JP6725122B2 - グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造 - Google Patents

グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造 Download PDF

Info

Publication number
JP6725122B2
JP6725122B2 JP2019523913A JP2019523913A JP6725122B2 JP 6725122 B2 JP6725122 B2 JP 6725122B2 JP 2019523913 A JP2019523913 A JP 2019523913A JP 2019523913 A JP2019523913 A JP 2019523913A JP 6725122 B2 JP6725122 B2 JP 6725122B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
graphene sheet
graphene
ozone treatment
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019523913A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2018225736A1 (ja
Inventor
水谷 亘
亘 水谷
侑揮 沖川
侑揮 沖川
雅考 長谷川
雅考 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Publication of JPWO2018225736A1 publication Critical patent/JPWO2018225736A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6725122B2 publication Critical patent/JP6725122B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B7/00Layered products characterised by the relation between layers; Layered products characterised by the relative orientation of features between layers, or by the relative values of a measurable parameter between layers, i.e. products comprising layers having different physical, chemical or physicochemical properties; Layered products characterised by the interconnection of layers
    • B32B7/02Physical, chemical or physicochemical properties
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B9/00Layered products comprising a layer of a particular substance not covered by groups B32B11/00 - B32B29/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B32/00Carbon; Compounds thereof
    • C01B32/15Nano-sized carbon materials
    • C01B32/182Graphene
    • C01B32/194After-treatment
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B1/00Conductors or conductive bodies characterised by the conductive materials; Selection of materials as conductors
    • H01B1/04Conductors or conductive bodies characterised by the conductive materials; Selection of materials as conductors mainly consisting of carbon-silicon compounds, carbon or silicon
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B1/00Conductors or conductive bodies characterised by the conductive materials; Selection of materials as conductors
    • H01B1/06Conductors or conductive bodies characterised by the conductive materials; Selection of materials as conductors mainly consisting of other non-metallic substances
    • H01B1/12Conductors or conductive bodies characterised by the conductive materials; Selection of materials as conductors mainly consisting of other non-metallic substances organic substances
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B13/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing conductors or cables
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B5/00Non-insulated conductors or conductive bodies characterised by their form
    • H01B5/02Single bars, rods, wires, or strips

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Nanotechnology (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)
  • Manufacturing Of Electric Cables (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Description

本発明は、グラフェンシートの導電性改善方法及び改善された導電性が安定化されたグラフェンシートを用いた電極構造に関し、特に、可視光の透過率を下げずに、シート抵抗を引き下げる方法及び該引き下げられたシート抵抗を安定化させる方法に関する。
液晶ディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどに使われる光学的に透明で導電性を持つ透明導電膜には、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)が使用されていたが、レアメタルの資源枯渇問題やフレキシブル性の観点から、ITOに代わる新しい電極材料が求められている。
ITOを用いない透明導電膜としては、無機材料のほか導電性の有機材料を薄膜にしたものもある。しかしながら、有機の透明電極は、ITOよりもシート抵抗が大きく、シート抵抗を下げるために膜厚を大きくすると、透明性が落ちてしまう。
これに対し、炭素のみで構成されたハニカム構造を有するグラフェンは、有機溶媒やエッチング液などに耐性があり、また繰り返しの曲げによっても破壊されにくい安定性を有し、高導電性、大電流密度耐性、電子とホールの高移動度、高熱伝導性、高光透過性、高いフレキシブル性等の優れた特性を有する材料であることから、透明電極用材料として期待され、大きな面を覆うシートを大量に生産する技術が開発され、今後の産業化が望まれている。
中でも、有機EL素子に使用される透明導電膜は、低抵抗かつ高い可視光透過率が必要とされていることから、プラズマCVD法により形成した、Dバンドが低く、結晶性の高い1〜3層のグラフェンシートが好ましい。そして、該グラフェンシートをガラスやプラスチックフィルム等の透明基材に形成する場合は、触媒金属上にCVD法によりグラフェンシートを形成した後、触媒金属上に形成されたグラフェンシートを種々の方法で透明基材上に転写する方法が採用されている。
グラフェンシートを透明電極として用いる際、特に塗布型の有機ELへの適用が困難であるという問題があった。そのひとつの原因として考えられるのは、キャリアのエネルギーが発光材料とマッチしないことである。
そこで、電極と発光材料のミスマッチを調整するためにホール注入層(バッファ層の役目も持たせている)を挿入して、グラフェンシート(陽極)/ホール注入・バッファ層/有機発光層/陰極を基本構造として有機EL素子を作製することが提案されており、該ホール注入・バッファ層の材料として、PEDOT:PSS(ポリチオフェン誘導体(PEDOT)に、ポリスチレンスルホン酸(PSS)をドーピングしたもの)が用いられている。
また、グラフェンは原子レベルの厚みで導電性を保ち、光を透過するものの、ガラスやプラスチックフィルム上に転写されたグラフェンシートは、グラフェンの多結晶状態になっており、さまざまな要因で理論的に予測されるような高い導電性(=低いシート抵抗)が得られないという問題もあり、ガラスやプラスチックフィルム上に転写したグラフェンシートの可視光透過率を下げることなく導電性を改善する(=シート抵抗を下げる)必要がある。
これまでも、グラフェンのシート抵抗を下げるための種々の方法が多数検討されているが、その主流は化学ドーピングである。
現状の化学ドーピング技術は、取り扱いが難しい濃硝酸を用いたり、高価な塩化金や可燃性の高いニトロメタン溶液を用いるなど、安全性やコストに課題が残る。
こうした問題を解決するため、特許文献1では、基板上のグラフェンシートに、シランカップリング剤などの薄膜活性化層を設けることが記載されており、該薄膜活性化層とは、グラフェンシートに対してドーピングする役割を果たし、かつ、グラフェンシートの表面抵抗を下げ、光線透過率を低下させない膜と定義されている。
また、特許文献2では、トリエチルオキソニウムヘキサクロロアンチモン酸などの一電子酸化剤を含有する溶液にグラフェンシートを曝露することにより、グラフェンシートのシート抵抗を、約1/2〜約1/4に低減させることが記載されている。
また、グラフェンにUV光を照射して欠陥を導入するImamura and Saikiの報告がある(非特許文献1,2)。しかしながら、これらの文献では、欠陥の導入を制御することによってグラフェンにあらたな機能が得られるとしているにとどまり、具体的な機能の提示や特性の改善には至っていない。
特開2013−239385号公報 特表2013−536149号公報 特開2016−152217号公報
Gaku Imamura and Koichiro Saiki, Chem. Phys. Lett. 587 (2013) 56-60. Gaku Imamura and Koichiro Saiki, Journal of Physical Chemistry C 118 (2014) 11842-11848. Ki Chang Kwon, Wan Jae Dong, Gwan Ho Jung, Juyoung Ham, Jong-Lam Lee and Soo Young Kim, Solar Energy Materials & Solar Cells 109 (2013) 148-154. Ryuichi Kato, Satoshi Minami, Yoshinori Koga and Masataka Hasegawa, Carbon 96 (2016) 1008-1013. Wataru Mizutani, Kazumi Aoba, Hideki Sakai, Takashi Ohmori and Hayato Hyakutake, e-J. Surf. Sci. Nanotech. 12 (2014) 57-62.
前述のとおり、グラフェンシートを透明電極として用いる際には、グラフェンシートの可視光透過率を下げることなく、そのシート抵抗を下げることが必要である。上述の化学ドーピングは、形成した直後には該要求を満たすが、ドープした物質(ドーパント)は、グラフェンの層間あるいは表面に吸着してグラフェンと電子のやり取りをおこなうものであり、グラフェンとの間で化学的に強力な結合は形成しないため、時間と共にドーパントが失われ、抵抗値が増加するという問題がある。
また、バッファ層としてよく使われている材料であるPEDOT:PSSを、転写したグラフェンシート上に、スピンコート法などの方法により直接成膜すると、グラフェンシートが基材から剥離することがあるという問題もある。
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、可視光の透過率を下げずに、シート抵抗を下げることができる、グラフェンシートの簡便な処理方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、導電性が改善された高性能な電極材料を提供すること、及び高性能な透明電極を利用した有機ELなどのデバイスを提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成すべく様々な検討を行った結果、グラフェンシートのシート抵抗を下げる方法として、UVオゾン処理が有効であることを見いだした。
一般的にUVオゾン処理とは、酸素存在下で試料にUV光を照射することにより、酸素がオゾンとなって被処理物の表面に残る有機物を酸化することで、水や二酸化炭素に変えて取り除くものである。
従来は、UVオゾン処理をグラフェンに適用すると、グラフェンを構成する炭素に酸素が結合して酸化グラフェンに転じ、導電性を失うと考えられていた(非特許文献3)。特許文献3には、グラフェンシートにUVオゾン処理をした際に「シート抵抗にほとんど変化はなかった」と記載されているが、該記載は、この常識に基づいてシート抵抗の増加を懸念した結果の確認であって、導電性が著しく悪化していなければ問題ないと判断した可能性がある。
本発明者が、グラフェンシートへのUVオゾン処理について、さらに詳しく検討したところ、可視光の透過率を下げずに、シート抵抗を下げることができること、特に、UVオゾン処理を酸素雰囲気内で行うことで、シート抵抗を1/2〜1/3程度に減少させることができることが判明した。
また、本発明者の調査により、UVオゾン処理で改善されたシート抵抗は、そのまま大気中に放置すると徐々に増加する、いわゆるリバウンド現象が見られることが判明した。そして、該リバウンド現象は、有機高分子膜でグラフェンシートを覆って複合膜とすることにより防止することができ、これにより、導電性をさらに改善し、高抵抗状態へのリバウンドを防ぎ、低減させた抵抗値を長期にわたって維持することができることも見いだした。
前記特許文献3の記載は、処理直後にはシート抵抗が低下していたとしても、本発明者らが今回発見したリバウンド現象によりシート抵抗を測定するまでに抵抗値が上昇し、見かけ上処理前と大差のない結果が得られたとも考えられる。
さらに、本発明者の調査により、UVオゾン処理の時間が長すぎると、シート抵抗の低下とダメージによる抵抗の上昇が拮抗して、見かけ上ほとんど変化がないという場合があることも判明した。前記特許文献3の記載は、この場合に相当する可能性もある。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]プラズマCVD法で作製されたグラフェンシートをUVオゾン処理することにより、該グラフェンシートのシート抵抗を引き下げた後、該グラフェンシート上に有機高分子膜(ただし、PEDOT:PSS膜を除く)を被覆することにより、引き下げられた低抵抗を安定化させる方法。
[2]前記UVオゾン処理を酸素雰囲気中で行うことを特徴とする[1]に記載の方法。
]前記有機高分子膜が導電性であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の方法。
]プラズマCVD法で作製され、UVオゾン処理されたグラフェンシートと、該グラフェンシート上に被覆された有機高分子膜(ただし、PEDOT:PSS膜を除く)との複合膜からなる電極構造。
]前記有機高分子膜が導電性であることを特徴とする[]に記載の電極構造。
本発明によれば、簡便な処理方法で、グラフェンシートの可視光の透過率を下げずに、シート抵抗を下げる、すなわち導電性を向上させることが可能となり、さらに、シート抵抗が引き下げられたグラフェンシートを有機高分子膜で覆って複合膜とすることにより、低減させた低抵抗性を安定化させて高抵抗状態へのリバウンドを防ぎ、低減させた抵抗値を長期にわたって維持することができ、特に、有機高分子膜として導電性のものを用いることで、導電性をさらに改善することができる。また、本発明によれば、有機高分子膜を挿入することで、グラフェン上にスピンコート法などによりバッファ層(PEDOT:PSS)を直接成膜する際に発生する、グラフェンシートの基材からの剥離という問題を防止することができる。更に、本発明によれば、導電性が改善された高性能な電極材料及び高性能な透明電極を利用した有機ELなどのデバイスを提供することができる。
(a)グラフェンシートと該グラフェンシート上に被覆された導電性有機高分子膜との複合膜からなる電極の断面構造を示す模式図、(b)該複合膜を透明電極に用いて作製した有機EL素子の断面構造を示す模式図 グラフェンシート及び導電性有機高分子膜(TC-07)の、UVオゾン処理によるシート抵抗の変化を示す図 UVオゾン処理前後のグラフェンシートのシート抵抗及び該処理後のシート抵抗の経時変化を示す図 図3に示すシート抵抗の経時変化の測定を42日(6週間)にわたって行った結果を示す図 ガラス単体及びガラス上に種々の膜厚の導電性有機高分子膜を被覆した複合体について光の透過率を測定した結果を示す図 大気中でのUVオゾン処理の効果とPMMA被覆によるシート抵抗の安定化の効果を示す図 安定化層にplexcore(登録商標)を用いた際のシート抵抗の変化を示す図 ガラス表面に転写したグラフェンシートのシート抵抗にUVオゾン処理と導電性有機高分子膜による安定化とが及ぼす影響を示す図 UVオゾン処理の積算時間とシート抵抗との関係を示す図 (a)作製した有機EL素子に、3Vの電圧を印加したときの発光面の写真、(b)素子の平面構造図
本発明の方法は、グラフェンシートにUVオゾン処理をすることで、グラフェンシートの可視光透過性を低下させることなく、導電性を改善することを特徴とするものである。前記UVオゾン処理は、酸素雰囲気中で行うことが、導電性改善の点で好ましい。さらに、本発明は、グラフェンシート上に有機高分子材料を薄膜化して覆うことにより、改善されたグラフェンシートの導電性を安定化させることができるものである。
図1(a)は、透明基材1に形成された、グラフェンシート2と該グラフェンシート上に被覆された導電性有機高分子膜3との複合膜からなる電極の断面構造を示す模式図であり、図1(b)は、該複合膜を透明電極に用いて作製した有機EL素子の断面構造を示す模式図であって、複合膜の上に、バッファ層(PEDOT:TSS)4と発光層(発光高分子)5をスピンコート法によって成膜し、さらに真空蒸着装置でメタルマスクを通して陰極6(NaF/Al)を蒸着したものである。
透明電極の機能は、可視光に対する透過率と電流の流れやすさ(導電性)で評価される。ここでは、薄膜の導電性の評価方法としてシート抵抗を用いた。シート抵抗が小さければ、電流を流したときに発生する電圧降下が抑えられるので、大きな面積を有するデバイスを作ることができる。
以下、本発明について、順に説明する。
[プラズマCVD法によるグラフェンシートの作製]
グラフェンの作製方法は特に限定されないが、グラフェンシートの層数を制御して1〜数層のグラフェンシートの形成が可能な方法として、水素ガスを主成分とするガスを用いたプラズマCVD法による方法が好ましく用いられる(非特許文献4参照)。
すなわち、基材として、触媒金属である銅箔を用い、該銅箔に加熱を施しながら、プラズマにより生成された荷電粒子や電子のエネルギーにより炭素源となる銅箔中の炭素成分を活性化してグラフェンを生成する。炭素源としては、銅箔に含まれている炭素成分の他、反応容器内に付着した微量の炭素成分及び/またはプラズマ処理に用いるガス中に含まれる微量の炭素成分を用いる。この手法によれば、従来の熱CVD法や樹脂炭化法と比較して、より短時間でグラフェンの形成が可能である。
[透明基板へのグラフェンシートの転写]
本発明において、透明電極に用いられるグラフェンシートは、前記のようにして銅箔上に形成されたグラフェンシートを、ガラスやプラスチックフィルムなどの透明基材上に転写して形成されたものである。
透明基材上への転写方法は、特に限定されないが、例えば、前記の銅箔上に形成されたグラフェンシートを、熱剥離シートに貼りあわせ、その後、エッチング液を用いて銅箔をエッチングし、銅箔をエッチング除去した熱剥離シート/グラフェンシートを透明基材に貼り付けた後、熱剥離シートを加熱することで除去して、透明基材上にグラフェンシートを形成する方法が好ましく用いられる。
また、透明基材としては、ガラス又はプラスチックフィルムが用いられるが、有機EL素子を用いた発光装置は、その可撓性から次世代のディスプレイとして注目されているため、透明基材として可撓性を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
[グラフェンシートへのUVオゾン処理]
プラズマCVD法で作製し、透明プラスチックフィルムに転写されたグラフェンシートとしては、200〜数kΩ/sq.程度のシート抵抗を示すものが報告されている。
本発明においては、このグラフェンシートにUVオゾン処理を施すことにより、グラフェンシートのシート抵抗を大幅に引き下げるものである。
本発明で用いるUVオゾン処理方法は、一般には試料表面に付着した有機物の汚れをオゾンの酸化作用で取り除き清浄化するために行う処理であって、後述する実施例において、UVオゾン処理用に用いた装置(日本レーザ電子株式会社、NL-UV253)の名前も「UVオゾンクリーナ」が付いている。この装置では、波長が185nmと254nmのUV光が用いられ、波長が185nmのUV光照射により、酸素分子が分解されて酸素原子が生成され、該酸素原子が雰囲気内の酸素分子と結合してオゾンが生成され、該オゾンに波長254nmのUV光が照射されると、オゾンは分解されて励起状態の活性酸素が生成される。
本発明におけるUVオゾン処理によるシート抵抗の引き下げ効果は、グラフェンに特有のものであり、有機透明電極として用いられる導電性有機高分子膜にUVオゾン処理を行うと、導電性を担う導電性有機高分子膜が酸化されて導電性が損なわれ、シート抵抗が増加する(後述の実施例2及び図2参照)。
また、本発明におけるUVオゾン処理は、オゾン発生に必要な酸素が存在していればよく、酸素雰囲中でUV光を照射しても、あるいは、大気中でUV光を照射してもよい(後述する実施例5及び図6参照)。
また、本発明におけるUVオゾン処理は、処理時間が長すぎると、グラフェン膜にダメージを与えると考えられ(後述の実施例7及び図9参照)、用いる装置にもよるが、例えば、実施例に用いた上記の装置では、10分程度の処理が望ましい。
[UVオゾン処理の安定化]
本発明のUVオゾン処理により得られた高い導電性(低いシート抵抗)は、時間が経つと徐々に失われて、シート抵抗の値は徐々に増加する。
本発明においては、UVオゾン処理を行ったのち、有機高分子膜を重ねて成膜することにより、高い導電性が維持できる。
本発明における有機高分子膜によるグラフェンシートのシート抵抗の安定化においては、有機高分子膜の追加に伴って可視光透過率が著しく悪化しないことが求められる。このため、有機高分子膜の材質としては、可視光透過率が高いものが好ましい。可視光透過率の高い膜であれば、導電性の膜であっても、あるいは、PMMAのような導電性のないものであってもよい。また、用いる有機高分子膜の膜厚の増加に伴い、可視光透過率は減少するため(図5参照)、有機高分子膜の膜厚は、所期の可視光透過率が得られる範囲内に設定される。
本発明における有機高分子膜の成膜方法は、特に限定されず、一例として、スピンコート法などが好ましく用いられる。
以下、本発明について、実施例を用いて更に説明するが、本発明は、これらに限定されないことはいうまでもない。
(実施例1:PET基材上へのグラフェンシートの作製)
触媒金属として厚み18μm程度の銅箔を準備し、表面波プラズマCVDチャンバー中にセットした。通電加熱により銅箔の温度を上げた状態でプラズマを120秒間照射した。原料ガスには水素(500sccm)とメタン(5sccm)を使用し、合成温度は約900℃で、銅箔上に1〜3層のグラフェンシートを合成した。
次いで、銅箔上に形成されたグラフェンシートを、日東電工社製の熱剥離シート(リバアルファー)に貼りあわせ、その後、過硫酸アンモニウム(0.5mol/l)を用いて銅箔をエッチングし、流水により基板を洗浄した。
銅箔をエッチング除去した熱剥離シート/グラフェンシートを、PET基板に貼り付けた後、熱剥離シートをホットプレートで加熱することで剥離除去して、PET基板上にグラフェンシートを転写した。
(実施例2:UVオゾン処理)
実施例1で作製されたグラフェンシートを用い、UVオゾン処理によるシート抵抗の変化を調べた。
比較のために、導電性有機高分子膜として、岩通マニュファクチャリングの製品である導電塗料TC-07(非特許文献5参照)を用いてスピンコート法によりPET基材上に厚さ210nm程度に成膜したものを用意した。
上記のグラフェンシート及び導電性有機高分子膜に、日本レーザ電子株式会社、UVオゾンクリーナ、NL-UV253を用いて、10分間のUVオゾン処理を行い、UV照射前とUV照射後のシート抵抗を、4端子測定法により測定した。
図2は、UVオゾン処理による、グラフェンシート及び導電性有機高分子膜のシート抵抗の変化を調べた結果を示す図である。
図2に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板に転写したグラフェンシートにUVオゾン処理を行ったところ、初期のシート抵抗値が500Ω/sq.のグラフェンシートは、10分間のUVオゾン処理を行うことにより、300Ω/sq.以下の導電性が得られた。このように、グラフェンシートでは、UVオゾン処理により導電性が増し、シート抵抗が大幅に減少した。
一方、比較に用いた導電性有機高分子膜では、UVオゾン処理により、シート抵抗が増加した。導電性を担う導電性有機高分子膜が酸化されて導電性が損なわれ、シート抵抗が増加したものと考えられる。
(実施例3:UVオゾン処理の安定化)
実施例2のようにして得られた高い導電性は、グラフェンシートをそのまま大気中に放置した場合、時間が経つと徐々に失われてしまい、シート抵抗の値は徐々に増加することが判明した。
そこで、本実施例では、UVオゾン処理を行ったのち、導電性有機高分子膜を重ねて成膜することにより、高い導電性が維持できることを以下のようにして確認した。本実施例以降のシート抵抗の測定は、NAPSON corporationのEC-80を使用した渦電流式の非接触法で行い、各条件で5〜6回繰り返し測定を行った値の平均値を各条件におけるシート抵抗とした。
PETに転写した1枚のグラフェンシートから切り出した45mm角のサンプル3枚(sample 1,2,3)を用いて、前記と同様のUVオゾン処理をしつつシート抵抗の挙動を確認した。実際の実験で得られたデータの一例を、sample 1,2,3の処理とシート抵抗の変化として図3に示す。
図3に示すとおり、初期の状態(As is)では、3サンプルともに500Ω/sq.程度を示した。sample 1とsample 3は、UVオゾン処理を施すことにより200Ω/sq.まで抵抗が下がった。sample 2はコントロールとして何も処理をせず、測定値のバラツキを示している。
sample 1とsample 3では、処理の約30分後にシート抵抗が30〜40Ω/sq.程度上昇している。UVオゾン処理で得られた低抵抗状態が安定なものではなく、徐々にもとの状態に戻ってしまうと考えられる。
ここでsample 1にだけ前記の導電性有機高分子(TC-07、岩通マニュファクチャリング製)を厚さ100nm程度にスピンコートした。図3に示すとおり、有機膜をつけなかったsample 3の抵抗値が徐々に上昇するのに対し、sample 1では、グラフェンの低抵抗の状態が安定化され、維持されている。
図3に示した測定を42日(6週間)にわたって行い、sample 1のシート抵抗が長期間変化しないことを確認した。図4は、その結果を示す図である。
グラフェンと有機導電膜の複合膜のモデルとして電気抵抗の並列接続を仮定すると、グラフェンシートの初期状態500Ω/sq.と膜厚100nmのTC-07の720Ω/sq.を接続した和は、295Ω/sq.となり、本実施例の結果である200Ω/sq.には届かない。並列抵抗の和として200Ω/sq.を実現するためには、グラフェンシートは277Ω/sq.以下までシート抵抗値を下げなければならないため、本実施例で得られたシート抵抗には、UVオゾン処理で達成されたグラフェンシートの低抵抗状態が関与しているといえる。
なお、上述のとおり、グラフェンシートのシート抵抗の安定化においては、有機高分子膜の追加に伴って可視光透過率が著しく悪化しないことが求められる。このため、本実施例では、導電性有機高分子のスピンコートに先立ち、ガラス単体及びガラス上に種々の膜厚の導電性有機高分子膜を被覆した複合体について光の透過率を測定して、導電性有機高分子膜の膜厚と透過率との関係を調べた。測定は、ファイバマルチチャンネル分光器(FHS-UV、オーシャンオプティクス製)により行った。
図5は、その結果を示す図であり、ガラス上にTC-07を膜厚157nmに成膜した試料は、550nm近辺の波長を有する光の透過率が、ガラスだけのものとほぼ同じであった。これに対し、TC-07の膜厚が210nm及び315nmの場合には、前記波長の光透過率に減少が見られた。なお、膜厚が157nmシート抵抗は約450Ω/sq.であった。
この結果から、本実施例で採用した導電性高分子膜の厚さ(100nm程度)では、波長550nm近辺の光の透過率は、ほとんど減少しないといえる。
(実施例4:UVオゾン処理の有無による、導電性有機高分子膜被覆時の可視光透過率の変化)
前述の図3,4に示されているように、実施例3のsample 1では、導電性有機高分子膜(TC-07)を成膜することで、シート抵抗が低下すると共に、低抵抗の状態が安定化された。他方、前述の図5に示されているように、被覆される導電性有機高分子膜の膜厚が増加すると、可視光透過率が低下した。これらの結果からは、所期のシート抵抗安定性が得られる範囲で導電性有機高分子膜の膜厚を極力小さくすることが好ましいといえる。しかし、本発明では、導電性有機高分子膜が被覆されるのは、ガラスではなくグラフェンシートであり、しかも該グラフェンシートはUVオゾン処理が施されたものであるため、ガラス上に導電性有機高分子膜を被覆した場合とは可視光透過率の変化の仕方が異なる可能性が考えられた。
そこで、本実施例では、グラフェンシート上に導電性高分子膜を被覆した場合に、グラフェンシートに対するUVオゾン処理の有無により、可視光透過率がどのように変化するかを確認した。
まずグラフェンシートを転写した1枚のプラスチックフィルムを2つに切り分けて、一方にのみUVオゾン処理を10分間行った。その後、それぞれにTC-07を同じ条件(2000rpm)でスピンコートして測定用試料とした。各測定用試料におけるグラフェンシートと導電性高分子との合計膜厚は、UVオゾン処理を行わなかったものが98〜99nm、UVオゾン処理を行ったものが83〜93nmであった。
各測定用試料の可視光透過率は、ファイバマルチチャンネル分光器(FHS-UV、オーシャンオプティクス製)を使用して、透過スペクトルを8回測定し、各測定における540〜560nmの各波長における透過率の平均値を取ることで算出した。
可視光透過率は、UVオゾン処理を行わなかった試料が、平均で80.2%(±0.6%)であったのに対し、UVオゾン処理を行った試料は84.9%(±1.1%)であり、UVオゾン処理により約5ポイント(%の差分)の上昇が確認された。
この結果から、UVオゾン処理は、グラフェンシートの抵抗を下げるだけでなく、これに導電性有機高分子膜を被覆した際の可視光透過率の低下を抑制する効果も奏するものといえる。なお、有機高分子導電性膜をつけないグラフェンシートだけの可視光透過率もUVオゾン処理で僅かに変化していることがさらに精密な測定を行うことで明らかになりつつあるが、本実施例の結論を否定する変化量ではないことを補足しておく。
(実施例5:非導電性の有機高分子膜によるシート抵抗の安定化と大気中でのUVオゾン処理)
ここまでの実施例では、安定化層として導電性有機高分子膜(TC-07)を用いたが、膜自体に導電性があるため、非導電性の有機高分子膜による被覆によってもシート抵抗が安定化するか否かは不明であった。そこで、本実施例では、安定化層として非導電性の有機高分子膜を用いて以下の実験を行った。また、本実施例では、大気中でのUVオゾン処理の影響についても検討を行った。
グラフェンシートを転写したA4サイズのPETフィルムから45mm角を切りだしてシート抵抗を測定(448.2±44.0Ω/sq.)した後、test aとtest bの2枚にカットし、test aには、UVオゾンクリーナに酸素を導入せず、大気雰囲気でUVオゾン処理(10分)を行い(UV-air)、その後、酸素雰囲気でのUVオゾン処理(10分)を行った。また、test bには、大気中のUVオゾン処理をしないで20分間の酸素雰囲気でのUVオゾン処理を行った。
それぞれの処理後、test aには導電性のないPMMA(2wt%アニソール溶液)をスピンコート(3000rpm 30sec)して約100nm厚の膜を被覆し、グラフェンシートのシート抵抗の経時変化を記録し、test bは、膜を被覆することなくシート抵抗の経時変化を記録した。
図6は、大気中でのUVオゾン処理の効果とPMMA被覆によるシート抵抗の安定化の効果を示す図である。
一方のサンプルtest aは、10分間の大気雰囲気でのUVオゾン処理(UV-air)で低抵抗化が生じた。その後の10分間の酸素雰囲気でのUVオゾン処理を行った後は、大気中の処理よりもさらに(16Ω/sq.程度)抵抗が減少した。この結果は、大気雰囲気でもUVオゾン処理により低抵抗化が起こることを示す。大気中の酸素がオゾン化していると思われる。
また、酸素雰囲気でのUV処理を行った後のそれぞれのシート抵抗の経時変化を見ると、PMMA層のあるtest aでは緩やかな増加に留まっている。他方、PMMA層のないtest bでは2日で初期値を越えるシート抵抗の増加が見られ、4日後には初期のシート抵抗の倍の1000Ω/sq.近くまで導電性が悪化した。これは10分間のUVオゾン処理でも安定化層なしでは大きなリバウンドが生じうることを示している。
一方のtest aでも徐々に抵抗値が増大しているが、初期値の6割程度の値(270Ω/sq.)におさまっているので、PMMA層にもシート抵抗の安定化効果があると考えられる。
次に、PMMA層に代えて、安定化層にplexcore(登録商標)(Merck製)を用いた際のシート抵抗の経時変化を確認した。plexcore(登録商標)は、Poly(thiophene-3-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]-2,5-diyl), sulfonated solutionである。有機ELのホール注入層にも使われる高分子材料で、膜厚方向の導電性はあるが、面内の導電性は非常に小さく、PMMA同様シート抵抗を下げる効果はないので、測定されたシート抵抗はグラフェンシート自体のものといえる。
グラフェンシートを転写した50×50mmのPETフィルムのシート抵抗を測定した後、酸素雰囲気中でのUVオゾン処理を10分間行い、シート抵抗を測定した。その後、低抵抗状態がリバウンドしないようplexcore(登録商標)をスピンコート(2000rpm 30sec)し、所定時間毎にシート抵抗を測定した。結果を図7に示す。初期値(As is)からUVオゾン処理を行って得られた低抵抗状態が、3日間に亘り保持されていることが判る。この結果から、plexcore(登録商標)にもシート抵抗の安定化効果があると考えられる。
(実施例6:ガラス上に転写されたグラフェンシートへのUVオゾン処理)
先の例ではグラフェンシートを転写したプラスチック(PET)がUV光やオゾンで変質した可能性も考えられる。
そこで、本実施例においては、熱やUV光で変質しにくいガラス上にグラフェンを熱剥離転写した膜に対して、同様の実験を行った。
ガラス上に熱転写したグラフェンシートに、実施例2と同様のUVオゾン処理をした後に、導電性有機高分子膜(TC-07)を厚さ100nm程度にスピンコート(2000rpm)することで、測定用試料(sample 1,2)を作製した。各測定用試料について、各処理を行った後のシート抵抗を測定した。測定結果を図8に示す。
図8に示すように、初期状態(UVオゾン処理前)のシート抵抗は450〜500Ω/sq.であったが、UVオゾン処理により350〜400Ω/sq.に低下し、導電性有機高分子膜の被覆によりさらに200Ω/sq.程度迄低下した。sample 1はその後、後述する素子作製に利用したため、sample 2のみ測定を続けた。
図8に示したシート抵抗の変化の傾向は、図3のsample 1と類似している。しかし、ガラス上にグラフェンシートを形成した図8では、PET上にグラフェンシートを形成した図3よりもシート抵抗の低下幅が小さく、シート抵抗のばらつきも大きかった。
UVオゾン処理によってガラスは変質しないと考えられることから、前述したシート抵抗のばらつきは、グラフェンシートによるものと解される。グラフェンシートのばらつきの原因としては、シートを構成するグラフェンの結晶のサイズや形状の違いが考えられる。シートが全面単結晶状態であれば、理論的に予想された高い導電性が得られることが期待されるが、現状は多結晶状態なので、結晶間の境界で導電性の低下が生じ、シート抵抗のバラツキが起こりうる。
(実施例7:UVオゾン処理によるシート抵抗の低減効果と処理時間との関係)
本発明者らがCVD法で作製し、PET上に転写した2種類のグラフェンシート、及び同様のプロセスで作製された市販のグラフェンシート(グラフェンプラットフォーム社製)を準備し、それぞれに対して5分間のUVオゾン処理とその後のシート抵抗測定とを繰り返した。UVオゾン処理の積算時間を横軸に、各条件のシート抵抗を縦軸にとって図9にまとめた。図中のエラーバーは±1σ(σは標準偏差)を表示している。サンプルの位置が毎回ずれるため、面内のバラツキが大きいと標準偏差に反映する。
図9に示すとおり、市販のグラフェンも含めた3種類の試料はいずれも、UVオゾン処理の積算時間が10〜15分迄はシート抵抗が低下し、その後は積算時間が60分迄低いシート抵抗を保つものと、ある積算時間からシート抵抗が増加するものとに分かれた。この結果から、グラフェンシートに対するUVオゾン処理の時間は、10〜15分とすることが好ましいといえる。
また、UVオゾン処理の積算時間は、該処理後のグラフェンシート上に安定化層を形成する場合、該安定化層の膜厚の均一性にも影響する。透明電極上に発光層を成膜して作製する有機EL発光素子では、面内の均一性が求められるため、UVオゾン処理を行う際には、安定化層の膜厚の均一性にも配慮して、積算処理時間を設定することが好ましい。例えば、ガラス基板上のグラフェンシートに15分間のUVオゾン処理を施した後、導電性有機高分子膜をスピンコート(1000rpm 30sec)したところ、導電性有機高分子膜の膜厚が均一にならず、目視で濃淡がまだら状に観察されたので、応用上考慮する必要がある。
シート抵抗の低下だけから判断すると、本実施例の条件では15分間の処理時間が最適といえるが、15分以上ではグラフェンに大きなダメージが残ると予想される。このため、シート抵抗だけでなく均一性が要求される用途では、ダメージによる劣化が少ない10分程度の処理が好ましい。
(実施例8;有機EL素子の作製)
低抵抗化及び安定化したグラフェンシートを透明電極とし、以下のようにして、図1(b)に示す有機EL素子を作製した。有機ELの透明電極では表面から電流を流すため、安定化層として導電性有機高分子膜TC-07を用いた。
ガラス表面に転写して得られたグラフェンシートに、酸素雰囲気中でのUVオゾン処理を10分間行った後、安定化層としてTC-07をスピンコート(2000rpm)で約100nm厚に成膜した。この条件で処理した複合膜のシート抵抗は約180Ω/sq.となる(実施例6のsample 1、図8参照)。
その後、バッファ層としてPEDOT:PSS(ヘレウス社製、製品CLEVIOS P VP AI4083)をスピンコート法で約30nmに成膜した。その際、グラフェンシートが基材から剥離することはなかった。次いで、該バッファ層上に、黄色発光高分子であるポリフェニレンビニレン誘導体(メルク社製、製品PDY-132)のトルエン溶液をスピンコートして約50nm厚の発光層とした。
図10(a)は、作製した有機EL素子に、3Vの電圧を印加したときの発光面の写真である。
また、図10(b)は、素子の平面構造図であり、電圧降下を防いで発光が均一になるように電極を下まで伸ばしてある。
図中、7は陽極コンタクトと補助電極の役割をするものであって、導電性有機高分子膜を塗布する前のグラフェンシート上に金を真空蒸着して作製した。8は、メタルテープ製の陰極コンタクトであり、発光高分子層の上に導体を蒸着して形成した短冊状の陰極6に接続されている。
櫛状の陽極コンタクト7によりグラフェンシートに正電圧を与え、一方、陰極6には負電圧を与える。
図10(a)の写真において6本の縦長の電極すべてで全体が光っていることから明らかなように、このような電極構造と複合膜の導電性とにより、電圧降下を減らし、均一な発光が得られる。
1:透明基材
2:グラフェンシート
3:導電性有機高分子膜
4:バッファ層(PEDOT:PSS)
5:発光層(発光高分子)
6:陰極(NaF/Al)
7:陽極コンタクト(Au)
8:陰極コンタクト

Claims (5)

  1. プラズマCVD法で作製されたグラフェンシートをUVオゾン処理することにより、該グラフェンシートのシート抵抗を引き下げた後、該グラフェンシート上に有機高分子膜(ただし、PEDOT:PSS膜を除く)を被覆することにより、引き下げられた低抵抗を安定化させる方法。
  2. 前記UVオゾン処理を酸素雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機高分子膜が導電性であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. プラズマCVD法で作製され、UVオゾン処理されたグラフェンシートと、該グラフェンシート上に被覆された有機高分子膜(ただし、PEDOT:PSS膜を除く)との複合膜からなる電極構造。
  5. 前記有機高分子膜が導電性であることを特徴とする請求項に記載の電極構造。
JP2019523913A 2017-06-07 2018-06-05 グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造 Active JP6725122B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017112372 2017-06-07
JP2017112372 2017-06-07
PCT/JP2018/021565 WO2018225736A1 (ja) 2017-06-07 2018-06-05 グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018225736A1 JPWO2018225736A1 (ja) 2020-03-19
JP6725122B2 true JP6725122B2 (ja) 2020-07-15

Family

ID=64566809

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019523913A Active JP6725122B2 (ja) 2017-06-07 2018-06-05 グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6725122B2 (ja)
WO (1) WO2018225736A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7042492B2 (ja) * 2018-12-26 2022-03-28 シーズテクノ株式会社 基板上のグラフェン膜の直接成膜法及び走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー
JP7488050B2 (ja) 2020-01-27 2024-05-21 矢崎総業株式会社 コネクタ及び機械部品

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20160280551A1 (en) * 2013-12-17 2016-09-29 Graphene Platform Corporation Graphene powder, apparatus for producing graphene powder, method for producing graphene powder, and product using graphene powder
JP2015179695A (ja) * 2014-03-18 2015-10-08 国立研究開発法人科学技術振興機構 半導体素子の製造方法、半導体素子および透明導電膜
JP6388953B2 (ja) * 2014-09-16 2018-09-12 国立研究開発法人産業技術総合研究所 有機発光素子とその陽極材料
JP6663142B2 (ja) * 2015-02-19 2020-03-11 国立研究開発法人産業技術総合研究所 有機エレクトロルミネセンス素子

Also Published As

Publication number Publication date
WO2018225736A1 (ja) 2018-12-13
JPWO2018225736A1 (ja) 2020-03-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Fu et al. MXene‐contacted silicon solar cells with 11.5% efficiency
Ma et al. Graphene‐based transparent conductive films: material systems, preparation and applications
JP5821637B2 (ja) ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法及び有機光電変換素子
Kymakis et al. Flexible organic photovoltaic cells with in situ nonthermal photoreduction of spin‐coated graphene oxide electrodes
Kaskela et al. Aerosol-synthesized SWCNT networks with tunable conductivity and transparency by a dry transfer technique
JP5691175B2 (ja) ガスバリアフィルムの製造方法、ガスバリアフィルム及び有機光電変換素子
Yang et al. Improved optical sintering efficiency at the contacts of silver nanowires encapsulated by a graphene layer
KR101680928B1 (ko) 투명 전도성 산화물, 금속 및 산화물의 조합에 기초한 투명 전극
KR101221581B1 (ko) 그래핀을 포함하는 유연투명전극 기판의 제조방법 및 이에 따라 제조되는 유연투명전극 기판
JP5761030B2 (ja) バリアフィルムの製造方法
EP2259329A1 (en) Metal transparent conductors with low sheet resistance
An et al. Ultraclean transfer of CVD-grown graphene and its application to flexible organic photovoltaic cells
KR102017251B1 (ko) 그래핀 박막의 무전사 제조방법
JP6725122B2 (ja) グラフェンシートの導電性改善方法及び導電性が改善されたグラフェンシートを用いた電極構造
KR20110095751A (ko) 그래핀의 층간에 도펀트를 포함하는 다층 그래핀, 이를 포함하는 박막 및 투명전극
JP2010258205A (ja) 有機光電変換素子の製造方法及び該製造方法により製造された有機光電変換素子
Xia et al. 2D heterostructure of Bi2O2Se/Bi2SeOx nanosheet for resistive random access memory
JP2011031610A (ja) バリアフィルムおよびバリアフィルムの製造方法及び素子
Khosroabadi et al. Fabrication, electrical and optical properties of silver, indium tin oxide (ITO), and indium zinc oxide (IZO) nanostructure arrays
Zhang et al. A Self‐Assembled Vertical‐Gradient and Well‐Dispersed MXene Structure for Flexible Large‐Area Perovskite Modules
JP5640976B2 (ja) ガスバリアフィルムとその製造方法、これを用いた光電変換素子
JP2010245146A (ja) 有機光電変換素子および有機光電変換素子の製造方法
Bai et al. Preparation of smooth, flexible and stable silver nanowires-polyurethane composite transparent conductive films by transfer method
Tai et al. “Self‐Peel‐off” transfer produces ultrathin polyvinylidene‐fluoride‐based flexible nanodevices
Yoon et al. Polyimide photodevices without a substrate by electron-beam irradiation

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191111

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191111

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20191111

AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20191119

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191206

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20200303

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200406

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200507

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200615

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200618

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6725122

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D02

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250