様々な図面内の類似の参照記号は、類似の要素を示す。
本開示は、人工僧帽弁システムなどの、人工心臓弁システム、ならびに経カテーテルシステムおよび人工心臓弁システムをインプラントするための方法の実施形態を説明している。いくつかの実施形態において、人工僧帽弁システムは、僧帽弁の自然解剖学的構造と連携して(および適宜、アンカーコンポーネントが配備された後であっても自然僧帽弁弁尖の腱索の継続する自然機能を可能にする仕方で)接触し、固定するように配備され得る。本明細書で説明されているように、人工僧帽弁システムは、流体封止を形成するように自然僧帽弁構造と接触し、それによって、インプラント後にMRおよび弁傍漏れを最小にする仕方で配備され得る。以下でより詳しく説明されているように、図1〜図17および図39〜図43は、経カテーテル僧帽弁送達システムおよび自然僧帽弁の解剖学的構造と連携して接触し、固定するように人工僧帽弁システムを配備することができる方法を説明している。また、図18〜図32において、流体封止を形成してそれによってMRおよび弁傍漏れの可能性を最小にするように自然僧帽弁構造と接触する人工僧帽弁の特徴も説明されている。図33〜図36において、左室流出路(LVOT)を通る血流を管理するための人工僧帽弁の特徴および技術が説明されている。図37〜図38において、人工弁と腱索との間の干渉のリスクを低減するための人工僧帽弁の特徴および技術が説明されている。
図1を参照すると、患者の心臓10にアクセスするために、例示的な経カテーテル僧帽弁送達システム100がナビゲートされて、患者の血管系内に通され得る。経カテーテル送達システム100は、経皮的な血管切開、または低侵襲技術(開胸外科手術なし)を使用して鼓動している心臓10内の人工僧帽弁のインプラントを円滑にする。いくつかの実装において、経カテーテル送達システム100は、X線透視法、心エコー図法、核磁気共鳴映像法、コンピュータ断層撮影法(CT)、および同様のものなどの、1つまたは複数のイメージングモダリティと併せて使用される。
心臓10(後方からの透視で見た断面で図示されている)は、右心房12、右心室14、左心房16、および左心室18を含む。三尖弁13は、右心房12を右心室14から分離する。僧帽弁17は、左心房16を左心室18から分離する。心房中隔15は、右心房12を左心房16から分離する。下大静脈11は、右心房12と合流する。心臓10のこの図はいくぶん図案化されていることを理解されたい。同じことが、図2〜図4にも言える。図1〜図4は、いくつかの実装において使用されている僧帽弁17へのアプローチの一般的な図となっている。しかし、図5およびそれ以降の交連断面図は、心臓10に関して人工僧帽弁の配向をより正確に示している。
図示されている実施形態において、送達システム100は、ガイドワイヤ110と、一次偏向可能カテーテル120と、アンカー送達シース130とを備える。送達システム100の追加のコンポーネントについて以下でさらに説明される。アンカー送達シース130は、一次偏向可能カテーテル120の内腔内に摺動可能に(および回転可能に)配設される。ガイドワイヤ110は、アンカー送達シース130の内腔内に摺動可能に配設される。この図では、アンカー送達シース130は、一次偏向可能カテーテル120に関して部分的に伸長されており、これにより、裾広がり部分132は、以下でさらに説明されているように外向きに拡張することができる。
図示されている実装において、ガイドワイヤ110は、心臓10内で、送達システム100の他のコンポーネントの前に取り付けられる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、約0.035インチ(約0.89mm)の直径を有する。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ110は、約0.032インチから約0.038インチ(約0.8mmから約0.97mm)の範囲内の直径を有する。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ110は、0.032インチ(約0.80mm)未満または0.038インチ(約0.97mm)超の直径を有する。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ110は、限定はしないが、ニチノール、ステンレス鋼、高張力ステンレス鋼、および同様のもの、ならびにこれらの組合せなどの材料から作られる。ガイドワイヤ110は、様々な先端部設計(たとえば、J字型先端部、真っ直ぐな先端部など)、テーパー、コーティング、カバー、放射線不透過性(RO)マーカー、および他の特徴を備え得る。
いくつかの実装において、ガイドワイヤ110は、患者の大腿静脈内に経皮的に挿入される。ガイドワイヤ110は、下大静脈11内に、および右心房12内に導かれる。心房中隔15内に開口部を形成した後(たとえば、卵円窩の経中隔穿刺)、ガイドワイヤ110は、左心房16内に導かれる。最後に、ガイドワイヤ110は、僧帽弁17に通され、左心室18内に導かれる。いくつかの実装において、ガイドワイヤ110は、他の解剖学的経路に沿って心臓10内に取り付けられ得る。その後、ガイドワイヤ110は、送達システム100の他のコンポーネントが載るレールとして働く。
図示されている実装において、一次偏向可能カテーテル120は、ガイドワイヤ110上に押して載せることによって取り付けられる。いくつかの実装において、拡張器先端部は、一次偏向可能カテーテル120がガイドワイヤ110上で前進するときに一次偏向可能カテーテル120と併せて使用される。代替的に、バルーンカテーテルは、初期拡張手段として使用することも可能である。一次偏向可能カテーテル120の遠位端が左心房16に到達した後、拡張器先端部は、引っ込められ得る。いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120の遠位端部分は、操縦可能である。操縦を使用することで、一次偏向可能カテーテル120の遠位端部分は、患者の解剖学的構造をナビゲートするために望み通りに配向され得る。たとえば、一次偏向可能カテーテル120は、一次偏向可能カテーテル120を下大静脈11から心房中隔15にナビゲートするために右心房12内で角度を付けられるものとしてよい。
いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、約28Fr(9.3mm)の外径を有する。いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、約26Frから約34Fr(約8.7mmから約11.3mm)の範囲内の外径を有する。いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、約20Frから約28Fr(約6.7mmから約9.3mm)の範囲内の外径を有する。
一次偏向可能カテーテル120は、チューブ状ポリマーまたは金属材料を含み得る。たとえば、いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、限定はしないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、HYTREL(登録商標)、ナイロン、PICOFLEX(登録商標)、PEBAX(登録商標)、TECOFLEX(登録商標)、および同様のもの、ならびにこれらの組合せなどの、ポリマー材料から作られ得る。代替的実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、限定はしないが、ニチノール、ステンレス鋼、ステンレス鋼合金、チタン、チタン合金、および同様のもの、ならびにこれらの組合せなどの金属材料から作られ得る。いくつかの実施形態において、一次偏向可能カテーテル120は、そのようなポリマーおよび金属材料(たとえば、金属編組、コイル強化、補強部材、および同様のもの、ならびにこれらの組合せを備えるポリマー層)の組合せから作られ得る。
例示的な送達システム100は、アンカー送達シース130も備える。いくつかの実装において、一次偏向可能カテーテル120が左心房16内の遠位端により位置決めされた後、アンカー送達シース130は、一次偏向可能カテーテル120の内腔内に(ガイドワイヤ110上で)取り付けられ、一次偏向可能カテーテル120に通されて前進する。以下でさらに説明されているように、いくつかの実施形態において、アンカー送達シース130は、送達システム100の人工弁アンカーアセンブリおよび他のコンポーネントを事前装填される。
いくつかの実施形態において、アンカー送達シース130は、一次偏向可能カテーテル120に関して上で説明されている材料から作られ得る。いくつかの実施形態において、アンカー送達シース130は、約20Frから約28Fr(約6.7mmから約9.3mm)の範囲内の外径を有する。いくつかの実施形態において、アンカー送達シース130は、約14Frから約24Fr(約4.7mmから約8.0mm)の範囲内の外径を有する。
図示されている実施形態において、アンカー送達シース130は、裾広がり遠位端部分132を備える。いくつかの実施形態において、そのような裾広がり遠位端部分132は含まれない。裾広がり遠位端部分132は、一次偏向可能カテーテル120内に拘束されたときにより背の低い輪郭になるまでつぶれることができる。裾広がり遠位端部分132が、一次偏向可能カテーテル120から表出されたときに、裾広がり遠位端部分132は自己拡張して裾広がり形状になるものとしてよい。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分132の材料は、ひだまたは折り目を備えており、連続的な裾広がり端部であり得るか、または花びらのようないくつかのセクションに分離されるものとしてよく、拘束力(一次偏向可能カテーテル120内の封じ込めなどからの)が存在しない場合に裾広がり遠位端部分132を付勢して裾広がり構成を取らせる1つまたは複数の弾力性のある要素を備え得る。裾広がり遠位端部分132は、たとえば、アンカーアセンブリが裾広がり遠位端部分132から表出された後にアンカー送達シース130の内腔内にアンカーアセンブリを再び捕らえるうえで有利であり得る。
いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分132の最大外径は、約30Frから約34Fr(約10.0mmから約11.3mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分132の最大外径は、約32Frから約44Fr(約10.7mmから約14.7mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分132の最大外径は、約24Frから約30Fr(約8.0mmから約10.0mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分132の最大外径は、約24Fr(約8.0mm)未満または約44Fr(約14.7mm)超である。
図2を参照すると、例示的な送達システム100の追加のコンポーネントは、近位制御シース140、二次偏向可能カテーテル150、および遠位プッシャーカテーテル160を備え得る。近位制御シース140は、アンカー送達シース130の内腔内に摺動可能に配設される。二次偏向可能カテーテル150は、近位制御シース140の内腔内に摺動可能に配設される。遠位プッシャーカテーテル160は、二次偏向可能カテーテル150の内腔内に摺動可能に配設される。送達システム100のこれらのコンポーネントは、アンカーアセンブリ200の位置および配向を制御するために操作者である臨床医によって操作され得る。アンカーアセンブリ200は、ガイドワイヤ110上に摺動可能に配設される。
送達システム100のいくつかの実装において、近位制御シース140、二次偏向可能カテーテル150、遠位プッシャーカテーテル160、およびアンカーアセンブリ200のうちの1つまたは複数は、図1に示されているようにアンカー送達シース130を一次偏向可能カテーテル120内に前進させて入れる前にアンカー送達シース130内にすでに装填されている。すなわち、いくつかの場合において、近位制御シース140、二次偏向可能カテーテル150、遠位プッシャーカテーテル160、および/またはアンカーアセンブリ200は、アンカー送達シース130が一次偏向可能カテーテル120内に遠位から前進して入り図1に示されている配置構成を取るときにアンカー送達シース130内にすでに取り付けられている。他の実装では、近位制御シース140、二次偏向可能カテーテル150、遠位プッシャーカテーテル160、およびアンカーアセンブリ200のうちの1つまたは複数は、アンカー送達シース130が一次偏向可能カテーテル120内に前進して入り図1に示されている配置構成を取った後にアンカー送達シース130内に遠位から前進して入る。
遠位プッシャーカテーテル160は、アンカーアセンブリ200のハブ210と解放可能に結合される。アンカーアセンブリ200の近位端も、1つまたは複数の制御ワイヤ142によって近位制御シース140に解放可能に結合される。図示されている実施形態は1本の制御ワイヤ142を備えているが、いくつかの実施形態では、2本、3本、4本、5本、または5本を超える制御ワイヤが備えられる。
図39および図40を参照すると、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200との例示的な係合パターンで示されている。図示されている実施形態において、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200の複数の近位部分に縫うように通される。図示されている実施形態において、制御ワイヤ142は、投げ縄配置で構成される。したがって、制御ワイヤ142の張りは、少なくともアンカーアセンブリ200の近位端を収縮させる。逆に、制御ワイヤ142から張力を取り除くことで、アンカーアセンブリ200を拡張させることができる。いくつかの実施形態において、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200上の様々な位置に配設されている小穴に縫うように通される。いくつかの実施形態において、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200の被覆材またはフレーム上の様々な位置に配設されている取り付け特徴部に縫うように通される。制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200の近位端の所望の程度の拡張(たとえば、心房保持特徴部240a、240b、240c、および240d、ならびに/または起伏のある弁輪上リング250)のところに達するように張力をかけられ得るか、または弛緩され得る。複数の制御ワイヤ142は、また、アンカーアセンブリ300の非対称的な制御された拡張を達成するために使用することが可能である。
図2を再び参照すると、アンカーアセンブリ200の位置は、遠位プッシャーカテーテル160および/または近位制御シース140の位置を操作することによって制御され得る。たとえば、図示された実施形態において、アンカーアセンブリ200は、遠位プッシャーカテーテル160および/または近位制御シース140をアンカー送達シース130に相対的に移動することによってアンカー送達シース130から(図2に示されているように)表出され得る。いくつかの実装において、アンカーアセンブリ200の表出は、一般的に遠位プッシャーカテーテル160および/または近位制御シース140の位置を維持しながらアンカー送達シース130を近位に引き戻すことによって引き起こされる。いくつかの実装において、アンカーアセンブリ200の表出は、遠位プッシャーカテーテル160および/または近位制御シース140の位置を遠位に伸長しながらアンカー送達シース130を近位に引き戻すことの組合せによって引き起こされる。
アンカーアセンブリ200がアンカー送達シース130の閉鎖部分から姿を現したときに、アンカーアセンブリ200は、背の低い送達構成から部分的に拡張された構成(図2に示されているような)に拡張する。アンカーアセンブリ200の拡張の程度は、遠位プッシャーカテーテル160に関する近位制御シース140の相対的位置決めによって少なくとも部分的に制御され得る。たとえば、近位制御シース140は、遠位プッシャーカテーテル160に相対的に近位に移動されると、アンカーアセンブリ200は、軸方向には引き伸ばされ、径方向には収縮する。逆に、近位制御シース140は、遠位プッシャーカテーテル160に相対的に遠位に移動されると、アンカーアセンブリ200は、軸方向には短縮され、径方向には引き伸ばされる。いくつかの実装において、アンカーアセンブリ200の径方向サイズのこの制御は、以下でさらに説明されているように、自然僧帽弁17内にアンカーアセンブリ200を配備するプロセスにおいて臨床医によって使用される。以下でさらに説明されているように、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ300のある程度の径方向拡張を制御するためにも使用され得る(遠位プッシャーカテーテル160に関して近位制御シース140の相対的距離を変更することなく)。
本明細書において実現されている人工僧帽弁は、アンカーアセンブリ200と分離可能な弁アセンブリ(たとえば、図14〜図20参照)からなると理解されるべきである。アンカーアセンブリ200は、弁アセンブリの配備の前に自然僧帽弁17内で接触する配置構成に配備される。別の言い方をすると、アンカーアセンブリ200を自然僧帽弁17内にインプラントした後に、弁アセンブリは、アンカーアセンブリ200内、および自然僧帽弁17内に配備され得る(以下でさらに説明されているように)。したがって、本明細書において実現されている人工僧帽弁は、段階的インプラント方法を使用して配備されると言うことができる。すなわち、アンカーアセンブリ200は、1つの段階で配備され、弁アセンブリは、その後段階で配備される。いくつかの実装において、弁アセンブリの配備は、アンカーアセンブリ200の配備の直後(たとえば、同じ医療的手技において)行われる。いくつかの実装において、弁アセンブリの配備は、アンカーアセンブリ200の配備から数時間、数日、数週間、さらには数ヶ月後であっても(たとえば、その後の医療的手技において)行われる。
本明細書で実現されている人工僧帽弁の段階的インプラント方法は、アンカーアセンブリ200それ自体が自然僧帽弁17内にインプラントされたときに、自然僧帽弁17は、本質的に、心臓血管生理に著しい影響を及ぼすことなくアンカーアセンブリ200のインプラントの前のように機能し続けることにより容易にされる。それは、以下でさらに説明されているように、アンカーアセンブリ200が、自然僧帽弁17の弁尖または腱索に実質的に干渉することなく自然僧帽弁17の構造的態様内で接触し、固定するからである。
なおも図2を参照すると、図示されている配置構成において、二次偏向可能カテーテル150の遠位端部分は、アンカーアセンブリ200内に部分的に内部配置される。二次偏向可能カテーテル150は、二次偏向可能カテーテル150の遠位端部分を可逆的に曲げるように操作者である臨床医によって操作され得る。二次偏向可能カテーテル150が臨床医によって曲げられると、送達システム100の他のコンポーネントは、二次偏向可能カテーテル150とともに曲がるものとしてよい。たとえば、遠位プッシャー160および近位制御シース140のうちの1つまたは複数は、偏向可能カテーテル150の曲がりに応じて曲がり得る。アンカーアセンブリ200は、遠位プッシャー160および近位制御シース140に結合されるので、アンカーアセンブリ200は、次いで、二次偏向可能カテーテル150を曲げることによって回転させることができる。
図3を参照すると、上で説明されているように、二次偏向可能カテーテル150は、アンカーアセンブリ200が左心房16内にある間に関節動作して(操縦される、偏向される、曲げられる、湾曲するなどとも称される)、アンカーアセンブリ200を横方向に枢動(パン、回転など)させることができる。アンカーアセンブリ200のそのような回転は、たとえば、アンカーアセンブリ200を、自然僧帽弁17内にアンカーアセンブリ200をインプラントする準備として自然僧帽弁17と所望の関係を有するように配向するうえで有利である。いくつかの実装において、長手方向軸が一般的に自然僧帽弁17に対して一般的に垂直になるようにアンカーアセンブリ200を配向することが望ましい。心房16内で部分的にまたは完全に拡張したアンカーアセンブリ200を横方向に枢動させることは、まだ送達シース内に拘束されている間にアンカーアセンブリ200を横方向に枢動させなければならないことに対して有利であり得るが、それは後者のアセンブリが比較的大きく、剛性の高いカテーテルアセンブリだからである。
アンカーアセンブリ200を自然僧帽弁17と係合する準備のため、操作者である臨床医は、アンカーフレーム200が自然僧帽弁17を損傷することなく自然僧帽弁17を通過できるようにアンカーフレーム200の径方向サイズを操作し得る。たとえば、臨床医は、遠位プッシャーカテーテル160に相対的に近位に近位制御シース140を移動して、アンカーアセンブリ200を径方向に収縮させることができる。アンカーアセンブリ200が径方向に収縮されている状態で、アンカーフレーム200は、自然僧帽弁17を損傷することなく自然僧帽弁17内を安全に通過できる。
図4を参照すると、二次偏向可能カテーテル150が図3に関して説明されているように曲げられた構成に保持されている間に、遠位プッシャーカテーテル160および近位制御シース140は、同時に前進させることができる。遠位プッシャーカテーテル160がアンカーアセンブリ200のハブ210に解放可能に結合されているので、ならびに近位制御シース140が1つまたは複数のワイヤ142aおよび142bを介してアンカーアセンブリ200の近位端に解放可能に結合されているので、遠位プッシャーカテーテル160および近位制御シース140を同時に前進させるとその結果、アンカーアセンブリ200が前進する。アンカーアセンブリ200は、アンカーアセンブリ200の近位端が左心房16内にある間にアンカーアセンブリ200の遠位端が左心室18内にあるように前進させられる。したがって、アンカーアセンブリ200のいくつかの部分は、自然僧帽弁17の各側に付いている。
図示されている実施形態において、アンカーアセンブリ200は、4つのアンカー足部、すなわち、左前足部220a、左後足部220b、右後足部220c、および右前足部220dを備える。いくつかの実施形態において、より少ない、またはより多いアンカー足部が含まれ得る(たとえば、2つ、3つ、5つ、6つ、または6つよりも多い)。いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、自然僧帽弁17の組織を貫通することなく自然僧帽弁17の弁輪下溝19と接触するように構成されているアンカーアセンブリ200の一部分である。したがって、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、一般的に足に相当する非外傷性表面を有する。しかしながら、いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dのうちの1つまたは複数は、組織を貫通するように構成されており、バーブ、コイル、フック、および同様のものなどのアンカー特徴部を有し得る。
図4の配置構成において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、弁輪下溝19の下に位置決めされる。この配置構成において、アンカーアセンブリ200の径方向サイズは、アンカー足部220a、220b、220c、および220dを弁輪下溝19とアライメントするように大きくすることができる。たとえば、臨床医は、遠位プッシャーカテーテル160に相対的に遠位に近位制御シース140を移動して、アンカーアセンブリ200を径方向に拡張し、アンカー足部220a、220b、220c、および220dを弁輪下溝19とアライメントすることができる。そのようなアライメントは、アンカー足部220a、220b、220c、および220dを弁輪下溝19内に据え付ける準備として実行され得る。
図5を参照すると、心臓10の交連断面図は、図4に示されているように自然僧帽弁17に関して同じ配置構成によるアンカーアセンブリ200の別の斜視図を形成している。心臓10のこの交連断面図は、僧帽弁17の2つの交連と交差する線に平行である左心房16および左心室18を通る平面に沿って僧帽弁17を通るように切り取られた断面図である(以下の図8に関してさらに説明されているように)。次の図5〜図7および図13〜図17において、心臓10の交連断面図は、本明細書で実現される送達システム100および人工僧帽弁を配備するための方法を説明するために使用される。図5〜図7および図13〜図17の図は、アンカーアセンブリ200の良好な視覚化が得られるようにわずかに傾けられる。
アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、弁輪下溝19の下に位置決めされる。この位置において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、自然僧帽弁17の弁尖の収縮期および拡張期移動の下で位置決めされる。この配向において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、弁輪下溝19内にアンカー足部220a、220b、220c、および220dを据え付ける準備として弁輪下溝19とアライメントされ得る。
図6を参照すると、遠位プッシャー160および近位制御シース140は、二次偏向可能カテーテル150および一次偏向可能カテーテル120に関して同時に引き込まれ得る。その結果、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、弁輪下溝19内に据え付けられることになる。この位置において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、自然僧帽弁17の弁尖の収縮期および拡張期移動の下で位置決めされ、アンカーアセンブリ200の他の構造は、弁尖の移動を妨げない。したがって、説明されているようにアンカーアセンブリ200が僧帽弁17の構造に結合された状態で、僧帽弁17は、アンカーアセンブリ200の留置の前に行っていたように機能し続けることができる。それに加えて、アンカーアセンブリ200が自然僧帽弁17と接触する仕方が、結果として、自然僧帽弁17の変形を引き起こすことがない。したがって、自然僧帽弁17は、アンカーアセンブリ200の留置の前に行っていたように機能し続けることができる。
図7を参照すると、アンカーアセンブリ200が自然僧帽弁17内に係合されている状態で、送達システム100のコンポーネントは、アンカーアセンブリ200から引き抜かれ得る。たとえば、制御ワイヤ142は、アンカーアセンブリ200の近位端から脱着できる。その後、近位制御シース140は引き抜かれ得る。二次偏向可能カテーテル150も引き抜かれ得る。実際、そのように望まれる場合には、近位制御シース140、二次偏向可能カテーテル150、およびアンカー送達シース130は、一次偏向可能カテーテル120から完全に引き抜くことができる。対照的に、いくつかの実装において、遠位プッシャーカテーテル160は、アンカーアセンブリ200のハブ210に取り付けられたままであり有利である。以下でさらに説明されるように、いくつかの実装において、遠位プッシャーカテーテル160は、アンカーアセンブリ200の内部に配備される弁アセンブリが載るレールとして使用され得る。しかしながら、いくつかの実装において、アンカーアセンブリ200は、送達システム100から完全に脱着され、送達システム100は、患者から取り外される。アンカーアセンブリ200の配備の後、数時間、数日、数週間、または数ヶ月の期間が過ぎてから、人工僧帽弁の取り付けを完了するために弁アセンブリがアンカーアセンブリ200内に取り付けられ得る。
図8および図9を参照すると、自然僧帽弁17の解剖学的構造は、アンカーアセンブリ200をそれと係合させるために利用され得るいくつかの一貫した、予測可能な構造的特徴部を患者身体上を横切る形で備える。たとえば、自然僧帽弁17は、前述の弁輪下溝19を備える。それに加えて、自然僧帽弁17は、D字形弁輪28、前交連30a、後交連30b、左線維三角134a、および右線維三角134bを備える。さらに、自然僧帽弁17は、前尖20および三部構成の後尖22を備える。後尖22は、外側弁帆24a、中央弁帆24b、および内側弁帆24cを備える。後尖22および前尖20の自由縁は、接合線32の途中で出会う。
D字形弁輪28は、延在し、関節動作する前尖20および後尖22の出所となる構造を画成する。左線維三角134aおよび右線維三角134bは、前尖20の左および右端部の近くに、ならびに一般的に、後尖22の外側および内側弁帆24aおよび24cに隣接して配置される。弁輪下溝19は、後尖22に沿って左線維三角134aと右線維三角134bとの間で弁輪28に沿って走っている。
強い、安定した固定場所を得るために、高コラーゲン弁輪三角134aおよび134bのところ、またはその近くの領域に一般的に依存し得る。三角134aおよび134bのところ、または近くの領域の筋肉組織も、アンカーアセンブリ200の安定性および遊走抵抗を高める良好な組織成長侵入基板を形成する。したがって、三角134aおよび134bのところ、またはその近くの領域は、左前アンカーゾーン34aおよび右前アンカーゾーン34dをそれぞれ画成する。左前アンカーゾーン34aおよび右前アンカーゾーン34dは、左前足部220aおよび右前足部220dをそれぞれ留置するための有利な標的位置をもたらす。
アンカーアセンブリ200の図示されている実施形態は、左後足部220bおよび右後足部220cも備える。すでに説明されているように、左後足部220bおよび右後足部220cも、アンカーアセンブリ200をバランスよく、傷を付けることなく自然僧帽弁17に結合するように弁輪下溝19内に有利に位置決めされ得る。したがって、左後アンカーゾーン34bおよび右後アンカーゾーン34cは、弁輪下溝19内に画成される。左後アンカーゾーン34bおよび右後アンカーゾーン34cは、左後足部220bおよび右後足部220cをそれぞれ受け入れることができる。いくつかの実装において、左後アンカーゾーン34bおよび右後アンカーゾーン34cの配置は、弁輪下溝19内にそのまま残っている間に図示されている配置から変わることがある。図示されているアンカーアセンブリ200は、本開示の範囲内で実現されるアンカーアセンブリの1つの非制限的な例にすぎないことは理解されるであろう。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200は、弁輪上構造および弁輪下構造を備える。たとえば、アンカーアセンブリ200の弁輪下構造は、前述のアンカー足部220a、220b、220c、および220dと、ハブ210とを備える。いくつかの実施形態において、上で説明されているように、ハブ210は、送達システム100に対する接続構造として機能する(たとえば、図2参照)。それに加えて、ハブ210は、左前弁輪下支持アーム230a、左後弁輪下支持アーム230b、右後弁輪下支持アーム230c、および右前弁輪下支持アーム230dがアンカー足部220a、220b、220c、および220dまでそれぞれ延在する安定化構造コンポーネントとして機能することができる。
図示されている実施形態などの、いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200の弁輪上構造は、左前心房保持特徴部240a、左後心房保持特徴部240b、右後心房保持特徴部240c、および右前心房保持特徴部240d、前アンカーアーチ部250a、左アンカーアーチ部250b、後アンカーアーチ部250c、および右アンカーアーチ部250d、ならびに接続ブリッジ260を備える。前アンカーアーチ部250a、左アンカーアーチ部250b、後アンカーアーチ部250c、および右アンカーアーチ部250dは、互いに連結され、アンカーアセンブリ200の弁輪上構造要素として働く起伏のある弁輪上リング250を形成する。以下でさらに説明されるように、弁輪上リング250は、弁アセンブリを受け入れ、係合するように構成されているアンカーアセンブリ200の内部内の空間への開口部も画成する。心房保持特徴部240a、240b、240c、および240dは、僧帽弁輪の上の棚状弁輪上組織表面と接触し、それによって、それぞれアンカー足部220a、220b、220c、および220dの一般的に反対側にある弁輪上領域内のアンカーアセンブリ200を安定化するように構成されている。
いくつかの実施形態において、接続ブリッジ260は、弁(図示せず)が閉じられ、収縮期に加圧された血液を遮断しているときに随伴する人工弁アセンブリにかかる垂直方向の力から安定性および疲労抵抗を高める。アンカーアセンブリ200は、足部に隣接するフレーム部分内に1つまたは複数の穴226も備えることができ、これらはアセンブリの送達および取り出しのための追加の制御ポイントとなるか、または位置的送達フレームを固定するために使用されることも可能である。
図示されている実施形態などの、いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200の弁輪上構造および弁輪下構造は、外側前弁輪間接続部270a、外側後弁輪間接続部270b、内側後弁輪間接続部270c、および内側前弁輪間接続部270dによって相互接続される。たとえば、外側前弁輪間接続部270aは、外側前アンカー足部220aを外側前心房保持特徴部240aと接続する。それに加えて、外側前弁輪間接続部270aは、外側前アンカー足部220aを前アンカーアーチ部250aおよび左アンカーアーチ部250bと接続する。図示されている実施形態において、他の弁輪間接続部270b、270c、および270dの各々は、弁輪上構造および弁輪下構造の一部分を外側前弁輪間接続部270aと似た仕方で相互接続する。たとえば、外側後弁輪間接続部270bは、外側後アンカー足部220bを左アンカーアーチ部250bおよび後アンカーアーチ部250cと接続し、内側後弁輪間接続部270cは、内側後アンカー足部220cを後アンカーアーチ部250cおよび右アンカーアーチ部250dと接続し、内側前弁輪間接続部270dは、内側前アンカー足部220dを右アンカーアーチ部250dおよび前アンカーアーチ部250aと接続する。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200の細長部材は、切断され、拡張され、ハブ210に接続されている前駆体材料の単一個片(たとえば、シートもしくはチューブ)から形成される。たとえば、いくつかの実施形態は、レーザカットされた(または機械加工された、化学的にエッチングされた、ウォータージェットカットされた、など)チューブから製作され、次いで、拡張され、最終的な拡張されたサイズおよび形状にヒートセットされる。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200は、ハブ210とおよび互いと連結された複数の細長部材(たとえば、ワイヤもしくは切断部材)から複合材として製作され、アンカーアセンブリ200を形成する。
アンカーアセンブリ200の細長部材は、様々な材料および材料の組合せから構成され得る。いくつかの実施形態において、ニチノール(NiTi)は、アンカーアセンブリ200の細長部材の材料として使用されるが、ステンレス鋼、L605鋼、ポリマー、MP35N鋼、ステンレス鋼、チタン、コバルト/クロム合金、ポリマー材料、Pyhnox、Elgiloy、または他の適切な生体適合性材料、およびこれらの組合せなどの他の材料も使用できる。NiTiは、超弾性特性を有するので、アンカーアセンブリ200の細長部材の特によい候補材料であるが、それは、たとえば、NiTiが所望の形状にヒートセットできるからである。すなわち、NiTiは、アンカーアセンブリ200がアンカー送達シース130から外に配備されたときなどアンカーアセンブリ200が無拘束であるときに所望の形状に自己拡張する傾向を有するようにヒートセットできる。たとえば、NiTiから作られたアンカーアセンブリ200は、アンカーアセンブリ200を弾性的につぶすかまたは「押しつぶし」て背の低い送達構成にし、図9に示されているような拡張された構成に再構成することを可能にするバネの性質を有し得る。アンカーアセンブリ200は、アンカーアセンブリ200が患者の自然僧帽弁内に配備されるときにアンカーアセンブリ200が周囲組織の凹凸形状に即応できるように一般的な形状適合性、耐疲労性、および伸縮性を有するものとしてよい。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数の直径または幅/厚さは、約0.008インチから約0.015インチ(約0.20mmから約0.40mm)、または約0.009インチから約0.030インチ(約0.23mmから約0.76mm)、または約0.01インチから約0.06インチ(約0.25mmから約1.52mm)、または約0.02インチから約0.10インチ(約0.51mmから約2.54mm)、または約0.06インチから約0.20インチ(約1.52mmから約5.08mm)の範囲内にあるものとしてよい。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材は、より小さい、またはより大きい直径または幅/厚さを有するものとしてよい。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材の各々は、本質的に同じ直径または幅/厚さを有する。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数は、アンカーアセンブリ200の他の細長部材のうちの1つまたは複数と異なる直径または幅/厚さを有する。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数の細長部材の1つまたは複数の部分は、アンカーアセンブリ200の細長部材の全長に沿ってテーパーを付けられている、広くされている、狭められている、湾曲している、放射状である、波状である、螺旋状である、角度を付けられている、ならびに/または他の何らかの非直線的でありおよび/もしくは一貫していないものとしてよい。そのような特徴および技術は、また、本明細書で実現されている人工僧帽弁の弁アセンブリとともに組み込まれ得る。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材は、特定の領域内でアンカーアセンブリ200によって加えられる力の変化を円滑にし、いくつかの領域内でのアンカーアセンブリ200の柔軟性を加減し、遊走抵抗を高め、および/または配備の準備として圧縮(押しつぶすことができる)のプロセスとアンカーアセンブリ200の配備における拡張のプロセスを制御するように直径、厚さ、および/または幅が変化し得る。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの細長部材の1つまたは複数は、円形断面を有し得る。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数は、矩形の断面形状、または矩形ではない別の断面形状を有し得る。アンカーアセンブリ200を形成する細長部材が有し得る断面形状の例は、編組またはより線構造物によって形成された不規則な断面形状、および同様のものを含む、円形、C字形、正方形、卵形、矩形、楕円形、三角形、D字形、台形を含む。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数は、本質的に平坦であってよい(すなわち、幅対厚さの比が約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、または約5:1よりも大きい)。いくつかの例において、アンカーアセンブリ200を形成する細長部材のうちの1つまたは複数は、芯なし研削技術を使用して形成されるものとしてよく、細長部材の直径は細長部材の長さに沿って変わる。
アンカーアセンブリ200は、人工僧帽弁デバイスの1つまたは複数の望ましい機能的性能特性を増強することに向けられている特徴を備え得る。たとえば、アンカーアセンブリ200のいくつかの特徴は、人工僧帽弁デバイスの形状適合性を高めることに向けられ得る。そのような特徴は、たとえば、不規則な組織凹凸形状および/または動的に変化可能な組織凹凸形状にデバイスが形状適合できるようにすることによって人工僧帽弁デバイスの改善された性能をいっそう高めることができる。そのような形状適合性特性は、人工僧帽弁デバイスの有効性および耐久性に関する性能を実現するうえで有利であり得る。アンカーアセンブリ200のいくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200のいくつかの部分は、同じアンカーアセンブリ200の他の部分よりも形状適合性が高くなるように設計される。すなわち、単一のアンカーアセンブリ200の形状適合性は、アンカーアセンブリ200の様々な領域において異なるように設計され得る。
いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200は、生体内放射線撮像視認性を高めるための特徴を備える。いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dのうちの1つまたは複数などのアンカーアセンブリ200の一部分は、それらに取り付けられた1つまたは複数の放射線不透過性マーカーを有し得る。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200の一部または全部は、放射線不透過性コーティングでコーティングされる(たとえば、スパッタコーティングされる)。
なおも図8および図9を参照すると、上で説明されているように、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、僧帽弁17の弁輪下溝19と係合するサイズおよび形状を有する。いくつかの実施形態において、前足部220aおよび220dは、約30mmから約45mm、または約20mmから約35mm、または約40mmから約55mmの範囲内の距離だけ互いに相隔てて並ぶ。いくつかの実施形態において、後足部220bおよび220cは、約20mmから約30mm、または約10mmから約25mm、または約25mmから約40mmの範囲内の距離だけ互いに相隔てて並ぶ。
いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、約8mmから約12mmの範囲内、または約12mmを超える高さを有する。いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、約6mm2から約24mm2の範囲内の溝係合表面積(布地で覆われているとき)を有する。いくつかの実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは各々、本質的に同じ溝係合表面積を有する。特定の実施形態において、アンカー足部220a、220b、220c、および220dのうちの1つまたは複数は、他のアンカー足部220a、220b、220c、および220dのうちの1つまたは複数と異なる溝係合表面積を有する。アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、約1.5mmから約4.0mm以上の範囲の幅、および約3mmから約6mm以上の範囲内の長さを有することができる。アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、アンカーアセンブリ200が、アンカーアセンブリが僧帽弁部位に固定された後であっても僧帽弁の腱索、自然僧帽弁弁尖、および乳頭筋の自然機能を著しく損なうことがないようなサイズおよび形状を有する。
すでに説明されているように、アンカーアセンブリ200は、自然僧帽弁17の機能実行への干渉を回避するように設計されている。したがって、アンカーアセンブリ200は、アンカーのインプラントから弁のインプラントまでの期間中に(その時間が分程度であろうと、数日もしくは数ヶ月であろうと)弁17の機能を劣化させることなく、交換弁アセンブリを中に配備する少し前に自然僧帽弁17内にインプラントすることができる。アンカーアセンブリ200と自然僧帽弁17との間のそのような干渉を回避するために、弁輪間接続部270a、270b、270c、270dは、ほぼ接合線32を通過する。より具体的には、左前弁輪間接続部270aは、前交連30aに隣接する接合線32を通過する。同様にして、右前弁輪間接続部270dは、後交連30bに隣接する接合線32を通過する。いくつかの実装において、左後弁輪間接続部270bおよび右後弁輪間接続部270cは、自然接合線32から後方に付勢される部位における自然僧帽弁17を通過する。後尖22は、左後弁輪間接続部270bおよび右後弁輪間接続部270cの周りに沿うように包み込み、僧帽弁17の封止を円滑にする傾向を有し、アンカーアセンブリ200はそれに結合される。
図10を参照すると、いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200は、アンカーアセンブリ200の1つまたは複数の部分に配設されている被覆材270を含む。被覆材270は、様々な利点をもたらし得る。たとえば、いくつかの実装において、被覆材270は、組織成長侵入および/または内皮化を円滑にし、それによって、アンカーアセンブリ200の遊走抵抗を高め、血液接触要素上の血栓形成を防ぐことができる。別の例では、以下でさらに説明されているように、被覆材270は、アンカーアセンブリ200と中に受け入れられる弁アセンブリとの間の結合を円滑にするために使用され得る。被覆材270は、また、アンカーアセンブリ200と弁アセンブリ300との間の摩耗および/または腐食を防ぐか、または最小限度に抑える。被覆材270は、また、弁外側組織摩耗関係の擦り切れも防ぐ。
図示されている実施形態において、被覆材270は、本質的にアンカーアセンブリ200全体に配設される。いくつかの実施形態において、被覆材270は、アンカーアセンブリ200の1つまたは複数の部分に配設され、アンカーアセンブリ200の1つまたは複数の他の部分は、被覆材270を配設されていない。図示されている実施形態は、被覆材270を含むが、被覆材270は、すべての実施形態において必要というわけではない。いくつかの実施形態において、被覆材270のうちの2つまたはそれ以上の部分は、互いから分離され、および/または区別することができ、アンカーアセンブリ200上に配設され得る。すなわち、いくつかの実施形態において、被覆材270の特定のタイプは、アンカーアセンブリ200のいくつかの領域上に配設され、異なるタイプの被覆材270は、アンカーアセンブリ200の他の領域上に配設される。
いくつかの実施形態において、被覆材270、またはその一部は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ポリマーなどの、フッ素重合体を含む。いくつかの実施形態において、被覆材270、またはその一部は、ポリエステル、シリコーン、ウレタン、ELAST−EON(商標)(シリコーンおよびウレタンポリマー)、別の生体適合性ポリマー、DACRON(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合体、またはこれらの組合せおよび部分的組合せを含む。いくつかの実施形態において、被覆材270は、限定はしないが、押し出し成形、延伸、熱処理、焼結、編み、編組、織り、化学処理、および同様のものなどの、技術を使用して製造される。いくつかの実施形態において、被覆材270、またはその一部は、生物組織を含む。たとえば、いくつかの実施形態において、被覆材270は、限定はしないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはウマの心膜などの自然組織を含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、組織は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、またはトリグリシジルアミン(TGA)溶液、または他の好適な組織架橋剤を使用して化学的に処理される。
図示されている実施形態において、被覆材270は、アンカーアセンブリ200の内部および外部に配設される。いくつかの実施形態において、被覆材270は、アンカーアセンブリ200の外部だけに配設される。いくつかの実施形態において、被覆材270は、アンカーアセンブリ200の内部だけに配設される。いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200のいくつかの部分は、アンカーアセンブリ200の他の部分と異なる仕方で被覆材270によって覆われる。
いくつかの実施形態において、被覆材270は、接着材を使用してアンカーアセンブリ200の少なくともいくつかの部分に取り付けられる。いくつかの実施形態において、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)は、被覆材270をアンカーアセンブリ200、またはその一部分に取り付けるために接着剤として使用される。たとえば、FEPコーティングは、アンカーアセンブリ200の一部または全部に施されるものとしてよく、FEPは、被覆材270をアセンブリ200に接着するための接合剤として働き得る。いくつかの実施形態において、ラッピング、スティッチング、ラッシング、バンディング、および/またはクリップ、ならびに同様のものは、被覆材270をアンカーアセンブリ200に取り付けるために使用され得る。いくつかの実施形態において、被覆材270をアンカーアセンブリ200に取り付けるために技術の組合せが使用される。
いくつかの実施形態において、被覆材270、またはその一部分は、アンカーアセンブリ200の耐久性のある封止および/または補足的な固定強度のための組織成長侵入足場を提供する微孔構造を有する。いくつかの実施形態において、被覆材270は、被覆材270を通る血液の通過を阻害または低減する隔膜材料から作られる。いくつかの実施形態において、被覆材270、またはその一部分は、被覆材270への組織成長侵入および/または内皮化を阻害または防止する材料組成および/または構成を有する。
いくつかの実施形態において、被覆材270は、被覆材270のいくつかの物理的特性を増強する1つまたは複数の化学的または物理的プロセスによって修正され得る。たとえば、被覆材270の湿潤性およびエコー透過性を改善するために親水性コーディングが被覆材270に施され得る。いくつかの実施形態において、被覆材270は、内皮細胞付着、内皮細胞移動、内皮細胞増殖、および血栓症に対する抵抗のうちの1つまたは複数を促進するか、または阻害する化学部分で修正され得る。いくつかの実施形態において、被覆材270は、共有結合したヘパリンで修正され得るか、またはその場で放出される1つまたは複数の製剤物質を含浸され得る。
いくつかの実施形態において、被覆材270は、被覆材270を通る流体流を調節し、および/または被覆材270への組織成長侵入の傾向に影響を及ぼすように事前穿孔されている。いくつかの実施形態において、被覆材270は、被覆材270をより堅くするか、または表面テクスチャを加えるように処理される。たとえば、いくつかの実施形態において、被覆材270は、被覆材270を堅くするか、または被覆材270上の表面を粗面化するようにFEP粉末で処理される。いくつかの実施形態において、被覆材570の選択された部分は、そのように処理され、被覆材270の他の部分は、そのように処理されない。有益な機械的特性および組織応答相互作用をもたらすために他の被覆材270の材料処理技術も採用され得る。いくつかの実施形態において、被覆材270の一部分は、生体内放射線画像化を強化するために1つまたは複数の放射線不透過性マーカーを付着されている。
次に図11Aおよび図12Aを参照すると、自然僧帽弁17内にインプラントされたアンカーアセンブリ200が図示されている。図11Bおよび図12Bは、それぞれ図11Aおよび図12Aに対応する写真である。図11Aでは、僧帽弁17は、閉鎖状態にあるように図示されている。図12Aでは、僧帽弁17は、開放状態にあるように図示されている。これらの図は、僧帽弁17の方を見たときの左心房の斜視図からのものである。たとえば、図12Aにおいて、腱索40は、僧帽弁17の開いている弁尖を通して見える。
これらの図は、自然僧帽弁17と関係するアンカーアセンブリ200の弁輪上構造および弁輪下構造を示している。たとえば、図11Aの自然僧帽弁17の閉鎖状態は、左前心房保持特徴部240a、左後心房保持特徴部240b、右後心房保持特徴部240c、および右前心房保持特徴部240dなどの弁輪上構造が見えるようにし得る。それに加えて、前アンカーアーチ部250a、左アンカーアーチ部250b、後アンカーアーチ部250c、右アンカーアーチ部250d、および接続ブリッジ260は、見えている。しかしながら、弁輪下構造は、図11Aには見えていないが、それは、そのような構造が、前尖20ならびに三部構成の後尖24a、24b、および24cによって遮られて見えないからである。
対照的に、図12Aにおいて、アンカーアセンブリ200のいくつかの弁輪下構造は、僧帽弁17が開いているので見える。たとえば、弁輪下支持アーム230a、230b、230c、および230dならびにハブ210は、開放僧帽弁17を通して見える。それでもなお、アンカー足部220a、220b、220c、および220dは、自然僧帽弁17の弁輪下溝内に配置されているので、見えないままである。
図13を参照すると、アンカーアセンブリ200を自然僧帽弁17内にインプラントした後に(たとえば、上で説明されている図1〜図7に従って実行されるように)、アンカーアセンブリ200内に弁アセンブリを配備するために送達システム100の弁送達シース170が使用され得る。図7を参照しつつ上で説明されているように、遠位プッシャーカテーテル160がアンカーアセンブリ200のハブ210と結合された状態で、遠位プッシャーカテーテル160は、弁アセンブリをアンカーアセンブリ200の内部に誘導するために使用され得る。
いくつかの実装において、一次偏向可能カテーテル120が左心房16内の遠位端により位置決めされた状態で、弁送達シース170は、一次偏向可能カテーテル120の内腔内に(遠位プッシャーカテーテル160上で)取り付けられ、一次偏向可能カテーテル120に通されて前進する。以下でさらに説明されているように、いくつかの実施形態において、弁送達シース170は、送達システム100の人工弁アセンブリおよび他のコンポーネントを事前装填される。一次偏向可能カテーテル120は、アンカーアセンブリ200を送達するために使用された同じカテーテルであってよいか、または異なるカテーテルであってもよい(が、それでも簡単のために本明細書では一次偏向可能カテーテル120と称される)。
いくつかの実施形態において、弁送達シース170は、一次偏向可能カテーテル120に関して上で説明されている材料から作られ得る。いくつかの実施形態において、弁送達シース170は、約20Frから約28Fr(約6.7mmから約9.3mm)の範囲内の外径を有する。いくつかの実施形態において、弁送達シース170は、約14Frから約24Fr(約4.7mmから約8.0mm)の範囲内の外径を有する。
図示されている実施形態において、弁送達シース170は、裾広がり遠位端部分172を備える。いくつかの実施形態において、そのような裾広がり遠位端部分172は含まれない。裾広がり遠位端部分172は、一次偏向可能カテーテル120内に拘束されたときにより背の低い輪郭になるまでつぶれることができる。裾広がり遠位端部分172が、一次偏向可能カテーテル120から表出されたときに、裾広がり遠位端部分172は自己拡張して裾広がり形状になるものとしてよい。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分172の材料は、ひだまたは折り目を備えており、連続的な裾広がり端部であり得るか、または花びらのようないくつかのセクションに分離されるものとしてよく、拘束力(一次偏向可能カテーテル120内の封じ込めなどからの)が存在しない場合に裾広がり遠位端部分172を付勢して裾広がり構成を取らせる1つまたは複数の弾力性のある要素を備え得る。裾広がり遠位端部分172は、たとえば、弁アセンブリが裾広がり遠位端部分172から表出された後に弁送達シース170の内腔内に弁アセンブリを再び捕らえるうえで有利であり得る。
いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分172の最大外径は、約30Frから約34Fr(約10.0mmから約11.3mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分172の最大外径は、約32Frから約44Fr(約10.7mmから約14.7mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分172の最大外径は、約24Frから約30Fr(約8.0mmから約10.0mm)の範囲内である。いくつかの実施形態において、裾広がり遠位端部分172の最大外径は、約24Fr(約8.0mm)未満または約44Fr(約14.7mm)超である。
図14を参照すると、いくつかの実装において、弁送達シース170は、一次偏向可能カテーテル120内に引き込まれ得るが、弁送達カテーテル180は、弁アセンブリ300を弁送達シース170の内腔から表出させるために実質的に静止状態に保持される。弁送達シース170および弁送達カテーテル180は、例示的な送達システム100のいくつかの実施形態における追加のコンポーネントである。
弁アセンブリ300は、弁送達カテーテル180に解放可能に結合され、背の低い構成に保持され得る。いくつかの実施形態において、弁アセンブリ300の遠位端および近位端は両方とも、弁送達カテーテル180に解放可能に結合されている。いくつかの実施形態において、弁アセンブリ300の遠位端または近位端のうちの一方だけ、弁送達カテーテル180に解放可能に結合されている。特定の実施形態において、弁アセンブリ300の1つまたは複数の部分を弁送達カテーテル180に解放可能に結合するために1本またはそれ以上の本数の制御ワイヤが含まれ得る。
図41〜図43を参照すると、弁アセンブリ300は、近位制御ワイヤ342aおよび中間体の制御ワイヤ342bを介して弁送達カテーテル180に解放可能に結合される。制御ワイヤ342aおよび342bは、弁送達カテーテル180内の1つまたは複数の内腔内に縫うように通される。制御ワイヤ342aおよび342bは、弁送達カテーテル180から出て、それぞれ弁アセンブリ300の近位端および中間体部分上の小穴を通過する。制御ワイヤ342aおよび342bは、弁送達カテーテル180内に縫うようにして戻される。制御ワイヤ342aおよび342bを操作することによって、操作者である臨床医は、弁アセンブリ300を制御することができる。たとえば、送達カテーテル180内の制御ワイヤ342aおよび342bの張力および位置を操作することによって、弁アセンブリ300の拡張および収縮が制御され、弁送達カテーテルからの弁アセンブリ300の脱着が制御され得る。
図14を再び参照すると、弁送達カテーテル180の内腔は、遠位プッシャーカテーテル160を摺動可能に囲むことができる。したがって、弁送達カテーテル180の前進の結果、弁アセンブリ300が遠位プッシャーカテーテル180上を前進してアンカーアセンブリ200に向かう。
図15および図16を参照すると、送達システム100は、左心房16内の弁アセンブリ300の外側枢動(パニング、回転など)を実行するために操作者である臨床医によって操作され得る。弁アセンブリ300の回転は、弁アセンブリ300のアライメントを一次偏向可能カテーテル120の遠位端部分とともに一般的に軸方向であることからアンカーアセンブリ200とともに一般的に軸方向であることに変化させる(弁アセンブリ300をアンカーアセンブリ200の内部内に取り付ける準備として)。
いくつかの実装において、弁アセンブリ300の前述の回転は、次のように実行され得る。図15に示されているように、弁送達カテーテル180に対する一次偏向可能カテーテル120からの影響があるため、弁アセンブリ300の軸は、一次偏向可能カテーテル300の軸は、一次偏向可能カテーテル120の遠位端部分の軸と最初に一般的アライメント状態にある。この配置構成から、弁アセンブリ300を回転させるために臨床医によって遠位プッシャーカテーテル160と弁送達カテーテル180との間の同時対抗運動が実行され得る。すなわち、遠位プッシャーカテーテル160が近位に引かれると、弁送達カテーテル180は、遠位に押される。その対抗運動の結果として、弁アセンブリ300は、左心房16の閉鎖部分によって必要に応じて、相対的な狭い半径で回転する。その後、弁送達カテーテル180は、弁アセンブリ300が、図16に示されているようにアンカーアセンブリ200の内部内に同軸上に位置決めされるようにさらに前進させられ得る。
次に図17も参照すると、いくつかの実施形態において、弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200は、弁アセンブリ300の拡張前または拡張時に、互いに同軸上で、直線上で(軸に沿って)、および回転可能にアライメントされており、その結果、弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200が係合する。その後、送達システム100は、心臓10から引き出され得、人工僧帽弁は、その機能を実行することができる。
上で説明されているように、弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200の間の同軸上のアライメントは、弁送達カテーテル180が遠位プッシャーカテーテル160上に摺動可能に配設されることで達成される。弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200の間の直線上のアライメントは、弁送達カテーテル180の遠位端特徴部182とアンカーアセンブリ200のハブ210との相互作用によって達成され得る。たとえば、いくつかの実施形態において、遠位端特徴部182とハブ210とが当接すると、その結果、弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200との間の適切な直線上のアライメントが行われ得る。
弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200との間の相対的な回転可能なアライメント(軸の周りの)は、様々な仕方で達成され得る。たとえば、いくつかの実施形態において、弁送達カテーテル180は、遠位プッシャーカテーテル160に機械的に合わせられ、弁アセンブリ300とアンカーカテーテル200との間の所望の回転可能なアライメントを摺動可能に固定する。いくつかの実施形態において、他のタイプの機械的特徴部(たとえば、ピン/穴、突起部/受容部など)は、弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200との間の所望の回転可能/スピンアライメントを円滑にするために備えられ得る。代替的に、またはそれに加えて、放射線不透過性マーカーが、弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200の相対的な回転する向き(軸の周りの)を示す配置および/またはパターンで弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200上に備えられ得る。いくつかの実施形態において、(たとえば、弁送達カテーテル180が「トルク伝達可能」であるときに)弁送達カテーテル180は、弁アセンブリ300の最終的な拡張の前に、アンカーアセンブリ200に関してマーカーが適切な位置に来るまで軸の周りに回転させられ得る。蛍光透視法は、放射線不透過性マーカーの、ならびにそれに対応して弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200の、所望の相対的な配向を達成するために使用できる。
図18および図19を参照すると、被覆材または弁/閉塞器弁尖なしで例示的な弁アセンブリ300が図示されている。したがって、弁アセンブリ300の弁アセンブリフレーム301が示されている。図18は、弁アセンブリフレーム301の前側面図であり、図19は、弁アセンブリフレーム301の底面図である。弁アセンブリ300は、アンカーフレーム200を参照して上で説明されている様々な材料および製造技術のうちのどれかを使用して製作され得る(たとえば、図9参照)。図示されている弁アセンブリ300は、本開示の範囲内で実現される弁アセンブリの1つの非制限的な例にすぎないことは理解されるであろう。
弁アセンブリ300は、近位端部分302と遠位端部分304とを備える。弁アセンブリは、裾広がりの外部スカート部分303を備え、内部オリフィス部分305を画成する。弁アセンブリ300が、自然僧帽弁内にインプラントされたときに、近位端部分302は、弁輪上(左心房内)に配置され、遠位端部分304は、弁輪下(左心室内)に配置される。近位端部分302は、以下でさらに説明されているように、弁アセンブリ300の一般的に円形の入口オリフィスを画成する。
図示されている実施形態において、弁アセンブリ300は、遠位方向に沿って一般的に外向きに裾広がりになっている。別の言い方をすると、遠位端部分304は、近位端部分302と比較して外向きに裾広がりになっている。したがって、近位端部分302は、遠位端部分304と比較してより小さい外形を画成する。しかしながら、遠位端部分304のいくつかの領域は、内向きに弓なりに曲がる。特に、たとえば、弁アセンブリ300の後交連角330aおよび前交連角330bは内向きに弓なりに曲がり得る。近位端部分302と比較した遠位端部分304の外向きの裾広がりは、弁アセンブリ300の輪郭に対する構成の単なる一例であることは理解されるであろう。いくつかの実施形態において、たとえば、段部(最大の外周を有する弁アセンブリ300の部分)は、弁アセンブリ300の中間の近くに配置される。
弁アセンブリ300は、後交連角330aと前交連角330bとの間に前側部306も備える。弁アセンブリ300が、自然僧帽弁内にインプラントされたときに、前側部306は、僧帽弁の前尖に面する。遠位端部分304の前側部306は、一般的に平坦な表面を画成するが、遠位端部分304の他の側部は、丸くなっている。したがって、遠位端部分304の周は、一般的にD字形である。遠位端部分304の周がD字形であるため、弁アセンブリ300は自然僧帽弁と接触し、封止するのに有利な外形を備える。以下でさらに説明されているように、封止は遠位端部分304のD字形の周と自然僧帽弁の弁尖との間の、およびいくつかの実施形態において、自然弁輪を有するスカート部303の領域内のD字形の周の間の接合によって達成される。
図示されている実施形態において、弁アセンブリ300の近位端部分302は、その近位端部分302のところで起伏のあるリングを一緒に画成する3つの心房弁尖アーチ部310a、310b、および310cを備える。弁尖アーチ部310a、310b、および310cの各々は、それぞれ、取付穴312a、312b、および312cを有する頂点を備える。いくつかの実施形態において、取付穴312a、312b、および312cは、弁アセンブリ300の近位端を送達カテーテル(たとえば、図14〜図16の弁送達カテーテル180)に結合するために使用される。
弁アセンブリ300は、また、3つの弁尖アーチ部310a、310b、および310cの交差点から遠位に各々延在する3つの交連支柱320a、320b、および320cも備える。交連支柱320a、320b、および320cは、互いに約120°離れて配設されている。交連支柱320a、320b、および320cは、各々、縫合することなどによって、弁尖の取り付けに使用され得る一連の穴を有する。3つの弁尖アーチ部310a、310b、および310cならびに3つの交連支柱320a、320b、および320cは、3つの人工弁弁尖が三葉閉塞器を備えるために取り付けられた弁アセンブリ300上の領域である(たとえば、図22〜図25参照)。
図19に最もよく示されているように、3つの弁尖アーチ部310a、310b、および310cならびに3つの交連支柱320a、320b、および320cは、三葉閉塞器構造物に対する一般的に円筒形のフレームを画成する。そのようなものとして、弁アセンブリ300は、三葉閉塞器に対する実証済みの有利なフレーム構成を形成する。三葉閉塞器は、拡張期に開放流を、収縮期に流れの閉塞をもたらす。
図20を参照すると、例示的な人工僧帽弁400の分解図はアンカーアセンブリ200および弁アセンブリ300を含んでいる。この図は、アンカーアセンブリ200および弁アセンブリ300の後側面図になっている。
弁アセンブリ300は、被覆材340を備えている。被覆材340は、被覆材270を参照して上で説明されている技術のうちのどれかを使用して、材料のうちのどれかから作られ、製作され得る。それに加えて、いくつかの実施形態において、被覆材340は、限定はしないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはウマの心膜などの自然組織を含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、組織は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、またはトリグリシジルアミン溶液、または他の好適な架橋剤を使用して化学的に架橋される。
弁アセンブリ300およびアンカーアセンブリ200が一緒に結合されたときに、弁アセンブリ300は、アンカーアセンブリ200の内部内で幾何学的に連動状態にある(たとえば、いくつかの実施形態において、アンカーアセンブリ200の弁輪上リングおよび内部空間内の弁アセンブリ300のテーパー付き形状による)。特に、いくつかの実施形態において、弁アセンブリ300は、弁輪上リング250と弁輪下支持アーム230a、230b、230c、および230dとの間の内部空間内に収容される。上で説明されているように、弁アセンブリ300とアンカーアセンブリ200との間の連動する配置構成は、弁アセンブリ300をアンカーアセンブリ200の内部内の背の低い構成に位置決めし、次いで、アンカーアセンブリ200の内部内で弁アセンブリ300の拡張を許すことによって達成される(たとえば、図16および図17参照)。
図21および図22を参照すると、例示的な人工僧帽弁400の配備された構成は、アンカーアセンブリ200内で係合している弁アセンブリ300を含む。図21は、人工僧帽弁400の上面(心房)図であり、図22は、人工僧帽弁400の底面(心室)図である。
図示されている実施形態などの、いくつかの実施形態において、弁アセンブリ300は、人工僧帽弁400の閉塞機能を実行する3つの弁尖350a、350b、および350cを備える。3つの弁尖350a、350b、および350cの尖部は、3つの心房弁尖アーチ部310a、310b、および310cに固定され、および3つの交連支柱320a、320b、および320cに固定される(図18および図19参照)。3つの弁尖350a、350b、および350cの自由縁は、収縮期に互いに接合によって封止し、拡張期に開くことができる。
3つの弁尖350a、350b、および350cは、天然材料または合成材料からなるものとしてよい。たとえば、3つの弁尖350a、350b、および350cは、限定はしないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはウマの心膜などの自然組織を含む、被覆材340を参照して上で説明されている材料のうちのどれかからなるものとしてよい。いくつかのそのような実施形態において、組織は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、またはトリグリシジルアミン溶液、または他の好適な架橋剤を使用して化学的に架橋される。いくつかの実施形態において、弁尖350a、350b、および350cは、約0.005インチから約0.020インチ(約0.13mmから約0.51mm)、または約0.008インチから約0.012インチ(約0.20mmから約0.31mm)の範囲内の厚さを有する。いくつかの実施形態において、弁尖350a、350b、および350cは、約0.005インチ(約0.13mm)未満、または約0.020インチ(約0.51mm)超の厚さを有する。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁400の閉塞機能は、三葉閉塞器とは別の構成を使用して実行され得る。たとえば、二葉、四葉、または機械弁構造物は、いくつかの実施形態において使用され得る。
図23および図24を参照すると、自然僧帽弁17内にインプラントされた人工僧帽弁400が図示されている。図23では、人工僧帽弁400は、閉鎖(閉塞)状態にあるように図示されている。図24では、人工僧帽弁400は、開放状態にあるように図示されている。これらの図は、僧帽弁17の方を見たときの左心房の斜視図からのものである。たとえば、図24において、ハブ210およびアンカーアセンブリ200の弁輪下支持アーム230a、230b、230c、および230dは、人工僧帽弁400の開放弁尖350a、350b、および350cを通して見えるが、図23において、ハブ210および弁輪下支持アーム230a、230b、230c、および230dは、閉鎖弁尖350a、350b、および350cがハブ210を視界から遮っているので見えない。
図25〜図33では、自然僧帽弁構造と本明細書で説明されているインプラント可能な人工僧帽弁との間の封止に関する追加の態様を説明している。収縮期には、心室心房間封止は、人工僧帽弁のインプラントを介してMRを効果的に治療するために適切である。それに加えて、拡張期には、自然僧帽弁構造と本明細書で説明されている人工僧帽弁との間の心房心室間封止は、弁傍漏れを防ぐか、または低減するために、ならびに良好な治癒および慢性安定性のために適切である。本明細書で説明されている人工僧帽弁は、自然僧帽弁構造との効果的な封止を実現する様々な特徴を有するように設計されている。
本明細書において提示されている人工僧帽弁の封止を高める特徴の1つは、自然僧帽弁の形状に関して人工弁のフレームワークの形状に関するものである。上で説明されているように、自然僧帽弁の弁輪は、一般的にD字形である(図8参照)。それに加えて、上で説明されているように、本明細書で説明されている人工僧帽弁の遠位端部分は、D字形である(図19参照)。言い換えると、自然弁輪と接触するように設計されている人工弁の部分は、弁輪の形状に類似するD字形の輪郭を有する。この形状類似性は、後尖22の外側弁帆24aおよび内側弁帆24cの領域において特に封止効果をもたらすことができる(図8参照)。
本明細書において提示されている人工僧帽弁の封止を高める別の特徴は、本質的に収縮期における、自然僧帽弁のサイズに関して選択された人工弁のサイズに関するものである。いくつかの実装において、選択された人工弁は、自然僧帽弁の弁輪のサイズに等しいか、またはわずかに大きい外形(拘束されていないとき)を意図的にとる。すなわち、自然弁輪に隣接することを意図されている弁表面上の領域において、弁がこのサイズである結果、自然弁輪との間で線間(line−to−line)嵌めまたはわずかな締まり嵌めが行われ得る。しかしながら、いくつかの実装において、拡張期における心房心室間封止は、弁と自然弁輪との間の線間嵌めまたはわずかな締まり嵌めによって形成される。
本明細書において提示されている人工僧帽弁の封止を高める別の特徴は、自然僧帽弁の弁輪に関して人工弁上の封止表面の相対的幾何学的配向に関するものである。いくつかの実装において、弁の外形と自然僧帽弁の受け入れ構造との間の機械的な嵌合によってある程度の封止がなされるが、いくつかの実装では、自然弁尖と人工弁の周上の封止表面との間の接合によって実質的な封止がなされる(それによって、拡張期に接触封止を、収縮期に左心室加圧封止を形成する)。このタイプの封止は、本明細書では弁尖弁本体部間封止と称され得る。以下でさらに説明されているように、本明細書で提示されている人工僧帽弁は、弁尖弁本体部間封止が形成されるように自然弁輪に関して幾何学的に向き付けられている封止表面を有する。弁尖弁本体部間封止が、完全に、機械的圧縮タイプの封止または自然組織(能動的な固定)タイプの封止上への取り付けというわけではないが、いくつかの実施形態において、そのような機械的または取り付けタイプの封止は、代替的に、またはそれに加えて、組み込まれ得る。
いくつかの実装において、有効な弁尖弁本体部間封止(完全には圧縮または取り付けに基づかない)は、弁本体部の封止表面への自然弁尖のある程度の移動を必要とし得る。したがって、自然僧帽弁の形状を模倣している弁本体部の形状は、有利である。上で説明されているように、いくつかの実施形態において、本明細書で提示されている弁アセンブリの外周は、一般的に自然僧帽弁のD字形弁輪と相関するD字形の周を有する。したがって、自然弁尖から弁本体部の封止表面までの移動距離は、最小にされ(またはいくつかの実装では本質的になくされ)得、それによって封止は強化され得る。
それに加えて、有効な弁尖弁本体部間封止は、人工弁本体部の全周に沿った自然弁尖と人工弁本体部との間の連続する接合を示す。以下でさらに説明されているように、本明細書で提示されている人工僧帽弁の輪郭は、自然弁尖と接触して人工弁の全周に沿って連続する接合を形成するように設計される。これを達成するために、いくつかの実施形態において、人工僧帽弁のいくつかの領域の輪郭は、同じ弁の他の領域の輪郭と異なる(たとえば、自然僧帽弁の様々な部分における異なる解剖学的特徴と呼応する)。
図25を参照すると、心臓10の側面断面心房図は、僧帽弁17、大動脈弁510、三尖弁520、および肺動脈弁530を示している。図8を参照して上で説明されているように、僧帽弁17は、前尖20、後尖22(内側弁帆24a、中央弁帆24b、および外側弁帆24cを含む)、左線維三角134a、および右線維三角134bを含む。
人工僧帽弁と自然僧帽弁との間の封止に関して、自然僧帽弁17の様々な部分の異なる解剖学的特徴により、僧帽弁17を、僧帽弁17の全体を一緒に含む3つの異なる封止領域を有するものとして考えることが有利になる。3つの異なる封止領域は、前領域25a、後領域25b、および2つの交連領域25cである。前領域25aは、左三角134aと右三角134bとの間で一般に直線的に延在する。後領域25bは、中央弁帆24bと外側弁帆24aおよび内側弁帆24cの後部分とを含む。交連領域25cは、前領域25aと後領域25bとの間に延在する。交連領域25cは、一般的に、交連30aおよび30bと、外側弁帆24aおよび内側弁帆24cの前部分とを包含する。これら3つの封止領域25a、25b、および25cは、図28〜図33に関して再び参照される。
図26を参照すると、自然僧帽弁17の断面の概略図は、僧帽弁輪28の配置を示している。自然僧帽弁17の弁輪28に関する人工弁上の封止表面の相対的な幾何学的配向を定量化するために使用され得る3つの幾何学的変数(S、W、およびH)も示されている。本明細書で使用されているように、「封止表面」という用語は、自然僧帽弁17の構造(特に、自然僧帽弁17の弁尖)と封止接触することを意図されている人工弁上の表面領域として定義される。したがって、封止表面は、弁尖弁本体部間封止を円滑にするために使用される人工弁上の領域である。
幾何学的変数Sは、弁輪28から隣接する人工弁フレームワーク表面までの径方向距離を定量化する変数である。負のS値は、弁輪28および隣接する人工弁表面が互いに相隔てて並ぶことを示す。たとえば、負の2mmのS値は、弁輪28と隣接する人工弁表面との間に2mmの空間があることを示す。Sがゼロに等しいとき、これは、弁輪28および隣接する人工弁表面は、線間嵌めの関係で互いに接触していることを示す。Sが正数であるときには、これは、弁輪28および隣接する人工弁表面が締まり嵌めの関係にあることを示す。言い換えると、Sが正数であるときには、隣接する人工弁表面によってある程度の圧縮力が弁輪28に印加されている。
幾何学的変数Hは、人工弁上の封止表面の上限(上側縁)から下限(下側縁)までの距離を定量化する変数である。H値は、(図に関して)下方に測定した値である。たとえば、10mmのH値は、特定の封止領域について、人工弁上の封止表面が封止表面の上限より10mm低いところで終端することを示す。別の例では、上限が弁輪28のところにあるときに、7mmのH値は、封止表面の下限が弁輪28よりも7mm低いことを示す。一般に、人工弁上の封止表面の上限は、弁輪28のところ、弁輪28よりもわずかに上、または弁輪28よりもわずかに下のいずれかである(たとえば、いくつかの実施形態では弁輪28よりも約2mm上または約2mm下)。
幾何学的変数Wは、人工弁上の封止表面の上限から封止表面の下限までの径方向距離を定量化する変数である。負のW値は、封止表面の下限が、封止表面の上限と比較して径方向内向きに位置決めされることを示している(たとえば、封止表面の少なくとも一部は裾広がりであるか、または遠位端で内向きに弓なりに曲がる)。正のW値は、封止表面の下限が、封止表面の上限と比較して径方向外向きに位置決めされることを示している(たとえば、封止表面の少なくとも一部は裾広がりであるか、または遠位端で外向きに弓なりに曲がる)。ゼロのW値は、封止表面の下限が、封止表面の上限と同じ径方向位置に位置決めされることを示す。
図27を参照すると、いくつかの実施形態により、弁アセンブリ300の前側面図は前封止表面360aを含んでいる。図示されている実施形態において、前封止表面360aは、弁アセンブリ300の前側部の下側部分にまたがる。前封止表面360aは、自然僧帽弁の構造と封止接触することを意図されている人工弁アセンブリ300の前側部上の表面領域を含む。前封止表面360aは、弁フレーム301からの構造支持ならびに組織表面361aからなる。前組織表面361aは、封止接触面高さ(H)を備えるが、その柔軟性により、後で説明されるように、LVOT閉塞の量が低減される。たとえば、前封止表面360aの少なくとも一部は、自然僧帽弁の前尖と封止接触することを意図されている。
図28を参照すると、いくつかの実施形態により、弁アセンブリ300の後側面図は後封止表面360bを含んでいる。図示されている実施形態において、後封止表面360bは、弁アセンブリ300の後側部の下側部分にまたがる。後封止表面360bは、自然僧帽弁の構造と封止接触することを意図されている人工弁アセンブリ300の後側部上の表面領域を含む。たとえば、後封止表面360bの少なくとも一部は、自然僧帽弁の後尖と封止接触することを意図されている。
図29を参照すると、いくつかの実施形態により、弁アセンブリ300の交連(外側)側面図は交連封止表面360cを含んでいる。この図は、弁アセンブリ300の前側部に軽く付勢される。図示されている実施形態において、交連封止表面360cは、弁アセンブリ300の交連側部の下側部分にまたがる。交連封止表面360cは、自然僧帽弁の構造と封止接触することを意図されている人工弁アセンブリ300の外側部上の表面領域を含む。たとえば、交連封止表面360cの少なくとも一部は、自然僧帽弁の後尖の内側弁帆または外側弁帆と、および自然僧帽弁の交連領域の弁尖組織と封止接触することを意図されている。
図30を参照すると、いくつかの実施形態による自然僧帽弁弁輪と人工僧帽弁の前封止表面との間の幾何学的関係は、図26を参照して上で説明されているようにS、H、およびWの値によって表すことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の前封止表面のS値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルまでの範囲内にある。言い換えると、自然僧帽弁弁輪に関する前封止表面のS値は、ほぼ線間接触から約2ミリメートルの干渉の範囲内にある。この文脈において、締まり嵌めは、必ずしも、自然弁弁輪が干渉の結果として引き伸ばされるか、または変形されることを意味しないことを理解されたい。それどころか、むしろ、人工弁アセンブリは、その無拘束の完全に拡張されたサイズまで拡大することを弁輪によって阻止される。図示されている実施形態において、S値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルの範囲内にあるが、いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルから正の約1ミリメートル、または負の約1ミリメートルから正の約3ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約4ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルよりも負であるか、または正の約4ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の前封止表面のH値は、約14ミリメートルである。言い換えると、いくつかの実施形態において、前封止表面の上縁から前封止表面の下縁までの距離は、約14ミリメートルである。より具体的には、前封止表面のH値は、(1)上部分HLVOTと(2)下部分HTISSUEの2つの部分に分割され得る。HLVOT値は、一般的に、前封止表面360aに沿った様々な場所における前封止表面の上縁から弁フレーム301の下端までの距離に対応する(図27参照)。HTISSUE値は、前封止表面360aに沿った様々な場所における弁フレーム301の下端からそれらの場所における前組織表面361aの下端までの距離に対応する。図示されている実施形態において、HLVOT値およびHTISSUE値は、互いに等しく、いくつかの実施形態において、HLVOT値とHTISSUE値との比は約3:1、約2:1、約1.5:1、約1:1.5、約1:2、または約3:1である。
図示されている実施形態において、合計H値は、約14ミリメートルであるが、いくつかの実施形態において、H値は、約8ミリメートルから約10ミリメートル、または約10ミリメートルから約12ミリメートル、または約12ミリメートルから約14ミリメートル、または約14ミリメートルから約16ミリメートル、または約13ミリメートルから約15ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、H値は、約8ミリメートル未満または約16ミリメートル超であり得る。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の前封止表面のW値は、負の約2ミリメートルである。言い換えると、いくつかの実施形態において、人工弁上の前封止表面の上縁から前封止表面の下縁までの径方向距離は、負の約2ミリメートルである。負の2ミリメートルのW値は、前封止表面の下側縁が、前封止表面の上縁と比較して径方向内向きに約2ミリメートルのところに位置決めされることを示している。これは、また、弁輪下前弁アセンブリが、弁本体部輪郭線362aによって示されているように、裾広がりであるか、または内向きに弓なりに曲がっていることを示している。図示されている実施形態において、W値は、負の約2ミリメートルであるが、いくつかの実施形態において、W値は、負の約6ミリメートルから負の約4ミリメートル、または負の約4ミリメートルから負の約2ミリメートル、または負の約2ミリメートルから約0ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約2ミリメートル、または負の約3ミリメートルから負の約1ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、W値は、負の約6ミリメートルよりも負であるか、または正の約2ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
図31を参照すると、いくつかの実施形態による自然僧帽弁弁輪と人工僧帽弁の交連封止表面との間の幾何学的関係は、図26を参照して上で説明されているようにS、H、およびWの値によって表すことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の交連封止表面のS値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルまでの範囲内にある。言い換えると、自然僧帽弁弁輪に関する交連封止表面のS値は、ほぼ線間接触から約2ミリメートルの干渉の範囲内にある。この文脈において、締まり嵌めは、必ずしも、自然弁弁輪が干渉の結果として引き伸ばされるか、または変形されることを意味しないことを理解されたい。それどころか、むしろ、人工弁アセンブリは、その完全に拡張されたサイズまで拡大することを弁輪によって阻止される。図示されている実施形態において、S値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルの範囲内にあるが、いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルから正の約1ミリメートル、または負の約1ミリメートルから正の約3ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約4ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルよりも負であるか、または正の約4ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の交連封止表面のH値は、約8ミリメートルから約14ミリメートルまでの範囲内にある。言い換えると、いくつかの実施形態において、自然弁輪から交連封止表面の下側(下)縁までの距離は、約8ミリメートルから約14ミリメートルの範囲内である。約8ミリメートルから約14ミリメートルの、この範囲は、少なくとも部分的に、交連封止表面の一部を含む交連角364(図29参照)の形状の結果である。したがって、交連封止表面の下側縁は、交連封止表面の形状の性質だけで交連封止表面の横幅にわたって変化する。図示されている実施形態において、H値は、約8ミリメートルから約14ミリメートルの範囲内にあるが、いくつかの実施形態において、H値は、約4ミリメートルから約10ミリメートル、または約6ミリメートルから約12ミリメートル、または約8ミリメートルから約14ミリメートル、または約10ミリメートルから約16ミリメートル、または約7ミリメートルから約15ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、H値は、約4ミリメートル未満または約15ミリメートル超であり得る。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の交連封止表面のW値は、負の約2ミリメートルである。言い換えると、いくつかの実施形態において、人工弁上の交連封止表面の上(上側)縁から交連封止表面の下(下側)縁までの径方向距離は、負の約2ミリメートルである。負の2ミリメートルのW値は、交連封止表面の下側縁が、交連封止表面の上側縁と比較して径方向内向きに約2ミリメートルのところに位置決めされることを示している。これは、また、弁輪下交連弁アセンブリが、弁本体部輪郭線362bによって示されているように、裾広がりであるか、または内向きに弓なりに曲がっていることを示している。図示されている実施形態において、W値は、負の約2ミリメートルであるが、いくつかの実施形態において、W値は、負の約6ミリメートルから負の約4ミリメートル、または負の約4ミリメートルから負の約2ミリメートル、または負の約2ミリメートルから約0ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約2ミリメートル、または負の約3ミリメートルから負の約1ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、W値は、負の約6ミリメートルよりも負であるか、または正の約2ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
図32を参照すると、いくつかの実施形態による自然僧帽弁弁輪と人工僧帽弁の後封止表面との間の幾何学的関係は、図26を参照して上で説明されているようにS、H、およびW値によって表すことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の後封止表面のS値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルまでの範囲内にある。言い換えると、自然僧帽弁弁輪に関する後封止表面のS値は、ほぼ線間接触から約2ミリメートルの干渉の範囲内にある。この文脈において、締まり嵌めは、必ずしも、自然弁弁輪が干渉の結果として引き伸ばされるか、または変形されることを意味しないことを理解されたい。それどころか、むしろ、人工弁アセンブリは、その完全に拡張されたサイズまで拡大することを弁輪によって阻止される。図示されている実施形態において、S値は、約0ミリメートルから正の約2ミリメートルの範囲内にあるが、いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルから正の約1ミリメートル、または負の約1ミリメートルから正の約3ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約4ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、S値は、負の約2ミリメートルよりも負であるか、または正の約4ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の後封止表面のH値は、約8ミリメートルである。言い換えると、いくつかの実施形態において、自然弁輪から後封止表面の下側(下)縁までの距離は、約8ミリメートルである。図示されている実施形態において、H値は、約8ミリメートルであるが、いくつかの実施形態において、H値は、約4ミリメートルから約6ミリメートル、または約6ミリメートルから約8ミリメートル、または約8ミリメートルから約10ミリメートル、または約10ミリメートルから約12ミリメートル、または約7ミリメートルから約9ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、H値は、約4ミリメートル未満または約12ミリメートル超であり得る。
いくつかの実施形態において、人工僧帽弁の後封止表面のW値は、正の約2ミリメートルである。言い換えると、いくつかの実施形態において、人工弁上の後封止表面の上側(上)縁から後封止表面の下側(下)縁までの径方向距離は、正の約2ミリメートルである。正の2ミリメートルのW値は、後封止表面の下側縁が、後封止表面の上側縁と比較して径方向外向きに約2ミリメートルのところに位置決めされることを示している。これは、また、弁輪下後弁アセンブリが、弁本体部輪郭線362cによって示されているように、裾広がりであるか、または外向きに弓なりに曲がっていることを示している。図示されている実施形態において、W値は、正の約2ミリメートルであるが、いくつかの実施形態において、W値は、負の約4ミリメートルから負の約2ミリメートル、または負の約2ミリメートルから約0ミリメートル、または約0ミリメートルから正の約2ミリメートル、または正の約2ミリメートルから正の約4ミリメートル、または正の約1ミリメートルから正の約3ミリメートルの範囲内にある。いくつかの実施形態において、W値は、負の約2ミリメートルよりも負であるか、または正の約3ミリメートルよりも正であるものとしてよい。
図33を参照すると、収縮期に、大動脈弁510は、左心室18から流れ出る血液を受けている。血液は、左室流出路(LVOT)512を経由して大動脈弁510に流れる。いくつかの状況において、自然僧帽弁17内にインプラントされている人工僧帽弁600(簡単のためアンカーアセンブリなしで示されている)は、閉塞514によって表されているように、LVOT512を閉塞し得、その結果、左心室18からの血液放出が低減され得る。本明細書で説明されているように、本開示において提示されている人工僧帽弁は、LVOT閉塞514を低減するか、またはなくすように構成され得る。
図34および図35を参照すると、血流および血流閉塞の視覚化を高めるために左心室内に蛍光染料が注入された後に第1の蛍光透視像700および第2の蛍光透視像730が得られた。これらの画像は、左心室から大動脈に流れ左室流出路(LVOT)を通る血液を示している。
第1の蛍光透視像700は、人工僧帽弁720からLVOT閉塞によって引き起こされる血流710の低下を生じている領域を示している。第2の蛍光透視像730は、LVOTを通る改善された血流740を示している。血流740の改善は、人工僧帽弁750に起因する閉塞が少なくなる結果であるとしてよい。たとえば、いくつかの実施形態において、人工僧帽弁750は、弁750のより小さい構造が自然僧帽弁輪の下に来るように位置決めされるか、または設計されるものとしてよく、その結果、LVOT内の弁750の構造がより小さくなる。それに加えて、人工僧帽弁750は、LVOTから離れるようにこの構造にテーパーを付けるか、弓なりに曲げるか、または整形することなどによって、弁750のより小さい構造がLVOT内に入るように位置決めされるか、または設計され得る。
再び図33を参照すると、大動脈弁510に面する人工僧帽弁600の一部分は、前封止表面625aである。したがって、LVOT512に関する前封止表面625aの幾何学的配向は、人工僧帽弁600が閉塞514を引き起こすかどうかに関係する要因である。
図36も参照すると、LVOT512、自然僧帽弁輪28、および前封止表面の変数(図25、図26、および図30を参照して説明されているような、S値、H値、およびW値)の間の幾何学的関係は、LVOT閉塞514を定量化するために使用され得る。LVOT512と自然僧帽弁輪28との間の角度は、θで表されている。R値は、自然弁輪に相対的な人工弁の予想される/理想的な配置からの人工弁位置決め変動を考慮する変数である。
幾何学を使用することで、LVOT閉塞514の距離(以下の式の中で「O」で表されている)は、次の式を使用して計算され得る。
式#1:
ここで、
Oは、LVOT閉塞の計算された距離であり、
Rは、自然弁輪から前封止表面の頂部までの距離であり、
θは、僧帽弁弁輪とLVOTとの間の角度であり、
Wは、人工弁上の封止表面の上側縁から封止表面の下側縁までの径方向距離であり、
HLVOTは、人工弁上の封止表面の上縁から封止表面の下側構造(フレーム)縁までの距離であり、
Sは、僧帽弁輪から隣接する人工弁表面までの径方向距離である。
次の例は、上の式#1を例示するために用意されている。
例#1および#5を例示#2、#3、および#4と比較することによって、θの方が大きいときにO(LVOT閉塞)は小さくなる傾向を有することが確認され得る。例#3および例#4を比較することによって、HLVOTを大きくすると、結果としてOも高くなる傾向があることがわかる。例#2および例#3を比較することによって、より大きいS値の効果は、より負であるW値によって相殺され得ると決定することができる。要約すると、当業者であれば、これらの教示を使用して、許容可能なO(LVOT閉塞)を得るために(患者の解剖学的構造に基づき)与えられたθについてR値、S値、HLVOT値、およびW値を選択することができる、ということである。
図37および図38を参照すると、アンカーアセンブリ200は、弁尖20および22ならびに腱索40がアンカーアセンブリ200によって実質的に妨げられていない間に、足部220a、220b、220c、および220dが自然僧帽弁17の弁輪下溝19内に据え付けられるように自然僧帽弁17と係合させることができる。上で説明されているように、アンカーアセンブリ200は、自然弁17がアンカーアセンブリ200の留置の前に行っていたとおりに機能し続けることができるように、自然弁17に実質的に干渉することなく、自然僧帽弁17内にインプラントされるように設計される。それを達成するために、弁尖20および22ならびに腱索40、特に、前尖20に付着している腱索40は、アンカーアセンブリ200によって実質的に妨げられないことが必要である。
いくつかの実装において、僧帽弁17の解剖学的特徴部に関するハブ210の位置決めは、実質的に妨げられていない弁尖20および22ならびに腱索40を円滑にすることに関連している。たとえば、左心室18内のハブ210の深さ810は、関連性のある1つの考慮事項である。弁尖20および22ならびに腱索40への妨害を実質的に防ぐために、深さ810は、少なくとも僧帽弁17の接合深さよりもわずかに下方であるべきである。接合深さは、僧帽弁17の弁輪から自然弁尖20と22との間の接合の領域までの最大の垂直方向距離である。したがって、ハブ210を接合深さよりも下方の位置に位置決めすることで、実質的に妨げられていない弁尖20および22ならびに腱索40が円滑にされる。いくつかの実装において、深さ810は、約14mmから約20mm、または約10mmから約16mm、または約12mmから約18mm、または約16mmから約22mmの範囲内にある。いくつかの実装において、深さ810は、約10mm未満または約22mm超である。
弁尖20と22との間の接合の線(たとえば、図8に示されている接合の線32)に関するハブ210の位置決めも、実質的に妨げられていない弁尖20および22ならびに腱索40を円滑にすることに関連している。たとえば、いくつかの実装において、一般的に接合の線と垂直方向にアライメントするようにハブ210を位置決めすることは、弁尖20および22ならびに腱索40への妨害を実質的に防ぐ働きをする。
いくつかの実装において、自然僧帽弁17に関する左前弁輪下支持アーム230a、左後弁輪下支持アーム230b、右後弁輪下支持アーム230c、および右前弁輪下支持アーム230dの角度位置決めは、実質的に妨げられていない弁尖20および22ならびに腱索40を円滑にすることに関連している。いくつかの実装において、弁輪下支持アーム230a、230b、230c、および230dは、左心室長軸(LAX)840に関して対称的に配置構成される。すなわち、LAX840は、前支持アーム角度830と後支持アーム角度820を二等分する。
前尖20および腱索40への妨害を最低限度に抑えるために、前支持アーム220aおよび220dは、本質的に腱索40の間に位置決めされる。いくつかの実施形態において、前支持アーム角度830は、約100°から約135°、または約80°から約120°、または約120°から約160°の範囲内にある。後尖22および腱索40への妨害を最低限度に抑えるために、いくつかの実装において、後支持アーム220bおよび220cは、本質的に腱索40の間に延在し得る。いくつかの実施形態において、後支持アーム角度820は、約50°から約120°、または約40°から約80°、または約60°から約100°、または約80°から約120°、または約100°から約140°の範囲内にある。
これで本発明の多数の実施形態が説明された。それでもなお、本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、下記の請求項の範囲内に収まる。