JP6725321B2 - フェノール樹脂発泡体及びフェノール樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]フェノール樹脂と、発泡剤と、炭素充填剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、
内部のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が75以下である、フェノール樹脂発泡体。
[2]前記内部のCIE1976L*a*b*色空間におけるa*が12以下であり、b*が12以下である、[1]に記載のフェノール樹脂発泡体。
[3]露出面と、前記内部との色差ΔEeiが25以下である、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体。
[4]前記炭素充填剤の平均粒子径が1μm以上100μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[5]前記炭素充填剤の含有量が、フェノール樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂と、発泡剤と、炭素充填剤とを含む。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、例えば平板状である。
フェノール樹脂発泡体の大きさは特に限定されず、用途等を勘案して適宜決定される。例えば、フェノール樹脂発泡体の大きさは、幅910mm以上1000mm以下×長さ1820mm以上3300mm以下×厚さ12mm以上200mm以下とされる。
フェノール樹脂発泡体の形状は平面視で矩形状、円形等であってもよい。
フェノール樹脂発泡体は少なくとも一方の面に面材を有していてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒および界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノールおよびこれらの変性物等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。フェノール樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合されて用いられてもよい。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
発泡剤は、炭化水素、又はハロゲン化炭化水素から選択でき、これらを併用しても良い。特に、ハロゲン化不飽和炭化水素は難燃性であるため、イソペンタン等の脂肪族炭化水素を用いる場合に比べて、フェノール樹脂発泡体の難燃性が優れる。
炭化水素としては、炭素数が4以上6以下の環状分子構造又は炭素数4以上6以下の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化不飽和炭化水素であってもよいし、ハロゲン化飽和炭化水素であってもよい。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素と2重結合を含むものが挙げられ、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−3−Z6)等の特表2009−513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
塩素化炭化水素は、フェノール樹脂発泡体の発泡剤として従来用いられているが、1種単独では、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が大きく、熱伝導率が高くなる。フッ素化不飽和炭化水素を併用することで、平均気泡径が小さく、熱伝導率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性が向上する。また、ハロゲン化不飽和炭化水素は燃焼性が低いため、フェノール樹脂発泡体の難燃性が向上する。
塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも分子量が小さい傾向がある。量が同じであれば、分子量が小さい方が、発泡したときの体積が大きい。そのため、塩素化炭化水素の割合が多い方が、少量の発泡剤で充分に発泡させやすい。また、塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも安価な傾向がある。これらの観点から、塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.9:0.1〜5:5であることが好ましく、9:1〜7:3であることがより好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が低いほど、優れた断熱性を保ちつつコストを低くできる。
一方で、ハロゲン化不飽和炭化水素は塩素化炭化水素よりも熱伝導率が低い傾向がある。そのため、より優れた断熱性を得る観点から、塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=5:5〜0.1:9.9であることが好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が高いほど、熱伝導率が低くなり、断熱性が高まる。
また、それらの沸点の差は2℃以上30℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下がより好ましい。沸点の差が上記上限値より大きいと、先にガス化して気泡核を形成したハロゲン化不飽和炭化水素が、より沸点の高い塩素化炭化水素がガス化するまでに気泡から抜けてしまい、発泡が不十分となるおそれがある。沸点の差が上記下限値より小さいと、十分に気泡核を形成しないまま塩素化炭化水素が発泡してしまい、気泡径が粗大になるおそれがある。
そのため、例えば、塩素化炭化水素として沸点36℃であるイソプロピルクロライドを選択した場合には、ハロゲン化不飽和炭化水素としては、沸点が6℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのが好ましく、常温付近での取り扱いのしやすい点で、14℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのがより好ましい。
フェノール樹脂発泡体に含まれる2種以上の発泡剤の組成は、たとえば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
予め発泡剤の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。発泡剤の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他の発泡剤の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
炭素充填剤は、変色を抑制するために使用される。
炭素充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素が主成分の黒色粉末が挙げられる。
黒鉛としては、鉱物名で石墨とされる天然黒鉛、または各種の人造黒鉛のいずれも利用することができる。天然黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛(塊状黒鉛とも称されるVein Graphite)および鱗片状黒鉛(Flake Graphite)のいずれを利用することもできる。また人造黒鉛は、無定形炭素を熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般炭素材料に使用される人造黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、および熱分解黒鉛などを含む。一般炭素材料に使用される人造黒鉛は、通常石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として黒鉛化処理により製造される。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等を用いることができる。
炭素充填剤の平均粒子径は、1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上60μm以下がより好ましく、3μm以上20μm以下であることが最も好ましい。
上記数値範囲内とすることにより、フェノール樹脂組成物に添加した際に分散しやすく、また、平均粒子径が大きいものに比べて単位重量当たりの粒子数が多くなるため、より色変化を抑えることができる。
なお、平均粒子径は、JIS R 1629に準拠し、レーザー回折式粒度分布計にて測定することができ、例えば日機装社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いることができる。
炭素充填剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
上記数値範囲内とすることにより、色変化を抑えることができる、0.5質量部未満であると色変化を抑えることができず、一方、30質量部より多い量を加えてもこれ以上の色変化の抑制に効果がないばかりか、フェノール樹脂の粘度が上昇して成型不良となる恐れがある。
炭素充填材をフェノール樹脂組成物に添加する際、粉末状の炭素充填材のまま添加しても良いが、分散溶媒とフェノール樹脂発泡体とを混合し、この混合物をフェノール樹脂に添加しても良い。分散溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、レゾルシノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、フタル酸やアジピン酸と多価アルコールとを縮合したポリエステルポリオール、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールなどのポリオール類、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、アセトンなどの有機溶媒、さらにはこれらを混合したものなどが挙げられる。炭素充填材のみをフェノール樹脂に添加するよりも、フェノール樹脂と混合しやすく、炭素充填材の分散性を向上することができる。
炭素充填材とフェノール樹脂組成物との混合方法は特に限定されず、ハンドミキサーやピンミキサー等を利用して混合してもよいし、二軸押し出し機、混練機等を用いても良い。炭素充填材をフェノール樹脂に混合する段階も特に限定されず、フェノール樹脂を合成する際、原料と共に添加しておいても良いし、合成終了後、各添加剤を加える前後でも良い。粘度調整した後でも良いし、界面活性剤または/ および発泡剤と共に混合しても良い。また、炭素充填材はフェノール樹脂、発泡剤、及び酸硬化触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物に混合しても良い。更に、炭素充填材はフェノール樹脂に必要量混合しておいても良いし、高濃度の炭素充填材入りフェノール樹脂をマスターバッチとして用意しておき、フェノール樹脂に必要量添加しても良い。
酸触媒は、フェノール樹脂を硬化させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物およびシリコーン系界面活性剤のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体である。ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えばシロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端それぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は2または3が好ましい。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
他の成分としては、発泡性フェノール樹脂組成物の添加剤として公知のものを用いることができ、例えば尿素、可塑剤、充填剤(例えば、無機フィラー)、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより発泡性フェノール樹脂組成物を調製できる。
明度指数L*を上記上限値以下とすることにより、経時的な色変化をより抑制しやすくなる。
明度指数L*は、使用する炭素充填剤の量、種類、平均粒子径等により調節することができる。
本明細書において「内部」とは、光や外気にさらされるフェノール樹脂発泡体の表面以外の部分のことを意味する。例えば、厚さ方向において表面から厚さの2/9の領域又は表面から20mmの領域のいずれか距離の短い方を除き、かつ、長さ方向及び幅方向においては端部から20mm中央側の領域を除いた部分である。より具体的には、厚さ45mm、長さ1820mm、幅910mmの板状のフェノール樹脂発泡体の場合、「内部」とは、厚さ方向では上表面から10mm中央側の位置から下表面から10mmの位置までの範囲、長さ方向では端部から20mm中央側の位置から他端の20mm中央側の位置までの範囲、幅方向では端部から20mm中央側の位置から他端の20mm中央側の位置までの範囲である。特に、厚さ方向、幅方向、長さ方向の全ての方向について中央となる位置(厚さ方向:表面から22.5mmの位置、長さ方向:端部から910mmの位置、幅方向:端部から405mmの位置)を含む部分である。
本明細書において、CIE1976L*a*b*色空間におけるL*,a*,及びb*は、国際照明委員会(CIE)の規格であるCIE1976((L*, a*, b*)色空間を基準とするものである。L*a*b*表色系では、明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*、b*で表す。a*、b*は、色の方向を示しており、a*は赤方向、−a*は緑方向、そしてb*は黄方向、−b*は青方向を示す。数値が大きいほど色あざやかであり、数値が小さいほどくすんだ色になる。
内部のL*,a*,及びb*の測定には、図1で示すように、面材2を有フェノール樹脂発泡体1の中央部分を、幅20mm×長さ20mm×厚さ20mmの大きさで領域3を切り取って試験片とする。
a*が上記上限値以下であることにより、経時的な色変化をより抑制しやすくなる。
b*が上記上限値以下であることにより、経時的な色変化をより抑制しやすくなる。
a*及びb*は、使用する炭素充填剤の量、種類、平均粒子径等により調節することができる。
色差ΔEeiは、下記式から算出することができる。
ΔEei=√((Le−Li)2+(ae−ai)2+(be−bi)2)
(式中、Li、ai、biはそれぞれ内部における明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表し、Le、ae、beは露出面における明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表す。)
色差ΔEeiが上記上限値以下であることにより、フェノール樹脂発泡体を切断して用いた際に露出面と内部(切断面)との色の差を小さくし、継時劣化による色変化を目立たなくすることができる。
本明細書において「露出面」とは、光や外気にさらされて色変化が生じている部分を意味する。
フェノール樹脂発泡体が面材を有する場合、露出面とは、面材を有しない面(例えば図1の側面4)であって、光にさらされて色変化が生じている部分を意味する。具体的には、厚さ45mm、長さ1820mm、幅910mmの板状のフェノール樹脂発泡体の場合、小口部分(図1の側面4)を指す。
色差ΔEh0は、下記式から算出することができる。
ΔEh0=√((Lh−L0)2+(ah−a0)2+(bh−b0)2)
(式中、L0、a0、b0はそれぞれ紫外線照射時間0時間のときの明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表し、Lh、ah、bhは紫外線h時間照射後における明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表す。)
色差ΔEeiは、使用する炭素充填剤の量、種類、平均粒子径等により調節することができる。
上記数値範囲内であれば、低い熱伝導率を長期に亘って保つことができる。
独立気泡率は、JIS K7138−2006に準拠して測定される。
平均気泡径は以下の方法で測定できる。
<平均気泡径>
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当りの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
熱伝導率は、JIS A 9511:2009に従い測定することができる。
LOIは、規定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23℃±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度%(体積分率)であり、燃焼性の指標である。LOIが大きいほど燃焼性が低いことを示し、一般に、LOIが26%以上であれば難燃性を有すると判断されている。
LOIはJIS K 7201−2:2007に従い測定することができる。
脆性は、JIS A 9511:2003に従い測定することができる。
面材としては、特に制限されず、織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙やクラフト紙等の紙類、ポリエステル繊維不織布、ポリプロピレン繊維不織布、ナイロン繊維不織布などの合成繊維不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。
面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。両面に設ける場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、後述する連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
面材は、発泡成形の後、接着剤を用いてフェノール樹脂発泡体に貼り合わせて設けてもよい。
なお、金属板、金属箔などの通気性の低い面材を使用することで、発泡体の表層において発泡剤ガスと空気が置換して熱伝導率が悪化するのを抑えることができるが、本発明では表層の独立気泡率を向上させたことで、合成繊維不織布や紙類等の通気性の高い面材であっても熱伝導率が悪化するのを抑えることができる。また、面材として酸化チタンが配合されたものを用いることで、面材の熱伝導度を向上させて表面の温度ムラを無くすことができ、表層の独立気泡を向上させることができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、上記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることにより製造できる。
本発明のフェノール樹脂発泡体の製造は、公知の発泡成形法を利用して行うことができる。以下に一例を挙げる。
吐出装置は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部と、混合された原料(発泡性フェノール樹脂組成物)を吐出するための、流れ方向と直交する方向に沿って配置された複数のノズルとを備える。
発泡成形装置は、フレーム部および加熱手段を備える。フレーム部は、フェノール樹脂発泡体の断面形状に対応した空間が形成されるように上下左右に配置されたコンベア(下部コンベア、上部コンベア、左側コンベア、右側コンベア)を備える。下部コンベアおよび上部コンベアによって、上下方向の発泡が規制され、左側コンベアおよび右側コンベアによって、左右方向の発泡が規制されるようになっている。加熱手段によって、フレーム部を通過する発泡性フェノール樹脂組成物を加熱し、発泡、硬化できるようになっている。かかる発泡成形装置としては、例えば、特開2000−218635号公報に記載のものが挙げられる。
<実施例1>
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部に、平均粒子径5μmの黒鉛(日本黒鉛株式会社製、商品名:J−CPB)1質量部、界面活性剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)4質量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4質量部を加えて混合し、20℃で8時間放置した。
このようにして得られた混合物109質量部に対し、発泡剤として、イソペンタン:イソプロピルクロライド=15:85の混合物10.5質量部を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、混合機にて攪拌、混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製し、複数の吐出口を有するマルチポート分配管を通して、移動する下面材上に供給した。なお、混合機(ミキサー)は、特開平10−225993号に開示されたものを使用した。即ち、混合機の上部側面に、フェノール樹脂組成物、並びに、発泡核剤を含む発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に酸性硬化剤の導入口を備えている混合機を使用した。攪拌部以降は発泡体を吐出するためのノズルに繋がっている。即ち、混合機は、酸性硬化剤導入口までを混合部(前段)、酸性硬化剤導入口〜攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部〜ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。
下面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物の温度は、発泡性フェノール樹脂組成物が面材上に吐出される位置において、吐出された発泡性フェノール樹脂組成物の中心部に近い内部位置に温度計を差し込んで測定した。測定された発泡性フェノール樹脂組成物の温度は37℃であり、該発泡性フェノール樹脂組成物は、上面材で被覆されると同時に、上下面材で挟み込むようにして、40℃のオーブン(第1温調区間;滞留時間4分)へ導かれ、複数のロールを利用して均すように予成形された後、83℃のスラット型ダブルコンベアを有するオーブン(第2温調区間)へ送られた。そして、予成形した発泡性フェノール樹脂組成物を、スラット型ダブルコンベアにおいて15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。なお、スラット型ダブルコンベアでは、上下方向から面材を介して適度に圧力を加えることで板状に成形した。得られたフェノール樹脂発泡体を幅910mm、長さ1820mmに切断し、厚さ45mmのフェノール樹脂発泡板を作製した。なお、上下の面材としてはポリエステル製不織布を使用した。
黒鉛を3質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
黒鉛を5質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
黒鉛として平均粒子径が20μmである黒鉛(日本黒鉛株式会社製、商品名:CPB)に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
黒鉛として平均粒子径が60μmである黒鉛(日本黒鉛株式会社製、商品名:FB−150)に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
発泡剤をノルマルペンタンに変更した以外は実施例5と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
発泡剤をノルマルペンタンに変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をイソペンタン:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン=50:50の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンに変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をイソプロピルクロライド:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン=25:75の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をイソプロピルクロライド:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン=50:50の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をイソプロピルクロライド:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン=75:25の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
発泡剤をイソプロピルクロライド:トランス−1−クロロ−3 3 3−トリフルオロプロペン=80:20の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
発泡剤をシクロペンタン:トランス−1−クロロ−3 3 3−トリフルオロプロペン=80:20の混合物に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
黒鉛を使用しないこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
界面活性剤をシリコーン系界面活性剤に変更し、発泡剤をイソプロピルクロライド:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン=85:15の混合物に変更した以外は比較例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
黒鉛を40質量部に変更した以外は実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡板の作製を試みたが、フェノール樹脂組成物をマルチポート分配管から均等に吐出することができず、フェノール樹脂発泡板を成形することができなかった。
各例で得られたフェノール樹脂発泡板について、紫外線を照射した際の色変化について測定した。
図1に示すように、面材2を有するフェノール樹脂発泡板1の中心を含む領域であって、光にさらされていない部分から、幅20mm×長さ20mm×厚さ20mmの大きさの領域3を試験片として切り出した。この試験片を4つ用意し、これらに対して紫外線照射装置(岩崎電気株式会社製、アイスーパーUVテスター SUV−W161)を用いて、50mWcm2の紫外線をそれぞれ0.5時間、1時間、2時間、4時間照射した。紫外線照射後の色を色彩測定器(分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタジャパン株式会社製)と、色彩管理システム「AUCOLOR−7s」(倉敷紡績株式会社製)の組合せ)を用いて測定し、L*、a*、b*を求めた。紫外線照射時間0時間のときの状態を標準とし、下記式よりΔEh0を求めた。
ΔEh0=√((Lh−L0)2+(ah−a0)2+(bh−b0)2)
(式中、L0、a0、b0はそれぞれ紫外線照射時間0時間のときの明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表し、Lh、ah、bhは紫外線h時間照射後における明度L*、赤色方向の色度a*、黄色方向の色度b*を表す。)
黒鉛を使用しなかった比較例1、2は、紫外線照射時間が4時間後のΔEh0が大きい値となり、経時的な色変化を抑制できなかった。
紫外線照射前の明度指数L*が75以上である比較例2は、紫外線照射時間が4時間後のΔEh0が大きい値となり、経時的な色変化を抑制できなかった。
2・・・面材
3・・・領域
Claims (4)
- フェノール樹脂と、発泡剤と、平均粒子径が1μm以上20μm未満である炭素充填剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、
前記炭素充填剤の含有量が、前記フェノール樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下であり、
内部のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が75以下である、フェノール樹脂発泡体。 - 前記内部のCIE1976L*a*b*色空間におけるa*が12以下であり、b*が12以下である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
- 露出面と、前記内部との色差△Eeiが25以下である、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体。
- フェノール樹脂と、発泡剤と、平均粒子径が1μm以上20μm未満である炭素充填剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を第一の面材上に複数の吐出口を有するマルチポート分配管から吐出する工程と、
前記第一の面材上に吐出された前記発泡性フェノール樹脂組成物の上に第二の面材を積層してスラット型ダブルコンベアを有するオーブンにおいて発泡、硬化させる工程と、を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
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