JP6724333B2 - 微生物培養シート及び微生物の検出方法 - Google Patents

微生物培養シート及び微生物の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、微生物培養シートに関し、好ましくは微生物を検出するために用いられる微生物培養シートに関する。また、本発明は、微生物の検出方法に関する。
試料中の微生物の存在を確認し、又は微生物数を測定する方法としては、寒天平板混釈法がある。この寒天平板混釈法では、あらかじめ滅菌したシャーレ中に形成した寒天培地を使用するので、寒天培地を高圧蒸気滅菌するためのオートクレーブや、微生物検査を無菌的に行うための検査室が必要となる。また、微生物のサンプリング、試料液の調製、分注、培地との混釈などの操作が要求される。また、通常結果を得るためには数日を要する場合がある。
そこで、簡便に微生物検査を行うことができる手段として、乾燥培地を備える微生物培養シートが開発されている。例えば、特許文献1には、基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、前記培養層を被覆するカバーシートと、を有する微生物培養シートが記載されている。
また、検査時間を短縮する方法として、特許文献1には、微生物を含有する懸濁液に半波電位の絶対値が250mv以下のテトラゾリウム塩と水溶性多価アルコールを加え、この懸濁液を培地に添加して培養を行う方法が開示されている。また、特許文献2には、酵素的サイクリング反応によりテトラゾリウム塩などの還元系蛍光試薬の発色または蛍光シグナルを増感させる方法が開示されている。テトラゾリウム塩は、微生物が有する脱水素酵素によって還元されて発色する有用な発色剤である。
国際公開第2011/007802号 特開2005−287452号公報 特開2005−110638号公報
上述の微生物培養シートにおける培養層は、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含有するが、これらの成分を含有する培養層(特にゲル化剤を含有する培養層)の場合において、発色試薬として2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)や3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)などの還元系発色試薬を用いると、微生物によっては発育が阻害され、検出時間が長くなる場合があることがわかった。
そこで、本発明の目的は、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含有する培養層を備える微生物培養シートであって、還元系発色試薬による発色による微生物の検出を迅速に行うことができる微生物培養シートを提供することである。
本発明者らは、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含有する培養層の場合において、意外にも、還元系発色剤として少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩を用いることにより、微生物の発育が良好であり、還元系発色試薬による発色による微生物の検出を迅速に行うことができることを見出し、本発明に至った。
(1) 基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、を有し、還元系発色試薬を含む微生物培養シートであって、
前記培養層が、ポリビニルピロリドン、ゲル化剤、及び栄養成分を含有し、
前記還元系発色試薬が、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である微生物培養シート。
(2) 前記還元系発色試薬が、前記培養層に含まれる、(1)に記載の微生物培養シート。
(3) 前記培養層を被覆するカバーシートをさらに有し、
前記カバーシートは、該カバーシートが前記培養層を被覆した際に前記培養層に対向する面の上に、前記還元系発色試薬を含む試薬層を有する、(1)に記載の微生物培養シート。
(4) 前記還元系発色試薬が、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド)(TB)又は2,2’−Di−p−ニトロフェニル−5,5’−ジフェニル−(3,3’−ジメトキシ)−4,4’−ビスフェニレンジテトラゾリウムクロリド(NTB)である、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の微生物培養シート。
(5) 前記培養層が、可塑剤をさらに含有する、(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の微生物培養シート。
(6) 前記培養層が、選択剤をさらに含有する、(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の微生物培養シート。
(7) 試料中の微生物を検出する方法であって、
(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の微生物培養シートの前記培養層に、前記試料の少なくとも一部を接種する工程と、
前記培養層上に接種された微生物を培養する工程と、
を含む方法。
(8) ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含む培養層において還元系発色試薬を用いて微生物を検出する方法であって、
前記還元系発色試薬が、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である方法。
本発明の構成により、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含有する培養層の場合においても、還元系発色試薬による発色による微生物の検出を迅速に行うことができる微生物培養シートを提供することができる。
微生物培養シートの一例を示す平面図(a)及び断面図(b)であり、基材シートの略中央に円形の培養層が形成されている態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す断面図であり、図2(a)は、基材シートが多層構造である態様を示す図であり、図2(b)は、培養層が多層構造である態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す展開図(a)及び断面図(b)であり、基材シートに培養層、カバーシートに試薬層が形成されている態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す平面図(a)及び断面図(b)であり、基材シートの上に培養層と枠層とが形成されている態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す断面図であり、基材シートの上に培養層と枠層が形成され、試薬層が前記枠層の内側に対向するように、カバーシートに形成されている態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す断面図であり、基材シートの上に培養層と枠層が形成され、試薬層が前記枠層の内側に対向するように、また、粘着層が前記枠層と対向するように、カバーシートに形成されている態様を示す図である。 微生物培養シートの一例であって、基材シートの上に枠層が形成されている断面図であり、図7(a)は、基材シートが多層構造である態様を示す図であり、図7(b)は、培養層が多層構造である態様を示す図である。 微生物培養シートの一例を示す図であって、基材シート上に外周を枠層で囲まれた複数の培養層が形成され、カバーシートが基材シートに固設されている態様を示す平面図(a)及び断面図(b)である。 微生物培養シートの一例を示す図であって、カバーシートが連設されている基材シート上に、外周を枠層で囲まれた培養層が形成されている態様を示す展開図(a)、断面図(b)、及び前記カバーシートが折り曲げられ、培養層が被覆されている態様を示す断面図(c)である。 微生物培養シートの一例を示す図であって、カバーシートが両面接着テープによって培養層が形成されている基材シートに固設されている態様を示す断面図である。 微生物培養シートの一例を示す図であって、カバーシートが両面接着テープによって培養層と枠層とが形成されている基材シートに固設されている態様を示す断面図である。 微生物培養シートの一例を示す外観斜視図である。 微生物培養シートの一例であって、基材シートの上に枠層が形成されている外観斜視図である。
本発明は、基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、を少なくとも有し、還元系発色試薬を含む微生物培養シートに関する。また、本発明の微生物培養シートにおいて、前記培養層は、ポリビニルピロリドン、ゲル化剤、及び栄養成分を少なくとも含有し、場合により可塑剤及び選択剤を含有することができる。また、前記還元系発色試薬は、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である。本発明に係る微生物培養シートは、前記還元系発色試薬による発色により微生物を検出することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
以下、微生物培養シートの各構成要素について説明する。
(1)培養層
基材シートの上に設ける培養層は、ポリビニルピロリドン、ゲル化剤、及び栄養成分を少なくとも含有する。また、培養層は、場合により可塑剤を含有することができ、また、場合により選択剤を含有することができる。培養層は、これらの成分を分散又は溶解させる溶媒を含む培地液から形成することができる。培養層は、還元系発色試薬としての少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩を含んでもよい。
(i)ポリビニルピロリドン
ポリビニルピロリドンは、培地液の粘度調整剤としての役割を有する。ポリビニルピロリドンによれば、濃度を調整することで容易に培地液の粘度調整することができるので、ゲル化剤、還元系発色試薬、栄養成分、可塑剤及び選択剤を均一に分散させることができる。また、培養層を必要な部分に形成することが可能となり、高価な材料の無駄が生じない。また、培地液を所定のパターンに配置した後に溶媒を除去すると、ポリビニルピロリドンの優れた皮膜性のため、ゲル化剤や栄養成分を取り込んで培養層を成膜することができる。また、基材シートとも良好な密着性を有するので、接着剤を使用しなくても培養層を形成することができる。そのため、接着剤成分による微生物の発育の影響を低減することができる。
(ii)ゲル化剤
ゲル化剤を含有する培地液を用いて形成される培養層は、被検液を接種すると増粘若しくはゲル化するため、微生物の育成に良好な粘度を付与することができる。また、増粘後にはカバーシートに密着し得るため、培養時の培養層の乾燥を抑制することができる。
ゲル化剤としては、特に制限されるものではなく、公知のゲル化剤を用いることができる。ゲル化剤としては、高分子多糖類が好ましく、カラギーナン、グアーガム、キタンサンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガム、アルギン酸及びアルギン酸塩などを挙げることができる。これらの高分子多糖類は、被検液中に含まれる水によって増粘又はゲル化するため、微生物の発育が良好となる。また、高分子多糖類は、透明性が高いため、コロニーの視認性に優れる。さらに、高分子多糖類は、増粘してカバーシートに密着し易くなるため、培養時の乾燥を抑制することができる。高分子多糖類の中でも、グアーガムが特に好ましい。グアーガムは、低濃度で極めて高い粘度を呈するため、少量で微生物の発育に適した環境を作ることができるからである。なお、グアーガムは、一年生の豆科植物であるグアーの種子の胚乳部より製造される。
ゲル化剤の含有量は、ポリビニルピロリドン100質量部に対して100質量部以上600質量部以下であることが好ましい。
(iii)栄養成分
栄養成分としては、特に制限されるものではなく、公知の栄養成分を用いることができる。栄養成分としては、例えば、一般生菌検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、酵母エキス・ペプトン・ブドウ糖混合物、肉エキス・ペプトン混合物、又はペプトン・大豆ペプトン・ブドウ糖混合物など、あるいはこれらにリン酸二カリウム及び/又は塩化ナトリウムを加えた混合物が好ましく用いられる。大腸菌群検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、デソキシコール酸ナトリウム・ペプトン・クエン酸鉄アンモニウム・塩化ナトリウム・リン酸二カリウム・乳糖などが好ましく用いられる。黄色ブドウ球菌検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、肉エキス・ペプトン・塩化ナトリウム・マンニット・卵黄液混合物、又はペプトン・肉エキス・酵母エキス・ピルビン酸ナトリウム・グリシン・塩化リチウム・亜テルル酸・卵黄液混合物などが好ましく用いられる。ビブリオ検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、酵母エキス・ペプトン・蔗糖・チオ硫酸ナトリウム・クエン酸ナトリウム・コール酸ナトリウム・クエン酸第2鉄・塩化ナトリウム・牛胆汁などが好ましく用いられる。腸球菌検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、牛脳エキス・ハートエキス・ペプトン・ブドウ糖・リン酸二カリウム・窒化ナトリウムなどが好ましく用いられる。真菌検査用の微生物培養シートの場合、栄養成分としては、ペプトン・ブドウ糖混合物、酵母エキス・ブドウ糖混合物、又はポテトエキス・ブドウ糖混合物などが好ましく用いられる。これらの中から発育させようとする微生物に応じて一種又はそれ以上の栄養成分を選択して用いることができる。なお、培養層中で栄養成分が不足している場合は、被検液に不足分の栄養成分を加えてもよい。
(iv)可塑剤
培養層は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、例えば、エーテルエステル誘導体系可塑剤、グリセリンやグリセリン誘導体系可塑剤、プロピレングリコールやグリコール誘導体系可塑剤、グリコールエーテル誘導体系可塑剤、ポリヒドロキシカルボン酸誘導体系可塑剤、フタル酸誘導体系可塑剤などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもグリセリンが好ましい。
(v)選択剤
培養層は、検出目的以外の微生物の発育を抑える選択剤を含有してもよい。このような選択剤としては、例えば、抗生物質、合成抗菌剤などの抗生剤、色素、界面活性剤、無機塩などが用いられる。抗生物質としては、メチシリン、セフタメタゾール、セフィキシム、セフタジジム、セフスロジン、バシトラシン、ポリミキシンB、リファンピシン、ノボビオシン、コリスチン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、又はストレプトマイシンなどを挙げることができる。合成抗菌剤としては、例えば、サルファ剤、ナリジクス酸、又はオラキンドックスなどを挙げることができる。また、色素としては、例えば、静菌又は殺菌作用のあるクリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、メチレンブルーなどを挙げることができる。また、界面活性剤としては、例えば、Tergitol7、ドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩などを挙げることができる。また、無機塩としては、例えば、亜セレン酸塩、亜テルル酸塩、亜硫酸塩、窒化ナトリウム、塩化リチウム、シュウ酸塩、又は高濃度の塩化ナトリウムなどを挙げることができる。これら以外にも、例えば、タウロコール酸塩、グリシン、胆汁末、胆汁酸塩、又はデオキシコール酸塩などを挙げることができる。
(vi)その他
培養層は、1層で構成されてもよく、2層以上で構成されてもよい。例えば、ポリビニルピロリドン溶液(i)にゲル化剤(ii)を含有する培地液で第1培養層を形成し、その上にポリビニルピロリドン溶液(i)にゲル化剤(ii)、栄養成分(iii)、選択剤(v)を含有する培地液で第2培養層を形成し、本発明で使用する培養層としてもよい。
また、培地液中に含まれる成分によっては混合により反応を起こす場合があり、これらを別の層に含有させることで混合反応を防ぐことができる。したがって、例えば栄養成分に混合反応を起こす成分AとBとが含有される場合には、A成分を除去した第1培養層と、B成分を除去した第2培養層との2層を積層して培養層としてもよい。
(vii)培養層の形成
培養層は、基材シートの上に培地液を所定のパターンに塗布して乾燥することにより形成することができる。培養層をパターン形成することにより、被検液の滴下後に速やかにカバーシートを被覆することで、被検液が自然に一定範囲に拡がるため、優れた操作性を提供することができる。本発明において、「パターン形成」とは、基材シートの上に、培地液を予め決められた形状に印刷、塗布、塗工、又は噴霧などによって配置することをいう。培地液を基材上に配置する方法は、特に制限されるものではない。したがって、パターン形成には、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他の印刷、ディスペンサーやインクジェットなどによる塗布、バーなどを使用してコーティングするバーコートやナイフコート、ダイコートなどの塗工、スプレー方式などの噴霧などの方法を使用することができる。
培地液中に含まれる成分は、粉末で添加してもよいし、また、これらを溶媒に溶解した後、例えば、前記ポリビニルピロリドンのアルコール溶液に混合し、培地液としてもよい。
(2)還元系発色試薬
還元系発色試薬は、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である。少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩は、2つのテトラゾール環を有することが好ましい。テトラゾール環は還元反応によりホルマザン骨格を形成する。
少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩を還元系発色試薬として用いることにより、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含有する固体培地を用いた場合でも、良好な微生物の発育性を得ることができ、その結果、微生物の検出を迅速に行うことができる(微生物の検出時間を短縮することができる)。具体的には、例えば、Staphylococcus aureus(以下、「S.aureus」と書く。)(黄色ブドウ球菌)は、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を用いた固体培地において還元系発色試薬としてTTCを用いると、発育が阻害される傾向があるため、検出の確認のために充分な発色を得るまでに時間が掛かる(例えば48時間)。しかし、本発明において、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩を還元系発色試薬として用いることにより、S.aureusの発育を阻害せずに良好に増殖させることができ、その結果、発色を確認するまでの時間(検出時間)を短くすることができる。これは、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩は、その構造が嵩高いため、微生物における栄養成分の取込みに影響を与えず、微生物の発育を阻害しないためと考えられる。そして、微生物が良好に発育して増殖できるため、S.aureusの検出時間を短くすることができるものと推測される。また、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩は、S.aureus以外の他の微生物(例えば、Klebsiella pneumoniaeなどの大腸菌)に対しても発育を阻害しないため、幅広い微生物の検出ツールとして使用することができる。
還元系発色試薬としては、特に制限されるものではないが、例えば、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド)(TB)又は2,2’−Di−p−ニトロフェニル−5,5’−ジフェニル−(3,3’−ジメトキシ)−4,4’−ビスフェニレンジテトラゾリウムクロリド(NTB)などを挙げることができる。
Figure 0006724333
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還元系発色試薬が含有される位置は、培養層中、または微生物の培養時に該試薬が培養層中に移行可能な部材中であり得る。微生物の培養時に還元系発色試薬が培養層中に移行可能な部材としては、例えば、後述する、カバーシート上に設けられた試薬層が挙げられる。
(3)微生物培養シートの構成
微生物培養シートの好適な態様の一例を図1(a)、(b)に示す。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図である。
図1は、方形の基材シート10の略中央に培養層30が形成され、かつ前記培養層30を被覆するように、方形のカバーシート40が設けられている態様を示す。基材シート10に培養層30がパターン形成されている。図2(a)の断面図に示すように、基材シート10は、基材シート11と、基材シート13との2層からなる多層シートであってもよく、更に、プラスチック以外の他の層を積層する多層シートであってもよい。また、図2(b)に示すように、培養層30が2層以上の多層で構成されていてもよい。
パターン形成により調製された培養層30の形状は、図1に示す円形に限定されるものではなく、正方形、長方形、その他の多角形、不定形であってもよい。
図3は、本発明の一実施形態を示す微生物培養シートである。該微生物培養シートは、図3(a)の展開図に示すように、基材シート10の上に培養層30が形成され、カバーシート40の上に本発明における還元系発色試薬を含む試薬層30’が形成されている。本実施形態において、培養層30には本発明における還元系発色試薬を含まないことが好ましい。試薬層30’は、カバーシート40が培養層30を被覆した際に培養層30に対向するカバーシート40の面上に形成されている。カバーシート40が培養層30を被覆した際、つまりカバーシート40を閉じた際、試薬層30’は培養層30に接触し、本発明における還元系発色試薬が培養層30に移行する。試薬層30’は、バインダー成分及び栄養成分などのその他の成分を含有することができる。例えば、試薬層30’にもゲル化剤が含まれている場合には、基材シート10の上の培養層30と、カバーシート40に設けられた試薬層30’とが対向して配設されるため、基材シート10の上の培養層30に被検液を接種した後にカバーシート40で培養層30を被覆すると、被検液が培養層30と試薬層30’とに吸水され、培養層30と試薬層30’との双方で微生物を観察することができる。また、本発明における還元系発色試薬の種類によっては、培養層30に含有させると滅菌処理時に着色が目立つものもあり、その場合には、そのような還元系発色試薬を試薬層30’に含有させることで、滅菌処理時の着色を防止することができる。したがって、本実施形態は、基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、前記培養層を被覆するカバーシートと、を有する微生物培養シートであって、前記培養層が、ポリビニルピロリドン、ゲル化剤、及び栄養成分を含有し、前記カバーシートは、該カバーシートが前記培養層を被覆した際に前記培養層に対向する面の上に、還元系発色試薬を含む試薬層を有し、前記還元系発色試薬が、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である微生物培養シートである。
また、微生物培養シートは、図4(a)の平面図及び図4(b)のA−A’線断面図に示すように、基材シート10の略中央に培養層30が形成され、前記培養層の外周に円形の枠層20が形成されたものであってもよい。枠層20によれば、培養層30に接種した被検液の吸水範囲をより確実に限定することができる。なお、枠層20の形状は円形に限定されるものではなく、方形、楕円形、多角形、不定形などいずれであってもよいが、培養層30に接種した被検液の吸水範囲が所定の面積を確保しうるように枠層が形成されていることが好ましい。また、この態様において、図5の断面図に示すように、更にカバーシート40に、基材シート10の上の培養層30と対向するように試薬層30’が形成されていてもよい。
更に、図6に示すように、前記枠層20と対向するように、カバーシート40に粘着層50が形成されていてもよい。枠層20と粘着層50とが密着することで、培養層30の乾燥や汚染をより効果的に防止することができる。
微生物培養シートでは、図7(a)の断面図に示すように、疎水性樹脂からなる枠層20が基材シート10の表面に形成されている場合であっても、基材シート10は、基材シート11と、基材シート13との2層からなる多層シートの態様であってもよいし、プラスチック以外の他の層を積層する多層シートであってもよい。また、図7(b)の断面図に示すように、疎水性樹脂からなる枠層20が基材シート10の表面に形成されている場合であっても、培養層30は2層以上の多層で構成されていてもよい。
また、培養層30は、基材シート10の上に複数存在してもよい。複数の培養層30と、それらの外周を囲む凸形状の疎水性樹脂からなる枠層20と、前記培養層30を被覆するカバーシート40とが基材シート10の端部で固設された態様を図8(a)、(b)に示す。図8(a)は平面図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A’断面図である。図8(b)では、カバーシート40は、培養層30を被覆し、かつ枠層20の上部に密着することができるように、2つの角部(C1,C2)が形成される態様となっている。なお、図8とは相違するが、前記基材シート10上に形成された培養層30と対向するように、カバーシート40に試薬層30’が形成されていてもよい。
(4)基材シート
微生物培養シートでは、基材シートの上に培地液をパターン形成するため、基材シートは、耐溶媒性、印刷適性を有する必要がある。また、微生物培養シートとして、耐水性も要求され、培養層を形成する際の乾燥処理に耐える耐熱性を有することも要求される。基材シートは、単層でもよく、2層以上の積層シートであってもよい。
(5)カバーシート
カバーシートは、基材シートに固設されていることが好ましい。カバーシートは、培養中の落下菌などによる汚染を防止すると共に、培養層の水分蒸発を防止する作用を有する。カバーシートは、防水性、水蒸気不透過性を有すると同時に、微生物の培養後、カバーシートを通してコロニーを観察及び計数できるように、透明であることが好ましい。カバーシートとしては、例えば、前記基材シートで挙げたようなポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックシートを使用することができる。微生物培養シートでは、前記基材シートとカバーフィルムとが透明であれば、微生物培養シートの背面からの投射光で観察することもでき、また、側面からの入射光で観察することもできる。すなわち、カバーシート側からも基材シート側からもコロニーを観察及び計数することができるので、観察方法及び計測方法の選択の幅が広がることとなる。なお、カバーシートの開け閉めなどの作業性を考慮すると、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが特に好ましい。
(6)枠層
培養層の外周に、疎水性樹脂からなる枠層が形成されていることが好ましい。枠層が形成されていると、被検液を培養層に接種し、カバーシートを被覆した場合に、被検液が枠層まで速やかに拡散されるため、培養層による被検液の吸水を待たずにカバーシートを被覆することができ、接種操作を短時間で行うことができる。また、枠層によって被検液の遺漏をより確実に防げ、接種時の作業効率を向上することできる。培養層にゲル化剤が含まれる場合には、被検液が枠層の内側にある培養層に吸水され、ゲル化剤が増粘し、培養層とカバーシートとの密着性により培養層の乾燥を防止することができる。また、培養層にゲル化剤が含まれない場合であっても、ポリビニルピロリドンが溶解し増粘するため、培養層とカバーシートとの密着性により培養層の乾燥を防止することができる。培養層とカバーシートとの密着性が優れると、カバーシートにコロニー形成のための層などを形成する必要がなく、コロニーの優れた視認性を確保することができる。
(7)粘着層
基材シートやカバーシートに粘着層を形成することができる。このような粘着層は、培養層を被覆したカバーシートを固定し、培養層の水分蒸発や汚染を防止する目的で配設され、基材シートを密封できればいかなる種類の粘着剤を用いてもよい。作業性を考えると基材シートとカバーシートとが再接着できる程度に、弱い粘着力を有する粘着剤が好ましい。例えば、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が好ましく、特に再剥離タイプ及び微粘着タイプのアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。具体的には、ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート(好ましくはアルキルの炭素数が2〜12)100質量部に対し、カルボキシル基や水酸基、アミノ基などの官能基を含有するモノマーを2〜15質量部共重合させたポリマーに、粘着付与剤としてロジン、キシレン樹脂、フェノール樹脂などを加え、メラミン類、イソシアネート類、エポキシなどで架橋したものなどを使用することができる。また、粘着層はどのような形状でもよいが、基材シートとカバーシートとの接着部分に隙間がなく接着できるように配設されることが好ましい。
(8)格子印刷層
格子印刷層が積層されていてもよい。格子印刷は、着色剤、樹脂、溶剤などの選択範囲が広い点でグラビア印刷などが好ましい。枡目の大きさは1cm角程度が適当である。
(9)微生物培養キット
本発明では、前記微生物培養シートと、特定成分を含む被検液とを組み合わせて、微生物培養キットとすることができる。被検液に、培養層に添加することが望ましい成分を添加して培養することができる。特に、滅菌処理その他の工程で変質、変色、分解などを受けやすい成分を含む場合に、有効である。
(10)製造方法
(i)培養層の形成
基材シートの上に培地液を所定のパターンに配置して乾燥することにより形成することができる。また、パターン形成の方法も、培地液を基材シートの予定した形状に塗布できるものであれば、特に制限はなく、印刷、塗布、塗工、噴霧などの任意の方法を用いることができる。好ましくは、ポリビニルピロリドンのアルコール溶液に、ゲル化剤、還元系発色試薬及び栄養成分、並びに場合により可塑剤及び選択剤を含有させた培地液を調製し、該培地液を基材シートの上にパターン形成した後、前記培地液に含まれるアルコールを除去して培養層を形成する。
微生物培養シートの製造方法では、基材シートと培養層との密着性、パターン形成の容易さなどの理由から、ポリビニルピロリドンのアルコール溶液を使用することが好ましい。アルコールとしては、炭素数1〜5のアルコールを好適に使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノールから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらの中でも、メタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましい。従来は、栄養成分を溶解するために水やトルエンなどの高沸点溶媒が使用されていたが、溶媒除去のために高温で加熱する必要があり、培養層に含まれる成分や基材の熱分解を招くおそれがあった。また、溶媒除去に過剰の熱エネルギーを使用する必要があり、コスト上昇の一因となり、また、溶媒除去時間も長くなるため生産効率低下の一因ともなっていた。本実施形態では、ポリビニルピロリドンを使用し、その溶媒として、低沸点である前記アルコールを使用することで、培地液に含まれる成分や基材の熱変性を回避し、並びに生産効率を向上することができる。なお、前記趣旨を損なわない範囲で、アルコールにクロロホルムなどの副溶媒を混合した溶媒を使用することもできる。
ポリビニルピロリドンを培地液の必須の成分とした理由は、前記したように濃度を調整することでゲル化剤、本発明における還元系発色試薬、栄養成分、選択剤及び可塑剤などを均一に溶解又は分散させることができ、しかも、容易に粘度を調整することができるためである。これにより、培地液を容易にパターン形成できる。なお、ポリビニルピロリドンは、優れた成膜性と基材シートに対する密着性とを有するため、接着剤を使用することなく基材シートに培養層を形成することができ、接着剤による微生物の発育阻害を回避することができる。
ポリビニルピロリドンに対するアルコールの量は、ポリビニルピロリドン100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、300質量部以上2000質量部以下であることがより好ましく、900質量部以上1400質量部以下であることが特に好ましい。
培地液を構成するゲル化剤はパターン形成が可能であれば、ポリビニルピロリドンのアルコール溶液に溶解している必要はない。したがって、微生物培養シートの製造方法では、ゲル化剤を粉末で添加することができる。粉末で添加する場合のゲル化剤の平均粒子径は5〜500μm、より好ましくは10〜200μmである。平均粒子径が前記範囲にあれば、分散性に優れる。500μmを超えると分散性が低下し、パターン形成適性が損なわれる場合がある。ただし、これらを溶媒に溶解し、前記ポリビニルピロリドンのアルコール溶液に混合して培地液としてもよい。
培地液におけるゲル化剤の含有量は、ポリビニルピロリドン100質量部に対して、100質量部以上600質量部以下であることが好ましく、250質量部以上400質量部以下であることがより好ましい。ゲル化剤の含有量が前記範囲であれば、被検液滴下の際の水分によって、増粘又はゲル化し、菌の育成に良好な粘度とすることができる。
微生物培養シートの製造方法では、前記培地液を使用してパターン形成するが、特に、前記培地液を使用し、ディスペンサーによる塗布などで好適に培養層を形成することができる。
前記したように培養層は、2層以上の多層であってもよい。なお、培養層が第1培養層と第2培養層とからなる2層である場合に、異なる方法でパターン形成を行ってもよい。例えば、第1培養層をディスペンサーで塗布してパターン形成し、第2培養層のパターン形成に関しては、噴霧などその他の方法を用いてもよい。
本実施形態では、培地液を基材シート上にパターン形成した後に、培地液に含まれるアルコールを除去する。ポリビニルピロリドンにゲル化剤などを配合した培養層を使用することで、寒天培地と同様に微生物コロニーを観察及び計数することができ、かつ極めて優れた視認性を得ることができる。なお、ゲル化剤は、水溶性であるため水溶液として調製された後に基材に塗工されることが一般的である。しかし、ゲル化剤は水の除去に高温かつ長時間の加熱処理を行う必要があり、水溶液の調製時に、高い粘度のために気泡などが混入する場合があった。本実施形態によれば、ゲル化剤などの粉末をポリビニルピロリドンのアルコール溶液に分散させるため、気泡の混入を回避することができ、水を使用していないため、乾燥を低温かつ短時間で行うことができる。また、ゲル化剤などは、ポリビニルピロリドンのアルコール溶液に分散しているだけで溶解していないため、培地液の粘度の上昇を防止することができ、これによって円滑なパターン形成を行うことができる。しかも、得られた培養層では、前記成分がポリビニルピロリドンで被覆されているので、被検液を接種するとポリビニルピロリドンが直ちに溶解し、前記成分が溶解又は吸水する。そのため、被検液の接種後、すぐにカバーシートで被覆することができる。また、ポリビニルピロリドンが溶解したり、ゲル化剤が含まれたりする場合には、それが増粘してカバーシートに密着するため、乾燥を防止しうると共に、極めて優れた視認性を確保することができる。
上述の試薬層の形成方法は、例えば、パターン形成により行うことができる。パターン形成の場合には、培養層の形成と同様に、印刷、塗布、塗工、噴霧などであってもよい。
培養層の乾燥は、培地液に含まれる前記アルコールを除去できればよく、温度、圧力など、従来公知の方法に準じて乾燥することができる。
基材シートの上に形成する培養層の厚さは、乾燥後において50〜1000μmであることが好ましく、200〜600μmであることがより好ましい。また、塗布量は、乾燥後において5〜400g/mであることが好ましく、100〜300g/mであることがより好ましい。前記範囲で、菌の発育に最適な粘度の培養層とすることができる。
(ii)枠層の形成
基材シートの表面、かつ培養層の外周に枠層を形成してもよい。枠層は、疎水性樹脂を用いて形成することができる。なお、枠層の製造方法は特に問わない。あらかじめ枠層が形成された基材シートを使用することもできる。
枠層が形成された基材シートとしては、少なくとも疎水性樹脂を表面に有する基材シートであって、その疎水性樹脂の部分がエンボス加工されることにより、枠の形状に凸部が形成されたものが挙げられる。そして、前記凸部の内側に培養層を形成すれば、微生物培養シートを製造することができる。また、培養層を形成する箇所を凹状にエンボス加工し、凹部の外周に形成される凸部を枠層とすることもできる。
(iii)カバーシートの固設
培養層に被検液を接種した後にカバーシートで培養層を被覆し、これを培養するため、カバーシートの一部が基材シートに固設されていることが好ましい。ただし、直接スタンプや拭き取り試験などの場合、カバーシートが無いことで作業効率が向上する場合には、カバーシートを取り除いて使用してもよい。
カバーシートと基材シートとが同一部材で構成される場合には、別個に作成したカバーシートを基材シートにヒートシールやラミネート接着、その他によって固設してもよいが、カバーシートと基材シートとを同質の材料を使用し、図9(a)の展開図、図9(b)の断面図に示すように基材シート10とカバーシート40とを連設したまま基材シート10に枠層20と培養層30とを形成し、カバーシート40を折り曲げて微生物培養シートを形成してもよい。図9(c)にその断面図を示す。この方法によれば、カバーシートに試薬層30’や粘着層50を形成する場合でも、基材シート10とカバーシート40が連設されているため、基材シート10の上の培養層30と対向する位置に正確かつ簡便に試薬層30’を形成することができる。
また、図10及び図11の横断面図に示すように、カバーシート40と基材シート10とを異なる部材で構成し、カバーシート40と、培養層30を形成した基材シート10とを、両面接着テープ60などで貼り合わせてもよい。
図12及び図13に、カバーシート40に格子印刷が形成され、カバーシート40と培養層30を形成した基材シート10とが端部で接着された微生物培養シートの外観斜視図を示す。図13では、培養層30の周囲に枠層20が形成されている。
微生物培養シートは、ガンマ線照射やエチレンオキサイドガス滅菌などの滅菌を施し、微生物培養シートの製品とすることができる。微生物培養シートは、含まれる微生物栄養成分の種類や、使用する基材シート、カバーシートの通気性その他に応じて各種の微生物の培養を行うことできる。
本発明の一形態は、少なくとも1種の微生物を含む試料中の微生物を検出する方法であって、本実施形態の微生物培養シートの培養層に、試料の少なくとも一部を接種する工程と、培養層上に接種された微生物を培養する工程と、を含む方法である。
また、本発明の一形態は、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含む培養層において還元系発色試薬を用いて微生物を検出する方法であって、前記還元系発色試薬が、少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩である方法である。少なくとも2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩を用いることにより、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含む培養層においても微生物の発育を良好な状態とすることができ、還元系発色試薬による微生物の検出時間を短くすることができる。また、この実施形態は、特に黄色ブドウ球菌の検出に好ましく用いることができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<微生物培養シートの作製>
メタノール276gにポリビニルピロリドン24gを溶解し、ポリビニルピロリドンのメタノール溶液を調製した。このポリビニルピロリドンのメタノール溶液に、ゲル化剤としてのグアーガム粉末75.8g、栄養成分としてのトリプトン9.3g、酵母エキス0.9g、ピルビン酸ナトリウム0.35g、L−トリプトファン0.35g、塩化ナトリウム1.7g、リン酸二水素ナトリウム0.18g、リン酸水素二ナトリウム0.95g、硝酸カリウム0.18g、選択剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.04g、可塑剤としてのグリセリン10gを添加して培地液を調製した。なお、使用した材料の入手先は以下の通りである。
・ポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドン K−90」)
・グアーガム粉末(三晶社製、商品名「ネオビスコ G」、200メッシュタイプ)
・トリプトン(Becton,Dickinson and Company社製、商品名「BACT TRYPTONE」)
・酵母エキス(Becton,Dickinson and Company社製、商品名「YEAST EXTRACT」)
・ピルビン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
・L−トリプトファン(和光純薬工業社製)
・塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)
・リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業社製)
・リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)
・硝酸カリウム(和光純薬工業社製)
・ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
・グリセリン(和光純薬工業社製)
次に、この培地液をポリエチレンテレフタラートフィルム(帝人デュポン社製、商品名「テイジンテトロンフィルム」)の上に所定のパターンに配置した後、50℃で15分間乾燥させ、培養層を形成した。乾燥後の培養層の厚さは、約250μmであった。次いで、ディスペンサーを用いて、UV硬化インク(十条ケミカル社製、商品名「レイキュアーGA 4100−2」)を幅1.0mm、高さ750μm、直径52mmの円状に塗布した。続いて、水銀ランプを用いて積算光量250mJ/cmの紫外線を照射し、UV硬化インクを硬化させ、培養層の周りに疎水性樹脂を用いて枠層を形成した。
そして、カバーシート(東セロ社製、OPPフィルム、型番「OP U−1(片面コロナ放電処理)」、厚み:40μm)を、前記ポリエチレンテレフタラートフィルムの上に積層し、端部を接着した後、γ線で滅菌して、微生物培養シートを作製した。
<試料の調製>
発色試薬溶液の調製:還元系発色試薬としての3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド)(TB)を減菌水で希釈し、発色試薬溶液を調製した。
Figure 0006724333
菌懸濁液の調製:SCD培地(ニッスイ社製)にて35℃、24時間培養したStaphylococcus aureus(ATCC25923)を滅菌リン酸緩衝生理食塩水で10〜1000cfu/mLとなるように希釈し、菌懸濁液を調製した。
上述の発色試薬溶液を上述の菌懸濁液に添加し、試料を調製した。なお、試料中の還元系発色試薬の濃度が50μg/mLとなるように試料を調製した。
<培養>
上述の微生物培養シートの培養層に試料1mlを接種し、その上にカバーシートを乗せて、試料を培養層全体に広げた。その後、約1分間静置してゲルを形成させ、培養試験用サンプルを得た。
<評価>
得られた培養試験用サンプルを35℃で48時間培養した。そして、24、27、48時間後における培養試験用サンプルについて、コロニーを目視にてカウントし、また、発色の視認性を下記評価基準に従って評価した。
A:発色を充分に視認できる。
B:発色をわずかに視認できる。
C:発色を視認できない。
なお、本実施例では、還元系発色試薬を含む試料を調製し、この試料を培養層に接種させて試験を行っているが、培養層上に配置された試料中に含まれる還元系発色試薬は、培養層中に移行することになる。そのため、本実施例で得られる結果は、還元系発色試薬を予め含む微生物培養シート(例えば、培養層中に還元系発色試薬が含まれる微生物培養シートあるいはカバーシート上に形成された試薬層中に還元系発色試薬が含まれる微生物培養シート)を用いた場合と同じである。
(実施例2)
S.aureus(ATCC25923)の代わりにKlebsiella pneumoniae(ATCC13883)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、培養試験用サンプルを作製し、評価した。
(比較例1)
TBの代わりに2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、培養試験用サンプルを作製し、評価した。
Figure 0006724333
(比較例2)
TBの代わりにTTCを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、培養試験用サンプルを作製し、評価した。
(比較例3)
TBの代わりに3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、培養試験用サンプルを作製し、評価した。
Figure 0006724333
(比較例4)
TBの代わりにMTTを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、培養試験用サンプルを作製し、評価した。
評価結果を表1にまとめて示す。
Figure 0006724333
実施例1に示されるように、還元系発色試薬として2つ以上のテトラゾール環を有するテトラゾリウム塩(TB)を用いた場合、ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含む固体培地にて発育が遅いS.aureus(黄色ブドウ球菌)においても、良好な発育が認められ、24時間培養で充分な発色が認められた。そのため、検出時間を24時間に短縮できることがわかった。
実施例2に示されるように、還元系発色試薬としてTBを用いた場合、K.pneumoniaeにおいても良好な発育が認められた。
本発明の微生物培養シートは、例えば、微生物の検出や微生物数の検査などに用いることができる。
10 基材シート
20 枠層
30 培養層
30’ 試薬層
40 カバーシート
50 粘着層
60 両面接着テープ

Claims (7)

  1. 基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、を有し、還元系発色試薬を含む微生物培養シートであって、
    前記培養層が、ポリビニルピロリドン、ゲル化剤、及び栄養成分を含有し、
    前記還元系発色試薬が、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド)(TB)を含む微生物培養シート。
  2. 前記還元系発色試薬が、前記培養層に含まれる、請求項1に記載の微生物培養シート。
  3. 前記培養層を被覆するカバーシートをさらに有し、
    前記カバーシートは、該カバーシートが前記培養層を被覆した際に前記培養層に対向する面の上に、前記還元系発色試薬を含む試薬層を有する、請求項1に記載の微生物培養シート。
  4. 前記培養層が、可塑剤をさらに含有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の微生物培養シート。
  5. 前記培養層が、選択剤をさらに含有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の微生物培養シート。
  6. 試料中の微生物を検出する方法であって、
    請求項1乃至のいずれか1項に記載の微生物培養シートの前記培養層に、前記試料の少なくとも一部を接種する工程と、
    前記培養層上に接種された微生物を培養する工程と、
    を含む方法。
  7. ポリビニルピロリドン及びゲル化剤を含む培養層において還元系発色試薬を用いて微生物を検出する方法であって、
    前記還元系発色試薬が、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド)(TB)を含む方法。
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