JP6724803B2 - 熱交換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、熱交換装置に関するものである。
従来、熱交換器の伝熱チューブを流れる熱媒流体を脈動流とすれば、定常流のときよりも伝熱チューブを介しての熱伝達率が向上するが、定常流のときよりも圧損が大きくなることが知られている。一方で、ある条件では脈動流は圧損が低減することも知られており、その場合は熱伝達率が低下する。
熱媒流体に脈動を生じさせる技術として、同一多負荷接続型配管系にある熱交換器に対して、各枝管に接続されている流量調整弁にて、流量を周期的に変動させ、液体と管壁の摩擦抵抗を低減する事でポンプの動力を低減させることが提案されている(特許文献1)。
特開2015−40662号公報
しかし、特許文献1の技術では、すべての熱交換器に定常流を通水し、または脈動流を通水するのには複数の流量調整弁が必要である。また、並列接続されている2つの熱交換器に、一つの三方弁で脈動流を通水可能であるが、定常流を通水する場合は、三方弁で接続されている熱交換器の片側にしか通水できない。すなわち、並列接続されているすべての熱交換器に定常流もしくは脈動流を通水するためには複数の弁を必要とし、一つの弁のみではそのような通水を実現できない。
ここで、定常流を第1種の流れに置き換え、脈動流を第1種の流れよりも流速の増減変化の量が大きい第2種の流れに置き換えても、事情は同じである。
本発明は上記点に鑑み、第1の流れの熱媒流体をすべての熱交換部に分配する状態と、第2の流れの熱媒流体を各熱交換部に分配する状態とを切り替え可能な熱交換装置を、単純な装置構成にて実現することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、複数の熱交換部(11a、11b)を有する熱交換器(12、22)と、前記熱交換器に流入させる流体を受け入れて前記複数の熱交換部の各々に分配するための流体分配装置(14、25、32、42、52、62)と、を備え、前記流体分配装置は、第1種の流れで前記流体を前記複数の熱交換の各々に分配する第1分配と、前記第1種の流れよりも流速の増減変化の量が大きい第2種の流れで前記流体を前記複数の熱交換部の各々に分配する第2分配とに、その動作を切り替え可能であり、前記流体分配装置は、前記複数の熱交換部に対応する複数の流出口(14b、14c、25b、25c、37a、37b、56a、56b)を有し、前記第2分配の実行時において、前記複数の流出口の全部が閉じることがない、熱交換装置である。
流体分配装置の動作を定常流分配、または脈動流分配に切り替えることで、第1種の流れの流体をすべての熱交換部に分配することで各熱交換部に低圧損で熱媒流体を通水する状態と、第2種の流れ流体を各熱交換部に分配することで脈動流により各熱交換部における熱伝達率を増加させる状態とを、実現できる。このようにすれば、複数の熱交換部を有する熱交換器に対して流体分配装置を追加することで、第1分配と第2分配を切り替えることができるので、熱交換装置の装置構成を複雑化しない。
第1実施形態の熱交換装置の構成を示す説明図である。 第2実施形態の熱交換装置の構成を示す説明図である。 第3実施形態の熱交換装置の構成を示す説明図である。 第3実施形態の熱交換装置における流体分配装置の分配動作の説明図である。 第3実施形態の熱交換装置において電子制御装置が実行する分配装置制御のフローチャートである。 第4実施形態の熱交換装置の構成を示す説明図である。 第4実施形態の熱交換装置における流体分配装置の分配動作の説明図である。 第5実施形態の熱交換装置の構成を示す説明図である。 第5実施形態の流体分配装置の構成を示す説明図である。 第5実施形態の流体分配装置における弁体の位置変化の説明図である。 第6実施形態の熱交換装置における流体分配装置の構成と分配動作の説明図である。 本発明の熱交換装置において、脈動流の周波数と熱交換部での熱伝達率との関係を示すグラフである。 第6実施形態の熱交換装置において邪魔板39を3枚に増やしたことにより熱伝達率が向上することを説明するグラフである。 第7実施形態の熱交換装置の構成の説明図である。 第8実施形態の熱交換装置の構成の説明図である。 第7実施形態の熱交換装置における脈動流分配での第1流路の流量の増減幅を、バイパス管路を設けない場合と比較して示すグラフである。 第7実施形態の熱交換装置における脈動流分配での第2流路の流量の増減幅を、バイパス管路を設けない場合と比較して示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の熱交換装置10は、2つの熱交換部11a、11bにて構成される熱交換器12、流体分配装置14、ポンプ16、これらをつなぐ管路18等で構成される。
熱交換部11a、11bは、熱交換器において熱交換の機能を担う機能部である。2つの熱交換部11a、11bは、例えば設置用の金具の配置など、機能や性能に関わらない部分で相違することがあるとしても、実質的に同構造である。図示は省略するが、熱交換部11a、11bは熱媒流体を流通させるための複数の伝熱チューブと、各伝熱チューブの外面に接して配される金属フィンとを備えている。なお、熱交換部11a、11bが熱交換の機能を担うためには、各々が最低1本の伝熱チューブを備えていればよい。
熱媒流体との熱交換のために伝熱チューブの外側を流れる流体は空気であり、熱媒流体は空気によって冷却される。すなわち、熱交換器12は空冷式の熱交換器である。
熱媒流体としては、公知の水、油、クーラントなどを熱交換装置10の用途に応じて採用でき、特に限定はない。また、伝熱チューブの外側を流れる流体も空気に限るものではなく、シェルを備えて水や油等の流体をシェルサイドに流す構成としてもよい。
2つの熱交換部11a、11bは、並列に配されている。熱交換部11aの上流端には管路18aの下流端が接続され、管路18aの上流端は流体分配装置14に接続されている。熱交換部11bの上流端には管路18bの下流端が接続され、管路18bの上流端は流体分配装置14に接続されている。
熱交換部11aの下流端には管路18cの上流端が接続されている。熱交換部11bの下流端には管路18dの上流端が接続されている。管路18cの下流端と管路18dの下流端は互いに合流している。管路18c、18dの合流先の管路18はポンプ16の吸入側に接続されている。ポンプ16の吐出側は管路18により流体分配装置14の流入口14aに接続されている。
ポンプ16は、熱交換装置10の稼働中を通して稼働し、吸入側から熱媒流体を吸入して吐出側から吐出する。ポンプ16としては、定量性を優先して例えばギヤポンプ等の容積式を採用してもよいし、容積式以外を採用してもよい。
流体分配装置14は2つの流出口14b、14cを有している。一方の流出口14bには熱交換部11aの流入側の管路18aが接続され、他方の流出口14cには熱交換部11bの流入側の管路18bが接続されている。
流体分配装置14は、定常流分配と脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。定常流分配が第1分配に対応し、脈動流分配が第2分配に対応する。流体分配装置14は、定常流分配時には流入口14a並びに流出口14b、14cを開とする。すなわち、定常流分配時には流入口14aから受け入れた熱媒流体を流出口14b、14cへと通過させる。これにより、流出口14b、14cにつながる管路18a、18bを経て2つの熱交換部11a、11bに熱媒流体が分配される。このときに熱媒流体が熱交換部11a、11bに均等に分配されるように、流体分配装置14および管路18a、18bが設計されている。
一方、脈動流分配時には、流体分配装置14は、流出口14b、14cを交互に開閉することを繰り返す。すなわち、脈動流分配中における或る時間帯には流出口14bが開いて流出口14cが閉じ、別の時間帯には流出口14bが閉じて流出口14cが開く、という動作が繰り返される。この開閉動作は、流出口14b、14cを択一的に開(すなわち他方を閉)とする構成でもよいし、両方の流出口14b、14cが同時に開となる状態があってもよい。ただし、脈動流分配において流出口14b、14cが同時に閉じられることはなく、いずれか一方は開とされる。つまり、脈動流分配の実行時において、複数の流出口14b、14cの全部が閉じることがない。
また、脈動流分配時に流入口14aが全閉とされることはない。つまり、流入口14aは、脈動流分配の実行時において、常に流体が通過可能である。
流体分配装置14の動作を定常流分配と脈動流分配とに切り替えるための構成は、例えばバイメタル式などの温度感知スイッチを管路18に設置しておいて、そのオン、オフにて切り替える構成、管路18に設置した温度計の測定値に基づいて電子制御装置が切り替える構成、手動操作にて切り替える構成等が可能であり、特段の制限はない。
本実施形態の熱交換装置10の構成は上記に説明した通りである。この熱交換装置10は、不図示の冷却対象を冷却するために使用され、以下のように作動する。
熱交換装置10の稼働開始に伴ってポンプ16が運転を開始し、熱媒流体を管路18に流通させる。熱媒流体はポンプ16、流体分配装置14、熱交換器12の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。その循環中に、熱交換器12とポンプ16との間で、冷却対象を冷却するために使用され熱媒流体の温度が上昇する。昇温した熱媒流体は熱交換部11a、11bにおける空気との熱交換により冷却された後に冷却対象へと流れる。
流体分配装置14は、熱交換装置10の稼働開始時には定常流分配となっている。ポンプ16が定常運転になった後に、熱交換器12の上流側における熱媒流体の温度に基づいて、流体分配装置14の定常流分配と脈動流分配との切り替えが行われる。ポンプ16の定常運転中は、ポンプ16への通電量は一定に保たれる。したがって、ポンプ16の定常運転中は、ポンプ16の吐出能力は一定に保たれる。
切り替えの手順については上述したとおりであり、熱媒流体の温度が切り替え設定値を上回ると、定常流分配から脈動流分配に切り替わる。また、熱媒流体の温度が戻し設定値以下になれば脈動流分配から定常流分配に切り替わる。切り替え設定値と戻し設定値は同じ値でもよいし、異なっていてもよい。
流体分配装置14が定常流分配の時には流入口14a並びに流出口14b、14cを開とするので、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体がすべての熱交換部11a、11bに分配される。定常流が第1種の流れに対応する。定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水できる。
流体分配装置14が脈動流分配の時には、流出口14bが閉じられると流出口14bから流出する熱媒流体が遮断ないし絞られるので、管路18aから熱交換部11aへ向かう熱媒流体の流量が減少する。そして、閉じられていた流出口14bが開かれると、流出口14bから流出し管路18aから熱交換部11aへ向かう熱媒流体の流量が増加する。これにより、管路18aを通過する熱媒流体の流れは、流出口14bの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。脈動流が第2種の流れに対応する。この結果、管路18a、熱交換部11a、管路18cを流れる熱媒流体の流の増減変化の量は、定常流分配時よりも脈動流分配時の方が大きくなる。ここで、増減変化の量は、最大値と最小値の差の絶対値である。
同様に、流出口14cから管路18bを通過して熱交換部11bへ向かう熱媒流体の流れも、流出口14cの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。この結果、管路18b、熱交換部11b、管路18dを流れる熱媒流体の流の増減変化の量は、定常流分配時よりも脈動流分配時の方が大きくなる。
このように、脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができる。
なお、脈動流分配時に流出口14b、14cを開閉する周波数すなわち脈動流の周波数は一定値に固定してもよいし、可変としてもよい。この周波数を可変とするならば、脈動流分配時にあっては各熱交換部11a、11bでの熱伝達率を任意に変更できる。
以上説明した本実施形態の熱交換装置10は、複数の熱交換部11a、11bを有する熱交換器12と、熱交換器12に流入させる熱媒流体を受け入れて各熱交換部11a、11bに分配するための流体分配装置14とを含んで構成されている。
流体分配装置14は、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配する定常流分配と、熱交換部11a、11bに分配する熱媒流体の流速を増減変化させて脈動流となす脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。
従って、流体分配装置14の動作を定常流分配、または脈動流分配に切り替えることで、定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水する状態と、脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させる状態とを、実現できる。複数の熱交換部11a、11bを有する熱交換器12に対して1つの流体分配装置14を追加するのみで済むから、熱交換装置10の装置構成を複雑化しない。
また、熱交換器12(熱交換部11a、11b)において大きな放熱量が要求される高熱負荷条件に対応するために、従来は熱交換器の体格を大型化していた。しかし、高熱負荷条件で稼働する頻度が小さい場合など、大型化での対応が好適とはいえない場合があった。
本実施形態の熱交換装置10は、高熱負荷条件では流体分配装置14の脈動流分配によって脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配し、各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができるから、それに応じて熱交換器12を小型化できる。一方、低負荷条件時には流体分配装置14の定常流分配によって定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで、熱交換器12(熱交換部11a、11b)に低圧損で熱媒流体を通水できるため、ポンプ16の動力を低減できる。
また、本実施形態の熱交換装置10は、脈動流分配時に流出口14b、14cが同時に閉じられることはなく、流入口14aが全閉とされることもない。脈動流分配と定常流分配とを切り替える際にも、流出口14b、14cが同時に閉じられることはなく、流入口14aが全閉とされることもない。
仮に、これらの場合に流出口14b、14cを共に閉鎖したり、流入口14aを全閉したりした場合には、ウォータハンマを生じるおそれがある。しかし、本実施形態の熱交換装置10では流出口14b、14cのいずれか一方は必ず開とされ、流入口14aが全閉とされることもないので、上記のウォータハンマを防止できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について、図2を用いて説明する。本実施形態は、熱媒流体を各熱交換部に分配するヘッダタンク23が熱交換器22に備えられて、流体分配装置14がヘッダタンク23と一体に配置される例である。これにより、流体分配装置14はヘッダタンク23に固定して接続されている。
図2に示すように、本実施形態の熱交換装置20は、2つの熱交換部11a、11bを有する熱交換器22、流体分配装置25、ポンプ16、これらをつなぐ管路18等で構成される。2つの熱交換部11a、11bの構成は第1実施形態と同様であるから、同符号を付して説明を省略する。本実施形態の熱交換装置20では、熱交換器22にヘッダタンク23とレシーバタンク24とが設けられている。
ヘッダタンク23には流体分配装置25が組み付けられており、流体分配装置25はヘッダタンク23と一体化されている。ヘッダタンク23の内部は隔壁23aと流体分配装置25とによって第1室26aと第2室26bとに分割されている。
流体分配装置25の流入口25aは管路18によりポンプ16の吐出側に接続されている。なお、ポンプ16は第1実施形態と同様のものが用いられるから、同符号を付して説明を省略する。
流体分配装置25の2つの流出口25b、25cの一方(この例では流出口25b)は第1室26a内に開口し、他方(この例では流出口25c)は第2室26b内に開口している。
流体分配装置25の流入口25aから流入した熱媒流体は、流出口25bを通って第1室26a内に流入可能であり、また流出口25cを通って第2室26b内に流入可能である。
第1室26a内には熱交換部11aを構成する伝熱チューブの上流端が開口し、第2室26b内には熱交換部11bを構成する伝熱チューブの上流端が開口している。そして、これらすべての伝熱チューブの下流端はレシーバタンク24内に開口している。また、レシーバタンク24は管路18によってポンプ16の吸入側に接続されている。
流体分配装置25は第1実施形態と同様に、定常流分配と脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。流体分配装置25は、第1実施形態と同様に定常流分配時には流入口25a並びに流出口25b、25cを開とする。すなわち、定常流分配時には流入口25aから受け入れた熱媒流体を流出口25b、25cへと通過させる。これにより、流出口25bに連通している第1室26aを経て熱交換部11aに熱媒流体が分配され、流出口25cに連通している第2室26bを経て熱交換部11bに熱媒流体が分配される。このときに熱媒流体が熱交換部11a、11bに均等に分配されるように、流体分配装置25およびヘッダタンク23が設計されている。
一方、脈動流分配時には、流体分配装置25は、流出口25b、25cを個別に開閉することを繰り返す。脈動流分配時における流出口25b、25cの開閉動作は、第1実施形態と同様である。
脈動流分配において流出口25b、25cが同時に閉じられることはなく、いずれか一方は開とされる点、また脈動流分配時に流入口25aが全閉とされることがない点も第1実施形態と同様である。
本実施形態の熱交換装置20は、第1実施形態と同様に不図示の冷却対象を冷却するために使用され、以下のように作動する。熱交換装置20の稼働開始に伴ってポンプ16が運転を開始し、熱媒流体を管路18に流通させる。熱媒流体は、ポンプ16、流体分配装置25、第1室26a、熱交換部11a、レシーバタンク24の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。それと同時に、熱媒流体は、ポンプ16、流体分配装置25、第2室26b、熱交換部11b、レシーバタンク24の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。
その循環中に、熱交換器22とポンプ16との間で、冷却対象を冷却するために使用され熱媒流体の温度が上昇する。昇温した熱媒流体は熱交換部11a、11bにおける空気との熱交換により冷却された後に冷却対象へと流れる。
第1実施形態と同様に、流体分配装置25は、熱交換装置20の稼働開始時には定常流分配となっており、ポンプ16が定常運転になった後に、熱交換器22の上流側における熱媒流体の温度に基づいて、流体分配装置25の定常流分配と脈動流分配との切り替えが行われる。切り替えのための構成や手順についても第1実施形態と同様である。
流体分配装置25が定常流分配の時には流入口25a並びに流出口25b、25cを開とするので、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体がすべての熱交換部11a、11bに分配される。定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水できる。
一方、脈動流分配時には、流体分配装置25は、流出口25b、25cを交互に開閉することを繰り返す。脈動流分配時における流出口25b、25cの開閉動作は、第1実施形態と同様である。そのため、流出口25bから流出し第1室26aを経て熱交換部11aに向かう熱媒流体の流れは、流出口25bの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。同様に、流出口25cから第2室26bを経て熱交換部11bへ向かう熱媒流体の流れも、流出口25cの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。
脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができる。なお、流体分配装置25の脈動流分配時に流出口25b、25cを開閉する周波数については、第1実施形態と同様である。
以上説明したところから明らかなように、本実施形態の熱交換装置20は第1実施形態と同様の効果を有する。
また、本実施形態の熱交換装置20では、流体分配装置25はヘッダタンク25と一体に配置される。そのため、熱交換器22と流体分配装置25とを別々に設置することを要さないので、熱交換装置20の取り付けにおいて作業性が向上し、取り付けスペースの増加も抑制できるという効果を発揮する。
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。この実施形態は、一つのアクチュエータのみを流路切り替えのための駆動源とした流体分配装置を用いた熱交換装置の例である。
図3Aに示すように、本実施形態の熱交換装置30は、2つの熱交換部11a、11bにて構成される熱交換器12、流体分配装置32、ポンプ16、これらをつなぐ管路18等で構成される。なお、熱交換部11a、11b、熱交換器12、ポンプ16および管路18は第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
流体分配装置32はアクチュエータとしてのモータ33と分配部34とで構成されている。モータ33が、流体分配装置32における流路切り替えのための唯一の駆動源である。
図3Bに示すように、分配部34は、円筒状の分配筒35を備えている。分配筒35の内部は空洞で分配室35aとなっている。図3Bの左上の図は流体分配装置32の概略斜視図である。図3Bの丸付き数字1〜8のラベルが附された図は、分配部34の内部構造し示す概略図である。
円筒形状の分配筒35の下側底面35bには流入口となる流入ノズル36が装着されている。流入ノズル36の外端部はポンプ16の吐出側につながる管路18に接続されている。従って、ポンプ16を稼働させれば、ポンプ16から吐出された流体を流入ノズル36から分配室35aへ送り込むことができる。
分配筒35の側面には流入口となる2つの流出ノズル37a、37bが装着されている。流出ノズル37a、37bは180°の位相で相対して配置されている。流出ノズル37aの外端部には熱交換部11aの流入側の管路18aが接続されている。流出ノズル37bの外端部には熱交換部11bの流入側の管路18bが接続されている。
モータ33は分配筒35の上側に配置されており、モータ33の回転軸33aが分配筒35の上側底面の中央部を貫通して分配室35a内に達している。回転軸33aの中心線と分配筒35の中心線とが一致する設計である。
回転軸33aには棒状のアーム38が取り付けられている。アーム38は分配筒35の半径方向に沿って回転軸33aから突出しており、その先端には邪魔板39が取り付けられている。邪魔板39は、円筒の側面の一部を切り取ったものに相当する形状の曲面板である。
回転軸33aの中心から邪魔板39の外面までの距離は、分配筒35の内周半径よりもわずかに小さい。したがって、邪魔板39と分配筒35の内周面との間にはクリアランスがある。これにより、モータ33を稼働させれば、回転軸33aと共にアーム38および邪魔板39が分配室35a内で回転する。
邪魔板39の上下寸法は分配筒35の内法高さをわずかに下回り、周方向寸法は流出ノズル37a、37bの内径を上回る。邪魔板39の外周寸法は流出ノズル37a、37bを片方ずつ閉じるのに十分な大きさであるが、両方の流出ノズル37a、37bを同時に閉じることはできない。このため、分配室35a内で邪魔板39を回転させれば、流出ノズル37a、37bを交互に開閉できる。
本実施形態の流体分配装置32は、第1、第2実施形態と同様に定常流分配と脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。
この流体分配装置32にあっては、定常流分配とは流出ノズル37a、37bのいずれとも重ならない位置、例えば図3Bの丸付き数字1または5で示す位置に邪魔板39を停止させておくことをいう。なお、流入ノズル36は常時開放である。
定常流分配時には流出ノズル37a、37bが開となる。これにより、定常流分配時には流入ノズル36から受け入れた熱媒流体を流出ノズル37a、37bへと通過させる。これにより、流出ノズル37a、37bにつながる管路18a、18bを経て2つの熱交換部11a、11bに熱媒流体が分配される。このときに、定常流としての熱媒流体が熱交換部11a、11bに均等に分配されるように、流体分配装置14および管路18a、18bが設計されている。
また、脈動流分配時には、モータ33にて邪魔板39を回転させて、流出ノズル37a、37bを交互に開閉する。このとき、邪魔板39は、図3Bの丸付き数字1〜8の順に位置を変化させる作動を繰り返す。邪魔板39の回転に伴って流出ノズル37a、37bが開閉されるが、流出ノズル37a、37bが同時に閉じられることはなく、いずれか一方は開とされる。
流体分配装置32の動作を切り替えるための構成すなわちモータ33をオン、オフするための構成は、第1実施形態にて述べたものと同様である。本実施形態の熱交換装置30は、第1、第2実施形態と同様に不図示の冷却対象を冷却するために使用される。
その動作について、管路18に設置した温度計の測定値に基づいて不図示の電子制御装置が流体分配装置32を制御する構成例として説明する。
熱交換装置30の稼働開始に伴ってポンプ16が運転を開始し、熱媒流体を管路18に流通させる。熱媒流体はポンプ16、流体分配装置32、熱交換器12の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。その循環中に、熱交換器12とポンプ16との間で、冷却対象を冷却するために熱媒流体使用され、熱媒流体の温度が上昇する。昇温した熱媒流体は熱交換部11a、11bにおける空気との熱交換により冷却された後に冷却対象へと流れる。
熱交換装置30が稼働すると、電子制御装置は図4に示す分配装置制御を開始する。まず、電子制御装置は流体分配装置32のモータ33を制御して邪魔板39を初期位置に停止させる(S101)。初期位置は、上述したように流出ノズル37a、37bのいずれとも重ならない位置(例えば図3Bの丸付き数字1または5で示す位置)に設定されており、流体分配装置32の動作としては定常流分配である。
次に、電子制御装置は管路18に設置されている温度計の測定値を取得する(S102)。続いて、その測定値が切り替え設定値を上回るか否かを判断する(S103)。ステップS103で否定判断なら、S101に戻る。
一方、測定値が切り替え設定値を上回るなら(S103:Yes)、モータ33をオンにして邪魔板39を回転させる(S104)。これにより、流体分配装置32の動作は脈動流分配となる。
その後、電子制御装置は管路18に設置されている温度計の測定値を取得し(S105)、その測定値が脈動維持設定値を上回るか否かを判断する(S106)。なお、脈動維持設定値は切り替え設定値と同じでもよいし、異なっていてもよい。
S106で肯定判断ならS104に戻り、モータ33による邪魔板39の回転を継続させる。この場合、流体分配装置32は脈動流分配を継続する。
一方、測定値が脈動維持設定値以下なら(S106:No)、S101に移行して邪魔板39を初期位置に停止させる。これに伴って、流体分配装置32の動作は脈動流分配を終了し、定常流分配に切り替わる。
このようにして定常流分配と脈動流分配との切り替えが行われる。流体分配装置32が定常流分配の時には流出ノズル37a、37bが開とされ、流入ノズル36は常時開放であるので、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体がすべての熱交換部11a、11bに分配される。定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水できる。
流体分配装置32が脈動流分配の時には、邪魔板39によって流出ノズル37a、37bが遮断ないし絞られるので、管路18a、18bから熱交換部11a、11bへ向かう熱媒流体の流量が減少する。そして、閉じられていた流出ノズル37a、37bが開かれると、流出ノズル37a、37bから流出し管路18a、18bから熱交換部11a、11bへ向かう熱媒流体の流量が増加する。これにより、管路18a、18bを通過する熱媒流体の流れは、流出ノズル37a、37bの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。
脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができる。なお、脈動流分配時に流出ノズル37a、37bを開閉する周波数すなわちモータ33の回転数は一定値に固定してもよいし、可変としてもよい。この周波数を可変とするならば、脈動流分配時にあっては各熱交換部11a、11bでの熱伝達率を任意に変更できる。
以上説明したところから明らかなように、本実施形態の熱交換装置30は第1実施形態と同様の効果を有する。
また、本実施形態の熱交換装置30では、流体分配装置32の駆動源が一つのモータ33のみであるので、部品点数の増加を抑制できる。
さらに、本実施形態の熱交換装置30では、流体分配装置32の動作状態によらず、流入ノズル36が常時開放であるので、流体分配装置32に流入する熱媒流体によるウォータハンマを防止できる。しかも、流出ノズル37a、37bのいずれか一方は必ず開であるので、上記のウォータハンマ防止効果が向上している。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第3実施形態の邪魔板39を他の部材に置き換えることが可能である。ここでは、その一例としてロータによる置き換えを説明する。なお、図5Aに示すように、本実施形態の熱交換装置40は多くの部分が第1実施形態または第3実施形態と共通であるから、それらについては第1実施形態または第3実施形態と同符号を付して説明を省略する。
図5Bに示すように、本実施形態の流体分配装置42ではモータ33の回転軸33aには円盤状のロータ44が取り付けられている。なお、図5Bは、図3Bと同形式で表されている。回転軸33aとの連結位置はロータ44の中心を外れている。従って、回転軸33aによるロータ44の回転は偏心したものになる。
ロータ44の外周面で回転軸33aの中心から最も離れた位置までの、回転軸33aの中心からの距離が、ロータ44の回転半径となるが、その回転半径は分配筒35の内周半径よりもわずかに小さく、ロータ44の外周面と分配筒35の内周面との間にはクリアランスがある。また、ロータ44の高さ方向の厚みは分配筒35の内法高さをわずかに下回る。
従って、モータ33を稼働させれば、回転軸33aとロータ44が分配室35a内で回転し、流出ノズル37a、37bを片方ずつ交互に閉じる。ただし、分配筒35の内径とロータ44の外径とに差がある。したがって、ロータ44が流出ノズル37aを完全に閉じるには至らず、かつ、ロータ44が流出ノズル37bを完全に閉じるには至らない。
本実施形態の流体分配装置42は、第1〜第3実施形態と同様に定常流分配と脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。
この流体分配装置42にあっては、定常流分配とは流出ノズル37a、37bのいずれとも重ならない位置、例えば図4Bの丸付き数字1または5で示す位置にロータ44を停止させておくことをいう。なお、ロータ44の回転位置によらず、流入ノズル36は、その一部が閉塞されるものの残余の部分は常時開放で、流入ノズル36の開口面積は一定である。
定常流分配時には流出ノズル37a、37bが開となる。これにより、定常流分配時には流入ノズル36から受け入れた熱媒流体を流出ノズル37a、37bへと通過させる。これにより、流出ノズル37a、37bにつながる管路18a、18bを経て2つの熱交換部11a、11bに熱媒流体が分配される。このときに定常流としての熱媒流体が熱交換部11a、11bに均等に分配されるように、流体分配装置14および管路18a、18bが設計されている。
また、脈動流分配時には、モータ33にてロータ44を回転させて、流出ノズル37a、37bを交互に開閉する。このとき、ロータ44は、図5Bの丸付き数字1〜8の順に位置を変化させる作動を繰り返す。これによって、ロータ44の回転に伴って流出ノズル37a、37bが開閉されるが、流出ノズル37a、37bが同時に閉じられることはなく、いずれか一方は開とされる。例えば、丸囲み数字3の段階で、流出ノズル37aが全閉となるが、流出ノズル37bが全開となる。また、丸囲み数字7の段階で、流出ノズル37bが全閉となるが、流出ノズル37aが全開となる。
流体分配装置42の動作を切り替えるための構成すなわちモータ33をオン、オフするための構成は、第1、第3実施形態にて述べたとおりである。
本実施形態の熱交換装置40の構成は上記に説明した通りである。この熱交換装置40は、第1〜第3実施形態と同様に不図示の冷却対象を冷却するために使用され、以下のように作動する。
熱交換装置40の稼働開始に伴ってポンプ16が運転を開始し、熱媒流体を管路18に流通させる。熱媒流体はポンプ16、流体分配装置42、熱交換器12の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。その循環中に、熱交換器12とポンプ16との間で、冷却対象を冷却するために使用され熱媒流体の温度が上昇する。昇温した熱媒流体は熱交換部11a、11bにおける空気との熱交換により冷却された後に冷却対象へと流れる。
流体分配装置42は、熱交換装置40の稼働開始時には定常流分配となっている。ポンプ16が定常運転になった後の流体分配装置42の定常流分配と脈動流分配との切り替えは、第3実施形態において図4を用いて説明した分配装置制御に倣って(ただし、邪魔板39をロータ44と読み替える。)行えばよい。また、第1実施形態と同様に行われてもよい。
流体分配装置42が定常流分配の時には流出ノズル37a、37bが開とされ、流入ノズル36は常時開放で開口面積が一定であるので、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体がすべての熱交換部11a、11bに分配される。定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水できる。
流体分配装置42が脈動流分配の時には、ロータ44によって流出ノズル37a、37bが遮断ないし絞られるので、管路18a、18bから熱交換部11a、11bへ向かう熱媒流体の流量が減少する。そして、遮断ないし絞られていた流出ノズル37a、37bが開かれると、流出ノズル37a、37bから流出し管路18a、18bから熱交換部11a、11bへ向かう熱媒流体の流量が増加する。これにより、管路18a、18bを通過する熱媒流体の流れは、流出ノズル37a、37bの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。
脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができる。
なお、脈動流分配時に流出ノズル37a、37bを開閉する周波数すなわちモータ33の回転数は一定値に固定してもよいし、可変としてもよい。この周波数を可変とするならば、脈動流分配時にあっては各熱交換部11a、11bでの熱伝達率を任意に変更できる。
以上説明したところから明らかなように、本実施形態の熱交換装置40は第1実施形態と同様の効果を有する。
また、本実施形態の熱交換装置40では、流体分配装置42の駆動源が一つのモータ33のみであるので、第3実施形態と同様に部品点数の増加を抑制できている。
さらに、本実施形態の熱交換装置40では、流体分配装置42の動作状態によらず、流入ノズル36が常時開放であるので、流体分配装置42に流入する熱媒流体によるウォータハンマを第3実施形態と同様に防止できる。しかも、流出ノズル37a、37bのいずれか一方は必ず開であるので、上記のウォータハンマ防止効果が向上している。
(第5実施形態)
次に第5実施形態について説明する。第3実施形態の邪魔板39や第4実施形態のロータ44は回転変位することで脈動流を生成するが、往復変位する部材にても脈動流を生成できる。その一例を第5実施形態として説明する。なお、本実施形態の熱交換装置50は第1実施形態または第2実施形態と共通する部分があるので、それらについては第1実施形態または第2実施形態と同符号を付して説明を省略する。
図6Aに示すように、本実施形態の熱交換装置50は、2つの熱交換部11a、11bを有する熱交換器22、流体分配装置25、ポンプ16、これらをつなぐ管路18等で構成される。
熱交換器22にはヘッダタンク23とレシーバタンク24とが設けられている。ヘッダタンク23の内部は隔壁54によって第1室26aと第2室26bとに分割されている。第1室26a内には熱交換部11aを構成する伝熱チューブの上流端が開口し、第2室26b内には熱交換部11bを構成する伝熱チューブの上流端が開口している。そして、これらすべての伝熱チューブの下流端はレシーバタンク24内に開口している。また、レシーバタンク24は管路18によってポンプ16の吸入側に接続されている。
管路18とヘッダタンク23との接続部には流体分配装置52が組み付けられている。流体分配装置52は管路18の末端部に連結されたケーシング53を備えている。図6Bに示すように、ケーシング53には流入口53aとなる開口が設けられ、この開口が管路18に接続されている。また、流入口53aと対向する位置にも開口が設けられており、ここには流出ノズル55の上流端が取り付けられている。流出ノズル55は円筒状である(図6C参照)。流出ノズル55は、下流端がヘッダタンク23に取り付けられており、流出ノズル55とヘッダタンク23とは連通している。
流出ノズル55の内部には、隔壁54と一連にされた仕切り板54aが配されている。仕切り板54aは円筒状の流出ノズル55を断面半円状に2分割して、流出口56aと流出口56bを形成している。流出口56aはヘッダタンク23の第1室26aに連通し、流出口56bは第2室26bに連通している。流体分配装置52の流入口53aから流入した熱媒流体は、流出口56aを通って第1室26a内に流入可能であり、また流出口56bを通って第2室26b内に流入可能である。
ケーシング53の内部には、長方形板状の弁体57が往復動可能に収容されている。図6Cに示すように、弁体57には正方形の通過口57aが設けられている。通過口57aの各辺の寸法は流出ノズル55の内径とほぼ等しい。
ケーシング53の内部は、この通過口57aを通ってしか、流入口53aから流出口56a、56bに熱媒流体が流れないように構成されている。図6Cに示すように、弁体57は、往復変位の位置によって、(1)流出ノズル55を全開、(2)流出口56aは開で流出口56bは閉、(3)流出口56bは開で流出口56aは閉とすることができる。
図6Bに示すように、弁体57の一方端部(図6Bで上側端部)は永久磁石58が配置されている。永久磁石58はN極、S極の一方が弁体57の上端面になり、他方が弁体57の内側に埋没する姿勢で弁体57に一体化している。その永久磁石58とは反対側の端部(図6Bで下側端部)とケーシング53の間にはバネ59が介装されている。そして、ケーシング53の外側には、永久磁石58と対向する位置にソレノイドコイル61が固定されている。
こうした構成により、ソレノイドコイル61へ通電する電流の向き(ソレノイドコイル61にて形成される磁極の方向)を切り替え、また通電をオフにすることで、弁体57の位置を上述の(1)、(2)または(3)に変位させることができる。バネ59はソレノイドコイル61への通電がオフのときに弁体57を上述の(1)の位置に保持する働きをする。すなわち、ソレノイドコイル61、永久磁石58およびバネ59にて、アクチュエータの一種である往復動式のソレノイドを構成している。
本実施形態では、図6Cの(1)の状態では、ソレノイドコイル61がオフになって流出ノズル55が全開してソレノイドコイル61がとなる。また、図6Cの(2)の状態では、ソレノイドコイル61に通電されて永久磁石58(弁体57)を引き寄せると流出口56aは開で流出口56bは閉、(3)ソレノイドコイル61に(2)とは逆方向に通電して、永久磁石58の反発で弁体57を遠ざければ流出口56bは開で流出口56aは閉となる構成である。なお、流入口53aが弁体57によって閉鎖されることはない。
本実施形態の流体分配装置52は、第1〜第4実施形態と同様に定常流分配と脈動流分配とに、その動作を切り替え可能である。
この流体分配装置52にあっては、定常流分配とは、弁体57の位置を流出ノズル55が全開になる(1)の位置にすることをいう。定常流分配時には流出口56a、56bが全開となる。これにより、定常流分配時には流入口53aから受け入れた熱媒流体を流出口56a、56bへと通過させる。これにより、流出口56aに連通している第1室26aを経て熱交換部11aに熱媒流体が分配され、流出口56bに連通している第2室26bを経て熱交換部11bに熱媒流体が分配される。このときに熱媒流体が熱交換部11a、11bに均等に分配されるように、流体分配装置52およびヘッダタンク23が設計されている。
また、脈動流分配時にはソレノイドコイル61に通電されるが、通電の向きが適宜タイミングで反転する。従って、弁体57は流出口56aを開で流出口56bを閉にする位置と、流出口56bを開で流出口56aを閉にする位置とで往復変位する。
本実施形態の熱交換装置50は、第1〜第4実施形態と同様に冷却対象(図示と説明は省略する)を冷却するために使用され、以下のように作動する。
熱交換装置50の稼働開始に伴ってポンプ16が運転を開始し、熱媒流体を管路18に流通させる。熱媒流体はポンプ16、流体分配装置25、ヘッダタンク23(第1室26aまたは第2室26b)、熱交換部11aまたは熱交換部11b、レシーバタンク24の順に流れてポンプ16に戻る回路を循環する。その循環中に、熱交換器22とポンプ16との間で、冷却対象を冷却するために使用され熱媒流体の温度が上昇する。昇温した熱媒流体は熱交換部11a、11bにおける空気との熱交換により冷却された後に冷却対象へと流れる。
第1実施形態等と同様に、流体分配装置52は、熱交換装置50の稼働開始時には定常流分配となっており、ポンプ16が定常運転になった後に、熱交換器22の上流側における熱媒流体の温度に基づいて、流体分配装置25の定常流分配と脈動流分配との切り替えが行われる。
定常流分配と脈動流分配とに切り替えるための制御は、第3実施形態において図4で説明した分配装置制御に倣って(邪魔板39を弁体57と、モータ33をソレノイドコイル61と読み替える。)行えばよい。また、第1実施形態と同様に行われてもよい。
流体分配装置52が定常流分配の時には流入口53a並びに流出口56a、56bを開とするので、流速が時間的に変動しない定常流の熱媒流体がすべての熱交換部11a、11bに分配される。定常流の熱媒流体をすべての熱交換部11a、11bに分配することで各熱交換部11a、11bに低圧損で熱媒流体を通水できる。
一方、脈動流分配時には、流体分配装置52は、流出口56a、56bを交互に開閉することを繰り返す。脈動流分配時における流出口56a、56bの開閉動作は、上述した通りである。そのため、流出口56aから流出し第1室26aを経て熱交換部11aに向かう熱媒流体の流れは、流出口56aの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。同様に、流出口56bから第2室26bを経て熱交換部11bへ向かう熱媒流体の流れも、流出口56bの開閉に応じて流速が増減変化させられて脈動流となる。
脈動流の熱媒流体を各熱交換部11a、11bに分配することで脈動流により各熱交換部11a、11bにおける熱伝達率を増加させることができる。
なお、流体分配装置52の脈動流分配時に流出口56a、56bを開閉する周波数、つまりソレノイドコイル61への通電を反転させる周波数については上述の各例と同様である。
以上説明したところから明らかなように、本実施形態の熱交換装置50は第1実施形態と同様の効果を有する。
また、本実施形態の熱交換装置50では、流体分配装置52の駆動源が一つのソレノイド構造(ソレノイドコイル61、永久磁石58、バネ59)だけであるので、部品点数の増加を抑制できている。
さらに、本実施形態の熱交換装置50では、流体分配装置52の動作状態によらず、流入口53aが常時開放であるので、流体分配装置52に流入する熱媒流体によるウォータハンマを防止できる。しかも、流出口56a、56bのいずれか一方は必ず開であるので、上記のウォータハンマ防止効果が向上している。
(第6実施形態)
次に第5実施形態について説明する。第3、第4実施形態では、流出ノズル37a、37bを開閉する邪魔板39が1枚であり、第5実施形態では流出口56a、56bを開閉する弁体57が1枚であるが、邪魔板39や弁体57のような開閉のための部材を複数にすることもできる。ここでは、その一例を説明する。
図7Aは、本実施形態の分配部34等を図3Bと同形式で表している。図7Aに示すところから明らかなように、本実施形態の流体分配装置62は第3実施形態の流体分配装置32において1枚であった邪魔板39を3枚に増やして120°ピッチで配置したものである。これとともにアーム38も3本に増えているが、その他は第3実施形態と共通である。そのため、流体分配装置62については第3実施形態と同符号を付して構成についての説明は省略する。また、流体分配装置62以外の構成については、図示および説明を省略する。
本発明に係る熱交換装置にあっては、流体分配装置の脈動流分配時に熱媒流体の流速を増減させる周波数を変化させると各熱交換部での熱伝達率を変更できることは、上記した通りである。要すれば、周波数を高めれば各熱交換部での熱伝達率が向上する。これをグラフで示せば図7Bのようになる。
その周波数を高めるためには、第3、第4実施形態ではモータ33の回転数を高めればよく、第5実施形態ではソレノイドコイル61への通電を反転させる周波数を高めればよい。ただし、例えばモータ33の回転数を単に高めるだけでは効率的ではない面もある。
本実施形態では邪魔板39を3枚に増やしているので、図7Cに示すように、モータ33の回転数が同じでも、1枚の場合に比べれば脈動の周波数が3倍に増加しているので、格段に熱伝達率が向上している。本実施形態においても、流出ノズル37a、37bの両方が同時に閉鎖されることはない。
なお、邪魔板39の枚数を増やし過ぎると、流出ノズル37a、37bが同時に閉鎖されるのを避けることが困難になる。流出ノズル37a、37bの同時閉鎖はウォータハンマの原因となるので好ましくない。よって、邪魔板39の枚数には自ずと上限がある。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。上述の各実施形態では、流体分配装置にて分配された熱媒流体の経路(分配後経路)は熱交換部に至るまで、他の分配後経路との合流や分岐はしない構成である。そうすると、ときには流体分配装置を通過した熱媒流体の全量が1つの分配後経路に流れて1つの熱交換部に集中する可能性がある。そのような場合、当該の熱交換部における圧力損失が大きくなるので好ましくない。
しかし、流体分配装置から各熱交換部に至るまでの分配後経路中にバイパスを設けて複数の分配後経路同士を連通させる構成とすれば、1つの熱交換部への熱媒流体の集中と圧損の上昇を緩和できる。
図8Aに示す熱交換装置71は、第1実施形態の熱交換装置10に対して、管路18aと管路18bとを結ぶバイパス管路72を設けた構成としたものである。そのバイパス管路72には、これを通る流体の流量を調節するためのオリフィス73が設置されている。オリフィス73は可変オリフィスでもよいし、固定絞り方式でもよい。
バイパス管路72を設けてあるので、管路18aの内でバイパス管路72との接続部よりも下流側となる第1流路74aが、実際に熱交換部11aへ流入する熱媒流体の通路となる。また、管路18bの内でバイパス管路72との接続部よりも下流側となる第2流路74bが、実際に熱交換部11bへ流入する熱媒流体の通路となる。
これらバイパス管路72に関する構成の他は第1実施形態と共通である。そのため、第1実施形態と同符号を付して構成についての説明は省略する。なお、管路18aおよび管路18bが上述の分配後通路に相当する。
熱交換装置71の用途や作動等は第1実施形態と同様であるし、第1実施形態と同様の効果を有する。
ただし、バイパス管路72を設けてあるので、流体分配装置14の動作が脈動流分配であるときに、第1流路74aの流量並びに第2流路74bの流量の増減幅は、図8Cおよび図8Dに示すように、バイパス管路72が無い場合よりも小さくなっている。
よって、流体分配装置14を通過した熱媒流体の全量が熱交換部11a、11bに一方に集中するのを回避でき、圧損の上昇を緩和できる。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。第2実施形態のようにヘッダタンクが仕切られている場合は、仕切るための部材にバイパス用の連通口を設けたり、バイパス管を設置したりすれば、第7実施形態と同等の効果を得ることができる。図8Bに示すのはその一例である。
図8Bに示す熱交換装置75は、第2実施形態の熱交換装置20に対して、ヘッダタンク23を第1室26aと第2室26bとに分割している隔壁23aにバイパス用の連通口76を設けた構成としたものである。連通口76に、可変絞りや固定絞り方式のオリフィスを設置してもよい。
これら連通口76に関する構成の他は第2実施形態と共通である。そのため、第2実施形態と同符号を付して構成についての説明は省略する。なお、第1室26aおよび第2室26bが上述の分配後通路に相当する。熱交換装置71の用途や作動等は第2実施形態と同様であるし、第2実施形態と同様の効果を有する。
ただし、連通口76を設けてあるので、第1室26aと第2室26bとの圧力差に応じて、熱媒流体が一方から他方へ流入または流出できる。そのため、流体分配装置25の動作が脈動流分配であるときに、流体分配装置25を通過した熱媒流体の全量が熱交換部11a、11bのいずれかに集中するのを回避でき、圧損の上昇を緩和できる。
以上、複数の実施形態を説明したが、本発明における熱交換部の構成については、熱交換の機能を果たせる限りにおいて特段の限定はない。例えば、各実施形態では複数本の伝熱チューブを1群として熱交換部を構成しているが、第1実施形態でも述べたとおり、伝熱チューブ1本にて1つの熱交換部としてもよい。
各熱交換部に含まれる伝熱チューブの本数は、必ずしも同数でなくともよい。ただし、その本数に偏りがあると脈動流分配時に、本数の少ない方の流体圧が高くなって圧損が大きくなる等の不都合が生じるおそれがある。したがって、伝熱チューブの本数はなるべく均等であるのが望ましい。
また、例えばプレート式熱交換器のように、熱交換器の形式によっては伝熱チューブを用いないものもあるが、そのような場合にあっても熱交換の機能を果たす部分を1群として熱交換部を構成すればよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
10、20、30、40、50、71、75 熱交換装置
11a、11b 熱交換部
12、22 熱交換器
14、25、32、42、52、62 流体分配装置
14a、25a、53a 流入口
14b、14c、25b、25c、56a、56b 流出口
23、26 ヘッダタンク
33 モータ(アクチュエータ)
36 流入ノズル(流入口)
37a、37b 流出ノズル(流出口)
58 永久磁石(アクチュエータ)
59 バネ(アクチュエータ)
61 ソレノイドコイル(アクチュエータ)

Claims (5)

  1. 複数の熱交換部(11a、11b)を有する熱交換器(12、22)と、前記熱交換器に流入させる流体を受け入れて前記複数の熱交換部の各々に分配するための流体分配装置(14、25、32、42、52、62)と、を備え、
    前記流体分配装置は、第1種の流れで前記流体を前記複数の熱交換の各々に分配する第1分配と、前記第1種の流れよりも流速の増減変化の量が大きい第2種の流れで前記流体を前記複数の熱交換部の各々に分配する第2分配とに、その動作を切り替え可能であり、
    前記流体分配装置は、前記複数の熱交換部に対応する複数の流出口(14b、14c、25b、25c、37a、37b、56a、56b)を有し、前記第2分配の実行時において、前記複数の流出口の全部が閉じることがない、熱交換装置。
  2. 前記熱交換器は、該熱交換器に流入した流体を前記複数の熱交換部の各々に分配するヘッダタンク(23、26)を有し、
    前記流体分配装置は、前記ヘッダタンクと一体に配置されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
  3. 前記流体分配装置は、一つのアクチュエータ(33、58、61)により駆動されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換装置。
  4. 前記流体分配装置は、前記第2分配において前記流速の増減変化の周波数を変更することができることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  5. 前記流体分配装置は、前記熱交換器に流入させる流体を受け入れるための流入口(14a、25a、36、53a)を有し、
    前記流入口は、前記第2分配の実行時において、常に流体が通過可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換装置。
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