JP6719627B1 - ビールテイスト飲料、およびビールテイスト飲料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、原料に麦芽を多く用いると、発酵工程において酵母から発生した二酸化炭素等を含む泡が大量に発生し、発酵液の表面から高い位置まで泡が盛り上がって堆積して形成される。これによって、発酵タンクの上方に設けられる二酸化炭素の回収ライン等の設備の中に泡が侵入することがあった。一般的に、二酸化炭素の回収ラインは複数の発酵タンクに接続しているため、1つのビールテイスト飲料の発酵工程中の泡が高い位置まで盛り上がって堆積すると二酸化炭素の回収ラインを介して、別の発酵タンクで発酵している異なる種類のビールテイスト飲料の発酵液に混入することがあった。
また、原料に麦芽の代わりに発芽豆類を使用した発泡性アルコール飲料も開発されたが、風味の厚みが減少し、ホップの苦味が強調されてしまう(特開2009−136186号公報(特許文献1))。
しかし、原料中のタンパク質の含有量や原料中の麦芽の比率を低くすると、発酵工程中の泡の大量発生を抑制できるが、得られる飲料の風味の厚みが減少し、ホップの苦味が目立ってしまう。また、このような苦味を抑制するために原料にホップを使用しないと、ホップ特有の苦味がなくなり風味のシマリ感がなくなってしまう。
[1]
イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が3〜120mg/100mL、総ポリフェノール量が3〜90質量ppm、および、カプロン酸エチルの含有量が0.7〜7mg/Lであるビールテイスト飲料。
[2]
全窒素量が6〜97mg/100mLであり、
総ポリフェノール量が5〜89質量ppmである、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
原麦汁エキス(O−Ex)濃度が5〜18質量%である、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04〜25である、[1]〜[3]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[5]
窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、[1]〜[4]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のビールテイスト飲料を製造する方法であって、
水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
[7]
ホップを配合する工程を有しない、[6]に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
[8]
麦芽比率が55質量%以下である、[6]または[7]に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
[9]
さらに、酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する、[6]〜[8]のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
[10]
さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する、[6]〜[9]のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
本発明のビールテイスト飲料は、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が3〜120mg/100mL、総ポリフェノール量が3〜90質量ppmであり、カプロン酸エチルの含有量が0.7〜7mg/Lのビールテイスト飲料である。
本発明のビールテイスト飲料は、発酵工程を経て得られた発酵ビールテイスト飲料が好ましく、発酵麦芽ビールテイスト飲料、発酵大麦麦芽ビールテイスト飲料、麦芽使用ビールテイスト飲料および大麦麦芽使用ビールテイスト飲料が好ましい。また、本発明のビールテイスト飲料は、スピリッツなどの蒸留酒を含有する、蒸留酒含有ビールテイスト飲料およびスピリッツ含有ビールテイスト飲料が好ましい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、アルコール含有のビールテイスト飲料、アルコール度数が1(v/v)%未満のビールテイスト飲料等も含まれる。
なお、本明細書において、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」とは、ビールテイスト飲料を製造する際に、原材料として、ホップおよびホップに由来する成分をいずれも積極的に添加しないこと意味し、ビールテイスト飲料の製造の際にホップ由来の成分が不可避的に混入する態様は包含する。
また、ビールテイスト飲料の原材料として、ホップおよびホップに由来する成分が積極的に添加されているか否かは、酒税法、食品表示法、食品衛生法、JAS法、景品表示法、健康増進法あるいは業界団体が定めた規約や自主基準等によって定められた原材料表示から確認することもできる。例えば、ホップおよびホップに由来する成分が含まれている場合、原材料表示の原材料名に「ホップ」のように表記される。一方、「ホップに由来する成分を実質的に含まない」ビールテイスト飲料では、原材料表示の原材料名に「ホップ」との表記がされない。
上記観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、イソα酸の含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm以下であるが、好ましくは0.05質量ppm以下、より好ましくは0.01質量ppm以下である。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を意味する。
全窒素量は飲み応え、味の厚み、味わい等に影響する。全窒素量を3mg/100mL以上とすることによって飲み応え、味の厚み、味わいを向上させることができる。これらをさらに向上させる観点から全窒素量は6mg/100mL以上が好ましく、8mg/100mL以上がより好ましく、15mg/100mL以上がさらに好ましく、30mg/100mL以上が特に好ましい。
他方、全窒素量が多いと、発酵工程中に泡が大量に発生し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の全窒素量は特に限定されないが、115mg/100mL以下が好ましく、100mg/100mL以下がより好ましく、98mg/100mL以下がさらに好ましく、90mg/100mL以下がさらに好ましく、80mg/100mL以下がさらに好ましく、70mg/100mL以下がさらに好ましく、60mg/100mL以下がさらに好ましく、48mg/100mL以下がさらに好ましく、45mg/100mL以下がさらに好ましく、40mg/100mL以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の全窒素量は、比較的窒素含有量が多く、酵母が資化可能な原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、窒素含有量の多い麦芽等の使用量を増やすことにより全窒素量を増加させることができる。窒素含有量の多い原料としては、例えば、麦芽、大豆、酵母エキス、エンドウ、未発芽の穀物などが挙げられる。また未発芽の穀物としては、例えば、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦、大豆、エンドウ等が挙げられる。
本発明に係るビールテイスト飲料の全窒素量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法によって測定することができる。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物をいう。ポリフェノールとしては、例えば、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなどが挙げられる。
本発明における「総ポリフェノール量」とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量である。
他方、総ポリフェノール量が多いと、発酵時に発生した泡が堆積しやすくなり、泡が消えにくくなる。また、総ポリフェノールが多い飲料は、混濁安定性が低下し、また飲み口も重くなってしまう。そこで、本発明の飲料の総ポリフェノール量は90質量ppm以下が好ましく、80質量ppm以下がより好ましく、70質量ppm以下がさらに好ましく、60質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、例えば、大麦麦芽、麦芽のハスク(穀皮)などのポリフェノール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。具体的には、ポリフェノール含有量の多い麦芽等の原材料の使用量を増やすことにより総ポリフェノール量を増加させることができる。
(1)ハスクがある麦芽等の使用量を増やすことによって、ビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を増やす。
(2)大豆、酵母エキス等の使用量を増減させることによって、総ポリフェノール量を維持しながら、ビールテイスト飲料の全窒素量を増減させる。
(3)ハスクがある麦芽等の使用量を増やし大豆、酵母エキス等の使用量を減らすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を増やす。
(4)ハスクがある麦芽等の使用量を減らし大豆、酵母エキス等の使用量を増やすことによって、全窒素量を維持しながら、総ポリフェノール量を減らす。
カプロン酸エチルはビールテイスト飲料の後味に余韻のある味わいを付与し、また、飲みやすさ、ビールらしい軽快なのどごし等を付与することができる。特に、イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下のビールテイスト飲料はホップ由来の特有な苦味を感じにくいため、カプロン酸エチルを一定量含有するとビールらしい軽快なのどごしを効果的に付与できる。そこで、本発明のビールテイスト飲料のカプロン酸エチルの含有量は1.2mg/L以上が好ましく、1.5mg/L以上がさらに好ましく、1.7mg/L以上が特に好ましい。
他方、パイナップル様のビールテイスト飲料に適さない風味を抑えるために、本発明の飲料のカプロン酸エチルの濃度は5.3mg/L以下が好ましく、4.5mg/L以下がさらに好ましく、4.0mg/L以下がさらに好ましく、3.5mg/L以下が特に好ましい。
本発明のビールテイスト飲料のカプロン酸エチルの濃度は、例えば、カプロン酸エチルや、カプロン酸エチル含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
本明細書において、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽または必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。スピリッツの原材料である穀物としては、麦が好ましい。
アルコールを含有するビールテイスト飲料のpHは、好ましくは3.0〜4.5であり、さらに好ましくは3.0〜4.0であり、特に好ましくは、3.2〜3.8である。また、ノンアルコールビールテイスト飲料のpHは、好ましくは4.0未満であり、さらに好ましくは3.8以下である。
本明細書における「原麦汁エキス濃度」は、アルコール度数が1(v/v)%以上の飲料においては、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15℃の時において原容量100cm3中に含有する不揮発性成分のグラム数をいい、アルコール度数が1(v/v)%未満の飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める分析法(BOCJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版))に従い測定したエキス値(質量%)をいう。
なお、無色透明のビンやペットボトルを使用する場合、通常の缶や有色のビンでの場合と異なり、太陽光や蛍光灯の光にさらされることになる。しかしながら、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、ホップに由来する成分を実質的に含有していないため、日光の照射に起因した日光臭の発生が抑制される。そのため、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、このような無色透明のビンやペットボトルに充填することもできる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料は、窒素、ポリフェノール等を含有する麦芽および水であり、ホップを実質的に使用しないが、その他に、酒石酸、クエン酸、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料等を用いてもよい。
麦芽比率を上記の範囲内とすることにより、発酵工程における泡の大量発生を抑制し、麦芽等に起因する濁りを抑制し、風味がより優れたビールテイスト飲料を製造できる。
本明細書において、麦芽比率とは平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、および酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオースおよびこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、ネオテーム等が挙げられる。
これらの酸味料の中でも、リン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸またはそれらの塩が好ましく、酒石酸、リン酸、クエン酸、乳酸、酢酸またはそれらの塩がより好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に含まれる炭酸ガスを利用してもよく、また、炭酸水との混和または炭酸ガスの添加等で溶解させてもよい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール発酵を行うため、この発酵工程で生じた炭酸ガスをそのまま用いることができるが、適宜炭酸水を加えて、炭酸ガスの量を調製してもよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、缶、樽またはペットボトルが挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビンやペットボトルが好ましい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法は特に限定されないが、水および麦芽を含む原料に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程(1)、ならびに、カプロン酸エチルの含有量を調整する工程(4)を有することが好ましく、さらに酵母が資化可能な原料を1種以上配合する工程(2)および穀物に由来するスピリッツを添加する工程(3)を有してもよい。
・工程(1):水および麦芽を含む原料に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程。
・工程(2):酵母が資化可能な原料を1種以上配合する工程。
・工程(3):穀物に由来するスピリッツを添加する工程。
・工程(4):カプロン酸エチルの含有量を調整する工程。
また、工程(3)についても、同様に、それぞれの工程を行う順序は特に限定されず、例えば、工程(3)で行う各成分の配合は、工程(1)の前の発酵前の原料に対して行ってもよく、工程(1)の後の発酵後の原料に対して行ってもよい。
工程(4)についても、同様に、それぞれの工程を行う順序は特に限定されず、例えば、工程(4)で行うカプロン酸エチルの含有量の調整は、工程(1)の後の発酵後の原料に対して行ってもよいが、工程(4)は最後に行うことが好ましい。具体的には、工程(4)以外の工程(例えば、工程(1)〜(3))に基づいてビールテイストベース飲料を製造し、当該ベース飲料に工程(4)に基づいてカプロン酸エチルの含有量を調整することが好ましい。例えば、工程(1)でカプロン酸エチルが生成された場合、工程(4)においてカプロン酸エチルの含有量が特定の値になるように調整される。
本発明のビールテイスト飲料はイソα酸を実質的に含まないため、酵母を一定量以上含むと香味に悪影響を与えやすい。そこで、本発明の製造方法は、ろ過工程によって、酵母を取り除くことが好ましい。ろ過工程の順序は特に限定されないが、工程(2)と工程(3)の間に行われることが好ましい。
また、本発明の製造方法は、ホップを配合する工程を有さないことが好ましいが、静菌効果があるホップを用いずに得られた飲料は、微生物が発生して増殖するリスクがある。そこで、本発明の製造方法は、微生物の発生と増殖を抑制するために、殺菌工程を有することが好ましい。殺菌工程の順序は特に限定されないが、工程(4)の後に行われることが好ましい。殺菌工程は、加熱によって行われることが好ましい。
工程(1)は、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程である。
原料の調製方法としては、原料を仕込釜または仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加し、糊化、糖化を行わせ、ろ過して煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク等の固形分を取り除く。その後、さらに酵母を添加して発酵させ、ろ過機等で酵母を取り除き、必要に応じて水や香料、酸味料、色素等の添加剤を加えて、原料を調製することができる。
なお、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等は、発酵工程後において所定量添加してもよいが、糊化・糖化工程を含む製造工程中の任意のタイミングで添加してもよく、添加タイミングは限定されない。
酵母は、酵母懸濁液のまま原料に添加しても良いし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを原料に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加しても良い。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5×106cells/mL〜1×108cells/mL程度である。
本発明のビールテイスト飲料はイソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が3〜120mg/100mLおよび総ポリフェノール量が3〜90質量ppmであり、このような範囲に制御することによって、工程(1)におけるアルコール発酵中の泡の大量発生を抑制することができる。
工程(2)は酵母が資化可能な原料1種以上を配合する工程である。工程(2)における酵母が資化可能な原料としては、窒素源および炭素源となる麦芽以外の原料であり、例えば、エンドウ豆、トウモロコシ、コメ、大豆、酵母エキスなどを用いることができるが、これら以外の原料を用いることも可能である。なお、これらの原料もビールテイスト飲料の呈味と香りに影響を与えるので飲用者の嗜好に合わせて適宜選択するのが好ましい。
また、工程(3)は、穀物に由来するスピリッツを添加する工程である。
工程(4)は、カプロン酸エチルの含有量を調整する工程である。
本発明のビールテイスト飲料は、カプロン酸エチルの含有量が上述の範囲となるように調整されていることが好ましく、このような飲料は工程(4)を含む工程を実施することによって製造することができる。ここで、原料由来または発酵により生成したカプロン酸エチルによって適した含有量となっている場合には、さらにカプロン酸エチルを添加する必要はない。一方で、工程(4)で、カプロン酸エチルもしくはカプロン酸エチルを含む添加剤を添加して、ビールテイスト飲料のカプロン酸エチルの含有量を調整してもよい。また、カプロン酸エチルを生成しやすいまたは生成しにくい酵母を選択し使用することで、カプロン酸エチルの含有量を調整することもできる。
さらに、本発明の製造方法において、ビールテイスト飲料の製造途中で希釈、ろ過、フィルタリング等を行うことによって、カプロン酸エチルの含有量を調整してもよい。
また、酵母が資化可能な原料およびスピリッツを同時に配合し、工程(2)〜(4)を同時に行ってもよい。
さらに、工程(2)〜(4)を行う際に、他の添加剤も同時に配合してもよい。
ビールテイスト飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明のビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、「1.4 容器詰飲料」に記載の容器が挙げられる。
また、実施例において、原麦汁エキス濃度、全窒素量、総ポリフェノール量、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法に基づいて測定した。
粉砕した大麦麦芽を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕を除去した。その後、当該、原料液を煮沸釜に投入し、指定の麦芽比率になるように糖液およびホップを添加し(試験例1では糖液不使用、試験例3と4ではホップは不使用)、温水で100Lに調整して熱麦汁を得た。熱麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液60Lを得た。麦芽比率、および、ホップの使用量は表1に示す。
このようにして得られたビールテイスト飲料における全窒素量、総ポリフェノール量、イソα散の含有量は表1に記載のとおりであり、いずれもpHは4.0未満であった。
・「×」:全体の高さ/液体部分の高さが1.30以上であり、発酵最盛期に生じる泡が製造設備の二酸化炭素回収ラインに侵入する等の恐れが高いと推測される。
・「△」:全体の高さ/液体部分の高さが1.20以上1.30未満であり、発酵最盛期に生じる泡が製造設備の二酸化炭素回収ラインに侵入する等の恐れがやや高いと推測される。
・「○」:全体の高さ/液体部分の高さ1.20未満であり、発酵最盛期に生じる泡製造設備の二酸化炭素回収ラインに侵入する等の恐れは低いと推測される。
また、ホップを使用しない試験例3と4を比較すると、ビールテイスト飲料において麦芽の比率を低くすると、発酵工程の泡の発生量および堆積量が減少するため、同様に、設備の汚染の抑制効果は高いと考えられる。この傾向は、試験例1と2を比較することによっても現れている。
このような表1の結果から、イソα酸を実質的に含有しないビールテイスト飲料において、全窒素量、総ポリフェノール量が所定の範囲内に制御すると、発酵工程における泡の発生量および堆積量を抑制できることがわかった。
粉砕した大麦麦芽を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕を除去した。その後、当該原料液を煮沸釜に投入し、麦芽比率55質量%になるように糖液を添加し温水で100Lに調整して熱麦汁を得た。熱麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液60Lを得た。
このようにして得られたビールテイスト飲料における全窒素量、総ポリフェノール量、イソα散の含有量および原麦汁エキス濃度は表2に記載のとおりであり、いずれもpHは4.0未満であった。
粉砕した大麦麦芽およびタンパク分解酵素を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕を除去した。その後、当該原料液を煮沸釜に投入し、表3および4に記載された麦芽比率になるように糖液を添加し温水で100Lに調整して熱麦汁を得た。熱麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液60Lを得た。
得られたビールテイスト飲料における全窒素量、総ポリフェノール量、イソα散の含有量および原麦汁エキス濃度は表3および4に記載のとおりであり、いずれもpHは4.0未満であった。
4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごし」をそれぞれ下記基準によって3段階で評価した。なお、「ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごし」の評価前に、予め、それぞれの評価が「2」となるサンプルを用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。
(ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごしの評価)
・「3」:非常に良い。
・「2」:良い。
・「1」:悪い。
そして、6人のパネラーの平均値を基に、以下の基準で評価をし、2.0以上を合格とした。
4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香り」をそれぞれ下記基準によって3段階で評価した。なお、「ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香り」の評価前に、予め、それぞれの評価が「2」となるサンプルを用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。
(ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香りの評価)
・「3」:感じない。
・「2」:ほとんど感じない。
・「1」:感じる。
そして、6人のパネラーの平均値を基に、以下の基準で評価をし、2.0以上を合格とした。
また、各パネラーが試飲した際の、「ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごし」および「ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香り」に基づき総合評価を、下記基準によって3段階で評価した。
・「〇」:「ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごし」および「ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香り」の評価の両者が2.5以上。
・「△」:「○」および「×」に該当しない。
・「×」:「ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごし」および「ビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香り」の評価のどちらか一方が2未満。
実施例4〜6および比較例3〜4のビールテイスト飲料はいずれも、麦芽比率が25質量%、イソα酸の含有量が0.1質量ppm、全窒素量が37.1mg/100mL、総ポリフェノール量が34.1質量ppmおよび原麦汁エキス濃度11.01質量%のビールテイスト飲料である(表3)。これらのビールテイスト飲料を比較すると、カプロン酸エチルの含有量が1.1、2、5mg/Lの飲料では、ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごしおよびビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香りがいずれも一定の評価以上であり、風味の優れたビールテイスト飲料であった。
実施例7〜9および比較例5〜6のビールテイスト飲料はいずれも、麦芽比率が5質量%、イソα酸の含有量が0.1質量ppm、全窒素量が6.14mg/100mL、総ポリフェノール量が5.64質量ppmおよび原麦汁エキス濃度9.11質量%のビールテイスト飲料である(表4)。これらのビールテイスト飲料を比較すると、カプロン酸エチルの含有量が1.1、2、5mg/Lの飲料では、ビールテイスト飲料らしい軽快なのどごしおよびビールテイスト飲料として不適なパイナップル様の香りがいずれも一定の評価以上であり、風味の優れたビールテイスト飲料であった。
Claims (10)
- イソα酸の含有量が0.1質量ppm以下、全窒素量が3〜120mg/100mL、総ポリフェノール量が3〜90質量ppm、および、カプロン酸エチルの含有量が1.1〜7mg/Lであるビールテイスト飲料。
- 全窒素量が6〜97mg/100mLであり、
総ポリフェノール量が5〜89質量ppmである、請求項1に記載のビールテイスト飲料。 - 原麦汁エキス(O−Ex)濃度が5〜18質量%である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
- 全窒素量(mg/100mL)/総ポリフェノール量(質量ppm)が0.04〜25である、請求項1〜3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
- 窒素またはポリフェノールの少なくとも一部が麦芽由来である、請求項1〜4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のビールテイスト飲料を製造する方法であって、
水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。 - ホップを配合する工程を有しない、請求項6に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
- 麦芽比率が55質量%以下である、請求項6に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
- さらに、酵母が資化可能な原料からなる群から選ばれる1種以上を配合する工程を有する、請求項6〜8のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
- さらに、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有する、請求項6〜9のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
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