JP6722410B2 - ドリル - Google Patents

ドリル Download PDF

Info

Publication number
JP6722410B2
JP6722410B2 JP2018108401A JP2018108401A JP6722410B2 JP 6722410 B2 JP6722410 B2 JP 6722410B2 JP 2018108401 A JP2018108401 A JP 2018108401A JP 2018108401 A JP2018108401 A JP 2018108401A JP 6722410 B2 JP6722410 B2 JP 6722410B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cutting edge
drill
margin
shoulder
edge portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018108401A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019209439A (ja
Inventor
隆雄 片桐
隆雄 片桐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tungaloy Corp
Original Assignee
Tungaloy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tungaloy Corp filed Critical Tungaloy Corp
Priority to JP2018108401A priority Critical patent/JP6722410B2/ja
Priority to US16/420,242 priority patent/US10850333B2/en
Priority to DE102019003976.9A priority patent/DE102019003976B4/de
Publication of JP2019209439A publication Critical patent/JP2019209439A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6722410B2 publication Critical patent/JP6722410B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B51/00Tools for drilling machines
    • B23B51/02Twist drills
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2228/00Properties of materials of tools or workpieces, materials of tools or workpieces applied in a specific manner
    • B23B2228/10Coatings
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2228/00Properties of materials of tools or workpieces, materials of tools or workpieces applied in a specific manner
    • B23B2228/10Coatings
    • B23B2228/105Coatings with specified thickness
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2251/00Details of tools for drilling machines
    • B23B2251/02Connections between shanks and removable cutting heads
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2251/00Details of tools for drilling machines
    • B23B2251/12Cross sectional views of the cutting edges
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2251/00Details of tools for drilling machines
    • B23B2251/18Configuration of the drill point
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23BTURNING; BORING
    • B23B2260/00Details of constructional elements
    • B23B2260/072Grooves

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)
  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)

Description

本発明は、ドリルに関するものである。
従来、穴あけ加工用のドリルにおいて、切刃にホーニングを施すことによって、その欠損を生じにくくすることが知られている。
例えば、特許文献1では、軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面と刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、かつ、切屑排出溝の内壁面の先端側に、切刃の内周端側に連なるシンニング部が形成されていることによって、切刃の内周端側がシンニング切刃部とされたドリルにおいて、切刃にはホーニングが施されていて、シンニング切刃部でのホーニング幅が、このシンニング切刃部の全長に亘って一定とされているとともに、シンニング切刃部の外周側に連なる外周切刃部の外周端でのホーニング幅が、シンニング切刃部でのホーニング幅の1.5倍以上に設定されていることを特徴とするドリルが提案されている。
また、例えば、特許文献2では、軸線回りに回転されるドリル本体の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域であるすくい面とドリル本体の先端面との交差稜線部に切刃が形成されたドリルであって、すくい面に交差して外周側を向く外周マージン部とドリル本体の先端面との交差稜線部であるとともに、切刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部に、ホーニングが施されており、肩部に施されたホーニングのホーニング幅が、切刃に施されたホーニングのホーニング幅以下に設定されていることを特徴とするドリルが提案されている。
特開2004−268230号公報 特許第4608933号
穴あけ加工用のドリルにおいて、加工能率を上げるため従来よりも切削条件が厳しくなる傾向の中で、これまでより工具寿命を延長することが求められている。特に薄板の穴あけ加工用のドリルにおいては、肩部において欠損が生じやすいという問題がある。これにより、ドリルの寿命を長くすることが困難となっている。
以上の理由により、特許文献1に記載のドリルでは、単に外周切れ刃の外周端でのホーニング幅をシンニング切れ刃のホーニング幅より大きくしたとしても、切削抵抗が大きくなるため、折損しやすいという問題が生じる。また、切削抵抗が大きくなるため、加工面品位(加工精度)が低下するという別の問題も生じる。この結果、工具寿命が短くなるという問題がある。
また、特許文献2に記載のドリルでは、肩部のホーニング幅が切れ刃の幅よりも小さいので、肩部の強度不足により、欠損しやすく、工具寿命を長くできないという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができるドリルを提供することを目的とする。
本発明者は、ドリルの工具寿命の延長について研究を重ねたところ、ドリルの各部位におけるホーニング幅を特定の範囲とすることによって、ドリルの耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、ドリルの工具寿命を延長することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃が形成されたドリルであって、
前記すくい面に交差して外周側を向くマージン部と、
前記マージン部と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部であるとともに、前記切れ刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部と、
前記切屑排出溝の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部と、を有し、
前記切れ刃が、回転中心から順に、前記シンニング部に形成された第1の切れ刃部、前記第1の切れ刃から更に外周側に形成された第2の切れ刃部、前記肩部に形成された肩切れ刃部、及び、前記マージン部に形成されたマージン切れ刃部を有し、
前記第2の切れ刃、前記マージン切れ刃部、及び、前記肩切れ刃部に、ホーニングが施されており、
前記各部位のホーニング幅が、下記式(1)で表される関係を満たす、ドリル。
肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
[2]
前記肩切れ刃部のホーニング幅が80μm以上200μm以下である、[1]に記載のドリル。
[3]
前記マージン切れ刃部のホーニング幅が60μm以上180μm以下である、[1]又は[2]に記載のドリル。
[4]
前記第2の切れ刃部のホーニング幅が30μm以上150μm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のドリル。
[5]
表面に被覆層が形成された被覆ドリルであって、
軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃が形成され、
前記すくい面に交差して外周側を向くマージン部と、
前記マージン部と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部であるとともに、前記切れ刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部と、
前記切屑排出溝の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部と、を有し、
前記切れ刃が、回転中心から順に、前記シンニング部に形成された第1の切れ刃部、前記第1の切れ刃から更に外周側に形成された第2の切れ刃部、前記肩部に形成された肩切れ刃部、及び、前記マージン部に形成されたマージン切れ刃部を有し、
前記第2の切れ刃、前記マージン切れ刃部、及び、前記肩切れ刃部に、ホーニングが施されており、
前記各部位のホーニング幅が、下記式(1)で表される関係を満たす、被覆ドリル。
肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
[6]
前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含有する化合物層を含む、[5]に記載の被覆ドリル。
[7]
前記被覆層が、下記式(2)
(Al1-xCrx)N・・・(2)
(式中、xはAl元素とCr元素との合計に対するCr元素の原子比を示し、0.10≦x≦0.50を満足する。)
で表される組成を有する化合物を含有する複合化合物層を含む、[5]又は[6]に記載の被覆ドリル。
[8]
前記被覆層全体の平均厚さが、0.5μm以上8.0μm以下である、[5]〜[7]のいずれかに記載の被覆ドリル。
本発明によると、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができるドリルを提供することができる。
本発明のドリルに用いるインサート本体の側面図の一例である。 本発明のドリルに用いるインサート本体の正面図の一例である。 本発明のドリルに用いるインサート本体の斜視図の一例である。 図3に示す斜視図において点線で囲まれた部分の拡大図である。 本発明のドリルの模式図の一例である。 本発明のドリルの切れ刃の断面を拡大したときの模式図の一例である。 本発明の被覆ドリルの断面組織の模式図の一例である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
[ドリル]
本実施形態のドリルは、軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃が形成されたドリルであって、すくい面に交差して外周側を向くマージン部と、マージン部と刃先部の先端逃げ面との交差稜線部であるとともに、切れ刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部と、切屑排出溝の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部と、を有し、切れ刃が、回転中心から順に、シンニング部に形成された第1の切れ刃部、第1の切れ刃から更に外周側に形成された第2の切れ刃部、肩部に形成された肩切れ刃部、及び、マージン部に形成されたマージン切れ刃部を有し、第2の切れ刃、マージン切れ刃部、及び、肩切れ刃部に、ホーニングが施されており、各部位のホーニング幅が、下記式(1)で表される関係を満たす、ドリル。
肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
なお、本実施形態において、ホーニングが施されている第2の切れ刃部、肩切れ刃部及びマージン切れ刃部は、順に、例えば、図4の拡大図における10、11及12の部位をいう。また、ホーニング幅は、図6に示す切れ刃部の断面において、ドリル回転方向Tに直交する方向に沿った長さHとなる。
本実施形態のドリルは、上記のとおり各部位におけるホーニング幅を特定の範囲とすることにより、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができる。本実施形態のドリルの耐摩耗性及び耐欠損性が向上する要因は、以下のように考えられる。但し、本発明は以下の要因により何ら限定されない。すなわち、まず、ドリルにおいて、各部位のホーニング幅のうち最も欠けやすい肩切れ刃部のホーニング幅を最も大きくしたことにより、耐欠損性が向上する。また、ドリルにおいて、マージン切れ刃部のホーニング幅を、肩切れ刃部のホーニング幅よりも小さくすることで、加工面の粗さが小さくなり、加工面品位が向上する。一方、ドリルにおいて、マージン切れ刃部のホーニング幅を、第2の切れ刃部のホーニング幅以上とすることで、耐欠損性が向上する。さらに、ドリルにおいて、第2の切れ刃部のホーニング幅を、マージン切れ刃部のホーニング幅以下とすることで、切削抵抗が小さくなり、穴精度が向上し、また、ビビリの発生を抑制でき、折損を抑制することができる。
そして、これらの構成が組み合わされることにより、本実施形態のドリルは、耐摩耗性と耐欠損性とのバランスに優れ、その結果、工具寿命を延長することができ、さらには、切削抵抗を小さくすることで、ビビリの発生の抑制、加工面品位(加工精度)の向上等の切削性能の向上を達成できると考えられる。
また、本実施形態のドリルは、肩切れ刃部のホーニング幅が80μm以上200μm以下であることが好ましく、150μm以上190μm以下であることがより好ましい。本実施形態のドリルは、肩切れ刃部のホーニング幅が、前記下限値以上であると、刃先が強化されるため、耐欠損性が一層向上し、前記上限値以下であると、切削抵抗が小さくなるため、耐摩耗性が一層向上する。
また、本実施形態のドリルは、マージン切れ刃部のホーニング幅が60μm以上180μm以下であることが好ましく、100μm以上140μm以下であることがより好ましい。マージン切れ刃部のホーニング幅が、前記下限値以上であると、刃先が強化されるため、耐欠損性が一層向上し、前記上限値以下であると、切削抵抗が小さくなるため、耐摩耗性が一層向上する。
また、本実施形態のドリルは、第2の切れ刃部のホーニング幅が30μm以上150μm以下であることが好ましく、40μm以上90μm以下であることがより好ましい。第2の切れ刃部のホーニング幅が、前記下限値以上であると、刃先が強化されるため、耐欠損性が一層向上し、前記上限値以下であると、切削抵抗が小さくなるため、耐摩耗性が一層向上する。
本実施形態のドリルを形成する基材としては、特に限定はされないが、例えば、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、及び高速度鋼を挙げることができる。それらの中でも、基材が、超硬合金、サーメット、セラミックス及び立方晶窒化硼素焼結体からなる群より選ばれる1種以上であると、耐欠損性に一層優れるので、さらに好ましい。
本実施形態のドリルは、ホーニング幅が式(1)で表される関係を満たすこと以外は、従来のドリルと同様の形状を有していてもよい。
また、本実施形態において、ホーニングとしては、特に限定されず、例えば、チャンファホーニング、Rホーニング、コンビネーションホーニングが挙げられる。
図1〜図3に本実施形態のドリルに用いるインサート本体の一例を示す。このインサート本体1は、シンニング部2、肩部3、切屑排出溝4、チゼル5、逃げ面6、マージン部7及び切れ刃全体8を有している。このようなインサート本体は、例えば、図5に示すようにドリル本体13に組み込まれる。
図5に示すように、ドリル本体13は、例えば、軸線(図5中の一点鎖線)を中心とした略円柱状に形成されたものであり、その後端側部分が工作機械の回転軸に把持されるシャンク部とされる一方、先端側部分がインサート本体1(刃先部)とされている。
また、図1〜3に示すように、インサート本体1(刃先部)の外周には、先端逃げ面6から軸線方向の後端側に向かうにしたがい一定のねじれ角でドリル回転方向T後方側にねじれる一対の切屑排出溝4が軸線に対して対称に形成されていて、これら切屑排出溝4におけるドリル回転方向T前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃8が形成されている。
また、図1に示すように、切屑排出溝4の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部2が形成されている。
本実施形態のドリルは、図4に示す第2の切れ刃部10、肩切れ刃部11及びマージン切れ刃部12において、式(1)で表される関係を満たすようにホーニングが施されている。本実施形態のドリルは、このようにホーニングが施されていることにより、耐摩耗性と耐欠損性とのバランスに優れ、その結果、工具寿命を延長することができる。
上述したような構成とされた本実施形態のドリルは、例えば、そのドリル本体13が、軸線回りに回転されながら軸線方向の先端側へ向かって送られ、シンニング切れ刃部9の内周端から徐々に被削材に食い付いていくことによって、この被削材に穴あけ加工を施していくものであり、切れ刃8にて生成される切屑を、切屑排出溝4内の後端側へ向けて排出していくことで、この穴あけ加工が継続されていく。
[被覆ドリル]
本実施形態の被覆ドリルは、表面に被覆層が形成されたこと以外は、上述のドリルと同様の形状を有しており、各部位のホーニング幅も、下記式(1)で表される関係を満たす。
肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
本実施形態の被覆ドリルは、上記のとおり各部位におけるホーニング幅を特定の範囲とすることにより、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができる。
また、本実施形態の被覆ドリルにおいて、被覆層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含有する化合物層を含むことが好ましい。また、化合物層は単層であってもよく2層以上の多層であってもよい。本実施形態の被覆ドリルは、被覆層が上述のような化合物層を含むと耐摩耗性が一層向上する傾向にある。
また、本実施形態の被覆ドリルにおいて、被覆層は、下記式(2)
(Al1-xCrx)N・・・(2)
(式中、xはAl元素とCr元素との合計に対するCr元素の原子比を示し、0.10≦x≦0.50を満足する。)
で表される組成を有する化合物を含有する複合化合物層を含むことがより好ましい。
本実施形態の被覆ドリルは、被覆層としてこのような複合化合物層を含ませると、高温硬さが大きくなり、摩擦係数が小さくなるため、耐摩耗性がより一層向上する傾向にある。さらに、本実施形態の被覆ドリルは、被覆層としてこのような複合化合物層を含ませると、肩部のホーニング幅を大きくしても、肩部の摩耗の進行を抑制できるため、肩部の強度が維持され、欠損し難くなる傾向があり、結果として、工具寿命を延長することができる。
また、本実施形態の被覆ドリルは、被覆層全体の平均厚さが、0.5μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態の被覆ドリルにおいて、被覆層全体の平均厚さが0.5μm以上であると、耐摩耗性が更に向上する傾向がある。一方、被覆層全体の平均厚さが8.0μm以下であると、耐欠損性が一層向上する傾向がある。そのため、被覆層全体の平均厚さは、0.5μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態に用いる被覆層は、組成の異なる2種又は3種以上の層を交互に積層した交互積層構造を有することが好ましい。その交互積層構造における少なくとも1層は、上述したような式(2)で表される組成を有する化合物を含有する複合化合物層(以下、「第1複合窒化物層」という。)を含むことが好ましい。
本実施形態に用いる第1複合窒化物層において上記式(2)で表される組成を有する化合物は、立方晶、又は立方晶と六方晶とを含むと好ましい。なお、上記式(2)において、xはAl元素とCr元素との合計に対するCr元素の原子比を表し、0.10≦x≦0.50を満足する。Cr元素の原子比xは、0.10以上であると、六方晶のAlの窒化物が形成されるのを抑制することができ、その結果、本実施形態の被覆ドリルは、摩擦係数が小さくなり、耐摩耗性がより一層向上する。一方、Cr元素の原子比xは、0.50以下であると、Crの窒化物が形成されるのを抑制することができるため、本実施形態の被覆ドリルは、高温硬さが向上し、耐摩耗性に優れるとともに、第1複合窒化物層の残留応力が低下するのを抑制できるため、耐欠損性に優れる。その中でも、xが0.15以上0.50以下であると、本実施形態の被覆ドリルは、耐摩耗性と耐欠損性とのバランスにより優れるため好ましい。
本実施形態に用いる被覆層の交互積層構造における少なくとも1層は、以下に説明する特定の層(以下、「第2複合窒化物層」という。)を含むことが好ましい。本実施形態に用いる第2複合窒化物層は、下記式(3):
(Ti1-ySiy)N・・・(3)
で表される組成を有する化合物を含有することが好ましい。本実施形態に用いる第2複合窒化物層において上記式(3)で表される組成を有する化合物は、立方晶を含むと好ましい。yはTi元素とSi元素との合計に対するSi元素の原子比を示し、0.00<y<1.00を満足し、好ましくは0.01≦y≦0.50を満足し、より好ましくは0.05≦y≦0.30を満足する。Si元素の原子比yが0.00を超えると、硬度が向上する傾向にあり、特に原子比yが0.01以上、より好ましくは0.05以上であると、硬度が更に向上するため、本実施形態の被覆ドリルは、耐摩耗性に一層優れる傾向にある。一方、Si元素の原子比yは、1.00未満であると、アモルファス相が形成されるのを抑制することができるため、本実施形態の被覆ドリルは、耐摩耗性に優れるとともに、被覆層中の残留圧縮応力を抑制することができるため密着性に優れる傾向にある。同様の観点から、原子比yは0.50以下であると好ましく、0.30以下であるとより好ましい。その中でも、yが0.10以上0.25以下であると、本実施形態の被覆ドリルは、耐摩耗性と密着性とのバランスにより優れるため好ましい。
なお、本実施形態において、各複合窒化物層の組成を(Al0.70Cr0.30)Nと表記する場合は、Al元素とCr元素との合計に対するAl元素の原子比が0.70、Al元素とCr元素との合計に対するCr元素の原子比が0.30であることを意味する。すなわち、Al元素とCr元素との合計に対するAl元素の量が70原子%、Al元素とCr元素との合計に対するCr元素の量が30原子%であることを意味する。
本実施形態の被覆ドリルにおいて、被覆層を上述のような交互積層構造とする場合、第1複合窒化物層及び第2複合窒化物層の1層当たりの平均厚さが、それぞれ70nm以上であると、被覆層の内部応力が高くなるのを抑えることができるため耐欠損性が向上する傾向にある。一方、第1複合窒化物層及び第2複合窒化物層の1層当たりの平均厚さが、それぞれ300nm以下であると、基材に向かって亀裂が進展するのを抑制する効果が得られるため耐欠損性が向上する傾向にある。同様の観点から、第1複合窒化物層及び第2複合窒化物層の1層当たりの平均厚さは、100nm以上300nm以下であることが好ましく、120nm以上250nm以下であることがより好ましい。
本実施形態において、第1複合窒化物層と、第2複合窒化物層とを1層ずつ形成した場合、「繰り返し数」は1回であり、本実施形態に用いる交互積層構造は、繰り返し数が1回である形態も含む。図7は本実施形態の被覆ドリルの断面組織の一例を示す模式図であるが、以下、これを利用して繰り返し数について説明する。この被覆ドリル28は、基材21と、基材21の表面に形成された被覆層27とを備える。被覆層27は、基材21側から順に、後述の下部層22と、交互積層構造26と、後述の上部層25とを積層してなる。交互積層構造26は、下部層22側から上部層25側に向かって順に、第1複合窒化物層23と、第2複合窒化物層24とを交互に積層してなり、第1複合窒化物層23及び第2複合窒化物層24をそれぞれ4層ずつ有する。この場合、繰り返し数は、4回となる。また、例えば、第1複合窒化物層23及び第2複合窒化物層層24を、下部層22側から上部層25側に向かって順に、第1複合窒化物層23、第2複合窒化物層24、第1複合窒化物層23、第2複合窒化物層24、第1複合窒化物層23、第2複合窒化物層24、第1複合窒化物層23、第2複合窒化物層24、第1複合窒化物層23、第2複合窒化物層24と、第1複合窒化物層を5層、第2複合窒化物層を5層それぞれ形成した場合、繰り返し数は、5回となる。また、図7において、被覆層27は下部層22及び上部層25の両方を備えるが、被覆層が下部層22及び上部層25のいずれかのみを備えてもよく、両方備えていなくてもよい。
本実施形態の被覆ドリルにおいて、交互積層構造の平均厚さは、0.5μm以上であると耐摩耗性が一層向上し、8.0μm以下であると耐欠損性が一層向上する傾向にある。
本実施形態に用いる被覆層は、上述のような化合物層、あるいは各複合窒化物層の交互積層構造だけで構成されてもよいが、基材と交互積層構造との間(すなわち、交互積層構造の下層)に下部層を有すると、基材と交互積層構造との密着性が更に向上するため、好ましい。その中でも、下部層は、上記と同様の観点から、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含むと好ましく、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含むとより好ましく、Ti、Cr、Mo、Al、Si、及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Nとからなる化合物を含むとさらに好ましい。また、下部層は単層であってもよく2層以上の多層であってもよい。
本実施形態において、下部層の平均厚さが0.1μm以上3.5μm以下であると、基材と被覆層との密着性が更に向上する傾向を示すため、好ましい。同様の観点から、下部層の平均厚さは、0.2μm以上3.0μm以下であるとより好ましく、0.3μm以上2.5μm以下であるとさらに好ましい。
本実施形態に用いる被覆層は、交互積層構造の基材とは反対側(すなわち、交互積層構造の上層)、好ましくは交互積層構造の表面、に上部層を有してもよい。上部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含むと、耐摩耗性に一層優れるので、さらに好ましい。また、上記と同様の観点から、上部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含むと好ましく、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含むとより好ましく、Ti、Nb、Ta、Cr、W、Al、Si、及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Nとからなる化合物を含むとさらに好ましい。また、上部層は単層であってもよく2層以上の多層であってもよい。
本実施形態において、上部層の平均厚さが0.1μm以上3.5μm以下であると、耐摩耗性により優れる傾向を示すため好ましい。同様の観点から、上部層の平均厚さは、0.2μm以上3.0μm以下であるとより好ましく、0.3μm以上2.5μm以下であるとさらに好ましい。
本実施形態の被覆ドリルに用いる被覆層の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法、及びイオンミキシング法などの物理蒸着法が挙げられる。その中でも、アークイオンプレーティング法は、被覆層と基材との密着性に一層優れるので、より好ましい。
本実施形態の被覆ドリルの製造方法について、以下に具体例を用いて説明する。なお、本実施形態の被覆ドリルの製造方法は、当該被覆ドリルの構成を達成し得る限り、特に制限されるものではない。
まず、上述したようなドリル形状に加工した基材を物理蒸着装置の反応容器内に収容し、金属蒸発源を反応容器内に設置する。その後、反応容器内をその圧力が1.0×10-2Pa以下の真空になるまで真空引きし、反応容器内のヒーターにより基材をその温度が200℃〜700℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にArガスを導入して、反応容器内の圧力を0.5Pa〜5.0Paとする。圧力0.5Pa〜5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−500V〜−350Vのバイアス電圧を印加し、反応容器内のタングステンフィラメントに40A〜50Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を施す。基材の表面にイオンボンバードメント処理を施した後、反応容器内をその圧力が1.0×10-2Pa以下の真空になるまで真空引きする。
本実施形態に用いる化合物層を形成する場合、基材をその温度が400℃〜600℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にガスを導入して、反応容器内の圧力を0.5Pa〜5.0Paとする。ガスとしては、例えば、化合物層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Nとからなる化合物で構成される場合、N2ガスが挙げられ、化合物層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、N及びCとからなる化合物で構成される場合、N2ガスとC22ガスとの混合ガスが挙げられる。混合ガスの体積比率としては、特に限定されないが、例えば、N2ガス:C22ガス=95:5〜85:15であってもよい。次いで、基材に−80V〜−40Vのバイアス電圧を印加してアーク電流100A〜200Aのアーク放電により各層の金属成分に応じた金属蒸発源を蒸発させて化合物層を形成するとよい。
本実施形態に用いる第1複合窒化物層を形成する場合、基材をその温度が400℃〜600℃になるように制御し、窒素ガス(N2)を反応容器内に導入し、反応容器内の圧力を0.5〜5.0Paにする。その後、基材に−80V〜−40Vのバイアス電圧を印加し、第1複合窒化物層の金属成分に応じた金属蒸発源を100A〜200Aとするアーク放電により蒸発させて、第1複合窒化物層を形成するとよい。
本実施形態に用いる第2複合窒化物層を形成する場合、基材をその温度が400℃〜600℃になるように制御する。なお、その基材の温度を、第1複合窒化物層を形成する際の基材の温度と同じにすると、第1複合窒化物層と第2複合窒化物層とを連続して形成することができるので好ましい。温度を制御した後、反応容器内にN2ガスを導入して、反応容器内の圧力を0.5Pa〜5.0Paとする。次いで、基材に−80V〜−40Vのバイアス電圧を印加し、アーク電流100A〜200Aのアーク放電により第2複合窒化物層の金属成分に応じた金属蒸発源を蒸発させて、第2複合窒化物層を形成するとよい。
第1複合窒化物層と第2複合窒化物層との交互積層構造を形成するには、2種類以上の金属蒸発源を上述した条件にて、交互にアーク放電により蒸発させることによって、各複合窒化物層を交互に形成するとよい。金属蒸発源のアーク放電時間をそれぞれ調整することによって、交互積層構造を構成する各複合窒化物層の厚さを制御することができる。
本実施形態に用いる下部層及び/又は上部層を形成する場合、上述した化合物層と同様の製造条件により形成するとよい。すなわち、まず、基材をその温度が400℃〜600℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にガスを導入して、反応容器内の圧力を0.5Pa〜5.0Paとする。ガスとしては、例えば、下部層及び/又は上部層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Nとからなる化合物で構成される場合、N2ガスが挙げられ、下部層及び/又は上部層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、N及びCとからなる化合物で構成される場合、N2ガスとC22ガスとの混合ガスが挙げられる。混合ガスの体積比率としては、特に限定されないが、例えば、N2ガス:C22ガス=95:5〜85:15であってもよい。次いで、基材に−80V〜−40Vのバイアス電圧を印加してアーク電流100A〜200Aのアーク放電により各層の金属成分に応じた金属蒸発源を蒸発させて、下部層及び/又は下部層を形成するとよい。
本実施形態の被覆ドリルにおける被覆層を構成する各層の厚さは、被覆ドリルの断面組織から、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定することができる。なお、本実施形態の被覆ドリルにおける各層の平均厚さは、肩部からチゼルに向かい、切れ刃稜線に沿って、1mmまでの範囲で、且つ、切れ刃稜線から逃げ面に向かい50μmの範囲における3箇所以上の断面から各層の厚さを測定して、その平均値(相加平均値)を計算することで求めることができる。
また、本実施形態の被覆ドリルにおける被覆層を構成する各層の組成は、被覆ドリルの断面組織から、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)や波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
本実施形態の被覆ドリルは、主に耐摩耗性及び耐欠損性に優れていることに起因して、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏すると考えられる(ただし、工具寿命を延長できる要因は上記に限定されない)。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材として、DMP120のインサート形状(株式会社タンガロイ製)のヘッド交換式のドリルに加工し、90.2%WC−9.0%Co−0.8%Cr32(以上質量%)の組成を有する超硬合金を用意した。また、インサートにおける各部位のホーニング幅を表1に示すとおりとした。
アークイオンプレーティング装置の反応容器内に、被覆層が(Ti0.55Al0.45)Nの組成になるよう金属蒸発源を配置した。用意した基材を、反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定した。
その後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。真空引き後、反応容器内のヒーターにより、基材をその温度が450℃になるまで加熱した。加熱後、反応容器内にその圧力が2.7PaになるようにArガスを導入した。
圧力2.7PaのArガス雰囲気にて、基材に−400Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のタングステンフィラメントに40Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間施した。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。
発明品1〜6及び比較品1〜5については、真空引き後、基材をその温度が450℃(成膜開始時の温度)になるように制御し、窒素ガス(N2)を反応容器内に導入し、反応容器内を3.0Paの圧力とするガス条件に調整した。その後、発明品1〜6及び比較品1〜5については、基材に−40Vのバイアス電圧を印加して、(Ti0.55Al0.45)Nの組成の被覆層の金属蒸発源を、150Aのアーク電流のアーク放電により蒸発させて、基材の表面に被覆層を形成した。このとき反応容器内のガス条件と圧力は上述した条件を維持するよう制御した。また、被覆層の厚さは、3.0μmとなるように、それぞれのアーク放電時間を調整して制御した。
基材の表面に被覆層を形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出した。
得られた試料の被覆層の平均厚さは、被覆ドリルの肩部からチゼルに向かい、切れ刃稜線に沿って、1mmまでの範囲で、且つ、切れ刃稜線から逃げ面に向かい50μmの範囲において、3箇所の断面をTEM観察し、被覆層の厚さを測定し、その平均値(相加平均値)を計算することで求めた。
得られた試料の被覆層の組成は、被覆ドリルの肩部からチゼルに向かい、切れ刃稜線に沿って、1mmまでの範囲で、且つ、切れ刃稜線から逃げ面に向かい50μmの範囲において、TEMに付属するEDSを用いて測定した。
得られた試料を用いて、以下の切削試験を行い、評価した。
[切削試験]
被削材:S55C(200HB)、
被削材形状:150mm×200mm×10mmの直方体ブロック、
加工形態:通り穴、
切削速度:100m/min、
1回転当たりの送り量:0.35mm/rev、
クーラント:水溶性(内部給油方式)、
評価項目:チゼルエッジが欠損(チゼルエッジに欠けが生じる)したとき、マージン部に送りマークが生じたとき、又は逃げ面摩耗が0.3mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命に至るまでの加工長を測定した。得られた測定結果を表1に示す。
(実施例2)
基材として、DMP120のインサート形状(株式会社タンガロイ製)のヘッド交換式のドリルに加工し、90.2%WC−9.0%Co−0.8%Cr32(以上質量%)の組成を有する超硬合金を用意した。また、インサートにおける各部位のホーニング幅は発明品1と同様とした。
アークイオンプレーティング装置の反応容器内に、表2及び表3に示す各層の組成になるよう金属蒸発源を配置した。用意した基材を、反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定した。
その後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。真空引き後、反応容器内のヒーターにより、基材をその温度が450℃になるまで加熱した。加熱後、反応容器内にその圧力が2.7PaになるようにArガスを導入した。
圧力2.7PaのArガス雰囲気にて、基材に−400Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のタングステンフィラメントに40Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間施した。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。
発明品7〜17については、真空引き後、基材をその温度が450℃(成膜開始時の温度)になるように制御し、窒素ガス(N2)を反応容器内に導入し、反応容器内を3.0Paの圧力とするガス条件に調整した。その後、基材に−40Vのバイアス電圧を印加して、発明品7〜15及び17については、表2に示す組成の第1層、必要に応じて第2層の金属蒸発源を150Aのアーク電流のアーク放電により蒸発させて、基材の表面に第1層、必要に応じて第2層を形成し、発明品16については、表3に示す組成の第1複合窒化物層と第2複合窒化物層の金属蒸発源を交互に、150Aのアーク電流のアーク放電により蒸発させて、基材の表面に第1複合窒化物層と第2複合窒化物層とを交互に形成した。このとき反応容器内のガス条件と圧力は上述した条件を維持するよう制御した。また、各層の厚さは、表2及び3に示す厚さとなるように、それぞれのアーク放電時間を調整して制御した。
基材の表面に表2及び表3に示す所定の平均厚さまで各層を形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出した。
得られた試料の各層の平均厚さは、被覆ドリルの肩部からチゼルに向かい、切れ刃稜線に沿って、1mmまでの範囲で、且つ、切れ刃稜線から逃げ面に向かい50μmの範囲において、3箇所の断面をTEM観察し、各層の厚さを測定し、その平均値(相加平均値)を計算することで求めた。それらの結果も、表2及び表3に併せて示す。
得られた試料の各層の組成は、被覆ドリルの肩部からチゼルに向かい、切れ刃稜線に沿って、1mmまでの範囲で、且つ、切れ刃稜線から逃げ面に向かい50μmの範囲において、TEMに付属するEDSを用いて測定した。それらの結果も、表2及び表3に併せて示す。なお、表2及び表3の各層の金属元素の組成比は、各層を構成する金属化合物における金属元素全体に対する各金属元素の原子比を示す。
得られた試料を用いて、以下の切削試験を行い、評価した。
[切削試験]
被削材:S55C(200HB)、
被削材形状:150mm×200mm×10mmの直方体ブロック、
加工形態:通り穴、
切削速度:100m/min、
1回転当たりの送り量:0.35mm/rev、
クーラント:水溶性(内部給油方式)、
評価項目:チゼルエッジが欠損(チゼルエッジに欠けが生じる)したとき、マージン部に送りマークが生じたとき、又は逃げ面摩耗が0.3mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命に至るまでの加工長を測定した。得られた測定結果を表4に示す。
以上の結果より、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させたことにより、発明品の工具寿命が長くなっていることが分かる。
本発明のドリルは、耐摩耗性及び耐欠損性に優れることにより、従来よりも工具寿命を延長できるので、その点で産業上の利用可能性が高い。
1…インサート本体、2…シンニング部、3…肩部、4…切屑排出溝、5…チゼル、6…逃げ面、7…マージン部、8…切れ刃全体(二重太線の箇所)、9…第1の切れ刃部、10…第2の切れ刃部、11…肩切れ刃部、12…マージン切れ刃部、13…ドリル本体、H…ホーニング幅、T…ドリルの回転方向、21…基材、22…下部層、23…第1複合窒化物層、24…第2複合窒化物層、25…上部層、26…交互積層構造、27…被覆層、28…被覆ドリル。

Claims (8)

  1. 軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃が形成されたドリルであって、
    前記すくい面に交差して外周側を向くマージン部と、
    前記マージン部と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部であるとともに、前記切れ刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部と、
    前記切屑排出溝の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部と、を有し、
    前記切れ刃が、回転中心から順に、前記シンニング部に形成された第1の切れ刃部、前記第1の切れ刃から更に外周側に形成された第2の切れ刃部、前記肩部に形成された肩切れ刃部、及び、前記マージン部に形成されたマージン切れ刃部を有し、
    前記第2の切れ刃、前記マージン切れ刃部、及び、前記肩切れ刃部に、ホーニングが施されており、
    前記各部位のホーニング幅が、下記式(1)で表される関係を満たす、ドリル。
    肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
  2. 前記肩切れ刃部のホーニング幅が80μm以上200μm以下である、請求項1に記載のドリル。
  3. 前記マージン切れ刃部のホーニング幅が60μm以上180μm以下である、請求項1又は2に記載のドリル。
  4. 前記第2の切れ刃部のホーニング幅が30μm以上150μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドリル。
  5. 表面に被覆層が形成された被覆ドリルであって、
    軸線回りに回転されるドリル本体の先端側部分である刃先部の外周に後端側に向けて延びる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く内壁面の先端側領域のすくい面と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部に切れ刃が形成され、
    前記すくい面に交差して外周側を向くマージン部と、
    前記マージン部と前記刃先部の先端逃げ面との交差稜線部であるとともに、前記切れ刃の外周端からドリル回転方向後方側に延びる肩部と、
    前記切屑排出溝の内壁面の先端側に向けて延びるシンニング部と、を有し、
    前記切れ刃が、回転中心から順に、前記シンニング部に形成された第1の切れ刃部、前記第1の切れ刃から更に外周側に形成された第2の切れ刃部、前記肩部に形成された肩切れ刃部、及び、前記マージン部に形成されたマージン切れ刃部を有し、
    前記第2の切れ刃、前記マージン切れ刃部、及び、前記肩切れ刃部に、ホーニングが施されており、
    前記各部位のホーニング幅が、下記式(1)で表される関係を満たす、被覆ドリル。
    肩切れ刃部のホーニング幅>マージン切れ刃部のホーニング幅≧第2の切れ刃部のホーニング幅・・・(1)
  6. 前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を含有する化合物層を含む、請求項5に記載の被覆ドリル。
  7. 前記被覆層が、下記式(2)
    (Al1-xCrx)N・・・(2)
    (式中、xはAl元素とCr元素との合計に対するCr元素の原子比を示し、0.10≦x≦0.50を満足する。)
    で表される組成を有する化合物を含有する複合化合物層を含む、請求項5又は6に記載の被覆ドリル。
  8. 前記被覆層全体の平均厚さが、0.5μm以上8.0μm以下である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の被覆ドリル。
JP2018108401A 2018-06-06 2018-06-06 ドリル Active JP6722410B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018108401A JP6722410B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 ドリル
US16/420,242 US10850333B2 (en) 2018-06-06 2019-05-23 Drill
DE102019003976.9A DE102019003976B4 (de) 2018-06-06 2019-06-05 Bohrer

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018108401A JP6722410B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 ドリル

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019209439A JP2019209439A (ja) 2019-12-12
JP6722410B2 true JP6722410B2 (ja) 2020-07-15

Family

ID=68651728

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018108401A Active JP6722410B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 ドリル

Country Status (3)

Country Link
US (1) US10850333B2 (ja)
JP (1) JP6722410B2 (ja)
DE (1) DE102019003976B4 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7373716B2 (ja) * 2019-04-23 2023-11-06 株式会社不二越 刃先交換式ドリル
CN116209533A (zh) 2020-07-27 2023-06-02 三菱综合材料株式会社 钻头
JP7268691B2 (ja) * 2021-01-27 2023-05-08 株式会社タンガロイ ドリル
US12109635B2 (en) 2021-04-21 2024-10-08 Iscar, Ltd. Rotatable cutting head having tip portion with radially extending cutting edges forming a cutting profile having concave and convex sub-portions
US11819926B2 (en) 2021-11-16 2023-11-21 Iscar, Ltd Cutting head having four cutting portions and two convex clamping surfaces, and rotary cutting tool
WO2023181814A1 (ja) * 2022-03-24 2023-09-28 京セラ株式会社 ドリル及び切削加工物の製造方法
JP7380813B1 (ja) 2022-11-29 2023-11-15 株式会社タンガロイ 穴あけ工具

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS468933Y1 (ja) * 1967-05-08 1971-03-30
JP3019298B1 (ja) * 1998-12-03 2000-03-13 日立ツール株式会社 表面被覆ドリル
US6585460B1 (en) * 2000-11-13 2003-07-01 General Electric Company Drill having machine grindable cutting edge
JP3988659B2 (ja) * 2003-03-11 2007-10-10 三菱マテリアル株式会社 ドリル
JP4608933B2 (ja) * 2004-04-23 2011-01-12 三菱マテリアル株式会社 ドリル、スローアウェイ式ドリル及びスローアウェイチップ
JP5027491B2 (ja) * 2006-12-06 2012-09-19 住友電気工業株式会社 表面被覆切削工具
DE102007040178B4 (de) 2007-08-25 2011-06-22 MAPAL Fabrik für Präzisionswerkzeuge Dr. Kress KG, 73431 Bohrer
JP5974695B2 (ja) * 2012-07-13 2016-08-23 三菱日立ツール株式会社 ドリル及びドリルの刃先部の製造方法
JP2014087858A (ja) * 2012-10-29 2014-05-15 Mitsubishi Materials Corp 切削工具
US10155269B2 (en) * 2014-09-19 2018-12-18 Sumitomo Electric Hardmetal Corp. Drill

Also Published As

Publication number Publication date
US20190375029A1 (en) 2019-12-12
DE102019003976B4 (de) 2024-06-13
JP2019209439A (ja) 2019-12-12
DE102019003976A1 (de) 2019-12-12
US10850333B2 (en) 2020-12-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6722410B2 (ja) ドリル
CN109304489B (zh) 被覆切削工具
JP6507399B2 (ja) 被覆切削工具
CN108286047B (zh) 被覆切削工具
JP5817932B2 (ja) 被覆工具
JP6601694B2 (ja) 被覆切削工具
JP6601692B2 (ja) 被覆切削工具
JP2020040175A (ja) 被覆切削工具
EP3456867B1 (en) Coated drill
JP7081466B2 (ja) 穴あけ加工用被覆切削工具
JP6168540B2 (ja) 硬質潤滑被膜および硬質潤滑被膜被覆工具
US12042871B2 (en) Drill
JP7302628B2 (ja) 被覆切削工具
US11471950B2 (en) Coated cutting tool

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190419

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200515

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200522

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200604

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6722410

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250