以下、本発明の好ましい実施の形態を、本発明に係る遠隔操作装置を溶接システムに用いた場合を例として、添付図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係る溶接システムAの全体構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、溶接システムAは、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、遠隔操作装置3、パワーケーブル41,42、および、溶接トーチTを備えている。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチTに送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチTの先端から突出させる。溶接トーチTの先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチTの先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間に高電圧を印加してアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムAは、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。なお、溶接システムAは、実際には、溶接トーチTから放出するためのシールドガスのガスタンク、溶接トーチTを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環装置などを備えている場合もあるが、図への記載や説明を省略している。
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチTに供給するものである。溶接電源装置1は、電源部11および通信部12を備えている。
電源部11は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力するものである。電源部11に入力される三相交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、インバータ回路によって交流電力に変換される。そして、トランスによって降圧または昇圧され、整流回路によって直流電力に変換されて出力される。なお、電源部11の構成は、上記したものに限定されない。
通信部12は、遠隔操作装置3との間で無線通信を行うためのものである。通信部12は、遠隔操作装置3から受信した信号を復調して、図示しない制御部に出力する。遠隔操作装置3から受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号、および、インチングを指示する信号などがある。また、通信部12は、制御部から入力される信号を変調して、遠隔操作装置3に送信する。遠隔操作装置3に送信する信号には、例えば、設定されている溶接条件を示す信号などがある。なお、遠隔操作装置3との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチTに送り出すものである。ワイヤ送給装置2は、図示しない送給モータを制御して、ワイヤ電極の送り出しを行う。ワイヤ送給装置2は、溶接電源装置1と通信を行っており、溶接電源装置1からの指示に応じて送給モータを制御する。溶接電源装置1は、溶接の開始および停止に合わせてワイヤ電極の送給の開始および停止を行うように、送給モータの駆動を制御する指示を行う。また、溶接条件などに応じてワイヤ電極の送給速度を調整するために、送給モータの回転速度を制御する指示を行う。なお、溶接システムAがティグ溶接などの非消耗電極式の溶接システムである場合は、ワイヤ電極を送給するためのワイヤ送給装置2は必要ない。
遠隔操作装置3は、離れた位置から溶接電源装置1を操作するためのものである。遠隔操作装置3は、溶接電源装置1の溶接条件の変更を行ったり、溶接電源装置1に設定されている溶接条件を確認したり、インチングを指示したりする。インチングは、溶接開始準備のために溶接トーチTの先端までワイヤ電極を送り出す作業である。
図2および図3は、遠隔操作装置3の詳細を説明するための図である。図2は、遠隔操作装置3の外観を示す概略平面図である。図3(a)は、遠隔操作装置3の内部構成を示す機能ブロック図であり、図3(b)は、制御部35の詳細を示す機能ブロック図である。図2および図3に示すように、遠隔操作装置3は、筐体30、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、制御部35、および、電源部36を備えている。
筐体30は、略直方体形状の例えば合成樹脂製であり、装置内部を保護するためのものである。なお、筐体30の形状および材質は限定されない。筐体30の操作面30a(図2に示す面)には、表示部32のLED32a、操作部33の操作ボタン33a,33bおよび操作ツマミ33c,33dが配置されている。なお、これらの配置位置は限定されない。
通信部31は、溶接電源装置1との間で無線通信を行うためのものである。通信部31は、溶接電源装置1から受信した信号を復調して、制御部35に出力する。溶接電源装置1から受信する信号には、例えば、設定されている溶接条件を示す信号などがある。また、通信部31は、制御部35から入力される信号を変調して、溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号、および、インチングを指示する信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。また、通信部31は、受信を行わず、送信のみを行うものであってもよい。
表示部32は、遠隔操作装置3の状態を表示するものであり、LED32aを備えている。LED32aは、複数のLEDから成り、稼働状態や、通信状態、エラー状態などを、点灯、点滅および消灯によって表示する。表示部32は、制御部35によって制御されている。なお、表示部32はこれに限られず、例えば液晶表示装置などを備えるようにしてもよい。この場合は、設定されている溶接条件なども表示するようにしてもよい。
操作部33は、作業者による操作ボタン33a,33bおよび操作ツマミ33c,33dの操作を操作信号として制御部35に出力するものである。操作ボタン33aは、溶接条件(溶接電流設定値および溶接電圧設定値)を溶接電源装置1に送信するための押しボタンである。操作ボタン33aが押下されると、操作ツマミ33c,33dの回動位置に応じた溶接電流設定値および溶接電圧設定値が取得され、溶接電源装置1に送信される。操作ボタン33bは、インチングの指示を溶接電源装置1に送信するための押しボタンである。操作ボタン33bが押下されると、インチングを指示するインチング信号が溶接電源装置1に送信される。溶接電源装置1はインチング信号が入力されている間、ワイヤ送給装置2の送給モータを駆動させて、ワイヤ電極の送給を行う。操作ツマミ33cは、溶接電流設定値を調整するためのツマミである。操作ツマミ33dは、溶接電圧設定値を調整するためのツマミである。操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dは、可変抵抗器を備えている。各可変抵抗器は、各ツマミの回動角度に応じて抵抗値が変化する。この抵抗値に応じた溶接電流設定値(溶接電圧設定値)が取得される。なお、操作部33には、他の操作手段が含まれていてもよい。
記憶部34は、各種情報を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどのメモリによって実現されている。
制御部35は、遠隔操作装置3の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部35は、操作部33より入力される操作信号に応じて、各種処理を行う。
操作者は、操作ツマミ33c(33d)を回動させて、所望の設定値を指すように位置を合わせてから、操作ボタン33aを押下する。制御部35は、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されると、操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dの可変抵抗器に電流を流し、各可変抵抗器の抵抗値に応じた溶接電流設定値および溶接電圧設定値を取得する。そして、制御部35は、取得した溶接電流設定値および溶接電圧設定値に基づく信号を通信部31に出力して、溶接電源装置1に送信させる。操作ボタン33aが押下されるまでは、操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dの可変抵抗器に電流が流れないので、操作ツマミ33c(33d)の操作途中での溶接電流設定値(溶接電圧設定値)が取得されることはない。
また、制御部35は、通常モードと省エネモードとの切り替えを行う。省エネモード時には、不要な電力消費を行わないように、電源部36による電力供給が制限される。モードの切り替え処理(以下、「モード切替処理」とする)の詳細については後述する。
電源部36は、制御部35および各部に電圧を供給するものであり、例えば乾電池を備えている。なお、乾電池に代えて、蓄電池などの二次電池を備えるようにしてもよい。電源部36は、乾電池の出力電圧をDC/DCコンバータで昇圧して、各部に供給する。また、電源部36は、制御部35からの指令により、電力供給を制限しない通常モードと、電力供給を制限する省エネモードとで切り替えられる。電源部36は、省エネモードに切り替えられているときは、通信部31および表示部32への電力供給を行わない。したがって、省エネモード時には、LED32aは消灯し、また、遠隔操作装置3は通信を行うことができない。一方、電源部36は、省エネモードに切り替えられているときでも、制御部35および操作部33への電力供給は継続する。したがって、省エネモード時でも、操作者が操作ボタン33aの操作を行うと、操作部33は、操作信号を出力する。そして、操作信号を入力された制御部35は、電源部36を省エネモードから通常モードへ切り替える指令を出力する。電源部36内の、通信部31および表示部32への電力供給線には、例えば半導体スイッチが配置されており、制御部35は、当該半導体スイッチのオンオフを切り替えることで、通常モードと省エネモードとを切り替える。なお、制御部35は、他の方法で、通常モードと省エネモードとを切り替えるようにしてもよい。
次に、制御部35が行うモード切替処理について説明する。
図3(b)に示すように、制御部35は、計時部351、設定時間決定部352、比較部353、および、モード切替部354を備えている。なお、図3(b)においては、モード切替処理に関する構成のみを記載しており、その他の構成については記載を省略している。
計時部351は、時間を計時するものである。計時部351は、操作部33より入力される操作信号に基づいて、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力され続けている時間である操作継続時間Ton、および、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されていない時間である操作停止時間Toffを計時する。計時部351は、省エネモード時に操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されたときに操作継続時間Tonの計時を開始し、当該操作信号の入力が停止したときに操作継続時間Tonの計時を停止する。そして、計時部351は、計時した操作継続時間Tonを設定時間決定部352に出力する。また、計時部351は、通常モード時に操作部33より入力されている操作ボタン33aの押下による操作信号が停止したときに操作停止時間Toffの計時を開始し、計時した操作停止時間Toffを比較部353に出力する。計時部351は、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されたときには、操作停止時間Toffの計時を停止する。現在のモード(通常モードであるか省エネモードであるか)は、モード切替部354より入力される信号に基づいて判断される。操作ボタン33aの押下による操作信号が、本発明の「特定の操作信号」に相当する。
設定時間決定部352は、計時部351より操作継続時間Tonを入力されて、設定時間Tsを決定する。設定時間Tsは、操作停止時間Toffと比較するための閾値である。本実施形態では、設定時間決定部352は、操作継続時間Tonが例えば3秒未満である場合、設定時間Tsを10秒とし、3秒以上である場合、設定時間Tsを30秒とする。なお、これは一例であって、操作継続時間Tonを切り分ける時間も、設定時間Tsも限定されない。設定時間決定部352は、決定した設定時間Tsを比較部353に出力する。
比較部353は、通常モードから省エネモードへの切り替えを行うか否かを判断するものである。比較部353は、設定時間決定部352より設定時間Tsを入力され、計時部351より操作停止時間Toffを入力される。そして、両者を比較して、操作停止時間Toffが設定時間Ts以上になった場合、モード切替部354に切替信号を出力する。
モード切替部354は、通常モードと省エネモードとの切り替えを行うものである。モード切替部354は、省エネモード時に操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されたときに、省エネモードから通常モードに切り替える。また、通常モード時に比較部353より切替信号が入力されたときに、通常モードから省エネモードに切り替える。モード切替部354は、現在のモードを示す信号を電源部36および計時部351に出力する。
次に、モード切替処理の処理手順について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
図4は、制御部35が行うモード切替処理を説明するためのフローチャートである。当該処理は、遠隔操作装置3が起動された時に開始される。当該処理の開始時は、省エネモードになっている。
まず、操作継続時間Tonおよび操作停止時間Toffが「0」に初期化される(S1)。次に、操作ボタン33aの操作が開始されたか否かが判別される(S2)。具体的には、操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されたか否かが判別される。操作ボタン33aの操作が開始されていない場合(S2:NO)は、ステップS2に戻って判別が繰り返される。操作ボタン33aの操作が開始された場合(S2:YES)、省エネモードから通常モードに切り替えられ(S3)、設定時間Tsを決定するための処理(S4〜S7)が行われる。
設定時間Tsを決定するための処理では、まず、操作継続時間Tonの計時が開始される(S4)。具体的には、計時部351が操作継続時間Tonの計時を開始する。そして、操作ボタン33aの操作が終了したか否かが判別される(S5)。具体的には、操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号の入力が停止したか否かが判別される。操作ボタン33aの操作が終了していない場合(S5:NO)は、ステップS5に戻って判別が繰り返される。操作ボタン33aの操作が終了した場合(S5:YES)、操作継続時間Tonの計時が停止される(S6)。具体的には、計時部351が操作継続時間Tonの計時を停止する。そして、計時された操作継続時間Tonに基づいて、設定時間Tsが決定される(S7)。具体的には、設定時間決定部352が、操作継続時間Tonに基づいて設定時間Tsを決定する。
次に、操作停止時間Toffの計時が開始される(S11)。具体的には、計時部351が操作停止時間Toffの計時を開始する。そして、操作ボタン33aの操作がない状態で設定時間Tsが経過したか否かが判別される(S12)。具体的には、操作停止時間Toffが設定時間Ts以上であるか否かが判別される。Toff<Tsの場合(S12:NO)、操作ボタン33aの操作が開始されたか否かが判別される(S13)。具体的には、操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されたか否かが判別される。操作ボタン33aの操作が開始されていない場合(S13:NO)は、ステップS12に戻ってステップS12およびS13の判別が繰り返される。
ステップS13において、操作ボタン33aの操作が開始された場合(S13:YES)、操作停止時間Toffの計時が停止される(S14)。具体的には、計時部351が操作停止時間Toffの計時を停止する。そして、操作停止時間Toffが「0」に初期化され(S15)、操作ボタン33aの操作が終了したか否かが判別される(S16)。操作ボタン33aの操作が終了していない場合(S16:NO)は、ステップS16に戻って判別が繰り返される。操作ボタン33aの操作が終了した場合(S16:YES)、ステップS11に戻って、操作停止時間Toffの計時が開始される。
ステップS12において、Toff≧Tsの場合(S12:YES)、すなわち、操作ボタン33aの操作がない状態で設定時間Tsが経過した場合、操作停止時間Toffの計時が停止され(S17)、通常モードから省エネモードに切り替えられる(S18)。そして、ステップS1に戻って、モード切替処理が再開される。
なお、図4のフローチャートに示す処理は一例であって、モード切替処理は上述したものに限定されない。
図5は、モード切替処理を説明するためのタイムチャートの一例である。
同図(a)は、モード切替部354が出力する現在のモードを示す信号を示しており、現在のモードが通常モードであるか省エネモードであるかを示している。同図(a)においては、ハイレベルのときが通常モードであることを示しており、ローレベルのときが省エネモードであることを示している。同図(b)は、操作部33が出力する、操作ボタン33aの押下による操作信号を示している。同図(b)においては、ハイレベルのときが当該操作信号の入力が有る状態を示しており、ローレベルのときが当該操作信号の入力が無い状態を示している。同図(c),(d)は、計時部351で計時される時間を示しており、同図(c)は操作継続時間Tonを示しており、同図(d)は操作停止時間Toffを示している。
省エネモード時で操作信号の入力が無い状態において、時刻t1のときに操作信号が入力されて、操作信号の入力が有る状態に切り替わっている(同図(b)参照)。このとき、省エネモードから通常モードに切り替わり(同図(a)参照)、操作継続時間Tonの計時が開始されて、その後、同図(c)に示す計時時間が上昇している。
そして、時刻t2において、操作信号の入力が停止して、操作信号の入力が無い状態に切り替わっている(同図(b)参照)。このとき、操作継続時間Tonの計時が停止されて、計時された操作継続時間Ton(Ton1)に基づいて設定時間Ts1が決定される(同図(c)参照)。例えば、操作継続時間Ton1が3秒以上の場合、設定時間Ts1は30秒に決定される。なお、図5においては、時刻t1と時刻t2との間隔を実際より長く記載している(後述する時刻t6と時刻t7との間隔も同様である)。そして、操作停止時間Toffの計時が開始されて、同図(d)に示す計時時間が「0」から上昇している。
そして、操作停止時間Toffが設定時間Ts1に達する前に、時刻t3において、操作信号の入力が再開して、操作信号の入力が有る状態に切り替わっている(同図(b)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化されている(同図(d)参照)。
そして、時刻t4において、操作信号の入力が無い状態に切り替わったときに、操作停止時間Toffの計時が開始され、時刻t5において、操作停止時間Toffが設定時間Ts1に達している(同図(d)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化され(同図(d)参照)、通常モードから省エネモードに切り替わっている(同図(a)参照)。
また、省エネモード時で操作信号の入力が無い状態において、時刻t6のときに操作信号の入力が有る状態に切り替わって(同図(b)参照)、省エネモードから通常モードに切り替わり(同図(a)参照)、操作継続時間Tonの計時が開始される(同図(c)参照)。そして、時刻t7において、操作信号の入力が無い状態に切り替わっている(同図(b)参照)。このとき、操作継続時間Tonの計時が停止されて、計時された操作継続時間Ton(Ton2)に基づいて設定時間Ts2が決定される(同図(c)参照)。例えば、操作継続時間Ton2が3秒未満の場合、設定時間Ts2は10秒に決定される。そして、操作停止時間Toffの計時が開始されて、同図(d)に示す計時時間が「0」から上昇している。そして、操作停止時間Toffが設定時間Ts2に達する前に、時刻t8において、操作信号の入力が有る状態に切り替わって(同図(b)参照)、操作停止時間Toffの計時が停止されて、「0」に初期化されている(同図(d)参照)。その後、時刻t9において、操作信号の入力が無い状態に切り替わったときに操作停止時間Toffの計時が開始され、時刻t10において、操作停止時間Toffが設定時間Ts2に達している(同図(d)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化され(同図(d)参照)、通常モードから省エネモードに切り替わっている(同図(a)参照)。
設定時間Ts2は設定時間Ts1より短い時間として決定されているので、時刻t9で操作信号の入力が無い状態に切り替わった後は、時刻t4で操作信号の入力が無い状態に切り替わった後よりも短い時間で、省エネモードに切り替えられている。
次に、本実施形態に係る遠隔操作装置3の作用および効果について説明する。
本実施形態によると、制御部35は、通常モード時において、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されていない時間である操作停止時間Toffが設定時間Ts以上となった場合、すなわち、操作ボタン33aの操作が設定時間Ts以上行われない場合、省エネモードへの切り替えを行って、電源部36による電力供給を制限する。これにより、電力の消費を抑制することができる。したがって、電源の使用可能時間を長くすることができるので、電源の交換または充電の頻度を少なくすることができる。これにより、作業効率を向上することができる。また、省エネルギーにも貢献できる。
また、本実施形態によると、制御部35は、省エネモード時に操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されると通常モードに切り替え、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力され続けている時間である操作継続時間Tonを計時する。そして、制御部35は、計時された操作継続時間Tonに基づいて、設定時間Tsを決定する。したがって、操作者は、操作ボタン33aを押下する時間を変更することで、設定時間Tsを変更することができ、省エネモードに切り替えられるまでの時間を変更することができる。省エネモードに切り替えられるまでの時間が短い場合、ゆっくり操作を行っていると、操作中に省エネモードに切り替わってしまう場合がある。一方、省エネモードに切り替えられるまでの時間が長い場合、操作が終わってもしばらくは省エネモードに切り替わらないので、遠隔操作装置3に手が触れて誤操作をしてしまう場合がある。ゆっくり操作を行いたい操作者は、操作ボタン33aを長く押し続けることで(例えば3秒以上)、省エネモードに切り替えられるまでの時間を長い時間(例えば30秒)とすることができる。一方、早く省エネモードに切り替えられることを望む操作者は、操作ボタン33aを押し続ける時間を短くすることで(例えば3秒未満)、省エネモードに切り替えられるまでの時間を短い時間(例えば10秒)とすることができる。つまり、操作者は、自分の意志で、省エネモードに切り替えられるまでの時間を変更することができる。
なお、本実施形態においては、操作停止時間Toffを、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されていない時間とした場合について説明したが、これに限られない。例えば、操作停止時間Toffを、操作ボタン33aの押下による操作信号、または、操作ボタン33bの押下による操作信号が入力されていない時間としてもよい。つまり、操作ボタン33aの押下による操作信号、または、操作ボタン33bの押下による操作信号のいずれかが入力されたときに操作停止時間Toffの計時を停止し、操作ボタン33aの押下による操作信号、および、操作ボタン33bの押下による操作信号のいずれもが入力されなくなったときに操作停止時間Toffの計時を開始するようにしてもよい。この場合、設定時間Tsが経過するまでに、操作ボタン33aが押下されなくても、操作ボタン33bが押下された場合に、省エネモードに切り替わらず通常モードを継続することになる。この場合、操作ボタン33aの押下による操作信号、および、操作ボタン33bの押下による操作信号が本発明の「特定の操作信号」に相当する。
また、操作停止時間Toffを、すべての操作信号が入力されていない時間としてもよい。つまり、いずれかの操作信号が入力されたときに操作停止時間Toffの計時を停止し、いずれの操作信号も入力されなくなったときに操作停止時間Toffの計時を開始するようにしてもよい。この場合、設定時間Tsが経過するまでに、操作ボタン33aが押下されなくても、何らかの操作が行われた場合に、省エネモードに切り替わらず通常モードを継続することになる。操作信号には、操作ツマミ33c,33dの操作に基づく操作信号や、図示しない他の操作手段の操作信号も含まれる。また、例えば、遠隔操作装置3をゆする動作(シェイク)や、遠隔操作装置3を動かすことも操作であり、遠隔操作装置3に設けられている加速度センサ(図示なし)が検出する加速度が所定以上変化したことを示す信号も操作信号と考えることができる。この場合、遠隔操作装置3をシェイクしたり動かしたりすることで、省エネモードに切り替わらないようにすることができる。この場合、加速度センサおよび検出された加速度を入力されて所定以上変化したことを検出する制御部35も、本発明の「操作部」に相当する。操作停止時間Toffを、いずれの操作信号に基づいて計時するかは、仕様に応じて決定すればよい。
本実施形態においては、操作継続時間Tonを、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力され続けている時間とした場合について説明したが、これに限られない。操作継続時間Tonを、いずれの操作信号に基づいて計時するかも、仕様に応じて決定すればよい。また、例えば、計時部351は、操作ボタン33bの押下による操作信号が入力された場合は操作継続時間Tonを計時せず、固定された設定時間Tsを比較部353に出力するようにしてもよい。この場合、操作ボタン33aが押下された場合は、押下時間によって省エネモードに切り替えられるまでの時間を変更可能とし、操作ボタン33bが押下された場合は、押下時間にかかわらず、省エネモードに切り替えられるまでの時間を固定とすることができる。
本実施形態においては、操作継続時間Tonがある時間より短い場合に設定時間Tsを短い時間に決定し、長い場合に設定時間Tsを長い時間に決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、操作継続時間Tonが短い場合に設定時間Tsを長くするようにしてもよい。また、3つ以上の時間帯に分けて、操作継続時間Tonがいずれの時間帯に属するかに基づいて設定時間Tsを決定するようにしてもよい。また、設定時間Tsを操作継続時間Tonに応じて線形的に変化するようにしてもよい。例えば、設定時間決定部352が、計時部351より入力される操作継続時間Tonに基づいて、下記式により、設定時間Tsを算出するようにしてもよい。なお、aおよびbは所定の係数である。
本実施形態においては、省エネモードから通常モードに切り替わった時の操作の操作継続時間Tonに基づく設定時間Tsを、省エネモードに切り替わるまで用いる場合について説明したが、これに限られない。操作毎に操作継続時間Tonを計時して設定時間Tsをその都度変更するようにしてもよい。この場合、通常モード時の操作毎に、省エネモードに切り替わるまでの時間を変更することができる。
本実施形態においては、設定時間決定部352が計時部351より入力される操作継続時間Tonに基づいて設定時間Tsを決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、操作の種類の違いに基づいて設定時間Tsを決定するようにしてもよい。
図6は、第2実施形態に係る遠隔操作装置3’を説明するための図であり、第2実施形態に係る制御部35’の詳細を示す機能ブロック図である。図6において、第1実施形態に係る遠隔操作装置3(図3(b)参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。なお、第2実施形態に係る遠隔操作装置3’の内部構成は、第1実施形態に係る遠隔操作装置3(図3(a)参照)と同様なので、記載を省略する。
第2実施形態に係る制御部35’は、設定時間決定部352が操作部33より入力される操作信号の種類の違いに基づいて設定時間Tsを決定する点で、第1実施形態に係る制御部35と異なる。
計時部351は、操作停止時間Toffを計時して比較部353に出力するが、操作継続時間Tonは計時しない。
設定時間決定部352は、操作部33より操作信号を入力されて、設定時間Tsを決定する。本実施形態では、設定時間決定部352は、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力された場合、設定時間Tsを30秒とし、操作ボタン33bの押下による操作信号が入力された場合、設定時間Tsを10秒とする。なお、これは一例であって、各設定時間Tsは限定されない。また、その他の操作信号が入力された場合にも、設定時間Tsを決定するようにしてもよい。
図7は、制御部35’が行うモード切替処理を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローチャートは、設定時間Tsを決定するための処理(S7’,S5)が、図4に示すフローチャートの設定時間Tsを決定するための処理(S4〜S7)と異なる。また、ステップS2,S5,S13,S16においては、操作ボタン33aの操作だけでなく、その他の操作も対象となる。その他の処理は、図4に示すフローチャートと同様である。
制御部35’が行うモード切替処理における、設定時間Tsを決定するための処理では、操作継続時間Tonの計時は行われない。まず、ステップS2で受け付けた操作の種類に基づいて、設定時間Tsが決定される(S7’)。具体的には、設定時間決定部352が、入力された操作信号に基づいて設定時間Tsを決定する。そして、当該操作が終了したか否かが判別され(S5)、操作が終了していない場合(S5:NO)は、ステップS5に戻って判別が繰り返される。一方、操作が終了した場合は(S5:YES)、ステップS11に進む。なお、図7のフローチャートに示す処理は一例であって、モード切替処理は上述したものに限定されない。
図8は、第2実施形態におけるモード切替処理を説明するためのタイムチャートの一例である。
図8(a)は、図5(a)と同様、モード切替部354が出力する現在のモードを示す信号を示している。図8(b)は、操作部33が出力する操作信号を示している。同図(b)においては、ハイレベルのときが操作信号の入力が有る状態を示しており、ローレベルのときが操作信号の入力が無い状態を示している。図8(c)は、計時部351で計時される操作停止時間Toffを示している。
省エネモード時で操作信号の入力が無い状態において、時刻t1のときに操作信号が入力されて、操作信号の入力が有る状態に切り替わっている(図8(b)参照)。このとき、省エネモードから通常モードに切り替わる(図8(a)参照)。また、入力された操作信号に基づいて設定時間Ts1が決定される。例えば、入力された操作信号が操作ボタン33bの押下による操作信号の場合、設定時間Ts1は10秒に決定される。操作継続時間Tonの計時は行われず、設定時間Ts1は、操作信号が入力され続けている時間に左右されない。
そして、時刻t2において、操作信号の入力が停止して、操作信号の入力が無い状態に切り替わっている(図8(b)参照)。そして、操作停止時間Toffの計時が開始されて、同図(c)に示す計時時間が「0」から上昇している。
そして、操作停止時間Toffが設定時間Ts1に達する前に、時刻t3において、操作信号の入力が再開して、操作信号の入力が有る状態に切り替わっている(図8(b)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化されている(図8(c)参照)。
そして、時刻t4において、操作信号の入力が無い状態に切り替わったときに操作停止時間Toffの計時が開始され、時刻t5において、操作停止時間Toffが設定時間Ts1に達している(図8(c)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化され(図8(c)参照)、通常モードから省エネモードに切り替わっている(図8(a)参照)。
また、省エネモード時で操作信号の入力が無い状態において、時刻t6のときに操作信号の入力が有る状態に切り替わって(同図(b)参照)、省エネモードから通常モードに切り替わる(図8(a)参照)。また、入力された操作信号に基づいて設定時間Ts2が決定される。例えば、入力された操作信号が操作ボタン33aの押下による操作信号の場合、設定時間Ts2は30秒に決定される。設定時間Ts2は、操作信号が入力され続けている時間に左右されない。そして、時刻t7において、操作信号の入力が無い状態に切り替わり(図8(b)参照)、操作停止時間Toffの計時が開始されて、計時時間が「0」から上昇している(図8(c)参照)。そして、操作停止時間Toffが設定時間Ts2に達する前に、時刻t8において、操作信号の入力が有る状態に切り替わって(図8(b)参照)、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化されている(図8(c)参照)。その後、時刻t9において、操作信号の入力が無い状態に切り替わったときに操作停止時間Toffの計時が開始され、時刻t10において、操作停止時間Toffが設定時間Ts2に達している(図8(c)参照)。このとき、操作停止時間Toffの計時が停止されて「0」に初期化され(図8(c)参照)、通常モードから省エネモードに切り替わっている(図8(a)参照)。
設定時間Ts2は設定時間Ts1より長い時間として決定されているので、時刻t9で操作信号の入力が無い状態に切り替わった後は、時刻t4で操作信号の入力が無い状態に切り替わった後よりも長い時間で、省エネモードに切り替えられている。また、設定時間Ts1,Ts2は、入力された操作信号の種類に基づいて決定され、操作信号が入力され続けている時間には左右されない。
第2実施形態によると、制御部35は、通常モード時において操作信号が入力されていない時間である操作停止時間Toffが設定時間Ts以上となった場合、すなわち、操作が設定時間Ts以上行われない場合、省エネモードへの切り替えを行って、電源部36による電力供給を制限する。これにより、電力の消費を抑制することができる。したがって、電源の使用可能時間を長くすることができるので、電源の交換または充電の頻度を少なくすることができる。これにより、作業効率を向上することができる。また、省エネルギーにも貢献できる。
また、第2実施形態によると、制御部35は、省エネモード時に操作信号が入力されると通常モードに切り替え、操作信号の種類に基づいて、設定時間Tsを決定する。したがって、操作者は、操作する操作手段を変更することで、設定時間Tsを変更することができ、省エネモードに切り替えられるまでの時間を変更することができる。操作ボタン33bを押下してインチングを行った後は、遠隔操作装置3’に手が触れて誤操作をしてしまうことを防ぐために、省エネモードに切り替えられるまでの時間が短いのが望ましい。一方、操作ボタン33aを押下して溶接条件を溶接電源装置1に送信した場合は、溶接条件をさらに変更する可能性があるので、省エネモードに切り替えられるまでの時間が長いのが望ましい。したがって、入力された操作信号が操作ボタン33bの押下による操作信号の場合には設定時間Tsを短い時間とし、入力された操作信号が操作ボタン33aの押下による操作信号の場合には設定時間Tsを長い時間とすることで、操作の目的に応じて、省エネモードに切り替えられるまでの時間を変更することができる。なお、どの操作信号の場合に設定時間Tsをどのような長さにするかは限定されず、仕様に応じて決定される。
第2実施形態においては、操作部33より入力される操作信号の種類の違い、すなわち、操作された操作手段の違いに基づいて設定時間Tsを決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、操作方法の違いに基づいて設定時間Tsを決定するようにしてもよい。具体的には、操作ボタン33aがワンクリック操作されたかダブルクリック操作されたか(またはトリプルクリック操作されたか)によって、設定時間Tsを決定するようにしてもよい。例えば、操作ボタン33aが押下のあと開放され(クリック操作)、所定時間(例えば0.3秒)内に再度クリック操作された場合を、操作信号により判断して、ダブルクリック操作と判断し、さらに所定時間内に再度クリック操作された場合をトリプルクリック操作と判断すればよい。なお、各クリック操作の判断方法は限定されない。また、1つの操作手段による操作か、2つの操作手段の同時操作かによって、設定時間Tsを決定するようにしてもよい。具体的には、操作ボタン33aだけが押下されたか、操作ボタン33aと操作ボタン33bとが押下されたかによって、設定時間Tsを決定するようにしてもよい。
なお、第2実施形態においては、省エネモードから通常モードに切り替わった時の操作の種類の違いに基づく設定時間Tsを、省エネモードに切り替わるまで用いる場合について説明したが、これに限られない。操作毎に操作の種類に基づいて設定時間Tsをその都度変更するようにしてもよい。この場合、通常モード時の操作毎に、省エネモードに切り替わるまでの時間を変更することができる。
上記第1および第2実施形態においては、遠隔操作装置3(3’)が溶接電源装置1と直接無線通信を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、ワイヤ送給装置2を中継して通信を行うようにしてもよい。例えば、遠隔操作装置3(3’)が、ワイヤ送給装置2の通信部(図示なし)と無線通信を行い、ワイヤ送給装置2の通信部が溶接電源装置1の通信部12と有線通信を行うようにしてもよい。この場合、遠隔操作装置3(3’)は近くに位置するワイヤ送給装置2との間で通信を行うので、間に隔壁や他の溶接システムなどが存在する可能性が少なく、無線通信に障害が発生しにくい。また、ワイヤ送給装置2と溶接電源装置1とは離れていても有線通信なので、通信に障害が発生しにくい。したがって、遠隔操作装置3(3’)と溶接電源装置1との通信を、より正確に行うことができる。
上記第1および第2実施形態においては、本発明に係る遠隔操作装置3(3’)を溶接システムに用いた場合について説明したが、これに限られない。本発明は、溶接システム以外のシステムにも適用することができる。例えば、トーチの先端にプラズマを発生させて被加工物Wを切断するプラズマ切断システムや、トーチの先端に発生させたアークの熱と圧縮空気の噴射を利用して溝掘りを行うエアアークガウジングシステムなどの電源装置を遠隔操作するための遠隔操作装置においても、本発明を適用することができる。また、テレビ、ビデオ、エアコンなどの家電機器や、その他の機器を遠隔操作するための遠隔操作装置においても、本発明を適用することができる。
本発明に係る遠隔操作装置および溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る遠隔操作装置および溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。