空部分の断面積)とを測定し、
前記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
(D)前記バブルライフタイム(Tw)が最大値(Twmax)であるときの表面張力(σ)に対する、前記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの前記表面張力(σ)の比率(σ/σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
(E)前記バブルライフタイム(Tw)の最小値(Twmin)近傍での表面張力(σ)を直線近似し、得られた直線の勾配(S)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
(F)前記表面張力(σ)に対する前記勾配Sの比率(S/σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物の検査方法により選別する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法。
本発明によれば、フラーレンを含む潤滑油組成物であっても、比較的測定が容易な方法を用いて、耐摩耗特性を安定して再現することができる潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法を提供することができる。
図1は、最大泡圧法において、フラーレンを鉱油に溶解させた潤滑油組成物のバブルライフタイム(Tw)と表面張力(σ)との関係を示すグラフである。 図2は、バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)と、バブルライフタイム(Tw)が最大値(Twmax)であるときの表面張力(σ))とを示すグラフである。 図3は、バブルライフタイム(Tw)が最小となる付近でのプロットの近似直線の勾配(S)を示すグラフである。 図4は、実施例においてウィルヘルミ・プレート法で測定された動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を示すグラフである。 図5は、実施例において最大泡圧法で測定された動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を示すグラフである。 図6は、比較例において動粘度と摩耗係数の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法を説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[潤滑油組成物の検査方法]
本実施形態に係る潤滑油組成物の検査方法は、基油とフラーレンとを含む潤滑油組成物の動的表面張力Σを測定し、動的表面張力Σの測定値と潤滑油組成物の摩耗係数の測定値との相関によって設定された所定範囲に基づいて潤滑油組成物を選別する方法である。
(潤滑油組成物)
本実施形態に係る潤滑油組成物の検査方法で検査される潤滑油組成物は、基油とフラーレンとを含む。
(基油)
本実施形態における潤滑油組成物に含まれる基油は、特に限定されるものではなく、通常、潤滑油の基油として広く使用されている鉱油および合成油が好適に用いられる。
潤滑油として用いられる鉱油は、一般的に、内部に含まれる炭素−炭素二重結合を水素添加により飽和して、飽和炭化水素に変換したものである。このような鉱油としては、パラフィン系基油、ナフテン系基油等が挙げられる。
合成油としては、合成炭化水素油、エーテル油、エステル油等が挙げられる。具体的には、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリアルキレングリコール、ポリアルファオレフィン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブテン、イソパラフィン、オレフィンコポリマー、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジイソデシルアジペート、モノエステル、二塩基酸エステル、三塩基酸エステル、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ジアルキルジフェニルエーテル、アルキルジフェニルサルファイド、ポリフェニルエーテル、シリコーン潤滑油(ジメチルシリコーン等)、パーフルオロポリエーテル等が好適に用いられる。これらの中でも、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキルビニルエーテルがより好適に用いられる。
これらの鉱油や合成油は、1種を単独で用いてもよく、これらの中から選ばれる2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
(フラーレン)
本実施形態における潤滑油組成物に含まれるフラーレンは、構造や製造法が特に限定されず、種々のものを用いることができる。フラーレンとしては、例えば、比較的入手しやすいC60やC70、さらに高次のフラーレン、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
フラーレンの中でも、潤滑油への溶解性の高さの点から、C60およびC70が好ましく、潤滑油への着色が少ない点から、C60がより好ましい。混合物の場合は、C60が50質量%以上含まれることが好ましい。
また、フラーレンは、基油への溶解性をさらに高める等の目的で、化学修飾されたものであってもよい。化学修飾されたフラーレンとしては、例えば、メタノフラーレン(フェニルC61酪酸メチルエステル([60]PCBM)、ジフェニルC62ジ酪酸メチルエステル(=Bis[60]PCBM)、フェニルC71酪酸メチルエステル([70]PCBM)、フェニルC85酪酸メチルエステル([85]PCBM)、フェニルC61酪酸ブチルエステル([60]PCBB)、フェニルC61酪酸オクチルエステル([60]PCBO)、フラーレンのインデン付加体、水酸化フラーレン、フラーレンのピロリジン誘導体等が挙げられる。
(添加剤)
本実施形態における潤滑油組成物は、基油とフラーレン以外にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有することができる。
本実施形態における潤滑油組成物に配合する添加剤は、特に限定されない。添加剤としては、例えば、市販の酸化防止剤、粘度指数向上剤、極圧添加剤、清浄分散剤、流動点降下剤、腐食防止剤、固体潤滑剤、油性向上剤、錆び止め添加剤、抗乳化剤、消泡剤、加水分解抑制剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、フラーレンが溶解しやすくなる等の理由から、芳香族環を有する化合物が好ましい。
芳香族環を有する酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3−アリールベンゾフラン−2−オン(ヒドロキシカルボン酸の分子内環状エステル)、フェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
芳香族環を有する粘度指数向上剤としては、例えば、ポリアルキルスチレン、スチレン−ジエンコポリマーの水素化物添加剤等が挙げられる。
芳香族環を有する極圧添加剤としては、ジベンジルジサルファイド、アリルリン酸エステル、アリル亜リン酸エステル、アリルリン酸エステルのアミン塩、アリルチオリン酸エステル、アリルチオリン酸エステルのアミン塩、ナフテン酸等が挙げられる。
芳香族環を有する清浄分散剤としては、ベンジルアミンコハク酸誘導体、アルキルフェノールアミン類等が挙げられる。
芳香族環を有する流動点降下剤としては、塩素化パラフィン−ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン−フェノール縮合物、ポリアルキルスチレン系等が挙げられる。
芳香族環を有する抗乳化剤には、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
芳香族環を有する腐食防止剤としては、ジアルキルナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。
本実施形態における潤滑油組成物は、工業用ギヤ油、油圧作動油、圧縮機油、冷凍機油、切削油、圧延油、プレス油、鍛造油、絞り加工油、引き抜き油、打ち抜き油等の塑性加工油、熱処理油、放電加工油等の金属加工油、すべり案内面油、軸受け油、錆止め油、熱媒体油等の各種用途に使用することができる。
(検査方法)
本実施形態の潤滑油組成物の検査方法では、例えば、ウィルヘルミ・プレート法(Whilhelmy plate method)、あるいは、最大泡圧法によって、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定する。なお、基油にフラーレンを添加することにより、動的表面張力(Σ)の発現あるいは変化が測定される。
(ウィルヘルミ・プレート法による動的表面張力(Σ)の測定)
第1の測定方法として、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)は、ウィルヘルミ・プレート法により、表面張力測定装置を用いて測定することができる。以下、下向きの力を正として考える。
ウィルヘルミ・プレート法では、まず、基板(直方体のプレート)を測定子に固定する。この状態において観測される下向きの力はプレートの重量となる。ここで基板に働く下向きの力(F)をゼロと定義する。次に、基板を潤滑油組成物の液中に沈めていく。このとき、基板に働く力(F)は、表面張力により基板を液中から押し出す上向きの力(L:このときL<0)と、基板に働く上向きの浮力(Shρg)の合計となる。上記力(F)を基板の浸漬距離(h)に対して計測する。次に、基板が一定の深さに到達した後、基板を引き上げる。このときにも、表面張力により基板に液中に引き込む下向きの力(L:このときL>0)が発生する。
この計測の結果から得られる、力(F)と浸漬距離(h)の関係は、F=L−Shρg(但し、Lは表面張力により基板に働く力、Sは基板の断面積(基板の底の面積)、hは基板の浸漬距離、ρは潤滑油組成物の密度、gは重力加速度)で表される。浮力(上向きの力)は、−Shρgで表されている。この式を用いて、基板に働く力(F)と浸漬距離(h)を測定することにより、Lを算出することができる。通常、基板を沈める際の力(L)は負の値(上向きの力)となり、引き出す際の力(L)は正の値となる。
本実施形態では、ウィルヘルミ・プレート法により、上記の式を用いて、動的表面張力(Σ)を以下の方法(A),(B)のいずれかにより算出することができる。
(A)上記潤滑油組成物の液中から基板を引き上げる際に必要な力の大きさ(|LA|)および上記潤滑油組成物の液中に基板を沈める際に必要な力の大きさ(|LB|)のいずれか一方を、動的表面張力(Σ)とする。
(B)上記力の大きさの差(|LA|−|LB|)を、動的表面張力(Σ)とする。このとき、|LA|、|LB|を測定する引き上げ速度及び引き下げ速度は、同じ速度で測定する。
上記力(L=LAまたはLB)は、上記式により、基板に働く力(F)から該基板に働く浮力を減ずることで算出される。
ウィルヘルミ・プレート法による動的表面張力(Σ)は、基板の引き上げ速度や引き下げ速度によって制御することができる。基板の引上げ速度及び引き下げ速度を速くするほど、上記力の大きさの差(|LA|−|LB|)が大きくなり、潤滑油組成物間の差が顕著になるために、動的表面張力(Σ)による潤滑油組成物の判定(合格、不合格の選別等)が容易になるという利点がある。一方で、測定される浸漬距離(h)の間隔が広くなるために、測定点数が少なくなり、また上記力(LA)あるいは(LB)がばらつき、精度が低下することがある。
このため、基板の引上げ速度や引き下げ速度には最適な範囲があり、その速度は、0.1mm/秒以上5mm/秒以下が好ましく、より好ましくは0.2mm/秒以上2mm/秒以下、さらに好ましくは0.5mm/秒以上1mm/秒以下となる。
上記基板の材質は、特に制限はないが、金属、セラミックス、ガラスなどを使用することができる。また、基板の材質は、潤滑油組成物が適用される機械部品の材質と同じものが好ましい。例えば、潤滑油組成物が、気体圧縮装置、液体圧縮装置、気体減圧装置、内燃機関などに使用される場合、上記基板の材質は、鉄、アルミまたはステンレスが好ましい。
また、上記基板の表面は、平滑であることが好ましく、鏡面研磨されていることがより好ましい。
(最大泡圧法による動的表面張力(Σ)の測定)
第2の測定方法として、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)は、最大泡圧法で測定することができる。
最大泡圧法では、まず、測定対象である潤滑油組成物の液中に、毛管などの中空管の下端部を配置する。
この状態で、中空管内に外部から空気などの気体を導入すると、中空管の下端部から気泡が発生し、当該気泡が大きくなって端部から脱離し、液中で上方に移動して、液体の上面に到達する。この中空管の下端部に気泡が発生してから潤滑油組成物の上面に到達するまでの気泡の一連の動きを、バブルライフサイクルと呼ぶ。中空管に気体を連続的に導入することで、気泡が繰り返し連続的に発生し、バブルライフサイクルが連続的に繰り返される。
このとき、中空管内部に加わる圧力(例えば、気体が空気である場合、空気圧)を継時的に計測すると、圧力は、バブルライフサイクルの周期に応じて、周期的に変動する。この周期的な圧力変動に基づき、一周期での圧力の最高値Pmaxと最低値Pminとの差をΔP、中空管の中空部分の断面積をγとすると、表面張力σは、σ=ΔP×γ/2で表される。
バブルライフタイム(Tw)とは、中空管の下端部に気泡が発生してから圧力が最大になるまでの時間を指す。外部から中空管に導入する気体の導入速度(流量)を調節することにより、バブルライフタイム(Tw)を制御する(変化させる)ことができる。バブルライフタイム(Tw)を変化させながら、同時に表面張力(σ)を測定する。
横軸にバブルライフタイム(Tw)、縦軸に表面張力(σ)をプロットしたグラフでは、バブルライフタイム(Tw)が小さい領域では、通常、バブルライフタイム(Tw)を大きくするにつれて表面張力(σ)の値がバブルライフタイム(Tw)に依存して大きく変化する。その後、表面張力(σ)の変化は小さくなり、バブルライフタイム(Tw)に対してほぼ一定の値を取る。
例えば、フラーレンを鉱油に溶解させた潤滑油組成物の場合、図1に示すように、バブルライフタイム(Tw)(横軸は、Twの対数)に対して、表面張力(σ)(縦軸)は下に凸な右下がりの曲線となる。そこで、このグラフを用い、作図法により動的表面張力(Σ)を数値化する。
本実施形態では、前述した最大泡圧法を用いて、上記動的表面張力(Σ)を以下の算出方法(C),(D),(E),(F)のいずれかで算出することができる。
(C)上記潤滑油組成物の液中に配された中空管内に気体を導入し、バブルライフタイム(Tw)と、表面張力(σ)とを測定し、上記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)を、動的表面張力(Σ)とする。バブルライフタイム(Tw)の最小値(Twmin)は、表面張力(σ)のばらつきが許容範囲になるバブルライフタイム(Tw)のうち最も小さい値とする(以下も同様とする)。測定装置に測定可能範囲がある場合は、測定可能で、かつ、ばらつきが許容範囲である最小のバブルライフタイム(Tw)を最小値(Twmin)とするのが良い。
(D)上記バブルライフタイム(Tw)が最大値(Twmax)であるときの表面張力(σ)に対する、上記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの上記表面張力(σ)の比率(σ/σ)を、動的表面張力(Σ)とする。バブルライフタイム(Tw)の最大値(Twmax)は、近傍3点の標準偏差が、最大値(Twmax)−最小値(Twmin)の1/10以下になるバブルライフタイム(Tw)の値とする(以下も同様とする)。
(E)上記バブルライフタイム(Tw)の最小値(Twmin)近傍での表面張力(σ)を直線近似し、得られた直線の勾配(S)を、動的表面張力(Σ)とする。
(F)上記表面張力(σ)に対する上記勾配Sの比率(S/σ)を、動的表面張力(Σ)とする。
第1の算出方法である上記(C)では、図2に示すように、上記バブルライフタイム(Tw)の最小値(Twmin)を規定し、上記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)を求め、表面張力(σ)が動的表面張力(Σ)に等しいと定義する。
第2の算出方法である上記(D)では、図2に示すように、上記バブルライフタイム(Tw)の最大値(Twmax)と最小値(Twmin)とを規定し、上記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)と、上記バブルライフタイム(Tw)が最大値(Twmax)であるときの表面張力(σ))とを求め、比率(σ/σ)が動的表面張力(Σ)に等しいと定義する。
第3の算出方法である上記(E)では、図3に示すように、上記バブルライフタイム(Tw)が最小となる付近でのプロットを直線近似し、得られた直線の勾配(S)を求め(S=Δσ/Δlog(Tw))、勾配(S)が動的表面張力(Σ)に等しいと定義する。
第4の算出方法である上記(F)では、上記(D)で得られた表面張力(σ)と上記(E)で得られた直線の勾配(S)とを用いて、比率(S/σ)が動的表面張力(Σ)に等しいと定義する。
本実施形態の潤滑油組成物の検査方法では、上記ウィルヘルミ・プレート法、あるいは、上記最大泡圧法によって潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、その動的表面張力(Σ)の測定値が所定範囲内にある潤滑油組成物を合格、所定範囲外の潤滑油組成物を不合格とする。これにより、潤滑油組成物を選別する。
また、動的表面張力(Σ)の上記所定範囲は、後述する実施例で示されるような潤滑油組成物の摩耗係数と、動的表面張力(Σ)との相関から、摩耗係数が所望の範囲となるように設定される。
尚、後述する実施例では、動的表面張力(Σ)と摩耗係数との相関係数を例えば最小二乗法により求め、相関係数の絶対値が0.8以上であるときに相関関係が存すると判断しているが、相関関係の有無を判断するための相関係数の絶対値の範囲は、これに限られない。
本実施形態の潤滑油組成物の検査方法では、上記のウィルヘルミ・プレート法、あるいは、上記最大泡圧法によって潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、それらの測定値が設定した範囲内にある潤滑油組成物を選別することが好ましい。このように、動的表面張力(Σ)を測定し、その動的表面張力(Σ)の測定値が、設定された所定範囲内にある潤滑油組成物を選別することにより、より選別の精度を向上することができる。その結果、潤滑油組成物の耐摩耗特性をより安定して予測することができる。
本実施形態の潤滑油組成物の検査方法によれば、フラーレンを含む潤滑油組成物であっても、潤滑油組成物のウィルヘルミ・プレート法、あるいは、最大泡圧法による動的表面張力(Σ)の測定という比較的測定が容易な方法を用いて、耐摩耗特性を安定して予測することができる。
[潤滑油組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、基油とフラーレンとを混合して得た潤滑油組成物を、本実施形態の潤滑油組成物の検査方法により選別する工程を含む。
本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、詳細には、(1)基油とフラーレンとを混合し、フラーレンの溶解成分を基油中に溶解し、必要に応じてろ過、加熱処理等を経て、基油とフラーレンの混合物である潤滑油組成物を得る工程(以下、「溶解工程」という。)と、(2)潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、その測定値が設定された範囲内にある潤滑剤組成物を合格、測定値が設定された範囲外の潤滑油組成物を不合格として、潤滑油組成物を選別する工程(以下、「検査工程」という。)と、を含む。本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、さらに必要に応じて、(3)「検査工程」で合格として選別され得るように、複数の異なるバッチで製造した潤滑油組成物を混合して、新たな潤滑油組成物を得る工程(以下、「再調整工程」という。)を含んでいてもよい。
以下、本実施形態の潤滑油組成物の製造方法を詳細に説明する。
(溶解工程)
原料のフラーレンを基油に投入して攪拌機等の分散手段を用いて、室温付近または必要に応じて加温しながら1時間〜48時間の分散処理を施す。
基油にフラーレンを分散させるための分散手段としては、例えば、撹拌機、超音波分散装置、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル等が挙げられる。
このようにして基油中にフラーレンが溶解または分散した液(「フラーレン溶液」ということがある。)を得る。
なお、フラーレンの投入量は、フラーレン溶液中のフラーレン濃度が所望する濃度となる量であればよい。また、溶解工程中に、後述する不溶成分を除去する工程を設ける場合には、この工程によって除去されるフラーレン量も考慮して、フラーレンを多めに投入すると良い。溶媒によっても異なるが、一般に、フラーレンが不溶成分として析出しにくいフラーレン溶液中のフラーレン濃度としては、1質量ppm〜1質量%の範囲が好ましい。
また、所望するより高濃度のフラーレン溶液を得て、基油で希釈することにより、所望する濃度のフラーレン溶液を得てもよい。
上記のようにして得られたフラーレン溶液をそのまま潤滑油組成物として用いてもよい。
さらに、不溶成分を除去する工程を、溶解工程中に設け、不溶成分を除去したフラーレン溶液を潤滑油組成物とすることが好ましい。不溶成分を除去する工程は、溶解工程において、基油にフラーレンを分散させる分散処理後に設けることが好ましい。不溶成分を除去する工程としては、例えば、(1)メンブランフィルターを用いた除去工程、(2)遠心分離器を用いた除去工程、(3)メンブランフィルターと遠心分離器を組み合わせて用いる除去工程等が挙げられる。これらの除去工程の中でも、濾過時間の点から、少量の潤滑油組成物を得る場合は(1)メンブランフィルターを用いた除去工程が好ましく、大量の潤滑油組成物を得る場合は(2)遠心分離器を用いた除去工程が好ましい。
なお、溶解工程において、特にフラーレン溶液を加温する場合、非酸化雰囲気で行うことが好ましい。例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスでフラーレン溶液を収容する容器内を置換するか、あるいは、さらに容器内のフラーレン溶液を不活性ガスでバブリングすることにより、フラーレン溶液を不活性ガスと平衡状態にすることが好ましい。
(検査工程)
検査工程は、溶解工程で得られた潤滑油組成物について動的表面張力(Σ)を測定し、その動的表面張力(Σ)の測定値が所定範囲内にある潤滑油組成物を合格、所定範囲外の潤滑油組成物を不合格として選別する工程である。この動的表面張力(Σ)の所定範囲は、上述したように潤滑油組成物の摩耗係数と、動的表面張力(Σ)との相関から、摩耗係数が所望の範囲になる動的表面張力(Σ)を求めることにより設定することができる。複数の異なるバッチで製造した潤滑油組成物毎に、動的表面張力(Σ)の測定を行う。これにより、耐摩耗特性を考慮して動的表面張力(Σ)の所定範囲を決定し、潤滑油組成物を合格品と不合格品等に分類することができる。
(再調整工程)
再調整工程では、不合格になった潤滑油組成物を合格品の潤滑油組成物へ適量混合することにより、新たに調整された潤滑油組成物を再度上記検査工程にて動的表面張力(Σ)の測定をした結果、測定値が所定範囲に入るようにし、合格品の潤滑油組成物を得る工程である。合格品に混合する不合格品の潤滑油組成物の量は、混合後の潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定して判断すると良い。
潤滑油組成物を分類することにより、次のような効果が得られる。(1)動的表面張力(Σ)が不合格となる潤滑油組成物を排除することができる。(2)動的表面張力(Σ)が不合格の範囲に含まれる潤滑油組成物を合格品の潤滑油組成物に混合することにより、新たに合格となり得る潤滑油組成物を得ることができる。
このように、本実施形態の潤滑油組成物の製造方法によれば、フラーレンを含む潤滑油組成物であっても、ウィルヘルミ・プレート法、あるいは、最大泡圧法による潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)の測定という比較的測定が容易な方法を用いることにより、耐摩耗性が予測でき、潤滑油組成物が合格品と不合格品に精度高く選別されることが可能になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜9]
(潤滑油組成物の作製)
鉱油A(製品名:ダイアナフレシアP−46、出光興産社製)1Lと、フラーレン(フロンティアカーボン社製、nanom purple SUT、C60)を混合し、室温にて、スターラーを用いて6時間で撹拌した。ここで鉱油に対してフラーレンを0、0.005g、0.05g加えて、フラーレン濃度が0ppm、50ppm、500ppmの3種類の溶液Aを調製した。
これらの溶液は、攪拌終了後、0.1μmのメンブランフィルターを通して濾過することで、潤滑油組成物Aを得た。
さらに、潤滑油組成物Aを100ml取り出し、これをステンレス製の耐圧容器250mlに移し、次に内部を窒素ガスで置換した後に密栓し、これを熱処理しないか、または、150℃のオイルバスに2時間あるいは15時間浸漬させて熱処理を行った。得られた潤滑油組成物a−1〜a−9を表1に示す。
Figure 0006728511
(動粘度の測定)
約50mLの潤滑油組成物a−1〜a−9をガラス製ビーカーに取り出し、これを40℃の水浴に30分間浸漬した。
次に、日本工業規格 JIS Z8803:2011に規定されている液体の粘度測定方法細管粘度計による粘度測定方法に準ずる方法により、潤滑油組成物の動粘度を測定した。
(ウィルヘルミ・プレート法による動的表面張力(Σ)の測定)
得られた潤滑油組成物について、高機能表面張力計(協和界面科学社製、製品名「DyneMaster DY-500」)を用いて、動的表面張力(Σ)(mN/m)を評価した。
まず、表面を鏡面研磨した高炭素クロム軸受鋼鋼材であるSUJ2基板(15mm×15mm、厚さ2mm)を測定子に固定した。次に、50mlのビーカー内に潤滑油組成物を入れ、これに基板を浸漬させることで、浸漬距離(h)と力(F)の測定結果から(|LA|)と(|LB|)とを算出した。この時、基板は1mm/秒の速度で上下に移動させた。また、この測定は潤滑油組成物の液温度が25±0.1℃の環境下で行った。
潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)は、上記の算出方法(B)(=|LA|−|LB|)で算出した。
(摩耗係数の測定)
得られた潤滑油組成物について、摩擦摩耗試験機(Anton Paar社製、製品名「ボールオンディスクトライボメーター」)を用いて、耐摩耗特性を評価した。
摩擦摩耗試験機を構成する基板およびボールの材質を、高炭素クロム軸受鋼鋼材であるSUJ2とした。なお、ボールは直径が6mm、基板は15mm角を用いた。
まず、基板の一主面に潤滑油組成物を塗布した。
次に、潤滑油組成物を介して、基板の一主面上にて、ボールが同心円状の軌道を描くように、ボールを摺動させた。基板の一主面上におけるボールの速度を10mm/秒、ボールによる基板の一主面に対する荷重を25Nとした。基板の一主面上におけるボールの摺動距離が積算15mに到達した時点で、ボールを装置より取り出し、ボールの基板との接触面を、光学顕微鏡で観察し、表面のすり減りを、すり減り面の円の最大直径をD(μm)とした。ここで最大直径Dを摩耗係数と定義した。つまり、最大直径Dの数字が小さいほど、摩耗が抑制されており、潤滑油組成物の特性として好ましい状態である。通常、円形にすり減るが、楕円を帯びる場合がある。その場合は、最大径になる部分を最大直径Dとした。なお、この測定は25±2℃の環境下で行った。
実施例1〜9の各々でサンプルを3点作製し、上記潤滑油組成物の合計27サンプルについて、動的表面張力(Σ)および摩耗係数を測定し、動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を評価した。動的表面張力(Σ)と摩耗係数の測定結果を表2に、動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を図4に示す。
Figure 0006728511
図4に示す結果から、動的表面張力(Σ)と摩耗係数との相関係数が−0.917となり、動的表面張力Σと摩耗係数に相関関係が認められた。相関係数は、最小二乗法により求め、相関係数の絶対値が0.8以上であるときに、相関関係が存すると判断した。よって、実施例1〜9では、動的表面張力(Σ)が特定の範囲内にある潤滑油組成物を選別することにより、摩耗係数が所望する範囲内にある潤滑油組成物を選別することができることが分かった。
例えば、図4において、潤滑油組成物の摩耗係数が値B1(=175)以下を合格品とする場合には、動的表面張力(Σ)が値A1(=2.1)以上の潤滑油組成物を合格品として選別すると良い。この場合、動的表面張力(Σ)が値A1以上を所定の範囲として設定して値A1以上の潤滑油組成物を合格品として選別すれば、摩耗係数が値B1(=175)を越える不合格品が含まれる可能性が低くなることがわかる。また、図4において、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)が値A1未満の場合には、摩耗係数が値B1を超える潤滑油組成物を不合格品として選別することができる。また、図4において、領域C1にある不合格品の潤滑油組成物であっても少量であれば、これに領域D1にある合格品の潤滑油組成物を添加することで、動的表面張力(Σ)が値A1以上とすることができ、摩耗係数が値B1以下の合格品の潤滑油組成物に調整することができる。
[実施例10〜18]
潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を、最大泡圧法で算出したこと以外は、実施例1〜9と同様にして動的表面張力(Σ)および摩耗係数を測定し、動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を評価した。
(最大泡圧法による動的表面張力(Σ)の測定)
得られた潤滑油組成物a−1〜a−9について、表面張力計(SITA Messtechnik GmbH製、製品名「SITA science line t100」)を用いて、動的表面張力(Σ)を評価した。
まず、50mlのビーカー内に潤滑油組成物a−1〜a−9を入れ、潤滑油組成物の液中に表面張力計の毛管部分(中空管)を沈めた。この状態で30分間放置した後、毛管に空気を流すことで測定を開始した。最初に、当該装置のバブルライフタイム(Tw)(ミリ秒)の最小値(Twmin)である15ミリ秒(0.015秒)で気泡を発生させ、表面張力(σ)を計測した。続いて、中空管に導入する空気の流量を減らすことにより気泡の発生周期を徐々に大きくしながら、バブルライフタイム(Tw)が最大15秒に至るまで、表面張力(σ)を計測した。なお、この測定は25±2℃の環境下で行った。
横軸をLog(Tw)、縦軸を表面張力σとしてプロットすると、下に凸な右下がりの曲線が得られた。このグラフを用い、上記算出方法(D)を用いて、動的表面張力(Σ)(mN/m)を算出した。
動的表面張力(Σ)と摩耗係数の測定結果を表3に、動的表面張力(Σ)と摩耗係数の関係を図5に示す。
Figure 0006728511
図5に示す結果から、動的表面張力(Σ)と摩耗係数との相関係数が−0.953となり、その絶対値が0.8以上であることから、動的表面張力(Σ)と摩耗係数に相関関係が認められた。よって、実施例10〜18でも、動的表面張力(Σ)が特定の範囲内にある潤滑油組成物を選別することにより、摩耗係数が所望する範囲内にある潤滑油組成物を選別することができることが分かった。
例えば、図5において、潤滑油組成物の摩耗係数が値B2(=180)以下の潤滑油組成物を合格品とする場合には、動的表面張力(Σ)が値A2(=13)以上の潤滑油組成物を合格品として選別すると良い。この場合、動的表面張力(Σ)が値A2以上を所定の範囲として設定して値A2以上の潤滑油組成物を合格品として選別すれば、摩耗係数が値B2を越える不合格品が含まれる可能性が低くなることがわかる。また、図5において、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)が値A2未満の場合には、摩耗係数が値B2を超える潤滑油組成物を不合格品として選別することができる。また、図5において、領域C2にある不合格品の潤滑油組成物であっても少量であれば、これに領域D2にある合格品の潤滑油組成物を添加することで、動的表面張力が値A2以上とすることができ、摩耗係数がB2以下の合格品の潤滑油組成物に調整することができる。
[比較例1〜9]
比較例1〜9について、実施例1〜9と同様にサンプルを3点作製し、上記潤滑油組成物の合計27サンプルについて、動粘度(mm/s)および摩耗係数を測定し、動粘度と摩耗係数の関係を評価した。動粘度と摩耗係数の測定結果を表4に、動粘度と摩耗係数の関係を図6に示す。
Figure 0006728511
図6に示す結果から、動粘度と摩耗係数との相関係数が−0.032となり、その絶対値が0.8未満であることから、動粘度と摩耗係数に相関関係が認められなかった。このため、潤滑油組成物の動粘度から、潤滑油組成物の摩耗係数を特定して、潤滑油組成物を選別することができないことが分かった。
本発明は、基油とフラーレンとを含む潤滑油組成物の製造工程において、潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定することにより、耐摩耗性が予測でき、潤滑油組成物を合格品と不合格品に精度高く選別できる。従って、本発明で選別した合格品の潤滑油組成物は、自動車、家電、工業機械等の摺動部において、金属部分が傷付いたり、摩耗したりすることを抑制するために有効である。

Claims (6)

  1. 基油とフラーレンとを含む潤滑油組成物の動的表面張力(Σ)を測定し、前記動的表面張力(Σ)の測定値と前記潤滑油組成物の摩耗係数の測定値との相関によって設定された所定範囲に基づいて潤滑油組成物を選別する、潤滑油組成物の検査方法。
  2. ウィルヘルミ・プレート法によって前記動的表面張力(Σ)を測定する、請求項1に記載の潤滑油組成物の検査方法。
  3. 前記動的表面張力(Σ)を、以下の算出方法(A),(B)のいずれかで算出する、請求項2に記載の潤滑油組成物の検査方法。
    (A)前記潤滑油組成物の液中から基板を引き上げる際に必要な力の大きさ(|LA|)および前記潤滑油組成物の液中に基板を沈める際に必要な力の大きさ(|LB|)のいずれか一方を、動的表面張力(Σ)とする。
    (B)上記力の大きさの差(|LA|−|LB|)を、動的表面張力(Σ)とする。
  4. 最大泡圧法によって前記動的表面張力(Σ)を測定する、請求項1に記載の潤滑油組成物の検査方法。
  5. 前記動的表面張力(Σ)を、以下の算出方法(C),(D),(E),(F)のいずれかで算出する、請求項4に記載の潤滑油組成物の検査方法。
    (C)前記潤滑油組成物の液中に配された中空管内に気体を導入し、
    前記中空管の下端部に気泡が発生してから気体導入の圧力が最大になるまでの時間を示すバブルライフタイム(Tw)と、表面張力(σ)(σ=ΔP×γ/2、ΔPは周期的な圧力変動における前記気体の圧力の最大値Pmaxと最小値Pminとの差、γは前記中空管の中空部分の断面積)とを測定し、
    前記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの表面張力(σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
    (D)前記バブルライフタイム(Tw)が最大値(Twmax)であるときの表面張力(σ)に対する、前記バブルライフタイム(Tw)が最小値(Twmin)であるときの前記表面張力(σ)の比率(σ/σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
    (E)前記バブルライフタイム(Tw)の最小値(Twmin)近傍での表面張力(σ)を直線近似し、得られた直線の勾配(S)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
    (F)前記表面張力(σ)に対する前記勾配Sの比率(S/σ)を、前記動的表面張力(Σ)とする。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物の検査方法により選別する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法。
JP2020513938A 2018-11-26 2019-11-21 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法 Active JP6728511B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018220721 2018-11-26
JP2018220721 2018-11-26
PCT/JP2019/045609 WO2020110900A1 (ja) 2018-11-26 2019-11-21 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020113324A Division JP2020158783A (ja) 2018-11-26 2020-06-30 潤滑油組成物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6728511B1 true JP6728511B1 (ja) 2020-07-22
JPWO2020110900A1 JPWO2020110900A1 (ja) 2021-02-15

Family

ID=70852119

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020513938A Active JP6728511B1 (ja) 2018-11-26 2019-11-21 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法
JP2020113324A Pending JP2020158783A (ja) 2018-11-26 2020-06-30 潤滑油組成物の製造方法

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020113324A Pending JP2020158783A (ja) 2018-11-26 2020-06-30 潤滑油組成物の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (2) JP6728511B1 (ja)
WO (1) WO2020110900A1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5572859A (en) * 1978-11-27 1980-06-02 Toshio Yuki Turbine-oil deterioration control gauge
JP2001152175A (ja) * 1999-11-30 2001-06-05 Ntn Corp 低発塵潤滑剤及び低発塵グリース
JP2008266501A (ja) * 2007-04-24 2008-11-06 Sumikou Junkatsuzai Kk エンジンオイル用添加剤組成物
CN103217363A (zh) * 2013-03-14 2013-07-24 北京联飞翔科技股份有限公司 一种润滑油抗氧化性的检测方法
JP2018168356A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 昭和電工株式会社 潤滑油組成物及びその製造方法
WO2019111889A1 (ja) * 2017-12-06 2019-06-13 昭和電工株式会社 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2980448B2 (ja) * 1991-06-28 1999-11-22 出光興産株式会社 圧縮式冷凍サイクルの潤滑方法
JP2002323037A (ja) * 2001-04-26 2002-11-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd 流体軸受装置
JP6802686B2 (ja) * 2016-10-19 2020-12-16 石原ケミカル株式会社 潤滑防錆剤

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5572859A (en) * 1978-11-27 1980-06-02 Toshio Yuki Turbine-oil deterioration control gauge
JP2001152175A (ja) * 1999-11-30 2001-06-05 Ntn Corp 低発塵潤滑剤及び低発塵グリース
JP2008266501A (ja) * 2007-04-24 2008-11-06 Sumikou Junkatsuzai Kk エンジンオイル用添加剤組成物
CN103217363A (zh) * 2013-03-14 2013-07-24 北京联飞翔科技股份有限公司 一种润滑油抗氧化性的检测方法
JP2018168356A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 昭和電工株式会社 潤滑油組成物及びその製造方法
WO2019111889A1 (ja) * 2017-12-06 2019-06-13 昭和電工株式会社 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020110900A1 (ja) 2020-06-04
JPWO2020110900A1 (ja) 2021-02-15
JP2020158783A (ja) 2020-10-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11220652B2 (en) Method for inspecting lubricating oil composition and method for producing lubricating oil composition
JP6623503B2 (ja) 潤滑油組成物及びその製造方法
JP2018168356A (ja) 潤滑油組成物及びその製造方法
JP2010535276A (ja) 改善された脱泡性を有する異性化基油の金属加工流体組成物及びその調製
KR20110033896A (ko) 내연 기관용 윤활유 조성물
JP2010535275A (ja) 改善されたミスト防止性を有する異性化基油の金属加工流体組成物及びその調製
JP7001899B2 (ja) フラーレン含有潤滑油組成物及びその製造方法
US20220074840A1 (en) Method of inspecting lubricating oil composition and method of producing lubricating oil composition
JP2021512185A (ja) 潤滑剤組成物
JP5455480B2 (ja) 潤滑油組成物
JP6088305B2 (ja) 消泡剤組成物、潤滑油組成物及びその製造方法
JP6728511B1 (ja) 潤滑油組成物の検査方法および潤滑油組成物の製造方法
WO2013055419A1 (en) Gear lubricant
WO2023210218A1 (ja) 潤滑油組成物
CN117836394A (zh) 包含牵引系数添加剂的润滑剂组合物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200306

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20200306

TRDD Decision of grant or rejection written
A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20200527

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200602

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6728511

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313114

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250