図1は、本発明が適用される自動分析装置の概略構成図である。
図1において、自動分析装置は、分析部110と制御部111とを備える。また、分析部110は、試薬ディスク105と、底面と側面が光を透過する材質で形成された反応セル101と、試薬分注機構108と、液状の検体を収容する検体容器107と、検体分注機構106と、水吐出機構102(セル洗浄水・セルブランク水の注入機構)と、廃液排出機構104(測定後の検体・試薬・洗浄水・セルブランク水の吸い出し機構)と、反応セル101内に収容された検体を光学的に測定する光度計103(光学測定器)と、複数の反応セル101が配置され、回転駆動する反応ディスク109とを有する。後述するように、この光度計103には、検体と試薬を混合する反応セル101に光を照射する光源と、透過光を検出する検出器を含む。この他にも図示されていない、例えば反応セル101内の反応液を撹拌する撹拌機構なども反応ディスク109の周りに備えられる。
円状に配置された複数の反応セル101は、各分析過程の操作のために、反応ディスク109によって、試薬ディスク105の周りを定周期で回転する。この回転駆動は、制御部111の動作制御部(後述する)によって制御される。また、この制御部111には、分析部110の分析に必要な情報を記憶する記憶部(後述する)を備え、この情報を用い、制御部111は分析部110の各種機構を制御する。
検体の測定を行う前に、廃液排出機構104と、水吐出機構102によって反応セル101の洗浄が行われる。
次に反応セル101が光度計103の前を通過した際に、セルブランク測定がなされる。セルブランク測定は、水吐出機構102によって水を入れた反応セル101の吸光度を測定し、検体測定の際に各反応セル101のゼロ点を補正するために行われる。
セルブランク測定を終えた後は廃液排出機構104により反応セル101から水を吸いだす。
続いて検体分注機構106によって、検体の一部が、検体容器107上の検体容器から、吸引された後、検体分注機構106が反応セル101上空に移動し、反応セル101に検体を吐出する。
続いて、反応ディスク109が回転することにより反応セル101が移動し、試薬分注機構108によって試薬ディスク105から反応セル101へ試薬が分注され、試薬と検体は混合して反応し、反応液が生成される。反応液が入った反応セル101が、定周期で回転して光度計103の前を通過するときに、一度、あるいは通過するたびに複数回の吸光光度測定を行い、検体の成分が測定され、分析される。
自動分析装置は、こうした一連の動きを、一定のサイクルで、行なっている。
以上が自動分析装置の概要である。
図2は、本発明による原理であり、反応容器内の検体を観察するための基本原理を説明する図である。
図2を参照して、反応セル101に吐出された検体205の状態を観察する方法の原理について述べる。ここで、検体205の状態とは、検体205の有無、検体205の量、検体206の位置を意味する。
図2において、反応セル101の底面204に向けて光を照射する光源201からの光の入射角207(θ)を、反応セル101の構成材の屈折率をn1、検体205の屈折率をn2、反応セル201内の空気208の屈折率を1として、(1/n1)<(sinθ)<(n2/n1)の関係を満たすように設定する。
こうすることで、図2の(a)に示すように、反応セル101に検体205が存在しない場合、全反射条件を満たすので、反射率が1となり、入射光202は、100%反射して、反射光203となる。
一方、図2の(b)に示すように、反応セル101に検体205が存在する場合、検体205が存在する範囲では全反射条件を満たさないので、入射光202は、透過光206と、反射光203の二つに分かれる。
入射角207と入射側・反射側の屈折率と反射率の関係は、フレネルの式によって偏光成分ごとに理論的に計算できるが、既知であるのでここでは割愛する。
入射角207が臨界角より小さくなるにつれて、反射率は急激に減少するため、入射角207と臨界角との差が5度以上あれば、反射率はおおよそ0.2以下であり、信号として使用するのに充分な反射率の差異が得られる。
反応セル101、検体205の構成材の特性によって最適な入射角は変わってくるが、例として、反応セル101の構成材の屈折率を1.5、検体205の屈折率を1.33とすると、入射角は42度〜62度の範囲に設定する必要がある。検体205の構成物質は変化するため、62度側が変化する可能性がある。また、入射角が小さい方が、検体205が存在する場合の該反射率も小さくなるので、より差異の大きい信号が得られる。そのため、入射角はできるだけ42度に近づけるのが望ましいが、自動分析装置を構成する部品の公差によって反応セル101への入射角207も変化するため、考慮する必要がある。
また、図2中では表現していないが、入射光202は、反応槽水209と反応セル101の境界面で屈折をする。それを含めて、入射角207が前記設定の範囲に収まるように光源201を配置する必要がある。もしくは、図2の(c)に示すように、反応セル101を反応セル101と反応槽水の境界210が入射光に対して垂直な形状とすることで、屈折を起こさなくすることができる。反応槽水209が存在せず、空気で反応セル101を恒温制御する方式の自動分析装置では、入射角を前記設定の範囲に収めるためには、図2の(c)に示した構成が必須となる。
以上が、本発明における、検体205の状態を観察するための基本的な原理である。以下の実施例では、全てこの原理を応用する。
以下の本発明の原理、実施例では、吐出された検体205の量が、おおよそ5マイクロリットル以下を想定している。すなわち、本発明の目的は、検体205の微量分注における分注精度の保証であり、5マイクロリットル以上の多量分注の場合は、分注精度が問題となることはほぼないことがその理由である。
5マイクロリットル以下の検体205が反応セル101に吐出された場合、検体205は反応セル101の底面204全体には広がらず、半球状となる。ただし、同量の検体205が吐出された場合でも、検体205と反応セル101の底面204の親和性の違いによって、検体205が広がる面積とその曲率は異なる。以下の例では、以上の状態を想定している。
図3は、本発明による原理であり、反応セルからの透過光を検出して反応セルに吐出された検体の有無を観察する原理を説明する図である。
図3を参照し、透過光206を利用して、反応セル101の中の検体205の有無を観察する原理について説明する。
図3の(a)に示すように、反応セル101の底面204に検体205が存在しない場合は、透過光206が存在しないため、透過光の検出器301に入射する光はなく、信号も発生しない。
図3の(b)に示すように、反応セル101の底面204に検体205が存在する場合は、透過光206が発生するため、反応セル101の側面側に配置された透過光検出器301に光が入射し、入射した光に応じた信号が発生する。
図3の(a)、(b)に示したように、透過光206が発生するか否かによって、反応セルの底面204における検体205の有無を観察することが可能である。
以上が透過光206を利用して、反応セル101の中の検体205の有無を観察する原理についての説明である。
図4は、本発明による原理であり、反応セルからの反射光を検出して反応セルに吐出された検体の有無を観察する原理を説明する図である。
図4を参照し、反射光203を利用して、反応セル101の中の検体205の有無を観察する原理を説明する。
図4の(a)に示すように、反応セル101の底面204に検体205が存在しない場合は、反射率が100%のため、反射光203の反射光検出器401に入射する光量が多く、信号は大きい。
図4の(b)に示すように、反応セル101の底面204に検体205が存在する場合は、反射率が減少するため、反射光203の反射光検出器401に入射する光量が減少し、信号は小さくなる。
反射光検出器401への入射光量の差異によって、反応セル101の底面204における検体205の有無を観察することが可能である。
以上が、反射光203を利用して、反応セル101の中の検体205の有無を観察する原理についての説明である。
図5は、本発明による原理であり、反応セルからの透過光と反射光を検出して、反応セルに吐出された検体の量を観察する原理を説明する図である。
図5を参照し、反射光203と透過光205を利用して、反応セル101の中の検体205の量を観察する方法を述べる。
反応セル101の底面204に検体205が吐出された場合、反応セル101と検体205の親和性の程度により、ある広がり面積と、ある曲率を持って存在することになる。
この時、反射光束503について考えると、検体205の広がり面積に応じて、図5の(c)に示す反射光束の明部504と、反射光束の暗部505が発生する。暗部505に入る光量は、反応セル101の構成材の屈折率によって決定される、一定の反射率に応じて決定されるので、反射光検出器401で検出される信号の大きさは、検体205の広がり面積の大きさに対して負の相関関係を持つ。図5の(c)は検体205の広がり面積が大であり、図5の(d)は検体205の広がり面積が小である。図5の(c)の場合の信号は、図5の(d)の場合と比較して小となり、この透過光と反射光を検出した信号と、検体の広がり面積と、検体の曲率の相関関係を利用して、反射光検出器401で検出される信号の大きさから、検体205の広がり面積を観察することが可能である。
この相関関係は、あらかじめ自動分析装置の制御部111の記憶部に格納されており、数式の形であっても、対応表の形であっても実現可能である。また、反射光の検出器401に、CCDイメージセンサなどの2次元アレイセンサを使用する場合、反射光束503の暗部505の形状を直接観察できるため、検体205の広がり面積を直接求めることができる。
次に、透過光束502について考えると、検体205の広がり面積に応じて透過した透過光束502は、検体205をレンズに見立てて屈折して一旦集光し、検体205の曲率に応じた広がり角を持って進行する。透過光束502は、広がり角に応じて光束密度が変化し、透過光の検出器301で検出される信号は、光束密度に応じて変化する。よって、透過光の検出器301で検出される信号は、検体205の広がり面積に対して正の相関関係を、検体205の曲率に対して負の相関関係を持つという第1相関関係を持つ。
つまり、図5の(a)に示すように、検体205の曲率が大の場合(検体量が大)、透過光束502の広がり角は大となり、光束密度が小で、透過光検出器301の検出信号は小となる。また、図5の(b)に示すように、検体205の曲率が小の場合(検体量が小)、透過光束502の広がり角は小となり、光束密度が大で、透過光検出器301の検出信号は大となる。
検体205の広がり面積は、上述したように、求めることができるので、上記相関関係を利用して、透過光検出器301で検出される信号の大きさから、検体205の曲率を観察することが可能である。上記第1相関関係は、あらかじめ自動分析装置の記憶部に格納でき、数式の形であっても、対応表の形であっても実現可能である。
上述したとおり、検体205の広がり面積と曲率が観察可能である。検体205の広がり面積と曲率は、検体205の量に対して第2相関関係を持つ。この第2相関関係は、あらかじめ自動分析装置の記憶部(後述する)に格納でき、数式の形であっても、対応表の形であっても実現可能である。
以上が、反射光203と透過光206を利用して、反応セル101の中の検体205の量を観察する原理についての説明である。
図6は、本発明による原理であり、反応セルからの散乱光を検出して、反応セルに吐出された検体の量を観察する原理を説明する図である。
図6を参照して、透過光206による散乱光602を利用して、反応セル101の中の検体205の量を観察する原理法を説明する。
上述のように、反応セル101の底面204に、検体205が広がった範囲に透過光束502が発生する。透過光束502は、検体205中の生体物質等によって散乱光602が発生する。この散乱光602は、透過光205を避ける位置(反応セル101の側面側であり、透過光が照射されない位置)に配置された、散乱光検出器601によって検出される。散乱光601で検出される信号は、検体205中の生体物質の種類と量、つまり、検体205の量に正の相関関係を持つ。この第3相関関係を利用して、散乱光検出器601で検出される信号の大きさから、検体205の量を観察することが可能である。
生体物質の構成は、検体の種類に応じて大きく変化する。検体の量と、検体の種類と、散乱光検出器601を検出した信号との第3相関関係はあらかじめ自動分析装置の記憶部に格納されており、数式の形であっても、対応表の形であっても実現可能である。
図示した例では散乱光検出器601は、3つの例であるが、一つあってもよい。ただし、図示した例のように3つの散乱光検出器601で散乱光を検出する構成とすれば、高精度となる。
以上が、透過光束502による散乱光602を利用して、反応セル101の中の検体205の量を観察する原理についての説明である。
図7は、本発明による原理であり、反応セルからの透過光をより精度よく検出し、図5に示した原理とともに、反応セルに吐出された検体の量を観察する原理を説明する図である。
図7を参照し、反射光203と透過光205を利用して、反応セル101の中の検体205の量をより精度よく観察する原理を説明する。
上述したように、検体205中には生体物質が存在し、散乱光602が発生する。散乱光602は、検体205の量や種類のみならず、乳び等による濁度によって、発生する量が異なる。散乱光602が発生する場合、透過光束502は減少するため、反射光203と透過光束502を利用して、反応セル101の中の検体205の量を観察する原理では、検体205の種類や濁度によって、観察の結果に誤差が発生する可能性がある。
上記誤差を解消するための原理を、図7を参照して説明する。
検体205からの透過光束502を、ハーフミラー701によって二つに分割し、ミラー702を介し、光路長の差Aが生じるように二つの透過光検出器301へ入射させる。二つの透過光検出器301で検出した信号の比は、元の透過光束502の広がり角に対してと、光路長の差Aに対してそれぞれ正の相関関係を持つ。光路長が短い図7の(a)の場合と、光路長がAだけ長い図7の(b)の場合とを比較すれば、図7の(a)の場合は光束密度が大で、信号も大であり、図7の(b)の場合は光束密度が小で、信号も小である。
光路長の差Aは予め定めることができ、既知であるので、透過光束502の広がり角は、二つの透過光検出器301で検出した信号の比によって求めることができる。
検体205中の生体物質によって、透過光束502の強度が変化したとしても、この信号の強度が変わるのみであり、信号の比は変わらないため、信号の比から透過光束502の広がり角を求め、検体205の曲率を算出することができる。よって、検体205の種類や濁度による誤差の発生を防止し、より精度よく検体205の量を観察することが可能である。
以上が、反射光203と透過光束502を利用して、反応セル101の中の検体205の量をより精度よく観察する原理についての説明である。
図8は、本発明による原理であり、反応セルからの反射光を検出して、反応セルに吐出された検体の位置を観察する原理を説明する図である。
図8を参照して、反射光203を利用し、反応セル101の中の検体205の位置を観察する原理を説明する。
反射光検出器401には、反射光束503が入射する。その際、検体205の吐出された位置に応じて、反射光検出器401上に、反射光束503の明部504と、反射光束503の暗部505が発生する。反射光束503の暗部505の位置は、そのまま検体205の吐出された位置に対応するため、反射光束503の暗部505の位置を検出すれば、検体205の位置を観察することが可能である。反射光検出器401に、光位置センサや、CCDイメージセンサなどを用いることで、反射光束503の暗部505の位置を検出し、検体205の位置を観察することができる。
以上が、反射光束503を利用して、反応セル101の中の検体205の位置を観察する原理についての説明である。
図2〜図8を参照して行った説明が、本発明における、検体205の状態、つまり、反応セル101内における検体205の有無、検体205の量、検体205の位置を観察するための原理である。上述した原理は、適切に組み合わせて構成することが可能である。つまり、検体205の有無、検体205の量、検体206の位置の内のいずれかの組み合わせ、あるいは全てを同時に観察することが可能である。
次に、以上に説明した原理を用いた、本発明の実施例について説明する。
図9は、本発明の実施例における構成を説明する図である。図9に示した例は、透過光206と、反射光203と、散乱光602とを利用して、反応セル101中に吐出された検体205の有無、量、位置を同時に観察する構成の例である。
最初に、光源201について説明する。
本発明は、原理に全反射を応用するため、波長の選択が重要な要素となる。異なる波長の光は、臨界角・屈折角が異なるため、光学設計時に考慮する必要がある。そのため、光源201の波長は、単一波長、もしくは波長幅の狭いものの方が光学設計は単純となる。そういった光源201は、例えば、半導体レーザーや、LED、ガスレーザー、固体レーザー、ナトリウムランプ等が挙げられる。
また、光源201の波長は、反応セル101の構成材や、水に対して大きな吸収を持たないことが必要である。よって、可視光〜近赤外領域を選択する。散乱光602を利用する場合、光源201の波長によって散乱効率が変化するため、それも考慮して光源201の波長を選択する必要がある。
一方、波長幅の広いものでも、バンドパスフィルタを使用するなど適切な光学系を構成すれば、本発明の光源201として使用可能である。よって、コストや素子のサイズ、素子寿命等を考慮してLEDやハロゲンランプ等を選択することも可能である。
以上が、光源201についての説明である。
次に、入射光202の照射方法について説明する。
上述した本発明の原理では、反応セル101の底面204の一部、あるいは全体に入射光202が同時に照射されることを想定していた。この原理は、照明系のスリットやレンズ、ビームエキスパンダー等の光学部品の選択によって、容易に実現できる。
一方、入射光202が照射される範囲を、点とみなせるような非常に狭い範囲に絞り、ある時間の中で反応セル101の底面204を走査する形態も考えられる。このような形態は、照明系に動的なミラー等を利用して実現が可能である。この形態の利点は、検出器としてのCCDイメージセンサ等の2次元アレイセンサの機能を、フォトダイオードなどの単一センサで代用できる点で、コスト削減や検出器制御の簡便化が期待できる。
以上が、入射光202の照射方法についての説明である。
次に、検出器301、401、601について説明する。
光の検出器には、フォトダイオードやCDSセルなど光量を検出する単一センサ、PDSなど光の重心を検出する光位置センサ、DADなど1次元アレイセンサ、CCDイメージセンサなど2次元アレイセンサがある。
本発明における検体205の有無や量を観察する原理では、単一センサで実現が可能である。検体205の位置を観察する原理では、光位置センサで実現が可能である。
検体分注機構106のプローブ113から吐出される検体205の有無、量、位置を同時に観察する場合、1次元アレイセンサや2次元アレイセンサなど、光量と光の位置を同時に検出可能なセンサを使用する必要がある。ただし、上述の通り、入射光202の照射方法によっては、この限りではない。
以上が、検出器301、401、601についての説明である。
次に、本発明を構成する部品の配置について説明する。
本発明は、反応セル101に吐出された検体205の観察を行う性質上、検体分注機構106による検体205の分注位置から、試薬分注機構108による試薬の分注位置との間に、反応セル101内の検体205を観察するための構成を配置する必要がある。反応セル101は、反応ディスク109によって、間欠的に移動と停止を繰り返すことから、特に制限がない限り、反応セル101が停止する位置に、検体205を観察する構成を配置することが合理的である。
また、検体205の吐出前後の信号を比較し、より明確に差異を観察できることから、検体分注機構106による分注位置に、構成を配置することが最も合理的である。
また、上述した原理説明では触れなかったが、反応セル101の周囲には、反応セル101の温度を一定に保つ役割を持つ反応槽水や、反応槽水を保持する容器である反応槽、試薬ディスク105が配置されている。これらは、本発明の観察原理を不可能とするものではないが、光路の確保に影響を及ぼすため、反応槽の一部を透光性の材質にする、反応層内部にミラーを設置する等の変更が必要となる。
以上が、本発明を構成する部品の配置についての説明である。
次に、本発明を構成する光学系の配置について説明する。
上述した原理説明では触れなかったが、本発明を実施するためには、適切に光学系を配置する必要がある。考慮すべき点は、外乱光や乱反射した迷光を遮断するための光学系や、結像関係である。
また、実際の反応セル101の底面204は、製作過程の都合上、球面となっている。よって、照射範囲で全反射の条件を満たすように入射角207を設定するか、球面に合わせて入射光202の開口数(見込み角度)を設定する必要がある。
光学系の構成には、レンズ、ミラー、スリット、波長フィルタ、ビームエキスパンダー、光ファイバー等を使用でき、適切に組み合わせて設計することで、本発明を実現する光学系を構成できる。
以上が、本発明を構成する光学系についての説明および、本発明の実施例における実装上の配置についての説明である。
図9に示した例について、さらに説明する。
図9において、光を透過する窓901を、光源201からの光を透過するための部分と、反射光検出器401が反射光を受光するため反射光を透過する部分と、透過光検出器301が透過光を受光するために透過光を透過する部分と、散乱光検出器601が散乱光を受光するために散乱光を透過する部分とに形成することにより、反応槽904内部の観察を可能としている。
この場合、入射光202や反射光203が、空気と光を透過する窓901との界面で全反射せずに反応槽904内部へ入射するような構成が必要である。図9に示した例では、入射光202や反射光203に対して光を透過する窓901を垂直に配置することで上記構成を実現しているが、その他に、光源201や反射光検出器401を反応槽904内部に配置する構成や、ミラーを反応槽904内部に配置する構成でも実現が可能である。
また、図9に示した例では各検出器301、401、601の手前(反応槽904側)に結像レンズ902とスリット903を備える構成とすることで、周囲からのノイズを低減し、目的の光のみを検出することを可能としている。
次に、図9に説明した例によって検体205の状態を観察した後に、観察した結果から、検体分注機構106からの検体205の吐出又は分注が正常か異常か、つまり、反射光、透過光、散乱光の内の少なくとも一つを検出する検出器(反射光検出器401、透過光検出器301、散乱光検出器601のうちのいずれか一つ又は2つ)が検出した光に基づいて、上記反応セルの底面に存在する検体の状態を判断する判断する方法について述べる。
図10は反応セル101の底面に存在する検体の状態を観察した結果から、検体の吐出が正常か異常か否かを判断するためのフローチャートある。また、図11は、制御部111の機能ブロック図である。図11において、制御部111は、残水判断部1111と、検体存在判断部1112と、検体量算出部1113と、検体位置判断部1114と、記憶部1116と、動作制御部1115とを備える。なお、図1には示していないが、本発明の自動分析装置には、表示部112が備えられている。
図10のステップS0にて、動作制御部1115が分析部110の動作を制御することにより、反応セル101内の検体205の観察が開始される。次に、ステップS1にて、透過光検出器301、反射光検出器401、又は散乱光検出器601からの検出信号が残水判断部1111に供給され、反応セル101内に残水が存在するか否かを判断する。
反応セル101には、水吐出機構102によって吐出されたゼロ点補正のための水が、廃液排出機構104によって何らかの要因により排出しきれずに、わずかに残っている場合がある。この残水も、吐出された検体205と同様に観察されてしまい、誤った判断をしてしまう場合が考えられる。この場合は、本発明を構成する部品の配置において説明したとおり、検体分注機構106による分注位置に、構成を配置することで、検体205の吐出前後の状態を観察できる。検体205の吐出前に観察される残水の状態と、検体205の吐出後に観察される状態を検出することで、誤った判断を防止することが可能である。
ステップS1において、残水判断部1111が残水の存在を判断すると、ステップS2に進み、動作制御部1115は、表示部112に異常が発生したことを表示させるとともに、分析部110を制御して、該当する反応セル101には検体吐出を行わないようにする。
ステップS1において、残水が存在しないと判断すると、ステップS3に進み、動作制御部1115は、分析部110に指令し、反応セル101に検体を吐出させる。
次に、ステップS4にて、透過光検出器301、反射光検出器401、又は散乱光検出器601からの検出信号が検体存在判断部1112に供給され、反応セル101内に検体が存在するか否かを判断する。
ステップS4において、検体存在判断部1112が検体は存在しないと判断すると、ステップS5に進み、動作制御部1115は、表示部112に異常が発生したことを表示させるとともに、分析部110を制御して、該当する反応セル101にはその後の動作を行わないようにする。
ステップS4において、検体が存在すると判断すると、ステップS6に進み、検体量算出部1113が、透過光検出器301、反射光検出器401、散乱光検出器601からの検出信号に基いて、反応セル101内の検体205の量を算出する。そして、動作制御部1115は、算出した検体量が設定範囲内か否かを判断する。
ステップS6において、検体存在判断部1112が検体量は設定範囲内ではないと判断すると、ステップS7に進み、動作制御部1115は、表示部112に異常が発生したことを表示させるとともに、分析部110を制御して、該当する反応セル101にはその後の動作を行わないようにする。
ステップS6において、検体量は設定範囲内であると判断すると、ステップS8に進み、検体位置判断部1114が、反射光検出器401からの検出信号に基いて、反応セル101内の検体205の反応セル101の位置を判断する。そして、動作制御部1115が、検体205が反応セル101の内壁面に接触しているか否かを判断する。
ステップS8において、検体が壁面に接触していると判断すると、ステップS9に進み、動作制御部1115は、表示部112に異常が発生したことを表示させるとともに、分析部110を制御して、該当する反応セル101にはその後の動作を行わないようにする。
ステップS8において、検体が壁面に接触いていないと判断すると、ステップS10に進み、正常に検体吐出動作が行われる。
なお、ステップS6において、反応セル101の底面204に吐出された検体205の観察された量が、設定範囲内か否かを判断しているが、この設定範囲は、設定した吐出量±x%としてもよいし、±xマイクロリットルとしてもよい。この設定範囲の決定は、検体205の量をどの程度の精度で観察できるかを確認した後に、その精度を考慮して行われるべきである。
また、以上の方法で検出された異常は、それぞれ性質・重大さが異なるため、対応に違いが生じる場合が考えられる。よって、それぞれの方法で検出された異常は区別されるべきであるため、どのような異常であるかを表示部112に表示することも可能である。
以上のような動作を行うことにより、最初に、ある検体、ある測定項目において、検体205の吐出が異常と判断した場合、この検体に対して異常な測定結果を出力してしまう可能性が予測できる。そのため、この測定結果を表示する際には、異常な測定結果の可能性があることを表示する対応を行うことで、ユーザーに注意を促し、測定結果の誤報告を防止することが可能となる。
また、同様に異常な測定結果を出力してしまう可能性が予測できる場合、その後の試薬分注機構108による試薬分注動作を行わないことで、試薬の無駄遣いを防止し、装置のランニングコスト向上に貢献することが可能となる。この場合、試薬分注動作を行う前に異常と判断することが必要であるため、それが可能な位置に本発明を構成する部品を配置する必要がある。
また、同様に異常な測定結果を出力してしまう可能性が予測できる場合、再度検体分注機構106により検体分注を行うことで、検体205の吐出異常による再検査を不要とし、測定結果の報告時間短縮に貢献することが可能となる。この場合、検体容器107が検体吸引位置に存在する間に異常と判断することが必要であるため、それが可能な位置に本発明を構成する部品を配置する必要がある。
また、検体205の吐出異常が起きる可能性のある、微量分注が必要な測定項目を、いくつかの測定項目の内の始めに行うことも可能である。
図9に示した例は、反射光検出器401、透過光検出器301、散乱光検出器601のいずれも備える例であり、必要に応じて、各検出器301、401、601からの出力を選択することが出来る例である。
本発明は、反射光検出器401、透過光検出器301、散乱光検出器601の全てを必ずしも備える必要は無い。
よって、上記反射光検出器401、透過光検出器301、散乱光検出器601のいずれか又はこれらの組み合わせを用いる本発明の実施例について説明する。
なお、以下の実施例では、全て図10に示した動作フローと共通であり、図11に示した制御部111の機能ブロックも、全実施例で共通である。
(実施例1)
実施例1は、透過光検出器301と、反射光検出器401とを備える例である。反応セル101の残水、検体205の有無は透過光検出器301によって検出する(図3に示す原理を用いる)。
反応セル101内の検体205の量は、透過光検出器301と、反射光検出器401とを用いる(図5に示す原理を用いる)。そして、反応セル101内の検体205の位置は、反射光検出器401を用いる(図8に示す原理を用いる)。
(実施例2)
実施例2は、散乱光検出器601と、反射光検出器401とを備える例である。反応セル101の残水、検体205の有無は散乱光検出器601によって検出する(図6に示す原理を用いる)。
反応セル101内の検体205の量も散乱光検出器601を用いる(図6に示す原理を用いる)。そして、反応セル101内の検体205の位置は、反射光検出器401を用いる(図8に示す原理を用いる)。
(実施例3)
実施例3は、透過光検出器301と、反射光検出器401とを備える例である。反応セル101の残水、検体205の有無は透過光検出器301によって検出する(図3に示す原理を用いる)。
反応セル101内の検体205の量は、透過光検出器301と、反射光検出器401とを用いるが(図5に示す原理)、図7に示した原理を用いて、透過光束502の広がり角を求め、検体205の曲率を算出し、検体205の量を算出する。そして、反応セル101内の検体205の位置は、反射光検出器401を用いる(図8に示す原理を用いる)。
(実施例4)
実施例4は、反応セル101内の検体205の状態を検出する検知器としては反射光検出器401のみを備える例である。反応セル101の残水、検体205の有無は反射光検出器401によって検出する(図4に示す原理を用いる)。
反応セル101内の検体205の量は、反射光検出器401を用いて検体205の広がり面積を求め(図5に示す原理)、検体205の曲率は予め定めた一定値を用いる。この予め定めた曲率は記憶部1116に格納される。
検体205の曲率は予め定めた一定値を用いるため、曲率をその都度算出す場合と比較して精度は劣るが、反応セル101内に最低量以上あるか否かの判断であればよい場合は、有効な例である。
(実施例5)
実施例5は、透過光検出器301と、反射光検出器401とを備える例である。反応セル101の残水、検体205の有無は透過光検出器301によって検出する(図3に示す原理を用いる)。
反応セル101内の検体205の量は、反射光検出器401を用いるが(図5に示す原理)、算出した曲率から検体の量を求める。これは、曲率から概略的に検体の量を算出することが可能であるからである。あるいは、検体の量と曲率との関係を予め実験により求めておき、記憶部1116に格納してもよい。
反応セル101内の検体205の位置は、反射光検出器401を用いる(図8に示す原理を用いる)。
なお、図9に示した実施例は、反射光検出器401、透過光検出器301、散乱光検出器601の全てを備えることから、本発明の実施例6に位置付けることができる。
また、実施例1〜6において、制御部111は、検体205の有無等を観察した反応セルの番号を、検体観察結果と共に記憶部116に格納し、表示部112に表示することもできる。
以上のように、本発明によれば、検体分注機構から検体が反応セルに精度よく吐出されたか否かを吐出動作毎に確認でき、最終的な検体の分注精度の保証が可能な自動分析装置を実現することができる。
本発明により、自動分析装置において、検体分注が反応セルへ精度よく吐出されたかの確認を可能とし、微量の検体の分析においても、検体の分注精度の保証を行うことができる効果がある。これにより、従来よりもさらなる微量の検体の分析が可能となる。
さらに、検体が反応セルへ精度よく吐出されなかった事を確認した場合、適切でない分析結果を出力してしまうことを予測することが可能なため、分析結果の誤報告を防止する効果が期待できる。また、最終的な分析結果の出力を待たずに検体の吐出直後に予測が可能なため、試薬の吸引・吐出をキャンセルすることで試薬の無駄遣いを防止することや、精度よく吐出されなかった検体が検体吸引位置に存在する間に、同じ項目の分析をやり直すことで、再検査にかかる時間を大幅に短縮できる効果が期待できる。