JP6716328B2 - 浸水リスク診断装置、浸水リスク診断方法、制御装置及びコンピュータプログラム - Google Patents

浸水リスク診断装置、浸水リスク診断方法、制御装置及びコンピュータプログラム Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、浸水リスク診断装置、浸水リスク診断方法、制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
近年、局地的かつ短時間に降る大雨(以下、「局所豪雨」という。)が多発しており、メディアはこの局所豪雨のことを、いつどこで発生するか分からないという意味で「ゲリラ豪雨」という言葉で表現し、今ではこの言葉も広く世間一般に認知されてきた。局所豪雨による典型的な被害として、都市の内部で水が溢れる内水氾濫が頻発するようになってきた。これまで行政は、洪水を未然に防ぐため、築堤、河道掘削、護岸整備やダム建設など、主に大規模河川の増水や決壊による洪水を想定した対策を講じてきた。河川の氾濫は外水氾濫と呼ばれ、従来は外水氾濫に対する対策が重点的に行われてきたが、今後は、内水氾濫も考慮した対策が重要になってくると考えられる。
実際、洪水被害(外水氾濫、内水氾濫)を被害額でみると、内水氾濫の被害額は全国の被害総額の約半分を占め、東京都では都の被害総額の90%を超えている。このように、堤防の整備が比較的進んだ都市部では、内水氾濫が新たな課題となっている。
しかしながら、内水氾濫と外水氾濫とはトレードオフの関係にある場合も少なくない。例えば、下水処理場には雨水排水ポンプや排水ポンプ場などの排水施設が併設される。そして、内水氾濫の抑制のために、これらの排水施設によって雨水を河川へ放流すると、河川の水位が上昇し外水氾濫のリスクを高めることになる。一方、外水氾濫の抑制のために、ポンプの起動を遅らせると雨水の放流が遅れ内水氾濫のリスクが高まる。したがって、内水氾濫と外水氾濫とを同時に考慮した排水施設の運用が重要になる。
また、標高の低い都市部(例えば大阪などの地域)では、河口付近に排水ポンプ場を設け、水門を閉めた状態で河川の水を放流することにより海から河川への逆流を防止する運用が行われている。このような排水ポンプ場の運用は、河口の水位と、河川の上流側に位置する排水ポンプ場の排水量と、を総合的に考慮して行われることが望ましい。このような内水氾濫と外水氾濫とのトレードオフを調整するために、排水ポンプ場等の排水施設においてポンプ運転調整ルールが導入されている場合もある。
ポンプ運転調整ルールは、河川水位が一定レベル以上になった場合に排水ポンプの運転を抑制又は停止することによって河川へ放流される排水量を制限し、外水氾濫のリスクが回避された場合に運転を再開させるというポンプ運転のルールを定めたものである。しかしながら、外水氾濫と内水氾濫とは本質的にトレードオフの関係にあるため、ポンプ運転調整ルールを定めたのみでは根本的な解決には至らない。外水氾濫と内水氾濫との根本的な解決のためには、降雨量に応じた堤防の増強や、貯留施設を設けるなどのハード面での対策が不可欠である。
その一方で、近年では5〜10年の確率降水量に基づいて設定された計画降雨量(50〜60mm/h)を大幅に超過する70〜100mm/h以上の豪雨も比較的頻繁に観測される様になってきている。このように多様化している降雨への対策を全てハード的に実施することは、時間的及び財源的に困難な場合も多い。そのため、ハード面での対策と並行して、降雨情報や浸水リスク情報などの情報提供により浸水被害を回避する自助努力の支援、ひいては、貯留施設や排水ポンプ等の排水設備の運用を効率化するなどのソフト面での対策も早急に実現する必要がある。
このハード面及びソフト面での対策の主な目的は、計画降雨量以下の降雨に対しては完全な浸水回避を実現することであり、計画降雨量を超過する降雨に対しては、例えば床上浸水を回避するなど、浸水による被害を回避又は低減することである。ハード面での対策に加えてソフト面での対策を行う場合、都市全体の浸水リスクを総合的に評価するための情報が極めて重要となる。例えば、都市全体での浸水リスクを評価する手法として分布型流出解析が広く用いられている。分布型流出解析は、ある地域の土地の利用形態や標高などの地形情報、下水管路の敷設状況などの土木情報を用いて、水文学的なモデルと水理学的なモデル(サン・ブナン方程式など)とを適宜併用し降雨の流れ(以下、「流出」という。)を追跡する流出解析方法である。分布型流出解析は降雨の流出の解析に広く利用されており、商用ソフトウェアとしても数多く販売されている。
しかしながら、これらの商用ソフトウェアは、主に洪水や浸水等による被害を回避又は低減するために設置される施設の設計に用いられることが多く、排水ポンプや貯留施設等の運用制御を主な目的としたものではない。一部には、運用制御を目的とした機能を持つものもあるが、次のような理由により必ずしも広く用いられているわけではない。まず1つには、都市域全体の解析を行う場合、解析のリアルタイム性に問題があることが挙げられる。また1つには、広い地域を解析の対象とした場合、設定すべき土木情報や地形情報が莫大となり解析に高いコストを要することが挙げられる。また1つには、解析に高精度の雨量データを必要とすることが挙げられる。なお、近年では、国土交通省が、全国35か所に設置されたXバンドMPレーダ(Xrain)によって取得された高精度の雨量データ(以下、「レーダ雨量データ」という。)を提供しているが、このレーダ雨量データは必ずしも流出解析に適したデータ形式で提供されない場合もある。そのため、国土交通省によって提供されるレーダ雨量データを用いる場合には、流出解析に適したデータ形式への変換などの処理が必要である。
このような課題を解決するため、様々な流出解析の手法が提案されている。しかしながら、従来提案されている手法は、レーダ雨量データを既存の流出解析や洪水解析等の手法に適合させる方法又は、レーダ雨量データを利用する際の手間を低減させる方法を提供するものである。また、従来提案されている手法は、基本的には河川に起因する外水氾濫を適用対象とするものであり、下水管路の構造などの内水氾濫に特有の要素については考慮されていない。
一方、下水処理場や排水ポンプ場等の排水施設では、従来、設備の運転支援を主な目的として、排水施設への雨水の流入量を予測する雨水流入予測が行われている。雨水流入予測を実現する方法は種々提案されている。しかしながら、従来の方法は、排水施設への雨水の流入量を、過去の実績値に基づいてデータドリブンで推定する方法が一般的であった。これに対して、メッシュ状に分割された診断対象地域ごとに取得される雨量データを入力として、各メッシュに設定される仮想的な下水管の流量や浸水リスクを解析する方法も一部提案されている。しかしながら、このような解析方法は、実際の下水管を想定したものではないため、解析結果が下水道事業者や下水道管理者等のユーザにとって分かりにくいものとなることが多い。このように、従来提案されている解析方法は、リアルタイムでの浸水リスクの診断と、ユーザにとって分かりやすい診断結果を提供することとを両立するものではなかった。
特開2009−8651号公報 特開2005−128838号公報 特開2004−62440号公報 特開2000−257140号公報 特許第4682178号公報 特許第4399122号公報 特許第4185910号公報 特許第4082686号公報
本発明が解決しようとする課題は、診断対象地域の浸水リスクの診断において、リアルタイムでの浸水リスクの診断と、ユーザにとって分かりやすい診断結果を提供することとを両立することができる浸水リスク診断装置、浸水リスク診断方法、制御装置及びコンピュータプログラムを提供することである。
実施形態の浸水リスク診断装置は、パラメータ生成部と、解析モデル構築部と、流出解析部と、浸水解析部と、を持つ。パラメータ生成部は、診断対象地域の流量計算表が示す諸量に基づいて、前記診断対象地域における浸水リスクを診断するための解析モデルの構築に必要なパラメータを生成する。解析モデル構築部は、前記諸量及び前記パラメータに基づいて前記解析モデルを構築する。流出解析部は、前記解析モデル構築部によって構築された前記解析モデルと、前記診断対象地域の小排水区ごとに所定の周期で取得される雨量データとに基づいて、各小排水区における管路ごとの流量を算出する。浸水解析部は前記流出解析部によって算出された各小排水区における管路ごとの流量に基づいて、前記小排水区の浸水リスクの指標となる前記管路ごとの満管率を算出する。
第1の実施形態の浸水リスク診断装置1の機能構成の概略を示すブロック図。 流量計算表の具体例を示す図。 小排水区及び各小排水区を接続する管路の具体例を示す図。 解析結果が表示される態様の一具体例を示す図。 解析結果が表示される態様の一具体例を示す図。 各管路の流入関係を示す有向グラフの具体例を示す図。 各管路の接続関係を示す行列の具体例を示す図。 変換テーブルの具体例を示す図。 メッシュに分割された図面データの具体例を示す図。 第2の実施形態の浸水リスク診断装置1aの機能構成の概略を示すブロック図。
以下、実施形態の浸水リスク診断装置、浸水リスク診断方法、制御装置及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の浸水リスク診断装置1の機能構成の概略を示すブロック図である。浸水リスク診断装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、診断プログラムを実行する。浸水リスク診断装置1は、診断プログラムの実行によって流量計算表記憶部101、解析モデルパラメータ生成部102、解析モデル構築部103、雨量データ取得部104、前処理部105、流出解析部106、浸水解析部107及び解析結果表示部108を備える装置として機能する。なお、浸水リスク診断装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。診断プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。診断プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
流量計算表記憶部101は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。流量計算表記憶部101は、流量計算表を予め記憶している。流量計算表は、下水道計画に用いられる情報であり、自治体などの下水道事業者や下水道管理者などが通常保有している情報である。
図2は、流量計算表の具体例を示す図である。図2の流量計算表100は小排水区の数に応じた数の流量計算レコードを有する。ここでいう小排水区とは、浸水リスクの診断対象となる地域(以下、「診断対象地域」という。)が、下水道計画に基づいて分割された各区域を意味する。流量計算レコードは、線番号、流入線番号、面積、流出係数、流達時間、流速、延長及び断面の各項目を持つ。線番号は、小排水区の識別番号である。線番号は小排水区同士を接続する管路の識別番号であってもよい。流入線番号は、線番号が示す小排水区の上流側に接続された小排水区の線番号である。面積は、線番号が示す小排水区(又は管路)の排水面積である。排水面積は小排水区において雨水及び汚水が集水される範囲の面積である。
流出係数は、線番号が示す小排水区の流出係数を表す。流出係数は、降雨量に対して地表を流下する雨水の割合である。流達時間は、線番号が示す小排水区の流達時間を表す。流達時間は、雨水が小排水区内の最遠隔の地点から地表面を流れて排水路に流入するまでの流入時間と、流入した雨水が排水路を流れてある地点まで到達するのに要する流下時間と和で表される。流速は、線番号が示す小排水区と流入線番号が示す上流側の小排水区とを接続する管路を流れる水の速度の計画値(以下、「計画流速」という。)を表す。延長は、線番号が示す小排水区と流入線番号が示す上流側の小排水区とを接続する管路の長さを表す。断面は、線番号が示す小排水区と流入線番号が示す上流側の小排水区とを接続する管路の断面積を表す。
なお、流量計算表において、流速が未定義である場合には、流速に代えて管路の勾配及び粗度を用いてもよい。この場合、後述するマニング式を用いることにより、管路の勾配及び粗度で流速を定義することができる。
図3は、小排水区及び各小排水区を接続する管路の具体例を示す図である。図3に例示する診断対象地域20は、A1〜A8の8つの小排水区に分割されている。各小排水区内に示される合流点21−1〜21−8は、隣接する小排水区を接続する管路の合流点である。図3の例では、各小排水区内はそれぞれ1つの合流点21を持つ。逆に言えば、小排水区は、診断対象地域が合流点毎に分割された区域ということもできる。各合流点21を結ぶ線は、各小排水区間を接続する管路を表している。図3の例では、8つの小排水区及び合流点21に対して、7つの管路22−1〜22−7が示されている。
図1の説明に戻る。解析モデルパラメータ生成部102は、浸水リスクの診断に用いられる解析モデル(具体的には流出解析モデル及び浸水解析モデル)の構築に必要な諸量を流量計算表から抽出し、抽出した諸量を小排水区ごとのパラメータテーブルとして生成する。解析モデルパラメータ生成部102は、生成したパラメータテーブルを解析モデル構築部103及び浸水解析部106に出力する。
解析モデル構築部103は、解析モデルパラメータ生成部102によって生成された小排水区ごとのパラメータテーブルに基づいて、水量の収支や(連続の式)水の運動(運動の式)等を表す方程式群を上記解析モデルとして構築する。解析モデル構築部103は、構築した解析モデルを流出解析部106に出力する。
雨量データ取得部104は、各小排水区における時系列の降水量を示す雨量データを取得する。雨量データは、各小排水区における時系列の降水量を示す情報であればどのような態様で取得されてもよい。雨量データ取得部104は、取得した雨量データを流出解析部106に出力する。なお、雨量データ取得部104によって取得される雨量データは、診断対象地域が網目状に分割された領域(以下、「メッシュ」という。)ごとの雨量を示すデータとして取得される。
前処理部105は、雨量データ取得部104によって取得された雨量データに前処理を施して流出解析部106に出力する。
流出解析部106は、雨量データ取得部104によって取得された雨量データと、解析モデル構築部103によって構築された解析モデル(具体的には流出解析モデル)とに基づいて流出解析を行うことにより、各小排水区を接続する管路の流量や水位等をリアルタイム(具体的には数秒〜数分の更新周期)で算出する。流出解析部106は、流出解析の結果を浸水解析部106及び解析結果表示部108に出力する。
浸水解析部107は、流出解析部106による流出解析の結果と、解析モデル構築部103によって構築された解析モデル(具体的には浸水解析モデル)と、解析モデルパラメータ生成部102によって生成された小排水区ごとのパラメータテーブルとに基づいて、浸水リスクの指標値となる満管率を算出する浸水解析を行う。満管率は、管路の容量(以下、「満管容量」という。)に対する流量の割合である。浸水解析部107は、パラメータテーブルに含まれる断面及び延長に基づいて各管路の満管容量を算出する。浸水解析部107は、浸水解析の結果を解析結果表示部108に出力する。
解析結果表示部108は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を備えて構成され、流出解析及び浸水解析の結果(以下、「解析結果」という。)を画面上に表示させる表示情報を生成する。解析結果表示部108は生成した表示情報を上記の表示装置に出力し、解析結果を表示させる。なお、解析結果表示部108は、上記の表示装置を備える外部の装置に対して、表示情報を提供する機能部として構成されてもよい。具体的には、解析結果表示部108は、解析結果が、浸水リスクを視覚的に把握させることが可能な態様で表示されるような表示情報を生成する。この場合、解析結果表示部108は、解析結果を予め定められた所定の閾値と比較することにより浸水リスクを判定し、リスクが高いと判定された管路や小排水区に対して視覚的効果を付与する表示情報を生成する。表示情報に付与される視覚的効果は、色や文字、太さ、線種など、浸水リスクを視覚的に伝達することができる効果であればどのようなものであってもよい。
図4は、解析結果が表示される態様の一具体例を示す図である。図4は、7つの管路22−1〜22−7のうち、管路22−1、22−2、22−3、22−5及び22−6の浸水リスクが高いことが示された例である。図4は、浸水リスクの有無を、管路を示す線の太さで表し、浸水リスクの高さを線の種別で表した例である。なお、図4の選択表示30は、画面上で選択された管路の満管率の遷移を示す表示である。このように、解析結果の表示画面は、表示画面上のオブジェクト(具体的には管路や合流点、小排水区など)に関する情報(以下、「関連情報」という。)がユーザの選択に応じて表示されるように構成されてもよい。例えば、この場合、解析結果表示部108は、流出解析部106及び浸水解析部107の解析結果を所定期間蓄積しておき、選択されたオブジェクトの関連情報を蓄積された解析結果から抽出する。そして、解析結果表示部108は、取得した関連情報を選択表示30として表示させるための表示情報を生成し表示装置に出力する。
図5は、解析結果が表示される態様の一具体例を示す図である。図5は、図4の表示態様に加え、浸水リスクを小排水区の網掛けの濃淡で表現した例である。この場合、小排水区A3のように2つの管路に浸水リスクが認められた場合には、小排水区A3の網掛けの濃度を浸水リスクの平均に応じた濃度としてもよいし、高い方の浸水リスクに応じた濃度としてもよい。また、小排水区A3内の各地点における浸水リスクを各管路からの距離に応じて算出し、各地点の浸水リスクに応じた濃度で小排水区A3が表示されてもよい。
以下、流出解析及び浸水解析の詳細について説明する。まず、流出解析及び浸水解析に用いられる解析モデルの構築について説明する。
[解析モデル構築]
まず、解析モデル構築部103は、パラメータテーブルに基づいて各管路に流入する水の関係(以下、「流入関係」という。)を表す有向グラフを生成する。
図6は、各管路の流入関係を示す有向グラフの具体例を示す図である。図6は、図3〜5の診断対象地域における流入関係が示された有向グラフの例である。ノード41−1〜41−8は各管路の合流点21を表す。すなわち、ノード41−1〜41−8は各小排水区A1〜A8に対応している。各実線矢印は各ノードを接続する管路を表し、各管路を表す矢印の向きは水が流下する方向を表している。また、各破線矢印は各ノード41(すなわち小排水区)に流入する雨水を表している。各破線矢印に付記されたQA1〜QA8は、各小排水区に流入する雨水の流入量を表している。各小排水区への流入量は、各小排水区への降雨量を排水面積及び流出係数に基づいて換算することにより得られる。図6の有向グラフは、各小排水区に流入した雨水が最終的に小排水区A1に流入することを意味している。なお、各管路の接続関係は、上記の有向グラフに代えて行列形式で表すことも可能である。
図7は、各管路の接続関係を示す行列の具体例を示す図である。図7は、図6の有向グラフに示される各管路の接続関係を行列形式で表した例である。図7において、行は下流側のノードを表し、列は上流側のノードを表している。例えば、2行1列の値“1”は、“2”で識別されるノードの上流側に“1”で識別されるノードが接続されていることを表している。このような行列形式で表現することにより、各管路の接続関係をより定量的かつ分かりやすい形式で表現することができる。
続いて、解析モデル構築部103は、上記のように表された各管路の接続関係を解析モデルの基本式に当てはめることで流出解析モデルを構築する。ここで用いられる解析モデルの基本式は、水量の収支を表す式(連続の式)や、降雨の流入を表す式、流入した雨水の移動を表す式(運動の式)などである。解析モデル構築部103は、これらの基本式に各管路の接続関係を当てはめて組み合わせることにより流出解析モデルを構築する。このように構築される流出解析モデルの典型的な例として次の式(1)が挙げられる。
Figure 0006716328
式(1)において、Q は各小排水区への雨水の流入量を表す。なお、Q の「*」は、小排水区ごとのQの値の全てを意味する記号である。例えば、小排水区が1〜100まで存在する場合、「*」は各小排水区に対応して1〜100の値を取ることを意味する。すなわち、式(1)は小排水区ごとに定義される式(1)を1つの式で表したものである。以下に後述する各式の「*」も式(1)と同様の意味で用いている。また、以下の説明では、数式に用いられている各記号を「*」無しで記載する場合もある。
は各小排水区に対する降雨の強度(以下、「降雨強度」という。)を表す。降雨強度にはレーダ雨量データ(に基づいて生成されたデータ)が用いられてもよいし、各小排水区に設置された地上雨量計によって取得された雨量データが用いられても良い。Aは各小排水区の排水面積を表す。F は各小排水区の(平均)流出係数を表す。Tin は各排水区の(平均)流入時間を表す。Tin の算出式は次の式(2)で表される。
Figure 0006716328
また、連続の式は次の式(3)で表される。
Figure 0006716328
式(3)において、Sは各小排水区における雨水の貯留量を表す。右辺第1項は、式(1)によって求められた各小排水区への流入量である。右辺第2項におけるjは、隣接する小排水区の識別番号を表し、Qはjで識別される小排水区から流入する雨水の流入量を表す。すなわち、右辺第2項は、隣接する小排水区から流入する雨水の総流入量を表す。右辺第3項のQは隣接する小排水区に流出する雨水の流出量を表す。
また、運動の式は次の式(4)で表される。
Figure 0006716328
式(4)は一般的な運動の式を簡略化した式であり、Kは流下時間の逆数である。なお、式(4)を運動の式として用いる場合、各管路の流速が得られていることが前提である。一般に、各管路の流速は流量計算表から取得可能であるが、もし仮にこの流速が取得できない場合にはマニング式を用いて流速を計算することも可能である。マニング式は次の式(5)によって表され、形状や延長等の管路の物理的な構成を示す情報(以下、「管路情報」という。)から満管状態又は半満管状態を仮定した管路の流速を算出することができる。
Figure 0006716328
式(5)において、Rは満管状態又は半満管状態を仮定した管路を流下する雨水の径深を表す。Iは管路の勾配を表し、Dは管路の直径を表す。この場合、まず、式(5)のマニング式によって流速を求め、求めた流速からパラメータKを算出すればよい。なお、式(5)におけるn、R、Iが小排水区ごとのパラメータとして取得される場合には、式(5)のn、R、Iはそれぞれn、R、Iと表されてもよい。
一方、径深の変化に応じた流速の変化を考慮した解析を行いたい場合には、式(5)のマニング式を式(4)の運動の式に組み込んでもよい。この場合、流出量Qは次の式(6)〜式(9)によって求めることができる。なお、式(5)と同様、以下の式(6)〜(9)におけるA、θ、D、n、R、IはそれぞれA 、θ、D、n、R、Iと表されてもよい。
Figure 0006716328
Figure 0006716328
Figure 0006716328
Figure 0006716328
式(6)において、Aは管路を流れる流量の断面積(流積)を表し、nは粗度を表す。H は管路内の水位を表し、Lは管路の延長を表す。なお、式(6)〜式(9)は流量Qを水位Hの関数として表すため、式(6)〜式(9)を用いた場合、水位H と貯留量Sとの関係を算出する必要がある。実際、水位H は貯留量Sから下水管路の構造データ(管路の直径や延長など)を用いて換算できるため、貯留量Sの関数として表すことができる。このような関数を求めれば式(9)はSの関数として表すことができ、式(6)もSの関数として表すことができる。その結果、式(6)〜式(9)を用いて式(3)を解析することができる。具体的には、以下のような近似を行うことによって式(9)をSの関数として表すことができる。
一般に水位H と貯留量Sとの間の関係を表す関数(ここで仮にFとするとH =F(S)である。)は下水管の物理的な形状に依存する。そのため、下水管が円管の場合には関数Fはやや煩雑な式となる。一方、下水管が矩形管の場合、矩形管の底面積をA、矩形管の高さをD、実際の水位をHとすると、満管容量SmaxはSmax=A×Dとなり、貯留量SはS=A×Hとなる。この場合、満管率S/SmaxはS/Smax=(A×H)/(A×D)=H/Dと表される。式(9)は円管を想定した式であるため式中のH /Dは満管率と一致するものではないが、簡略的な計算を行う場合には、近似的にH /Dを満管率と見なすことができる。このように近似すればH /D=S/Smaxとすることができ、式(9)を貯留量Sの関数とすることができる。そのため、簡略的な計算を行う場合には、式(9)の水位H を、貯留量Sを満管容量Smaxで除した満管率で表現しておくことにより、式(6)〜式(9)を式(3)に代入した微分方程式を解析することができるようになる。このように、式(4)に代えて式(6)〜式(9)を運動の式として用いると、流速や流下時間などの、水位とともに変化する現象を近似的に解析することができ、解析の精度を向上させることができる。
さらに、管路の勾配Iを動水勾配で模擬する様にすれば、下流側水位の上昇に応じて流下時間が長くなる様子を解析することが可能となるためバックウォータ等の現象も解析することが可能になる。例えば、動水勾配Iは次の式(6)によって計算することができる。
Figure 0006716328
式(10)において、Suprateは上流側の管路の満管率を表し、Sdnrateは下流側の管路の満管率を表す。なお、上流側の管路が複数存在する場合は、Suprate及びSdnrateには複数の管路の平均値が用いられても良い。このような動水勾配を用いることにより、下流側の満管率が上流側の満管率よりも大きくなった場合(すなわち動水勾配が小さい場合)に流速が遅くなる現象を解析することができる。
次に、上述の方法で生成された解析モデルに基づく流出解析について説明する。
[流出解析]
まず、前処理部105が、流出解析に必要な情報の前処理を行う。具体的には、前処理部105は次の2つの前処理を行う。
(1.雨量データと小排水区との対応付け)
一般に、雨量データは、診断対象地域がメッシュ状に分割された区域ごとに取得される。そのため、雨量データを解析モデルに入力するためにはメッシュごとに取得される雨量データ(以下、「メッシュ雨量データ」という。)を小排水区ごとの雨量データに変換する必要がある。そこで、前処理部105は、診断対象地域内の小排水区の境界を識別可能な図面データを用いて、メッシュ雨量データを各小排水区の雨量データに変換するための変換テーブルを生成する。なお、上記の図面データは、通常、自治体などの下水道事業者や下水道管理者等が保有している区画割平面図に基づいて生成可能であり、予め浸水リスク診断装置1に設定されているものとする。
図8は、変換テーブルの具体例を示す図である。図8の例の変換テーブルは、小排水区ごとの変換レコードを有する。変換レコードは、小排水区番号、小排水区面積及び面積割合の各項目を有する。小排水区番号は各小排水区の識別番号である。小排水区面積は小排水区番号が示す小排水区の面積である。面積割合は、各メッシュの識別情報ごとの値を有し、小排水区面積に占める各メッシュの面積の割合を表す。図8は、各メッシュの識別情報がx及びyの座標として表された例である。例えば、図8の例は、(x、y)=(2,1)で識別されるメッシュが小排水区番号“1”で識別される小排水区の面積“100”のうちの20を占めていることを表している。このような変換テーブルは、診断対象地域の図面データを、メッシュ雨量データの取得単位である各メッシュに分割することによって生成することができる。
(2.雨量データの変換)
図9は、メッシュに分割された図面データの具体例を示す図である。各メッシュの大きさは既知である。そのため、前処理部105は、各小排水区の境界線を直線近似するなどして各小排水区の面積を算出するとともに、各小排水区に占める各メッシュの面積の割合を算出することができる。前処理部105は、このようにして生成した変換テーブルに基づいて、メッシュ雨量データを各小排水区の雨量データに変換して流出解析部106に出力する。
具体的には、前処理部105は、ある小排水区Aについてメッシュ雨量データを変換する場合、まず変換テーブルを参照し、小排水区Aに対応する小排水区番号を持つ変換レコードを選択する。前処理部105は、選択した変換レコードの面積割合の値を参照し、小排水区Aに該当するメッシュを識別する。具体的には、前処理部105は、選択した変換レコードから面積割合の値がゼロでないメッシュを選択する。前処理部105は、選択した各メッシュの面積割合を重みとして、各メッシュ雨量データの重み付け和を算出することによって、メッシュ雨量データを小排水区Aの雨量データに変換する。
例えば、小排水区Aに該当するメッシュがM、M及びMであり、それぞれの面積割合が0.2、0.7、0.1である場合、小排水区Aの雨量データRは次の式(11)によって算出することができる。
Figure 0006716328
式(11)において、R、R及びRは、それぞれM、M及びMのメッシュ雨量データを表す。なお、小排水区Aの変換レコードについて、小排水区Aに該当しないメッシュの面積割合(重み)の値を予めゼロに設定しておけば、小排水区Aの雨量データRは次の式(12)によって算出することができる。
Figure 0006716328
式(12)において、kは診断対象地域内のメッシュの識別番号を表し、Nはその最大値を表す。Wはkで識別されるメッシュの面積割合を表し、Rはkで識別されるメッシュのメッシュ雨量データを表す。このように、各小排水区について、該当しないメッシュの面積割合を予めゼロに設定しておくことにより、変換対象となる小排水区ごとの式(11)を生成することなく常に式(12)のみで雨量データを変換することができる。
前処理部105は、上記の前処理によって生成された変換後の雨量データを流出解析部106に出力する。なお、実際には、各小排水区の大きさは1つのメッシュの大きさよりも小さい場合が多いと想定されるが、ここでは簡単のため各小排水区の大きさを1つのメッシュよりも大きく表現している。また、メッシュ雨量データは、x及びyの座標形式で定義されたメッシュの2次元配列として取得される。例えば、メッシュ雨量データは、1分単位の時系列データとして取得される。
流出解析部106は、前処理部によって生成された変換後の雨量データと、解析モデル構築部103によって構築された解析モデルと、に基づいて流出解析を行う。具体的には、流出解析部106は、小排水区の接続関係や流入量、流出量等を境界条件として、式(1)〜(10)で表される連続の式及び運動の式を解くことにより、各小排水区を接続する管路の流量及び水位を算出する。流出解析部106は、流出解析によって得られた各管路の流量及び水位等の情報を解析結果として浸水解析部106及び解析結果表示部108に出力する。なお、必要であれば、流出解析部106は各管路の管路情報を用いて、流量情報を水位情報に変換してもよい。
なお、降雨による雨水が小排水区に流入するまでに要する流入遅れを式(1)のような純粋な時間遅れではなく、次の式(13)〜(14)のような一次遅れフィルタで表すことも可能である。
Figure 0006716328
Figure 0006716328
式(14)において、sはラプラス演算子を表す。このような一次遅れフィルタの導入により、降雨が流入するまでの時間遅れるだけでなく、降雨波形のピークが抑制されるため、より現実的な流出に近い現象を解析することができる。
次に、上述の方法で得られた流出解析結果に基づく浸水解析について説明する。
[浸水解析]
浸水解析部107は、流出解析部106による流出解析の結果と、解析モデル構築部103によって構築された解析モデル(具体的には浸水解析モデル)と、解析モデルパラメータ生成部102によって生成された小排水区ごとのパラメータテーブルとに基づいて、浸水リスクの指標値となる満管率を算出する浸水解析を行う。具体的には、浸水解析部107は、流出解析の結果が示す各管路の貯留量Sを、管路の容量(満管容量)Smaxで割ることにより満管率Sfloodを算出する。すなわち、満管率Sfloodは、Sflood=S/Smax で定義される。浸水解析部107は、算出した各管路の満管率Sfloodを浸水解析の結果として解析結果表示部108に出力する。
次に、解析結果の表示について説明する。
[解析結果の表示]
解析結果表示部108は、浸水解析の結果に基づいて各小排水区の浸水リスクを判定する。具体的には、解析結果表示部108、満管率Sflood<1である管路はオーバーフロー状態にあり、浸水リスクが高いと判定する。一方、浸水解析部107は、満管率Sflood<1である管路はオーバーフロー状態になく、浸水リスクが低いと判定する。解析結果表示部108は、このように判定した各小排水区の浸水リスクを図4及び図5のような浸水ハザードマップとして表示させる。
例えば、解析結果表示部108は、Sflood>1の管路を赤色で表示させ、0.8<Sflood<1の管路を黄色で表示させるなど、各管路を浸水リスクに応じた色で表示させてもよい。このように各小排水区の浸水リスクを、視覚で識別可能な浸水ハザードマップの態様で表示させることにより、下水道事業者や下水道管理者などが診断対象地域内の浸水リスクをより容易に判断することが可能となる。
このように構成された第1の実施形態の浸水リスク診断装置1は、下水道事業者が通常保有している下水道計画(流量計算表)の情報に基づいて流出解析及び浸水解析を行うことができる。このような構成を備えることにより、診断対象地域の浸水リスクの診断において、リアルタイムでの浸水リスクの診断と、ユーザにとって分かりやすい診断結果を提供することとを両立することが可能となる。
このように構成される第1の実施形態の浸水リスク診断装置1によれば次のような効果も期待できる。下水道計画は、下水管の物理設計に利用されるものである。そのため、このような下水道計画の情報を浸水リスクの診断に用いることにより、増補幹線や貯留施設建築などのハード面での浸水対策を行う技術者と、ポンプ運転や貯留施設のゲート運用などのソフト面での浸水対策を行う技術者との間のコミュニケーションギャップを少なくすることができる。
また、浸水リスク診断装置1は、雨量データの取得に応じて、流出解析及び浸水解析をリアルタイムで行う。さらに、浸水リスク診断装置1は、リアルタイムに行われた流出解析及び浸水解析の解析結果を、視覚的な識別が容易な浸水ハザードマップとして表示させる。このような機能を備えることにより、浸水リスクの診断精度を向上させることができるととともに、浸水被害を低減させることができる。
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態の浸水リスク診断装置1aの機能構成の概略を示すブロック図である。第2の実施形態の浸水リスク診断装置1aは、計測データ取得部109及び解析モデルパラメータ調整部110をさらに備える点で第1の実施形態の浸水リスク診断装置1と異なる。計測データ取得部109は、各管路に設置された水位センサや流量センサ等の計測装置から、管路の水位や流量等の計測情報を取得する。
解析モデルパラメータ調整部110は、計測データ取得部109によって取得された計測情報に基づいてパラメータテーブルに含まれるいくつかのパラメータを調整する。解析モデルパラメータ調整部110は、調整後のパラメータでパラメータテーブルを更新することにより、調整後のパラメータを流出解析部106に入力する。
流出解析部106では各小排水区を接続する管路の流量又は水位情報が算出されるが、これは一般的には、計測データ取得部109によって計測される実際の観測流量又は観測水位とは一致せず、解析誤差を有していることが多い。そのため、解析モデルパラメータ調整部110は、所定期間における解析誤差の2乗誤差や絶対値誤差の総和を評価指標として、パラメータテーブルに含まれるいくつかのパラメータの最適値(最小値)を算出する。
具体的には、図4及び図5に示したパラメータの中で不確かさが比較的高いと考えられるパラメータは、粗度、流出係数及び流達時間である。解析モデルパラメータ調整部110は、これらのパラメータの一部又は全部を調整対象のパラメータとして選択する。解析モデルパラメータ調整部110は、選択されたパラメータをデータ同化等の手法を用いて、解析誤差が小さくなるように調整する。
データ同化手法は、計測値と解析値の誤差が小さくなるように、解析モデルの状態変数の初期値や境界値、又はパラメータを調整するための方法論の総称である。データ同化手法には、バッチ型の処理方式である4次元変分法や、逐次型の処理方式であるパーティクルフィルタ(粒子フィルタ)やアンサンブルカルマンフィルタなどの方法が広く知られている。本実施形態の浸水リスク診断装置1aは、リアルタイム(数秒〜数分)での浸水リスクの診断を実現することを目的とするものであるため、データ同化手法には逐次型のパーティクルフィルタやアンサンブルカルマンフィルタが用いられることが望ましい。
また、解析誤差を最小化には、上記のデータ同化手法に限らず、他の最適化手法が用いられても良い。例えば、他の最適化手法として、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)やパーティクルスウォームオプティミゼーション(PSO:Particle Swarm Optimization)などのメタヒューリスティクスと呼ばれる発見的な最適化手法が用いられても良い。
本実施形態では、レーダ雨量データに加えて、下水管路内の1か所以上の複数の点に、水位又は流量をリアルタイムで計測可能なセンサが設置されていることが前提となる。計測データ取得部109は、レーダ雨量データの取得周期と同じ周期又はそれよりも短い周期で計測情報を取得する。もし、計測情報の取得周期の方がレーダ雨量データの取得周期よりも長くなる場合には、レーダ雨量データの取得周期を計測情報の取得周期に同期させるものとする。
このように構成された第2の実施形態の浸水リスク診断装置1aは、浸水リスクの診断に必要な解析モデルのパラメータを、解析結果と、実際の計測データとに基づいて調整する解析モデルパラメータ調整部110を備える。このような構成を備えることにより、流出解析及び浸水解析の精度を向上させることができる。
以下、実施形態の浸水リスク診断装置の変形例について説明する。
流出解析部106及び浸水解析部107の解析結果は、解析結果表示部108による浸水ハザードマップの表示に用いられるだけでなく、排水設備の運転制御に用いられても良い。例えば、このような解析結果を排水ポンプ場の運転制御に用いれば、浸水の状況に応じた適切なタイミングで排水ポンプを起動させることができる。一般に、排水ポンプ場は上記の有向グラフにおいて根となるノード(図6では“1”のノード)に位置し、流出解析によってその流入量を推定することができる。そして、排水ポンプ場への流入量が推定できれば、その流入量を排水するのに必要な排水ポンプの台数を決定することができ、必要な台数の排水ポンプを適切なタイミングで起動させることができる。また、流出解析によって得られた流入量に基づいて、ポンプの起動水位や停止水位の設定値の変更操作を支援することができる。変更操作の支援は、設定値を自動制御することによって実現されてもよいし、作業者に設定タイミングや設定値等の情報を通知することによって実現されてもよい。
また、例えば、このような解析結果を雨水貯留施設の運転制御に用いれば、浸水の状況に応じた適切なタイミングで貯留ゲートの開閉を制御することができる。例えば、浸水解析の結果、満管率が所定の閾値を超えた管路が発生した場合、その管路が直接的又は間接的に接続する貯留施設のゲートを開くような制御を行うことができる。また、このようなゲートの制御を、他の現象や傾向等と組み合わせて行ってもよい。例えば、満管率が所定の閾値を超えた管路が発生した場合で、かつその時点の降雨強度がその後においても維持又はさらに強まることが見込まれる場合に、貯留施設のゲートを開くような制御を行ってもよい。このように、流出解析部106及び浸水解析部107の解析結果を用いれば、診断対象地域内の排水設備の運転を制御する制御装置を構成することができる。
上記の浸水リスク診断装置は、上記の解析結果や解析結果の表示(例えば、浸水ハザードマップ)を、ネットワークを介して通信可能な装置に配信又は提供するクラウドシステムとして構成されてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、診断対象地域の流量計算表が示す諸量に基づいて解析モデルの構築に必要なパラメータを生成する解析モデルパラメータ生成部102と、流量計算表が示す諸量及び上記パラメータに基づいて解析モデルを構築する解析モデル構築部103と、解析モデルを用いて各小排水区における管路の流量を算出する流出解析部106と、各小排水区について算出された各管路の流量に基づいて浸水リスクの指標となる満管率を算出する浸水解析部107と、を持つことにより、診断対象地域の浸水リスクの診断において、リアルタイムでの浸水リスクの診断と、ユーザにとって分かりやすい診断結果を提供することとを両立することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1,1a…浸水リスク診断装置、101…流量計算表記憶部、102…解析モデルパラメータ生成部、103…解析モデル構築部、104…雨量データ取得部、105…前処理部、106…流出解析部、106…浸水解析部、107…浸水解析部、108…解析結果表示部、109…計測データ取得部、110…解析モデルパラメータ調整部、20…診断対象地域、21,21−1〜21−8…合流点、22,22−1〜22−7…管路、30…選択表示、41,41−1〜41−8…ノード、100…流量計算表

Claims (11)

  1. 診断対象地域の流量計算表が示す諸量に基づいて、前記診断対象地域における浸水リスクを診断するための解析モデルの構築に必要なパラメータを生成するパラメータ生成部と、
    前記諸量及び前記パラメータに基づいて前記解析モデルを構築する解析モデル構築部と、
    前記解析モデル構築部によって構築された前記解析モデルと、前記診断対象地域の小排水区ごとに所定の周期で取得される雨量データとに基づいて、各小排水区における管路ごとの流量又は水位を算出する流出解析を実行する流出解析部と、
    前記流出解析部によって算出された各小排水区における管路ごとの流量又は水位に基づいて、前記小排水区の浸水リスクの指標となる前記管路ごとの満管率を算出する浸水解析部と、
    を備える浸水リスク診断装置。
  2. 前記パラメータ生成部は、満管状態又は半満管状態における管路の流速を算出し、前記管路の延長を前記流速で除算することにより、前記パラメータの1つである流下時間を算出する、
    請求項1に記載の浸水リスク診断装置。
  3. 前記パラメータ生成部は、マニング式における径深及び勾配を管路の水位又は満管率によって表すことにより前記流下時間を算出する、
    請求項2に記載の浸水リスク診断装置。
  4. 前記流出解析部は、流達時間と流下時間とに基づいて小排水区ごとの流入時間を算出し、前記小排水区ごとの雨量データに前記流入時間分の一次遅れを持たせて前記流出解析を行う、
    請求項2又は3に記載の浸水リスク診断装置。
  5. 前記診断対象地域の所定のメッシュごとに取得されるメッシュ雨量データを、前記小排水区ごとの雨量データに変換する前処理部をさらに備える、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の浸水リスク診断装置。
  6. 前記浸水解析部によって算出された前記管路ごとの満管率に基づいて、前記小排水区の浸水リスクの程度を視覚的に識別可能な態様で前記診断対象地域の地図上に表示させる解析結果表示部をさらに備える、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の浸水リスク診断装置。
  7. 前記解析結果表示部は、前記浸水リスクに関する情報を、ネットワークを介して接続可能な他の装置に送信する、
    請求項に記載の浸水リスク診断装置。
  8. 各小排水区を接続するいずれか一つ以上の管路の水位又は流量を計測する計測装置から前記水位又は流量を示す計測情報を取得する計測情報取得部と、
    前記流出解析によって算出される流量又は水位と、前記計測情報が示す流量又は水位との誤差が小さくなるように前記パラメータを調整するパラメータ調整部と、
    をさらに備える、
    請求項1からのいずれか一項に記載の浸水リスク診断装置。
  9. 診断対象地域の流量計算表が示す諸量に基づいて、前記診断対象地域における浸水リスクを診断するための解析モデルの構築に必要なパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、
    前記諸量及び前記パラメータに基づいて前記解析モデルを構築する解析モデル構築ステップと、
    前記解析モデル構築ステップにおいて構築された前記解析モデルと、前記診断対象地域の小排水区ごとに所定の周期で取得される雨量データとに基づいて、各小排水区における管路ごとの流量又は水位を算出する流出解析を実行する流出解析ステップと、
    前記流出解析ステップにおいて算出された各小排水区における管路ごとの流量又は水位に基づいて、前記小排水区の浸水リスクの指標となる前記管路ごとの満管率を算出する浸水解析ステップと、
    を有する浸水リスク診断方法。
  10. 診断対象地域の流量計算表が示す諸量に基づいて、前記診断対象地域における浸水リスクを診断するための解析モデルの構築に必要なパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、
    前記諸量及び前記パラメータに基づいて前記解析モデルを構築する解析モデル構築ステップと、
    前記解析モデル構築ステップにおいて構築された前記解析モデルと、前記診断対象地域の小排水区ごとに所定の周期で取得される雨量データとに基づいて、各小排水区における管路ごとの流量又は水位を算出する流出解析を実行する流出解析ステップと、
    前記流出解析ステップにおいて算出された各小排水区における管路ごとの流量又は水位に基づいて、前記小排水区の浸水リスクの指標となる前記管路ごとの満管率を算出する浸水解析ステップと、
    をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  11. 請求項1から8のいずれか一項に記載の浸水リスク診断装置によって取得された診断対象地域内の各小排水区における流出解析結果又は浸水解析結果に基づいて、前記診断対象地域内の排水設備の運転を制御する、
    制御装置。
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