JP6716887B2 - 接着型細胞の培養方法、及びタンパク質の産生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、遺伝子組み換えされた接着型細胞を浮遊状態にしても、死滅を促進することなく培養できる接着型細胞の培養方法、及びタンパク質の産生方法に関する。
創薬研究や、万能細胞、幹細胞を対象とした研究において、目的のタンパク質を遺伝子組み換え法により産生させることが行われている。例えば、組み換え医薬品として、ガン治療やリウマチ治療に用いられる抗体や、赤血球を増やすためのホルモンであるエリスロポエチン(EPO)などのタンパク質を成分とするものが知られている。これらの組み換え医薬品は、予期しない副作用が起きるリスクが従来の化学合成による医薬品よりも少ないと考えられており、非常に注目されている。
しかしながら、組み換え医薬品は、治療のために投与する量が多く、また、生産するための費用が高いことがあり、十分に普及するには至っていない。したがって、生産性を上げることが課題となっている。
組み換え医薬品は、例えば、Chinese Hamster Ovary細胞(CHO細胞)などの接着型細胞に、目的のタンパク質の遺伝子を導入して、無血清培地に馴化させるなどして、浮遊状態で増殖するようになった組み換えCHO細胞内で、目的のタンパク質を生合成させることにより生産される。組み換え医薬品の生産性を上げるためには、細胞の密度が高い状態で細胞を培養することが好ましいと考えられている。
目的のタンパク質の生産性を向上させる方法として、マイクロキャリアを利用するものが知られている(非特許文献1)。この方法においては、CHO細胞をマイクロキャリアに接着させ、これを培養液中に分散させる。このため、CHO細胞を浮遊状態にせずに、培養液中で攪拌培養することができる。
しかしながら、この方法においてはマイクロキャリアが高価であるという問題や、マイクロキャリアの表面にのみ細胞が存在するため、培養液中における細胞密度を十分に高くすることが困難であるという問題があった。
また、接着型細胞であるCHO細胞を浮遊させて培養する方法としては、無血清培地を用いた方法の他に、例えば、特許文献1には、目的のタンパク質をコードする遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を有するプラスミドをCHO細胞に遺伝子導入し、得られた組み換えCHO細胞を、通常よりも細胞密度が低い条件で培養を繰り返すことにより、組み換えCHO細胞を浮遊状態で培養する方法が記載されている。
しかしながら、この方法は、CHO細胞を浮遊状態にするまでに培養を繰り返すものであるため、それまでに8週間程度という長い時間が必要になる。また、継代培養期間が長くなると、遺伝子の変異や細胞の変質などの状態を管理し、確認する手間と費用が増加することとなる。
特許文献2には、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子欠損株細胞に、ヒトアンチトロンビン遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を組み込み、浮遊状態とした組み換えCHO細胞を、ホローファイバー型培養装置を用いて培養することで、この細胞を浮遊させながら、ヒトアンチトロンビンを製造する方法が記載されている。
しかしながら、この方法には、ホローファイバーを組み込んだ装置が複雑で高価であるため、費用面での問題があった。また、大量培養のためにホローファイバーサイズを大きくすると、ホローファイバーの両端での培地交換が均等ではなく、培地が不均一になりやすかった。この結果、培地のpH等が変化し、ホローファイバー内の細胞にストレスがかかるため、目的のタンパク質の生産性が低下するおそれがあった。
ところで、特許文献3には、シクロオレフィン樹脂製容器による細胞培養では、ポリスチレン製容器を用いた場合と比べて、細胞の増殖性が向上することが報告されている。実施例においては、抗CD3抗体やレトロネクチンなどのタンパク質をコートした環境下で、血球系細胞の増殖性が向上していることが示されている。
特開平2−009388号公報 特開2005−073509号公報 特開2008−048653号公報
http://www.gelifesciences.co.jp/catalog/0830.html
かかる従来技術の下、本発明者らは組み換え医薬品製造の効率化を進めるべく鋭意検討した結果、遺伝子組み換えによりタンパク質を産生することができるようになった接着型細胞は、脂環構造含有重合体成形体と接触すると細胞の一部が浮遊状態となる状態で培養でき、やがて浮遊している細胞が浮遊状態で細胞塊を形成し、その後、細胞塊が大きくなると培養容器底面に接着すること、そして細胞塊を形成しても、細胞の死滅は促進されず、タンパク質の産生能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、外来遺伝子を発現する遺伝子組み換えされた接着型細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させることにより、当該接着型細胞を培養容器底面に接着又は液体培地中に浮遊した状態で培養される段階、少なくとも前記浮遊した状態で培養されている接着型細胞が細胞塊を形成し、浮遊した状態で培養される段階、前記浮遊した状態で培養されていた細胞塊が培養容器底面に接着した状態で培養される段階、を含む接着型細胞の培養方法が提供される。前記接着型細胞がCHO細胞であることが好ましい。
さらに本発明によれば、生理活性タンパク質をコードする外来遺伝子を発現する遺伝子組み換えされた接着型細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させることにより、当該接着型細胞を培養容器底面に接着又は液体培地中に浮遊した状態で培養される段階、少なくとも前記浮遊した状態で培養されている接着型細胞が細胞塊を形成し、浮遊した状態で培養される段階、前記浮遊した状態で培養されていた細胞塊が培養容器底面に接着した状態で培養される段階、の少なくともいずれかの段階で、前記外来遺伝子がコードするタンパク質を産生する方法が提供される。
図1は、組換えCHO細胞を1週間、2週間、及び3週間培養したときの、顕微鏡観察像である。 図2は、組換えCHO細胞を1週間、2週間、及び3週間培養したときの、細胞数を示すグラフである。 図3は、組換えCHO細胞を1週間、2週間、及び3週間培養したときの、培地中のEPOの濃度及びLDH活性を示すグラフである。 図4は、組換えCHO細胞を16時間、3週間培養したときのEPOのmRNA量を示すグラフである。 図5は、組換えCHO細胞を培養したときの、細胞塊含EPO細胞試料及び細胞塊不含EPO細胞試料の顕微鏡観察像である。 図6は、組換えCHO細胞を培養したときの、細胞塊含EPO細胞試料及び細胞塊不含EPO細胞試料のEPO転写量の違いを示すグラフである。
本発明の方法は、外来遺伝子を発現する遺伝子組み換えされた接着型細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させることにより、当該接着型細胞を液体培地中に接着又は浮遊した状態で培養される段階、当該接着型細胞が接着又は浮遊状態で細胞塊を形成した状態で培養される段階、当該細胞塊が培養容器底面に接着した状態で培養される段階、を含む接着型細胞の培養方法である。
本発明の方法により培養することで、細胞は次の挙動を示す。播種直後、接着型細胞の一部(通常全体の半分以上)は、単独で浮遊した状態で液体培地中に存在する。培養時間が経過するに従って、浮遊した状態で存在する細胞の少なくとも一部は、浮遊した状態で細胞塊を形成し始める。そして、この浮遊した状態の細胞塊が成長して大きな細胞塊になると、やがて、培養容器底面に接着する。これらの挙動が観察される期間は、細胞の種類や播種量などにより異なるが、コンフルエントな状態になる前に細胞塊の培養容器底面への接着に至る。この間、細胞容器底面に接着している細胞は、接着したまま細胞塊を形成することもあれば、細胞塊を形成しないで単独で接着した状態を維持する場合もある。また、液体培地中で浮遊している細胞の一部は、細胞塊を形成せず単独で浮遊した状態を維持することもある。
本発明に係る接着型細胞は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択することができる。本発明において、接着型細胞とは接着型細胞そのものであっても、接着型細胞由来の細胞であってもよい。接着型細胞そのものとは、通常の培養条件において、細胞外基質に接着することで生存及び増殖が可能な細胞のことで、足場依存性細胞とも言われる細胞である。接着型細胞由来の細胞とは、接着型細胞を馴化培養し浮遊状態でも生存と増殖が可能になった細胞など、接着型細胞に何らかの外的要因を与えることで細胞外基質に接着しなくても生存し、かつ増殖が可能な細胞である。接着型細胞としては、CHO細胞、VERO細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞などに代表される、遺伝子操作の宿主細胞が挙げられ、なかでもCHO細胞が好ましい。
本発明においては、この接着型細胞に、ファージやプラスミドのベクター等を用いた形質導入などによって、外来遺伝子を発現することのできる様になったものを用いる。
ここで外来遺伝子は、目的に応じて任意に選択することができる。具体的には、エリスロポエチン(以下、「EPO」という)、インターフェロン(α、β、γ)、顆粒球コロニー刺激因子G−CSF、インターロイキン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子GM−CSF、人成長ホルモン、インスリン、グルカゴンHGF、血液凝固第VIII因子、ヒト型抗体などのサイトカインやホルモンのような生理活性タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
こうした組換え細胞の培養中に脂環構造含有重合体成形体を接触させると、生理活性タンパク質の生産量が増大する。
本発明において、細胞を培養する際には、液体培地が用いられる。
液体培地としては、通常、pH緩衝作用があり、浸透圧が細胞に好適なものであり、細胞の栄養成分を含み、かつ、細胞に対して毒性がないものが用いられる。
pH緩衝作用を示す成分としては、トリス塩酸塩、各種リン酸塩、各種炭酸塩等が挙げられる。
液体培地の浸透圧調整は、通常、細胞の浸透圧とほぼ同じになるように、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、グルコース等の濃度を調整した水溶液を用いて行われる。かかる水溶液としては、具体的には、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水等の生理食塩水;乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液等のリンゲル液;等が挙げられる。
細胞の栄養成分としては、アミノ酸、核酸、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。
液体培地としては、RPMI−1640、HAM、α−MEM、DMEM、EMEM、F−12、F−10、M−199等の各種市販品を利用することができる。
液体培地には、添加剤を配合することもできる。添加剤としては、タンパク質等の誘導因子、分化誘導活性を有する低分子化合物、ミネラル、金属、ビタミン成分等が挙げられる。
用いる添加剤としては、細胞表面の受容体に作用する、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト;核内受容体の、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト;コラーゲンやファイブネクチンなどの細胞外マトリックス;細胞外マトリックスの一部分あるいは、模擬した化合物;細胞内の情報伝達経路に関わるタンパク質に作用する成分;細胞内の1次代謝又は2次代謝の酵素に作用する成分;細胞内の核内又はミトコンドリア内の遺伝子の発現に影響を与える成分;ウィルスベクターなどと組み合わせて細胞内に導入することができるDNAやRNA;等が挙げられる。
これらの添加剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
細胞の培養条件は特に限定されず、用いる細胞や目的に応じて適宜決定することができる。
例えば、二酸化炭素濃度が5%程度で、温度が20℃〜37℃の範囲で一定に維持された、加湿された恒温器を用いて細胞を培養することができる。
本発明に用いる脂環構造含有重合体成形体は、脂環構造含有重合体を任意の形状に成形してなるものである。
脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する樹脂であり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環構造を含有するものが好ましい。
前記脂環構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
脂環構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。脂環構造を構成する炭素原子数がこの範囲内であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%である。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性に劣り好ましくない。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
開環重合によって得られるものとしては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしては、ノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環式単量体;
トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、2−メチルジシクロペンタジエン、2,3−ジメチルジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロキシジシクロペンタジエン等の3環式単量体;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、1,4−メタノ−8−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−クロロ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−ブロモ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン等の4環式単量体;等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロデカジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1,5,9,13−シクロヘキサデカテトラエン等の単環のシクロオレフィン系単量体が挙げられる。
これらの単量体は、置換基を1種又は2種以上有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルキレン基、アリール基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン系単量体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンとも言う)等のシクロオレフィン系単量体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン系単量体;等が挙げられる。
これらの中でも、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、α−オレフィン系単量体が好ましく、エチレンがより好ましい。
これらの単量体は、置換基を1種又は2種以上有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルキレン基、アリール基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、単量体成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合して得ることができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられる。ビニル脂環式炭化水素重合体は、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
脂環構造含有重合体の分子量に格別な制限はないが、シクロヘキサン溶液(重合体が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上であり、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲内であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
脂環構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜300℃、好ましくは100〜280℃、特に好ましくは115〜250℃、さらに好ましくは130〜200℃である。ガラス転移温度がこの範囲内であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明においてガラス転移温度は、JIS K 7121に基づいて測定されたものである。
これらの脂環構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、脂環構造含有重合体には、熱可塑性樹脂材料で通常用いられている配合剤、例えば、軟質重合体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、離型剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤を、通常採用される量、添加することができる。
また、脂環構造含有重合体には、軟質重合体以外のその他の重合体(以下、単に「その他の重合体」という)を混合しても良い。脂環構造含有重合体に混合されるその他の重合体の量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。
脂環構造含有重合体に対して配合する各種配合剤やその他の重合体の割合が多すぎると細胞が浮遊し難くなるため、いずれも脂環構造含有重合体の性質を損なわない範囲で配合することが好ましい。
配合剤やその他の重合体との混合方法は、ポリマー中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。また、配合の順番に格別な制限はない。配合方法としては、例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などを用いて樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させた後、凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などが挙げられる。
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
脂環構造含有重合体の成形方法は、細胞と接触させる際に用いる脂環構造含有重合体成形体の形状に応じて任意に選択することができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形法、圧縮成形法、回転成形法、カレンダー成形法、圧延成形法、切削成形法、紡糸等が挙げられ、これらの成形法を組み合わせたり、成形後必要に応じて延伸等の後処理をすることもできる。
脂環構造含有重合体成形体の形状に格別な制限はなく、板状、粉状、粒状、紐状、シート状、その他いかなる形状であってもよい。また、その表面は平らであっても、凹凸形状を有していてもよいし、中空状の成形体であってもよい。また異なる形状の成形体を、接着剤等を介して又は介さずに組み合わせて別の成形体にすることもできる。
また、細胞と接触することができる限りにおいて、ディッシュ、プレート、バッグ、チューブ、スキャホールド、カップ、ジャー・ファーメンターなどの培養容器;攪拌翼、攪拌子、バッフル、連結チューブなど培養装置の部品;ピペット、攪拌素子、フィルタ、セルスクレイパーなどの培養操作に用いる培養器具;等の一部又は全部を構成する部材であってもよい。
本発明においては、成形体を、培養細胞と接触させるに当たり、成形体を滅菌処理することが好ましい。
滅菌処理の方法に格別な制限はなく、高圧蒸気法や乾熱法などの加熱法;γ線や電子線などの放射線を照射する放射線法や高周波を照射する照射法;酸化エチレンガス(EOG)などのガスを接触させるガス法;滅菌フィルタを用いる濾過法;など、医療分野で一般的に採用される方法から、成形体の形状や用いる細胞に応じて、選択することができる。なかでも、表面状態の変化が少ないことから、ガス法が好ましい。
また、これらの成形体表面は、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、紫外線照射処理など培養容器に対して一般的に施す、滅菌目的以外の処理を行うこともできる。ただし、これらの表面処理操作を施すことにより発生する費用を抑えることができることや、表面処理に伴う形成体表面の部分分解により清浄性が損なわれるおそれがあること、細胞の浮遊化能が低下するおそれがあることなどから、これらの表面処理操作を行わない、又は表面処理前の容器底面(培養液に接する側)の水接触角に対して、使用時の同底面の水接触角が±20%、好ましくは±10%の弱い表面処理しかされていないことが好ましい。ここで、水接触角は、全自動接触角計(協和界面科学社製「LCD−400S」)を用い、ディッシュ底面をΦ30mmのサークルカッターで切り取って試料の中心と、そこを中央とする1辺20mmの正方形の頂点4か所、計5か所を測定点とし、液滴の半径rと高さhを求め、tanθ1=h/r、θ=2arctan(h/r)で求められるθである(θ/2法)。
培養細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させる方法は、脂環構造含有重合体成形体の形状に応じて任意の方法を採用すればよい。例えば、脂環構造含有重合体成形体を混合した培地中で細胞を培養する方法;脂環構造含有重合体を用いて成形された培養容器内で細胞を培養する方法;脂環構造含有重合体を用いて成形された培養器具を用いて培養操作を行う方法;などが挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
尚、細胞には、情報伝達能があるため、培養中の全ての培養細胞が脂環構造含有重合体成形体に接触する必要はなく、また、培養期間全体に渡って両者が接触している必要もない。但し、接触による効果は経時的に低下するため、接触時間は長い方が好ましい。
培養細胞と、脂環構造含有重合体成形体との接触温度は細胞が増殖できる温度であれば特に制限されない。
本発明において「細胞塊」とは、単独の細胞以外の細胞集合であり、2個以上の細胞が1つに結合した状態をいう。通常、細胞同士は、膜タンパクなどを介した細胞間の相互作用によって結合している。この結合の強度(即ち、相互作用の強さ)に格別な制限はなく、いずれの細胞間接着様式であっても良い。
本発明において細胞が「生存している」とは、細胞内で代謝活動が行われている状態をいう。例えば、細胞外の培地中に含まれる成分が細胞内部に侵入・浸透してきた場合に、その成分が細胞の生命活動に不要であれば、細胞外部に排除できる生命活動を起こすことができる状態をいう。細胞が生存しているかどうかは、実験的には、トリパンブルーなどの生命活動に不要な色素を細胞外の液に添加し、細胞内に侵入・浸透した色素を細胞外に排除できる状態の細胞が生存している細胞、排除できない細胞は死滅細胞として判定することができる。
本発明の方法においては、細胞塊中の細胞の死滅は促進されず、タンパク質の生産能が向上する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔製造例1〕組み換えEPO産生CHO細胞の作製
抗生物質G418への耐性遺伝子を内包するベクターpLXRN(Chlontech社製)の発現遺伝子の挿入サイトに、EPO遺伝子配列を挿入してプラスミドpLXRN−EPOを構築した。構築したプラスミドの中のEPO遺伝子は、その塩基配列解析を行うことにより確認した。
次に、構築したプラスミドpLXRN−EPOとプラスミドpVSV−G(Clontech社製)を、パッケージ細胞であるGP293T細胞(Clontech社製)に形質導入することにより、EPO遺伝子を含有するウイルス粒子を調製した。
なお、細胞へのプラスミドpLXRN−EPOの導入操作のための遺伝子導入試薬として、Lipofectamine(invitorogen社製)を用い、遺伝子導入操作は、メーカーのマニュアルに従った。
遺伝子導入操作を行ったGP293T細胞を培養し、その培養上清を取り出して、フィルタ濾過し、8μg/mlのポリブレン(santacruz社製)を加えることにより、EPO遺伝子を保持したウイルス粒子を含む培養上清試料を調製した。
続いて、あらかじめ培養したCHO細胞試料の培養液を除いて、上記のEPO遺伝子を保持したウイルス粒子を含む培養上清試料を添加して、8時間培養維持することにより、EPO遺伝子を保持したウイルス粒子をCHO細胞に感染させた。
8時間のインキュベーションの後に、CHO細胞の培養培地に交換を行い、組み換えEPOを産生するCHO細胞の培養操作を行った。
ウイルスの感染は、以下のようにゲノムPCRにより確認した。まず、Instagene(BioRad社製)を用いて、感染操作を行ったCHO細胞からゲノムを抽出し、pLXRN−EPO配列がゲノムに導入されていることをPCRで確認した。PCRに用いたPrimerは、pLXRN−seq−F(5’−CGCCTCCGTCTGAATTTTT)及びpLXRN−seq−R(5’−TCCCTATGCAAAAGCGAAAC)とした。
ウイルスが感染し、ゲノムにEPO遺伝子が組み込まれたCHO細胞を選抜するため、抗生物質G418を培地に添加し、培養維持して、抗生物質G418耐性のCHO細胞を薬剤選択することにより、組み換えEPO産生CHO細胞(以下、EPO産生CHO細胞という。)を選抜した。
〔実施例1〕
脂環構造含有重合体として、ゼオネックス(登録商標)790R(日本ゼオン社製、ノルボルネン系開環重合体水素化物;以下、単に「790R」という)を用いて、射出形成法により、直径35mmのシャーレ状の培養容器を得、次いで、エチレンオキサイド滅菌処理を行った。以下、この培養容器を「790R製容器」という。
培養容器として790R製ディッシュを使用し、液体培地として10%牛胎児血清を含むHam培地を使用して、EPO産生CHO細胞を0.624×10cells/cmで播種して、5%CO雰囲気37℃の条件で1週間、2週間、及び3週間の培養を行った。培養は各々の条件において3試料を準備した。培養途中11日時点で、水の蒸散により培地液量が減少したので、培地液量を保持するために、全ての試料に、1.2mLずつ培地を追加した。
培養から1週間、2週間、及び3週間の試料に関して、以下の方法により細胞数を計測した。
(細胞数の計測)
浮遊状態にある細胞については、培養上清を試料とし、試料をトリパンブルー染色することで生細胞と死滅細胞を区別して、細胞数を計測した。
一方、ディッシュ底面に接着している細胞は、生理食塩水で洗浄後、トリプシン処理によりディッシュから細胞を剥離した後、これらをトリパンブルー染色して生細胞と死細胞を区別して、細胞数を計測した。
〔比較例1〕
実施例1において、790R製ディッシュに代えて、ポリスチレン製ディッシュ〔ファルコン(登録商標)ディッシュ(ベクトンデッキンソン社製、型番353001)〕(以下、「ポリスチレン製ディッシュ」と称する)を使用したことを除き、実施例1と同様にして培養を行い、細胞数を計測した。
図1に、EPO産生CHO細胞を1週間培養、2週間培養、及び3週間培養した際の、細胞の顕微鏡観察像を示す。790R製ディッシュで培養したEPO産生CHO細胞は、丸い形態で接着しており、継時的に、細胞塊を形成する様子が観察された。一方で、ポリスチレン製ディッシュで培養したEPO産生CHO細胞は、伸展した形態で接着しており、継時的な変化は観察されなかった。
図2に1週間培養、2週間培養、及び3週間培養での細胞数の計測結果を示す。
1週間培養では、790R製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、半数程度は接着状態で生存していた。残りの半数程度は浮遊状態で生存していた。一方、ポリスチレン製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、9/10以上の細胞は接着状態で生存していた。残りの培地中に浮遊している細胞は、1個の細胞単独で浮遊し、そのうち1/3程度は死滅していた。
2週間培養では、790R製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、5/6程度は細胞塊の状態で接着,生存していた。残りの1/6程度の多くは細胞塊の状態で浮遊,生存していた。一方、ポリスチレン製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、2/3程度の細胞は接着状態で生存していた。残りの1/3程度は、1個の細胞単独で浮遊し、そのうち1/3程度は死滅していた。
3週間培養では、790R製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、5/6程度は細胞塊の状態で接着,生存していた。残りの1/6程度の多くは細胞塊の状態で浮遊,生存していた。一方、ポリスチレン製ディッシュのEPO産生CHO細胞は、2/3程度の細胞は接着状態で生存していた。残りの1/3程度は1個の細胞単独の状態で浮遊し、そのうち1/2程度は死滅していた。
〔実施例2〕
実施例1及び比較例1で採取した上清を、遠心分離することにより細胞残渣等を取り除き、ELISA法(eBioscience社製のhuman EPO Platinum ELISA)により、活性型EPO量の測定を行った。LDH Cytotoxicity Detection Kit(Takara社製)により、細胞内の代謝酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(以下、「LDH」という)の活性を測定し、EPO産生CHO細胞の死滅による細胞内の成分の漏洩の程度を調べた。
図3に各培養期間での上清へのEPOの分泌量及び各培養期間での上清のLDH活性の相対値を示す。
EPOの分泌量に関しては、以下のことがわかる。
即ち、790R製ディッシュで培養したEPO産生CHO細胞から産生されたEPO量は、既存の培養技術に相当するポリスチレン製ディッシュで培養したものに比較して1週間で約3倍、2週間で約14倍、3週間で約25倍であり、本発明によれば、従来技術では得られない大量のEPOを生産し得ることが示された。同時に、EPO産生の効果は、時間を追うごとに指数関数的に増加することが示された。
LDH活性の相対値に関しては、以下のことがわかる。
即ち、790R製ディッシュで培養したEPO産生CHO細胞の上清のLDH活性は、既存の培養技術に相当するポリスチレン製ディッシュで培養したものに比較して1週間で約9/10倍程度、2週間で約7/10倍程度、3週間で約8/10倍程度であり、本発明によれば、従来技術よりも死細胞からの漏洩物が少ないことが示された。この効果は、3週間の培養期間で維持された。
〔実施例3〕
培養容器として790R製ディッシュ又はポリスチレンディッシュを使用し、EPO産生CHO細胞を16時間培養した。次いで、接着している細胞からRNAを抽出し、逆転写反応の後、リアルタイムPCR装置を用いてEPOのmRNA量を測定した。内部標準として、同時に、GAPDHのmRNA量を測定し、それらEPOのmRNA量をGAPDHのmRNA量で除することで、結果を比較した。
〔実施例4〕
培養容器として790R製ディッシュ又はポリスチレンディッシュを使用し、EPO産生CHO細胞を3週間培養した。次いで、接着している細胞からRNAを抽出し、逆転写反応の後、リアルタイムPCR装置を用いてEPOのmRNA量を測定した。内部標準として、同時に、GAPDHのmRNA量を測定し、それらEPOのmRNA量をGAPDHのmRNA量で除することで、結果を比較した。
図4に実施例3(16時間)及び実施例4(3週間培養)のEPOのmRNA量を示す。790R製容器で培養した細胞試料のEPOのmRNA量は、ポリスチレン製ディッシュで培養したものに比較して、16時間培養で2倍程度、3週間培養で7倍程度のEPOのmRNA量であることがわかった。
〔実施例5〕
790R製の96wellディッシュを作製し、表面酸化条件等を変更して、細胞塊を含むEPO産生細胞試料(細胞塊含EPO産生細胞試料)と細胞塊を含まないEPO産生細胞試料(細胞塊不含EPO産生細胞試料)を準備した。次いで、各々試料からRNAを抽出し、逆転写反応の後、リアルタイムPCR装置を用いてEPOのmRNA量を測定した。内部標準として、同時に、GAPDHのmRNA量を測定し、それらEPOのmRNA量をGAPDHのmRNA量で除することで、結果を比較した。
図5に細胞塊含EPO産生細胞試料と細胞塊無EPO産生細胞試料の顕微鏡観察像を、図6にEPOのmRNA量の比較結果を示す。細胞塊含EPO産生細胞試料のEPOのmRNA量は、細胞塊不含EPO産生細胞試料に比較して、約2倍であることがわかった。
以上の結果から、本発明はEPO産生CHO細胞の分泌能力を向上させることができる技術であり、その効果は指数関数的に増加することがわかった(実施例1及び2)。細胞塊は浮遊状態(播種後1〜2週間程度)にあっても、接着状態(播種後3週間程度)にあっても、同様の増強現象が観察されている(実施例1)。しかも、少なくとも3週間の培養工程において、細胞からの漏洩物を抑えることができることがわかる(実施例2)。
また、分泌能力の向上は、継時的に変化するEPO遺伝子の転写活性により調節されていることがわかる(実施例3)。
さらに、細胞塊形成がEPO遺伝子の転写量が向上することがわかる(実施例4及び5)。
これらのことから、本発明は、遺伝子組み換え細胞の分泌能力を指数関数的に増強させることのできる技術であり、遺伝子組み換え細胞が脂環構造含有重合体成形体に接触することが、細胞塊の形成と外来遺伝子の転写促進の引き金となっていることが推定される。

Claims (4)

  1. 外来遺伝子を発現する遺伝子組み換えされた接着型細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させることにより、当該接着型細胞液体培地中に浮遊した状態で培養される段階、少なくとも前記浮遊した状態で培養されている接着型細胞が細胞塊を形成し、浮遊した状態で培養される段階、前記浮遊した状態で培養されていた細胞塊が培養容器底面に接着した状態で培養される段階、を含む接着型細胞の培養方法。
  2. 前記接着型細胞がCHO細胞である請求項1記載の接着型細胞の培養方法。
  3. 前記外来遺伝子が、タンパク質をコードする遺伝子である請求項1又は2記載の接着型細胞の培養方法。
  4. タンパク質をコードする外来遺伝子を発現する遺伝子組み換えされた接着型細胞と脂環構造含有重合体成形体とを接触させることにより、当該接着型細胞液体培地中に浮遊した状態で培養される段階、少なくとも前記浮遊した状態で培養されている接着型細胞が細胞塊を形成し、浮遊した状態で培養される段階、前記浮遊した状態で培養されていた細胞塊が培養容器底面に接着した状態で培養される段階、の少なくともいずれかの段階で、前記タンパク質を産生する方法。
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