以下、図面等を用いて本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。なお、図面において、人体の各部位に付された符号番号は、同一の部位であっても、異なる符合番号を付していることがある。
本明細書において、体幹部とは、人体における頭部及び四肢を除いた部分をいう。また、インナーユニットとは、体幹部の深部に位置する、腹横筋、多裂筋、横隔膜、及び骨盤底筋群などをいう。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるトレーニング方法における各工程の基本姿勢を表す模式図である。図1(a)は、コアリラクゼーション工程Rにおける基本姿勢Rを表し、図1(b)は、コアスタビライゼーション工程S1における基本姿勢S1を表し、図1(c)は、コアコーディネーション工程Cにおける基本姿勢Cを表す。図2は、本発明の第2の実施の形態にかかるトレーニング方法における各工程の基本姿勢を表す模式図である。図2(a)は、コアリラクゼーション工程Rにおける基本姿勢Rを表し、図2(b)は、コアスタビライゼーション工程S2における基本姿勢S2を表し、図2(c)は、コアコーディネーション工程Cにおける基本姿勢Cを表す。
コアリラクゼーション工程Rは、身体の筋肉や腱を緩ませ、骨格の形を本来あるべき正常な状態にする工程である。コアスタビライゼーション工程S1及びS2は、インナーユニットを活性化させる工程である。コアコーディネーション工程Cは、インナーユニットと手足との協調を高める工程である。本発明においては、コアリラクゼーション工程R、コアスタビライゼーション工程S1又はS2、コアコーディネーション工程Cを、この順番で実施することが重要である。まず、コアリラクゼーション工程Rにより、身体の筋肉や腱を緩ませ、骨格の形を本来あるべき正常な状態することで、これ以降のトレーニングにおいて、姿勢が悪くなったり、怪我をする等の故障リスクを軽減させる。さらに、この状態で、コアスタビライゼーション工程S1又はS2を実施することで、コアスタビライゼーション工程S1又はS2を単独で実施した場合よりも、インナーユニットをより活性化させ、インナーユニットの安定性をより向上させることができる。そして、この状態で、コアコーディネーション工程Cを実施することで、インナーユニットとアウターマッスルとを上手く協調させることができ、インナーユニットと手足との協調を高めることが容易となり、十分なトレーニング効果を得ることが可能となる。また、本発明のトレーニング方法を実施した後に、一般的な筋力トレーニングや運動を行なえば、それらの筋力トレーニング等による故障リスクを軽減しつつ、筋力トレーニング等によって得られる効果を増大させることが可能となる。以下、各工程について詳述する。
(コアリラクゼーション工程R)
コアリラクゼーション工程Rに用いられる運動補助具Rとしては、仰臥位において運動補助具Rの上に脊柱を添わせた状態で四肢または体幹部の移動を行うことができるものであれば、特に限定はされないが、例えば、図3(a)に示すような略円柱状の運動補助具10や、図3(b)に示すような略半円柱状の運動補助具20などを用いることが好ましい。
運動補助具20は、その形状以外は、運動補助具10とほぼ同様の構成とすることができる。以下、運動補助具10について説明する。運動補助具10の直径dは、運動補助具に背中を載せたときに、四肢を床面や地面に安定して付けつつ、身体の筋肉や腱を充分に緩めることができるという観点から、70〜250mmであることが好ましい。運動補助具10の直径dが70mm未満の場合は、身体の筋肉や腱を充分に緩めることができずに、運動の効果が低減する傾向にある。一方、運動補助具10の直径dが250mmを超える場合は、四肢を床面や地面に安定して付けることが困難となり、運動しにくくなる傾向にある。また、背中の全体が運動補助具に密着してしまい、脊柱周りのマッサージ効果を充分に得ることが困難となる傾向にある。
運動補助具10の長さlは、身体を脊柱に沿った広い範囲で支えることができると共に、四肢の運動を広い範囲で行うことができるという観点から、500〜3000mmであることが好ましく、500〜1800mmであることがより好ましい。運動補助具10の長さlが500mm未満の場合は、身体を充分に広い範囲で支えることができず、効果的な運動が困難となる傾向にある。一方、運動補助具10の長さlが3000mmを超える場合は、床面や地面に付けた四肢を動かすことができる範囲が狭まり、効果的な運動が制限される傾向にある。また、サイズが大きくなることにより、取り扱い性が低下する傾向にある。なお、運動補助具10は、それ単体で500〜3000mmの長さを有する必要はなく、長さが500mm未満の運動補助具10を複数個並べることで、500〜3000mmの範囲となるように構成されていても良い。
運動補助具10は、芯材と、それを覆う被覆体から構成されていることが好ましい。芯材の材質としては、一定以上の硬度と弾力性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、発砲オレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンなどが挙げられる。中でも、耐久性に優れるという点で、発砲オレフィン系樹脂を用いることが好ましい。また、運動補助具10は、芯材と被覆体の間に、芯材よりも弾力性のある緩衝材を備えていてもよい。緩衝材を備えることにより、身体への負担を軽減することができる。緩衝材の材質としては、特に限定はされないが、例えば、発泡ウレタンチップを用いることが好ましい。また、運動補助具10は、塩化ビニル樹脂等からなる中空円柱体の内部に空気を充填したものであってもよい。なお、運動補助具10は、被覆体を供えずに芯材のみで構成することも可能であり、芯材のみで構成した場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
コアリラクゼーション工程Rは、仰臥位において、運動補助具Rの上に脊柱を添わせた状態で、両腕を床面に沿って動かす、鉛直方向に伸縮させる、両脚を床面に沿って伸縮させる、股関節を開閉する、両脚をローリングする、或いは、四肢を床面に付けて体幹部を運動補助具Rの上で左右に微小運動するなど、種々の運動を行う工程である。本工程によれば、身体の筋肉や腱を緩ませ、更には、骨配列、骨の形態、又は関節の並びなどの骨格の形を本来あるべき正常な状態にすることが可能である。また、例えば、脊柱を正常な状態に戻すことで、脊柱の両脇から出ている自律神経の働きを良好にすることもできる。
本工程では、図1(a)又は図2(a)に示すように、床面に横たえた運動補助具Rの上に背骨を添わせるような状態で仰向けになり、頭部から骨盤に至るまでの領域を運動補助具Rの上に載せ、両手足を床面につけた状態を基本姿勢Rとする。
以下、運動補助具Rとして運動補助具10を用いた場合における、本工程で実施される運動方法を例示するが、本工程は、以下に例示される運動方法に限定されるわけではない。また、身体の筋肉や腱を緩ませ、骨格の形を正常な状態にするという効果を最大限に得るためには、以下の運動方法の全てを以下に記載する順序で実施することが好ましいが、必ずしも、全ての運動方法が実施される必要はなく、また、以下に記載する順序とは異なる順序で実施されても、本工程の効果が失われるわけではない。本工程では、動きを伴わない静的な運動からなる予備運動1〜3、及び小さな関節運動を主体とする主運動4〜10が行なわれる。
予備運動1は、上肢全体を脱力した状態で、基本姿勢Rから肘、手の甲を床につけたまま、両腕を胸の横あたりまで広げ、その後、ゆっくりと呼吸をしながら、腕の力を抜き、ゆったりとした呼吸を数回繰り返す運動である。予備運動1によれば、腕や上肢体の重さが牽引力となることにより、大胸筋や小胸筋を伸張することが可能である。
予備運動2は、基本姿勢Rから踵を運動補助具10から適度に離れた位置に置き、膝を適度に曲げるとともに、両方の足の裏を互いに向かい合わせ、その後、股関節が楽に感じる位置まで膝を外に倒していき、その位置で脚の力を抜き、ゆっくりとした呼吸を数回繰り返す運動である。予備運動2によれば、股関節を屈曲、外転、及び外旋位で脱力することにより、股関節内転筋群を伸張することが可能である。
図6(a)は、予備運動3における動作を表す模式図であり、図中の矢印は、手足の動きを表す。予備運動3は、基本姿勢Rから片脚51をゆっくり伸ばし、次に、伸ばした脚51とは反対側の腕52を、床上を滑らせつつ胸の高さくらいまで移動させ、ゆったりとした呼吸を数回繰り返す運動である。最初に伸ばした脚51とは反対側の脚についても、同様の運動を行なう。予備運動3によれば、対角にある上肢と下肢を同時に脱力することにより、外腹斜筋、内腹斜筋、対側の内転筋、及び体幹部の筋膜など、体幹部を斜めに走る筋肉を伸張することが可能である。また、下肢を伸ばすことにより、股関節屈筋を伸長することが可能である。
図6(b)は、主運動4における動作を表す模式図であり、図中の矢印は、手の動きを表す。主運動4は、基本姿勢Rにて、床につけている手53を小さな円を描くように動かすことで腕を揺らし、その振動が肘、肩に伝わるようにする運動である。このとき、手の平の向きは上下どちらを向いていても良い。主運動4によれば、手を円運動させることにより発生する振動が、肘関節、上腕骨、肩関節、鎖骨へと伝わることにより、上肢帯と体幹部とをつなぐ唯一の関節である胸鎖関節を振動させることが可能である。主運動4により、胸鎖関節を振動させ、その動きを引き出しておくことで、この後に行なう主運動5及び6の効果を向上させることが可能である。
主運動5は、基本姿勢Rから両手を天井に向け、次に、両腕を天井に向かってさらに突き出して、肩甲骨を運動補助具10から離し、呼吸に合わせて腕を元の位置に戻す運動である。主運動5によれば、肩甲骨を内転及び外転させることで、肩関節周囲の軟部組織をリラックスさせ、肩甲骨及び肩関節における骨配列の左右差を整えることが可能である。また、胸椎に振動を与えることで、胸椎全体における骨格の形を正常な状態に戻すことが可能である。
図6(c)は、主運動6における動作を表す模式図であり、図中の矢印は、両腕の動きを表す。主運動6は、基本姿勢Rにおいて両腕54を体側から離し、肘を床から持ち上げず、扇を広げるように、両手を胸の真横あたりの位置まで上げていき、その後、元の位置まで戻す動作を数回繰り返す運動である。主運動6によれば、肩甲骨を上方回旋及び下方回旋させることで、肩関節周囲の軟部組織をリラックスさせ、肩甲骨及び肩関節における骨配列の左右差を整えることが可能である。また、胸椎に振動を与えることで、胸椎全体における骨格の形を正常な状態に戻すことが可能である。
主運動7は、基本姿勢Rから足幅を骨盤幅程度に開いた状態で、両脚をゆっくりと伸ばし、踵を支点として、両足のつま先が同時に内側と外側に動くように股関節の内旋と外旋を繰り返す運動である。主運動7によれば、踵を支点とした股関節の小さな内・外旋運動により、股関節の筋や軟部組織を緩めることが可能である。また、股関節の内・外旋運動により、骨盤が小さく前傾・後傾方向へ揺れるように動くことで、仙腸関節や腰椎の椎間関節を緩めるということが可能である。
主運動8は、基本姿勢Rから足幅を骨盤幅程度に開いた状態で、両脚をゆっくりと伸ばし、その状態で脱力することによりつま先を自然に外側へと向け、次に、膝を小さく外に開くようにわずかに曲げ、その後、脱力することによりつま先を元の位置に戻す運動である。主運動8によれば、股関節屈曲位、外転位、及び外旋位での小さな関節運動により、股関節周囲の軟部組織を緩めることが可能である。また、骨盤に対して振動を与えることにより、その振動が骨盤から脊柱へと伝わり、仙腸関節や腰椎の椎間関節を緩めることが可能であり、脊柱の骨配列を正常な状態に戻す効果がある。
主運動9は、基本姿勢Rにおいて、運動補助具10を背中の下で転がすように身体を左右に移動させる運動である。主運動9によれば、脊柱回りの小さな筋肉や脊柱起立筋群に対し、自重によるマッサージ効果が得られる。また、脊柱の小さな回旋運動と、自重に対する運動補助具10の反発力との相乗効果によって、脊柱全体における関節や筋を緩めることが可能である。
主運動10は、基本姿勢Rのまま、自然な呼吸を数回程度繰り返す運動である。これまでに行われた上記の運動により呼吸に関する筋肉の緊張を取り除いた状態であるため、主運動10によれば、特に意識せずとも深い腹式呼吸が可能となり、深いリラクゼーション効果を得ることができる。
(コアスタビライゼーション工程S1)
コアスタビライゼーション工程S1に用いられる運動補助具S1としては、端坐位において、骨盤底筋群を押圧できるものであれば、特に限定されないが、例えば、骨盤底筋群などのインナーユニットを効果的に活性化するという観点からは、図4に示すような骨盤底筋群押圧具30を用いることが好ましい。
骨盤底筋群押圧具30は、長手方向において少なくとも人体の恥骨と尾骨との間の長さを有し、長手方向に対する幅方向において人体の一対の坐骨間の長さよりも短い幅を有し、長手方向における人体の恥骨と尾骨との間の長さに対応する部分の全体が、長手方向に対する幅の一端から他端に渡って外方へ湾曲する凸状上面31と、長手方向に対する幅の一端から他端に渡って外方へ湾曲し、凸状上面に対向する位置関係を有する凸状下面32とを有する。骨盤底筋群押圧具30は、人体の前後方向に骨盤底筋群押圧具30の長手方向が一致する位置関係で座面に載置し、人体が座面に座り凸状上面を跨いだ場合、凸状上面が恥骨と尾骨とにそれぞれ対向し、骨盤底筋群を押圧することが可能な骨盤底筋群押圧具である。
骨盤底筋群押圧具30における凸状上面と凸状下面との最大距離、即ち、骨盤底筋群押圧具30の上端から下端までの距離は、特に限定はされないが、20mm〜60mmであることが好ましく、30mm〜60mmであることがより好ましい。凸状上面と凸状下面との最大距離が20mm未満の場合は、骨盤底筋群に対する押圧が十分ではない傾向にあり、また、60mmを超える場合は、使用者が恥骨近傍及び尾骨近傍の部分に痛みを感じるおそれがある。
骨盤底筋群押圧具30の硬度としては、特に限定されないが、JIS K6253に準じて測定した国際ゴム硬さ(IRHD)が、10〜20であることが好ましい。国際ゴム硬さが10未満の場合は、使用者が恥骨近傍及び尾骨近傍の部分に痛みを感じるおそれがある。また、国際ゴム硬さが20を越える場合は、骨盤底筋群に対する押圧が十分ではない傾向にある。
骨盤底筋群押圧具30の材質としては、一定以上の硬度と弾力性を有し、骨盤底筋群を押圧することが可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、硬度と弾力性のバランスが良く、耐摩耗性に優れるという観点からは、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
コアスタビライゼーション工程S1は、図1(b)に示すように、椅子6等の座面上に、使用者5の前後方向と運動補助具S1の長手方向とが一致するような位置関係で運動補助具S1を載置し、載置された運動補助具S1を跨ぐように使用者5が座った状態を基本姿勢S1とする。使用者5が基本姿勢S1をとった場合、使用者5の上半身の重みにより、骨盤底筋群が運動補助具S1を押し、臀筋及び大腿筋が座面を押す。これに対して、骨盤底筋群は運動補助具S1から反力を受け、臀筋及び大腿筋は座面から反力を受ける。その結果、使用者5は、恥骨近傍及び尾骨近傍に対する刺激を受けないように姿勢を調整しようとして、臀筋及び大腿筋のみならず、運動補助具S1によって押圧されている骨盤底筋群を動かす。これらの筋肉は、指等で触れて意識しなければ動かすことは難しいが、運動補助具S1を用いて骨盤底筋群を押圧することにより、これらの筋肉を意識し、動かすことが可能となる。
以下、骨盤底筋群押圧具30を用いた場合における、本工程で実施される運動方法を例示するが、本工程は、以下に例示される運動方法に限定されるわけではない。また、インナーユニットを活性化させるという効果を最大限に得るためには、以下の運動方法の全てを以下に記載する順序で実施することが好ましいが、必ずしも、全ての運動方法が実施される必要はなく、また、以下に記載する順序とは異なる順序で実施されても、本工程の効果が失われるわけではない。本工程では、呼吸運動11、及び上肢の運動12〜15が行なわれる。
呼吸運動11は、基本姿勢S1にて、腹式呼吸を数回行なう。次に、呼気の際に長く息を吐くようにして腹式呼吸を数回行なう。その後、呼気の際に小刻みに息を吐くようにして腹式呼吸を数回行なう。呼吸運動11によれば、骨盤底筋群を含むインナーユニットの共同収縮が起こり、インナーユニットを活性化することが可能である。
図7(a)は、上肢の運動12における動作を表す模式図である。上肢の運動12は、基本姿勢S1において両手31を胸の前で合掌し、肘が伸びるように合掌した両手61を頭上まで上げ、その後、両手61を合掌したまま胸の前まで戻す運動である。図7(a)は、合掌した両手61を頭上まで上げた状態を表す図である。上肢の運動12によれば、インナーユニットを活性化し、また、インナーユニットを安定化させることが可能である。
図7(b)は、上肢の運動13における動作を表す模式図である。上肢の運動13は、基本姿勢S1において両手61を胸の前で合掌し、肘が伸びるように合掌した両手61を頭上まで上げ、その後、手の平62を外側に向け、肘を曲げながら脇を締める運動である。
図7(b)は、合掌した両手61を頭上まで上げた後、手の平62を外側に向け、肘を曲げながら脇を締めた状態を表す図である。上肢の運動13によれば、インナーユニットを活性化し、また、インナーユニットを安定化させることが可能である。
上肢の運動14は、基本姿勢において左右の肋骨に両手をあて、息を吸い肋骨下部を広げ、息を吐きながら両手を前方斜め下に伸ばして、肋骨下部を締める運動である。上肢の運動14によれば、インナーユニット及び腹斜筋を活性化し、胸郭や上肢体の柔軟性を向上させることが可能である。
図7(c)は、上肢の運動15における動作を表す模式図である。上肢の運動15は、基本姿勢から上体63を右に回旋し、その状態で腹式呼吸を行ない、次に、上体63を左に回旋し、その状態で腹式呼吸を行なう運動である。図7(c)は、上体63を左に回旋した状態を表す図である。上肢の運動15によれば、インナーユニット及び腹斜筋を活性化させることが可能である。
(コアスタビライゼーション工程S2)
コアスタビライゼーション工程S2に用いられる運動補助具S2としては、運動補助具S2の上に脊柱を添わせた状態で、自重によって垂れ下がった四肢を微動させることができるものであれば、特に限定はされず、例えば、運動補助具10又は運動補助具20など、コアスタビライゼーション工程Rにて用いられる運動補助具Rと同様のものを用いることができる。
以下、運動補助具S2として、運動補助具10を用いた場合における本工程で実施される運動方法を例示するが、本工程は、以下に例示される運動方法に限定されるわけではない。また、インナーユニットを活性化するという効果を最大限に得るためには、以下の運動方法の全てを以下に記載する順序で実施することが好ましいが、必ずしも、全ての運動方法が実施される必要はなく、また、以下に記載する順序とは異なる順序で実施されても、本工程の効果が失われるわけではない。
本工程では、図2(b)に示すように、床面に横たえた運動補助具10の上に背骨を添わせるような状態で仰向けになり、頭部から骨盤に至るまでの領域を運動補助具10の上に載せ、両手足を床面につけた状態を基本姿勢S2とする。本工程では、胸部と腹部の筋を刺激する呼吸運動16、脊柱回りの小さな筋を刺激する軸回旋運動17〜18、及びインナーユニットの安定化を図る四肢の運動19〜24が行なわれる。
呼吸運動16では、まず、基本姿勢S2にてゆっくりと腹式呼吸を行う。次に、呼気の際に腹部を膨らませ、吸気の際に腹部をへこませるように呼吸(逆腹式呼吸)を行う。次に、ゆっくりと息を吐き、息を吐ききった状態で、腹筋群の緊張を30秒程度保持する。そして、最後に、ゆっくりと腹式呼吸を行う運動である。呼吸運動16によれば、胸郭の可動性を高めてから横隔膜と腹横筋を刺激することにより、インナーユニットを活性化させ、腹部を安定化させることが可能である。
軸回旋運動17は、基本姿勢S2において胸の前で両手を合わせ、骨盤帯と胸郭が同じ方向を向くようにしながら、左右に小さく回旋する運動である。
図8(a)は、軸回旋運動18における動作を表す模式図である。軸回旋運動18は、基本姿勢S2から両手71を天井の方向に伸ばし、手の平を合わせて指先72と両肩73とを頂点とする二等辺三角形を作り、視線を指先72に向けながら、体幹部を左右に小さく回旋する運動である。その後、視線を指先72とは反対の方向に向けながら、同様の運動を行なう。図8(a)は、両手71を天井の方向に伸ばし、手の平を合わせて指先72と両肩73とを頂点とする二等辺三角形を作った状態を表す図である。
軸回旋運動17及び18によれば、脊柱を構成する各椎骨に小さな回旋を起こすことにより、椎体と椎体とをつなぐ小さな筋が脊柱の安定性を保つべく働き、脊柱を安定させることが可能である。脊柱の安定化は、身体を効率よく移動、活動させる際に非常に重要な要素である。また、椎体と椎体とをつなぐ小さな筋が刺激されることで、姿勢が微調整され、コアリラクゼーション工程Rにて正常な状態に戻った骨格の形を維持することが容易となる傾向にある。
以下に説明する四肢の運動19〜24は、インナーユニットの安定性を向上させることを主な目的として行なわれるが、これらの運動に先駆けて、呼吸運動16及び軸回旋運動17〜18により、腹部及び脊柱の安定性を向上させることで、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を容易に向上させることができる傾向にある。
四肢の運動19では、まず、基本姿勢S2において片手を床から離して天井の方向へ上げ、その後、床の上まで下ろす動作を行なう。反対側の手についても同様の動作を行なう。その後、基本姿勢において両手を床から離して天井の方向へ上げ、その後床の上まで下ろす動作を行なう運動である。四肢の運動19によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
図8(b)は、四肢の運動20における動作を表す模式図である。四肢の運動20は、基本姿勢S2において両手71を床から離して天井の方向へ上げ、次に、一方の手を頭の方向、もう一方の手を脚の方向に向かって倒す動作を左右交互に数回行なう運動である。図8(b)は、両手71を天井の方向へ上げた後、一方の手を頭の方向、もう一方の手を脚の方向に向かって倒す動作をしている状態を表す図であり、図中の矢印は、各手の動きを表す。四肢の運動20によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
図8(c)は、四肢の運動21における動作を表す模式図である。四肢の運動21は、基本姿勢S2から膝の角度を変えずに片下肢を床から離し、膝関節74を股関節75の真上まで引き上げ、その状態を、運動補助具10の揺れが止まり、身体が安定するまで維持する運動である。反対側の下肢についても、同様の運動を行なう。図8(c)は、膝の角度を変えずに片下肢を床から離し、膝関節74を股関節75の真上まで引き上げた状態を表す図である。四肢の運動21によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
四肢の運動22は、基本姿勢S2から膝の角度を変えずに片下肢を床から離し、膝関節を股関節の真上まで引き上げ、その状態を、運動補助具10の揺れが止まり、身体が安定するまで維持した後に、左右の下肢を空中で入れ替える運動である。左右の下肢を空中で入れ替える動作は数回行なう。四肢の運動22によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
四肢の運動23は、基本姿勢S2において両手を床から離して天井の方向へ上げ、その状態にて、膝の角度を変えずに片下肢を床から離し、膝関節を股関節の真上まで引き上げ、その状態を、運動補助具10の揺れが止まり、身体が安定するまで維持した後に、左右の下肢を空中で入れ替える運動である。左右の下肢を空中で入れ替える動作は数回行なう。四肢の運動23によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
四肢の運動24は、基本姿勢S2において両脚を床から離し、両膝関節を股関節の真上まで引き上げ、その状態にて、さらに両手を床から離して天井の方向へ上げ、運動補助具10の揺れが止まり、身体が安定するまで維持する運動である。四肢の運動24によれば、インナーユニットを活性化させ、四肢の動きに対するインナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
コアスタビライゼーション工程S1又はS2は、コアリラクゼーション工程Rによって身体の筋肉や腱が緩み、骨格の形が正常になった状態で実施することで、各運動の際に適切な部位が刺激され、インナーユニットを効果的に活性化させ、インナーユニットの安定性をより向上させることが可能となる。コアリラクゼーション工程Rを実施せずにコアスタビライゼーション工程S1又はS2を実施した場合、例えば、四肢の運動19〜20において、両脚を踏ん張って身体を支えてしまったり、四肢の運動21〜24において、脚を上げる際に頸部を運動補助具10に押し付けて身体を支えたりといった代償運動が誘発されやすくなる。このような代償運動が起こると、各運動において適切な部位が刺激されなくなり、インナーユニットの活性化が不十分となる。
(コアコーディネーション工程C)
コアコーディネーション工程Cに用いられる運動補助具Cとしては、使用者が伏臥位をとった際に使用者の腹部を支持することができ、使用者がその状態で四肢の運動を行うことができるものであれば、特に限定はされないが、例えば、インナーユニットと手足との協調をより高めるという観点からは、図5に示すような運動補助具40を用いることが好ましい。
図5(a)は、運動補助具40の斜視図である。運動補助具40は、使用者の腹部を支持する腹部支持部41と、腹部支持部における腹部を支持する側とは対向する側に、腹部を支持した状態で左右に動く運動を可能にする隆起部42を有している。
図5(b)は、運動補助具40の上面図である。腹部支持部41は、運動補助具40を上面側から見た場合(腹部を支持する側から見た場合)において、略凸状の形状を有しており、使用者の恥骨及び左右の上前腸骨棘の部分を支持することが可能である。これらの三点が支持されることにより、腹部全体を安定して支持することができ、その結果、使用者は負荷の高い運動を実施できるようになる傾向にある。また、これらの三点が支持されることにより、仙骨のうなずき運動を引き出すことができ、その結果、骨盤の構造的安定性を向上させ、骨盤の荷重伝達性を向上させることができる傾向にある。
腹部支持部41を構成する素材としては、特に限定されないが、例えば、使用者が腹部支持部41から受ける押圧を吸収し、使用者の痛みを和らげるという観点からは、ウレタン樹脂、ポリエステル、又はゴムなど弾力性を有する素材で構成されていることが好ましい。
図5(c)は、運動補助具40の正面図である。隆起部42は、運動補助具40を正面側から見た場合において、略二等辺三角形状の形状を有しており、かつ、二本の等辺にて共有されている頂点43が湾曲している。使用者が伏臥位において運動補助具40にて腹部を支持する場合、運動補助具40が使用者から受ける荷重は、頂点43近傍にて支持される。頂点43が湾曲していることにより、使用者は、腹部を支持した状態で、左右に動く動作を行なうことが容易となる。
隆起部42を構成する素材としては、使用者から受ける荷重により破損等しないような強度を有していれば、特に限定はされず、例えば、ABS樹脂などを用いることができる。
コアコーディネーション工程Cは、図1(c)又は図2(c)に示すように、運動補助具Cに骨盤を載せて、両肘を床につけ、さらに、両脚を骨盤幅に開いて両膝以下を床につけた状態を基本姿勢Cとする。運動補助具Cとして運動補助具40を用いて基本姿勢Cをとった場合、運動補助具40における床面との接触部位は、頂点43近傍となる。頂点43は湾曲した形状を有しているため、基本姿勢Cは使用者5にとって不安定な状態であり、この状態で四肢の運動を行なうには、インナーユニットに力を込めて、身体を安定した状態に保つ必要がある。従って、基本姿勢Cにおいて以下のような運動を行なった場合、インナーユニットを使いながら、四肢の運動を行なうことになるので、インナーユニットと手足の協調を効果的に高めることが可能となる。また、身体の安定性を維持しようとする作用により、インナーユニットなどを強化し、筋肉の左右バランスを調整するという効果も得られる。
以下、運動補助具Cとして運動補助具40を用いた場合における、本工程で実施される運動方法を例示するが、本工程は、以下に例示される運動方法に限定されるわけではない。また、インナーユニットと手足との協調を高めるという効果を最大限に得るためには、以下の運動方法の全てを以下に記載する順序で実施することが好ましいが、必ずしも、全ての運動方法が実施される必要はなく、また、以下に記載する順序とは異なる順序で実施されても、本工程の効果が失われるわけではない。本工程では、インナーユニットを活性化させる予備運動25〜27、及びインナーユニットと手足の協調を高める主運動28〜34が行なわれる。
予備運動25は、基本姿勢Cにて、軽く息を吸い、鼻からゆっくりと息を吐くことを数回繰り返す運動である。予備運動25によれば、インナーユニットを活性化させることができ、この後に説明する各運動の効果を高めることが可能である。
予備運動26は、基本姿勢Cから両膝を伸ばし、一方の腕を身体の下に入れ、そのまま上半身を捻って肩を床につけ、この状態にて、ゆったりとした呼吸を数回繰り返す運動である。もう一方の腕側についても、同様の運動を行なう。予備運動26によれば、上半身の筋肉や腱を緩ませて可動性を向上させ、インナーユニットの捻りを大きくさせることが可能となる。
予備運動27は、基本姿勢Cにて、肩甲骨を安定させた状態で、左右に体重を移動させながら運動補助具40を揺らす動作を、左右交互に10回程度繰り返す運動である。予備運動27によれば、腰及び背筋群の筋肉や腱を緩ませ、この後に説明する各運動の効果を高めることが可能である。
主運動28は、基本姿勢Cから肘で身体を持ち上げ、その後、ゆっくりと肘の力を抜いて基本姿勢に戻す動作を10回程度繰り返す運動である。主運動28によれば、肩甲骨周辺の筋肉を活性化し、インナーユニットの安定性を向上させることが可能である。
主運動29は、基本姿勢Cから、腰部の真横付近に視線を向けるように上半身を横にまげる動作を左右交互に10回程度繰り返す運動である。主運動29によれば、上半身の可動性を向上させ、骨盤周りの安定性を向上させることが可能である。
主運動30は、基本姿勢Cから、両膝を床に付けた状態で、床上を滑らせるようにして片膝を身体の横に出す動作を左右交互に10回繰り返す運動である。主運動30によれば、股関節の可動性を向上させることが可能である。
図9(a)及び(b)は、主運動31における動作を表す模式図である。主運動31は、まず、基本姿勢Cから一方の手81を前方へ伸ばし、その状態を数秒間維持した後に、伸ばした手81を元の位置に戻す。その後、元に戻した手81を再度前方へと伸ばし、その状態を数秒間維持した後、肘82の角度が90度程度になるまで肘82を引き、再度前方へと伸ばした後に、伸ばした手81を元の位置に戻す。この動作を左右それぞれ10回程度繰り返す運動である。図9(a)は、一方の手81を前方へ伸ばした状態を表す図であり、図9(b)は、一方の手81を前方へ伸ばした体勢を数秒間維持した後、肘82の角度が90度程度になるまで肘82を引いた状態を表す図である。主運動31によれば、回旋運動に対する脊柱の安定性を向上させ、上肢とインナーユニットとの協調を高めることが可能である。
図9(c)及び(d)は、主運動32における動作を表す模式図である。主運動32は、まず、基本姿勢Cにおいて一方の脚83を床から持ち上げ、その状態を数秒間維持した後に、上げた脚83を元の位置に戻す。その後、元に戻した脚83を再度床から持ち上げ、その状態を数秒間維持した後に、膝84を身体の横に出してから元の位置に戻す。この動作を左右それぞれ10回程度繰り返す運動である。図9(c)は、一方の脚83を床から持ち上げた状態を表す図であり、図9(d)は、一方の脚83を床から持ち上げた体勢を数秒間維持した後に、膝84を身体の横に出した状態を表す図である。主運動32によれば、回旋運動に対する脊柱の安定性を向上させ、下肢とインナーユニットとの協調を高めることが可能である。
主運動33は、基本姿勢Cにおいて、対角にある手と脚を床から持ち上げ、その状態を数秒間維持する動作を左右交互に10回程度繰り返す運動である。主運動33によれば、回旋運動に対する脊柱の安定性を向上させ、四肢とインナーユニットとの協調を高めることが可能である。
主運動34は、基本姿勢Cから、対角にある手と脚を床から持ち上げ、持ち上げた手においては主運動31と同様の動作を、持ち上げた脚においては主運動32と同様の動作を、それぞれ同時に行なうような動作を左右交互に10回程度繰り返す運動である。主運動34によれば、回旋運動に対する脊柱の安定性を向上させ、四肢とインナーユニットとの協調を高めることが可能である。
コアコーディネーション工程Cは、コアリラクゼーション工程R、及びコアスタビライゼーション工程S1又はS2によって、身体の筋肉や腱が緩み、骨格の形が正常になり、インナーユニットが十分に活性化された状態で実施することで、怪我等の故障リスクを低減させ、又、インナーユニットと手足の協調を十分に高めることが可能となる。
以下、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
以下の実施例及び比較例において、本発明のトレーニング方法により得られる効果は、トレーニングの前後におけるセルフモニタリング、並びに、ショルダー・モビリティ(以下、「SM」という)測定、アクティブ・ストレート・レッグ・レイズ(以下、「ASLR」という)測定、及びシングル・レッグ・ホップ(以下、「SLH」という)測定により評価した。以下、各評価方法について説明する。
(セルフモニタリング)
セルフモニタリングとは、被験者に自分の身体の状態を主観的に評価させる方法である。セルフモニタリングでは、まず、被験者を床に仰向けに寝させ、身体と床との接触部位や接触面積、左右差など、身体と床との接触状況を確認させた。次に、被験者を真っ直ぐに立たせ、前屈、後屈、及び左右への回旋を行なわせ、動きやすさや左右差などを確認させた。次に、被験者を片脚で立たせ、安定性などを確認させた。反対側の脚についても、同様に安定性などを確認させた。最後に、被験者を普段のペースで歩行させ、歩きやすさなどを確認させた。
(SM測定)
被験者を両脚を揃えた常態で真っ直ぐに立たせ、親指を掌に中に入れて握り拳を作らせた。次に、右肘を肩より上に上げ、左肘を肩より下に下げた状態で、左右の拳を背中側に回させてできる限り近づけさせ、両拳の間の距離を測定した。左肘を肩より上に上げ、右肘を肩より下に下げた場合についても、上記と同様の測定を行った。測定は右左交互に2回ずつ行い、右左ともに大きい方の値を測定値として採用した。
(ASLR測定)
まず、被験者の両手をアナトミカル・ポジション(両腕を体の左右に真っ直ぐ下ろし、手の親指が体の外側になるように、手のひらを体の前に向けた状態)にさせ、床の上に仰向けにさせた。次に、右脚の足関節が背屈し、かつ、右膝が伸びた状態で、右脚を床から持ち上げさせ、股関節屈曲可動域を測定した。この時、左脚の膝は伸展位を保ったまま、つま先が上を向いているようにさせた。また、右脚の挙上に伴って腰椎の屈曲が出ないように注意して測定を実施した。左脚についても、上記と同様の測定を行なった。測定は右左交互に2回ずつ行い、各脚ともに大きい方の値を測定値として採用した。
(SLH測定)
被験者に片脚立位の状態から前方に幅跳びをさせ、同じ側の脚で着地をさせた。着地後、被験者が片脚立位の状態を3秒間保持できた場合を成功とし、成功した場合は、跳躍前後における踵骨後縁間の距離を測定した。左右の脚ともに、2回の成功に対して測定を行い、大きい方の値を測定値として採用した。
(運動補助具使用群と運動補助具未使用群の比較)
(実施例1〜10、及び比較例1〜10)
健常な成人20名を被験者とし、無作為に10名ずつ2群に分け、一方を運動補助具使用群(以下、「グループ1」という)、他方を運動補助具未使用群(以下、「グループ2」という)とした。グループ1に属する10名の被験者をそれぞれ実施例1〜10とし、グループ2に属する10名の被験者をそれぞれ比較例1〜10とした。まず、実施例1〜10、及び比較例1〜10の被験者に対し、上記の方法により、セルフモニタリング、並びに、SM測定、ASLR測定、及びSLH測定を実施した。
次に、実施例1〜10の被験者に対して、以下に示す手順で運動を実施させた。まず、略円柱状の運動補助具10(長さl:約980mm、直径d:約150mm)を用いて、コアリラクゼーション工程Rを実施させた。コアリラクゼーション工程Rとしては、動きを伴わない静的な運動からなる予備運動1〜3、及び小さな関節運動を主体とする主運動4〜10を、この順番で実施させた。次に、骨盤底筋群押圧具30(長手方向の長さ:約205mm、幅方向の長さ:約45mm、凸状上面と凸状下面との最大距離:約40mm)を用いて、コアスタビライゼーション工程S1を実施させた。コアスタビライゼーション工程S1としては、呼吸運動11、及び上肢の運動12〜15を、この順番で実施させた。最後に、運動補助具40を用いて、コアコーディネーション工程Cを実施させた。コアコーディネーション工程Cとしては、インナーユニットを活性化させる予備運動25〜27、及びインナーユニットと手足の協調を高める主運動28〜34を実施させた。
一方、比較例1〜10の被験者に対して、運動補助具10、骨盤底筋群押圧具30、及び運動補助具40を用いなかったこと以外は、実施例1〜10の被験者と同様の方法により、運動を実施させた。
上記の運動後の実施例1〜10及び比較例1〜10の被験者に対して、運動前と同様の方法により、セルフモニタリング、並びに、SM測定、ASLR測定、及びSLH測定を実施した。上記の運動の前後におけるSM測定、ASLR測定、及びSLH測定の結果を、表1に示す。表1において、「介入前」とは、上記の運動前の測定値を意味し、「介入後」とは、上記の運動後の測定値を意味する。
表1に示す測定結果から、各グループにおける測定値の平均、標準偏差、分散を算出した。また、各グループにおける介入前後の測定値について二元配置分散分析(有意水準5%)を行い、測定値の変化量が有意であるかを評価した。各グループにおける測定値の平均、標準偏差、分散、二元配置分散分析により得られたP値及び評価結果を、表2に示す。
次に、グループ1とグループ2間において、測定値の変化量に有意差があるかを評価するため、両グループそれぞれの標本数、平均、標準偏差を用いてF検定(有意水準5%)を行い、等分散か、異分散であるかの判定を行った。その結果、等分散であるとの結論を得たので、Studentのt検定を用いて両グループ間の有意差を評価した。有意差の評価は、t検定によって得られた「P(T<=t)両側」の値が、0.05未満であるときに「群間差あり」とし、0.05以上〜0.10未満の範囲にあるときに「有意傾向あり」とし、0.10以上であるときに「群間差なし」とした。F検定により得られた分散比F0、F分布の確率関数の値であるp値、t検定により得られた「P(T<=t)両側」の値、及び有意差の評価を、表3に示す。
実施例1〜10及び比較例1〜10の被験者に対して、上記の運動の前後においてセルフモニタリングの結果に変化があったか否かについて、調査を実施した。調査は、「変化あり」、「少し変化あり」、及び「変化なし」という3つの選択肢が記載された無記名のアンケートを用いて行い、「変化あり」又は「少し変化あり」を選択した場合は、どのような変化であったかについても記入させた。アンケート結果を表4に示す。
(各工程の実施順序を変更した場合の比較)
(実施例11〜17、及び比較例11〜24)
健常な成人21名を被験者とし、無作為に7名ずつ3群に分け、グループ3〜5とした。グループ3に属する7名の被験者をそれぞれ実施例11〜17とし、グループ4に属する7名の被験者をそれぞれ比較例11〜17とし、グループ5に属する7名の被験者をそれぞれ比較例18〜24とした。まず、実施例11〜17、及び比較例11〜24の被験者に対し、上記の方法により、セルフモニタリング、並びに、SM測定、ASLR測定、及びSLH測定を実施した。
次に、実施例11〜17の被験者に対して、以下に示す手順で運動を実施させた。まず、略円柱状の運動補助具10(長さl:約980mm、直径d:約150mm)を用いて、コアリラクゼーション工程Rを実施させた。コアリラクゼーション工程Rとしては、動きを伴わない静的な運動からなる予備運動1〜3、及び小さな関節運動を主体とする主運動4〜10を、この順番で実施させた。次に、骨盤底筋群押圧具30(長手方向の長さ:約205mm、幅方向の長さ:約45mm、凸状上面と凸状下面との最大距離:約40mm)を用いて、コアスタビライゼーション工程S1を実施させた。コアスタビライゼーション工程S1としては、呼吸運動11、及び上肢の運動12〜15を、この順番で実施させた。最後に、運動補助具40を用いて、コアコーディネーション工程Cを実施させた。コアコーディネーション工程Cとしては、インナーユニットを活性化させる予備運動25〜27、及びインナーユニットと手足の協調を高める主運動28〜34を実施させた。
一方、比較例11〜17の被験者に対して、コアスタビライゼーション工程S1、コアコーディネーション工程C、コアリラクゼーション工程Rの順序で運動を実施させたこと以外は、実施例11〜17の被験者と同様の方法により、運動を実施させた。
また、比較例18〜24の被験者に対して、コアコーディネーション工程C、コアリラクゼーション工程R、コアスタビライゼーション工程S1の順序で運動を実施させたこと以外は、実施例11〜17の被験者と同様の方法により、運動を実施させた。
上記の運動後の実施例11〜17及び比較例11〜24の被験者に対して、運動前と同様の方法により、セルフモニタリング、並びに、SM測定、ASLR測定、及びSLH測定を実施した。上記の運動の前後におけるSM測定、ASLR測定、及びSLH測定の結果を、表5に示す。表5において、「介入前」とは、上記の運動前の測定値を意味し、「介入後」とは、上記の運動後の測定値を意味する。
表5に示す測定結果から、各グループにおける測定値の平均、標準偏差、分散を算出した。また、各グループにおける介入前後の測定値について二元配置分散分析(有意水準5%)を行い、測定値の変化量が有意であるかを評価した。各グループにおける測定値の平均、標準偏差、分散、二元配置分散分析により得られたP値及び評価結果を、表6に示す。
次に、グループ3とグループ4間において、測定値の変化量に有意差があるかを評価するため、両グループそれぞれの標本数、平均、標準偏差を用いてF検定(有意水準5%)を行い、等分散か、異分散であるかの判定を行った。その結果、等分散であるとの結論を得たので、Studentのt検定を用いて両グループ間の有意差を評価した。有意差の評価は、t検定によって得られた「P(T<=t)両側」の値が、0.05未満であるときに「群間差あり」とし、0.05以上〜0.10未満の範囲にあるときに「有意傾向あり」とし、0.10以上であるときに「群間差なし」とした。グループ3とグループ5間においても、上記と同様の方法により、両グループ間の有意差を評価した。F検定により得られた分散比F0、F分布の確率関数の値であるp値、t検定により得られた「P(T<=t)両側」の値、及び有意差の評価を、表7に示す。
実施例11〜17及び比較例11〜24の被験者に対して、上記の運動の前後においてセルフモニタリングの結果に変化があったか否かについて、調査を実施した。調査は、「変化あり」、「少し変化あり」、及び「変化なし」という3つの選択肢が記載された無記名のアンケートを用いて行い、「変化あり」又は「少し変化あり」を選択した場合は、どのような変化であったかについても記入させた。アンケート結果を表8に示す。
以上の結果から、コアリラクゼーション工程R、コアスタビライゼーション工程S1、及びコアコーディネーション工程Cの実施に際して、上記の運動補助具を用いた場合、柔軟性の向上に有意であることがわかる。また、コアリラクゼーション工程R、コアスタビライゼーション工程S1、コアコーディネーション工程Cを、この順番で実施することで、上記工程を異なる順番で実施した場合よりも、例えば、片脚立位での安定性が増し、SLH測定の測定値が向上するなど有利な効果が得られることがわかる。さらに、被験者の主観的な評価においても、コアリラクゼーション工程R、コアスタビライゼーション工程S1、コアコーディネーション工程Cの順で実施した場合に、最も良い結果が得られていることがわかる。これらの結果は、まず、コアリラクゼーション工程Rによって身体の筋肉や腱を緩ませ、骨格の形を本来あるべき正常な状態にし、次に、コアスタビライゼーション工程S1によってインナーユニットを活性化させ、次に、コアコーディネーション工程Cによってインナーユニットと手足との協調を高めるという本発明のトレーニング方法が、感覚の変化を引き出すとともに、柔軟性を向上させ、十分なトレーニング効果を得ることができるものであることを示している。